◆−窓ガラスから向こうへ その1−F-2 (2009/10/5 01:17:08) No.34607
 ┗お久しぶりですー!−月読 乾 (2009/10/10 19:35:05) No.34648
  ┗Re:お久しぶりですー!−F-2 (2009/10/12 01:41:53) No.34654


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34607窓ガラスから向こうへ その1F-2 2009/10/5 01:17:08


ジリリリリリリ・・・
  ジリリリリリリリ・・・
    ジリリリリ・・・・・   ガチャ・・・
「もう、何よ? 今何時だと思ってるの?」
「うーん、午前4時15分35秒かな。 いや、ごめん、38秒だった。」
「秒なんてどうでもいいでしょ?」
「君が聞いたんじゃないか 何時か って。」
「そうじゃなくて、・・・
  ああ、もういいわ。 それで、何の用?」
「用は・・・特にないんだけど・・・ その・・」
「え? はっきりしてよ。」
「用はないよ。」
「あんたねえ・・・・」
「ただ・・・」
「ただ?」
「君がまだ生きてるかな、って確かめたかっただけ。」
「なにそれ・・・」
「嘘だよ。  本当は、・・・君の声がききたくて」
「なあにー? そんなにわたしが恋しくなったわけ? 
 あんたも男っぽいところあるじゃない」
「まあ、嘘だけどね。」
「・・・」
「明日、午後1時ころ、グリーンビルの屋上に来てくれない?」
「え、・・・いいけど・・ 」
「そう。なら よかった。」
「ねえ、・・・」
「なに?」
「ちゃんと用事、あったじゃない」
「じゃ、また明日。  僕は眠くて仕方ないから寝るよ。」
「ちょっと・・・」

ブツっ・・・
ツーツーツーツー・・・・・・
電話の音がやけにうるさく聞こえる。
なんだよ。
私のほうが眠いに決まってる・・・
そういうことを彼に言っても無駄だというのを、
私はよく知っている。

私は、受話器を戻して、そのままベッドに倒れた。
バフっ。
ふかふかの布団から盛大に舞い上がったほこりが
容赦なく私の顔にかかってくる。
「へっくし! ・・うっ!!・・・・」
くしゃみをした瞬間に背中に激痛を感じた。
一緒に寝ていた、かわいい三毛猫、そして最愛の相棒である、
たねこ、が驚いて背中を引っかいたのだ。
「痛っつー・・・」
背中をさすりながら、たねこを見ると、またすやすやと寝入っている。
「・・・このやろー・・・・」
そういって、尻尾をはたいてやろうと思ったけど、
そういう気も、この寝顔を見ると、失せてしまうのだ。
とはいっても、この突然の(それでいて、けっこう痛い)ひっかきのせいで、
私は完全に目が覚めてしまった。
することもないから、とりあえず冷蔵庫に、ビール、
いや、正確にいえば、発泡酒をとりにいく。
そんなに大きくもなくて、月に雑誌を5つか6つ、
出すか出さないかの出版社の、
中堅(自称)記者を稼業にする私には、
ビールはちょっと高い。
「さてと・・・」
プシュッ!! 
ビー・・・発泡酒のプルタブを起こし、
私は町と、そして海が見える、ちょっぴりゴージャスな光景・・・
(私の自己満足だけれど・・・)
のみえる
窓の前の床に、腰を下ろした。
お気に入りの場所だ。
考えごとをするときはいつもここに座る。
まあ、この狭い部屋では、窓があって、座るスペースがあるのはここしかないのだけれど、なぜか、落ち着くのだ。
うーん。
今夜の考え事は、もちろん、
さっきの彼の、よくわからない、でもいつも通り、な感じの電話だ。
外をぼーっと眺める。
あ、二匹の鳥が、こんな時間にもかかわらず、
いや、こんな時間だからこそなのだろうか
おいかけっこをしている。
ずいぶん楽しそうだと思った。

私は、、私はなぜ彼をおいかけているのだろう。
ふとそう思った。

私と彼との初めての出会いは、
私が記者になりたてのころ、
もういまから6年も前のことでだ。
彼は、ボスだった。
町のラーメン屋の。
すごく小さい店の。
でも、
それでいて、お客さんの行列が毎日できるような店の、
店長だった。

私がはじめて任された記事は、雑誌のグルメ欄だった。
「かくれた名店をさがせ!」
いかにもありきたりなテーマを、
今見れば、
「何だよ。この安っぽいタイトルは。」
というところだけど、
そのころは、自分にとっての最高の仕事だ、と思って、
快く受け入れていた。
「やるぞ!」
元気いっぱいの私を、年配の先輩記者たちはほほえましそうに
見ていたのをよく覚えている。
そして、私は、意気揚々と取材に向かったのだ。
寄寓にも、その取材先が、  彼の店だったのだ。
彼の店で、はじめて取材を経験した私は、
彼に会うどころか、店にさえ入れなかった。
店は、定休日だった。
張り紙にそう書いてあった。
ふと、誰かが店の脇から出てきた。
「あ、あの・・・」
わたしはあの時、声をかけなかったほうがよかったと今でも思っている。
「定休日って水曜じゃなかったんですか?」
「・・・・そうだよ。定休日は、水曜だ」
「じゃあ、なんで今日は・・・木曜ですよ?」
「あなたが来たからです」
「は?」
「僕、取材とか苦手なんで」
「え、でも、編集長からアポは取ってあるって・・・・」
「ああ、そうだったね。でも、君、編集長じゃないよね?」
「は、・・・はい。・・」
「じゃ、だめだ。 君とは約束してない。」
「で、でも、・・・」
「帰ってくれ。君は、僕にとって、
記者じゃなくて、ただの女の子でしかない。
そんな子に話すことはないよ。」
彼は満面の笑顔を私に向けてきた。
私は、悔しかった。

その取材から帰ってきたときの、
私の落ち込み具合は、
110円の缶コーヒーさえおごってくれないあの
ケチケチ編集長が
「新入り、がんばれよ。」と焼肉に連れて行ってくれたぐらい、
ひどいものだった。
原因はもちろん、
彼だ。
 







:::::つづくかも知れません。















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34648お久しぶりですー!月読 乾 2009/10/10 19:35:05
記事番号34607へのコメント

何年か前、チャットでお世話になったものです(笑)

久しぶりに作品を拝見させていただきました!

ちょっと大人の恋愛もの(?)な感じになりそうな予感が(笑)

続きを楽しみにしてますねー!

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34654Re:お久しぶりですー!F-2 2009/10/12 01:41:53
記事番号34648へのコメント

月読 乾さん
本当にお久しぶりです!!!
お話してからもう3年もたっているのに、・・・
覚えてもらっていて大変うれしいです!!

試験とかで、最近チョッと忙しいので、また少ししたら、
書いていきたいと思います。

いやあ・・・それにしてもまたお話したいです。