◆−TEAR〜涙−CANARU(4/21-18:32)No.9701
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   ┗みょ〜〜♪−CANARU(4/24-09:08)No.9744


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9701TEAR〜涙CANARU E-mail 4/21-18:32


『TEAR・・・・・・・・・。』


「レクイエムを書いてくださいませんか?」
奇妙な依頼・・と言えば奇妙な依頼である。
「何でよ・・・?」
この分野は・・リナの仕事ではない。
が、その人物はそんな怪訝そうな彼女の表情にひるむ事知らない。
「リナルド殿の妹様にしてガウリイ殿の恋人、貴方以上に相応しい方は居ません。」
一応『使者』と呼ぶとしよう。
彼はリナにさっさと紙とペン・・更には金貨まで押し付ける。
「ちょっと!!」
困るわよ・・・言いかけたが言葉がコレ以上は出ない。
「ど〜するんです?リナさん・・・。」
確かに・・楽器を奏でさせればこの宮廷でリナの右に出る人物は・・。
只一人、兄のリナルド卿を除いては存在しない。
「作曲と言う分野も・・・・。」
もとはといえば・・兄の専門しているものなのである。
「まったく・・よりによって依頼がレクイエムとは。最悪な依頼だな。」
ゼルも呆れ顔でリナが抱え込んだ仕事と紙を眺めながら言う。
「はあ・・・・・・・。」
まったく。
兄と自分の音楽の才能に遠慮してだろうか・・・。
肝心な人物からのそういった『贈り物』は貰っていないのだ・・・。

そう。
あれは今から数年前の事である。
「シャルルマ―ニュ様(カール大帝)のお帰りだ!!」
「サラセン人との戦いに勝利してイスパニア(スペイン)からのお帰りだ!!」
神聖ローマ帝国内は偉大なる国王の勝利の帰還に沸き立っていた。
人込みの流れに何とか立ち止まってリナとアメリアも国王と側近の行列を
何とか眺めようとする。
「リナさん!!花びら捲きませんか?」
アメリアが嬉しそうにリナを促す。
「うん・・・・。」
だが・・リナは上の空である・・・・。
あの約束を・・・果たしてくれるのだろうか?
いや・・熱烈に望んでいると言うわけではない。
だが・・十三歳をようやく過ぎたばかりのリナには・・そのような言葉を
かけられた初めての事だけに僅かに浮き立っていた。
そんなこんなの事を思い浮かべているときだった。
不意にふっとシャルルマーニュ皇帝自身がリナの前で馬を止める。
「あ・・・・・・。」
いけない・・と思いながらリナは大急ぎで腰を屈める。
「構わない。」
皇帝は片手でリナをそのままの姿勢で居る事を促す。
そして・・・・。
「『あの男』からの約束の品だ・・・。」
大帝自身、感情を押し殺した声で呟く様に言い・・リナに銀色の指輪を手渡す。
「・・・と・・言う事は・・・。」
聞くまでも無かった。
そう・・こんな形で約束は果たされたんだ・・・。
ハッキリ言って『そんなものかな』くらいの感慨しかない。
そう・・これが・・数年前の今日の出来事。

「今日で・・・何年経つかしら。あのサラセン人との勝利の凱旋から。
あの時の記念で今日は馬上試合を大帝の家臣団がするのよね?」
アメリアにリナが問いかける。
「そうみたいですね。王様の甥のオルランド様もあの時の戦いで・・・。
殿をして・・亡くなりましたけどね・・。」
「そうね・・・・。」
そうとしか言いようが無い。
「リナ〜〜〜!!」
不意に背後から声が聞こえる。
来た来た・・・リナのもう一つの頭痛の元凶である・・・。
「・・・ガウリイ・・・・。」
オルランドの弟にして・・・更に言えばシャルルマーニュのもう一人の甥・・。
リナに気があるのだか無いのだか・・・。
今一つハッキリしないこの男・・。
「ガウリイ・・・・。」
はあ・・。この男の数々の気を持たせるような幻滅させるような行動。
その数々を思い出しながらリナはその人物の名前を呼ぶ。
「おお〜♪気をつけなくちゃ駄目だろ〜〜ったく。子供だな。」
言いながらガウリイはリナの捻じ曲がったリボンを直す。
「馬鹿にしないでよ!!」
怒りながらリナはガウリイの手を払いのける。
「で・・その勝利祈願の品々は?」
ガウリイの腕に2〜3括りつけられたハンカチやリボンを眺めながら
ゼル。
「ああ・・。ご婦人方が貸してくれた。まあ・・断るのも悪いし。じゃ、お嬢ちゃん
のこれも借りるね。」
言いながらリナのリボンをさっさと強奪するガウリイ。
「別に・・。一番安物でど〜でも良いやつですから。ご自由に。」
この男・・・。
先日競技大会に優勝した折・・リナに「花冠」を捧げたのだ。
無論・・勝利者が恋人に捧げるのがセオリーなのだが・・・。
それ以降・・めっきりそんな素振りは見せず・・子供扱い。
「ガウリイさん・・・。リナさんじゃなくっても怒りますよ。普通・・。」
機嫌のとことん悪いリナをコソコソ見やりながらアメリア。
「へ。何で?まあ・・競技は見に来るだろ?お嬢ちゃん。」
「知らない!!アタシは今から『レクイエム』を考えなくちゃ行けないのよ!!
このお気楽クラゲ!!もうほっておいてよね!!」
さしものガウリイも呆然とする勢いでリナは言い放ちながらその場を離れるのだっ
た。


「ったく・・・。腹立つわね・・もう・・・。」
レクイエムも・・考えなくてはならない。
こんな物まで渡された・・・・。
そう思いながらリナは・・指には決して填める事の出来ない銀色の指輪を眺める。
「これは・・これは・・。リナルド殿の妹の・・。」
人の居る所からは離れたつもりだったのだが・・。
「リナです。」
近寄ってきた人物にリナはきっぱりと言い放つ。
「何のようなの?ガヌロン殿?」
シャルルマーニュの家臣の一人・・ガヌロンである。
「まったくもって・・。ガウリイ殿と言い・・オルランドのと言い
訳のわからないご兄弟ですな・・・。」
どうやら・・ガウリイとリナの駆け引きは世間の噂になっているというのも
あながち嘘ではないらしい。
「放っておいてください。」
文句でかわすしかない。
「なに・・。ちょっとこの飲み物を・・ガウリイ殿の杯に入れれば・・
済む事ですよ。」
言いながらガヌロンは強引にリナにコビンを一つ手渡す。
「・・・これは・・・・??」
「まあ・・本音を明かさせるくすり・・とでも言っておきましょうか・・?
レクイエムの製作・・頑張ってください。」
そうとだけ言って去って行くガヌロン・・・。
「・・・コレ以上・・変なのが出てこられても困るわね・・。」
そうとだけ言ってリナはしょうがなくアメリア達の待つ会場に戻る事を決意した。

「リナさん!!何処に行っていたんです?」
アメリアがリナの姿を見かけるなりにそう言って駆け寄ってくる。
「ああ・・アメリア。ちょっとね。」
そうとだけ言ってリナはコビンをカウンターに置いてさっさとアメリアとゼル
の傍から離れる。
この二人と一緒に居れば何時ガウリイと顔を合わせてもフ不思議は無い。
先ほどのこともあり・・そして今までの事もアリ・・。
あまり顔を見たい気分ではない。失礼な言い方かもしれないけど・・・。
そして、リナが立ち去った丁度その時だった。
「アメリア、準備できてるか?」
不意に顔を覗かせ、アメリアとゼルに何やら問いかけるガウリイ。
「もう!!ガウリイさん!!しかしかしないから・・。リナさん・・。
とっととそっかに行っちゃいましたよ?はい。出来てます・・・。」
何故か彼女がむっつりとした表情でアメリアがガウリイに言い・・・。
グラスに入った冷たい飲み物をお盆に乗せながらガウリイに手渡す。


「諸君!!乾杯だ!!」
シャルルマーニュ大帝の取る乾杯の音頭すらリナの耳には褪せたものに聞こえる。
腹立たしさか・・・・それとも・・・。
「まあ・・良いわ。アタシはガウリイじゃなくて・・・。」
兄のリナルドを応援しに来たの・・・・。
リナがそう言おうとしたその矢先だった・・・。
ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!

やおら大帝が杯を取り落とし・・・・。
「アメリア・・・・・???」
「違います。ココにあったコビンのお酒を・・・。入れたら・・・。」
「毒だったと言うのか???」
不意に聞こえるガウリイ、ゼル、アメリアの声・・・。
「これは・・俺が用意した酒瓶じゃないぞ?」
ガウリイが不意にアメリアの指差したコビンを見ながらそう叫ぶ・・・。
「・・・・・。アタシが。持ってきたの・・・。」
このままではアメリアかゼルがガウリイに疑われかねない。
国王を毒殺しようとしたなんて事になったら・・・・。
「リナ・・。これを・・これを・・何処で手に入れた?」
何時に無く・・刺すような視線でガウリイ・・・。
「・・・どう言う事よ・・・。」
何故ガウリイが『手に入れた』と言う事を知っているのだろう?
「・・・・。オルランドが・・兄が戦死したと言うのは・・・。
真っ赤な嘘だ。殺されたんだよ。この毒にな!!」
吐き捨てる様にガウリイは言う・・・。
「・・・・真坂・・ガヌロン卿が・・・・・・・・???」
そう。このビンをリナに渡した人物・・・。
「そうか・・・・・。」
言うが早いかガヌロンに向かって剣を差し向けるガウリイ。
「そうなんだな・・・?貴様!!」
静かだが・・絶対的な怒気をはらんだ声・・。
「・・・そうだ・・・。」
のどもとに剣を突き立てられそう辛うじて答えるガヌロン。
「何故だ・・・・・・・・・。」
ガウリイの声に・・もはや怒り以上の感情は無い。
「俺が狙ったのは貴様だよ!!ガウリイ!!」
もはややけっぱちとでも言った感覚でガヌロン・・・・。
「そのようだな・・。俺と・・兄・・共通している事は・・。」
言いながらガウリイは深く・・溜息をつき・・さらに続ける。
「お前も・・『その事』が共通していたとはな。正々堂々としろ・・
などと格好をつけた事を・・俺も言えた立場ではない。」
そう。この男が『そう』しなかったら。自分も兄に対して同じ事をしたかも
しれない・・・・そんな恐ろしい考えが時々ガウリイの脳裏にも存在していたのだっ
た。
「罪は・・償うんだな。」
そうとだけガウリイは言い・・後は衛兵達の手にゆだねた。

「リナ・・・国王は・・・・?」
「・・・辛うじて・・でも・・・毒が回るのが・・。」
早すぎる・・・・。
「何か打つ手は・・・・。」
ふっと兄が以前から言っていた言葉を思い出す。
『指輪を・・・・・・』
「リナ!!もしかして・・ルビーのついた指輪・・持ってないか?」
兄がコレを使うまもなくあの男の手にかかったことは想像にかたくない。
「ええ・・・・。」
そう。
『生きて帰ったら。貴方にコレを私自身が手渡します・・。』
出陣前に・・オルランドが笑いながらリナに言った。
そして・・リナはそれを・・鮮やかさに魅せられてのみで・・快諾してしまったの
だ。
そう、ガウリイと・・ガヌロンの目の前で。
「ごめんなさい・・・・・。」
もしかして・・ガウリイを推し量る様にやってしまった・・快諾だったのかもしれれ
ない。
視線が痛い。責められているのではないが・・言葉よりも・・・。
「リナ・・。今は・・大帝を・・。」
「・・・・・・・。」
手渡されるリナの・・いやオルランドのルビーの指輪。
その石の部分を試しにガウリイは触れてみる。
やっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「安心しろ、リナ。予想通り、兄上の解毒剤が入っていた!!」
そうとだけいい、ガウリイはリナにオルランドの指輪を手渡す。
そして・・リナはその指輪を・・・何も言わず・・抱きしめる。
「リナ・・・・・・・・・・・。」
「・・・・思い出に・・変わるまで・・・。」
言ってもはや単なる飾りと化しただけの指輪をリナは思いっきり遠くへ投げ捨てた。


「レクイエムの必用は・・もう無かろう。」
回復した大帝がリナとガウリイを呼び出しそう告げたのはそれからしばらく
してからの事だった。
「はい・・・。」
そう・・・・。何も言わないで、指輪にだけ永い口付けして。
「もう・・振り返りません・・。確かに・・今までガウリイを推し量るような
真似を・・数々してきましたけど・・・。」
ソレでも・・何とか成るような気がしていたのは・・甘かったかもしれない。
それゆえに・・生んだ悲劇。
「俺も・・・・。もう・・・。」
悪ふざけでリナを怒らせるような真似はする必要は無くなったのだ。
「そうだな・・・。」
これは・・オルランド自身も判っていた結末だろう。
「これからは・・。二人で未来に歩き出す。それだけです。」
ガウリイが確信を持って言った・・・・。
「それが・・・。」
何よりものオルランドへの贈り物だろう。
『使者』が大帝であった事は最初から見ぬいていた。
それが・・知られざる伝説の一部の様に当のシャルルマーニュ本人に知られることは
決して無いのだが・・・。
そう思いリナとガウリイはあるがままに微笑むのだった・・・。


(お終い)

ははははははは・・・・。
突破なだけあって腐ってますね。
『LAST TEARS』良い曲だ〜〜!!
しかし・・何故にシャルルマーニュ伝説・・?
ココには出なかったけど『リナルド』はこの伝説に本当に出てきます。
『リナ』に反応して通り名だけ出しました!!では!!



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9702PRECOCIOUS or YOUTHCANARU E-mail 4/21-18:33
記事番号9701へのコメント

「LAST TEARS」に引き続き「37℃〜微熱戦記〜」聞きながら
書いてる話です。

***********「PRECOCIOUS or YOUTH」****


「お姉様・・・・。」
騎士・・いや・・悪人と言ったほうがこの場合は正しいか・・・。
マラガントの悪逆非道が今日もこの国・・・。
カーリオンでは絶えない。
「判っています。リナ。」
姉、グゥエンフゥイファルは侍女達との言葉遊びを打ち切って妹の
リナに向き合う。
「マラガントの悪行は・・もはや絶えないのですね?」
真剣な眼差しにさしものリナも次ぎに句を切り出せない。
「お姉様・・・・。」
「判っています。私がキャメロット・・このイングランドの宗主・・。
アーサー王に嫁げば・・奴に対抗できる・・・。」
そう。長らく独身を通していたこのイングランド国王のアーサーが
ついに姉、グゥエンフゥイファルことグゥエンを妃に娶る決心をしたのだ。
「姉上・・・。」
政略のタメに無理をして???
「愛の無い結婚はしないわ。リナ。私はアーサー王を愛してます。心から。」
遠くを見つめながらグゥエンはリナに言う。
「そう・・なら良いんですけど・・・。」
「そう暗くならないで。一緒に馬で遠乗りに行きましょう。そうすれば・・。
少しは気が晴れるわよ。」
にっこりと微笑んで言う姉に仕方なくリナも頷く。
「まあ・・。まだ私には良くわからないけど・・。」
姉は確かにアーサー王を愛してはいるだろう・・。
だが・・本で読んだり・・・演劇でしっているようなそれとは違うような気がする。
もっとも・・リナとてそう言った恋物語に憧れるような単純な性格ではないのだが・
・。
「大丈夫。アーサー王が・・。絶対に守ってくださるわ。」
言いながら姉グゥエンは白馬にさらに拍車をかけようとする。
五月の静やかな風が野山に駆け巡る。
木苺・・ブルーベリー・・・。
美しい花々や木々・・。それをあのマラガントは・・・・。
そう一瞬ながらリナは思いながら辺りに気を配るのを忘れ自己の考えに没頭する。
しかし・・その出来事は一瞬にして起こった・・。
「リナ!!!」
不意に聞える姉の声!!
「姉上!!」
見知らぬ男・・いや・・間違い無くマラガントの配下であろう男が姉の馬の
手綱を強引に奪い取り・・・。
姉を攫って行く・・・?????
「姉上!!!」
とっさの事ながらリナは腰にくくりつけてあった自らの護身用の剣を抜き身にし、
大急ぎで姉と男をおいかけにかかる・・・。

「ったく・・・・・・・。」
どれくらい走っただろう・・・?
だが・・一向に姉の攫われた白馬に追いつけるフシはない。
それどころか差をさらに広げられている・・・?
「く!!!」
渾身の力を振り絞ってリナはさらに馬に鞭を当てる。
が・・・・・・・・・・・。猛スピードで前方から別の騎士と馬がやってくる??
すれ違いざまの正面衝突を恐れてリナは大急ぎで手綱を横に引っ張る。
が、彼女の力ではそんなモノを捌ききれるはずが無い。
咄嗟に思ったことは『落馬する!!!』・・・。
それだけだった・・・・・・・・。

「悪い・・。大丈夫だったか?」
瞼を閉じたリナを支える腕の感触・・・。
「へ・・・・・??」
気付けばリナを抱きかかえるような形で先程の騎士が馬の手綱を捌いて
くれた上落馬しそうになったリナを支えてくれたのだった・・。
「何時の間にこっちに飛び乗ったの?ガウリイ卿!!」
そう・・あんな馬の猛スピードといい。
犯人はコイツとは判っていた。
が、今はそんな事をいちいち目くじらを立てて怒ってる場合ではない。
「悪い。お前さんって判って。ついからかおうと思ったって言ったら・・。」
「・・事情が事情じゃなかったら怒るわ!!それより・・姉上がマラガント
の悪党に攫われたのよ!!」
みるみるうちにさしものガウリイも真顔になる。
「グウェン姫様がか!!?」
「ええ・・・。お願い!!追って!!」
「判った!!」
言いながらリナを乗せたまま颯爽と馬を走らせるガウリイ。
「どっちだ・・・?」
「草が蹄の跡でへこんでる。真っ直ぐよ!!」
リナの言葉にガウリイはさらに馬を走らせる。
と・・・・・・・・・その時である。
「姉上??」「姫様??」
一人の騎士の馬に相乗りしたグウェンが姿をあらわした・・・??


「この方が・・私を助けてくださったのです・・。」
「生憎と・・マラガントとやらは・・。逃しましたが。」
言いながらその男はグウェンが馬から下りるのを助ける。
「貴方は・・・・?」
リナも姉同様ガウリイに助けられながら地上に降り立ち、まっさきにその騎士に
質問する。
「ランスロット・・・。湖のランスロットと呼ばれています。」
その人物はそうとだけ答え・・・。
「お妃様。再び。アーサー王の宮殿でお会いしましょう。」
焼け付くような瞳でグウェンを見やりながらランスロットは言う。
これが・・・。
ある意味で全ての始まりであった・・・・。


整列する大勢の騎士・・。
夜空に焚かれる松明の光が美しく煌く。
「キャメロット・・・・・・。」
町並みからも蝋燭の灯火が燃えているのであろうか?
この丘からの眺めは並々ならない壮麗なものと成っている。
「これが・アーサー王の都市なのですね。」
「そして。貴方の王妃となられる国の首都です。」
恍惚とする姉にリナはそっと告げる。
「・・・・・。」
護衛として二人の馬車に同乗しているガウリイの表情が先程から妙にさえない。
「どうしたの?ガウリイ・・?」
リナはそれとなく聞いてみる。
何と無く、姉に聞かれたはマズイような気がしたのだ。
「・・・・。お前の姉上は・・。ランスロットに恋してるぞ。」
唐突に投げられる・・冷徹だが・・心底気にしたようなガウリイの声。
「何で・・よ・・・・。クラゲのアンタに判るはず・・」
「男の直感だ。お前だって俺のこと好きだろ。」
「あっそ!!(激怒!!)」
こんな勘違いナルシーヤロー(でもないかも・・)とマトモに話そうとした
自分が馬鹿だった。
リナはそう思いながら目をそらす。
「からかって悪かった。でも・・・。」
そんな事では・・グウェン姫とアーサーの結婚は・・・・。
「姉は・・王を愛してると言ったわ。」
そう・・・。その言葉縋るしか無いのだ。今のところは・・・。
「俺は・・。王に忠誠を誓っている。だから・・・。」
ランスロットを庇うような真似は『何か』が起こってもしない・・。
そう言う意味なのだろうか・・・・。


「キャメロットにようこそ、我が妃、グウェン。そして・・妹のリナ。」
言いながら一人、また一人と王の通り道に控える騎士たちがグウェン、そして
リナに腰を曲げて忠誠を誓う。
「お会いできて嬉しゅうございますわ。アーサー王。」
壮年とはいえ・・美しく気高い国王アーサー。
その脇には・・影の様に従い決して離れないランスロット・・・。
グウェンはあえてこの男から視線を逸らす。
この微妙な動作は・・女性の本能が無ければ見逃すほど些細なものなのだが。
「貴方を妃に迎える事ができて・・うれしく思う・・。」
恋愛に関してはまったくもって無知なリナですら本来ならうっとりとこの光景を
見とれてしまったかもしれない。
だが・・ランスロットと姉の複雑そうな顔を気付いているのは恐らく自分とガウリイ
だけであろう。
そう思うと気が気ではないのだ。
「リナ!!!」
不意にガウリイがそんな鬱屈とした感情すら忘れ去られるくらい切羽詰った声
で絶叫して・・・・。
「ガウリイ・・・・・?」
その声に驚きリナが彼を見やったその時である・・・。
不意にガウリイの腕がリナをその場から引き離し・・・。
その場を・・先程までリナが居たその場を火矢が通りすぎる!!
な・・・・・・・・・???
よくよく見ればガウリイもリナを庇ったためであろうか?
微かに服が火によって焦げ・・腕からは血が滴り落ちている。
だが。迫り来るであろう敵襲に備えてどんな騎士にも先駆けて剣を抜き放っている。
「国王!!」
「マラガントの奇襲だ!!」
アーサー王が真っ先に敵に向かって駆けだし・・ガウリイもそれに習う!!
「殺せ!!王女グウェンとリナを殺せ!!そしてカーリオンを我等のものに!!」
敵将、マラガントの声が朗々と響く!!
四方八方から放たれる火矢と剣と剣のぶつかり合うおとが聞こえる。
グウェンを危険から守る様に戦うランスロットがリナの視界に入る。
かく言う自分も自分の身を守らねば・・・。
彼女がそう思った矢先のことであった・・・。
「リナ殿!!」
不意に聞こえるアーサー王の絶叫!!
それに弾かれる様にこちらに駆け付けようとするガウリイ・・・。
が・・・足にも火矢で傷を負っているのだろうか・・・?
視線のみは此方に向けられているのに彼は動けなくなる。
一体・・・・・・・。
リナがそう思うまもなく背後の敵が彼女の頭を目掛けて剣を振り下ろしにかかる・・
・??


ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんん!!!!

耳につく恐ろしい金属音。
弾き飛ばされて地面に突き刺さる1本の剣・・・・・。
「モルドレッド!!」
「敵は成敗しました。叔父上。」
冷徹にその男は言い放ち、目でリナに避難するように促す。
マラガントは逃したものの・・すでに勝利は此方にある!!

「ガウリイ!!」
言いながらリナは傷ついたガウリイに駆けより腕を・・・。
「放っておいてくれ!!」
何時になく強い態度でその手を振り解くガウリイ・・・・。
「ガウリイ・・・・・・。」
無言で剣を杖に立ちあがり・・去って行く彼の背中を見やるしかリナには術がなかっ
た・・。


「申し訳ございませんでした・・・。」
悲しそうにグウェンはアーサー王に告げる。
「良い。ランスロット。妃を守りぬいたそなたにも感謝しよう。」
王の言葉に深深と腰を曲げるランスロット。
「・・・・・。」
だが。ガウリイは此方を見向きもしないであらぬ方向を見つめている。
そんな彼に構うほどこの一団に余裕は無かった。
そして・・それはアーサー王も同様であった。
「モルドレッド。リナ殿を守った功績。感謝する。ついては・・。」
甥と妃、そしてリナを順番に見やりながら王はひときわ澄み渡る声で言う。
「我最愛の姉の子、甥モルドレッドに妃の妹にして我が義妹、リナを妻として
与える。一同!!如何であろうか!!」
「なりません!!」
一瞬姉の口がそう動いた事はリナには辛うじて判別できた。
だが・・・・・・・・・・・・・・・。
「わあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
騎士たちの喝采、モルドレッドの慇懃な王の提案に対する了解のお辞儀にそれは
打ち消された・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
何よ・・・その目は・・・・・!!!??
無言で此方を見つめるガウリイ。
「ガウリイ・・・・・・。」
近寄りかけるリナを制するような光が一瞬ガウリイの視線に生じる。
『ルール・・。モラル・・・。絶対服従の王命・・・』
騎士として守らなければならない物をリナにまで押し付けているような・・・・。
「何よ・・・・・。」
あまりにも凄まじい腹立たしさにリナは吐き捨てる様に言う。
「アンタなんて・・。アタシ一人も守れなかったじゃない!!」
不意の宴のもう一人の主役の怒りの絶叫に一同がシンと静まり返る。
「リナ・・・。落ち着いて・・・。」
言いながらグウェンが自分の羽織っていた深紅のマントをリナにかける。
が・・リナは聞く耳を持たない。
「知らないわよ!!ガウリイの馬鹿!!」
過ちを恐れるだけなんて・・・・・・・・・。
怒りに狩られながらリナは馬を引っ手繰り、見知らキャメロットの野に駆け出して行
く。
「リナ!!危険です!!マラガントの残党が・・。」
もはや姉の忠告の声すら聞こえない。
「聞こえません!聞きたくありません!!」
言いながらリナはもはや誰も追いつく事も出来ないくらいのスピード
で馬を駆け出す。
アマゾネス乗りでなら・・どんなに乗馬の達人であっても追いぬかれる訳が無いと
彼女自身自負していた。
そんなこんなでどんどん騎士たち一行から自分が遠ざかって行こうがもはや構わな
い。
「ガウリイの馬鹿・・・・・・・・・・。」
馬から下り・・人気の無い森近くのローマ時代の朽ち果てかけた城壁の
したで・・・。
ただ悶々としながら座り込むリナ・・・・。
その時だった・・・・。
首筋にひややかな感触がしたのは・・・・・・・。

「お命戴きます・・・。王女・・・・・・・・・・。」
「・・・・・。マラガント・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ガウリイ・・・。」
グウェン姫がガウリイを見ながら言う。
「避難なら、後で聞きます。捨て身で言います。国王。」
「・・・。行為そのものも捨て身であろう、ガウリイ卿。あえて援軍はつけん。
そなたが見事リナ殿奪回に成功したときに・・。あえて正式な王命を出そう。」
「・・・・。ありがたく・・・。」
言いながらガウリイは馬を駆ける。
さしものリナもガウリイの本気を知らなかった・・としか言いようが無いだろう。
「リナ!!!!!!!」


「く!!!」
手に凄まじい衝撃を受けながらもリナはマラガントの剣を護身用の短剣で受ける!!
「何時まで持ちます事やら・・。」
嘲笑うようなマラガントの声。
「煩い!!」
咄嗟に一撃を敵に加えるリナ!!
偶然にしてもその細い剣の刃がマラガントの頬を僅かに傷つけ・・血が溢れ出る・
・。
致命傷所か急所すら付いていないその攻撃だが・・・。
荒くれ者のマラガントを怒らせるのはそれで十分であった!!
「この小娘!!」
言うが早いかマラガントの剣がリナの顔を狙って振り下ろされてくる!!??
ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんんん!!
が・・・・・・・・。
手の甲をマトモに剣・・恐らく長距離から投げつけられたものであろう・・。
それに貫かれてマラガントの刃はあえなく地に落ちた。
「おい!!女の子の顔を傷つけるなんて!!最低だぞ!!」
不意に聞きなれた声がリナの耳に入る。
「・・・・・・・・・・・・・。待たせたな・・・・。」
「ガウリイ・・・・・・・・・・。」
言うが早いかガウリイは馬から飛び降り、リナを抱えてその場を離れる。
「ちょ!!」
「すまなかった・・・・・・・・。」
真面目にそう言われると・・自分が大人気なかったような気がし。
急に恥じ入りたくなるリナ・・・・・・。
「馬鹿・・・・・・・・・・・・・。」
その一言を赦しと受け取るガウリイ・・・・・。
「じゃ、モルドレッドと俺・・。立場を入れ替えにもどろるかな〜♪」
言うが早いかリナを抱き上げて馬に乗ってその場を離れるガウリイ!!
「ちょっと!!コイツど〜すんのよ!!」
テレも入ってかリナは大声でマラガントを指差しながら言う。
「あ〜〜!!王様が俺にこっそりつけた護衛が連れて行ってくれるさ。
それに、あんなのに二人っきりの時間邪魔されたくないしな〜〜♪」
まったく・・・超調子いい!!
「やっぱりアンタ・・・。」
やめとこ・・・。ど〜せ言い負かされるに決まってる・・・・・・。


「忠実なる我が家臣、ガウリイ=ガブリエフ殿に我が妃の妹にし我が義妹。
リナ殿を妻として迎えさせよう!!」
今度こそ・・アーサー王の朗々とした声に一同が歓声を上げる。
「リナ・・。了解してくれるか?」
「イヤだって言っても・・。アタシの事強奪するくせに・・。」
苦笑交じりにリナは答える。
「で・・・。お前は・・。」
こっそり・・ランスロットにガウリイは聞く。
「例え・・。訪れるのが破滅でも・・・。」
遠い目をしながらランスロットは答える。
そう言う結末も・・あるのだ・・・・・。
「貴方達は・・。幸せになって・・・。」
姉が・・恋愛小説の様にランスロットを愛し・・・。
アーサー王は・・・別の意味でしか愛せない事は悲しい事なのであろうか?
「捨て身で突き進めないんだ。俺は、ガウリイ。お前の様にな。
そして・・グウェン様も・・そんな俺を赦した。」
ランスロットがリナとガウリイに呟く。
「そして・・アタシはガウリイにソレを赦さなかった・・・。」
「そして・・まんまと俺はリナの思うツボに・・。自分から望んで成った・・か・
・。」
それぞれに生き方がある・・。
だが・・自分の望んだまま生きよう。このまま。
そう思いガウリイとリナは一緒に歩き出すのだった・・・。


(お終い)

たはは〜〜!!
腐ってますね・・スミマセンでした(汗)
ちなみに「PRECOCIOUS or YOUTH」は日本語訳すれば
モトネタわかるです〜〜♪
では〜〜!!


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9741ぼーかる・これくしょん♪P.I E-mail 4/23-23:11
記事番号9702へのコメント

CANARUさん、こんばんは!
わはは〜!ガウリナ、だけどバックに流れる曲は「ジ○クくん」ですね〜♪
「ローランの歌」と「アーサー王」どっちも好き〜(はぁと!)
やっぱり騎士ガウリイにお姫様リナはカッコイイです!!
らぶらぶも堪能させていただきました。あ〜幸せ!
また中世騎士モノで何か書いていただけたら嬉しいです〜!

話は変わりますが、「銀色のフィレンツェ」読みました!
ピエロ・ストロッツィくん、颯爽としててカッコイイですね〜!
あの時代には珍しい初恋貫徹カップルがガウリナで嬉しくなりました〜♪
ロレンツィーノ兄ちゃん、妹思いの苦労人(笑)やっぱこっちの方が
いいですね。藤本さん版はなんだかズーマみたいで・・・(汗)
あと個人的には女スパイのオリンピアもステキでした!
塩野さんの小説はいいですね〜(にまにま^^)

それではまた!!

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9744みょ〜〜♪CANARU E-mail 4/24-09:08
記事番号9741へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!
>わはは〜!ガウリナ、だけどバックに流れる曲は「ジ○クくん」ですね〜♪
はいだみょ〜〜♪
ちなみにアタシもチャラ口調です・・だみょ〜〜♪
>「ローランの歌」と「アーサー王」どっちも好き〜(はぁと!)
アタシもです〜〜♪
ちなみにビデオのトゥルーナイトと言う話もステキでしたよ!!
>やっぱり騎士ガウリイにお姫様リナはカッコイイです!!
>らぶらぶも堪能させていただきました。あ〜幸せ!
>また中世騎士モノで何か書いていただけたら嬉しいです〜!
はい〜〜♪
またそのうち突発ネタで書くことがあったらヨロシクです!!
>話は変わりますが、「銀色のフィレンツェ」読みました!
>ピエロ・ストロッツィくん、颯爽としててカッコイイですね〜!
はい〜〜♪
しかもラウドミアをず〜〜っと思っていたところがステキでしたよね!!
戦場にまで奥様を同伴なんて・・・。
>あの時代には珍しい初恋貫徹カップルがガウリナで嬉しくなりました〜♪
ですね!!
ピエロくんの母上もメディチの方だったみたいですしね!!
>ロレンツィーノ兄ちゃん、妹思いの苦労人(笑)やっぱこっちの方が
>いいですね。藤本さん版はなんだかズーマみたいで・・・(汗)
はい〜〜(汗)
塩野さんの方がしっくりきました〜〜(汗)
>あと個人的には女スパイのオリンピアもステキでした!
>塩野さんの小説はいいですね〜(にまにま^^)
ふふふふふふ・・・。
今度は「黄金の〜」を買わねば!!
>それではまた!!
では〜〜!!