◆−こりてないし・・・(汗)−真人(4/23-00:01)No.9723
 ┣Ave Caesar,nos morituri te salutamus−真人(4/23-00:04)No.9725
 ┣Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜アメリア〜−真人(4/24-18:11)No.9746
 ┣Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜ガウリイ〜−真人(4/28-12:11)No.9776
 ┃┗Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜シルフィール〜−真人(5/1-18:18)No.9814
 ┃ ┗がんばってね−こびとさん(5/1-20:53)No.9817
 ┗Re:こりてないし・・・(汗)−千恵風味(4/28-22:09)No.9780
  ┗はじめまして−真人(4/29-23:20)No.9798


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9723こりてないし・・・(汗)真人 E-mail 4/23-00:01


御久し振りです。真人です。(…って、覚えてらっしゃる人がいるんだろーか…)
前回の恥を懲りずに、また書いてしまいました。

読んで頂ければ、嬉しく思います。

それでは。

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9725Ave Caesar,nos morituri te salutamus真人 E-mail 4/23-00:04
記事番号9723へのコメント

Ave Caesar,nos morituri te salutamus

プロローグ:魔を滅する者

「お一人ですか?」

 飄々とした、静かで甘い声が、天から降りてきた。だが、それは、この世に在ってはならないものだった。
さながら、赤く濡れる月が浮かぶこの夜のように。
 闇色の服。闇色の髪。闇色の男だった。
 何時からいたのか、何時のまにいたのか。彼は重力に逆らい、夜にとどまったまま、地上を見下ろしている。
その顔には、優しげな笑みが浮かんでいる。
しかし、決してそれは男の感情の発露によるものではない。
どれだけ窺おうとも、そこに何かを見出そうとするのは不可能で、また無意味な行為だ。
 言われた方---荒野中心に立っている少女は、そのことを知っていた。
 振り返り、天を見上げる。
 少女が常に身に纏っている黒い服は、自身が置いた五つの聖なる炎により、赤く照り映えている。
炎は静かに、だが、真っ直ぐに天を目指す。闇色の男を凝視める、彼女の赤い瞳のように。
「お仲間は、一緒ではないのですか?」
 男はもう1度聞いた。
「そんな野暮なことはしないわ」
 少女は笑った。当たり前だと言わんばかりに。
「…火の五紡星、ですか?貴方が、火のステータスだとは思いもよりませんでした」
 ゆうるりと、音も無く地上に降り立ち、辺りを見渡す。闇色の男も、赤く染まる。
「別に、理由は無いわ。でも、あたしらしいでしょ?」
 そうですね、と男は笑う。
 少女も笑う。

「…誰の命令なの?」

 暫しの沈黙の後、少女は尋ねた。
 命令?男は繰り返す。変わらぬ笑みに、感情が浮かんでいた。
 それは、恐らくは愉悦。彼女は続ける。
「知りたかったんでしょう?使いつづけるとどうなるのか、を」
「何の事です?」
 一陣の風が、二人の間を吹きぬけた。長く明るい髪が、白い顔に影を添える。
男は笑みを顔に貼りつかせたまま、彼女を見ていた。かつて共に旅をしてた時、そうしていたように。
「だから、聖王都を狙った。違う?」
 さあ、どうでしょう---
 男は、人差し指を口に当て、秘密と公言する時と同じ仕草をする。
「大いなる母であると同時に大いなる敵でもある存在…」
 かつて魔族をも恐怖させる存在を具現させた少女は語る。声は、風に乗って男に届き、紅金に燃ゆる炎へと去っていく。
「冥王の二の舞になるつもりはなかったんでしょ。その為には、詳しいデータが要る。けれど、今のところ、モルモットは一人だけ。だから、あんたに命令を送ったものは、あんたを再び地上に送りつけた」
「仰っている意味が分かりませんね」

「---そして、貴方は」

 少女は彼の言葉に構わず、続ける。

「---降魔戦争の再来を図った」

 男は語らない。事実にはあまり興味がなさそうだった。
実際、彼にとって、そんなものどうでもいいことだった。
「大したもののだわ、誰も知らないでいるのが、勿体無いくらい。
貴方以外の誰にもこんなに上手く事は運べないでしょうね。
嘘は付かないけど、本当のことも言わない。ただ、方向を指し示すだけ。後は皆が独自で判断し、動いている。
そう錯覚している。…本当はあんたの掌で踊ってるって事に気づかないまま」
 悪戯を見つけ出した子供のような表情で、少女は語る。
「…お褒めに預かりまして」
 とぼけても無駄だと思ったのか、肯定の言葉と共に優雅な動きで礼をする。
「…あんたはあたしに言ったわよね。あたしは仲間に対して筋を通すって。
この際事実はどうでもいいわ。問題は、貴方があたしをそういう人間だと思っていたというと
ことよ。だから---『ここ』を選んだ。必ず来ると思っていたから」

「それだけの理由で、ですか?少し無茶なんじゃないですかねえ」
 どのくらいの時間が経っただろうか。
 緊張感の無い男との声に、少女はその華奢な肩をすくめた。
 ---何言ってんのよ。場所なんて何処だろうと、あんたの手間は変わらないじゃない。
 それもそうですねと、苦笑しながら頷く。
「でも、勿論、それだけじゃない。ここに、それだけの技術を伝授するに足る知識と情報と、設備があると考えたから。そして、それを使う人間がいることも、ね。
あれほどではないにしても、ドラグ・スレイブあたりではどうか。また、容量が人間を上回る、竜族や妖精族
ならどうか……データは少しでも多い方がいい。貴方なら、そう思うわよね。
そして、たとえ適当な人材が見つからなかったとしても、少なくともここなら、代わりの人間は一人いる。
…彼女ほど使える人間なんて、それほど多くはないわ。捜す手間も省ける。まさに一石二鳥よね」

「…おや、全部分かっちゃってましたか」
 今度は、とぼけなかった。軽快とも呼べる態度で自分の杖を握りなおす。杖は、月の光を浴びて濡れたように光っている。

 それで---男は言った。
「その為に、そのことを言う為だけに、お一人でここに来たのですか?」
 彼女は何も言わない。男はそれを肯定と受け取った。だから、違う疑問を質問としてこの世に送り出す。
「僕が何も話さないとは、考えなかったのですか?」
「考えなかったわ」
 現にあんたは話したじゃない。
 自信に溢れた声に、男は苦笑した。彼が知ってる少女は、そういう人間だった。

「それで…?」
 今度は少女が語を紡ぐ。
「誰の命令で、貴方はこの騒ぎを起こしたの…?」

「…いいでしょう。今回の任務は獣王様より賜りました。でも、あの方の力を借り続けることによる変化を報告する。それだけです。
確かに、腕に自信がある方や、竜族や妖精族を集める為にここを選びましたが…貴方をどうこうしろとは言われてません」
「---向こうには、どれだけの戦力を出したの?」
「いやあ、大したことは無いですよ。はっはっは。」
 男が教えた数は、人間にとっては充分「大したこと」だった。

「あの程度で倒されるようなら---あの方の呪文を御するなど無理なことです」

 ふうわりと。男は再び宙に浮かぶ。

 どこへ行くの?---少女の問いに男は彼女に瞳を向けた。帰るんです。
「ばれてしまっていては意味が無いですし…また、作戦の練り直しです」
 大仰に肩を竦める。
 
 それとも---

 矢張り変わらぬ笑みのまま男は続けた。再び、地上に降り立つ。
「無関係な人達を巻き込んだのが許せない、とでも仰いますか?」

「そうね」

 返って来た予想外の少女の言葉が男の動揺を誘った。
 彼女は、本気だった。
「---その台詞は、貴方らしくはありませんよ」
「…そうね」
 努めて平静に吐いた男の台詞に、少女は苦笑を浮かべる。その通りだったからだ。だが、彼女は引かない。赤い瞳は尚、男を捕らえて話さない。
視線とは、常に受け取る側のものだ。その話しを、男は何処で聞いたのだろうか。
 彼にとっては意味を持たないものだった。何故なら、彼に『視線』などというものはない。

 だが---

「…やり過ぎたのよ…貴方も---あたしも」
 寧ろ淡々と語を紡ぐ瞳を前に、彼は動けないでいた。
 彼の記憶にある話しが事実なら、彼女が捕まえているのではない。彼が囚われているのだ。

 この、小さな存在に。
 ただの、人間の少女に。
 それは、男にとって大いなる屈辱であった。
 そして、同時に待ちわびていたものでもある。
 そんな自身の感情に、男は戸惑ってた。この揺らぎを、目の前の少女は知っているのだろうか…?

「…勝てると、思ってらっしゃるんですか?」
 彼は、最後の虚勢を口にした。
 認めることは、存在すら危うくする。…だから、認めては、いけない。
「ここで、貴方の力が最大限に発揮されるとも思いませんが?」

 さあ、どうかしら?---赤く大きな瞳を細める。その仕種は男に猫を連想させた。
自由で誇り高く、何物にもかしづかない、そんな美しい猫を。
 だが、この猫には大きな爪がある。
 今迄に、彼女を見くびり、幾つもの闇が引き裂かれているのだ。

 ---そう。彼よりも強い存在ですらも。

「やってみなければ、分からないわ」

 そして---沈黙。
 炎がさらさらと天へ昇る。そして、再び地上から生まれ燃え上がる。

「…貴方は…」
 男の唇が、左右対称に吊り上った。
 躊躇の後の感情は、ひどく、満足そうだった。
 分かったのだ。望んでいたのだ。心の底から。それが、たとえ存在を危うくさせようとも。

 この瞬間を。

 この人間の女と、戦うことを。

「本当に、貴方は、人間にしておくには惜しい存在ですよ」

 彼が贈る最高の賛辞---それが、合図だった。


 ……後の第2次降魔戦争---聖王都の戦いと呼ばれる---は、歴史では
朝日と共に始まり、数日の時を経て終結されたと記されている。魔族との戦いにしては、異例の期間である。
 長くなればなるほど、多くの犠牲が生まれる。その法則はここでも揺るがず、最後に残ったのは、ほんの僅かな数だったという。
 多量の生命の上に培われた、人間と竜と妖精の勝利。
 
 陣頭に立ち、指揮をしたのは人間だった。聖王都の第2王女。
 彼女の周囲には、かつて彼女と旅をした、金髪の青年剣士。
 呪術により、その身を変えられた魔剣士。
 神官服を身に纏う、長い黒髪の魔法医。
 そして、異なる地より訪れた黄金竜がいた。
 後世、聖王都の英雄と称される者達である。
 
 だが、この戦いにおいて、最も詠われる英雄歌は、彼らのものではない。
 歴史に残ることなく消えた一人の魔道師……それ故に人々は彼の者を崇め、口にする。それは、時に悲しく、時に滑稽に、多くの者の口の端にのぼり、消えていく。

 彼の者が遺した業績の大きさも、知らないまま…


 ---真実は、赤い月が輝く深夜。聖王都から少し離れた荒野に在った。
降魔戦争は、赤い瞳の黒魔道師と神官の姿をした魔族による戦いで始まり、
そして、それが終わった時、終わったのだ。

 魔を滅する者---その伝説だけを残して。


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9746Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜アメリア〜真人 E-mail 4/24-18:11
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Ave Caesar,nos morituri te salutamus

アメリア:正義日記

 ……強大な悪が動いている……

 私の正義の勘がそう告げたのは、それほど前のことじゃあありませんでした。

 それに伴って、各国の間で、魔族の噂が広まったんです。
 大体はブラス・デーモンでしたが……頻繁に出没しているんです。しかも、かなりの広範囲に。

 それから程なくして。セイルーンにも魔族が現れました。ゼロスさんほどではないですが、
かなりの強さです。私とシルフィールさんの手によって、悪は潰えましたが、決して油断ができる相手ではありませんでした。

 私は感じました。何かが『ここ』で動くのだと……
 そして−−−
 
 何らかの形で、リナさんが関わってくるだろうと…

 −−−リナさん達が、セイルーンに来たのは、風が強い朝のことでした。

 セイルーンに来るまでの間、リナさん達の所にも、魔族は何体も現れたそうです。
そして、その全部に正義の鉄槌を下したとのことでした。
「魔族達の目的は、多分…」
 降魔戦争を再び起こすこと−−−

 やっぱり、そうだったのです!! 私の正義の心は正しかったわけです。リナさんはとーさんに向かって続けました。
「ここに来る前に、龍族や妖精族に、協定を持ちかけてみたんです。ちょっと、強引な方法でしたけど。
もし、セイルーンに戦う気があるのなら、彼らと手を組んでみませんか?」
 とーさんに、勿論異存はありません。
 早速話し合いの場を設けました。私とリナさん達、それからごく少数の兵を連れて。
 正義に燃える心は、種族の違いすら粉砕します。こうして、私達は、厚い友情により、結ばれたのです!

 それからは、忙しい日々が続きました。悪を絶やすためにしなければならないことが沢山ありました。
リナさんにガウリイさん、ゼルガディスさんは、それぞれ対魔族戦の講師を。
それに加え、ガウリイさんとゼルガディスさんには、それぞれ隊を率いてもらうようにしました。
リナさんは、総指揮に参加しました。
そして、ガウリイさんは私に、ゼルガディスさんはシルフィールさんの護衛に付くことになったんです。
リナさんの発案でした。
「あたしの黒魔法は、セイルーンではあんまり役に立たないのよね」
護衛のことでは、ガウリイさんが少し不思議そうにしていました。
私もそう思いました。勿論皆も。理由を問う私達に、彼女は肩をすくめてそう言いました。
「…フィルさんには、十分な護衛をつけるわ。ミルガズィアさんとかもいるしね。
アメリアには今回、旗の役目をしてもらうつもりだから…」
「旗?」
 リナさんはこくこくと頷くと、びっ!と人差し指を立てる。
「さて問題です。国王とはいえど、中年のおっちゃんと、性格はともかく可憐な姫君。国民はどちらを崇拝したいと思うでしょう?」
「なるほど、な」
 ゼルガディスさんが、うなずいたので、つい私も納得しかけましたが……
「リナさん、性格はともかくって、なんですか!?ともかくって!?」
「気のせいよ!」
 言い募る私に、きっぱりはっきり言って、話しを続けるリナさん。
「心配するな、アメリア」
 ガウリイさんが優しく言葉をかけてくれます。
「お前さんがどんなでも、リナよりはましだから」
 慰めになってません!!ガウリイさん。
 そういう前に、ガウリイさんのこめかみにリナさんのエルボーが炸裂しました。ガウリイさんは沈黙しました。
「それに、魔族はとーぜん、補強部隊を破壊することから考えるでしょ?こちらとしても、『復活』の呪文が欠けるのは痛いし…」
「お前はどーするんだ?リナ」
「んー?今回、あたしは役立たずの部類だしね。ま、兵士達に呪文のレクチャーと、それから、対魔族用のトラップでも
考えるわ。フィリア達とも打ち合わせしなきゃならないし」
 憂鬱そうに言うと、ひらひらと手を振りました。
「まあ、お前さんが大人しくしてるってえ言うのはいいことだがな」
「同感だ」
「そうですね」
「皆さんのご迷惑にならないようにしてくださいね」
「そうですよ。いきなり暴れ出したりしてはいけませんよ」
「あんたらなあーーー!!」
 私達の励ましの言葉に、しかし何故か声を荒げるリナさん。
「ま。けっこーやることあんのよ。あたしも」

 …リナさんが言ったとおり、それから、彼女とゆっくり顔を合わせることは殆どありませんでした。
会議や、特訓や、作戦を立てたりで、リナさんはセイルーン中を文字通り飛びまわっていました。
彼女が講師として、軍師としても一流であることは、、何日の間にはっきりとしました。魔道士達はどんどん上達していきました。
「凄いですね……」
シルフィールさんが呟いた言葉に、リナさんは胸を張って答えました。
「ふふん。まーねー!」
 ……いつものリナさんでした。
「でも、これじゃあ魔族には勝てないわ……」
 羊皮紙を広げて、細い指を顎にかけて考え込む。そんなリナさんに、将軍の一人が話し掛ける。顔を上げて一言二言言葉を交わし、
また、書類に目を向ける。
 そんな日々が続いて---

 いつのまにかリナさんは、セイルーンになくてはならない人になっていました。

 そして−−−
 あの日。降魔戦争が起こる前夜。
 久し振りに私達はゆっくりとお茶を飲みました。全員が揃ったのは、リナさん達が来てから、ほとんどありませんでした。
他愛のないお喋りをしました。悪との戦いのことなど忘れたかのように。何を話したかも覚えてないくらい些細なことを。
 旅をしている時に戻ったような錯覚を受けました。
 楽しくて、皆で笑って……
「さて、と」
 リナさんが紅茶のカップを置いて、伸びをしながらいいました。
「もうそろそろ、交代の時間までの仮眠をとっておかなくちゃ」
 時間になったら起こしてね…彼女の言葉に、ゼルガディスさんが、ああと返事をする。
 リナさんは、すれ違うとき、ゼルガディスさんの肩を軽く叩いて、扉に手をかけました。
 
 その姿がなんだか−なんだか、とても儚げに見えて−−
 だから思わず…

「おやすみなさい」

 私が声をかけると、リナさんは……

 リナさんは。

 ゆっくりと振り返り−−−

 そして。

「Ave Caesar,nos morituri te salutamus」

 部屋中に響き渡る声で、そう、言いました。
「?なんて言ったんです?」
 私には分かりませんでした。他の人達も同じだったようです。
 
 でも、リナさんは答えませんでした。
 微笑んでいました。なんだか、深い、でも凄く透き通った、とても綺麗な微笑でした。
それから、いつものようにウィンクをひとつ。
 そのまま、部屋を出ていきました。

 私達は、暫く動きませんでした。

「…何処かで聞いたような気がするんだが…一体何処だったか…」
 ゼルガディスさんの呟きだけが、静かに、室内に降り積もっていきました。

 そして、これが−−−
 
 私達がリナさんを見た最後、でした。

 悪は滅び、正義が勝利を勝ち取りました。
 それは、辛く困難な道でしたが、大丈夫です!正義は必ず勝のですから!
皆、喜んでいました。笑っていました。そのために、生きていたのですから。
 でも……

 …そこにも、リナさんはいませんでした。

 セイルーンの外れの荒野に、巨大なクレーターがあるのが発見されました。
 調査に向かった兵士が、何かを持ちかえってきました。
 見たことが、あるものでした。

 それは。

 赤い紅い。

 あの人の瞳を思い出させるような……

 ジュエルズ・アミュレット−−−


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9776Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜ガウリイ〜真人 E-mail 4/28-12:11
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Ave Caesar,nos morituri te salutamus

ガウリイ:保護者の日常

「リナ=インバースがいると、聞いたんだが…」
 俺は、目の前に立つ、男に声をかけた。40ぐらいの中年のおっさんだった。 
「馬鹿か!おめえは!!」
 おっさんが呆れたように言う。その表情が、被保護者のそれに良く似ていた。
「目の前にいるだろうがっ!!」
「……どこに……?」
「分からなきゃ教えてやる!俺様こそリナ=インバー…」
 はーーーーーーーーっ。
 最後まで聞く気分じゃなかった。
 げし!!!
 小気味良い音を立てて、「リナ=インバース」の顔に俺の蹴りが入った。
 
 おれはもう1度ため息をつき、今きた道を引き返す。
 いったいどれくらいこれを繰り返しただろう?
 
 リナ---お前さん、けっこー有名人だったんだなあ。
 もう、数え切れないくらい「リナ=インバースの墓」を見たぞ。
 もう、忘れてしまうほどたくさんの「リナ=インバース」に会ったぞ。
 他にも、「リナ=インバースの書」や、「リナ=インバースが壊した建物」…死ぬほどあって、うんざりするぞ。
 でも、それは、みんな嘘だった。
 …もしかしたら、建物はあってるかもしれんけど。

 なあ、なんでお前さん、俺をおいて行った?
 お前が自分で戦いに臨んだ様に、俺はとことんお前に付き合うって決めてたんだぞ?
 それは、俺の意志だった。
 だから、どんなに危険な時でも俺に「来るな」とは言わなかったよな?
 そう言うのは俺の意志を無視する事だって知ってたから、お前さんは言わなかった。
 俺は役に立つだろう?あの戦いでも、役に立ったはずだろう?
 なのに、どうして一人で行ったんだ?
 
 セイルーンへ行く前から様子が変なのは知っていた。
 魔族はひっきりなしにお前さんを狙ってきたよな。
 それからだった。やけに熱心に稽古するようになったのは。魔法だって、前なら「こんな地味なのヤダ!!」とか言ってドラグ・スレイブ
ぶちかましそうなものまで研究してた。
 そして、あれに関する呪文を使わなくなった。一番強くて、一番お前さんらしい魔法だったのに。
 …あんまり、笑わなくなったよな。
 でも、なんにも言わないでいるから、俺はまたなにか考えてるんだろーなと思ったから、
そのまま聞かないでいたんだぞ?
 結局、最後まで言わなかったな。
 聞いてきたのは、全然別のことだった。

---…ねえ
 ちゃんと覚えてるぞ。俺の頭は、誰かの胸とは違うからな!
---ねえ、ガウリイ。
 お前はいつものように、俺を呼んだな。でも、いつもとは随分と違ってた。なんか、不安そうだった。
でも、そういうと、お前はすっげー怒るだろうから、だから気づかないフリをしてやったんだぞ。
---あたし、変わった…?
 …どこが?って、俺は答えたよな。
 どうして、あんなこと言ったんだ?お前さんは間違い無くリナ=インバースだぜ?
 初めて会った時から、お前さんはリナ=インバースで、どんな時でもそれは変わらなかったぞ。
 ちょっくら違う気配をするようになったって、雰囲気が多少変わったって、お前さんがお前さんであることに変わりは無かったんだ。
 でも、お前さん、俺の言葉に懐からスリッパ出したよな?
---このくらげ!!
 …不思議だったんだが…あのスリッパ、どうして毎回違うんだ?毎回盗み変えてるのか?本当に、油断もスキもないな。
 よけないで、当たるのは、けっこーいてーんだぞ。知ってたか?スパーンって、盛大な音がしたからわかるだろ?
でも、その時は我慢したんだ。お前さんが、なんかうれしそーだったから。ま、いっか。そう思ったんだ。
その程度で喜ぶなら、いくらでも言ってやるさ。
 ---けど、本当に、あれは、嘘なんかじゃなかったぜ?
 
 ---…それに、今も変わらないんだろう…?
 あの程度のことで、くたばるはずは無いだろ?
 お前さんが、魔族になんぞやられるタマじゃないってのは、旅をしてきた俺が一番良く知っている。
 どうせ、どっかで盗賊いぢめをやって、その宝を見て喜んでるんだろう?
 よっぽどいいモンなんだろうな。帰ってこないくらいだもんな。
 …それとも、どっかで迷ってんのか?
ああ、そうか!俺のこと、いつも馬鹿にしてるから、バツが悪くて帰ってこられないんだろ。

 ほんとに、お前は俺がいないとどうしようもないよな。
 しょうがないな。捜しに行ってやるよ。
 なにせ俺は、お前の『保護者』だからな!!


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9814Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜シルフィール〜真人 E-mail 5/1-18:18
記事番号9776へのコメント

Ave Caesar,nos morituri te salutamus

シルフィール:逝く夏

 あの日々のことは、今でも忘れない。
 まるで、足早に通り過ぎた夏のような時間。
 私達は戦っていた。
 目標は厳しく日常は辛いものだった筈なのに、
 思い出はいつも明るく、輝いている。

 光沢のある青色の鎧。唸りをあげる光の剣。
 銀色に輝く髪。思ったより温かい手。
 白くて小さな、でも力一杯握り絞めてる拳。元気良く弾む声。
 そして、視線の先にいつも笑う赤い瞳。

 絶望というものを知らないのだろうか。
 彼等はいつも笑っていた。
 魔族に狙われ、死と隣り合わせの日々。
 私は仲間だったのだろうか。
 そんな不安にかられると、リナさんは何を言っているのかと笑った。
 そんなの、当たり前じゃない…
 私も笑っていた。
 沢山のものを失い、独りになって。
 でも、独りじゃなかった。だから、再び前を向くことができた。
 
 私達は、些細なことで笑い、怒り、泣いて…
 そんな当たり前のことが、酷く眩しかった。

−−−眩しくて、眩しくて、他に何も見えなくなるほど……


 旅を終え、セイルーンの伯父の所で神官として日々を過ごしていたある夜のこと。私は得も知れぬ恐怖を感じた。言葉に出来ない恐怖。
 ベッドから飛び起きた私は、自分を抱きしめながら夜明けを待った。
 歯の根が合わない。耳障りな音を立てている。
 もう眠れそうに無かった。
 私は夜が明けることを切実に祈った。
 一番に、城へ行こうと思った。彼女なら分かってくれる。そう思ったのだ。

 アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン。

 この国の第二王女であり、巫女の力を秘めた少女。彼女に伝えなければならない−−−

 私は夜明けと共に伯父の家を飛び出して、城へと向かった。入れてもらえるなんて思っていなかった。
 けれど、門番にあっさり通してもらえた。理由を尋ねると、そのように命令が出ていたのだという。
「もし、シルフィールという黒髪の女性の方が見えたらお通しするようにと。」
 その命令を出した人は聞かなくても分かっていた。私が会いたかった相手。
 通された部屋はアメリアさんの自室だった。
「シルフィールさん」
 話しを誰にも聞かれたくないのだろう。彼女は兵を下げ、私を椅子に勧めると、自らお茶を淹れてくれた。
「あれに、気付いたんですね?」
 私は頷いた。
「…リナさんに、関係してるって思います?」
 彼女は、何度も逡巡した後、そう聞いた。
 私は答えなかった。彼女も2度とは尋ねなかった。それは、予感していたことだった。

 かつて、世界の危機を感じたことがある。その渦中にいた少女。
 リナ=インバース。
 彼女は規格外の存在だった。

−−−何言ってんのよ!あたしはふつーよ!ふつー!
 もし、私がそう思っていると知ったら、彼女はこう言うだろうか。
 それとも、
−−−あったりまえじゃない!あたしを誰だと思ってんの!?天才美少女魔道士リナ=インバースよ!
 胸を逸らして、自慢するだろうか。

 どちらにせよ、私のこの認識は誤りではない。
 脅威の性格。脅威の頭脳。そして、脅威の魔術(但し、背と胸は標準以下)−−−

 彼女は、あまりにも、違う存在だった。強大な魔力を持っていた。
 それ故に、魔族に狙われたのだ。

 そして、今度も多分………
 私達はそう確信した。

 だが、それは誤りのようだった。
 魔族は、リナさんではなく、『人間全体』を攻撃してきたのだ。あちこちで被害がうなぎ上りに上昇し、やがて聖王都にも被害者が続出した。

 そして、とうとう、王宮にも現れた!!
 魔族は、蒼く、透き通っていた。形は、人と言うより獣人のようだった。
まるで人形のように、外側だけをなぞった獣人。

 手ごわい敵だった。
 宮廷魔術師の手も借りて、私とアメリアさんでなんとか滅ぼすことができたが、
こちらも無傷では済まなかった。

 戦いが終わると同時に、思い知ったことがあった。
 この勝利は、これ以上の魔族の攻撃があった場合、国としては対応できないことを証明したに過ぎない。

 国民に不安が広まり、国は混乱した。

 幸い逃げ出そうと言うものはいなかったが、それにしても、別に愛国心などからではなく、国外に出ても安心できると言う保証がどこにもなかったためだ。
 緊急に各国で同盟が結ばれた。フィリオネル殿下は、王代理として、国務をこなしていらっしゃったが、さすがに疲労は隠せなくなっていた。別にフィリオネル殿下だけではない。どの国でもそれは同じだった。
「リナさん達に」
 私や伯父さん、その他の幾人かの側近の方々が謁見の間に呼ばれた時のことだった。 これからどう行動するか。それは、難しい問題だった。私達は何も言えなかった。
 沈黙が続き、やがてぽつりとアメリアさんが言った。
「リナさん達に連絡を取ってみます!!」
 私達は、それが一番の策だと思った。
この世界でガウリイ様達より魔族と戦った人間などいないだろう。
 それに、何より、私は逢いたかったのだ。ガウリイ様に。たとえ、この想いが
報われないものだと知っていても…
 私達は頷き合い、彼らに連絡を取るために行動を起こした。

 −−−私は−−−私達は忘れていたのだ。あの時の予感を。
 魔族があちこちで人を襲っていたから、今回はリナさんとは無関係
だと思ってしまったのだ。だから、彼女を呼ぶことを躊躇いはしなかった。

 それが、どういう結果を招くかを考えることもなく…・・・

 そうして、始まったのだ。
 終わりの始まり。始まりの終わり。
 リナさん達が、セイルーンに最後に来た時。

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9817がんばってねこびとさん E-mail 5/1-20:53
記事番号9814へのコメント

だんだん読みやすくなっているみたい。
がんばってね。


姉という名のこびとさんより。

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9780Re:こりてないし・・・(汗)千恵風味 E-mail 4/28-22:09
記事番号9723へのコメント

こんにちわ。はぢめまして、千恵風味と申します。
読みました。

うひゃ〜ぁ〜〜 ←一読した拙い感想

なんか、悲しかったです。ぐすん。
リナの行動も、
アメリアの考えも、
ガウリイのいる位置も。
そしてきっと、ゼロスやゼルや、シルフィール、フィリア、フィルさんたちも。

リナが決める。
リナが決心する。
そのことをガウリイは知っていたら、咎めていたでしょう。
でも、最後にはリナの好きなようにさせる人だと感じます。
なにも言わず、尋かなかったガウリイは、リナを捜し続けるのでしょうか?
リナが選ぶ。
アメリアは悲しむだけではない、強い人だとおもうけど、
リナの変化を見落とした事に、苦しんだりしませんよね?
ゼルも、気づきながらも判らなかったことに、自分を責めたりしませんよね?

リナは、厄介事を追っ払うのではなく、立ち向かうひとですよね、
自分のしたことを、後悔したりしない。
リナのステータスは、炎のほかにないでしょう!




リナがいなくなり、伝説となる・・・・。は、悲しすぎ!
スレイヤーズの最終章を飾るデモン・スレイヤーズのラストページは、
未来に希望が持てるような、Happyなってほしいです。

ごめんなさい、感想っぽくないですね。
でも、もしまだ誰かのバージョンがあるんなら、読みたいなと思って書きました。

でわ。。。。 千恵





>
>御久し振りです。真人です。(…って、覚えてらっしゃる人がいるんだろーか…)
>前回の恥を懲りずに、また書いてしまいました。
>
>読んで頂ければ、嬉しく思います。
>
>それでは。

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9798はじめまして真人 E-mail 4/29-23:20
記事番号9780へのコメント

 はじめまして。真人と申します。

 私の拙い話しを読んで頂き、更に、
素晴らしいコメント有り難う御座います。
 御察しの通り、まだ、別の人から見た話しがあります。
 続きも順に書いていくので、読んで頂けたら凄く嬉しいです。
 コメントを頂けたら、月まで飛んでいく事でしょう。
 
 これからも宜しくお願いします。
 それでは。真人でした〜♪