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    タイトル : 漆黒に現る3
    投稿者  : 井上アイ
    URL    : http://kibunnya.kakurezato.com/
    投稿時間 : 2010年1月4日16時25分42秒
| グッ!と、腕の力で、上ろうとすると、一本のワイヤーが、その視界に入る。
 視線を、上に転じると、月をバックにした、細い影。
 「たく……あいつの仕業か」
 呆れた声を漏らしたその声は、警備員の男と話をしていたのとは、比べられない程、違う。
 キュゥと、左手にグローブを着用し、手首の所にある金具に、ワイヤーを引っかけ、クイクイと、ワイヤーを引っ張る。
 それを合図にか、巨体が、夜のビルを、駆け上り、数分もしない内に、屋上へと辿り着く。
 「はぁいv素敵な月夜ね♪」
 「また、どやされちまうな」
 屋上で待っていた人物の、可愛らしい声に、禿げ頭は、苦笑を浮かべてしまう。
 この後の展開が、目に見えてしまう程、相手の事を、知り尽くしているからだ。
 「あら、感謝して欲しい位よ?下に、あんたの、愛しの彼が居るんだもの」
 「知ってる。つうか、お前さん、また、そんな格好を……」
 クスクスと笑う細い身体に、困った様な声が、掛けられる。
 ピッチリとした、黒い皮のボディスーツが、華奢な身体を、更に華奢に見せているのだ。
 身長が低く、起伏が乏しいとはいえ、男ではありえないその曲線と、服装が、酷くミスマッチで、危うい美しさがある。
 特に、今日の様に、月明かりが、眩しい下では、いつも以上に、際立って、良く見えてしまう。
 「動きやすいのよ」
 禿げ頭の心配をよそに、栗色の髪を、ふわりと掻き上げ、華奢な身体が、巨体に近付く。
 その時、バリバリバリ、と、轟音と、風を伴って、金属の巨体が、2人に近付く。
 「じゃ、お勤め有難うね♪」
 踊る髪の毛を押さえ、華奢な身体は、ワイヤーを滑り、あっと言う間に、視界から消える。
 それを見送り、禿げ頭は、夜空に浮かぶ、巨体を見上げた。
 「怒るだろうな……」
 降りて来た梯子を、素早く上ると、運転席には、目付きの悪い男が。
 「どうよ?」
 「上手く行ったんだけどな……」
 「おい、まさか……」
 自分の問いに、返って来た、不景気な声に、目付きの悪い男が、更に目付きを悪くする。
 「ああ……」
 「ああ。じゃねぇだろが!後で、みっちり話するからな!」
 不機嫌を露に、男は、機体を、操る。
 夜空を舞う、ヘリコプターに、地上で隠れていた男が、車に乗り込んだ。
 「リッチだ。追え!!」
 運転をしている若者の隣で、窓から身を乗り出し、ウェーブの掛った黒髪を踊らせ、男は叫ぶ。
 「待て〜!リッチ〜!!」
 ◆◆◆◆
 キャラがやっと……
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