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8719シリーズ外伝・始まりの序章CANARU E-mail 2/8-07:39


「気ままシリーズ」外伝です。
まあ、次回作の序章と言うか前置きとでも思ってください。
ギャグばっかり書いてるとたまにはこ〜ゆ〜のが書きたくなるので・・・・。

「起きてるか・・?」
「来ないで・・・。」
見る見るうちに血に染まっていく。
暖炉の火が痛々しく・・・言うまでの無く鼻を突く悪臭。
いや・・単刀直入に言えば血のにおいである。
「リナ。」
「見ないでよ!!燃やして!!それをさっさと燃やして!!」
半ば絶叫に近い声で叫びながら血まみれの口を晒すまいとかけ布団を
深深と被るリナ。
しかし。それですらやがて血に染まっていく。
「・・・。リナさん・・・。」
口から血が噴出しているとはいえ・・何時もと変わらない綺麗な顔をアメリアは
確認する。
「燃やして・・・。」
更に力無くリナは呟く。
「リナ、何時までの子供のように何を言うのですか?」
威厳のある女性の声が耳元でする。
「その品を・・。燃やしてください。母上・・・・。貴方の仕業何でしょう・・?」
苛立った声でリナは母妃に告げる。
「・・・何を馬鹿な事を。何故自分の娘にそんな事を。」
静かに母妃は言う。
「馬鹿な事を仰るのは其方です。貴方が愛したのは・・一人です・・・。」
激痛に支配されながらもリナは何とかそうとだけ告げる。
「解毒剤は無いのか・・・・??」
ガウリイにとって唯一言える・・縋るべき一言。
「・・・・・。手に入れられるものなら入れて見なさい。」
母妃カトリーヌの冷徹な声だった。


「あんたがガウリイ?ダルブレ家の生き残り・・ねえ。」
不意にこまっしゃくれた声が聞こえる。
「ああ・・。そうだが・・・。一応『ガブリエフ』姓を名乗ってアンリ陛下に
お遣えしているのは俺だが・・・・?」
心ここにあらず・・と言った様子でガウリイは答える。
「へぇ・・・・。田舎のナヴァール王国の人間にしちゃ垢抜けてるわね。」
白と青・・そして金で装飾され、光彩をふんだんに取り入れられる設計になっている
一室。豪華な装飾に彩られながらも清楚な雰囲気の部屋である。
加えて拭き抜け様式になっているので二回からの声も一階に居ながら良く聞こえる。
「そんな所で何をしてるんだ?」
栗色の髪の豪華な衣装に身を包んだ少女が面白くて仕方ないといった
様子で此方を見下ろしている。
「べっつに。花嫁の妹がこんな所で遊んでいたらいけないって法律が
ナヴァールの田舎にはあるのかしら?ブルボン公に王位剥奪をされた
ダルブレ一族の末裔さん。」
からかうような口調で少女が言う。
「『淫婦マルゴ』の妹・・・・・??」
「・・・。声を潜めたつもり?それで?そ〜よ、アタシは売女って世間じゃ言われる
王女マルゴことマルグリット=ドゥ=ヴァロアの妹のリナよ。そちらさん(ナヴァール)
じゃあ、ウチの姉貴の評判は最悪らし〜わねえ。」
王女らしからぬ口調・・・。
まあ、無理も無い。彼女の母親は王家や貴族の出ではない。
かといって彼女が庶子であるはずがない。
母のカトリーヌ=ドゥ=メディシスことカテリーナ=デ=メディチは
イタリアの豪商の娘なのだ。
「別に構わんが・・。そんな所で何をしてるんだ。」
はあ・・と呆れた思いを隠しきれずにガウリイは言う。
「さぁね〜。姉さんの結婚相手ってヒトを一目見物したかったのよ。
そ〜しなくっちゃ『アタシの中に流れている商売人の血が赦さない』のよ。」
ガウリイの内心に気付いたのだろうか?
それとも単なる自嘲なのだろうか?
リナはあいもかわらずの口調で軽く言ってのける。
「あくまでも今回の結婚は妥協だ。ブルボン家繁栄のための手段・・・。」
言いながらガウリイはふと思う。
そうやって・・結婚によってナヴァール王家はダルブレ家からブルボン家に
乗っ取られたのだ・・・。
「別に興味無いわ。ただね、気をつけたほうが良いわよ。母上が
なんか企んでるみたいだからね。ま、アタシはど〜せ末っ子だしどっかの
三流王家に嫁がされんのが関の山だしね。」
王家の姫とは思えないハスっぽい口調。
「分かった分かった。おじょ〜ちゃんは引っ込んで・・・。」
あやす様にガウリイが言いかけるその前だった。
「馬鹿にしないで。アタシはアタシの事を馬鹿にする人間だけは容赦しないのよ。」
鋭い目つき・・・・・。
どうやら・・当初思ったようにマルゴのような種類の女でない事は
確かである。
「リナ・・・・・・・?」
初めてその名前を呼ぶが・・もはや王女の姿は・・無い・・・・。


「ガウリイ、何処に行っていた?」
同僚のゼルが声をかけてくる。
「ああ。変な子と話してたんだ。」
「お前ナア・・。子供のときから『変なヒトや知らないヒトとお話しちゃいけません』
って言ってるだろうが・・・・。」
「はへ・・?そ〜だっけ・・・??」
「まあ、良い。マルゴ王女とアンリ陛下の結婚式の警備の役目忘れたとは言わせんぞ。」
「ああ・・・。分かってる。」
しっかりせねば・・・。
王妃にして政的、カトリーヌの手に自分達の君主を落としてしまうことになる。
『母上が何か仕組んでいる』と言うリナの言葉が気にならないでもなかった。


「馬鹿馬鹿しい。偶然一意よ。」
言いながらリナは『予言書』興味なさそうにテーブルの上に放り投げる。
「でも・・。リナさん・・・・。」
「アンリ2世の死は事故死よ。単なるね。予言されている訳が無いわ。」
言いながら王女としての衣装に身を包む。
「でも・・。カトリーヌ様はかの『ノストラダムス』の予言を信用して
らっしゃるみたいですよ。」
「・・・。アタシのまだ生まれる前にあったという『ブロア対談』ね・・・・。
1999年なんて遥か未来の事がど〜とか・・・。外れて2000年を迎えるのが
関の山よ。実際に今から約500年以上も昔の999年・・・。1000年を前にして
世界は滅びると言う似非予言が横行したって言うじゃないの。」
下らない。
「そうですかあ・・・・。」
「そうよ。ソレよりも・・。もっと面白い事を予言してあげるわ。
今日のマルゴ姉上・・・。シャルル兄上に無理やり頭を押さえつけられるのが関の山よ。」
冷たい冷笑を口の端に浮かべながらリナは嘯く。


「大虐殺だと・・・???」
無事にアンリとマルゴの結婚が終了したその時だった。
扉を護っていたガウリイたちナヴァールの家臣たちにその知らせが齎されたのは。
「ああ・・。王妃の陰謀だ・・・。」
アンリの結婚を祝いにやってきたナヴァール支持の人間を・・・。
有無を言わさず虐殺と言う形で王妃、カトリーヌ・ドゥ・メディシスは
虐殺したのだった・・・。
「惨い事を・・・・・。」
「これから・・・。アンリ陛下はどうなってしまうんだ・・・・・。」
そう言った声が警備兵全員の間から漏れる。
「母上が何かを企んでいる・・か・・・。」
リナとか言ったあの王女の言葉がガウリイの頭に響く。
と・・丁度その時だった・・・。
「ガウリイ!!?」
「ゼル、一寸其処で待っていてくれ!!俺どうしても行かなくちゃならない
所があるんだ!!」
言ってガウリイはリナが見えた方向へ駆け出した。
「リナ!!」
不意に聞いた事のある声に呼びとめられたリナがこちらを振りかえる。
「ああ・・。貴方なの。確か、ガウリイって言ったけ?見た?
あの姉様のお姿。アンリ陛下との結婚の宣誓を拒んで・・。シャルル兄上に
服従の印として頭を押さえつけられたわねえ〜。ま、もっともそれでも
彼女が『ウィ(はい)』と言ってはいない事実には変わりは無いけどさ。」
淡々とした口調。ベールに隠された顔の表情は見えない。
「大虐殺で・・。俺達のナヴァール支持者の人間が・・。大勢殺された・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「単刀直入に聞く。知っていたのか?」
相変わらずリナの表情は見えない。
「そうだと言ったら・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
はぁ・・とリナは溜息を一つつく。
「嫌な予感はしてたのよ。母上は絶対に何かを仕掛けるってね。
けど・・。知らないわ・・・。仮に知っていたとしても、何も出来ない。」
「何故・・・・・??」
「母上が愛したのは一人なのよ。シャルル兄上にも・・。アタシにも何も
出来ないわ・・・・。マルゴ姉上同様に・・・・ね・・・・。」
口調こそしっかりしているがリナの手は明らかに震えている。
「そうか・・。強く言って、悪かったな・・・。」
ここに来てようやくリナという人間の本質が僅かながら垣間見れたような気がする。
「アンリ陛下の家臣として・・。お願い、一緒に来て頂戴。こっちよ・・。」
言われるままにガウリイはリナの後に続く。


「真坂、面食いの姉上が母上の命令とは言え・・・。あんな田舎貴族と結婚するとはね!!」
年の頃なら16〜17歳の少年であろうか・・・?
マルゴに語り掛ける声は愉快と不愉快どちらともつかない感情を含んだ声であった。
「しかし・・まあ、政略のタメに良い様に遣うんだろ?」
今度は生年の声が聞こえる。
「・・・・・・。」
「はやまらないで。」
君主のアンリを馬鹿にされた事に腹を立てたガウリイが抜きかけた剣を素早く
リナが制する。
「さあ、どうでしょう。私は私のやりたいように致します。」
マルゴの声がする。
「・・・・。姉上のようになったらお終いよ。」
扉越しに中の声を聞きガウリイの方を見向きもせずにリナは言う。
「・・・・。噂は本当だったんだな。マルゴ様は一族に良い様に
操られているって事は。」
「ええ。特に2番目の兄アンリと弟のアランソン・・・。唯一良心的なのは
長兄にしてフランス国王のシャルル兄上くらいよ。」
「そして。母親の支配・・か・・・・・・。」
「ええ。けど、マルゴ姉上はいずれアンリ陛下の役に立ってくれるとは思うの。
けどね・・・・。何かが起こったらシャルル兄上を頼ると良いわ。」
そうとだけガウリイに忠告して去って行くリナ。
「リナ・・か。」
ある意味、重い定めを背負った王女なのかもしれない。


「国王の家族とアンリ陛下が狩に行かれる・・・だと・・?」
ゼルから聞いた一言にガウリイは絶句する。
「ああ・・・。危険だが・・拒む事は出来ないだろう?」
「まあ・・・。確かに・・・。」
ボリボリと頭を掻きながらガウリイは言う。
「まあ、お前の言ってたリナ王女の言を信じるのであれば。王妃は国王
シャルルもろともアンリ陛下を始末なさろうとしている事はまず間違いは無いだろうしな。」
「じゃ、これは好機って言う事か・・?」
「ああ。だがシャルル国王の庇護があれば・・なんとか無事に過ごせるだろう。」
そうは言えどそも嫌な予感がする事には何ら変わりは無かった。


「リナ・・・???」
大方の予想通りだった・・・。
「早く来て!!」
狩の最中に、アクシデントを装ってシャルル国王を暗殺しようと弓矢が
放たれたのだった。
それに気付いたアンリが落馬を覚悟でシャルルを救ったのだった。
無論二人は同時に落馬をした。
怪我人を二人も抱えた逃亡は楽ではない。
しかも暗殺の追っては未だに迫ってきている。
その時だった・・・・・。

「素行の良くない娘の真似か・・?」
苦笑交じりにおしのび姿の国王が妹に尋ねる。
「この仮面ですか・・。確かにそうかもしれませんね・・・・。」
感情を表さない・・仮面そのものを声にしたような口調でリナが言う。
「こんな廃屋を真坂お前が知っているとはな・・・。」
「・・・・・・・。」
何かを言いにくそうにリナは沈黙しアンリのほうに視線を走らす。
「構わない、言ってみなさい。」
重症をおっているアンリがリナに何とか促す言葉をかける。
「貴方方を救うようにしたのは、姉上。マルゴ様の命令です。アンリ兄上と
弟のマークが光っていないのは昼行灯の私だけですので・・・。」
そして。更に言いにくそうに今潜んでいる廃屋を視線でリナは追う。
「隠し事は止めろ。すべて言いなさい・・。」
今度はシャルルが再度リナを促す。
「・・・・・。姉上と・・・。恋人のラ・モル殿との密会所です・・・。」
言いにくそうにアンリとガウリイ・・そしてシャルルを見ながらリナ。
「申し訳ありません。兄上、アンリ様。」
本当に済まなそうに・・リナはアンリと兄に頭を下げる。
「いや・・。わかった・・。もう良い。私はシャルル殿の案内で街中に
潜伏する。ガウリイ、リナ殿をお送りしなさい。」
「わかりました・・・・。」
今だ頭を下げ、顔に涙すら浮かべるリナの手を取りガウリイは促す。
「行こう・・・・。」
「ありがとう・・・・・・。」
今は・・。このリナを落ち着かせる事のみを考えたとしても罪にはならないだろう。


「リナ・・・・・。」
不意に泣きながらやってきたマルゴがリナに抱き着いてくる。
「姉上・・。如何なされたのです・・・?」
「・・母が・・・。王妃が私の恋人を・・。ラ・モルを貶めようとしているの
です・・。暗殺に失敗したから・・。自分の罪を彼に押し付け・・。謀反人に仕立て
上げようと・・・・。」
後半のほうはもはや声がかすれて何も言えないと言った様子であった。
「姉上・・・。なにとぞ・・・。お忘れ下さい・・・・。」
そうとしか言いようが無い。
カトリーヌの権勢に太刀打ちできるものなど誰もいないのだ・・・。
「分かっています。シャルル兄上と・・。アンリが危険だと言う事も。」
「姉上・・・・。」
どうやら、ガウリイはこのマルグリットと言う女性を誤解していた事に気付く。


「城の外に出歩いたそうですね、リナ様」
「アンリ兄上の部下ですか・・・・。ええ、一寸外出致しました。」
辟易としたような口調でリナが答える。
テーブルの上に置いてある本を開く。しかし、ページがくっついてしまっている。
仕方が無いので唾液で湿らせてページのくっついた部分を取り去りながらリナは
読み進めていく。
「リナ、警戒しろ・・・。」
ガウリイが言葉を口にするよりも早くの出来事であった。
確かにシャルルの保護下にある限りシャルルを殺害して王位につこうという
アンリの企みの被害を受けることは無いだろう・・・・。
しかし・・・。
「国王命令により、貴方を反逆罪の疑いで逮捕します。」
「なんですって!!?シャルル兄上が・・・・??」
さしものリナも驚愕の声を上げる。
シャルルが裏切ったのか・・・・???
「いいえ・・・。シャルル陛下は先程ご崩御なされました。」
「なんですって・・・・・・。」
「リナ!!おちつけ!!」
見るからにしてリナは錯乱している!!
「そんな事あるはずが無いじゃない!!貴方達が殺したのよ!!
人殺し!!人殺し!!兄上!!兄上!!お姉様!!こいつ等よ!!アンリ陛下を殺す
としたら・・コイツら!!」
「黙らせろ!!」
隊長らしき男の命令で部下の兵士達が動き、リナに殴りかかろうとする。
が、それよりも一瞬早くガウリイがその腕の動きを封じ、捻り上げて顔面に拳を
叩きつける。
「出て行け!!お前等全員。こんな錯乱した・・・。」
其処まで言ってガウリイは言葉を切る。
「とにかく・・。出て行け!!」
言いながら腰の剣を抜きに掛かる。
その迫力に圧されて渋々と去って行く兵士達。
「落ち着け!!リナ・・・。逃げたい気持ちはわかるが・・・・。」
言いながらガウリイは力をこめてリナを支える・・・。
様子がおかしい・・・・・。
「ガウリイ・・・・。何だろう・・?顔が熱い・・・・・。」
「何言ってるんだ・・・?」
体は氷の様に冷たいと言うのに・・・??
「寒い・・・。今度は寒い!!何!!どうなってるのよ!!」
錯乱とは違う絶叫をリナは上げる。
「其処に居るのは誰だ?」
僅かにドアが開かれて何物かが室内の中を伺っているのを察してガウリイは言う。
「リナ・・・。リナがその本を読んでしまったのか・・・??」
驚愕にも似た兄弟のアランソン公の声であった。
「・・・・。何の目的でこんな事を・・・・。」
「アンリ陛下は・・。無類の狩好きと聞いて・・。狩の本を・・・。」
そういえば。
リナの体のあるかなしかのように見える筋肉からも考えて。
この姫君が狩を好む事は疑いが無かった。この狩についての本を無意識的に開いたとしても
何ら不思議は無かった。
「毒を塗ったのか・・・??」
腕の中でただひたすら苦しみもがくリナを見ながらガウリイは声を凄ませる。
「まさか・・・。まさか・・リナが・・・」
静寂した室内に響く拳の音・・・。
「あんたを殴った所で・・。問題が解決するわけでは無いから・・・。
これで勘弁してやるが・・・。リナが死ぬような事があったらこんな事じゃ済まさんぞ!!」
それが・・。ガウリイに出来たただ一つの事であった・・・・。
そして、次には事故嫌悪。
今ここでこうして苦しんでいるのが自分の君主だったら・・・。
自分はこのような行動を果たしてとったであろうか・・・??



「一緒に・・・行きましょう・・・・。」
処刑された恋人の居る塔を眺めながらマルゴは言う・・・。
「貴方は最後の最後まで・・。私の名前を・・・・・・。」
涙が自然と頬を伝って行く・・・・。
その目は首から下げられた一つの彫刻を施された黄金のカプセルに向けられている。


「愛したのは・・一人よ・・・。」
羽毛越しにリナの・・苦しそうな(或いは悲しそうな)声がガウリイの耳に入る。
「リナ・・・。」
「見ないで。酷く節々が痛いのよ。寝返りできない。だから・・。
顔は見せられないわ・・・・。」
ガウリイにすらリナは素っ気無く言う。
「解毒剤は・・無いのか・・?」
苛立ちながらガウリイは言う。
「マルゴが・・。持っています・・・。」
王妃がここに来てようやく口を開く。
「・・・・。ただし、あの子が素直に渡すとは思えませんけれどもね・・・。」
「・・・・。姉上は・・・。アンリ兄上の傀儡じゃないわ・・・・。」
不意に苦しそうにリナが言う。
「ついでに言えば・・。アタシもね・・・。」
不意にリナは意を決した様に顔を上げる。
なるほど・・確かに毒による影響か血にまみれた顔をしている。
だが・・・威厳のある清澄そのものの表情であった・・・・。


「マルゴ様・・・・。」
「貴方ですか。私は、そのうちアンリ陛下とともにナヴァールへ参ります。」
口調は整然としているが目はうつろでマルゴは言う。
「リナが・・・。毒によって苦しんでいます。なにとぞ・・解毒剤を・・。」
今はこの女性に頼るしかなかった・・・。
「何を言うのです!!この様なときばかり!私の事を散々ナヴァールの方々は
馬鹿にしているのでしょう?ええ、そうですとも!!そして・・。
私はラ・モルを失いました。下らない政略のタメにね・・・・。」
政略・・・。
「ならば。貴方は・・・。妹を見殺しにすると言う事は申しません。
ただ一言・・・。貴方は生涯兄上や母上の傀儡でおられるおつもりですか?」
「・・・・。傀儡・・ですって・・?この私が!!?」
「そうです。今ここでリナを見捨てる事は。彼らの思うツボになると言う事・・。
ソレだけの事実です・・・。」
自分にとってはソレだけの事実じゃない。分かってはいる。
しかし・・このマルゴという女性に見透かされるのが怖い。
だからあえて『妹を見殺しにする姉』と言う事をガウリイは彼女に
言わなかったのかもしれない・・・。いや、言えなかったのだった。
「負けました・・ね・・。」
言って不意にマルゴは表情を和らげる。
「行きなさい。コレは解毒剤です・・。リナを・・大切な人間を・・・。
救っておあげなさい・・・・。これは防腐剤に使用される貴重な薬なのです。
ラ・モルを・・。せめて最後まで美しい姿で居させてあげたかった。それだけ・・。」
言ってマルゴは金の細工入りのカプセルをガウリイに手渡した。
「マルグリット様・・・・。」
「行きなさい。」
もはや彼女は何処を見てもいなかった。


「リナ・・・・・。」
薬を飲ませて暫く立つ・・・。
すっかり眠りに落ちて苦しんでいる様子は既に無かった。
だが・・・こんとんと眠りつづけている。
「タオル・・変えてやりに行こうかな・・・。」
そう思ってガウリイは立ちあがりかけた。
「・・・・」
微かな吐息・・・・・。
長く伸ばした髪を引っ張られる感覚がする。
「何処行くのよ・・。ガウリイ・・・・・・。」
弱弱しいくだが・・ハッキリとリナは呟いた。
「り・・な・・・・??」
「何情けない声出してるのよ?ガウリイ・・?」
何だか知らないが・・・。大人の男を泣かせてしまったらしい・・・・。
さしものリナもこれには困惑するしかない。
「もう・・嫌だな。こんな場所は・・。回復したら、二人で何処かに行かないか?」
ふとガウリイが笑いながら言う。
「え・・・・?」
「聞こえなかったか?この国から離れて・・二人で遠くへ行くって意味だよ。
それとも・・嫌かなあ・・。」
汗を分からない様に拭いながらガウリイがいう。
「ルクセンブルクが良いわ。」
「へ・・・??」
「だから!!ルクセンブルクが良いって言ってるのよ!!行く場所!!」
「・・・あ、おう!!じゃ、早く治して行こうぜ!!」
喜び勇んでリナのほうを振り向くガウリイ・・・。
だが・・既に聞こえるのは寝息のみ・・である・・・。
「さてっと・・・。タオル代えに行ってやるか・・・・。」
言いながらガウリイは向きを変える。
ふと目に高価な金細工のカプセルが目に入る・・・。
「これは・・家宝にしなければなあ・・・。」
言いながらガウリイは蝋燭を持ちながらまた戻ってくる部屋から一旦出たのだった・・・。


それから何年後かの事である。
『ガブリエフ』と言う姓の貴族家系からルクセンブルク王家に『秘宝』
と称される黄金のカプセルを持って嫁いだ娘が現れたのは。
以後、それはどのようなものであったのかもすら忘れ去られた。
が・・その『秘宝』『ルクセンブルクの秘宝』の名は未だに伝えられていると言う。

これが・・・。
ルクセンブルク王家に近い貴族、ガブリエフ家に起こった史上の出来事の
すべてである・・・。
が・・・。
「あんたが貴族の家系とはネエ・・・・・。」
「うるへえ〜〜!!イタリアナポリマフィアのお前さんには言いわれたく無いぞ!!」
「・・・。あんたも今じゃ・・。つ〜かマカオ時代からマフィアでしょ〜が!!」
「・・・・。はふぇ?そ〜だった・・・。」
「ったく・・。このクラゲ・・・・・・。」
当のリナがその家系と関係があることは・・まだ本人の知る所ではなかった。


(番外編・お終い)

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8720歴史は繰り返す!?P.I E-mail 2/8-23:36
記事番号8719へのコメント

CANARUさん、こんばんは!
う〜みゅ、まさかここで「王妃マルゴ」が出てくるとは・・・
やられましたねぇ〜〜〜(^^)
しかしルクセンブルクの秘宝、リナとガウリイどっちにとってもご先祖様の家宝
だったってことですね。
これだけ因縁が深い二人、ガウリイがリナのボディーガードに任命されたのは
決して偶然じゃないですね。ルナ姉ちゃんあたりの差し金だったりして・・・
それと、前回ちょと気になったんですけど、秘宝の行方とさらわれた御曹司の間
には何か関係があるんでしょうか?・・・伏線?(^^)
問題の土地、ルクセンブルクに行くのはまだまだ先かな〜?
ゼロス兄、早く次の指令を出してくれい!!
それではまた〜!

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8725あの女優さんは美人ですよね♪CANARU E-mail 2/9-11:00
記事番号8720へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!
>う〜みゅ、まさかここで「王妃マルゴ」が出てくるとは・・・
>やられましたねぇ〜〜〜(^^)
はい〜〜!!
原作は読んでないんですけどビデオで見て以来〜〜!!
あの女優のイザベラさんに惚れこんでるんです〜〜♪
>しかしルクセンブルクの秘宝、リナとガウリイどっちにとってもご先祖様の家宝
>だったってことですね。
はい!!
チョットこれからの展開を暗示させるようにしてみました!!
>これだけ因縁が深い二人、ガウリイがリナのボディーガードに任命されたのは
>決して偶然じゃないですね。ルナ姉ちゃんあたりの差し金だったりして・・・
ありえます〜〜!!
ゼロス兄ィはルナねーちゃんに脅迫されて。・・とか〜〜!!?
>それと、前回ちょと気になったんですけど、秘宝の行方とさらわれた御曹司の間
>には何か関係があるんでしょうか?・・・伏線?(^^)
はい!!
ぢつはかなり深い因縁がある予定です!!
これから徐々に明かして行きたいと思います〜〜!!
>問題の土地、ルクセンブルクに行くのはまだまだ先かな〜?
>ゼロス兄、早く次の指令を出してくれい!!
>それではまた〜!
はい〜〜!!
近いうちにまた書きたいです〜〜!!
出来れば某イベントに出かける前に(爆笑)あと一作!!
ではでは〜〜!!♪