◆−初投稿です!−駄天使しぇあろう(2/9-18:33)No.8728


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8728初投稿です!駄天使しぇあろう 2/9-18:33


初投稿です!
でもスレキャラ一人しか出てきません!(爆)
しかも、何処にでもあるような話です・・・

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そして願いは成就され


 とある中学にて。
 授業終了のチャイム。やがて校門から出てくる生徒達。
 その中で、ひときわ目を引く一人の少女がいる。
 日本人としては少々不自然な、染めたのではない亜麻色の髪と、濃紺の瞳。
 
「ねぇ瑠璃、やっぱり、あのセンセイひどいよね」
「え? 誰のこと?」
「あのセンセイよ!」
 瑠璃(さっきの亜麻色の髪の少女)は、困ったような顔をして、
「『あのセンセイ』って言われたって・・・」
「斎藤よ!」
「斎藤先生・・・うちの学校、いっぱいいるけど・・・・・・」
 友人は、まだ学校から大して離れていないのに、半ば叫ぶように言う。
「家庭の斎藤!
 キーキーやかましい声で騒ぐあの先生!」
「ああ、あの・・・・・・」
 ようやく思い当たったように相槌を打った。
「まったく、あのセンセイ、何かあれば『し〜ず〜か〜に〜〜!!!』って!
 自分の声の方がやかましいじゃない!」
 辺りの視線がちょっと痛い。
「そりゃ、相手の声より小さかったら聞こえないじゃない」

 平和に過ぎていく毎日。ずっと、ここにいたいと。それだけが少女の望み。


「・・・竜神よ。どうか・・・どうか、あの子を助けてください・・・」
 ここには彼女以外、誰の姿もない。声は何者の耳にも届かず消えてゆくだけなのだろうか。
破棄された聖堂。割れたステンドグラスから差し込む柔らかな陽光に照らされ、何年間も積もりつづけていた埃が宙を舞う。まるで波のようにうねるその中で、彼女は祈っている。
「私はどうなっても構いません。・・・・・・お願いします・・・・・・。私の・・・あの子を……」
 涙を流し、途切れ途切れに言葉を発する。本当に神が居るのか、居たとしてその声が届くかどうかわからないが、こうする以外に考えつかなかった。
「・・・・・・お願い・・・。貴方が神だっていうのなら・・・・・・ひとを一人助けるくらい・・・・・・簡単でしょう!?
・・・・・・私は死んでもいい! お願い! 私の子を助けて!」
 祈る声は絶叫へと変わり、辺りに響いて消えた。
 彼女は、割れ、砕けた十字架を睨みつけるようにして上目遣いに見ると、沈黙した。

 静かな聖堂。時だけが流れていく。拳を握り締めて押し黙る女は、何を思っているのだろうか。
 埃にまみれ、割れた窓から吹き込む雨に濡れ続けた石の十字は幾つもの亀裂を走らせ、彫られた聖者の像と共に自身が崩壊するのを待っている。
 彼女は立ち上がった。治療院に行って、子供の顔を見よう。もう一度十字架を睨むと、身を翻し扉も残っていない出口へと向かう。

「何に祈ってたの?」
「・・・・・・え?」
 背後からいきなり掛けられた声に、彼女は振り返った。
 一人の少年がそこにいた。少女とも、見まごうほどの美少年。聖者の腕にとまるように十字に腰掛けている黒い人影は鴉を思わせる。
 さっきまでは誰も居なかったはずだ。
「お姉さん、何に祈ってたの?
普段はぜんぜん信じようとも思わない『神サマ』に?」
 黒衣の少年は、子供独特の無邪気な笑みを浮かべると十字から飛び降りた。「・・・・・・」
 彼女は声も出ない。
「・・・誰でもよかったの? お願いきいてくれるなら」
 いつの間にか、少年は彼女の目の前にいた。前髪の奥で、闇色の瞳が笑っている。
「あ・・・」
「あ?」
 少年は怪訝な声で訊き返し、
「なるほどなるほど」
 勝手に納得した。実は、女の考えていることとはまったく違ったりするのだが。
「あ・・・あなたは、私のことを見ていたのですか?」
 予想外の言葉に驚いたような顔をしたが、少年は頷いた。
「どうして・・・・・・返事をしてくれなかったのです?」
「お姉さんは、神サマに頼んでたんじゃないの? 僕はそんなのじゃないよ」
「それは・・・・・・」
 言葉を詰まらせる女に少年は嘆息して。
「いいよ。別に気になって訊いたわけじゃないから」
「・・・私には、娘がいるんです」
「何の話?」
「一月ほど前・・・魔族に襲われたんです。・・・・・・退治してくださった旅人は『レッサー・デーモン』って呼んでましたけど・・・どうでもいいですね」
 声を震わせる女の話を、少年は黙って聞いている。女は両腕で自分の体を抱くようにして続けた。腕に力がはいる。
「ルリは・・・私の娘は、それにやられたんです。・・・腕が・・・・・・ちぎれて・・・あの娘(こ)が飛んで・・・落ちたんです」

 日々を平凡に過ぎてゆかせることすら出来ない恐怖。彼女はそれに負けてしまった。一命は取り留めたものの、寝台の上で眠りつづけている。今頃は、明日が保証される、夢の世界か。しかし、所詮全ては夢幻にすぎない。覚めない夢はやがて、悪夢へと変わるだろう。

「・・・・・お願い。あなたならできるでしょう? 娘を助けて・・・・・・」
「・・・・・・」
 ――いいことを思いついた。
「・・・・・・ねぇ、お姉さん」
 悪魔の冷笑。
 少年は、そんな月並みな表現で表せる、だが決して比喩などではない残忍な微笑を口元に浮かべた。
 少年の呼びかけに、女は反応を示さない。聞こえなかったようだ。
 少年は女の肩を揺さぶった。顔を上げた彼女が見上げた少年の顔は、優しげな微笑みを浮かべている。無論、作り物の笑顔に過ぎないが。
「お姉さん、さっき言ったよね。
『私はどうなっても構いません』、『死んでもいい』って」
「・・・・・・え?」
「お願い、叶えてあげようか?」
 少年は、ひとが絶望する様を見るのが大好きだった。自分の糧になるものだから。見ていて、これほどいい気分になるものはないから。
「僕は『神サマ』じゃないから、代償はもらうけどね。それでもいいなら、叶えてあげるよ」
 ・・・・・・女は頷いてしまった。
「じゃあ、僕の名前を教えてあげるね。
 僕は『フィブリゾ』。
 これでも立派な高位魔族なんだよ」
 自分を殺す相手の名前を知ることが、何の慰めになるのだろう。
「『代償』は、お姉さんが苦しんで死ぬ、それだけでいいよ」
 少年は、優しげな微笑みを浮かべたまま言った。


「君がルリちゃん?」
 見たことのない少年が声を掛けてきたのは、交差点に差し掛かったところだった。
「何?」
「ちょっと、年上相手に『君』はないでしょ?」
 少年は、彼女の友人の言葉を鼻で笑い、
「もう、起きなよ」
 瑠璃の顔色が変わった。少年は続ける。
「夢は、夢でしかないんだ」
 景色が歪む。目の前が真っ暗になる。言い様のない恐怖。目が覚めたら、私は――


 寝台の上。冬だというのに前身がじっとりと濡れている。
「・・・・・・戻って・・・きちゃったの? そんな・・・・・・」
 少女の顔が絶望に歪む。
「・・・・・・そんな・・・・・・」
 ルリはうつむいた。涙がこぼれる。片方しかない腕で毛布を握り締め、嗚咽を漏らす。
「・・・・・・あそこに居たかったのに・・・・・・こんなところ、嫌いなのに!」

 ――戸口の影で、少年の形をしたモノは舌なめずりをした。


 破棄された聖堂。割れたステンドグラスから差し込む柔らかな陽光に照らされ、何年間も積もりつづけていた埃が宙を舞う。まるで波のようにうねるその中で、彼女は祈っていた。
 埃にまみれ、割れた窓から吹き込む雨に濡れ続けた石の十字は、幾つもの亀裂を走らせ、彫られた聖者の像と共に自身が崩壊するのを待っている。もう、ひとが来ることはないかも知れない。
 だが・・・・・・
『お姉さん、願いは叶えたよ』
 声の主は見当たらない。淡々とした、事務的とすら取れる声だけが響く。それは、教会の中で倒れている女には聞こえなかっただろうが、気にせずに続けられた。
『あなたの娘は目を覚ました』
 女はピクリとも動かない。
『ハッピーエンドじゃなかったけどね』
 最後の一言だけには皮肉がこもっていた。それも、もはやどうでもいいことかもしれない。
 女は死に顔で笑っていたのだから。
――娘は救われたと信じて。


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これだけです。
暗い上に意味わかりませんね。
すみませんでしたー。m(__)m