◆−光馨るとき−神代  櫻(5/14-22:05)No.9992
 ┗Re:光馨るとき−あさみ(5/20-22:46)NEWNo.10110
  ┗はじめまして♪−神代  櫻(5/21-21:12)NEWNo.10133


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9992光馨るとき神代 櫻 5/14-22:05



「誰?」
振り返ると同時に、微かに揺れるは夕陽色のしなやかな少女の髪。
相手を捉える瞳は紅玉のように澄んだ石のよう。
小さな肩にやわらかにかかる珊瑚色のショールは、下肢部を覆い尽くすように大きく膨らみをとった紅のドレスに、美しく映えていた。
少女の表情(かお)に、驚きの色はない。ただあるのは、目の前の存在に対する、純粋な疑問だけだった。
新月の夜と同じ色をした髪と、紫暗の細い瞳。触れてみなければ作り物かと思う程に整った顔立ちは、彼女がいままで見てきたものとは、あきらかにどこか違う感じがある。
「誰……?」
再び漏らされた問い。今度は少しばかり首も傾げてみせた。
相手の男はそんな少女の姿を瞳に捉えると、流暢に一礼してみせ、上げた顔に張り付いたような得体の知れない笑みを、すっと浮かべた。
「ゼロスと…申します。」
石造りの部屋は丹念にどこも磨かれており、揃えられた調度品の数々も、どれも少女が使いやすいよう置かれ、充分な空間が設けられている。
分厚い本の並んだ棚。インクで少しばかり汚れた机。どれも彼女が今ここで生活している証として、今は静かに思わぬ来訪者を見ている。
「…あたしを迎えに来たの?」
「ええ。」
返事は短かった。しかしそれはどこか重みのある言い方で、少女はゆっくりと天井に視線を這わせながら嘆息した。
部屋の中は本当に静かだ。もしかしたら自分は呼吸を忘れているのではないかと思うくらい、空気の振動を許さなかった。
外界とは隔離された空間――。
それは、窓も扉もない…とにかく人である彼女がそこを拒むことはできないように造られた部屋と、床や壁に書かれた陣を見れば、誰にだって容易に想像はついた。
「じゃ…、魔族なんだ。」
「はい。」
靴の先で少女は床の陣をなぞっている。
魔封じの結界…。人の言葉でいえばそんなものだと、少女は育ての親から聞いていた。彼女の中に眠る、大いなる魔を静めるための…。
そして、壁の陣はそんな彼女の気配を外へ漏らさないためのものだとも…。
「効き目…、なかったわね。この結界。」
苦笑してみせる少女。
しかし男はほんの少しだけ返答に対して複雑な色を見せていたが、それも気のせいではないかと思う程に一瞬のことで、すぐさま冷たい微笑を浮かべ
「そうでもありません。実際、あなたを探すのには骨が折れました。まさかこんな……」
見回される石の空間。薄い硝子のランプに燈された小さな明かりは、炎ではなく、淡い光球だった。
そこはどこか時代遅れな雰囲気が漂い、一層時の流れをあやふやにしていく。
「こんな辺境の地にあなたを匿っていたとは……。竜族も考えたものです。」
くっと思わず笑っていた。
「非力な者には…、案外知恵があるものですからね。」
そして、感情をみせない紅の瞳が自分を見ていた事に気付く。
突然の来訪者に動じもせず、ただ受け止めている現実。察した事態は少女には酷なものだが、だからといって彼女に変化はなかった。
そして…
「長老は…、殺したの?」
問うことだけを行動に移していた。
「僕がここに来たことがばれてしまいましたからね…。襲われたのですから仕方ないでしょう。」
「嘘。」
「何故?」
彼が向ける少女への視線。それはどこか人でいうならば懐かしさも込めていて…、けれども冷たいヴェールに包まれた瞳は、魔族のそれ以外の何でもなかった。
「気配はわざと悟らせたんでしょ? 長老たちをついでに消すために…。あんた程の魔族なら、誰にも気付かれずにここまで来ることなんて簡単な筈なのに。」
二度目の嘆息。
一度瞼を閉じ、再び開いた瞳は磨かれた貴石のように澄んでいる。
「くだらない遊びをするのね。……あたしを連れて行くなら、早くそうすればいいのに。」
「けれどあなたは抵抗するでしょう…?」
「当然よ。この部屋も気に入らないけど、見ず知らずの魔族に黙って連れ去られるなんて、まっぴらだわ。」
鬱陶しそうに真紅のドレスの裾を片手で持ち上げ、澄んだ声音で少女。
(見ず知らず…ねえ……)
その言葉に、神官は思わず苦笑していた。
確かに彼女にしてみればそうだろう。
幾千年…、《彼女》の欠片を追い続けた彼の気も知らずに、少女は再び人として生を受けた。
魔を宿す…唯一の人間として………
「でも、あたしを連れてったとしても、あんたたちの望んでる魔王は簡単には起きてくれないわよ?」
「でしょうねえ。しかし…」
両手を互いの肘につけるような形で腕を組み、神官。
少女の珊瑚色のショールに留められた金細工のブローチに何気に視線を落としつつ、彼は続けていた。
「あなたは…、その小さな体で我らが王を抑えつづけるつもりですか?」
「たかが人間の分際で?」
そこまで言うつもりはなかったが、すぐさま言葉を継ぐようにして言った少女に対して、彼はやや苦い顔をした。
「ええまあ…、そんなところですね。」
「正直にいえばいいのに。」
ゆっくりと忘れていた感情を取り戻すかのように、少女の瞳に次第にちらちらと緋色の炎が燈り始める。
はっ、と短く息を吐いた笑いは、明らかにいまや目の前の魔族に対する不適な笑みだった。
「でもべつに、あたしは周りを守るために自分ひとりが戦おうなんて思っちゃいないわ。ただ――」
「ただ?」
日の沈む地平線の向こうを閉じ込めたような眼が、少女をまっすぐに捉えている。
そして次の言葉は、まるで水面に落ちた花のように、静かで細い…けれども強く空気を震わせるような、そんな声で
「あたしがあたしでいられるように…望むだけよ。」
そう、彼に返していた。
それがすなわちどういう意味かさえも、悟ったような笑みを浮かべて
「それはつまり…、相手は一つではないということですよ?」
「知ってるわ。」
ランプに燈された明かりが、徐々にその光を失っていく。いつもならこの時間に明かりを燈しに誰かがくるのだが、おそらく…誰一人として来ないだろう。
(もうここは…竜の神殿じゃないんだから……)
感じられぬ外の気配を無理にでも感じようと、無意識のうちに研ぎ澄まされる神経。少女はそんなことを思いながら、相手とのやりとりを続ける。
「だから竜族たちはあたしを側に置いたのよ。魔王を宿してるだけだったら、とっくに殺してるかなにかしてるわ。」
言ってけたけたと笑うのである。
同時にさらりと揺れる髪が、彼の眼にはどこか消え入りそうに映った。
「あなたは世界の背約者ですよ……?」
「みたいね。こんなこと、フツーはありえないから。」
そっと胸に当てられる手は意識してか。
手首に書き込まれた文字もやはり呪縛の類であろう。金属の手枷をはめられているよりも、その姿はどこか痛々しかった。
「竜たちは…、どうにかして自分たちの王だけをあたしの中から呼び起こしたかったみたいね。途方もないくらい毎日やっきになってたわ。」
「でしょうね…。できればこちらも同じことをしてみたかったですよ。」
「…………」
ゆっくりゆっくりと、明かりは失われていく。
薄暗い石の部屋の中で臥せられた少女の顔は、青年からは伺うことができなかった。もっとも、敢えて見るまでもなかったが…。
少女は大きく息を吐いた。
「あんたたちは…ホントーに単純…。神も魔族も…結局はなにもかわらない。」
「なんとでもおっしゃって下さい。僕たちに言わせれば、やるべきことの明確な答えを生まれながらにもたないあなたがたの方が、理解できないくらいなのですから。」
少女が睨むように顔を上げた。別にその言葉が気に障ったというわけではない。ただ、生きる者として魔に反発を感じたのだ。
「行かないわよ。あたしは。」
呟くように、静かな声が響く。
「なにがあっても、あたしはあたしなんだから…。あんたたちの王でもないし――神の長でもない。」
ただしそれは水面に落ちる氷の欠片のように、強く大きく…空気を震わせた。
「例えあなたを巡って、世界が二つに割れても…?」
「だったらなおさらよ。」
彼女の珊瑚色の肌が、暗闇の中にその栗色の髪とともに浮かび上がる。僅かに残った光は、夕焼け色に艶を見せていた。
「神だろうと魔族だろうと、やりあいたきゃ勝手にやりあえばいいわ。他を巻き込まないんならね。どっちが世界をとるかなんて、あたしには興味ないわ」
「でも、魔族(ぼくたち)が勝てば世界は確実に没しますよ。」
「だったらあたしがあんたたちを倒すわ。」
その言葉に、青年は喉を鳴らしながら音無く笑った。同時に揺れる肩に、少女は魔族に対する違和感を覚えながらも、そのまま相手の言葉をまっていた。
「矛盾してますね。先程あなたは興味がないとおっしゃったのに。」
「あんたたちの争いに興味がないって言っただけよ。実際にこの世界に住んでるのはあたしたちなんだからね。大地も水も…必要としない奴等なんかに勝手に崩されてたまるもんですか。それに――」
「それに?」
会話を重ねるうちに、青年の中に生まれる感情。思わず声を出して笑いたくなる衝動に駆られた。
この少女を、青年は確かに知っていた。《見知った人間の生まれ変わり》ではない。彼女はたしかに、彼が数百年前に出会った少女そのものだ。
(魂というのは…時を超えても、繋がっているものなのでしょうかねえ…)
そんなことを独白してしまう。
そして、少女は返事をかえしていた。
「それに…、今からあたしが見て行く世界だもん。あたしの目に映る前に消し飛ばされちゃ、かなわないわ。」
「…………」
ぱさり、とベットの上に脱ぎ捨てられる珊瑚色のショール。青年はそのまま黙ったまま、暫く言葉の意味を考えていた。そうしているうちに彼女の履いていたヒールの高いパンプスも、石の床にカランと無造作に落ちる。
「それはつまり…、ここから……」
「出て行くわよ。そーこーしてるうちにまた別の竜族に連れてかれちゃたまんないわよ。あたしは今から、世界を見に行くんだから。」
淡々と告げられる少女の言葉。そして、すっと彼の目の前に手が差し出された。
伸ばされた細い手。その指先は細く繊細である。
「引き止めなさいよ。あんた…あたしを連れて行かないと怒られるんでしょ?」
「そうしてこの結界から脱出しようと…?」
「そ。そっからあたしは逃げるけどね。意地でも。」
彼がその時見たものは、もしかすると微笑みだったのかもしれない。それはこの場には、そぐわないものだったかもしれないが…
しかし、青年は迷わずに…その手を受けていた。
「僕は予言しますよ。」
「?」
紅い瞳が紫紺の眼を捉える。白い面に浮かぶものは、彼女には理解できなかった。ただ、先を詠むにしてはどこか懐かしく、また、優しげに見えた。
「あなたはきっと、今僕がつれていかなくても…世界を憎む。」
「なんで言い切れるわけ?」
青年は浮かべた微笑を崩すことなく続けていた。
「人とは…そういうものですよ。一人の人間を愛したがために、世界中の人間を憎む…。一人の罪でも、全世界の人間が共犯者に見える…。人の中にあるものとは、そういうものなんですよ。」
「知ったような口を利くわね。」
「前例を僕は知っていますから。」
少女の脈が少しばかり早くなる。青年はそのことに僅かに別の笑みを見せながら、すっと彼女の身体を二・三歩引き寄せた。
「だからあなたもきっと…、その紅い瞳に映した世界を前に立ち止まる時がくる。なにも僕たちが手をださなくても、人間は勝手に人間を残酷に追いつめていくのですからね。」
「…………」
きゅっと握られた少女の手。瞳に変化はなかったが、それでもゆっくりと早まる鼓動はどうにもならないらしく、彼女はその手にいっそう力をいれていた。
(彼方の記憶が…彼女になにかを見せたのかもしれませんね)
胸中で呟く憶測。そして、青年は言葉を続けていた。
「世界は…あなたが考えている以上に残酷ですよ。きっと…。そして、美しくもある。だからなおのこと苦しめられるんですよ。その矛盾した流れに…」
明かりが…完全に途絶えた。
闇にふと包まれた石の空間はどこか寒々としていて、空虚でもある。
少女は――握り締めた手をゆっくりとほどくと
「それでも、あたしは断言してみせるわ。」
不適に釣り上げられる唇。
「なにがあったって、あたしがあたしとして生きていけるだけの大切なモノ
を見つけてみせるって」
閉じられる青年の深い瞳。静かに肩をすくめると、やがて仕事用の微笑を白い面に張りつかせて
「いいでしょう……」
それだけを、呟いた。
解かれる結界。少女の腕に刻まれた印が薄れていく。
(あなたに訪れるこの先の闇を…僕は知っている)
手に取った少女の腕に視線を注ぎながら、彼はどこかにそう告げていた。
(それでもあなたは自らそこへ行くというのならば、あなたの眼で見てくればいい。)
開かれる視界。竜族の里は、空間を超えればそこにある。
(また再び、あなたが世界に勝てる保証はどこにもないのだから――)
そして、彼は少女からその手をはなした。
次に彼女を見る日が近いことを、どこかで予感して…

“それでも、あたしは断言してみせるわ。
なにがあったって、あたしがあたしとして生きていけるだけの大切なモノ
を見つけてみせるって”

蘇る言葉に、なにか別のことを密やかに期待しながら――

фффффффффффффффффффффффффффффффффффффффф
こんにちは。神代 櫻です。
って、いってもきっとだれも覚えていませんね。あああ、れけども一応そういう人がいるのですよ。ホラ著作別リストにもちょこっとだけある。(−_−;)
さて、例の駄作:コンチェルトは一体どうなっているのかという鋭い突っ込みは彼方に置いておきまして、こんな短編を書いたりなんかしちゃいましたですです。
ああ、もぉはっきりいってわけわかりませんね。すいませんんん!
ぢつは私もよくわからずにかいているんですぅぅ! はう、こんなものを投稿される一坪さまもとんだ災難ですわ。
けどけど! 中間考査前に勉強もせずに書いたのですから多少の支離滅裂は仕方な…(殴)いえ、なんでもないです。
それでは皆様、よろしければ感想なぞを頂けると天にも昇る心地ですので是非とも神代 櫻の駄作に愛の手を…!! ではではー♪

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10110Re:光馨るときあさみ E-mail 5/20-22:46
記事番号9992へのコメント

とっても楽しいです
文章力のない私には とてもうらやましいですゥ

実は 未来のリナちゃんとかゼロスくんと言うのがつぼでして・・・
もーーーーーオールオッケーって感じです!
この小説に つずきってあるんでしたら
「ぜひぜひ」
載せてください

まじで ゼロリナ(ばりばりの)派ですーーーー!

短いですが 失礼しますゥ

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10133はじめまして♪神代 櫻 5/21-21:12
記事番号10110へのコメント

はじめまして。コメントどうもありがとうごさいます。

>とっても楽しいです
>文章力のない私には とてもうらやましいですゥ

文章力のないのは私もですよ・・・(T‐T)
もうラストなんてケッキョクなんだったんだ。みたいなモノになってますし

>実は 未来のリナちゃんとかゼロスくんと言うのがつぼでして・・・
>もーーーーーオールオッケーって感じです!

おお、そーですか。おーるおっけーですネ。
未来のお話は勝手に設定づくりがある程度許されるからスキです。
だってラクなんですもの。

>この小説に つずきってあるんでしたら
>「ぜひぜひ」
>載せてください

う゛・・・、すいません。ないです。書く予定もないし・・・。だって難しいんですもの♪(すいませーん、中途半端で)

>まじで ゼロリナ(ばりばりの)派ですーーーー!

いえい! ゼロスくんとリナちゃんさえ良ければ全て良しの私♪
これからも暴走しようと思いますわ。

それではでは♪