◆−未知なる魔法の大迷宮−白昼幻夢 (2007/7/2 15:54:46) No.33175


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33175未知なる魔法の大迷宮白昼幻夢 2007/7/2 15:54:46


この世には、二種類の考え方がある。
善と悪?
いや、そうではない。
「攻撃こそ最大の防御」か「防御こそ最大の攻撃」
という考えだ。
さて、あなたならどちらを選ぶ?
魔王の庇護か、女神の加護か・・・・・。


未知なる魔法の大迷宮 (1)


あたし、リナ=インバースこと凄腕美少女魔導士は、とある王国へやってきた。
なんでも、ここの王様が退屈しのぎに、城下町の地下へ魔法の大迷宮を作ったらしい。
そして、こう宣言した。
「迷宮の最下層まで来れた者には、その者が持つのにふさわしい宝物をやろう。その者が、真に欲する宝物じゃ」
「ふさわしい」とか「本当に欲しい宝」ってコトバ、胡散臭いのよね・・・・・。
だが、王様は元々優秀な魔術師。
そんなにやる気無いけど、いっちょあたしの名前を轟かせるチャンスかも。
この国には今世界中の冒険者が殺到している。
魔術師の王様のおたからをゲットし、冒険者の中の冒険者として、あたしは有名になる!
さあ、さっそくお城へレッツゴー!


「おぬしかな?最近噂の魔導士というのは・・・」
王様はあたしの姿を一目見るなり、そう言った。
「リナ=インバースと申します」
「きけば山賊や盗賊などの悪党から金品を奪っているそーじゃのー。そんなに路銀が足りぬか?」

ずごっ!

あたしは思わずこけてしまった。
い、いや、足りないってわけじゃないけど・・・
稼いでいるんですよ、冒険者だから。

「わしも昔、すべての海を渡りすべての山を越えすべての砂漠を歩いたが、路銀稼ぎといえばやはり襲ってくるモンスターを倒すことだったかの。その中には海賊も山賊も盗賊もいたなぁ。しかし、おぬしは強盗まがいのことをしているらしいな」
「盗賊に正義はありません。よって、あたしが盗賊から宝物を取ったとしても、強盗にはなりません」
悪党に正義は求めないわよ。おたからはふんだくるけど。
「冒険者が盗賊を襲うのかのー?まあよい、おぬしもまた迷宮の宝を求めて来た冒険者なのだから、あれこれ詮索はよそう」
はいはい。
「さて、迷宮に挑むときの注意事項だが、魔法や武器で壊そうとしてはならんぞ」
えっ・・・?
「最下層にある、というから前に魔法で迷宮を壊そうとした者がいたがの、その者は二度と迷宮へ入れなくなったのじゃ。ふぉっふぉっふぉっふぉ。自業自得じゃ」
うーん・・・自力でおたから探せってことね。
そう考えつつ、(でかい魔法で迷宮ぶっ壊せばおたから見つかる!)なんて思ってたあたし。
王様は一枚上手だった・・・。
「あの、迷宮の入り口はどこに?」
「迷宮への扉は・・・・・それを探すのもまた冒険の一つだろう」

はぁー?

その言葉にまたこけそうになりながらも、あたしはその場に踏みとどまった。
な、なーんか、この王様、とんじゃってるなぁ・・・。

「入り口はいたるところにあるぞ。だが、見つけられなかった者も決して少なくない。頑張って見つけるのじゃぞ。ふぉっふぉっふぉ」

うわー、元・冒険者の王子様ってこんな感じなのかしらん・・・・・
あたしはすごすごと、予約しておいた宿屋に引き下がった。


今は冒険者セールで、食事も宿泊も半額ってことはありがたいけど、早く迷宮の入り口を見つけないと!
なにせ城下町を歩いているのは、町の人より冒険者の数が多いってのも問題。
このあたし、おたからを奪うのは好きだけど奪われるってのは好きじゃない。

約一週間、町のいたるところを歩いて、隅々まで探したけどまったく入り口らしいところは見つからない。
魔法の反応もまったく無い。
町ごとふっ飛ばせば見つかるかなーなんて思ったけど、
そうすると郷里のねえちゃんがやってくる。
おぉ怖い。

探して十日目の夜、宿で夕ご飯を食べていたときのこと。
「・・・キミは、もしかして魔導士かい?」
「ああ、そーだけど」
あたしは、エビフライを口にくわえたまま後ろを振り返った。
見ると、薄い桃色の長い髪をした、若そうな剣士が立っていた。
端整な顔をしているが、男か女かはわからない。
しっかしあたしがイライラしているときに、よりによって嫌いなピンク色なんて・・・
「キミも「魔法の大迷宮」の噂を聞いて、この国にやってきたのかい?」
「ええ、そーよ」
あたしはつっけどんに答えて、夕ご飯のほうへ向き直った。
するとそいつは、あたしに近づいてきて周りには聞こえないほどのの小声でこうささやいた。
「・・・「迷宮の扉」ではなく「真に欲する宝」を探せ。そうすれば、おのずと道は開ける・・・」
あたしは思わず後ろを振り向いた。
そいつは、にこりと微笑むとその場から去っていった。

なんなのよ、あの謎めいた笑いは。


あたしは自分の部屋に入ると、ドアを勢いよく閉めた。
扉じゃなくて宝を探せって、そりゃ宝探しだからね。でも宝を探すためにまず扉を見つけないといけないわけでしょ?
するとなに、あたしが今までやってきたことって「扉探し」?
「なんなのよぉ、あいつ!」
あたしはそう叫ぶと、ベッドにごろんと転がり眠りに入ろうとした。

だが、気になる。
あたしが本当に欲しいもの?

ねえちゃんよりも優れた名声。
でも、それは良い意味でも悪い意味でも、恐らく手に入っている。

何かの本に「女の一番求めるものは、この世で最も偉大な男を支配すること」と書いてあった。
あたしまだ恋愛経験ナシ。
ていうか、出会った男のなかでマシなやつはいない。
一番マシだったのは・・・郷里のとうちゃんくらいかな。恋愛対象外じゃん。

あたしのいちばんほしいもの?

・・・あえて言うなら、おたから。
山積みの金貨。大粒の宝石。とにかく、金銭的価値の高いもの。


・・・・・それか、お守り、かな。
思春期を迎えた女の子なら、誰でも「例の日」がやってくる。
その日が近づくと、魔法をあやつる全ての女性は、魔法力が落ちてしまう。
体が自分一人のものではなくなってしまうのだ。
特に、結婚して乙女でなくなると今まで使っていた魔法力は半減されてしまう。
家庭のことを司る神に仕えている神官や司祭は、そうでもないらしいけど。
とにかく、力を失ってしまう時に守ってくれるタリスマンみたいなものがあればなぁ、と思う。
それか「例の日」が近づいても、普通の日と同じように魔法が使えるパワーリングみたいなもの、ないかなぁ。
簡単な魔法を宝石に閉じ込めた「魔法石」はあたしの十八番だけど、
「例の日」はあたしの魔法ではどうしようもできない。
それこそ神か魔王に頼まないとねぇ・・・・・

あたしがそんなことを考えていると、ふと部屋の揺れを感じた。
地震かしら?
あたしはとっさに、ベッドから机の下に転がり込み、その脚をつかみ縮こまった。
揺れはだんだん大きくなる。
不思議なことに、悲鳴などはいっさい聞こえてこない。
みなさん、超熟ですか?
いや、食パンじゃないけど。

そんなことを思った瞬間。

あたしがしゃがんでいた床が抜けた。
「えっなに?!ちょっ・・・・・」
あたしは自分の体が落ちるのを感じていた。だが、それと同時に机の脚をしっかりつかんだはずだった。
なのに、あたしは下に強く引っ張られていく。その力に耐えられず、あたしは手を離してしまった。

あたしは暗闇に落ちていく。
自分の悲鳴は聞こえなかった。
というよりも、あたしは闇に吸い込まれていくうちに、意識を失ってしまった。


意識がふっと戻ったとき、あたしはひんやりとした岩肌の地面に倒れていた。
手足に力が入らない。
ここはどこなのだろう?

「やぁ。随分早く来てくれたね」
その声とともに、すっとあたしの視界に入った者がいた。
ぼやけてはいるが、あたしの嫌いなピンク色をした、長い髪の毛・・・
「・・・ぁぅ・・・ぁ・・・ぁ・・・ぅぁ・・・・・」
あたしの声は、言葉にはならなかった。
そいつは、ふところから一枚のカードみたいなものを取り出すと、あたしの方へ放った。
それはあたしの目の前に落ちた。
すぐさまそれはぼんやりと光りだす。

あたしはまた、意識が遠のいていくのを感じていた。

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書いてみて思ったんですけど、リナってこんなに気絶するんでしょうか・・・