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    タイトル : 海に消える
    投稿者  : みやび
    投稿時間 : 2009年11月11日20時54分57秒

こんばんわ。みやびと申します。
友人からお前は某オンラインゲームのペットだ、とか夜に勝手に髪が伸びるとか言われますが。

私人形じゃないしっ!
髪伸びるの普通だしっ!

と、よく突っ込んでおります。
今回2弾目を即座に投稿できる運びとなったのは………大幅修正、ほぼ書いてた話を全部書き直し、ということをしたので構成時間がかなり短くて済んだからです。
3弾? なあにそれ美味しいの?(これも大幅修正を余儀なくされて全削除したらしい)
4弾なんてまだ影も形もありません。
どこまで続くかわかりませんが、とりあえず、1年ぐらい(以上?)かかると予想してるので…ゆっくりお付き合いください。








海に消える




 盛大に見送られ、のんびりとした船旅を満喫するつもりは元よりもなかった。
 ずっと甲板に居続け、来訪者の存在を待った。
 絶対に来る。なんとなく、それが分かってしまう。説明しろ、といわれたら出来ないが、確かに来訪者はここへ来る。
 そして来訪者は思った以上に早く、私の目の前に現れた。
 港を出港し、2時間経つか経たないかしてからふわりと甲板にそれは姿を現した。
「ゼロス…っ」
 そう、ゼロス。
 来るとは確信していた。群狼の島に住む5人の腹心の一人、獣王ゼラス=メタリオムの直属の配下である獣神官。その力は自他共に認めるほどに強い。5人の腹心の直属の部下の中では一番強いだろうこのゼロスに対して私の勝算などゼロに等しい。いや、勝算など最初からありえないだろう。
 とはいえ、群狼の島まではまだ少し距離がある。ゼロスが出てくるにはまだ早いとは思うのが………。
 この場をどう切り抜けるかなど考えてすらもいなかった。ゼロスがでてきてから考えよう、という無計画のなさにあきれつつ、この状況の切り抜け方を考えようとし────船員たちの慌てる声に、他の人物がこの場にいることを思い出した。
 確かにイキナリ現れた人影に何も知らない乗組員達が慌てるのは仕方がないことで。「この人には何があっても絶対に手を出してはだめよ」と忠告しておく。ゼロスは命令には忠実だが、命令以外のことは進んで行いはしないだろう。もちろんどんな命令を受けているかはしらないが、乗組員たちをそう簡単には殺しはしないだろう。
 手を出さない限りは。
「何の御用です?」
 ゼロスの視界から別の人間たちを守るように中間へと移動しながら声をかけてみる。
 知識面で頼りになる彼はいまここにはいない。いたところで勝てる可能性などはあり得ないが。
「いやですねぇ。そんなに警戒しないでもらいたいものです」
 前に別れた時と変わらない笑顔で、変わらない姿で、いつもの調子で話しかけてくる。
 一瞬でも旅をしていたころに戻ったような気持ちになった自分を叱咤する。
 こんな気持ちでは戦えない。目の前の魔族は今は敵なのだ。そう、今はあの時と違って共通の目的があるわけでもない。だから、敵だ。
 一度でも敵だと認識すると、瞬時に頭が切り替わる。戦うための思考ではなく、騙すための思考へと。
 戦いを挑んだところで負けるのが目に見えているのだから、時間を稼ぎ、ここから逃げる算段をする時間が稼げればそれでいい。私一人で即座に逃げれば、船内にいる彼は間違いなく死んでしまうから。
 これでも私は王族の一員。化かしあいや騙しあいはお手の物だ。時間稼ぎをしてみせる。
 いや。絶対に引き伸ばす。生き延びるために。
「警戒なんて…。私はただ何の御用です、って聞いただけよ」
「折角貴方にお会いしに来たんですから、そう身構えないでくださいよ」
 怖い怖い、とばかりに肩を竦めてみせるゼロスに対して
「…正確には私とゼルガディスさんに会いに来て、すべては命令です。じゃないの?」
 そう、ため息を吐きながら訂正してやるとゼロスは顔をしかめてみせた。
 ほら、やっぱり間違ってない。
 とはいえ、群狼の島に近づく前に出てきたとなれば、その海域を通って欲しくはない、ということだろうか…。
「そんなにあっさり言わなくてもいいじゃないですかー。
 確かに今回は命令ですがまずは説得に来たんですよ」
 まずは、という言葉にぴくりと眉が反応する。
「説得…?」
 言葉の意味を理解しかね、真意を計るかのように鸚鵡返しに返す。
「えぇ、そうです。
 これはセイルーン所有の小型船で、航路についてはすべて貴方に決定権が存在する。
 決定権を持つアメリアさんにこの船の航路を変えていただきたいんですよ」
 海域を通るのをやめろ、とでもとっていいのだろうか? 思わず考え込みそうになるのをぐっと堪えて
「航路を、どこへ変えろって言うの?」
 と聞いてみる。
 聞いてみるものの航路を変えるつもりはない。何故ならば、結界の外の世界で唯一陸が確認されているのが滅びの砂漠の向こう側だけ。無謀にもあるかどうかも知れない大陸を探すためだけに直進したりするなど自殺行為に等しい。
 大陸の存在を確認できるからこそ、この航路での移動なのだ。易々と変えろという案に乗る気はない。
「もちろん、出航した港へ、ですよ」
 にこやかな笑みのままで返ってくる。
 ここまではまだ説得の範囲内、いや、私がする質問の想定内ということだろうか。
 だから、想定の範囲内でも構わないから、純粋な興味で問いかける。
「どうして戻せ、なんていうの?」
 もちろん回答が返ってくるとは思ってない。
 いつものポーズをしようと動こうとするのを見て
「秘密です、はいらないわよ」
 と、先に釘を刺すと苦虫を噛み潰したような顔に一瞬だけなり──────わざとらしい、苦笑の見え隠れする笑みを浮かべる。
「いやあ。出来れば言わせて頂きたかったんですがねぇ。あっはっは」
 何があっはっは、だ。
 秘密です、を封じても言う気などさらさらない癖に。
「まあ、その問いにお答えすることは出来ません。
 これもしがない中間管理職の悲しいところです」
 ………ゼロスの場合は中間管理職、というものを抜きにしても何も語らないとは思うのは私だけなのかしら………。
「兎も角、これ以上船を進めるのであれば僕はこの船を壊してでも、動きを止めるつもりですよ」
 ……要するに、船員の命を生かすも殺すも私の選択次第、とでもいいたいのだろうか。この海域で海の中に放り出されて無事な可能性は、少ないだろう。
 ここは死の海。すべての生者を飲み込む魔性の海。そんな海に船員たちを落とすことなど、できるはずもない。かといって、ゼロスの交渉など飲みたくもない。
 どうするべきか…。
「ならば、この海域を迂回すればいいのかしら?」
 迂回する気もない。だが、状況が悪ければそれも頭に入れなければならない。
 だが─────
「迂回もなしです。帰航してもらいたいわけですよ」
 あっさりと切られる。
 何故………? 帰航しろということは外の世界に出るな、ということだろう。私たちが外の世界に出て、何か弊害がでるとは考えにくいのだが……。
 それでもゼロスがでてきたとなれば、魔族にとっては無視できない何かがあるのかもしれない。
 どうしようか? 
「さて、これ以上お話を引き伸ばしても仕方がないのでそろそろお答えをいただけませんかねぇ?」
 いつもは隠されている紫の瞳が、魔性の瞳が私を射抜く。それだけで、ピリピリとした視線が私に刺さる。本当に射殺されてしまうのではないかというほどに痛い。
 このまま、下手なことをいえば殺されそうなそんな雰囲気に当てられ冷や汗が背中を伝う。無表情を突き通してきたつもりだが、顔が引きつるのを抑えることができない……。
「…………最終的な確認をさせてほしいのだけど」
「ほう?」
「このまま私が逃げたらどうなるのかしら?」
 有り得ない。ゼロスもそんなことなどわかっているのだろうが、一瞬だけ興味をそそられたようなそんな瞳をこちらに向けた。
 リナ達と旅をしていた頃の私ならこんなことは言わない。だが、ここにいるのは王女としての私なのだ。ゼロスの知る私とは多少違って当然だろう。いや、王女という名の皮を被ったアメリア、なのかもしれないが。
「ありえませんね。
 ですが、そんなことがあるならこの船に乗っている方々の命は保障しません」
 ……その脅しは先ほどと同じで。
 だが、ゼロスは本当にやる。知り合いを殺すことなど造作もないだろうし、ドラゴンスレイヤーという二つ名を持つゼロスがこんな船の乗員全てを殺すまでにそう時間もかかるはずがない。
 だから私は────
「舵を! この船は直ちに帰航します!
 繰り返す、この船は直ちに帰航します!」
 船内放送用の筒を握り締めて叫ぶ。
 そして、慌しくバタバタと人が動き、船員の一人がゼロスに聞こえないように私に耳打ちをする。イキナリの帰航命令に一応の確認をしにきたという船員に声のトーンを低くして返す。「貴方たちの命を助けるためによ」と。
 船内に響いた私の声でゼルガディスさんも甲板に上がってくるのは時間の問題だろう。
「これでいいでしょう?」
 くすりと笑ってみる。
「えぇ、感謝しますよ。アメリアさん」
 と、ゼロスもいつもの笑顔を貼り付けて答える。
 これでいい。あとは、あとやることはもうない。
 ゆっくりと歩み、ゼロスの横を通り過ぎ─────船の手すりに手をかける。
 私はまだ帰るわけにはいかない。いや、帰りたくない、のほうが正しいかもしれない。
 だから────
「私は貴方の要求を飲んだわ。
 もう誰にも手出しはできないわよね」
 だから、私は逃げられる。
「もう二度と会わないことを願ってるわ」
 味方としても、敵としても。もう二度とゼロスには会いたくはない。
 そして私は誰の言葉を聞く前に体を船の外へと投げ出す。魔法の詠唱などすることなく、全てを運に任せて、私の体は海の中に沈む。
 海の中に何が存在するかもしらない。だが、なんとなく助かる気がするからこそ恐怖などはない。ただ海の海流に自然に流され、体が運ばれていくのを受け入れる。
 どこへ着くかもわからない。もしかしたら船と同じように自分たちの大陸に帰ってしまうかもしれないが、全てを運に任せると決めたのだ。
 ゆっくりと視界が黒く染まっていくのを見ながら、私の意識は徐々に沈んでいった。


 一人でも、構わない。
 ただ訪れた自由を手放したくなかった。
 だからこそ、私は、海に消える。








あとかぎらしきもの

大幅修正した理由は二つありました。
実は途中からアニメ版ぽくなってしまったことと、Wらてぃるとーが発生してしまったことが一つ目です。
えぇ、アニメ版はゼルアメ思考ですよ。ですが、原作版はWらてぃるとーはいくない! と思い修正。ホントは岩も海に落ちる予定が、船に残る結果に。

第二に、駆け引きが短すぎた! 駆け引きが短いために、SSS並に短くなってしまったからです。
というわけで駆け引きを追加して、いまの長さになりました。

てことで、元々あった文と付け加えた文の、荒さがものすごい目立っているかと思います。かなり雑に書いた気がするし…。
あんまり気にしないで見ていただけるとうれしいです。

ここまで読んでくれてありがとうございました


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利用される関係-投稿者:みやび Re:海に消える-投稿者:セス