◆−短冊−琳(6/22-23:30)No.7107


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7107短冊6/22-23:30




こんにちは。琳です。
本当は、もう読み専門に徹する予定だったんですが、7月のカレンダーをぼ――っと見ていたら・・・現実逃避とともに書いてしまいました。
そのせいか、時期的に2週間ほど早いですね・・・。
相変わらずの駄文ですが、読んでいただけたら嬉しいです。
それでは、どうぞ。


――――――――――――――――――


 短冊



―――もしも願いが叶うなら、あなたは何を願いますか?



「・・・では、そのように進めてください」
「わかりました」
「これは失敗してもかまいませんよ」
「大丈夫です。お任せください」
「そうそう、これを忘れずに」
そう言うとその男は、うす紫の細長い紙状のものを手渡した。
「それでは」
片方が消え、そこには男のみが残された。
「・・・あの人は、何を願うんでしょうかねぇ?」
つぶやく声は闇に溶け、やがてその場には誰もいなくなった。



その日、あたしはふもとの村で依頼された仕事を終え、意気揚揚と宿に帰る途中だった。
「簡っ単な仕事だったわねー♪これであの依頼料はおいしい話だわ(はぁと)」
上機嫌で森の中を歩いていると、それは急に目の前に落ちてきたのである。
「きゃ――――――――――――――――っ」
どさっ。
「え?」
見たところふつうの女性のようである。それも長い黒髪と真っ白い肌のなかなか美しい女性。
どうやら木の上から落ちてきたらしい。
―――誰かに、似てる・・・?
「ねぇ、ちょっと大丈夫?」
一応声をかけてみると、その女性はぱちっと目を開けた。
「怪我はないようだけど・・・」
「あ、すみませんでした」
「でも、なんだって木になんか登ってたの?」
「それは・・・。あの、突然見ず知らずの方に申し訳ないのですが、今お暇ですか?」
「え?・・・まあ、忙しくはないけど・・・」
なんか嫌ーな予感。
「でしたら、私に力を貸して下さい。お願いします」
―――予感的中。


「私、織女のアルファと申します。実は・・・」
「ちょっと待って、織女ってあの織女?」
と空を指差す。
「はい。その織女です」
「ふ〜ん。で?」
「それで、この辺りに落し物をしてしまって・・・。探したんですが見つからないんです。一緒に探してもらえませんか?」
「落しものぉ?何を落としたの?」
「それが、その、贈り物なんです。今夜の」
そっか。関係ないから忘れてたけど、今日って七夕だったっけ。
「で、それを見つけるのを手伝えっていうのね」
「はい。白い小さな袋なんです。確かにこの辺りなんですが・・・」
「もう一度買いなおすとかじゃ駄目なの?こんな森の中、探す方が難しいと思うけど」
「もう時間がないんです。それに同じものはないですし・・・」
はぁ―。
とはいえ、ここで恩を売っとくのも悪くない。
「わかった。手伝ってあげるわ」
「よろしくお願いします♪」


そして、しばらくして探し物は無事見つかった。


「どうもありがとうございました。なんてお礼を言ったらいいのか・・・」
「そんなぁ、お・れ・い(はぁと)なんて♪」
そういいながら手を差し出しているあたし。
「どうぞこれを。これに願いを書いて今日の日没までにつるしてください」
にっこり笑顔で手渡されたのは小さなうす紫の細長い紙だった。
「これって、・・・短冊?」
「はい。でも、ふつうの短冊ではありません。特別に作られたもので、これに書かれた願いは必ず叶います。どんな願いでも」
「ふーん。・・・って、どんな願いでも?」
「はい」
「じゃあ、『異界黙示録』とかでもいいわけ?」
それって、すごいじゃない。やっぱり、助けといて良かったわね―。
などと思っていると・・・。
「あの、そういうのではなく七夕のお願いなんですからもう少し、こう・・・。
そうそう、どなたかお好きな方とか、お逢いしたい方の名前をお書きになるとか。あ、書いた願いはあなたと叶える私にしか見えませんからつるしても大丈夫ですよ。・・・あとこれを作った私の上司様も読めますけどね」
なぜかにっこり笑う彼女。が、あたしはその時、何を願うかに夢中でその言葉の意味を深く考えなかった。
「へぇー。じゃあ、ありがたくもらっとくわ」
「それでは、本当にありがとうございました。・・・良い夜を」
そう言うとアルファは、空高く昇っていきやがて見えなくなった。



その後、宿に戻ってきたあたしはというと・・・、短冊を前に悩んでいた。
「う―ん、願いっていってもな―」
どうせなら、なかなか叶わないようなものがいいわよね。でも、あまり大きなことは駄目みたいだったし。
『・・・お好きな方とか、お逢いしたい方の名前をお書きになるとか・・・・・・』
彼女の言葉がよみがえる。
「逢いたい奴ねぇ・・・?」
どうせ無理だと思うけど、だめでもともと・・・。
でもでも、せっかくなんだから無理そうなことを書くよりは別のもっと叶いそうなことを書いたほうがお徳だし。
「どうしよっかなぁー」
そうしてしばらく悩んでいたあたしは、日の沈む直前、何かに誘われるように一つの願いを書きこんだのだった。



―――その夜。
あたしは、窓から満天の星空を見上げていた。
「・・・やっぱり叶うわけないか・・・・・・」
悩んでいた自分が馬鹿みたいじゃない。
そう思っていたその時・・・
「なにが叶わないんですか?」
不意に後ろからかけられた声。
「ゼロス!?」
「こんばんは。いい夜ですね―♪」
「・・・何しに来たのよ?」
予告なしに突然やってくるのは、いつものこと。だけど、都合のいい偶然なんてありえない。特にこいつの場合は。
何しろ、いろ―んな意味で厄介な高位魔族なのだから。
警戒を解かないあたしに、その魔族はにっこり笑って答えた。
「いやー、実は休暇中で暇になったものですから、リナさんどうしてるかな―と思って」
「仕事じゃないって?」
「はい。あ、疑ってますね」
「あたりまえじゃない」
そんなわかりきったことを。
「そんなぁ。僕ってそんなに信用ないんですかぁ?」
「うん」
もちろん即答である。
・・・あ、いじけてる。
「で、何しにきたのよ」
「え、ですからリナさんに会いに(はぁと)」
疑わしい、胡散臭い、そんな表情を顔中に浮かべていただろう。
ゼロスはちょっと苦笑すると、目ざとく短冊を見つけた。
「おや、短冊ですね。何を願ったんですか?」
「え?ちょっと見ないでよ。って見えないか」
そう、確か書いた本人とアルファにしか見えないはずよね。よかったよかった。
「見えないって、僕を誰だと思ってるんですか」
「万年中間管理職」
「そんなぁ」
「えー、だって、あんたいくら仕事ができても昇進とかないんでしょう?ず―――――――――っとそのまま働き続けるのよねぇ」
あたしの言葉に、すこ―しだけ笑顔を引きつらせるゼロス。
しかし、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「・・・で、ですね、これ読めますよ?」
「は?」
「まあ、ふつうの方には見えないかもしれませんがね」
なんで?まあ、こいつはふつうの人間じゃないから読めても不思議じゃない。でも、・・・何か引っかかる。
『・・・私の上司様も読めますけどね』
笑顔とともに急に思い出される言葉。そう言えば、もう一人いた・・・!?
・・・でも、なんで織女に上司がいるのよ?ってことは、もしかして・・。
「つまり、あんたが作ったものなわけね?」
そういえばあのアルファって、誰かに似てるような気がしてたのよね―。
「なんのことですか」
「あのニセモノの織女、あんたの差し金でしょう。ぜーんぶ、あんたの計画ってことか。それで、今度は何を考えているのかしらぁ?」
「おや、ばれてしまいましたか」
やけにあっさり認めるゼロスに、あたしの怒りは爆発する。
「『おや、ばれてしまいましたか』じゃない!!どうせ休暇ってのも嘘なんでしょう?さあ、何を企んでいるのか吐いてもらいましょうか」
そういいながら襟首をつかんで締めあげてやると、
「ちょ、ちょっと待ってくださいよー。休暇は本当ですし、何も企んでなんかいませんってば」
慌てたように言う。が、散々仕組まれた後では全く説得力は無い。・・・もともと信用が無いせいとも言うかもしれない。
「そんなの信じられるかぁ!!」
「本当ですよぉ。夏季休暇と年末年始休暇が取れるんです」
「かききゅうかぁ?」
思わず手を離して考えてみる。魔族が休暇?それも、夏季休暇に年末年始休暇?こいつらって一体・・・?
でも、今はそんなことよりも目的追及が先よね。まぁた、厄介ごとに巻き込まれるのは絶対に避けたいし。
冷静に判断すると、とりあえず質問を繰り返すことにした。
「・・・で、目的は?」
「えーと、もし願いが叶うと言われたらリナさんは何を願われるのかなーと思いまして・・・」
「裏は?」
「裏なんかありませんって。それが、目的です。・・・でも、嬉しいですねぇ。これを願ってくださるなんて」
短冊をひらひらさせながらにっこり笑顔でそう言う。
忘れてたけど、しっかり見られてたのね・・・。
「・・・そんなの冗談に決まってるでしょ」
赤くなった顔を隠すようにそっぽを向く。
「えー、冗談なんですかぁ?」
「人を騙しといて・・・。まったく、本物の織女に怒られるわよ」
「大丈夫ですよ。今日は七夕ですからね、恋人達のかわいいいたずらは許してくれますって」
「誰と誰が恋人達だって言うのよ?」
「もちろん、僕とリナさんのことです♪」
臆面もなく放たれたセリフに、あたしはかなり疲れを感じながら言った。
「ったく、あんたの仕業なら、やっぱりあっちにすれば良かったなぁ」
もっと難しいものを書いてやれば良かった・・・。
「僕はこれで満足ですよ♪」
「あたしは不満足よ」
「まあ、いいじゃないですか。・・・ところで、散歩にでも行きませんか?せっかくこんなにいい夜なんですからね」
言うや否や、返事を聞く前にあたしの手を取って引き寄せると、つぎの瞬間にはもう外に出ていた。
そこは、おそらく昼いた森の中だろう。
大きな湖の辺で、一面に小さな白い花が咲いていた。
「ちょっと、あたしはまだ行くなんて言ってないでしょうがっ」
抱き寄せたまま離そうとしないこいつに、何を言っても無駄だとはわかっていても、やっぱり言わずにはいられないが・・・
「駄目なんですか?」
急に真面目な顔で覗きこむあいつの、その夜色の瞳にいつも負けてしまうから、・・・結局、答えはいつも同じになってしまう。
「・・・駄目じゃないけど」
「じゃあ、事後承諾と言うことで」
「はいはい」
まったくいつもながら、よく連れ出してくれるわよね。
それにしても、仮にも獣神官ともあろう魔族が、あぁんなマヌケな計画を真面目に考えて実行するなんて・・・、そう思うと自然と笑いがこみ上げてきた。
くすくす笑っているあたしに、あいつは不思議そうに問いかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
「・・・よくあんな馬鹿馬鹿しい計画を考えついたな―と思って」
そう答えると、あいつはいつもより柔らかい笑顔を見せた。
「・・・結構いい計画だと思うんですけどね」
「そういうのを『公私混同』って言うのよ?あんたの部下も大変ねー。そのうち内部告発で左遷されても知らないから」
「そうしたら、仕事も減って楽になりますねぇ。・・・それに、面と向かってあなたに伺っても、本心を答えて頂けないでしょうから」
「・・・今回は七夕に免じて許してあげるわよ」
たとえ仕組まれたものであろうと、あたしの願いは叶ったことになるしね。
「それはよかった♪」
ふと、あたしの願いは知られているのに、ゼロスの願いを知らないのはなんか悔しいような気がした。
最も、魔族であるこいつが願うことなんて、聞かなくてもなんとなくわかるような気はする。でも・・・
「ところで、あんたは何か願ったの?・・・願うわけないよね―」
「いやだなぁ、僕だって特別に願うことくらいありますよ。それに、どうしてあの計画をわざわざ考えたと思ってるんですか」
「暇だから」
「違いますよぉ。そんなに暇じゃないですって」
「もったいぶってないで、さっさと教えなさいよね」 
「はいはい。僕が特別に願うのは、・・・いつだってあなたのことですよ」
心の何処かで望んでいたかもしれない答えを得て、あたしはあいつの腕の中で満足そうに微笑んだ。
七夕の夜は深けていく・・・・・・



もしも願いが叶うなら・・・?
―――あたしが願うのは、あなたに逢えること。
   ずっと側にいられなくても、いいから。
   一瞬の出逢いでも、いいから。
   でも、あたしからは逢いに行けない。
   ・・・だから、あたしに逢いに来て・・・・・・。




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ああ、私は何が書きたかったんでしょう?自分でもわからない・・・。(←そんなもの投稿するなって・・・)
そうそう、ゼロス様の計画が思いっっっっっっきりマヌケになってしまったのは、・・・私のせいです。(これでも、ゼロスファンなのに・・・)
それに、あの世界には七夕なんてないでしょうに・・・。
とりあえず、苦情は謹んでお受け致します。

それでは、失礼します。(こんな駄文書いてる場合じゃないのになぁ・・・)