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    タイトル : 漆黒に踊り出る5‐1(15)
    投稿者  : 井上アイ
    URL    : http://kibunnya.kakurezato.com/
    投稿時間 : 2010年5月19日06時40分28秒

ビルを囲む車の中、夜食を簡単に取っていたワイザーが、愛妻弁当のおにぎりを手に、車外へと出た。
「警部?」
運転席側の車外に居た若い刑事が、それに気付き首を傾げる。
そこで見たのは、ビルを見上げるワイザーだった。
「何かありましたか?」
警備システムが万全だ。というビル。リッチが侵入したならば、騒がしくなる筈。
だが、目の前のビルは、静寂を保っていて、若い刑事は、上司が何を見てるのか。と、必死に目を凝らす。
「静かなものだな」
まるで、縁側でお茶でも飲んでいる様な、ワイザーの穏やかな声。
「見張りは任せて、休んで下さい」
「いや、外に居る方が、性に合ってるからな」
視線の先は、相変わらずビルのどこかで、若い刑事は、自分はまだまだなのだろうか?と不甲斐なさを痛感する。
「―君」
「…!はい」
ずっと黙ったまま、2人してビルを見上げていた中、急に呼ばれて、そちらを見る。
真っ直ぐな上司の目は、何かを思っているのか、力強いもので、これから告げられるのは、重大な事なのだ。と、若い刑事は、気合いを入れた。

視線が外された、ビルの屋上では、彼女が、ぐるりと、ビルの周りの車を、眺めていた。
北から始まり、東、南、…と、南と西の境目の角、丁度大通りを一点を目にした所で、彼女の足が止まる。
何かを感じて、車の群れを凝視してみても、ただの光の粒の固まりにしか見えない。
が、底の方から伝わるそれは変わらず、彼女は纏めていた髪から、ゴムを取り、ピンを抜く。
本当は、最上階に戻り、何食わぬ顔で、裏金を頂戴し、再びスーツを着て、会長と共に出て行くつもりであったが、そんな気持ちは、綺麗になくなり、直ぐに北へと向かう。
柵の支柱に、リールを取り付け、それから伸びるワイヤーに重りを付けて垂らし、汗でしっとり濡れた手の平を、ナップサックで拭う。
ついで、少し離れた場所に立ち、先ほどの変わった形の銃を取り出し、特殊な弾にワイヤーを仕込み、北東に向かって打つ。
それは、隣の20階建てのビルの屋上の壁に着弾し、粘度のある接着剤と杭が、ワイヤーを固定する。
そして、柵にワイヤーを巻き付ければ、逃走ルートの完成だ。
「なぁんか、厄介なのが、居るっぽいのよね……」
気を急かす悪寒の元が居ては、暢気にして居られず、睨む様に、ワイヤーの先を見ていると、体格の良い人間が、ぬっ!とビルの窓から出て来た。
◆◆◆
懲りずに携帯からorz


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