◆−乾杯(ガウリナ)−さるとり(12/21-11:50)No.8372
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8372乾杯(ガウリナ)さるとり 12/21-11:50



 どうも、始めまして。さるとりと申します。
 皆さんのすばらしい作品を読むうち、自分でも投稿したくなったのですが……全然駄文ですね(泣)
「まあ、どれだけ駄文かみてやろう」と思ってくださった方がもしいらしたら、どうぞ。
 ガウリナで……一応十四巻ネタばれを含みます。よろしかったら、感想ください。
 

『乾杯』

「ごちそうさま……」
 ナイフを置くやいなや、あたしの向かいに座っていたガウリイは、また心配そうに問いかけてきた。
「……まだ、食べられないのか?」
「ん……」
 テーブルの上には、五人前の料理。
 そのうちあたしの前のお皿ーーほんの二人前ーーには、まだ半分ほどの料理が残っている。
「もう三日目だぞ……大丈夫なのか?」
 心底心配そうな顔であたしの顔をのぞき込んでくる。
「大丈夫。食べたくなったら、ちゃんと食べるから……」
 あたしはそう言うと、部屋に戻ろうと立ち上がった。
「っ…………」
 軽いめまいにしゃがみこむ。
「リナ!」
 ガウリイがあわててあたしを支えた。
「……大丈夫、ちょっと立ちくらみしただけだから……」
「お前さんの『大丈夫』はあてにならないって、今わかったよ」
 次の瞬間、あたしはガウリイに抱き上げられていた。
「がっ……!? ちょっと!?」
「いいから、じっとしてろ」
「おっ、兄ちゃん、今夜はお楽しみかい?」
「嬢ちゃん、頑張りな!」
 酔っ払いたちの野次が飛ぶ。
「ガウリイ、降ろしてよ! 歩けるからっ……」
「じっとしてろって」
 有無を言わせず、ガウリイはあたしを抱えたまま、部屋に向かった。
「ほら」
 そっと壊れ物を扱うように、あたしをベッドに寝かせる。
「……ありがと」
 一応お礼は言っておく。
「ああ」
 ガウリイの短い返事。
 しばしの沈黙の後、ガウリイが言った。
「……まだ、ミリーナのこと、気にしてるのか?」
 ………………。
 適当にごまかそうかとも思ったが、ガウリイがあんまり真剣だったので、あたしはためいきひとつつくと、
「……正確には、ミリーナとルーク、だけどね」
つい最近までいっしょだったその二人のことを思い出すと、あたしの心は重くなる。
「あれは、誰が悪かったわけじゃない。そうだろ?」
「それはわかってるのよ。
 あたしが考えてたのは、別のことなの」
「別の?」
 話すべきかーー話さざるべきか。
 あたしの心の中の迷いを見透かしたように、ガウリイが言った。
「ルークの言ったことだろ」
「ルークの?」
 逆に問い返すと、彼はあたしの顔を見つめたままで、
「ルーク、言ってたろ。
『おまえたちならどうなんだ』って。
 ……オレたちがああなったらどうなるんだろうって、考えてたんじゃないか?」
 ガウリイが時折見せる『野生のカン』は、あたしも驚くほどに鋭い。
 あたしは窓の外に視線をやりながら、
「答えられなかったわ。
 ーーううん、きっと今も答えられない。
 正直、考えたくもないけど」
 けれど、あたしたちが、あの二人のようにどちらかを失うというのは、充分有り得る。
 ただ今まで考えもしなかっただけ。
「ルーク、苦しかったでしょうね。
 憎くて、痛くて、悲しくて、気持ちを持って行く場所がなくて……」
 ミリーナを失った痛手は、彼の心の中で眠っていた深い闇を呼び起こした。
 そして彼はその闇に飲み込まれ、修羅と化した。
「きっと、オレたちにはわからないんだろうな。
 ルークの気持ちなんて」
「そうね……」
 けれど、その闇の暴走を止めたのもまた、ミリーナだった。
 彼女の存在がルークにとっては絶対だったのだろう。
 あらゆる意味で。
「いつだったか……シェーラと戦う前に、宿屋で襲われたこと、あったでしょ……って、覚えちゃいないわよね……」
「ああ」
 当たり前のようにうなずくなよ……。
 ちっとは反省……って、ガウリイに言っても無駄か。
「その前ね、あたしとミリーナで、ちょっと飲んでたの」
「酒か? 飲めもしないのに……」
 茶々をいれるガウリイを軽くにらんで、
「うっさいわね。あたしはどうせミルクだったわよ。
 ……あたし、そのとき、ちょっと聞いてみたの。『どうしてルークと一緒にいるのか』って」
「それで?」
「……『私は不器用ですから』って。それだけ」
「ふぅむ」
 ガウリイはなるほどというように大きくうなずいて、
「どういう意味だ?」
「わかりもせんのにうなずくなぁぁあっ!」
 あたしは素早く懐からスリッパを取り出すと、ガウリイの頭をはたいた。
「いてて……って、やっぱいつもよりは弱いな」
 妙に冷静に言うガウリイ。
 確かに……今のは、あんましいい音じゃなかったなー……。
「それはともかくとして、どういう意味なんだ?」
「あ。そうそう、そうだった」
 あたしはスリッパをしまうと、視線を落として、
「……あくまで推測だけど、ルークがミリーナを必要としてたように、ミリーナにもルークが必要だったのよ。
 でもミリーナはルークと違って、そんなに感情表に出すタイプじゃなかったでしょ?
 だから、『不器用』って言ったんだと思う」
 実は、あたしも聞いたすぐ後はわからなかった。
 けれど、もしミリーナがルークを嫌っていたなら、絶対に彼女はともに旅などしていなかっただろう。
 言葉少なだったけれど、彼女は強い意志を持つひとだったから。
「そのことをちゃんとルークはわかってた。
 だから、あのふたりはいっしょにいられたのよ」
冷たくあしらうミリーナ。
 めげずに言い寄るルーク。
 そんな二人が、今でもすぐそこにいるような気がしてならない。
「でも、ミリーナはもういない」
 ミリーナはその命を失い、ルークは姿を消した。
 あの光景も、もう二度と見られない。
そう思うと、鼻の奥がすこしツンとした。
「……悲しいね。いつも側にあるものが突然なくなっちゃうって」
考えたくないけれど。
 もしガウリイを失ったら、あたしはどうするだろうか。
 あたしが死んだら、ガウリイはどうするだろうか。
「そうだな……」
 ガウリイは窓の外の月を眺めながら、
「リナがいなくなったら、オレはどうなるんだろうな」
「新しい被保護者でも見つける?」
「ーーいや。愚問だった」
 ガウリイは微笑を浮かべて、
「オレとリナが離れるなんてこと、ないんだ。
 別々になんてならない」
 さらりと言ってのけた彼に、あたしは、また何にも考えてないんだろうなと思いつつ、
「どうして言い切れるの?」
 と聞いた。
 彼は微笑を浮かべたままで、あたしの頭をいつもより少し優しくなでながら、
「リナの死ぬときが、オレの死ぬときだから。
 だから、オレは、リナよりほんの少しだけ長く生きられれば、それでいいんだ」
「………………」
 何も言えなかった。
 この男は……あたしの頭をよしよしとなでるこの男は、あたしと死ぬまで一緒だと言ったのだ。
 くらげのくせに、何言ってんのよ。
 そう軽く流してしまいたかったーーでも、できなかった。
 彼の瞳が、あんまり真剣だったから。
「それは、あたしと一生いっしょ、ってことかしら?」
 声が少しばかり震えているのは自分でもわかった。
「そうなるな」
 答えて、ガウリイはあたしの頭から手を放した。
 ……女の子にとっての『一生いっしょ』の意味なんて、きっとわかってない。
 ガウリイの言ったことだから、深く考えても労力の無駄だとわかってはいる。
でも。
「苦労するわよ」
「充分承知のうえさ。おまえさんときたら、大メシ食らいだわ、金にうるさいわ、それに……」
「うっさいわね」
 ぼふっ!
 指折り数えるガウリイに枕を投げ付けると、あたしはベッドの上に身を起こす。
「あーあ、なんだか、おなか空いちゃった。
 もっかい食べに行かない? もちガウリイのオゴリで」
「オレのおごりぃっ!?
 ……いえ、おごらせていただきます……」
 あたしの右手に灯る光を見て、ガウリイはしゅんとなって言った。
「よろしい」
 あたしはベッドから立ちあがりーーまだちょっとふらついて、ガウリイによりかかる。
「また抱いてってやろうか?」
「冗談! さっきだって、乙女の身体に触った代金欲しいくらいだわ」
 あたしは自分の足で何とか立つと、部屋を出る間際後ろのガウリイに、
「ま、貸しってことにしといてあげるわ」
 と言って、ウインクした。

「おーい、リナー、あんまり急に食べると、体に毒だぞ……」
 見事なあたしの食べっぷりに気圧されたか、あんまり食が進んでないガウリイが頼りなさげに言った。
「全然オッケーよ。このくらい」
 羊のシチューをお代わりしながらあたしは答える。
 目の前には、からっぽのお皿が十数枚。
 まわりにはあたしたち以外に客はいない。
 さっきの酔っ払いがいたらどうしよう……とか思ったが、取り越し苦労だったらしい。
「オレはオッケーじゃないんだよ……」
「なぁに情けない顔してんのよ。あたしの回復祝いとでも思えば、安いもんでしょ?」
「……ったく、こんなに食うんなら、治らない方がよかったんじゃないのか……」
 小声で呟いたつもりだったろうが、エルフ並のあたしの耳にはしっかり届いている。
 でも、あたしは聞こえなかったふりをして、食べることに専念した。
時折顔を上げ、ガウリイと目が合うと。
 いつも彼は優しく微笑んでいる。

 ーー満たされていったのは、食欲だけじゃなかった。

 あたしは手を挙げて、ウェイトレスを呼び止めた。
「この店で一番いいシャンパンと、グラスをふたつ」
「おい、リナ……」
「だいじょーぶ。あたしのオゴリよ」
 怪訝そうな顔をしたガウリイに、あたしは笑って、
「本当にオゴリだって。貸しもなしよ」
「リナの『ただ』ほど高いものはないような気が……」
「……すいませーん。やっぱりグラス、ひとつで……」
「うわぁぁああっ! オレが悪かったっ!」
 あたしが再び挙げた手をつかんで、ガウリイは必死に言った。
「喜んでごちそうになりますっ!!」
「よろしい」
 あたしはうなずくと、厨房の方に目を向けた。
 慎重な足取りでこちらにやって来るウェイトレスの手には、高そうなシャンパンとグラスがふたつ。 
ガウリイが歓声をあげる。
「おぉっ、うまそうだなー」
 
 ーーあなたの言葉。
 それだけで、あたしの迷いなんて吹き飛んでしまった。

「よし、開けるぞ?」

 あたしも、いつか言おう。
 あなたと同じ答えを。

「ちゃんと二等分してよ」
「わかってるって」

 グラスの中で泡を立て、金色に光る液体。
 そのかぐわしい香りを充分楽しむと、あたしはグラスを掲げた。

こんな他愛もない日常を守り続ける力がありますように。
 これからも二人で生き続けられる力がありますように。
 そう願って。

「乾杯!」
 チン、と涼やかな音を立て、グラスがぶつかった。

 
 
 

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8377Re:乾杯(ガウリナ)亜子 E-mail 12/22-00:08
記事番号8372へのコメント

はじめまして。
読ませてもらいました。駄文だなんてとんでもない!とっても素敵です♪
シャンパンがちょっとクリスマスっぽかった気がします。
ミリーナのことはやっぱ、いつまでたってもつらいですよね。
二人にはそんな未来が来ないことを祈ってしまうけど、きっと二人なら
大丈夫だよってゆー気持ちもあったりします。
死ぬまで一緒か〜、うんうん、ガウリナですね。(*^_^*)


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8384Re:乾杯(ガウリナ)さるとり 12/22-22:43
記事番号8377へのコメント

>
>はじめまして。
>読ませてもらいました。駄文だなんてとんでもない!とっても素敵です♪

 ありがとうございます。すっごくうれしいです!

>シャンパンがちょっとクリスマスっぽかった気がします。

 時期が時期ですからね……。意識したつもりはなかったんですけど。
 クリスマスの二人って言うのもぜひ見てみたいですね。

>ミリーナのことはやっぱ、いつまでたってもつらいですよね。
>二人にはそんな未来が来ないことを祈ってしまうけど、きっと二人なら
>大丈夫だよってゆー気持ちもあったりします。

 原作は次で終わりだというので、心配もひとしおです。
 終わらないでほしいという気持ちもあるけど、やっぱ早く読みたいですね〜。

>死ぬまで一緒か〜、うんうん、ガウリナですね。(*^_^*)

 もっと甘い話になるはずだったんですけど……なんか重めになっちゃって。
 ガウリナっていうのは奥が深いです。
 調子に乗ってまた投稿しそうなので(笑)もしまた出没していたら、見てくださるとさらに嬉しいです。