◆−もう戻れない +これが最後だとは思わない+ 1 (家族の写真外伝)−十叶 夕海 (2007/5/3 00:28:45) No.18079


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18079もう戻れない +これが最後だとは思わない+ 1 (家族の写真外伝)十叶 夕海 2007/5/3 00:28:45



家族の写真外伝です。
ですが、ディスティアは、《歌乙女》として、ラストの方にちょこっと出るだけです。
メインは、《泉の乙女》ジュリと当時の《守護する龍》と《世界樹の翁》です
そして、電撃文庫の某に、影響受けてますが、あれのようにハッピーエンドでは終わらないので悪しからず。


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昔々、ニューヨーク・・・その中でも、治安の少し悪い場所。
ちょっと、路地に入れば、闇に満たされているそんな世界。
それが、この物語の舞台。
もっと言えば、リトルイタリー。
悪名高き禁酒法時代。
・・・・の後期、だいたい1930年ぐらい。
カモッラは、ナポリの監獄生まれのイタリアマフィアだ。
まあ、この物語は、ジュリ=ローゼンマリアが、覚えていることだ。
彼女は、永く長く、《泉の乙女》・・・《お伽噺》の《中立者》にして、《監視者》を背負っていた。
その彼女が、40年ほど関わっていた組織が、カモッラ。
彼女は、ジュリア=ローゼスと言う名前で、カーポ・スッチオ・ソチェタ・・・・・日本語に訳せば、カモッラ首領の相棒とか、そう言う役目に就いていた。
当時も、外見は、さらさらの銀髪と赤目の14歳ぐらいの少女の外見。
だけど、あの頃が一番、ジュリの人生で、一番華やいでいて、楽しい日々だったのかもしれない。








もう戻れない +これが最後だとは思わない+ 1









昼までも薄暗い、そんな路地裏。
やや急ぎ足で、歩く一人の外見17歳ぐらいの青年である。
暗色のスーツを着崩した、薄く光の加減で金色にも見える茶色の髪と、薄暗い場所でも、はっきりとわかるエメラルドのような瞳、線の細いと言っても構わない身体。
雰囲気と相まって、猫のようである。
・・・・・・・・ただし、口を開かなければである。
誰かにぶつかられる青年。
「おいおいおい、なにしやがんだぁ、ガキ?
 俺らが、ステファンファミリーのモンだと知ってやってぶつかってんのか?」
「ヒャハハハ。
 お嬢ちゃんよう、出すもん出しちまったほうがいいぜぇ。」
ぶつかったのは、いかにもチンピラと言う風情の少年と青年。
チンピラと言うのは、何時の時代だろうと変わらないものだ。
「だ、れ、が、お嬢ちゃんだ。」
「は?」
「誰が、お嬢ちゃんだ。
 俺は、正真正銘男だ。
 見ろ、こんな胸が真っ平らな居るか、ボケッ。」
バキッと、これ以上無いぐらいキレイに、ひねりの入ったアッパーがチンピラ青年の顎に決まる。
ジャック=ディプシーも真っ青なクリティカルヒットだ。
当然、脳みそが揺れて、チンピラ青年は、夢ノ世界に旅立った。
倒れ込む時に、上手く倒れ込んでいればの話だけれど。
「な、なにをしやがんだ。」
「あ?ステファントコに居て、よっぽどの下っ端なんだな。」
「なにおぅ!!」
ナイフを構えるチンピラ少年。
ジャパニーズマフィア風に言うなら腰だめで、突進してくる。
それを、スーツ姿の青年は、ノーモーションで、ナイフのみを蹴り上げ、それにチンピラ少年が驚いている間に、顎に足刀が決まる。
確実に、砕けたような決まり方である。
「・・・・・こんなところに居た。
 レーヴェも、探してるし、とりあえず、表通りに出ようか、キリル。」
「・・・・・・ジュリアさん、これ見て何も言わねェんすか?」
「何か、言って欲しい?
 言うとしても、こういうお前にとって大切な日まで、血で汚すな。ってトコね。」
そこに現れたのは、銀色の髪を複雑な幾何学模様に多色で染められた布でサイドでまとめ、バーデンダーの服の上から、頭の布と共布のスカートを履き、その上から暗色のトレンチコートと言う奇妙な格好の少女と言っていい外見の女性。
名前は、ジュリア=ローゼス、本名ジュリ=ローゼンマリア。
スーツの青年は、キリル=ヴェニウス。
ともに、カモッラ《フィッルーカ・ファミリー》の幹部である。
正確に言えば、ジュリの本名にしたって、役職にしたって、知っている方が珍しいし。
キリルは今日の夜の儀式の後に、中堅幹部になるのだ。
まあ、そんな二人。







「こんなところに居ましたか。」
「喧嘩してたみたいよ。
 たぶん、組織をバカにされたか、身長のせいで女扱いされたかのどちらかだろうけど。」
「ギクッ。」
「キリルらしいですね。
 さて、帽子屋に行きましょうか。」
「装飾屋とね。」
表通りで待っていたのは、ブルネットのさらさらの髪とラピズラズリのような濃い蒼の瞳の優しげな眼鏡の男。
職業を表すかのように、暗い色の。気性を表すかのように、緑色の。
そんな色のスーツを着た、荒事なんかと全然縁がなさそうなそんな20代半ばから30代中ばぐらいの年齢のつかめない男性だった。
彼は、レーヴェン=ディール。
《フィッルーカファミリー》の《出納係(コンタユオーロ)》である。
下からは、『白旗計算機』だとか、揶揄されるほど、戦うことをしないのが、彼だ。
少なくとも、キリルは、彼のことが嫌いではないので、庇ったりもするのだが、その庇われる本人がアレでは、そう有効だとは言え無い。
「ゲンが悪いし、
 マンハッタン橋のほうに、いい店あるし、そこ行かない?」
「あのお爺さんの?」
「そ、十年ぐらい前のレーヴェの昇進式にも利用したね。」
「・・・・・・・・・ジュリアさん、幾つです?」
「なにが?」
「年齢。」
「・・・・・・・・・・・・・キリー、女性にね、年齢、聞くもんじゃない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」
外見14歳のジュリだが、実際は、二千を数える年代を生きている。
それでも・・・・・だからこそ、聞かれたくはない。
ジュリが愛称で、誰かを呼ぶ時は、本当に怒っている証なのだ。
数ヶ月前に、カチコミにきた顔見知りだったチンピラに対してもそうだったのだ。
だから、キリルは、黙る。
彼女の恐ろしさは、よく知っているから。





だけど、幸せだった。
彼らとカモッラの仲間を馬鹿やれたのは、凄く凄く幸せだった。
心から笑えたのは、これの60年後ぐらいに、乾に出会ったとき以外だった。
それ以外は、ずっと、1000年前の後悔で笑えていなかったから。


でも、それは、運命とやらにたたき壊された。









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現在絶賛書き直し中の一話目です。
本編で、ジュリの口から、出た内容の詳しい版とでも言いましょうか。
結構、隠してますので、ある種、食い違ったりするかもです。

ともあれ、全何話になるか不明ですが、よろしくお願いします。