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    タイトル : 漆黒に踊り出る2
    投稿者  : 井上アイ
    URL    : http://kibunnya.kakurezato.com/
    投稿時間 : 2010年2月7日20時51分42秒
| 今居る部屋は、男が女性を落とす時に使う部屋で、今まで、何人もの女性を招き入れていた。
 「ご足労頂いたお礼に、この後食事でもどうでしょう?イタリア料理の美味しい所に案内したいのですが?」
 男はそう言って、下心のない微笑みを浮かべる。
 下心を露にすると、逃げるタイプだ。と、見抜いたからだ。
 予約した店は、相手に警戒されない様に、イタリア料理の解放的な店。
 今日の所は、相手を知る事だけに留めるのが、無難だろう。と、微笑みの内に隠している。
 「料亭で働いている君に失礼かな?」
 「いえ。イタリア料理も好きですわ。是非、ご相伴させて下さい」
 返ってきたのは、嬉しそうな笑み。
 そんな時に、
 ―コンコン!ガチャ!
 「親父!!」
 ノックの後、了承も得ず、入って来たのは、男の息子で、年の頃なら30代。
 陥落計画の第一段階、彼女を誘う事に成功し、気を良くしていた男は、眉をピクリと動かした。
 「ここでは、会長と呼ばないか」
 落とそうと企んでいる、そんな時に、父親という立場を持ち込まれ、罵倒したい気持ちを、内に秘め、男は諭す様に言った。
 この部屋の使用目的を知っている、その息子は、一瞬気まずそうにしたが、すぐに慌てた様子に戻る。
 「すみません、急ぎの用だったので。実は……」
 傍らに居る女性を気にしてか、息子は父親に近寄り、耳打ちをする。
 聞き終えると、父親は、女性に向かって口を開く。
 「君、済まないが、食事は、またの機会で構わないかな?」
 「かしこまりました。楽しみにしております」
 緊急な用だと察したのだろう、女性は笑顔一つ残し、一礼して部屋を出る。
 それを見送り、父親は息子と向き合った。
 「どこから漏れた?」
 「俺だって知りたい。親父じゃないのか?」
 疑いの眼差しに、息子は不服を露にし、父親に不注意がなかったか、と、逆に視線を送る。
 「そんな訳あるまい。だが、知っているのは、……いや、今は良そう。対策は?」
 鋭い視線を送り、父親は、渋い表情で、革張りの椅子に座る。
 その机の上に、息子は懐から、名刺サイズのカードを、2枚並べる。
 「警備会社を呼んだ。あと、一応、警察には、偽物の予告状を用意して、協力を要請してある」
 「ふむ。まあ、妥当な所だろうが……」
 ツッ!と並んだカードの1枚取り、父親はそれを見る。
 ‐欲深き罪人へ
 輝き忘れし哀れな石を、今夜頂く
 リッチ‐
 「罪人などと、言われたままでは、納得いかんな」
 ◆◆◆
 続くι
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