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    タイトル : ドラスレ! 21
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2011年6月2日18時29分51秒

 




第二十一話





「第一、これは私の家に代々伝わる家宝の剣。いくらリナがお金を積んでも、
 売るわけにはいかないの!」

「――じゃあ俺ン家で家宝にして、代々伝えてやるから、タダでくれっ!
 それならいいだろっ、なっ! なっ!」

「だ……だああっ! どーいう理屈をこねまわしてるのよっ!?
 あげないったらあげないっ!」

「ううっ、ひどい! そんなにつれなくするなんて! あんまりだ!
 俺泣くぞっ! しくしくっ!」

「泣きなさいっ!」

「――とまあ、冗談はこれくらいにして」


いきなり真顔に戻った俺についてゆけず、再び突っ伏すお嬢ちゃん。


「な――何なの、それは!」

「いいから。ゼルガディスたちの援護に行くぞ」


言うと、俺は駆け出した。
ゼルガディスとディルギアの一対一の勝負ならば、何も心配することはない。
だが、魔族と戦ってる間に打ちもらしたオーガや『その他大勢』たちが、
ゼルガディスたちの方に向かっていったのだ。
これほどの数の敵に囲まれることもないだろうアメリアも、
そろそろ一人きりで戦うのはきついはず。

それでも駆けつけてみると、取り巻きたちのほとんどは片付けられていた。


「助けに来たぞーっ!」

「リナさん!」


形勢が一気に逆転し、全員が目を見張る。
じりじりと退がり始めたオーガやバーサーカーたちに、ディルギアが呻く。


「んっ?」


今度はゼルガディスが怪訝そうな声を上げ、足を止める。
ディルギアは後ろを振り返り、喜悦の表情を浮かべた。


「ロディマス! よく来てくれた!」


そう――。
そこにはロディマスと、初めて見る顔のかなり美形の中年剣士がいた。

ロディマスは颯爽とディルギアに近づいた瞬間。
問答無用で、殴り倒した。
ディルギアはものの見事に吹っ飛び、近くの木にド派手な音を立てて
ぶつかり――それきりピクリとも動かなかった。


「ロ、ロディマス……?」

「ふん」


思わず唖然とするゼルガディス。
のっしのっしとロディマスはゼルガディスに歩きより、庇うように立つ。


「わしが忠誠を誓ったのはゼルガディス殿。赤法師なんぞという輩に
 義理立てする謂れはない!」

「貴様ぁ!」


逆上して突っかかる奴もいたが、ロディマスが大きく振り切った
槍斧でズッパリと両断される。
あまりの迫力に、残りのザコたちが蜘蛛の子を散らしたのは言うまでもない。


「――助かった。しかしお前たち、いいの? 本当に」

「なぁに、構うものですか」


伺うようなゼルガディスに剣士が笑う。
しかし……はて、この声はどこかで……。


「すまない、ロディマス、ゾルフ。つまらないことに付き合わせて」


ぞ……ぞ……ぞるふっ!?
――ということは。
この剣士があのミイラ男の正体、ということなのだろーが……
信じられんっ!
あれの中身がこんな美形とは……。


「何にせよ、この場を征することができましたね! リナさん、
 ガウリイさん、大丈夫でしたか?」

「まあな」

「私たちは大丈夫よ、アメリア」


アメリアは頷くと、ぐっと拳を握りしめた。


「援軍も駆けつけ、僕たちには追い風が吹いています! さあ、ここで
 ぐずぐずしている暇はありません! 僕たちにはなすべきことが
 まだ残っています!」

「まったく――このお兄さんのおっしゃる通りですよ」


声がした。

にっこり笑っていたアメリアが、青ざめて硬直する。
暗い森の影からいつのまにかひっそりと姿を現し、何の音も気配もなく
アメリアの背後をとった人物。


「……レゾ……」


ガウリイお嬢ちゃんがその名を口にする。
どうしてアメリアが逃げないのかと思ったが、俺はすぐに理解した。
立ち尽くすアメリアの首の後ろに、レゾが軽く手を当てている。


「ご無沙汰でしたね。――しかし、堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。
 用件は、言うまでもなく分かっているはずですね、皆さん」

「“賢者の石”でしょう」

「ガウリイさんでしたね、ええ、そうです。――あ、変な気を
 起こさないで下さいね。このひとの首筋にさしこんだ針を
 もう一押しすれば、私は人殺しになる」


――げ!
俺たち、特にアメリアは自分の置かれた状況を知って息を呑んだ。





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