. ツリー表示 . 番号順表示 . 一覧表示 . 新規投稿 .
質問掲示板をご利用ください ←ここをクリック    読みまくれ1  読みまくれ2  著者別  練習
カテゴリー別検索 ツリー内検索 過去ログ検索 ▼MENU


    タイトル : ドラスレ! 10
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2010年5月13日21時41分23秒

 




第十話





「あんたがどれほどのものか知らないが、はっきし言って
 俺の敵じゃあないね」

「ほほう……」


獣人はすぅっと目を細める。


「大きいことを言う兄ちゃんだな。ではその力、見せてもらおうか!」

「いいぜ――だが二対二じゃ、あっさり勝負がついて面白くない。
 こっちは一人で充分だ。――さあ行け、アメリア!」

「ええええええええええ!? ちょっ、ちょっとリナさん!!
 何で僕なんですか!? 今のはどう考えても僕じゃないです!!」


俺が獣人に向かってびしっと指を指してやると、
アメリアはおおげさな声をあげて俺を見た。


「何だ? それじゃあアメリア、お前ガウリイお嬢ちゃんに
 行ってほしかったのか?」

「確かにガウリイさんは見た目に反して強いですけど――って、
 だから違います!」

「見た目に反してって……」


わーわーと抗議しているアメリア。
すると獣人は鼻で笑って、肩をすくめてみせる。


「何ももめることはないぜ」


がさりと。
そう獣人が言い終えた直後に、すぐ近くの茂みが揺れる。
現れたのは、剣と簡単な鎧とで武装したトロル、およそ十匹。


「いくらなんでも、十数対一とは卑怯な!」

「リナさんってば!!」

「どうでもいいさ、行くぜ!」


意気込んだ獣人の台詞が戦闘開始の合図で、
アメリアに任せることも出来ず結局三人で戦うことになる。
俺が相対したのはロディマスとゾルフ、ガウリイお嬢ちゃんは
トロルの群れ、アメリアは獣人。

――戦力の差がありすぎるというなかれ。

指揮を担う役目を持つロディマス、三流とはいえ魔道士であり
まだ見せていない技を持っているであろうゾルフを相手にする俺、
体力勝負ではあるがトロルに一点集中出来るお嬢ちゃん、
秘策も何もなさそうな獣人にアメリア。
作戦も前置きも指示もなく無言でやってのけたのだから、
俺としては結構上出来な配分だと思う。

俺がロディマスとゾルフを先に片付ければ加勢に行けるし、
先にアメリアが獣人を片付けても加勢に行ける。
俺たちの攻撃力は魔法では俺、剣技はお嬢ちゃんがだんとつだ。
そして前にも言ったか忘れたが、トロルには魔法があまり効かない。
つまり、俺が頭の二人を破り、アメリアが後ろの一人を取り、
中間の群れをお嬢ちゃんに任せるやり方がベストというわけだ。


「はあっ!」

「ダム・ブラス!!」


お嬢ちゃんがトロルに切りかかり、アメリアが獣人に攻撃魔法を
ぶっ放したのを視界の隅で見やり、俺も目の前の二人に意識を切り替える。
槍斧で突っこんできたロディマスを交わし、俺はにやりと笑う。


「なかなかやるじゃん、おっさん」

「なーに、年の功ってやつさ」

「――!」


ふいに俺は呪文詠唱の声を聞き取り、ロディマスのテリトリーから
即座に飛びのく。
振り向きざまにゾルフに向かって、攻撃を仕掛けた。


「ファイヤー・ボール!」

「フリーズ・ブリッド!」



ちゅどどどどんっ!!



苦い顔を隠そうともせずに、俺はゾルフを軽く睨みつける。
いくらここが外で街道とはいえ、近くには木々や茂みがあるってのに
迷わず炎の呪文を使うか、こいつはっ!
本気で三流なんじゃないだろうな。

まあ、正直に本音を言えばだ。
ここで俺が大得意とする、ある必殺技で全員潰すってのもありだけど
……さすがに今回は俺一人じゃないしな。
っていうか今気がついたけど、ガウリイお嬢ちゃんと会ってから、
あの魔法は使ってないんだよな……俺って……。
あれからすぐにゴタゴタが始まったから盗賊いぢめもしてないし、
何だか調子狂うわけだ。

そんなことをつらつらと考えながらも、俺はロディマスとゾルフの
攻撃を交わしたり、攻撃仕返したりしている。
そんなこんなで隙をついてゾルフをディル・ブランドで地に沈め、
相手はロディマス一人。

正直、こいつらを相手に持久戦にはしたくない。
もちろんトロルの回復力もあれだが、先が見えない襲撃の数々に
魔力を消費し続けるのもどうかと思うわけだ。
とはいえ、これだけペースを落とさずに執拗に追ってくるということは、
ロディマスの一存ということは考えにくい。
こいつらよりも “上” の奴がいて、そいつが襲撃を指示している。
そういうことは明らかだ。

そろそろラスボスさんにご挨拶といきたい所だが――
とりあえずこの場を凌いでからにするか。
それよりも、ゾルフ辺りをとっ捕まえて事情を吐かせてみるのも……。


「――?」


俺は薄ら寒い気配を感じて、ロディマスより一歩下がる。
とたん、ロディマスや獣人が瞳から光を無くして棒立ちになり、
トロルたちの動きがピタリと止まった。
……これは傀儡の術?
これだけの数に一瞬で術に陥れるなんて――。





NEXT.


コメントを投稿する



親記事コメント
ドラスレ! 8-投稿者:とーる なし