| 
 
    タイトル : 水蓮華 後編
    投稿者  : 新月 天海  amami-k@mx3.fctv.ne.jp
    投稿時間 : 2010年1月12日23時14分39秒
| こんばんわ。
 
 何度も言いますが、生粋のゼルリナです。
 予想外に甘く出来上がってしまいました。
 それを含めて読んでください。
 
 では、どうぞ。
 
 
 
 ふわり、と唇に何かが触れた。
 
 (あま、い…)
 
 あたしの口の中に蜜のようなものが―…!?
 
 そこで思考が完全に目覚めた。
 
 目を開けると、そこにはゼルの顔のどアップ。
 
 「目が覚めたか」
 
 「い、い、ま…あ、たしに……?」
 
 何をしたのかはなんとなく理解は出来るが、動揺のあまり思うようにしゃべれなかったりする。
 ついでに彼の顔を間近でなんて見たことあまりないものだから、顔が赤くなり、心臓がこれでもかと音を立てている。
 
 「あぁ、眠ってたんでな。
 夜が明けそうだったし、そろそろ起こした方が良いんじゃないかと思ったんだが」
 
 言われれば確かに、東の空が白み始めていた。
 しかし、今はそれどころではない。
 彼の手元には水蓮華。
 舌に残る甘い…感覚。
 ゼルのうっすらと濡れた唇…
 
 ま、まさか…
 
 「理性が持たなかった…」
 
 「あっ!のねぇ!理性が持たないで済むかぁ!!
 あたしのっ――!」
 
 ファーストキスをっ!なんておとめちっくなこと口には出せなかった。
 
 自分で無理やり口元を抑えて言葉を飲み込んだ。
 効果がないとは知りつつ、思いっきり彼を睨む。
 
 どうやら水蓮華の華の蜜をゼルが…く、口移しで…飲ませたようだけど…///
 
 起こすんなら普通に起こしなさいよ!
 
 「お前、それが逆効果だってわかってるか?」
 
 呆れた様にため息をついて、ゼルがあたしに手を伸ばす。
 我知らず、あたしは身を引いた。
 
 「な、なに…?」
 
 「怯えるな、頼むから」
 
 そ、そんなこと言われても…
 
 彼の縋るような瞳。
 翡翠色の透き通ったそれは、まっすぐにあたしを射抜く。
 
 ひたり、と頬に手が添えられる。
 
 「好きだ…」
 
 え…?
 
 「ゼ、ル……?」
 
 声が震える。
 これは幻聴…?
 それとも夢の続き?
 
 「ごめん、ちょっと、待って…」
 「リナ?」
 
 どうにも混乱してうまく言葉が繋がらない。
 ゼルが説明も理由も単刀直入でしか話さないのも知っている。
 だけど、あたしが落ち着くために時間が欲しかった。
 
 「あたし?が、好き…なの?」
 
 「こんな早くに伝えるつもりも、困らせるつもりも無かったんだ…
 だが、どうにも抑え切れなかった」
 
 すまない、と呟いて頬から手を離し、瞳を伏せる。
 
 「ほんと…?」
 
 「ん?」
 
 「好き、って…」
 
 呆然とするあたし。
 まだ信じられない。
 てっきりゼルはアメリアが好きなんだと感じていたから。
 
 「俺は冗談でこんなことが言える人間じゃない」
 
 確かに。
 ゼルはこの手の冗談が嫌いだ。
 
 「あ、あたしは…」
 
 心臓がうるさい。
 
 体が震える。
 
 ゼルに聞こえてないかしら。
 こんな間近で顔を付き合わせているのに。
 
 「あたし……き…」
 
 「リナ?」
 
 「〜〜〜〜!…ゼルが…っ、好きって言ったの!」
 
 恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
 だけど、今機会を逃したら絶対に、一生後悔する。
 目の前で驚愕している彼の顔を見る限り、きっとお互い嫌な勘違いをしていたに違いない。
 
 「……なによ、その顔」
 
 むすっと膨れてゼルを睨む。
 
 「いや、意外だったな…」
 
 彼は苦笑して今度は両手で頬を包む。
 とっさにあたしはぎゅっと瞳を閉じ―…
 
 ちゅ
 
 唇にあたしのよりちょっと低めの温度が重なる。
 頬にある彼の手が背中に移動し、抱きしめられるのを感じながらも甘く深いキスに頭がぼーっとする。
 いつしかあたしも腕をゼルの首に巻きつけ、さらなる熱を求める。
 
 「…ん………は、ぁ…」
 
 ようやくキスから開放され、大きく息を吸い込む。
 
 「…リナ…」
 
 あたしを抱きしめながらゼルが囁く。
 後頭部に回された手が髪を優しく撫でてゆく。
 心地よさに酔いながら、あたしもゼルを抱きしめた。
 
 「ね、ゼル、夜が明けるわ…」
 
 ゼルの肩越しに顔を上げれば、水蓮華の波の向こうから朝日が顔を出そうとしていた。
 
 「…っ、ホントだな」
 
 ゼルも目を細め、東の空を見遣った。
 
 さわ、さわ…
 
 風が流れだしたようだ。
 虹色の絨毯もそれに合わせて揺れている。
 
 「確かに、今回の『伝説』はガセじゃなかったけど…まぁ、いっか!」
 
 なんだかどうでもよくなってしまった。
 この『奇跡』だけで十分満たされてしまったから。
 ゼルも苦笑し、肩を竦めている。
 
 「帰るか、街に」
 
 言って立ち上がると、あたしに手を差し出した。
 
 「……そうね」
 
 きゅっとゼルの手を掴んであたしも立ち上がる。
 
 世の中にはいろんな『奇跡』がある。
 
 だけど、きっと全部『起こり得る』ことなのだ。
 
 『有り得ない』とあたしたちが決め付けているだけで。
 
 可能性はいつだって無限大なのだから。
 
 「いつかきっと、見つけるわ…」
 
 「リナ?」
 
 「あなたをきっと、元の身体に戻す方法があるはずなんだから」
 
 隣に立つ白銀色の戦士を見上げ、あたしは不敵に笑った。
 あっけに取られたように瞳を見開くゼル。
 その表情は一瞬で恥ずかしそうな笑みへと変化した。
 
 「そうだな」
 
 旅はまだまだこれからよ。
 そして、あたしたちは街への道を歩き出した――
 
 
 fin
 
 
 
 
 はい。すみません。
 前回に引き続き、妄想が暴走しております。
 
 こんなので良ければ感想などお待ちしております。
 ゼルリナ仲間なら尚のこと大募集です。(切実?)
 ではでは。
 
 
 
 
 |  
 |