◆−許されざる・・・・10−なゆた(1/3-04:22)No.8431
 ┣Re:許されざる・・・・10−makoto(1/3-19:06)No.8433
 ┃┗お久しぶりです−なゆた(1/5-07:55)No.8445
 ┣Re:許されざる・・・・10−ミーナ(1/4-00:29)No.8434
 ┃┗新年です−なゆた(1/5-08:00)No.8446
 ┗Re:許されざる・・・・11−なゆた(1/5-07:50)No.8444
  ┣Re:許されざる・・・・11−ミーナ(1/6-00:20)No.8452
  ┃┗毎度です−なゆた(1/12-12:56)No.8496
  ┣ゼ、ゼラスが・・・!−葉夢(1/6-02:51)No.8454
  ┃┗レ、レゾと(笑)−なゆた(1/12-13:03)No.8497
  ┣Re:許されざる・・・・11−makoto(1/6-16:10)No.8459
  ┃┗新年ですね−なゆた(1/12-13:09)No.8498
  ┣はじめまして−UMI(1/7-14:26)No.8473
  ┃┗はじめまして−なゆた(1/12-13:16)No.8499
  ┣Re:許されざる・・・・11−エイス(1/9-17:44)No.8483
  ┃┗お久しぶりです−なゆた(1/12-13:22)No.8500
  ┗許されざる・・・・12−なゆた(1/12-12:50)No.8495
   ┣Re:許されざる・・・・12−エイス(1/13-19:13)No.8505
   ┣Re:許されざる・・・・12−makoto(1/13-20:15)No.8507
   ┗猿の・・・・−ミーナ(1/16-00:52)NEWNo.8524


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8431許されざる・・・・10なゆた E-mail URL1/3-04:22


 真紅に燃え上がる建物。
 遠くから、近くから、絶え間なく響く断末魔の声。
 その中心に立ち、情け容赦なく刃を閃かせている、異形の男。
 それは、そう遠くない過去の映像。
 忘れてはいけない、己の罪業。
 血に濡れる姿が、何とも暗く、そして狂気に彩られていた。
 けれども、それ以上にその顔には、深い哀しみがあった。

「悪趣味な」
 昔の自分の姿を直視しながら、ゼルガディスは冷然と呟いた。どれだけの時間そういうものを見ていたのか、覚えていない。意識だけの今、時間に対する感覚が消え失せているのだ。
 映像を見ない為に目を瞑ればいいのではないか、と思い、一度閉じてみた。だが、そうすると今度は、目を閉じている自分を違う角度で見ている自分があるだけだった。
 それはまるで合わせ鏡のように、永遠に続く無限の回廊。目を開けた瞬間に切れる、メビウスの輪。
 それを立ち切る方法が、見つからない。
 うんざりとした気分で溜息をついた時、傍らに立っていた男が暗然と溜息をもらした。
「どうした?」
 顔を巡らせると、後悔に囚われた共存者の顔がある。紅い真紅の法衣を身に纏った、青年の姿をした彼の先祖。
「レゾ?」
 再度声をかけると、レゾは自分の髪をうるさそうにかきあげた。
「大丈夫です。ちょっと、気分が悪くなっただけですから」
 昔の自分に…。
 呟かれた小さな声を、ゼルガディスは軽く頷いただけで流した。その様子に、レゾは空色の双眸を軽く見張った。
「あなたは、昔の自分を目にしても随分と余裕ですね」
 意外そうなレゾの言葉に、ゼルガディスはふっと目を細めて未だ破壊が繰り返される光景を見つめる。
「余裕に見えるか?」
「ええ」
 頷いて、ゼルガディスの隣に立つ。だがレゾは、破壊される街を見てはいない。視線を横に向け、別の姿を睨みつづけている。
 そこには、口元に薄い笑みを貼りつけ、破壊の炎を心地よさそうにうけている真紅の青年が立っていた。かつての、自分の姿だ。
 ゼルガディスは合成獣を、レゾは盲目の青年を見つめている。その瞳に宿る感情は、はっきりと違っているが。レゾは昔の自分を嫌悪し、憎悪さえしているような節があった。
 ゼルガディスは、軽く視線を転じ二人のレゾを見つめた。同じであるはずのその存在が、まるで正反対の者のように見えた。まあ、多分に私観を含んでのことだが。
「お前はさっき、俺が余裕に見えると言ったな?」
 レゾが軽く頷いた。ゼルガディスは小さく苦笑を閃かせると、さらりと銀の髪を払った。
「違う、余裕なんかじゃないさ。実はこれでも,結構我慢してるんだ」
 昔の自分。
 復讐を誓いながらも、己が復讐の対象となるような行為を繰り返していた過去。
 岩で出来た肌、金属の髪、尖った耳。それが紅い血に濡れて、まずます異形を形作る。
「見ているだけで、吐き気がする」
 微かにその秀麗な顔を歪めて、ゼルガディスは吐き捨てた。初めて声に、鋭い感情がこもる。レゾが驚いたように目を見張った。
「意外ですね。あなたがそんなに我慢強いなんて」
「どういう意味だ」
「そのままです」
 むくれるゼルガディスの額を軽くこづいて、レゾは小さく笑みをこぼした。途端にゼルガディスの顔が真っ赤に染まる。
「やめんか!ガキじゃないんだから!!」
「子供ですよ、十分ね」
 齢100を軽く越えていたレゾにとって、たった20年ほどしか生きていないゼルガディスなど、いつまでたっても子供であろう。憤然と溜息を漏らすゼルガディスに、レゾは軽く微笑むと視線を映像へと戻した。ゼルガディスも同じように視線を戻す。

 懐かしい感じがする。こうやって隣に立つのは、いつかぶりだろう。
「しかし、鈍くなったんじゃないか?」
 隣に目をやらずに、ふいに思いついたことを口にだす。レゾが、何のことか分からずに首を傾げた。
「昔は、俺がどんなに感情を隠そうとしても、どうやってだか筒抜けだったのに」
 叔父に復讐を誓った頃から、ゼルガディスは己の感情を隠すようになった。冷静に周囲の状況を見分け、あらゆる機会を逃さないように。
 だが、なぜかレゾにだけはすぐにばれた。感情を隠すことで必然的に表情も減っていったが、目の見えないレゾには関係無かった。
「あんたは、目が見えない代わりに他のモノが何でも見えていると思ってた」
 ゼルガディスの指摘に、レゾはふっと口元を緩めた。苦いモノがその顔に広がる。
「あの頃の私に見えていたのは、自分に向けられる憎悪や羨望、それに人の思惑くらいですよ」
 二人の視線の先で、ゼルガディスの破壊の刃を逃れた人々に対して錫杖を一閃させる。突風が、炎を巻き込み人々の命を刈り取っていく。
「私には見えていなかった。救いを求める人々の悲痛なまでの想いを。自分にかけられた希望も。何も、見えてなかったんですよ」
 ふわり、と風を感じたような気がした。意識しかない世界でそんな事、あるはずも無いだろうに。周囲は相変わらず炎に包まれ、段々と小さくなっていく叫び声が響いていた。
「私は、笑いながら人の命を絶っていたんですね」
 かつて見ることの叶わなかった極彩色の地獄絵を見ながら、レゾは暗澹と吐きだした。どうしても昔の自分へと目が行ってしまい、眉を顰める。その様子に、今度はゼルガディスが頬を緩めた。
「……………なあ、レゾ。俺は昔の自分の姿なんか見たくないし、思い出したくもない。けど………あれも、俺なんだ」
 どぉん、と一際大きな音を出し、一番高かった建物が崩れ落ちた。そこに避難していた人を巻き込んで。その下には、両手を掲げて荒く息をついているゼルガディスがいる。
 レゾが不快げに眉を寄せた。
「しかし、あれは私が……」
「手に入れた力を使い、逃げるのでは無く破壊することを選んだ。何を踏みにじっても、復讐すると心に決めた。そうして、多くのモノを壊した。全部、自分が決めたことだった」
 破壊している間も、後悔はしていたのかもしれない。それでも、止められなかった。己を呪詛する声にさえ、嘲弄で返していた。
 ふいに、音が止まった。
 以前の時と同じように、くらりとした感覚が二人を捉え、一瞬の後に周囲が闇に包まれる。
「………昔の自分は嫌いだが、そうやって想えるのなら…。俺は二度とあそこへは帰らない」
 後悔はした。憎みもした。けれど、どうやっても過去は消えない。忘れる事など叶いはしない。だが、だからこそ、自分は向こうへは戻らないと確信できる。
 決然とした表情のゼルガディスを見て、レゾは驚き、ついで軽く息をもらした。知らず、息を止めていてしまっていたらしい。
「………そう、ですね。逃げても、逃げ切れるものでも無いですし」
 僅かに俯いたレゾの目には、ゼルガディス以上の悲哀が込められていた。

「辛気臭いわね」
『うわ!!』
 唐突に後ろから聞こえてきた声に、思わず二人は飛びずさった。そこにいたのは20代半ばごろの美女。褐色の肌、波打つ金の髪を持ち、鋭い銀色の目をした女性。肌もあらわな装束から伸びる手足が、妖艶なまでの魅力を放っている。
「何者だ」
 鋭く、ゼルガディスが声を落とした。
 ここは竜族自慢の封印の中。出てくるのが普通の女のはずはない。
 殺気をはらんだゼルガディスの声に、女性はくすりと笑みをもらした。とろけるような、それでいて背筋に寒気を覚えるような笑み。
 長くしなやかな腕を伸ばして、警戒しているゼルガディスの顔にそっと触れる。
「……好みだわ。おまけに使えそうだし」
「………………はぁ?」
 かなり間を空けて、ゼルガディスが言葉を発した。女性の言った言葉の真意を量り兼ねたのだ。あっけに取られたゼルガディスの腕をとると、すっと自分の体を摺り寄せる。
「ねぇ、うちの子にならない?ちゃんと有給付けるわよ?」
「なにを?…って、うわ!」
 呆然としたゼルガディスの体が、ふいに引き戻された。とんっと、背中にレゾの体が当たる。見上げると,いつに無く厳しい顔をしたレゾが女性を睨み付けていた。
「ちょっと、勧誘の邪魔をしないでくれる?」
 少し不機嫌そうな顔をした女性が、レゾを睨み返した。ばちばちと、二人の間に不可視の火花が飛び散る。
 沈黙を破ったのは、今までに無いほどの不機嫌なレゾの声だった。
「冗談じゃありません。この子は私の(玩具)です!」
「ちょっと待て!なんだ、今のかっこの中は?!!」
 不可解なゼルガディスのつっこみを無視して、今度は女性が口を開く。
「あら、誰が決めたのそんなこと?」
「私です!」
「決めるな勝手に!!」
「あら、残念ね。うちの子とセットで並べると,結構面白そうなのに。ん〜、やっぱり攫おうかしら?」
「断る!!大体誰なんだ貴様は!」
「元気いっぱいねぇ。かわいい!」
「かわいいっていうなぁぁぁああ!!」
「誉められましたね、ゼルガディス」
「どうとったらそうなる!!」
「誉め言葉は素直に受け取るものよ?ねえ、レゾ」
「駄目ですよ、ゼラス。いくらねばってもこの子は渡せません」
「……!!!」
 何気無くレゾの口から飛び出した名前に、ゼルははっと息を飲んだ。
「獣王ゼラス=メタリオム。赤の魔王シャブラニグドゥの五人の腹心の一人にして…………」
「して?」
 目の前の女性、ゼラスが可笑しそうに先を促した。動揺し、呆然としているゼルガディスを楽しそうに見つめている。
「陰険ゼロスの性悪上司!!」
 沈黙が、その場を支配した。
 刹那の後、上級魔族の怒りの鉄拳がゼルガディスの頭にヒットした。

*************************************

 お久しぶりでございます&明けましておめでとうございます。
間を空け過ぎてしまいました、なゆたですm(_ _)m
頑張ってるんですけど(しくしく)

 というわけで、今回はただの回想とゼラス様ご登場です。
この後の展開?一応考えてますんで、続きは早い・・・・・と思います。

 すいません、薮蛇つつきそうなので前回の御礼です。
安達洸さん
 ごめんなさい!!またまたおまたせしました!!
しかも、ほとんど進んでない。
見捨てないでくださると、嬉しいです。

魚の口さん
 初めまして!お作はいつも拝読しておりました。
「幕間」「巻末」完結したら感想を書こうと思っていたら、
先に書いて頂けて幸せです。
今回、執筆ペースが遅れ気味ですが、待っていて下さると幸いです。

葉夢さん
 ごめんなさい!またやりました!
今回も謝り倒します。
で、CMの方、気に入っていただけて幸いです。
実は自分でもかなり気に入ってます。
進むと、また書いてくれるんですか?
・・・・・・・・・・・・のばそっかなぁ、話し。

ミーナさん
 皆さんの御言葉に甘えて、こんなに感覚あけてしまいました。
しかも、アメリアの辿りついた先じゃないし。
相変わらず引っ張ります。ええ、もう、とことん(苦笑)
完結だけは絶対にさせますので、気長にお待ち頂けると幸いです。

makotoさん
 おひさしぶりですぅぅぅ!!m(_ _)m
やっと続きです。でも、アメリアの落ちた先はまだ内緒。
設計者に関しては、ノーコメント(^^;
って、分かりますよね、普通。

うさびんさん
 お待たせしました!
>ゼルの子供部屋かなりラブリー。
はい、ラブリーです。ご想像のとおりです。
あんなにひねた性格じゃないゼルには、なったでしょうね。
この両親だと。でも、あのひねっぷりがゼルってことで!
でも、今回のゼルはある意味ひねてないな…。


 続きは、近日中に!!(自分にプレッシャーかけておく)

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8433Re:許されざる・・・・10makoto 1/3-19:06
記事番号8431へのコメント


ども〜、makotoでーす

おおっ、前半がすっごくシリアスだ!!
しかも、なんかお互い励ましてるのか?
どーなるんだろーとドキドキしていると、なんとゼラスが乱入!?

もしかして、ゼロスに聞いて見物しに来たのだろーか?(わ
と、思いきや、なんとスカウト!?
なんだかレゾとゼルをとりあってるし・・・・
たしかに、ゼルとゼロスがセットになってるところは見たい・・・・(爆
しかし、玩具って・・・・(笑

ゼルも言ってはいけないことをさらっと言ってるし、
そのせいで怒りの鉄拳くらっちゃってるし、
話しが大荒れになってきましたね〜

うう、続きが読みたい!!
というわけで、お願いしますm(__)m(わ

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8445お久しぶりですなゆた E-mail URL1/5-07:55
記事番号8433へのコメント


 御久しぶりです、makotoさん。
明けましておめでとうございます〜。


>おおっ、前半がすっごくシリアスだ!!
 はい!久しぶりにシリアスです!書いてて肩こっちゃった。

>と、思いきや、なんとスカウト!?
 スカウトですね〜。
前回のゼロスのスカウトも、この方の命令ですからね〜。
かなり気にいっている模様(笑)

>なんだかレゾとゼルをとりあってるし・・・・
 玩具状態。
どこに居ても結局からかわれる運命なんです、うちのゼルは。

 ゼラスとレゾが出てくると、どうしても漫才状態にしたくなってしまう。
これでゼロスが出てくるとどうなうんでしょうね〜(←無責任)

 それでは、これからもよろしくお願いします。

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8434Re:許されざる・・・・10ミーナ E-mail URL1/4-00:29
記事番号8431へのコメント

あけましておめでとうございます。
新年早々「許されざる・・・・10」が見れるなんて、
今年はいい年になりそうですよ。

今回のゼル・レゾ・ゼラスの会話最高です。
ボケてるレゾとのほほんとしたゼラスにからかわれているゼルが。
この二人にかかったらゼルがクールに決めることなんて無理ですね。やっぱし。
年の功っていうやつですね。

今回のお気に入りは
> 沈黙を破ったのは、今までに無いほどの不機嫌なレゾの声だった。
>「冗談じゃありません。この子は私の(玩具)です!」
>「ちょっと待て!なんだ、今のかっこの中は?!!」
ですね。やっぱり。
前半のシリアスなシーンよりもこっちに心惹かれる私って・・・


ではでは、次も楽しみに待ってますのでがんばってくださいね。
次回こそアメリアが落っこちた場所がわかるの・・・かしら??

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8446新年ですなゆた E-mail URL1/5-08:00
記事番号8434へのコメント

 あけましておめでとうございます。ミーナさん
お久しぶりななゆたです。
覚えていてくださってよかった(っほ)

>今回のゼル・レゾ・ゼラスの会話最高です。
 ありがとうございます!ちなみに11の方でも何故か漫才が・・・・・。
どうしてこの二人、知的に会話が成り立たないんだろう。
って、私が書いてるんですよね。

>この二人にかかったらゼルがクールに決めることなんて無理ですね。
 無理ですね、絶対。
ことあるごとにホットに取り合ってくれそうです、ゼルを(爆)
ゼラスの魔の手から、レゾが一生懸命守ってくれるでしょう。
ただし、レゾの魔の手はどうするかは、謎。

>次回こそアメリアが落っこちた場所がわかるの・・・かしら??
 ごめんなさ〜い!まだ先です〜。
でもでも、ちゃんと考えてるので、しばらくお待ち下さいませ。

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8444Re:許されざる・・・・11なゆた E-mail URL1/5-07:50
記事番号8431へのコメント

「……で、その獣王がなんだってこんな所にこれるんだ?」
 まだ痛む頭を抑えながら、ゼルガディスが憮然とした表情でゼラスを睨みつけた。対するゼラスは、口元に微笑を浮かべたまま軽く首を傾げる。
「簡単よ。ここは夢の檻。夢は心が見せるもの。つまり、精神の世界。入り込むのは難しいけど,不可能じゃないわ。最も、私だから簡単なんだけど」
 確かに、夢は精神(こころ)が見せるもの。それはある意味、アストラルサイドに近いものなのかもしれない。
「しかし、ここはあの竜族の老人が見張ってたはずですけど?」
 見る者のほとんどをうっとりさせるような笑みを浮かべているゼラスを、鬱陶しそうに見ながらレゾが疑問を発した。
 この夢の檻に入ってからずっと、あの老人は二人になにかに付け声をかけてきた。ある時は諭すように、ある時は脅すように。時間感覚の消え失せた二人にとって、それがどれくらいの間隔であったのかははっきりしないが、他者の侵入に気付かないはずはない。あの嫌みったらしい老人のことだ、二人の監視に手を抜くとは考えられなかった。
 だがゼラスは、レゾを横目で見るとふっと鼻先で笑った。
「私が見つかるなんてへまをすると思うの?ゼロスじゃあるまいし。大丈夫よ、今は竜族の者達は留守にしているわ」
「留守に?どこに行ったんだ?」
 眉を顰めるゼルガディスに、ゼラスは妖艶に微笑みかけた。
「あら?分からない?」
 嬉しそうなその声音に、頭のどこかで何かが点滅する。
 ふいに思い浮かぶ、最も可能性の高い事。
「まさか…!」
 嫌な予感が走る。
 彼等の願いは世界の安泰。そして魔族を滅ぼす事。
 その為に、自分は封印されている。だが、その為に幾人かの彼に縁の深い者は動き出しているだろう。この時、ゼルガディスは彼らが動く事に何の疑問も持っていなかった。
 そして、その者達もまた世界の破滅か安泰かをもたらすもの。
 殺すか、取り込むか・・・・。
「…………やっぱり、頭はいいわね〜。本当に欲しいわ」
「駄目です」
「けち」
「欲張り」
「陰険」
「性悪」
「…………消えたいの、レゾ?」
「……簡単にはいきませんよ?」
 考え込んでいるゼルガディスの隣で、どう考えても五賢者と魔王の服心の会話とは思えないものが繰り広げられていた。同時に立ち上る、肌を突き刺すような殺気。
「やめんか、鬱陶しい!!」
 堪りかねてゼルガディスが叫んだ。すっと、その体をレゾとゼラスの間に割り込ませる。そして、やや不満そうにそっぽを向いているゼラスの顔を睨みつけた。
「わざわざそれを言いに来た訳じゃないだろう?一体、なにが目的だ」
 切り付けるようなゼルガディスの口調に、ゼラスは大きく髪をかきあげた。ばさりと、金糸の髪がはね上がる。
「頭の良い子は話しが早くて好きよ。………ここから逃がしてあげましょうか?」
「なに?!」
「何が、望みなんです?」
 二人とも、魔族が単なるボランティア精神など持ち合わせてはいない事など、百も承知だった。驚愕の表情が、すぐに一変して警戒するものになる。
 ゼラスは、そんな二人の態度にわざとらしく口元を覆った。
「ひどい、ひどいわ!どうして私が何か企んでるなんて思うのよ?!」
「企んでるんでしょう?」
「疑う余地も無いな」
 かわい子ぶるゼラスに、二人は冷淡に返した。あくまで冷静な二人の反応に、ゼラスはぷぅっと頬を膨らませた。
「可愛くない子達ね―、本当に。まあ、いいわ。私の目的は単なるいやがらせよ」
『嫌がらせぇ?』
 レゾとゼルガディスが声をはもらせ、思わず顔を見合わせた。その反応に、ゼラスが満足そうに頷く。
「そう、い・や・が・ら・せ(はぁと)」
 一言一言を区切って、ゼラスは嬉しそうに微笑んだ。
 薄い唇に人差し指を当て、本当に嬉しそうに言う所など、間違いなくゼロスの上司である事を痛感する。ぞんなゼルガディスの思いを知ってか知らずか、くすくすとゼラスは笑いをもらす。
「だって、当然でしょう?竜族は世界を護る為、私達は滅ぼす為。相反する理念に基づいて行動するなら、相手の行動を阻害するのは初歩的な事でしょう?」
 ゼルガディスを下から見つめるような形ですりよりながら、ゼラスがゼルガディスの頬に触れてくる。それを身を引きながらかわしながら、ゼルガディスは少し考え込んだ。
 確かに、竜族の目的が世界の保護である以上、その行動を魔族が妨害する事に疑問はない。しかし、その妨害のために、自分を解放する意義はあるのだろうか?大体、前回の騒動で以前より力を増し、しかもアストラルサイドを覗けるという奇妙な力を付けたゼルガディスを助ける。
 ただ信じるというわけには、いかない気がした。そんな思いが如実に出ていたのだろう。ゼラスが不機嫌そうに眉を顰めた。
「勘ぐり深い子ねぇ。出るのを助けてあげるって言ってるんだから、素直に受ければいいのに。それとも、あの辛気臭い映像をまだ見ていたいの?」
 私には楽しい映像なんだけどねぇ、とゼラスは微笑みながら呟いた。口元に微笑をたたえてはいるものの、目からは苛立ちがこぼれている。決めるなら早くしろ、と言う事だろう。
「どうする、レゾ?」
「……そうですね。確かに彼女の言っている目的と言うのは,全てじゃないでしょう。しかし、私達だけではここを出るのは不可能。利用されるのを覚悟で乗るか、それとも別の解決法が分かるまでここに居るか」
 眉根を寄せて、レゾが可能性をあげてくる。二者択一で、しかもベストの方法はない。ゼルガディスは大きく溜息をついた。
「ただ待つだけより、行動した方が何か変わるだろう。それに、人質として他の奴等の足を引っ張るのも、ごめんだな」
「では……」
「ベストがないならベターを・・・・」
 仕方ない、と言うように二人は頷きあった。諦めきったような表情でゼラスを振り返ると、溜息とともに吐き出した。
「いいだろう。乗ってやる、獣王」
「…………何故だろう。すごくむかつく」

********************************
 き、奇跡かも・・・・。
短いとはいえ,久しぶりに短期間投稿。
でもって、ちょっと進展。どうやって、脱出させよっかな〜。(また考えてない)

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8452Re:許されざる・・・・11ミーナ E-mail URL1/6-00:20
記事番号8444へのコメント

あけましておめでとうございます
またまたミーナです

わーい!!またレゾとゼラスさまの漫才(?)がありましたね!
>「…………やっぱり、頭はいいわね〜。本当に欲しいわ」
>「駄目です」
>「けち」
>「欲張り」
>「陰険」
>「性悪」
>「…………消えたいの、レゾ?」
>「……簡単にはいきませんよ?」
ほとんど子供のけんか(^^;)
ほんとに実力のある方っておちゃめさん!
でもどっちの悪口も真実なところがこわひ・・・

ではでは。これからも楽しみにしてますね。

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8496毎度ですなゆた 1/12-12:56
記事番号8452へのコメント

 毎度ありがとうございます!
&、明けましておめでとうございます〜!!

 レゾゼラ漫才(謎)気にいっていただけたでしょうか?!
ふたりとも、目がマジ入っちゃってる光景を御想像下さい。
ほ〜ら、笑えるから。(をいをい)


>ほとんど子供のけんか(^^;)
 本気でケンカ始めたら、近隣一帯は消し飛ぶでしょうねぇ。
その寸前で止めるのが、楽しそうですけど。

 次回はやっとガウリナの再登場です。
しかし、この人たち、私の小説だとホントにちょい役(ファンの方すんません)

 それでは、次回も・・・・・って、下にありますけど、
よろしくお願いします。

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8454ゼ、ゼラスが・・・!葉夢 E-mail 1/6-02:51
記事番号8444へのコメント

 ども〜! お久しぶりです〜!!
 あいや〜、ゼラス出てきちゃったんですねぇ〜
 この人でたら、お話が早く終わっちゃいませんか? なんたって強いし……

 それにしても、三つに分かれてるのってきついですね〜。
 アメリア、ゼルガディス、そしてリナたち。
 同時進行をこなせるとは! 神業だっ!

 あ、でもゼラスが出てきたとなると……CM第二弾も考えた方がいいかもっ!?

 さぁてさて! この先どーなるのでしょうかぁ〜?
 次回を待ってますっ!! 感想、短くてすみません……

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8497レ、レゾと(笑)なゆた 1/12-13:03
記事番号8454へのコメント

 お久しぶりです、葉夢さん!!
感想ありがとうございます。


> あいや〜、ゼラス出てきちゃったんですねぇ〜
 はい〜、出しちゃいました。
しかも、お話に出てきたことないんで、人格かなりいいかげん。(ってへ)
本当にこんなお茶目だったら、私はちょっとうけるかも。

> この人でたら、お話が早く終わっちゃいませんか? なんたって強いし……
 無敵でしょうねぇ。今の登場人物の中だと。
さ〜、どうしましょう?(って、考えてないんかい!)

> それにしても、三つに分かれてるのってきついですね〜。
 そうっすねぇ。こんなにきついとは思ってなかったんすけどねぇ。(前回もそう思ってた)
やっぱり、こういうのは計画的に書かないと(しくしく)


> あ、でもゼラスが出てきたとなると……CM第二弾も考えた方がいいかもっ!?
 ふひょーーーーーー!!!(意味不明)
いいんすか?!貰えるんすか?!!
ほしいっす!!!!
ああ、でもこのちょっと先に、ちょっとした伏せが!!!
って、いつ書くかわからない上に、本当に書くかどうかもわからない伏せなんで忘れてください。

 んふふふふ。CM第二段。
気が向いたらでいいっす!書いていただけると、超ハッピーです!
お暇な時には思い出して見てください。

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8459Re:許されざる・・・・11makoto 1/6-16:10
記事番号8444へのコメント



makotoで〜す
かなり遅れましたけど、あけましておめでと〜ございますm(__)m(わ

ゼ、ゼラスがかわゆい!!!!!!!
なんていい年こいて・・・・なんてことはちっっっとも思わないぞ(爆

それに冷静に対処する二人もグットです
ま、たしかにゼラスのことだし、何か企んでるんだろーなと思っても不思議はないですね〜(実際企んでるんでしょうけど(わ

そーいや、しばらくリナたちが出ていませんが、ひょっとして忘れさられてるのではと心配していましたが、もうやくちょっとだけ出てきましたね(わ

では、かなりよけいなことばっかり言いましたが、続き待ってま〜す(わ

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8498新年ですねなゆた 1/12-13:09
記事番号8459へのコメント


>かなり遅れましたけど、あけましておめでと〜ございますm(__)m
 明けましておめでとうございます!ミレニアム!!(謎)
早速感想ありがとうございます(^^)

>ゼ、ゼラスがかわゆい!!!!!!!
 おお!かわゆい、と言うコメントは初めてです!
しかし、確かにいい年こいて、なんてケンカをしてるんでしょうねぇ、この二人は。
ゼラスは絶対にゼロスより長く生きてるんだから、1000歳は越えてるし、
レゾのほうも不確かながら100は越えているはず・・・・・・。
ああ、それでもゼラスとは一桁単位で年が違う。


>>それに冷静に対処する二人もグットです
 冷静に、というか、冷めた目でというか。
だって、どれくらい長生きか、二人とも知ってますからね。


>そーいや、しばらくリナたちが出ていませんが、ひょっとして忘れさられてるのではと心配していましたが、もうやくちょっとだけ出てきましたね(わ
 すいません!忘れて・・・・・・ませんって(笑)
下の12の方で出てます。
って言うか、独壇場です。でも、その次ではまた場所は移動します。
いつになっても私の作品ではちょい役。(ああ!リナに殺されるかも)

 というわけで、かなり久しぶりですが続き置いていきます。

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8473はじめましてUMI 1/7-14:26
記事番号8444へのコメント

こんにちは、はじめまして。UMIといいます。
ああ待っていたんですよ。一日千秋の思いで。
なゆたさんの作品は前から読ませてもらっていたのですがコメントを書くのははじめてです。
なんだかすごく壮大なお話になりそうで、ドキドキしています。
続きを楽しみにしています。がんばってくださいね。

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8499はじめましてなゆた 1/12-13:16
記事番号8473へのコメント


> こんにちは、はじめまして。UMIといいます。
 はい、こんにちは、はじめまして。なゆたと申しますm(_ _)m

>ああ待っていたんですよ。一日千秋の思いで。
 す、すいません!じゃあ、十万単位/日で待たせてしまったのですね!
しかも、待たせてこれかい!っていうような内容でごめんなさいです〜。

 以前から読んでいただいていたんですか?嬉しいなぁ。
しかもコメントがいただけるとは!自分はめったに書かない癖に・・・。
っちゅうわけで、コメントは書いてないけどUMIさんの作品、読ませてもらいました。
BLUE・・・・・・・・いいっすねぇ。
姫の瞳の色だし、ポイント的に浮かぶ色だし。
何より、澄んで遠いところなんか、もろにぴったりですよ〜。
個人的には”海=姫”な図式を形成しちゃってますが・・・・。
そっか〜。そういや空もそうだよなぁ。なんて、一人で頷いてしまってました。

>なんだかすごく壮大なお話になりそうで、ドキドキしています。
 ・・・・・・壮大というか、また取り留めのない孤とを書いてるのかもしれません。
前回より短かったら、奇跡かも(をいをい)

 続きも頑張りますので、我慢強く(自分が言うな)お待ち下さい。

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8483Re:許されざる・・・・11エイス E-mail URL1/9-17:44
記事番号8444へのコメント


 こんにちは。名ユタ様…じゃない、なゆた様。お久しぶりです♪エイスです。

 念願の”許されざる…”の続きだったのですが…
 ……ははは。これまでの内容忘れちゃいました。

 でも過去の記事まで遡って読むという知恵も根性もない私、このまま読ませていただきました。

 えっと…なんかゼラスが「子供かおのれは」といいたくなるような内容…。
レゾとの言い合いも、低LVで最高でした(…?)
 でも、相変わらず話の壮大さが感じられて、これから何か起こるような雰囲気があるんですよね。なゆた様の話って。

 早く続き書いてくださいね♪


 なんかめちゃくちゃ短いですけどそれでは。
                   エイス


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8500お久しぶりですなゆた 1/12-13:22
記事番号8483へのコメント

 今日は、エイスさん〜。お久しぶりのなゆたです。

> 念願の”許されざる…”の続きだったのですが…
> ……ははは。これまでの内容忘れちゃいました。
 ははははははは(乾燥中)
自分でも、前回どこまで書いたのか・・・・・・・・・ッと、危ない。
ちゃんと続きになってますが、歯切れよく切れてますから、わざわざ遡る必要もないかもしれませんね。
一応、時間のある時にでも著者別の方に登録しますけど。


> えっと…なんかゼラスが「子供かおのれは」といいたくなるような内容…。
>レゾとの言い合いも、低LVで最高でした(…?)
 わはははははは(乾燥注意報)
だって、二人とも出番とか全然ないから、かなり独断はいっちゃってますし。
だから、この二人は私のイメージ。
いいのか、そんなんで・・・・・・・・・・(汗)

> でも、相変わらず話の壮大さが感じられて、これから何か起こるような雰囲気があるんですよね。なゆた様の話って。
 どきどき。何が起こるんでしょうか?(って、おーい!!)
冗談です。でも、何かが起こるのか、未発なのかは謎です。
それこそきっちり「ひ・み・つです(はぁと)」
ああ〜〜〜〜〜!!石を投げないで!
反論が怖いので、このまま消えます。

 それでは、これからもよろしくお願いします。

>

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8495許されざる・・・・12なゆた 1/12-12:50
記事番号8444へのコメント

 雲1つ無い青空のもと、なんて事は無い平凡な一日。
 ディルス王国にほど近い、街道にある一軒の宿屋兼食堂。いつもは数人の客で僅かに賑わう場所だが、今日は特別に騒がしい。
「ちょっと、ヴァル!少しは遠慮しなさいよね!!」
「やだ!あっ!これとった!!」
「ああ!それは俺が食べようと思っていたてり焼き!なら、これは俺が貰う!」
「甘い!それはあたしのテリトリーよ!!」
「なんだよ、そのテリトリーって!!」
 がちゃがちゃ、ずるる、ずー、がつがつ、はぐはぐ。
 食事中に出るであろう全ての音を、最大限に発生させながら三人が食事している。黙って立っていれば衆人の視線を集めまくるであろうこの人物達は、今は別の意味で視線を集めている。
「ちょっとー!追加まだぁ?!!」
 赤毛の魔道士風の恰好をした少女が、奥に向かって空になった皿を振る。
「まだ食べるんですか、リナさん?」
 一人だけ違う席についてゆっくりとお茶を飲んでいた金髪の女性が、軽く眉を顰めた。その視線をものともせずに、リナはからからと笑った。
「当然じゃない。この程度、あたし達にとっては腹8分目でもないわ!」
 ねぇ、と机を振りかえると、金髪長身美形剣士が皿から顔を上げずにうんうんと頷いた。そのまま、別の皿へと手を伸ばす。
「あーー!!人がちょっと目を離した隙にぃ!ガウリィ!それはあたしのよ!!」
 机の上に増えた空の皿を決然と見やって、リナは再び猛然とした食事風景の中へ戻っていった。
 毎回の如くのこの食事。いい加減慣れたいとは思うのだが、中々感情はついてきてくれない。すっかり彼等になついている彼女の養い子を優しく見守りながらも、やはり小さく溜息が漏れる。
 ミルガズィアからの連絡で旅だって、すでに4日が過ぎようとしている。あれから特に連絡もなく、これといった情報もない。仕方なくディルスに向かって来てはいるが、なんとなく気だけが焦る。
「本当に、何を考えているのかしら・・」
 突発的に行動を起こした同族。今まで連絡をとってなかった分だけ、謎が多い。
「………分からないことだらけだわ」
 暗澹と呟いて、少し冷めた紅茶に口を付ける。
 刹那、衝撃が下から突き抜けた。

 ずぅぅうううん!
「な、なに?!」
「何か来たのか?!」
 突然の衝撃にリナとガウリィが机にしがみ付きながら、立ち上がった。
「ヴァル!!」
 机に捕まり損ねて床に放り出されたヴァルの体を、フィリアが寸での所で受け止める。
「出るわよ!!」
 衝撃が収まったのを見計らって、リナが外へと飛び出した。後にガウリィが続き、遅れてフィリアとヴァルが飛び出す。
 そこには、数人の男達が黙然と佇んでいた。

 1,2,3、………4。目だけで数を数えながら、リナは体を正面に向けた。
 目の前の地面がえぐれ、直径五メートルほどのクレーターができている。
「……随分なご挨拶ね?それとも,出会い頭に一発食らわせるのが竜族の挨拶なのかしら?」
 半眼を向けるリナの言葉に息を飲む音は、当の襲撃者達ではなく後ろから聞こえてきた。鈍器・骨董マニア竜族には痛いほどに心当たりがあるらしい。
「ふむ、噂通りに口の悪い」
 四人目の人物、細木を思わせるような老人が意地悪く口元を歪めた。その様子から,何となく男達の首領であることがうかがえる。
「そっちこそ。仕事のイメージ通りに陰険そうよねぇ」
 腰に手を当て、斜めから老人を睨み付ける。隣ではガウリィが片手を柄に掛け、周囲の者達が動くのを牽制している。
 リナの言葉に、老人の片眉がぴくんとはね上がった。
「…物知りな嬢ちゃん。情報源は、そこにいる元火竜王の巫女どのかな?」
 "元"にさりげなく力を入れるあたり、老人の性格がうかがえる。視線を向けられたフィリアは、後ろにヴァルを庇いながらきっと睨み返した。
「おお、怖い。あんまり年寄りを脅かさんでくれ」
 わざとらしく肩をすくめると、くくくと咽喉を鳴らした。耳障りなその声に、リナがいらいらと腕を組む。
「それで?御大自らお出ましで、一体なにが目的なのかしら?それとも、まさかゼルのこと殺すの,容認しろとか言うんじゃないでしょうね?」
 皮肉たっぷりのリナの言葉に、老人は多きく目を見張った。そして、多きく咽喉を震わせる。
「ひょっひょっひょ。それは思いつかなんだが、いい考えじゃのぉ。どうじゃ、やって見るか?」
「冗談きついわね、じいさん。そうなる前に、きっちりあんたの首絞めてあげるわよ」
「それは勘弁願おう。まあ、儂等の目的は別にあるからの、安心せい」
「別に・・・…?」
 訝しげに眉を顰めるリナに向かって、老人はすっと人差し指を指した。いや、正確にはその咽喉元に光るもの。
「"魔血玉"………。それはお主が持つには過ぎた力だ。いつまた再び,世界が崩壊の危機に晒されるか分かった物ではない。おとなしく渡すならよし……」
「渡さないなら?」
 揶揄するようにリナが口元を歪めた。ただし、組んでいた腕を解き、やや腰を落とした状態の臨戦体勢で。
 老人の口から、微笑が消える。
「………無理に奪うまで」
 ざざざざざ!
 老人の声を合図に、男達が一気に散開する。すっと下がる老人の代わりに前進し、半円状にリナ達を取り囲む。
「ガウリィ!!」
「おう!!」
 リナの声に応えて刃を抜き放つ。
「フィリア!ヴァルを庇いつつ援護!!」
「はい!!」
 ヴァルを後ろに庇ったまま、スカートの裾を翻してメイスを取り出す。
 その様子を遠巻きに見ている老人が、からかうように笑い声をあげた。
「そんな子供と一緒に、我ら竜族を相手取ろうとは。火竜王に仕える者の耄碌も、ここまで極まったのかのぉ」
 侮蔑まるだしの言葉。だが、それに答えたのは幼いながらに誇り高い、当のヴァルだった。
「うるさい!!ゼルにぃを返せ!猿の干物ジジィ!!!」

 静寂。

 ひゅ〜、と冷たい風が一陣通り過ぎた。
 次の瞬間こだまする、リナ達の笑い声。
「あ〜っはっはっは!確かに干からびてる!あは、あーはははは!!」
「くくくくく!上手いこと言うなぁ、ヴァル!くく、はははははは!!」
「ちょ、そんなに受けなくて(ちら)………っぷ、くく」
 遠慮なく笑うリナとガウリィ。抑えようとしているのだろうが堪え切れなくなって噴出してしまうフィリア。
 静かなのはきょとんとしている言った当人と、呆然としている竜族の男達。そして、小刻みに震えている老人だけだった。
「………っさ、さるのひもの。ええい!我ら竜族を捕まえて何たる言いぐさ!構わん、やってしまえ!!」
 怒りのあまり,思いっきり悪役のセリフになってしまう老人。だが、どんな言葉でも命令は命令。一瞬にして呆然自失から立ち直った竜族が、一気に間合いを詰めに来る。
「ガウリィ!まがりなりにもこいつらは竜族よ!馬鹿力はフィリア並みだからまともにやりあっちゃ駄目よ!!」
「了解!」
 答えながら突き出された槍の穂先をするりとかわし、代わりに振るう"斬妖剣"。覇王でさえ退けた刃。竜族に効かないはずはない。
「くぁ!」
 脇腹をかすめられた男が、多きく後ろに飛んで距離を取る。ガウリィが、そのまま刃を突き立てようと追いすがる。だが、一瞬の後目の前に別の男が肉薄していた。
「でりゃぁ!!」
 鋭く突き出される一本の小刀。避けきれる距離とスピードではない。
『エルメキア・フレイム!!』
 じゅあ!
 ガウリィに迫っていた男の目の前を青白い光状が通りぬける。思わずその足を緩める男。
「隙あり!」
 一瞬スピードが落ちた男に向かって、逆に突っ込んで行くガウリィ。薄紫の刃が男の咽喉元に伸びる。
「くぅぅうう!!」
 ガウリィの目の前にいた男が、ぐっと身を逸らした。虚しく空を切る、ガウリィの剣。そこに、待っていたかのように先程の男が槍を突き出す。
『フレイム・ブレス!』
 横合いから特大の炎が、その男を襲う。ついでに、惰性で思わず前に行ってしまっていたガウリィにも。
「うあっちぃ!」
「ああ、すいません!!」
「それくらい気にしないで!次が来るわよ!!」

 リナの声に、ざっと二人が構え直す。その一瞬の隙に、もう一人の男が背後に忍び寄っていた。すっと、その手が伸ばされ、何かを捕まえて飛びすさる。
「ヴァル!!」
 一気に距離を取った男が、腕の中のヴァルにレイピアの先を突きつけた。
「動くな。動けばこれが、突きぬけるぞ」
 低い声に、咄嗟に飛び出しかけていた3人に抑制をかけた。
 じたばたともがくヴァルを抑えつけながら、男は微かに口元を緩めた。その背後に、先ほどの老人が平然と立っている。
「卑怯な!それでもあなた方は神に仕えるものだと言うんですか?!」
 怒りをあらわにするフィリアに、老人は薄く笑いを閃かせた。
「それをお主が聞くのか?ええ?火竜王の巫女よ?」
 かつて、火竜王に仕える者達が何をやったのか。それをさして老人は笑った。その行いがいかなる物か知っているフィリアは、何も言えずに唇をかみ締める。代わりにリナが口を開いた。
「馬鹿言ってんじゃないわよ。いまここで小さな子供を人質にとってるのはあんた達でしょ?昔のこと掘り起こして、自分達の行為を正当化するんじゃないわよ」
「ほぉ。それではお主は、今まで卑怯な事など何もしてないと言うんじゃな?」
「っう!」
 そう言われると、何も言えなくなってしまう、今まで行いが目に見えてしまう自称天才魔道士。隣で近年最も被害を受けている男が、何度も頷く。
「うんうん。確かに言えないわなぁ」
「納得してるんじゃないわよ!!」
 乙女の必須アイテムでガウリィの頭を叩いてから、ぎっと老人を睨みつける。
「上等じゃない!だったら、どんな手を使ってでもあんた達の計画、ぶっ潰してやるわ!!」
「リナさん。………ヴァルはどうするんですかぁ?」
「………あ」
 ひゅ〜〜〜。

*********************************
 ハイ、移動です!
久しぶりに戦闘シーンを書いたら、肩こりますね。
しかも、長いだけで進んでない(しくしく)
だから戦闘シーンって嫌いだぁぁぁああ!!話が進まないし。
というわけで、今回はここまで。
次回は・・・・・・・・・、どこかな?(をい)

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8505Re:許されざる・・・・12エイス E-mail URL1/13-19:13
記事番号8495へのコメント


こんばんは。なゆた様。エイスです。

>「うるさい!!ゼルにぃを返せ!猿の干物ジジィ!!!」

 猿の干物!!さ、猿、猿の干物!猿…げほげほ。

 ……すいません、失礼しました。
いや、本気でおもしろかったです。ここ。

 あと、

>「あ〜っはっはっは!確かに干からびてる!あは、あーはははは!!」
  中略
>「………っさ、さるのひもの。ええい!我ら竜族を捕まえて何たる言いぐさ!構わん、やってしまえ!!」

 た、「確かに干からびてる!」なんて、リナちゃんなんてことを…。
それに猿の干物の言葉(おい)もなんかおもしろかった…。

 あう〜。はっきり言ってここのインパクトが強すぎて、読み終わってもこのシーンだけがずっと頭に残ってました(笑)


 よく解らない感想になってしまいましたね(^^;)すいません。

 それでは。
    エイス


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8507Re:許されざる・・・・12makoto 1/13-20:15
記事番号8495へのコメント



ども〜、もう飽きたかもしれませんがmakotoで〜す(わ

うーむ、あっちこっちへ舞台が変わってちょっぴり混乱気味な私・・・・(わ
なんてことは気にせず、さっそく読ませてもらいました〜

毎度おなじみのお食事タイムが始まってますね〜
ああ、ヴァルがあの二人に加わってる姿が、もうほとんど違和感ない・・・・・
成長したんだね、ヴァル・・・・・・(しみじみ
このコメント前にも言ったよーな気がしますが、気にしないで下さい(わ

おおっ、久しぶりに戦闘シーンがある!!
・・・しかし、ガウリィ燃えてるし(わ

さ、猿の干物・・・・・・・ぷ、くくくくく(笑いをこらえている
・・・・・・・・似合いすぎ(わ

ヴァルくん捕まっちゃって大ピンチ!!
このまま囚われのお姫様状態になってしまうのか?(わ

さて、次はどこのシーンかな〜?(わ
続き待ってますね〜(・・)/

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8524猿の・・・・ミーナ E-mail URL1/16-00:52
記事番号8495へのコメント

こんにちわ。毎度おなじみ(?)のミーナです。
今回はお久しぶりにリナ達の登場でしたね。
ちっちゃいヴァルもかわいくてお気に入り(はあと)
しかも、今回はすごい名(迷)台詞をいってくださいましたし。

>「うるさい!!ゼルにぃを返せ!猿の干物ジジィ!!!」
もう最高です!!
猿の干物・・・・老人たちの顔が想像できますもん。
なんと、うまい描写なんでしょう!

では、次回も楽しみにしてますね。
猿の干物もとい竜族に人質とされたヴァルの運命やいかに・・・!!
(↑なぜあおり文句が・・・)