タイトル : ドラスレ! 15
投稿者 : とーる
URL : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
投稿時間 : 2010年8月20日20時48分14秒
第十五話
俺たちはそのまま気絶してしまったゼルガディスを抱えて、
休憩用に作られた近くの小屋に移動した。
一応俺もリカバリィぐらいは使えるが、ここは回復魔法に特化した
アメリアに任せるのがいいだろうということで、
俺とガウリイお嬢ちゃんは備え付けられたテーブルに移る。
時刻はすでに夜になり、窓辺からは月明かりが煌々と差している。
「ねえリナ……、あの人どうするの?」
「どうするったって……とりあえず捕まえておくしかないだろ。
色々と訊きたいこともあるし」
ガウリイお嬢ちゃんの問いに、俺は軽くそう答えた。
ゼルガディスは誰かに命令を受ける立場だった、それは誰からなのか。
レゾが言っていた、魔王復活うんぬん〜は本当なのか。
俺はだんだんややこしくなっていく事態に溜息をついてると、
ふいにアメリアが俺を呼ぶ。
「……あの……リナさん」
「ん? どうした?」
「怪我は治ったんですけど……息苦しいかと思って……その、
フードと口布を取ってみたら……」
歯切れの悪いアメリアに眉をひそめ、俺は席を立つ。
すると、ガウリイお嬢ちゃんも一緒に俺のあとをついてきた。
俺たちはベッドの方へ足を進め――目を見開いた。
そこに寝ているのは、ゼルガディスで間違いない。
しかしその体は見るからに、人間のものではなかった。
普通なら柔らかい皮膚だろう部分が、全て岩か何か、
それに類する硬質のもので覆われている。
露出している首や指先も同じような岩肌であることから判断して、
きっと全身がそうであることはまず間違いないだろう。
一瞬だけ、魔法で造られたゴーレムだろうかとも思ったが、
先ほどまでのゼルガディスの行動を思い返してすぐに否定する。
主に仕えるためだけに造り出されるゴーレムには、
“自我”というものがないからだ。
「この方……ゼルガディスさんって……女性だったんですよ!!」
「そっちか!?」
アメリアの叫びに俺は思わずコケた。
確かに、顔つきやマントを取った体つきからして、女だと分かる。
考えてみれば、岩にも等しい重そうな身体のゼルガディスを
アメリアが一人でも抱えられたくらいだったからな。
「だって、隠してたってことは見られたくなかったんでしょうし」
「まあ、別に悪気があって見たわけじゃないんだから……
仕方ないことだとは思うが……」
「……起きたら謝ります」
そう言ってしゅんと落ち込むアメリア。
するとその目前でゼルガディスが眉をひそめ、静かに瞳を開けた。
最初は寝ぼけたようにぼんやりしていたが、ゆっくりと俺たちを
目線だけで見回したあとに重々しく溜息をつく。
そして囁くような声で呟いた。
「腕を試させてもらう――つもりだったのに、こっちの方が
口ほどにもなかったわけか……」
「あ」
身を起こそうとするゼルガディスに、慌ててアメリアが手を貸した。
一瞬だけ驚いたようにアメリアを見上げたゼルガディスだったが、
おそるおそるといったように手を借りながら上半身を起こす。
俺はそれを待ってから問いかけた。
「それで? こうなったからには事情の説明くらいはあっても
いいんじゃないか?」
「――そうだな。この状態では私も逃げたりは出来ない……
それに貴方たちも充分巻き込まれてる。知る権利くらいはある。
――さて、どこから話そうか……」
「まず、お前たちに命令してる奴のことからだ。結局、お前が
ラスボスじゃないんだろ?」
「ああ……私はあいつの手駒にしかすぎないさ」
「――何者だ? そいつは」
ゼルガディスは少し顔をしかめて、ひょいっと肩をすくめた。
「貴方たちだって聴いたことぐらいはあるだろう? そのへんの
街にいる子供だって知ってる。――現代の五大賢者と呼ばれてる、
“赤法師レゾ”」
「レゾ――!」
ガウリイお嬢ちゃんとアメリアが言葉をなくす。
そう考えれば結構シンプルな構図だと気づきながらも、
俺はガリガリと頭をかいた。
「レゾ、ね……あいつは本物なのか?」
「やはり接触していたのか……正真正銘、ご当人さ。――世間様では
君子扱いされているけれど、それがあいつの仮面で、裏はまったく違う。
昔はそうじゃなかったっていう話も聞くけど、どうだか……」
「『まったく――』って言われても、俺たちには分かんないさ。
そんな顔見てないからな」
だろうな、とゼルガディスは苦笑した。
NEXT.
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