◆−『僕と君とが誓ったこと +赦してとは言わない+』のこと−十叶 夕海 (2006/10/18 20:22:42) No.32828
 ┗貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序の序章−十叶 夕海 (2006/10/18 20:38:45) No.32829
  ┣貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章@−十叶 夕海 (2006/10/18 20:53:39) No.32830
  ┃┗誰が鴉を殺したか?−月読乾 (2006/10/22 20:52:43) No.32836
  ┃ ┗誰が、遊女を殺したか?のほうかな。−十叶 夕海 (2006/10/22 21:59:05) No.32837
  ┣赦すとは…?−月読乾 (2006/10/20 22:55:53) No.32831
  ┃┗願い、希望、祈り、叶うことの無いモノ。−十叶 夕海 (2006/10/20 23:05:20) No.32832
  ┣貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章A−十叶 夕海 (2006/10/25 21:22:50) No.32841
  ┃┗夢はいずれは覚めるもの…−月読 乾 (2006/10/28 01:51:13) No.32842
  ┃ ┗されど、今はまだ微睡みの中・・・・−十叶 夕海 (2006/10/28 23:05:02) No.32846
  ┣貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章Bー@−十叶 夕海 (2006/10/29 12:05:28) No.32848
  ┃┗知らない方がいい事もあるのか、知ったから超えないといけないのか…−月読 乾 (2006/11/15 20:34:56) No.32872
  ┃ ┗知らなければ行けないからこそ、苦悩しなければならない・・・・・。−十叶 夕海 (2006/11/15 23:38:39) No.32875
  ┣貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章BーA−十叶 夕海 (2006/11/6 00:54:46) No.32856
  ┃┗醒めた時に気づく物…−月読 乾 (2006/12/1 23:27:33) No.32921
  ┃ ┗それが、吉凶どちらか・・・・−十叶 夕海 (2006/12/2 14:54:37) No.32924
  ┗貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 解説&整理−十叶 夕海 (2006/11/12 15:25:18) No.32867
   ┗デス・ノート…?(リスト!−月読 乾 (2006/12/4 09:17:18) No.32928
    ┗さあさて、次は、悪夢の前の幸せな夢さね、−十叶 夕海 (2006/12/4 22:38:43) No.32930


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32828『僕と君とが誓ったこと +赦してとは言わない+』のこと十叶 夕海 2006/10/18 20:22:42




七月半ばに、登場人物募集をした『僕と君とが誓ったこと +赦してとは言わない+』のことでお知らせです。
『Lacrimosa +雪の山荘殺人事件+』で、某氏の前の職業のコトがちらりと出ましたので、連載始動です。

幾つかのシーンで、かなり古い原稿をリテイクして、書いておりますので、今の原稿との差が激しいかもしれません。
どのくらい古いかと言いますと、私がここに初登校した『タロット・スピリッツ』よりも、やや前の初めて書いた完全オリジナルのお話からなのです。


それでは、始動です!!

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32829貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序の序章十叶 夕海 2006/10/18 20:38:45
記事番号32828へのコメント




さあさて、今回、語り部役は、わたくしこと、アルベスタ=リバードラゴンが、勤めます。

二代目のベリアルでも、構いません。

正確に言いますなら、この物語の主人公・ジュリ=ローゼンマリアが、師匠・サラディン=クレフォレムに導かれる【過去夢】の中の案内人とでもいうのが、妥当でしょう。

三つの序章で語られる。

『本当の彼女』と『今の彼女』は違うのでしょうか。

そして、『本当の彼女』が死亡することに何故なったのでしょうか?

『彼女のため』にして、『彼女のため』にならなかったこととは?

なぜ、ジュリは知らないのでしょうか?

さあさて、甘い甘い毒のような、苦い苦い薬のような 『過去』。

ジュリ=ローゼンクロイツと乾詠太郎の『忘れられた過去』とは。


開演にございます。







@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


タイトルは、結局変えました。
メインタイトルは、ジュリ視点。
サブタイトルは、みんなの視点から。

それぞれ付けました。

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32830貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章@十叶 夕海 2006/10/18 20:53:39
記事番号32829へのコメント





 序章@  【アルコイリス】達が悩むこと





晴れ渡る空。
澄み切って、何処までも続きそうなその青空に、似合わないような似合うような表情の狐が、白亜の豪邸を見下ろせる緑の丘に居た。
その狐は、銀色の毛並みで、光の反射で輝いて見え、尾が九つに裂け、瞳は漆塗りのような少し赤の混じった琥珀。
彼・・・そう呼ばせてもらおう・・・は、青白い墓石に寄り添うように、寝そべっていた。
目に入るのは、緑茂る木々、底が見えるほど透明に澄み渡った湖、愛らしくさえずる小鳥の姿、懸命に咲いている小さな花。
彼の名前は、階(きざはし)。
「変わらないのう・・・・・ここは・・・・・」
懐かしむように・・・・或いは痛みに耐えるように、つぶやいて、美しい森の景観を目でなぞる
その視界の端には、首から掛けた鎖に通した指輪も、揺れる。
月が彫られたモノだ。
長い年月の間に、表面はくすんでいる。



『ねぇ、階(きざはし)、リュイネ、ハユリさん。
 見て見て、キレイでしょ、ここ。少し前に、見つけたんだ。』
『はい、これあげる。
 この指輪ね、ファス先生の授業の時に作ったの。
 へへ、初めてだけど、それなりに上手く出来たんだ。』



「お主が居ったときと・・・・・何も変わらぬよ、ジュリ。」
絞り出すような刹なに切ない声で、感情が浮かんでいない赤琥珀の瞳を青白い墓石に眼を向ける。
ムラの無いその石碑に刻まれている名前は、八百年近く前の彼の教え子の名前。
刻まれたその名前を眼でなぞり、懐かしむかのように、苦しむかのように眼を細める。
「御主は此処が好きじゃったの。」
この石碑は、もう八百年前に此の場所に建てられた。
なのに、くすむことは愚か、苔の一欠片も生えては居ない。
階(きざはし)と彼の主人を含めた8人がそうしたのだ。
彼と彼の主人、他の何人かが、自分たちが殺した本当彼女の眠る墓を朽ち果てさせたくなかった。
口では、嫌っていた何人かも、協力して。
自分たちの呪いで保たれている命が続く限り、石碑が綺麗に保たれ、花が絶えることが無いように。
決して誰かが、この場所を荒らさないように。
階を含む【アルコイリス】と呼ばれた七人と彼の主人がそう魔法を掛けた。
本当の彼女が、決して自分たちに、弔われることを望んでいなくても、そうせずには居られなかったのだ。
「墓に意味は無いんじゃがのう。
 魄(はく)の抜けた躯が、朽ちていき、やがて土に帰り消える場所なんじゃが。」
(それすらも叶わない。
 あの子は、ここに居るんじゃが、此処に居ないのじゃ。)
などと、言葉にできぬ想いが胸を締める。
けれど、そうだと分かっていても。
この場を訪れることをやめることはできない。
自分だけではない。
彼女を嫌っていると公言して憚らないファスファリオンと言う存在ですら、月が一巡りする間に、二度は来る。
彼女がこの世を去ってから、すでに数えるには長い年月が流れてしまったというのに、それでも【アルコイリス】たちはここを訪れることをやめられなかった。
それがただの感傷だと分かっていても、やめることはできない。
この場所だけが、もうすでに鬼籍に入ってしまった本当の彼女につながるよすがのようで。
蜘蛛の糸のように儚いそのつながりにすがるように、訪れることは止めることが出来ない。
それが、同時に自分たちに、自分たちの罪を思い出させることだとしても。
「教えてくれんかのう。
 どうすれば、儂らを許してくれるんじゃ?」
まるで、後悔をするような口調でそう呟く階。
誰も答えるものがいないのに。


『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』


思い出したくもないのに、鮮明に鮮明に思い出せる、本当のあの少女の最期の言葉。


『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』


絶望と憤りと哀しみに頬を濡らしながら彼女が吐いた、最初で最後の呪いの言葉。
まるで言葉自体が呪いのように、あのときの彼女の声が、顔が、脳裏に焼きついてはなれない。
困ったようにはにかむ顔、わんわん大声で泣いた顔、泣きそうな顔、拗ねた顔、そのどれをも覚えているはずなのに、どうしても思い出すことができない。
「・・・・教えてくれんかのう。」
かつて確かに自分に向けられたはずの優しい表情を、どうしても思い出すことができないのだ。
長く生きすぎた自分の人生で一番嬉しかったあの笑顔を。
「階の翁。
 もう、そろそろ、雨になるわ。
 屋敷に戻りましょう。」
「リュイネか。」
考え込む階に声を掛けたのは、突然現れた女性。
炎のような揺らめきがある瞳と腰までの長い髪で、炎のように暖かみのある雰囲気。
特徴は、右脇腹から、左肩までを縦断するサラマンデルの刺青。
服装は、紅くきらびやかな踊り子の服。ビキニと短いパレオに腕輪などの飾りを付けている。
外見は、二十代半ばぐらいだろう。
彼女も、【アルコイリス】の一角だ。
「翁。
 やっぱり、忘れられないわね。
 あの子の為って言っても・・・・詭弁よね、やっぱり。」
「・・・・・・・降ってくると面倒じゃわい。
 戻るとしようか、リュイネ。」
「ええ。」
二人は、眼下の白亜の城をしばし見つめる。
それとほぼ同時に、二人は最初から居なかったかのように、その丘から掻き消えた。











ほぼ同時刻―。
白亜の豪邸一角。
そこは、壁一面が、ガラスで、晴れていれば、日向ぼっこをするのにちょうど良いだろう。
窓ガラスの前に、数セットの骨董品の域に入る応接セットが置いてある。
その一つで、二つの影が、Lになってお茶を飲んでいた。
一人は、女の子と言って良いまだ幼い容貌の少女。
髪は長くて深い緑色、薄い青色で切れ長の眼、すっきりした目鼻立ち、えらがあるが、長い髪で見えない。
アンティークドールが着ていそうなそんなゴスロリチックな暗い色でまとめたブラウスとスカート、上衣。
いつも背負っているウサギのバッグは、横に鎮座している。
もう一人は、少女よりも、女性と言った方が良い二十歳ぐらいの女性。
磨かれた金属のような、輝く銀鼠(ぎんねず)色。まっすぐで、身の丈よりも長い髪、髪と同色の瞳。
髪と目の色を気にしなければ、日本人形を思わせる神秘的美人。身長160cm弱ぐらいだ。
闇色の十二単と月色の桧扇を持っている。
少女の胸と女性の桧扇の飾り紐の先に、同じような指輪が揺れている。
少女のものは、『雨の意匠』。
女性のものは、『霞の意匠』。
「辛いものよの、ハユリ殿。」
「そうであるの。
 永くを此処で過ごしておるが、それでも、あの時のことを思い出すたびに、胸が切のうなる。」
ある種、両極端の二人。
水の人外/無機物の人外
子どもの外見/大人の外見。
近距離補助系/中距離攻撃兼補助系。
狂信的主人愛/恩人的友愛。
それでも、二人は、八百年前のあのデキゴトに縛られている。
物理的にも、精神的にも。
彼女達は、ただそれが、教え子の『ジュリ=ローゼンマリア』の為にしたことであると胸を張っていえる。
言えるが、同時に、『彼女』が、拒み・・・・・あのデキゴトの結末に繋がったことも知っている。
「のう、ハユリ殿。
 あの時、私らは、正しゅうことをしたんぞよの?」
「そう、アレは、妾達にとっては、正しいことじゃ。」
「『私らにとって』?」
「分っておるのではないか?
 レーナよ、アレは、妾達にしてみれば、『好意からきた正しい』ことなのじゃ。
 じゃが、それが、ジュリにしてみれば、許せんなんだんじゃろうな。」
「分りたくもないことよの、それは。
 何故、自分の命が危ないと分っても・・・・・・」
少女―レーナ=ヒストールは、八百年経っても答えを出したくない質問を女性―映璃比女、通称:ハユリにぶつける。
ハユリにしてみれば、分り切っていることだ。
まだ、主のサラディンに出会う前の自分も経験した感情でもあるからだ。

♪ 三千世界の鴉を殺し
      主と朝寝をしてみたい   ♪

ハユリは、朗々とそう詩を吟じる。
すると、レーナは、はっとしたように顔を上げる。
昔、何度かハユリがジュリに教えていた一般教養(もう一つ、【念動】も教えていた)で、レーナも一緒に聞いていた時に、本当の彼女も、今の彼女も、熱心に意味を聞いていた。

『全部の世界の朝を告げる鳥を殺して
    愛しい貴方といつまでもいつまでも微睡んでいたい』

そんな春を売る女達の切なくも、情の凄まじさを歌った歌だと言われている。
ただこの人と決めた人だけが居れば良い。
それが、本当の彼女の感情だった。
それを【アルコイリス】とサラディン=クレフォルムは、認めなかった。
何よりも、彼女のために。
だけど、そんな親愛であり、驕った感情が彼女を殺した。
・・・・・殺させたのだ。
「・・・・私も、分るぞよ。
 わかるが、それを認めとうないのじゃ。」
「認めたくなくても、認めないといけないことよの。」
「ハユリ殿は、何故そんなに、冷静に居られるんじゃ。」
「・・・・・冷静と言うか・・・・あの子は、妾にとって、子どもや孫と言う存在に近い故。
 近い故に、喜びさえすれ、憤るのは違うじゃろうて。
 そう思う。・・・・・あの時は、そう思えなんだが。
 そちも、あの子の友人であろう?」
「でも、あの子の命が・・・・」
憤るかのように勢いよく、レーナは、ハユリに言う。
しかし、ハユリの孫に対するような優しい優しい語調の言葉に、レーナの言葉は、語尾が聴こえないほどに弱くなる。
レーナにも、分っている、
それでも認めることが出来なくて。
「・・・・・雨が降りそう。
 ハユリ殿、私は部屋に戻るぞよ。」
「・・・了承した。
 妾が、始末しておこう。」
レーナが、この場から逃げたいと言うのを気付いていながら、ハユリはそれを許した。
自分以外誰も居なくなるととたんに、がらんとする。
ハユリは、その人形のような顔の額に、しわを寄せ黙考する。
「・・・・・・さて、サラが、何かをするつもりのようじゃが。
 どう、動くか。
 叶わぬと解っては居るが、あの子に会いたいものよの。」















@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@−@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー@ー


はい、始まりました。
ジュリが覚えていないジュリの過去話。
少なくとも、救いらしい救いは皆無だと言うことを覚えておいてくださいませ。
ハッピーエンドで終わらせる予定ですが。
過去編の中での救いは無いのです。


【アルコイリス】は、スペイン語で、【虹】の意味です。
元々は、『サラディン直属の戦闘部下』・・・・八百年前の人外の世界では、最強と唄われた『七人の総称』でした。
『でした』ということは、はい、過去形です。
今は、また別の意味での『七人の総称』になっています。


さて、次回は、【アルコイリス】の残り三人です。
それでは、お楽しみに。

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32836誰が鴉を殺したか?月読乾 2006/10/22 20:52:43
記事番号32830へのコメント

>晴れ渡る空。
>澄み切って、何処までも続きそうなその青空に、似合わないような似合うような表情の狐が、白亜の豪邸を見下ろせる緑の丘に居た。

白亜の豪邸…
そして、狐…
う〜む…白亜の豪邸って事は、この場所はさすがに現代の日本では無いのかな?

>その狐は、銀色の毛並みで、光の反射で輝いて見え、尾が九つに裂け、瞳は漆塗りのような少し赤の混じった琥珀。
>彼・・・そう呼ばせてもらおう・・・は、青白い墓石に寄り添うように、寝そべっていた。
>目に入るのは、緑茂る木々、底が見えるほど透明に澄み渡った湖、愛らしくさえずる小鳥の姿、懸命に咲いている小さな花。
>彼の名前は、階(きざはし)。
>「変わらないのう・・・・・ここは・・・・・」
>懐かしむように・・・・或いは痛みに耐えるように、つぶやいて、美しい森の景観を目でなぞる
>その視界の端には、首から掛けた鎖に通した指輪も、揺れる。
>月が彫られたモノだ。
>長い年月の間に、表面はくすんでいる。

昔に思いを馳せて呟いていますけど、これは、心の声?
それとも、本当に口を伝って人語が出ているんでしょうか?

>
>『ねぇ、階(きざはし)、リュイネ、ハユリさん。
> 見て見て、キレイでしょ、ここ。少し前に、見つけたんだ。』
>『はい、これあげる。
> この指輪ね、ファス先生の授業の時に作ったの。
> へへ、初めてだけど、それなりに上手く出来たんだ。』

階さん…(?)と、他の2人にこの場所を見せた人(?)
言葉からすると、少年でしょうか?

最後のハユリって名前のキャラクターは、他の2人と少し違った存在であるみたいですね。

>「お主が居ったときと・・・・・何も変わらぬよ、ジュリ。」
>絞り出すような刹なに切ない声で、感情が浮かんでいない赤琥珀の瞳を青白い墓石に眼を向ける。
>ムラの無いその石碑に刻まれている名前は、八百年近く前の彼の教え子の名前。
>刻まれたその名前を眼でなぞり、懐かしむかのように、苦しむかのように眼を細める。

…って

ええ〜!!
この方が、ジュリさんの師匠だったんですか(最も、ジュリさんの師匠は複数いるみたいですけど…)!?

彼(ですよね?)は一体、どういう経緯で何を教えたのでしょうか?

>「御主は此処が好きじゃったの。」
>この石碑は、もう八百年前に此の場所に建てられた。
>なのに、くすむことは愚か、苔の一欠片も生えては居ない。
>階(きざはし)と彼の主人を含めた8人がそうしたのだ。
>彼と彼の主人、他の何人かが、自分たちが殺した本当彼女の眠る墓を朽ち果てさせたくなかった。

この、主人…のニュアンスがちょっと微妙かも…
存在は狐である階さんの「飼い主」か、或いは正真正銘の主従関係?

>口では、嫌っていた何人かも、協力して。
>自分たちの呪いで保たれている命が続く限り、石碑が綺麗に保たれ、花が絶えることが無いように。
>決して誰かが、この場所を荒らさないように。
>階を含む【アルコイリス】と呼ばれた七人と彼の主人がそう魔法を掛けた。

どういう行動目的のメンバー?
かなり、キッチリ組織然とした集まりみたいですが…

>本当の彼女が、決して自分たちに、弔われることを望んでいなくても、そうせずには居られなかったのだ。
>「墓に意味は無いんじゃがのう。
> 魄(はく)の抜けた躯が、朽ちていき、やがて土に帰り消える場所なんじゃが。」
>(それすらも叶わない。
> あの子は、ここに居るんじゃが、此処に居ないのじゃ。)
>などと、言葉にできぬ想いが胸を締める。
>けれど、そうだと分かっていても。
>この場を訪れることをやめることはできない。

少なくとも、肉体を分離して中身を移す…
多分、禁断と呼ばれる行為は未だに答えが出ていない…?

何故、そういう事をしないといけなかったのか…

>自分だけではない。
>彼女を嫌っていると公言して憚らないファスファリオンと言う存在ですら、月が一巡りする間に、二度は来る。
>彼女がこの世を去ってから、すでに数えるには長い年月が流れてしまったというのに、それでも【アルコイリス】たちはここを訪れることをやめられなかった。
>それがただの感傷だと分かっていても、やめることはできない。
>この場所だけが、もうすでに鬼籍に入ってしまった本当の彼女につながるよすがのようで。
>蜘蛛の糸のように儚いそのつながりにすがるように、訪れることは止めることが出来ない。
>それが、同時に自分たちに、自分たちの罪を思い出させることだとしても。
>「教えてくれんかのう。
> どうすれば、儂らを許してくれるんじゃ?」
>まるで、後悔をするような口調でそう呟く階。
>誰も答えるものがいないのに。

ところで、アルコイリスのメンバーは、今も全員が健在なんでしょうか?
そして、この話を見る限り、既に彼女に行った時点で本来は隠居同然の身だった?
今も、こうして感傷に浸るのを見ると、そう感じるのですが。

>『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
> 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』
>
>
>思い出したくもないのに、鮮明に鮮明に思い出せる、本当のあの少女の最期の言葉。
>
>
>『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
> 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』

望んだ行為では無かたみたいですね。
例え、直接の強制でなくても…

>絶望と憤りと哀しみに頬を濡らしながら彼女が吐いた、最初で最後の呪いの言葉。
>まるで言葉自体が呪いのように、あのときの彼女の声が、顔が、脳裏に焼きついてはなれない。
>困ったようにはにかむ顔、わんわん大声で泣いた顔、泣きそうな顔、拗ねた顔、そのどれをも覚えているはずなのに、どうしても思い出すことができない。
>「・・・・教えてくれんかのう。」
>かつて確かに自分に向けられたはずの優しい表情を、どうしても思い出すことができないのだ。
>長く生きすぎた自分の人生で一番嬉しかったあの笑顔を。
>「階の翁。
> もう、そろそろ、雨になるわ。
> 屋敷に戻りましょう。」
>「リュイネか。」
>考え込む階に声を掛けたのは、突然現れた女性。
>炎のような揺らめきがある瞳と腰までの長い髪で、炎のように暖かみのある雰囲気。
>特徴は、右脇腹から、左肩までを縦断するサラマンデルの刺青。
>服装は、紅くきらびやかな踊り子の服。ビキニと短いパレオに腕輪などの飾りを付けている。
>外見は、二十代半ばぐらいだろう。
>彼女も、【アルコイリス】の一角だ。
>「翁。
> やっぱり、忘れられないわね。
> あの子の為って言っても・・・・詭弁よね、やっぱり。」
>「・・・・・・・降ってくると面倒じゃわい。
> 戻るとしようか、リュイネ。」
>「ええ。」
>二人は、眼下の白亜の城をしばし見つめる。
>それとほぼ同時に、二人は最初から居なかったかのように、その丘から掻き消えた。
>

??
彼女は、800年前に名前の出た人(?)と同一?
さっき、既に組織は機能していないみたいな考えを言いましたけど、
そういうわけでもない?

ほぼ同時刻―。
>白亜の豪邸一角。
>そこは、壁一面が、ガラスで、晴れていれば、日向ぼっこをするのにちょうど良いだろう。
>窓ガラスの前に、数セットの骨董品の域に入る応接セットが置いてある。
>その一つで、二つの影が、Lになってお茶を飲んでいた。
>一人は、女の子と言って良いまだ幼い容貌の少女。
>髪は長くて深い緑色、薄い青色で切れ長の眼、すっきりした目鼻立ち、えらがあるが、長い髪で見えない。
>アンティークドールが着ていそうなそんなゴスロリチックな暗い色でまとめたブラウスとスカート、上衣。
>いつも背負っているウサギのバッグは、横に鎮座している。
>もう一人は、少女よりも、女性と言った方が良い二十歳ぐらいの女性。
>磨かれた金属のような、輝く銀鼠(ぎんねず)色。まっすぐで、身の丈よりも長い髪、髪と同色の瞳。
>髪と目の色を気にしなければ、日本人形を思わせる神秘的美人。身長160cm弱ぐらいだ。
>闇色の十二単と月色の桧扇を持っている。
>少女の胸と女性の桧扇の飾り紐の先に、同じような指輪が揺れている。
>少女のものは、『雨の意匠』。
>女性のものは、『霞の意匠』。
>「辛いものよの、ハユリ殿。」
>「そうであるの。
> 永くを此処で過ごしておるが、それでも、あの時のことを思い出すたびに、胸が切のうなる。」
>ある種、両極端の二人。
>水の人外/無機物の人外
>子どもの外見/大人の外見。
>近距離補助系/中距離攻撃兼補助系。
>狂信的主人愛/恩人的友愛。
>それでも、二人は、八百年前のあのデキゴトに縛られている。
>物理的にも、精神的にも。
>彼女達は、ただそれが、教え子の『ジュリ=ローゼンマリア』の為にしたことであると胸を張っていえる。
>言えるが、同時に、『彼女』が、拒み・・・・・あのデキゴトの結末に繋がったことも知っている。

何か、目的を持って集められたメンバーみたいですね。
彼らの出自も気になります

>「のう、ハユリ殿。
> あの時、私らは、正しゅうことをしたんぞよの?」
>「そう、アレは、妾達にとっては、正しいことじゃ。」
>「『私らにとって』?」
>「分っておるのではないか?
> レーナよ、アレは、妾達にしてみれば、『好意からきた正しい』ことなのじゃ。
> じゃが、それが、ジュリにしてみれば、許せんなんだんじゃろうな。」
>「分りたくもないことよの、それは。
> 何故、自分の命が危ないと分っても・・・・・・」
>少女―レーナ=ヒストールは、八百年経っても答えを出したくない質問を女性―映璃比女、通称:ハユリにぶつける。
>ハユリにしてみれば、分り切っていることだ。
>まだ、主のサラディンに出会う前の自分も経験した感情でもあるからだ。
>
>♪ 三千世界の鴉を殺し
>      主と朝寝をしてみたい   ♪
>
>ハユリは、朗々とそう詩を吟じる。
>すると、レーナは、はっとしたように顔を上げる。
>昔、何度かハユリがジュリに教えていた一般教養(もう一つ、【念動】も教えていた)で、レーナも一緒に聞いていた時に、本当の彼女も、今の彼女も、熱心に意味を聞いていた。
>
>『全部の世界の朝を告げる鳥を殺して
>    愛しい貴方といつまでもいつまでも微睡んでいたい』
>
>そんな春を売る女達の切なくも、情の凄まじさを歌った歌だと言われている。
>ただこの人と決めた人だけが居れば良い。
>それが、本当の彼女の感情だった。
>それを【アルコイリス】とサラディン=クレフォルムは、認めなかった。
>何よりも、彼女のために。
>だけど、そんな親愛であり、驕った感情が彼女を殺した。
>・・・・・殺させたのだ。
>「・・・・私も、分るぞよ。
> わかるが、それを認めとうないのじゃ。」
>「認めたくなくても、認めないといけないことよの。」
>「ハユリ殿は、何故そんなに、冷静に居られるんじゃ。」
>「・・・・・冷静と言うか・・・・あの子は、妾にとって、子どもや孫と言う存在に近い故。
> 近い故に、喜びさえすれ、憤るのは違うじゃろうて。
> そう思う。・・・・・あの時は、そう思えなんだが。
> そちも、あの子の友人であろう?」
>「でも、あの子の命が・・・・」
>憤るかのように勢いよく、レーナは、ハユリに言う。
>しかし、ハユリの孫に対するような優しい優しい語調の言葉に、レーナの言葉は、語尾が聴こえないほどに弱くなる。
>レーナにも、分っている、
>それでも認めることが出来なくて。
>「・・・・・雨が降りそう。
> ハユリ殿、私は部屋に戻るぞよ。」
>「・・・了承した。
> 妾が、始末しておこう。」
>レーナが、この場から逃げたいと言うのを気付いていながら、ハユリはそれを許した。
>自分以外誰も居なくなるととたんに、がらんとする。
>ハユリは、その人形のような顔の額に、しわを寄せ黙考する。
>「・・・・・・さて、サラが、何かをするつもりのようじゃが。
> どう、動くか。
> 叶わぬと解っては居るが、あの子に会いたいものよの。」
>

歌の意味は、あまり良くわからなかったのですが
ジュリさんの出自にかかわる話?

すごく気になります。

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32837誰が、遊女を殺したか?のほうかな。十叶 夕海 2006/10/22 21:59:05
記事番号32836へのコメント


>>晴れ渡る空。
>>澄み切って、何処までも続きそうなその青空に、似合わないような似合うような表情の狐が、白亜の豪邸を見下ろせる緑の丘に居た。
>
>白亜の豪邸…
>そして、狐…
>う〜む…白亜の豪邸って事は、この場所はさすがに現代の日本では無いのかな?

そうですね、『現代』ではあるけれど、日本ではないです。
欧州のどこか山奥の結界の中と言うことになります。

>
>>その狐は、銀色の毛並みで、光の反射で輝いて見え、尾が九つに裂け、瞳は漆塗りのような少し赤の混じった琥珀。
>>彼・・・そう呼ばせてもらおう・・・は、青白い墓石に寄り添うように、寝そべっていた。
>>目に入るのは、緑茂る木々、底が見えるほど透明に澄み渡った湖、愛らしくさえずる小鳥の姿、懸命に咲いている小さな花。
>>彼の名前は、階(きざはし)。
>>「変わらないのう・・・・・ここは・・・・・」
>>懐かしむように・・・・或いは痛みに耐えるように、つぶやいて、美しい森の景観を目でなぞる
>>その視界の端には、首から掛けた鎖に通した指輪も、揺れる。
>>月が彫られたモノだ。
>>長い年月の間に、表面はくすんでいる。
>
>昔に思いを馳せて呟いていますけど、これは、心の声?
>それとも、本当に口を伝って人語が出ているんでしょうか?

実際に、喋ってます。
玉藻とか、妲己とか、と同類の狐さんです。

>
>>
>>『ねぇ、階(きざはし)、リュイネ、ハユリさん。
>> 見て見て、キレイでしょ、ここ。少し前に、見つけたんだ。』
>>『はい、これあげる。
>> この指輪ね、ファス先生の授業の時に作ったの。
>> へへ、初めてだけど、それなりに上手く出来たんだ。』
>
>階さん…(?)と、他の2人にこの場所を見せた人(?)
>言葉からすると、少年でしょうか?
>
>最後のハユリって名前のキャラクターは、他の2人と少し違った存在であるみたいですね。

少女ですね・・・・父子家庭で育ったので。

そうですね、少女にとって、少し恐いけど大好きなおばあちゃんって感じでしょうか?

>
>>「お主が居ったときと・・・・・何も変わらぬよ、ジュリ。」
>>絞り出すような刹なに切ない声で、感情が浮かんでいない赤琥珀の瞳を青白い墓石に眼を向ける。
>>ムラの無いその石碑に刻まれている名前は、八百年近く前の彼の教え子の名前。
>>刻まれたその名前を眼でなぞり、懐かしむかのように、苦しむかのように眼を細める。
>
>…って
>
>ええ〜!!
>この方が、ジュリさんの師匠だったんですか(最も、ジュリさんの師匠は複数いるみたいですけど…)!?
>
>彼(ですよね?)は一体、どういう経緯で何を教えたのでしょうか?

師匠は、サラディンさんだけですね。
他は、先生とかそういうのです。

彼らが、何故そうなったのかは、本編で、ですね。

>
>>「御主は此処が好きじゃったの。」
>>この石碑は、もう八百年前に此の場所に建てられた。
>>なのに、くすむことは愚か、苔の一欠片も生えては居ない。
>>階(きざはし)と彼の主人を含めた8人がそうしたのだ。
>>彼と彼の主人、他の何人かが、自分たちが殺した本当彼女の眠る墓を朽ち果てさせたくなかった。
>
>この、主人…のニュアンスがちょっと微妙かも…
>存在は狐である階さんの「飼い主」か、或いは正真正銘の主従関係?

正真正銘の主従関係ではあるけど・・・・・チョイと複雑ですね。

>
>>口では、嫌っていた何人かも、協力して。
>>自分たちの呪いで保たれている命が続く限り、石碑が綺麗に保たれ、花が絶えることが無いように。
>>決して誰かが、この場所を荒らさないように。
>>階を含む【アルコイリス】と呼ばれた七人と彼の主人がそう魔法を掛けた。
>
>どういう行動目的のメンバー?
>かなり、キッチリ組織然とした集まりみたいですが…

後書きにあるように、最強の【人外集団】でしたね、『あのデキゴト』までは。
組織と言うほど組織然とはしてなく、どちらかと言えば、サークルとかあんな感じかな。

>
>>本当の彼女が、決して自分たちに、弔われることを望んでいなくても、そうせずには居られなかったのだ。
>>「墓に意味は無いんじゃがのう。
>> 魄(はく)の抜けた躯が、朽ちていき、やがて土に帰り消える場所なんじゃが。」
>>(それすらも叶わない。
>> あの子は、ここに居るんじゃが、此処に居ないのじゃ。)
>>などと、言葉にできぬ想いが胸を締める。
>>けれど、そうだと分かっていても。
>>この場を訪れることをやめることはできない。
>
>少なくとも、肉体を分離して中身を移す…
>多分、禁断と呼ばれる行為は未だに答えが出ていない…?
>
>何故、そういう事をしないといけなかったのか…

ちょっと、ややこしいんです。
一応、ジュリ嬢は、生まれてから、現代まで、今の身体のままです。
その禁断に近い行為自体が問題なのではなく、そうしなくちゃいけなかったことに、彼は悩んでいるのです。


何故、そうしなくちゃいけなかったか。
・・・・それが、この物語のキモなのです。

>
>>自分だけではない。
>>彼女を嫌っていると公言して憚らないファスファリオンと言う存在ですら、月が一巡りする間に、二度は来る。
>>彼女がこの世を去ってから、すでに数えるには長い年月が流れてしまったというのに、それでも【アルコイリス】たちはここを訪れることをやめられなかった。
>>それがただの感傷だと分かっていても、やめることはできない。
>>この場所だけが、もうすでに鬼籍に入ってしまった本当の彼女につながるよすがのようで。
>>蜘蛛の糸のように儚いそのつながりにすがるように、訪れることは止めることが出来ない。
>>それが、同時に自分たちに、自分たちの罪を思い出させることだとしても。
>>「教えてくれんかのう。
>> どうすれば、儂らを許してくれるんじゃ?」
>>まるで、後悔をするような口調でそう呟く階。
>>誰も答えるものがいないのに。
>
>ところで、アルコイリスのメンバーは、今も全員が健在なんでしょうか?
>そして、この話を見る限り、既に彼女に行った時点で本来は隠居同然の身だった?
>今も、こうして感傷に浸るのを見ると、そう感じるのですが。

健在ですね、何人かは、時の理を破り、何人かは大変不本意な形で。
行った当時・・・直後二十年ぐらいまでは、半隠居ですね。
一応、『最強の人外集団』として、名前は通っていましたが。
『アイツ』よりも、長く一緒にいたし、懐いていてくれたのに、何故?、ということが、答えを出せずに悶々と八百年って言う感じでしょうね。

>
>>『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
>> 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』
>>
>>
>>思い出したくもないのに、鮮明に鮮明に思い出せる、本当のあの少女の最期の言葉。
>>
>>
>>『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
>> 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』
>
>望んだ行為では無かたみたいですね。
>例え、直接の強制でなくても…

彼女のため。というオブラートに包んではいました。
・・・・でも、彼女は拒んだ。
大好きなあの人を縛る一部になるぐらいなら、師匠達も、自分たちも嫌い。
縛る鎖になるなら、自分の命すらいらない。

直接の強制ではないからこそ、始末が悪いと言うこともあります。

>
>>絶望と憤りと哀しみに頬を濡らしながら彼女が吐いた、最初で最後の呪いの言葉。
>>まるで言葉自体が呪いのように、あのときの彼女の声が、顔が、脳裏に焼きついてはなれない。
>>困ったようにはにかむ顔、わんわん大声で泣いた顔、泣きそうな顔、拗ねた顔、そのどれをも覚えているはずなのに、どうしても思い出すことができない。
>>「・・・・教えてくれんかのう。」
>>かつて確かに自分に向けられたはずの優しい表情を、どうしても思い出すことができないのだ。
>>長く生きすぎた自分の人生で一番嬉しかったあの笑顔を。
>>「階の翁。
>> もう、そろそろ、雨になるわ。
>> 屋敷に戻りましょう。」
>>「リュイネか。」
>>考え込む階に声を掛けたのは、突然現れた女性。
>>炎のような揺らめきがある瞳と腰までの長い髪で、炎のように暖かみのある雰囲気。
>>特徴は、右脇腹から、左肩までを縦断するサラマンデルの刺青。
>>服装は、紅くきらびやかな踊り子の服。ビキニと短いパレオに腕輪などの飾りを付けている。
>>外見は、二十代半ばぐらいだろう。
>>彼女も、【アルコイリス】の一角だ。
>>「翁。
>> やっぱり、忘れられないわね。
>> あの子の為って言っても・・・・詭弁よね、やっぱり。」
>>「・・・・・・・降ってくると面倒じゃわい。
>> 戻るとしようか、リュイネ。」
>>「ええ。」
>>二人は、眼下の白亜の城をしばし見つめる。
>>それとほぼ同時に、二人は最初から居なかったかのように、その丘から掻き消えた。
>>
>
>??
>彼女は、800年前に名前の出た人(?)と同一?
>さっき、既に組織は機能していないみたいな考えを言いましたけど、
>そういうわけでもない?

同一です。
組織としては、機能・・・・・・していると言う感じですね。
休眠状態ですけど。
ある程度の年齢の人外なら、恐れるし。
年若い人外でも、思い当たる程度には、組織として・・・集まりとして、形はあります。



>
>ほぼ同時刻―。
>>白亜の豪邸一角。
>>そこは、壁一面が、ガラスで、晴れていれば、日向ぼっこをするのにちょうど良いだろう。
>>窓ガラスの前に、数セットの骨董品の域に入る応接セットが置いてある。
>>その一つで、二つの影が、Lになってお茶を飲んでいた。
>>一人は、女の子と言って良いまだ幼い容貌の少女。
>>髪は長くて深い緑色、薄い青色で切れ長の眼、すっきりした目鼻立ち、えらがあるが、長い髪で見えない。
>>アンティークドールが着ていそうなそんなゴスロリチックな暗い色でまとめたブラウスとスカート、上衣。
>>いつも背負っているウサギのバッグは、横に鎮座している。
>>もう一人は、少女よりも、女性と言った方が良い二十歳ぐらいの女性。
>>磨かれた金属のような、輝く銀鼠(ぎんねず)色。まっすぐで、身の丈よりも長い髪、髪と同色の瞳。
>>髪と目の色を気にしなければ、日本人形を思わせる神秘的美人。身長160cm弱ぐらいだ。
>>闇色の十二単と月色の桧扇を持っている。
>>少女の胸と女性の桧扇の飾り紐の先に、同じような指輪が揺れている。
>>少女のものは、『雨の意匠』。
>>女性のものは、『霞の意匠』。
>>「辛いものよの、ハユリ殿。」
>>「そうであるの。
>> 永くを此処で過ごしておるが、それでも、あの時のことを思い出すたびに、胸が切のうなる。」
>>ある種、両極端の二人。
>>水の人外/無機物の人外
>>子どもの外見/大人の外見。
>>近距離補助系/中距離攻撃兼補助系。
>>狂信的主人愛/恩人的友愛。
>>それでも、二人は、八百年前のあのデキゴトに縛られている。
>>物理的にも、精神的にも。
>>彼女達は、ただそれが、教え子の『ジュリ=ローゼンマリア』の為にしたことであると胸を張っていえる。
>>言えるが、同時に、『彼女』が、拒み・・・・・あのデキゴトの結末に繋がったことも知っている。
>
>何か、目的を持って集められたメンバーみたいですね。
>彼らの出自も気になります

集められたと言うのが、半分、残りは集まったかな。
サラディンの人柄に引かれ、或いは反発するかのように集まった。

あまり決めてないですが、断片的には、過去編でちらほら出てきます。

>
>>「のう、ハユリ殿。
>> あの時、私らは、正しゅうことをしたんぞよの?」
>>「そう、アレは、妾達にとっては、正しいことじゃ。」
>>「『私らにとって』?」
>>「分っておるのではないか?
>> レーナよ、アレは、妾達にしてみれば、『好意からきた正しい』ことなのじゃ。
>> じゃが、それが、ジュリにしてみれば、許せんなんだんじゃろうな。」
>>「分りたくもないことよの、それは。
>> 何故、自分の命が危ないと分っても・・・・・・」
>>少女―レーナ=ヒストールは、八百年経っても答えを出したくない質問を女性―映璃比女、通称:ハユリにぶつける。
>>ハユリにしてみれば、分り切っていることだ。
>>まだ、主のサラディンに出会う前の自分も経験した感情でもあるからだ。
>>
>>♪ 三千世界の鴉を殺し
>>      主と朝寝をしてみたい   ♪
>>
>>ハユリは、朗々とそう詩を吟じる。
>>すると、レーナは、はっとしたように顔を上げる。
>>昔、何度かハユリがジュリに教えていた一般教養(もう一つ、【念動】も教えていた)で、レーナも一緒に聞いていた時に、本当の彼女も、今の彼女も、熱心に意味を聞いていた。
>>
>>『全部の世界の朝を告げる鳥を殺して
>>    愛しい貴方といつまでもいつまでも微睡んでいたい』
>>
>>そんな春を売る女達の切なくも、情の凄まじさを歌った歌だと言われている。
>>ただこの人と決めた人だけが居れば良い。
>>それが、本当の彼女の感情だった。
>>それを【アルコイリス】とサラディン=クレフォルムは、認めなかった。
>>何よりも、彼女のために。
>>だけど、そんな親愛であり、驕った感情が彼女を殺した。
>>・・・・・殺させたのだ。
>>「・・・・私も、分るぞよ。
>> わかるが、それを認めとうないのじゃ。」
>>「認めたくなくても、認めないといけないことよの。」
>>「ハユリ殿は、何故そんなに、冷静に居られるんじゃ。」
>>「・・・・・冷静と言うか・・・・あの子は、妾にとって、子どもや孫と言う存在に近い故。
>> 近い故に、喜びさえすれ、憤るのは違うじゃろうて。
>> そう思う。・・・・・あの時は、そう思えなんだが。
>> そちも、あの子の友人であろう?」
>>「でも、あの子の命が・・・・」
>>憤るかのように勢いよく、レーナは、ハユリに言う。
>>しかし、ハユリの孫に対するような優しい優しい語調の言葉に、レーナの言葉は、語尾が聴こえないほどに弱くなる。
>>レーナにも、分っている、
>>それでも認めることが出来なくて。
>>「・・・・・雨が降りそう。
>> ハユリ殿、私は部屋に戻るぞよ。」
>>「・・・了承した。
>> 妾が、始末しておこう。」
>>レーナが、この場から逃げたいと言うのを気付いていながら、ハユリはそれを許した。
>>自分以外誰も居なくなるととたんに、がらんとする。
>>ハユリは、その人形のような顔の額に、しわを寄せ黙考する。
>>「・・・・・・さて、サラが、何かをするつもりのようじゃが。
>> どう、動くか。
>> 叶わぬと解っては居るが、あの子に会いたいものよの。」
>>
>
>歌の意味は、あまり良くわからなかったのですが
>ジュリさんの出自にかかわる話?
>
>すごく気になります。


時代考証無茶苦茶な歌になりますが。
過去本編でも、ちょくちょく出てきます。


出自というか、あやふやな何年かを埋める形になるのかな。


なるべく早く公開できるようにがんばりますね。
ありがとうございます。

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32831赦すとは…?月読乾 2006/10/20 22:55:53
記事番号32829へのコメント

>さあさて、今回、語り部役は、わたくしこと、アルベスタ=リバードラゴンが、勤めます。
>
>二代目のベリアルでも、構いません。
>
>正確に言いますなら、この物語の主人公・ジュリ=ローゼンマリアが、師匠・サラディン=クレフォレムに導かれる【過去夢】の中の案内人とでもいうのが、妥当でしょう。
>
>三つの序章で語られる。
>
>『本当の彼女』と『今の彼女』は違うのでしょうか。
>
>そして、『本当の彼女』が死亡することに何故なったのでしょうか?
>
>『彼女のため』にして、『彼女のため』にならなかったこととは?
>
>なぜ、ジュリは知らないのでしょうか?
>
>さあさて、甘い甘い毒のような、苦い苦い薬のような 『過去』。
>
>ジュリ=ローゼンクロイツと乾詠太郎の『忘れられた過去』とは。
>
>
>開演にございます。
>

今回は、いつにも増して随分謎めいた幕開けですね。
歌劇みたいな…
どうなるのか、読み進めることにします

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32832願い、希望、祈り、叶うことの無いモノ。十叶 夕海 2006/10/20 23:05:20
記事番号32831へのコメント


>>さあさて、今回、語り部役は、わたくしこと、アルベスタ=リバードラゴンが、勤めます。
>>
>>二代目のベリアルでも、構いません。
>>
>>正確に言いますなら、この物語の主人公・ジュリ=ローゼンマリアが、師匠・サラディン=クレフォレムに導かれる【過去夢】の中の案内人とでもいうのが、妥当でしょう。
>>
>>三つの序章で語られる。
>>
>>『本当の彼女』と『今の彼女』は違うのでしょうか。
>>
>>そして、『本当の彼女』が死亡することに何故なったのでしょうか?
>>
>>『彼女のため』にして、『彼女のため』にならなかったこととは?
>>
>>なぜ、ジュリは知らないのでしょうか?
>>
>>さあさて、甘い甘い毒のような、苦い苦い薬のような 『過去』。
>>
>>ジュリ=ローゼンクロイツと乾詠太郎の『忘れられた過去』とは。
>>
>>
>>開演にございます。
>>
>
>今回は、いつにも増して随分謎めいた幕開けですね。
>歌劇みたいな…
>どうなるのか、読み進めることにします


一応、以前の乾氏の短編とアルベスタ&アスタロトの短編の謎を回収する意味合いもありますし。

・・・・・ちょっと、現実味が無い話なんですよね。
彼らに、とって真実でありはしたけど。

はい、ありがとうございます。

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32841貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章A十叶 夕海 2006/10/25 21:22:50
記事番号32829へのコメント






   序章A 【アルコイリス】達が 祈ること





数時間後―。
雨が止み、冷えた空気がその白亜の豪邸を支配していた。
その豪邸には、尖塔が幾つかある。
高低あわせて、9つ。
その中の一つに、腰掛ける人物が一つ。
風に、髪やショールをなぶらせる間にさせている。
その人物は、若葉色に銀を溶かし込んだ波打つ豊かな髪と淡い琥珀色の瞳、薄い紅茶のような日に焼けていない肌。
普通、紅茶というと日に焼けた肌をイメージをするだろうが、その人物は、その肌の色でも、日に焼けたイメージよりも、すべらかなイメージが先立つ感じだ。
年齢は、まだ子どもにも、老成した大人にも見える。
敢えて言うなら、二十代半ばから三十歳ぐらい。
性別は、多分男。女性と言うには、彼の雰囲気はそぐわない気がした。
浮かぶ表情は、何処までも笑顔で。
他の表情を想像すら出来ない。
まるで最初から、笑顔であったかのように。
着ているのは、濃いグレイのぴったりとしたハイネックとズボン、黒の飾り気の無いヒールのあるロングブーツ。
その上に、柔らかいたっぷりとしたわずかに光沢のある淡いエメラルドグリーンの七分丈の上衣。
上衣よりやや濃い色合いのショールをその上に巻き付けている。
頭には、黒色の幅広な布を金属輪の連なりで、止め巻いていた。
その金属の輪の一つは、指輪だった。
『雷』の指輪。これも、本当の彼女にもらった。
手にしているのは、リュートやマンダリンを合わせたような楽器。
それにしても、よく落ちないものだ。
古い様式の豪邸のせいか、高さは今の高層建築と比べるべくもないが、それでも、天井高めな造りなせいもあって、20メートルぐらいだ。
それに、尖塔と言うこともあり、30メートルぐらいの位置に居るのに、ふかふかのソファに座っているように、リラックスしている。
「もう、800年なんだね。
 ジュリちゃんが、居なくなってから、もう800年。
 君に、『お兄ちゃん』とか、言われたり。君が、僕の後に着いてくるのも。
 悪い気はしなかったんだけどな。
 ・・・・・・・・なんで、【魂喰らい】なんかに惚れたんだい。
 僕は、ただ、君に死んで欲しくなかっただけなのに。」
誰も、答える人がいないのに、彼は、呟く。
ただ、過去を懐かしむかのように。
ただ、過日を喜ぶかのように。
ただ、過去の後悔を紡ぐかのように。
眼を閉じ、ただ思考する。
何故、本当の彼女が、命を絶ってしまったのか。
何故、本当の彼女は、自分の命が危なくてもアイツを愛したのか。
何故、本当の彼女は、自分たちではなく、アイツを選んだのか。
解らない・・・・・というよりは、解りたくない。
「僕も、アイツが悪いとは、思っていないんだけど。
 ・・・・・アイツを悪いとそれを言ってしまったら、僕のジュリちゃんへの感情はどうなるのかな。」
「何をぐたぐたと。
 男ならば、もっと、しゃっきりとしろ、トーラー」
「・・・・ロンか。
 そんなに、気分じゃないの。」
「金糸雀(カナリヤ)のように、貴殿がさえずってないと、私も調子が出ん。」
「・・・・カナリヤって、女の子扱いなんだね、ロン。
 そういう言い方、嫌いだって言わなかったかな?」
尖塔の屋根に座っている青年に、声を掛けたのも、また別の青年。
その青年―ロンと呼ばれたーは、白く短い髪と切れ長の瞳が、クールなイメージの黒でまとめられた現代チックな服装の青年。
その首から下がる太い鎖の先にも、指輪が光っている。
『雲』の意匠である。
名前を周献龍という。
彼は、一部を本性に戻し、背中に翼を生やし中空に浮かんでいた。
弦楽器を持っているのは、トーラーと言う名らしい。
「ねぇ、ロン。
 四百年前に、『死んで』、中途半端に『呪い』から自由になって、どう?」
「何度目だ、貴殿のその質問は?」
「さあ?
 でも、貴方しか、いないだろ?
 偶発的にしろ、中途半端にしろ、『呪い』から逃れ出れたのは。」
「確かにな。
 ・・・・・・お前達、妖魔には、今の状況は堪え難いだろうな。」
「・・・・・・・そうだねぇ。
 でも、あの子に囚われてると考えれば、今以上に幸せなんか無いんだよ。
 あの子が覚えていないにしろ、ね。」
「マゾか、狂信者だな、トーラー。」
「違うよ、ロン。
 狂信者とか、マゾと言う言葉は、ファスにこそだろ。
 僕のは、恋だよ、少し歪んでしまったかもしれないけどね。」
「・・・・・あの歌を唄ってくれるか?」
「ロンも、まだ、思ってんじゃん。
 半分は、義務感とかにしろ、お前は、半ば『呪い』に縛られてはいるけれど、別に一族に戻っても、構わないのに、此処にいるし。」
「・・・・・・」
トーラーの軽口、ある意味図星だったのか、無言で『唄うのかどうなのか?』とでも言う風に、献龍は、睨む。
『はいはい、唄いますよ』とでも、返すように、持っていた弦楽器の糸巻きを少し強めに張る。
唄い出す一瞬、泣きそうな、そのまま崩れそうな微笑みをトーラーは浮かべ、唄い始める。





♪  遥か遥かの 幾星霜 刻(とき)過ぎて
   我ら 【アルコイリス】が 
   傾国の最強と呼ばい、歌われしは過去のこと
   今は 呪われし者と 呼ばい 唄われる。      ♪

♪  【樹姫】は【魂喰い】に 恋をした
    兄と 父と 慕いし【アルコイリス】よりも
   【魂喰い】 選び 恋慕する
    その結末は 如何とした 悲劇か喜劇か 如何とした ♪

♪   八芒星(オクタグラム)の鎖にて
    【樹姫】の縛鎖によりて
    【魂喰い】は 奈落が深淵へと封ずられる
    されど それが【樹姫】の命を刈り取った     ♪

♪   何故(なにゆえ)に 【樹姫】は死を迎う
    何故(なにゆえ)に 【魂喰い】に惚れ慕う
    【アルコイリス】と【鮮血微笑】には
    幾星霜の刻過ぎし 今もわからぬことよ      ♪







「それでも、会えないのは辛いね。
 あの術の効き目を長持ちさせるためとはいえね。」
「なんとな、知らないのか?」
「何を?」
「クレフォレムが、動いた。
 ・・・・・・嵐になるやも知れぬぞ。」
唄い終わったトーラーが、彼に言う訳でなく、呟いた言葉に、彼にしては珍しく、驚きを混ぜて返した献龍。
それの中の、『クレフォレム』は、彼の『主』のファミリーネームだ。
献龍にしてみれば、体裁上、部下についているので、あまり好きではない人物だ。
「・・・・戻ろう、ロン。」
「シュヴァルツェ・カッツ、買ってきたんだが、飲むか?」
「黒猫ね。
 あの子も、最初はそうだったね。
 警戒心たっぷりで。」
「そうだな。
 ・・・・・全く懐かしい。」
そう言いつつ、二人は、尖塔の窓から室内に入り、献龍の私室へ消えていった。













先ほどの二人が、会話を始めたのとほぼ、同時刻。
この白亜の豪邸の図書室。
窓の一つを除いて、壁と言う壁に、本棚がある。
吹き抜けになっている二階も、同様だ。
部屋の中央に、古ぼけてはいたが、精緻な細工の机とソファのセット。
その一つと副机を一階部分唯一の窓に寄せ、本を読む人物が一人。
名前は、ファスファリオン=ローディエル。
髪は、淡い金色で、ゆるくウェーブがかっていて、腰くらいまで長さ。今は細められている瞳は、黄昏色。
外見だけでは、性別も年齢も、解らない。背丈は、座っていても解るほどに高かった。
その彼を、特徴づけているのが、背中に生えた、暗緑色の3対の翼。
ランプと月光に照らされている服は、一見すると、目立たない程度に縫取りの入った漆黒の長衣という、地味目のもの。
しかし、ほんのページをめくるわずかな動作でも、時折光るものがある。
縫取りに見えるのは、沢山の小粒だが極上の宝石が縫い付けられて図柄になっているものである。
彼を飾っている装飾品は、服に縫い付けられた宝石と同じモノのピアスと短めの革ひもに通した銀色の指輪。
意匠は、『花』。
ホタルブクロの花が彫り込まれた指輪。
ランプの火の爆ぜるかすかな音だけが、しばらく響く。
「そう言えば、サラディン様は、お出かけでしたね。」
ふと顔を上げ、そう呟く。
音が消え、またしばらくすると、また呟く。
「あの娘に会いに行ったのでしたね。
 サラディン様に、あれだけ思われたのに。
 【アルコイリス】や、私より愛されていましたのに、それでも、あの【魂喰い】を選んだあの小娘。」
プツンと、『それは違う』とでも、抗議するかのように、ファスファリオンの首の革ひもが切れた。誰の抗議か解らなかったが、たぶん、ファスファリオンにはあの小娘からの抗議と言うより、敬愛するサラディンからの抗議に思えた。
しかも、責めると言うより、困ったように微笑み叱るそんな抗議。
まるで、自分には居ないはずの母に怒られるような、そんな様相が、彼の頭によぎる。
「・・・・・・・・でも、何故なのでしょうね。
 始めて邂逅したとき程、今は嫌いではありません。
 無論、好きとはお世辞にも言えはしないですが・・・・・・言えはしないですが。」
彼は、昔・・・・・・堕天してからサラディンに会うまでの百年よりも短い時間しか共有していなかった教え子のことを思い出す。
本当の彼女で、八年。
そのあとで、八十年。
会わせても九十年にも足りない時間しか一緒に居なかった。
サラディンが、惚れていたクロイツの吸血鬼的な子どもだし、連れてきたが、仲良くする毛頭は無かった。
風系統の術の先生になった時には、無理難題をふっかけたりしても、

『先生、次を』とか、『先生、ここはこうした方が、効率的になりますね。』

そう言って、食らいついてきた。
少なくとも、人間的には、嫌いな部類ではなかった。
サラディン様に気に入られているところが、一番嫌いでそれが大嫌いに繋がった。
でも、あの娘や他の【アルコイリス】と過ごした時間は悪くなかった。
良いと言う訳でもなかったが。
でも、その本当の彼女も、最期には、


『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』


『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』


『あの人の 縛鎖になるなら、この命などいらない。
 あの人の居ない背かになんか意味が無いのに・・・・。
 ごめんね・・・・・・でも、愛してたよ、×××。』


と、言い放ち、自ら命を絶った。
「・・・・・なんて、名前でしたかね、【魂喰い】は、それすらも覚えていない遠い日のことなのに。
 ・・・・・・・・・・終わりも、変化も、望めないと言うのは、つまらないのですが。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・決着がつかないのは、とてもイライラしますね。」
本当に、何がしたかったんですか?
どういうつもりだったんですか?
その二つの質問をファスファリオンは、飲み込み、忘れたいかのように、思考すらしたくないように、本を読み解くことに、集中する。
しかし、今夜の主・サラディンの外出の理由知っているためか、遅々として進まないのも、また事実だった。




@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


というわけで、序章Aです。
いろいろと、悩んだ上での内容です。

トーラーの歌やファスファリオンと階の覚えている台詞は、あくまで、『彼らが覚えている』モノであって、『真実』ではないのかもしれないし、そうではあるのかもしれないものです。
この先の本編も、アルベスタというキャラの客観的に語るお話なのです。


ちょこっと、裏話。
いただいた設定と一番違う心情なのが、ファスファリオンなのです。
本編・・・・・・800年前は、設定通りなのですが、序章では、上記前述どおり、微妙に、ジュリに対して、『情』を持っています。
・・・・エンディングへの伏線ですので、最期まで呼んでくださると嬉しいです。


それでは、また次回で。

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32842夢はいずれは覚めるもの…月読 乾 2006/10/28 01:51:13
記事番号32841へのコメント

>数時間後―。
>雨が止み、冷えた空気がその白亜の豪邸を支配していた。
>その豪邸には、尖塔が幾つかある。
>高低あわせて、9つ。
>その中の一つに、腰掛ける人物が一つ。
>風に、髪やショールをなぶらせる間にさせている。
>その人物は、若葉色に銀を溶かし込んだ波打つ豊かな髪と淡い琥珀色の瞳、薄い紅茶のような日に焼けていない肌。
>普通、紅茶というと日に焼けた肌をイメージをするだろうが、その人物は、その肌の色でも、日に焼けたイメージよりも、すべらかなイメージが先立つ感じだ。
>年齢は、まだ子どもにも、老成した大人にも見える。
>敢えて言うなら、二十代半ばから三十歳ぐらい。
>性別は、多分男。女性と言うには、彼の雰囲気はそぐわない気がした。
>浮かぶ表情は、何処までも笑顔で。
>他の表情を想像すら出来ない。
>まるで最初から、笑顔であったかのように。
>着ているのは、濃いグレイのぴったりとしたハイネックとズボン、黒の飾り気の無いヒールのあるロングブーツ。
>その上に、柔らかいたっぷりとしたわずかに光沢のある淡いエメラルドグリーンの七分丈の上衣。
>上衣よりやや濃い色合いのショールをその上に巻き付けている。
>頭には、黒色の幅広な布を金属輪の連なりで、止め巻いていた。
>その金属の輪の一つは、指輪だった。
>『雷』の指輪。これも、本当の彼女にもらった。

かなり、印象的な容貌のキャラですね。
正に、正体不明の存在と言う感じがします。

>手にしているのは、リュートやマンダリンを合わせたような楽器。
>それにしても、よく落ちないものだ。
>古い様式の豪邸のせいか、高さは今の高層建築と比べるべくもないが、それでも、天井高めな造りなせいもあって、20メートルぐらいだ。
>それに、尖塔と言うこともあり、30メートルぐらいの位置に居るのに、ふかふかのソファに座っているように、リラックスしている。

何か、特殊な術?
それとも、常識を遥かに超えるバランス感覚の持ち主とか…
いずれにせよ、普通に座らないのは理由があるのでしょうか?

>「もう、800年なんだね。
> ジュリちゃんが、居なくなってから、もう800年。
> 君に、『お兄ちゃん』とか、言われたり。君が、僕の後に着いてくるのも。
> 悪い気はしなかったんだけどな。
> ・・・・・・・・なんで、【魂喰らい】なんかに惚れたんだい。
> 僕は、ただ、君に死んで欲しくなかっただけなのに。」
>誰も、答える人がいないのに、彼は、呟く。
>ただ、過去を懐かしむかのように。
>ただ、過日を喜ぶかのように。
>ただ、過去の後悔を紡ぐかのように。
>眼を閉じ、ただ思考する。
>何故、本当の彼女が、命を絶ってしまったのか。
>何故、本当の彼女は、自分の命が危なくてもアイツを愛したのか。
>何故、本当の彼女は、自分たちではなく、アイツを選んだのか。
>解らない・・・・・というよりは、解りたくない。
>「僕も、アイツが悪いとは、思っていないんだけど。
> ・・・・・アイツを悪いとそれを言ってしまったら、僕のジュリちゃんへの感情はどうなるのかな。」
>「何をぐたぐたと。
> 男ならば、もっと、しゃっきりとしろ、トーラー」
>「・・・・ロンか。
> そんなに、気分じゃないの。」
>「金糸雀(カナリヤ)のように、貴殿がさえずってないと、私も調子が出ん。」
>「・・・・カナリヤって、女の子扱いなんだね、ロン。
> そういう言い方、嫌いだって言わなかったかな?」
>尖塔の屋根に座っている青年に、声を掛けたのも、また別の青年。
>その青年―ロンと呼ばれたーは、白く短い髪と切れ長の瞳が、クールなイメージの黒でまとめられた現代チックな服装の青年。
>その首から下がる太い鎖の先にも、指輪が光っている。
>『雲』の意匠である。
>名前を周献龍という。
>彼は、一部を本性に戻し、背中に翼を生やし中空に浮かんでいた。
>弦楽器を持っているのは、トーラーと言う名らしい。

うむ!
やっぱり人間では無かったのですね。
しかし、この2人は800年前からの付き合い?
この2人の関係に、ジュリの死(?)がどういう影響を…?

>「ねぇ、ロン。
> 四百年前に、『死んで』、中途半端に『呪い』から自由になって、どう?」
>「何度目だ、貴殿のその質問は?」
>「さあ?
> でも、貴方しか、いないだろ?
> 偶発的にしろ、中途半端にしろ、『呪い』から逃れ出れたのは。」
>「確かにな。
> ・・・・・・お前達、妖魔には、今の状況は堪え難いだろうな。」
>「・・・・・・・そうだねぇ。
> でも、あの子に囚われてると考えれば、今以上に幸せなんか無いんだよ。
> あの子が覚えていないにしろ、ね。」
>「マゾか、狂信者だな、トーラー。」
>「違うよ、ロン。
> 狂信者とか、マゾと言う言葉は、ファスにこそだろ。
> 僕のは、恋だよ、少し歪んでしまったかもしれないけどね。」
>「・・・・・あの歌を唄ってくれるか?」
>「ロンも、まだ、思ってんじゃん。
> 半分は、義務感とかにしろ、お前は、半ば『呪い』に縛られてはいるけれど、別に一族に戻っても、構わないのに、此処にいるし。」
>「・・・・・・」
>トーラーの軽口、ある意味図星だったのか、無言で『唄うのかどうなのか?』とでも言う風に、献龍は、睨む。
>『はいはい、唄いますよ』とでも、返すように、持っていた弦楽器の糸巻きを少し強めに張る。
>唄い出す一瞬、泣きそうな、そのまま崩れそうな微笑みをトーラーは浮かべ、唄い始める。

微妙に、不毛な会話という気もしましたが…(汗
それはそうと、呪いから解けた今、彼の体はどうなってるのでしょう?
蘇生って事に?

>♪  遥か遥かの 幾星霜 刻(とき)過ぎて
>   我ら 【アルコイリス】が 
>   傾国の最強と呼ばい、歌われしは過去のこと
>   今は 呪われし者と 呼ばい 唄われる。      ♪
>
>♪  【樹姫】は【魂喰い】に 恋をした
>    兄と 父と 慕いし【アルコイリス】よりも
>   【魂喰い】 選び 恋慕する
>    その結末は 如何とした 悲劇か喜劇か 如何とした ♪
>
>♪   八芒星(オクタグラム)の鎖にて
>    【樹姫】の縛鎖によりて
>    【魂喰い】は 奈落が深淵へと封ずられる
>    されど それが【樹姫】の命を刈り取った     ♪
>
>♪   何故(なにゆえ)に 【樹姫】は死を迎う
>    何故(なにゆえ)に 【魂喰い】に惚れ慕う
>    【アルコイリス】と【鮮血微笑】には
>    幾星霜の刻過ぎし 今もわからぬことよ      ♪

名前をだすところに、思慕と愛情がある気がします。
この歌は、いつ頃から歌い続けてるのでしょう…

>「それでも、会えないのは辛いね。
> あの術の効き目を長持ちさせるためとはいえね。」
>「なんとな、知らないのか?」
>「何を?」
>「クレフォレムが、動いた。
> ・・・・・・嵐になるやも知れぬぞ。」
>唄い終わったトーラーが、彼に言う訳でなく、呟いた言葉に、彼にしては珍しく、驚きを混ぜて返した献龍。
>それの中の、『クレフォレム』は、彼の『主』のファミリーネームだ。
>献龍にしてみれば、体裁上、部下についているので、あまり好きではない人物だ。
>「・・・・戻ろう、ロン。」
>「シュヴァルツェ・カッツ、買ってきたんだが、飲むか?」
>「黒猫ね。
> あの子も、最初はそうだったね。
> 警戒心たっぷりで。」
>「そうだな。
> ・・・・・全く懐かしい。」
>そう言いつつ、二人は、尖塔の窓から室内に入り、献龍の私室へ消えていった。

どうも、本名とは別の名前で呼び合うルールが存在するのでしょうか?

>先ほどの二人が、会話を始めたのとほぼ、同時刻。
>この白亜の豪邸の図書室。
>窓の一つを除いて、壁と言う壁に、本棚がある。
>吹き抜けになっている二階も、同様だ。
>部屋の中央に、古ぼけてはいたが、精緻な細工の机とソファのセット。
>その一つと副机を一階部分唯一の窓に寄せ、本を読む人物が一人。
>名前は、ファスファリオン=ローディエル。
>髪は、淡い金色で、ゆるくウェーブがかっていて、腰くらいまで長さ。今は細められている瞳は、黄昏色。
>外見だけでは、性別も年齢も、解らない。背丈は、座っていても解るほどに高かった。
>その彼を、特徴づけているのが、背中に生えた、暗緑色の3対の翼。
>ランプと月光に照らされている服は、一見すると、目立たない程度に縫取りの入った漆黒の長衣という、地味目のもの。
>しかし、ほんのページをめくるわずかな動作でも、時折光るものがある。
>縫取りに見えるのは、沢山の小粒だが極上の宝石が縫い付けられて図柄になっているものである。
>彼を飾っている装飾品は、服に縫い付けられた宝石と同じモノのピアスと短めの革ひもに通した銀色の指輪。
>意匠は、『花』。
>ホタルブクロの花が彫り込まれた指輪。
>ランプの火の爆ぜるかすかな音だけが、しばらく響く。
>「そう言えば、サラディン様は、お出かけでしたね。」
>ふと顔を上げ、そう呟く。
>音が消え、またしばらくすると、また呟く。
>「あの娘に会いに行ったのでしたね。
> サラディン様に、あれだけ思われたのに。
> 【アルコイリス】や、私より愛されていましたのに、それでも、あの【魂喰い】を選んだあの小娘。」
>プツンと、『それは違う』とでも、抗議するかのように、ファスファリオンの首の革ひもが切れた。誰の抗議か解らなかったが、たぶん、ファスファリオンにはあの小娘からの抗議と言うより、敬愛するサラディンからの抗議に思えた。
>しかも、責めると言うより、困ったように微笑み叱るそんな抗議。
>まるで、自分には居ないはずの母に怒られるような、そんな様相が、彼の頭によぎる。
>「・・・・・・・・でも、何故なのでしょうね。
> 始めて邂逅したとき程、今は嫌いではありません。
> 無論、好きとはお世辞にも言えはしないですが・・・・・・言えはしないですが。」
>彼は、昔・・・・・・堕天してからサラディンに会うまでの百年よりも短い時間しか共有していなかった教え子のことを思い出す。
>本当の彼女で、八年。
>そのあとで、八十年。
>会わせても九十年にも足りない時間しか一緒に居なかった。
>サラディンが、惚れていたクロイツの吸血鬼的な子どもだし、連れてきたが、仲良くする毛頭は無かった。
>風系統の術の先生になった時には、無理難題をふっかけたりしても、
>
>『先生、次を』とか、『先生、ここはこうした方が、効率的になりますね。』
>
>そう言って、食らいついてきた。
>少なくとも、人間的には、嫌いな部類ではなかった。
>サラディン様に気に入られているところが、一番嫌いでそれが大嫌いに繋がった。
>でも、あの娘や他の【アルコイリス】と過ごした時間は悪くなかった。
>良いと言う訳でもなかったが。
>でも、その本当の彼女も、最期には、
>
>
>『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
> 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』
>
>
>『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
> 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』
>
>
>『あの人の 縛鎖になるなら、この命などいらない。
> あの人の居ない背かになんか意味が無いのに・・・・。
> ごめんね・・・・・・でも、愛してたよ、×××。』
>
>
>と、言い放ち、自ら命を絶った。
>「・・・・・なんて、名前でしたかね、【魂喰い】は、それすらも覚えていない遠い日のことなのに。
> ・・・・・・・・・・終わりも、変化も、望めないと言うのは、つまらないのですが。
> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・決着がつかないのは、とてもイライラしますね。」
>本当に、何がしたかったんですか?
>どういうつもりだったんですか?
>その二つの質問をファスファリオンは、飲み込み、忘れたいかのように、思考すらしたくないように、本を読み解くことに、集中する。
>しかし、今夜の主・サラディンの外出の理由知っているためか、遅々として進まないのも、また事実だった。

う〜む…伏字になってはいるけど、いよいよ確信になるキャラが?
この歌から解放され現実に戻れるのでしょうか?

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32846されど、今はまだ微睡みの中・・・・十叶 夕海 2006/10/28 23:05:02
記事番号32842へのコメント


>>数時間後―。
>>雨が止み、冷えた空気がその白亜の豪邸を支配していた。
>>その豪邸には、尖塔が幾つかある。
>>高低あわせて、9つ。
>>その中の一つに、腰掛ける人物が一つ。
>>風に、髪やショールをなぶらせる間にさせている。
>>その人物は、若葉色に銀を溶かし込んだ波打つ豊かな髪と淡い琥珀色の瞳、薄い紅茶のような日に焼けていない肌。
>>普通、紅茶というと日に焼けた肌をイメージをするだろうが、その人物は、その肌の色でも、日に焼けたイメージよりも、すべらかなイメージが先立つ感じだ。
>>年齢は、まだ子どもにも、老成した大人にも見える。
>>敢えて言うなら、二十代半ばから三十歳ぐらい。
>>性別は、多分男。女性と言うには、彼の雰囲気はそぐわない気がした。
>>浮かぶ表情は、何処までも笑顔で。
>>他の表情を想像すら出来ない。
>>まるで最初から、笑顔であったかのように。
>>着ているのは、濃いグレイのぴったりとしたハイネックとズボン、黒の飾り気の無いヒールのあるロングブーツ。
>>その上に、柔らかいたっぷりとしたわずかに光沢のある淡いエメラルドグリーンの七分丈の上衣。
>>上衣よりやや濃い色合いのショールをその上に巻き付けている。
>>頭には、黒色の幅広な布を金属輪の連なりで、止め巻いていた。
>>その金属の輪の一つは、指輪だった。
>>『雷』の指輪。これも、本当の彼女にもらった。
>
>かなり、印象的な容貌のキャラですね。
>正に、正体不明の存在と言う感じがします。

そうですね、一応イメージ的に大地っぽい?
たしかに、謎って感じなキャラなのです、七人の中で。

>
>>手にしているのは、リュートやマンダリンを合わせたような楽器。
>>それにしても、よく落ちないものだ。
>>古い様式の豪邸のせいか、高さは今の高層建築と比べるべくもないが、それでも、天井高めな造りなせいもあって、20メートルぐらいだ。
>>それに、尖塔と言うこともあり、30メートルぐらいの位置に居るのに、ふかふかのソファに座っているように、リラックスしている。
>
>何か、特殊な術?
>それとも、常識を遥かに超えるバランス感覚の持ち主とか…
>いずれにせよ、普通に座らないのは理由があるのでしょうか?

両方。
尖塔なんかに座っているのは、ジュリとよく一緒に居た場所だから。


>
>>「もう、800年なんだね。
>> ジュリちゃんが、居なくなってから、もう800年。
>> 君に、『お兄ちゃん』とか、言われたり。君が、僕の後に着いてくるのも。
>> 悪い気はしなかったんだけどな。
>> ・・・・・・・・なんで、【魂喰らい】なんかに惚れたんだい。
>> 僕は、ただ、君に死んで欲しくなかっただけなのに。」
>>誰も、答える人がいないのに、彼は、呟く。
>>ただ、過去を懐かしむかのように。
>>ただ、過日を喜ぶかのように。
>>ただ、過去の後悔を紡ぐかのように。
>>眼を閉じ、ただ思考する。
>>何故、本当の彼女が、命を絶ってしまったのか。
>>何故、本当の彼女は、自分の命が危なくてもアイツを愛したのか。
>>何故、本当の彼女は、自分たちではなく、アイツを選んだのか。
>>解らない・・・・・というよりは、解りたくない。
>>「僕も、アイツが悪いとは、思っていないんだけど。
>> ・・・・・アイツを悪いとそれを言ってしまったら、僕のジュリちゃんへの感情はどうなるのかな。」
>>「何をぐたぐたと。
>> 男ならば、もっと、しゃっきりとしろ、トーラー」
>>「・・・・ロンか。
>> そんなに、気分じゃないの。」
>>「金糸雀(カナリヤ)のように、貴殿がさえずってないと、私も調子が出ん。」
>>「・・・・カナリヤって、女の子扱いなんだね、ロン。
>> そういう言い方、嫌いだって言わなかったかな?」
>>尖塔の屋根に座っている青年に、声を掛けたのも、また別の青年。
>>その青年―ロンと呼ばれたーは、白く短い髪と切れ長の瞳が、クールなイメージの黒でまとめられた現代チックな服装の青年。
>>その首から下がる太い鎖の先にも、指輪が光っている。
>>『雲』の意匠である。
>>名前を周献龍という。
>>彼は、一部を本性に戻し、背中に翼を生やし中空に浮かんでいた。
>>弦楽器を持っているのは、トーラーと言う名らしい。
>
>うむ!
>やっぱり人間では無かったのですね。
>しかし、この2人は800年前からの付き合い?
>この2人の関係に、ジュリの死(?)がどういう影響を…?

そうですね、人間ではないです。
800と数十年前からの付き合いなのです。
対照的な二人なんですよね。
・・・・彼女の死によって、互いに依存までは行かなくても、付き合いは深くなりましたね。

>
>>「ねぇ、ロン。
>> 四百年前に、『死んで』、中途半端に『呪い』から自由になって、どう?」
>>「何度目だ、貴殿のその質問は?」
>>「さあ?
>> でも、貴方しか、いないだろ?
>> 偶発的にしろ、中途半端にしろ、『呪い』から逃れ出れたのは。」
>>「確かにな。
>> ・・・・・・お前達、妖魔には、今の状況は堪え難いだろうな。」
>>「・・・・・・・そうだねぇ。
>> でも、あの子に囚われてると考えれば、今以上に幸せなんか無いんだよ。
>> あの子が覚えていないにしろ、ね。」
>>「マゾか、狂信者だな、トーラー。」
>>「違うよ、ロン。
>> 狂信者とか、マゾと言う言葉は、ファスにこそだろ。
>> 僕のは、恋だよ、少し歪んでしまったかもしれないけどね。」
>>「・・・・・あの歌を唄ってくれるか?」
>>「ロンも、まだ、思ってんじゃん。
>> 半分は、義務感とかにしろ、お前は、半ば『呪い』に縛られてはいるけれど、別に一族に戻っても、構わないのに、此処にいるし。」
>>「・・・・・・」
>>トーラーの軽口、ある意味図星だったのか、無言で『唄うのかどうなのか?』とでも言う風に、献龍は、睨む。
>>『はいはい、唄いますよ』とでも、返すように、持っていた弦楽器の糸巻きを少し強めに張る。
>>唄い出す一瞬、泣きそうな、そのまま崩れそうな微笑みをトーラーは浮かべ、唄い始める。
>
>微妙に、不毛な会話という気もしましたが…(汗
>それはそうと、呪いから解けた今、彼の体はどうなってるのでしょう?
>蘇生って事に?


・・・・はは、そうですね。
彼女の『呪い』の『行動制約』が無くなりました。
『蘇生』は、元からあります。
望む望まぬ関係なく。

>
>>♪  遥か遥かの 幾星霜 刻(とき)過ぎて
>>   我ら 【アルコイリス】が 
>>   傾国の最強と呼ばい、歌われしは過去のこと
>>   今は 呪われし者と 呼ばい 唄われる。      ♪
>>
>>♪  【樹姫】は【魂喰い】に 恋をした
>>    兄と 父と 慕いし【アルコイリス】よりも
>>   【魂喰い】 選び 恋慕する
>>    その結末は 如何とした 悲劇か喜劇か 如何とした ♪
>>
>>♪   八芒星(オクタグラム)の鎖にて
>>    【樹姫】の縛鎖によりて
>>    【魂喰い】は 奈落が深淵へと封ずられる
>>    されど それが【樹姫】の命を刈り取った     ♪
>>
>>♪   何故(なにゆえ)に 【樹姫】は死を迎う
>>    何故(なにゆえ)に 【魂喰い】に惚れ慕う
>>    【アルコイリス】と【鮮血微笑】には
>>    幾星霜の刻過ぎし 今もわからぬことよ      ♪
>
>名前をだすところに、思慕と愛情がある気がします。
>この歌は、いつ頃から歌い続けてるのでしょう…

トーラーは、ジュリのことを、妹のように思えてましたし、愛する女性とも思っていました。
でも、他の面々も、『名前』を出してしまうことに怯えていると言う面もあります。

・・・・・何回か作り直されてますが、700年ぐらい前から。

>
>>「それでも、会えないのは辛いね。
>> あの術の効き目を長持ちさせるためとはいえね。」
>>「なんとな、知らないのか?」
>>「何を?」
>>「クレフォレムが、動いた。
>> ・・・・・・嵐になるやも知れぬぞ。」
>>唄い終わったトーラーが、彼に言う訳でなく、呟いた言葉に、彼にしては珍しく、驚きを混ぜて返した献龍。
>>それの中の、『クレフォレム』は、彼の『主』のファミリーネームだ。
>>献龍にしてみれば、体裁上、部下についているので、あまり好きではない人物だ。
>>「・・・・戻ろう、ロン。」
>>「シュヴァルツェ・カッツ、買ってきたんだが、飲むか?」
>>「黒猫ね。
>> あの子も、最初はそうだったね。
>> 警戒心たっぷりで。」
>>「そうだな。
>> ・・・・・全く懐かしい。」
>>そう言いつつ、二人は、尖塔の窓から室内に入り、献龍の私室へ消えていった。
>
>どうも、本名とは別の名前で呼び合うルールが存在するのでしょうか?

じゃないですよ。性格です。
トーラーは、基本的に、名前の下二文字。
献龍は、親しければ、名前の呼び捨て。親しくなければ、名字の呼び捨て。
そういう風になっています。


>
>>先ほどの二人が、会話を始めたのとほぼ、同時刻。
>>この白亜の豪邸の図書室。
>>窓の一つを除いて、壁と言う壁に、本棚がある。
>>吹き抜けになっている二階も、同様だ。
>>部屋の中央に、古ぼけてはいたが、精緻な細工の机とソファのセット。
>>その一つと副机を一階部分唯一の窓に寄せ、本を読む人物が一人。
>>名前は、ファスファリオン=ローディエル。
>>髪は、淡い金色で、ゆるくウェーブがかっていて、腰くらいまで長さ。今は細められている瞳は、黄昏色。
>>外見だけでは、性別も年齢も、解らない。背丈は、座っていても解るほどに高かった。
>>その彼を、特徴づけているのが、背中に生えた、暗緑色の3対の翼。
>>ランプと月光に照らされている服は、一見すると、目立たない程度に縫取りの入った漆黒の長衣という、地味目のもの。
>>しかし、ほんのページをめくるわずかな動作でも、時折光るものがある。
>>縫取りに見えるのは、沢山の小粒だが極上の宝石が縫い付けられて図柄になっているものである。
>>彼を飾っている装飾品は、服に縫い付けられた宝石と同じモノのピアスと短めの革ひもに通した銀色の指輪。
>>意匠は、『花』。
>>ホタルブクロの花が彫り込まれた指輪。
>>ランプの火の爆ぜるかすかな音だけが、しばらく響く。
>>「そう言えば、サラディン様は、お出かけでしたね。」
>>ふと顔を上げ、そう呟く。
>>音が消え、またしばらくすると、また呟く。
>>「あの娘に会いに行ったのでしたね。
>> サラディン様に、あれだけ思われたのに。
>> 【アルコイリス】や、私より愛されていましたのに、それでも、あの【魂喰い】を選んだあの小娘。」
>>プツンと、『それは違う』とでも、抗議するかのように、ファスファリオンの首の革ひもが切れた。誰の抗議か解らなかったが、たぶん、ファスファリオンにはあの小娘からの抗議と言うより、敬愛するサラディンからの抗議に思えた。
>>しかも、責めると言うより、困ったように微笑み叱るそんな抗議。
>>まるで、自分には居ないはずの母に怒られるような、そんな様相が、彼の頭によぎる。
>>「・・・・・・・・でも、何故なのでしょうね。
>> 始めて邂逅したとき程、今は嫌いではありません。
>> 無論、好きとはお世辞にも言えはしないですが・・・・・・言えはしないですが。」
>>彼は、昔・・・・・・堕天してからサラディンに会うまでの百年よりも短い時間しか共有していなかった教え子のことを思い出す。
>>本当の彼女で、八年。
>>そのあとで、八十年。
>>会わせても九十年にも足りない時間しか一緒に居なかった。
>>サラディンが、惚れていたクロイツの吸血鬼的な子どもだし、連れてきたが、仲良くする毛頭は無かった。
>>風系統の術の先生になった時には、無理難題をふっかけたりしても、
>>
>>『先生、次を』とか、『先生、ここはこうした方が、効率的になりますね。』
>>
>>そう言って、食らいついてきた。
>>少なくとも、人間的には、嫌いな部類ではなかった。
>>サラディン様に気に入られているところが、一番嫌いでそれが大嫌いに繋がった。
>>でも、あの娘や他の【アルコイリス】と過ごした時間は悪くなかった。
>>良いと言う訳でもなかったが。
>>でも、その本当の彼女も、最期には、
>>
>>
>>『許さないわ・・・・・私は、絶対に貴方達を許さない。
>> 師匠も・・・皆も、絶対に許さない。』
>>
>>
>>『呪われろ、アルコイリス、師匠よ。
>> 未来永劫、この世界が続く限り、呪われるといい。』
>>
>>
>>『あの人の 縛鎖になるなら、この命などいらない。
>> あの人の居ない背かになんか意味が無いのに・・・・。
>> ごめんね・・・・・・でも、愛してたよ、×××。』
>>
>>
>>と、言い放ち、自ら命を絶った。
>>「・・・・・なんて、名前でしたかね、【魂喰い】は、それすらも覚えていない遠い日のことなのに。
>> ・・・・・・・・・・終わりも、変化も、望めないと言うのは、つまらないのですが。
>> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・決着がつかないのは、とてもイライラしますね。」
>>本当に、何がしたかったんですか?
>>どういうつもりだったんですか?
>>その二つの質問をファスファリオンは、飲み込み、忘れたいかのように、思考すらしたくないように、本を読み解くことに、集中する。
>>しかし、今夜の主・サラディンの外出の理由知っているためか、遅々として進まないのも、また事実だった。
>
>う〜む…伏字になってはいるけど、いよいよ確信になるキャラが?
>この歌から解放され現実に戻れるのでしょうか?

そうですね。
この悪夢は、現実だけど・・・・現実だからこそ、彼らを苛んでいるんです。

・・・・・・・・一応、現代編で、800年を挟んで、ハッピーエンドを目指します。

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32848貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章Bー@十叶 夕海 2006/10/29 12:05:28
記事番号32829へのコメント






  序章Bー@  交錯する 彼女への想い





「くすくす、サラ。
 愉快なことになっているようじゃありませんか。」
「・・・・・・・・・・五月蝿いわよ、アル。」
ユーラシア大陸の地上数千メートルを飛行する二つの人型。
一人は、白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、紫闇色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。
髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。
胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。
容貌から年齢は推し量りにくい。
もう一人は、髪は、真紅色に盛大な天然パ−マが掛かり、瞳は、開いている方は蒼穹の青。
開いている方というのは、片方は、緋染め革の眼帯で隠されていたからだ。
短い丈の藍色の軍服風の上衣に、共布のフレアスカートに、茶色のロングブーツ。
ただし、胸は不自然なふくらみであった。
前者をアルベスタ=リバードラゴン。
後者をサラディン=クレフォレム。
二人とも、人ではない。
それは、空を飛んでいることからも解るだろう。
しかも、軍用ヘリですら、追いつけないだろう。
「『無価値』『邪悪』『無益』の意味の名と『偉大なる公爵』『虚偽と詐術の貴公子』『敵意の天使』『隠されたる賄賂と暗殺の魔神』。
 そういう、渾名を持つ悪魔に、それくらいで言われましてもねぇ。」
「お前は、人間だったころからそうだったでしょうに。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・それにしても、あの子が、相手が人間だとしても、過去のこと話せるなんて、ね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妬けますね。
 私は、それこそ、イエスと一緒に居た頃から、ラブコールしていますが、貴方が惚れるのは、イエスや、クロイツさんとかの他の人ばかりですね。」
「それが、『恋心は、小鳥のように籠に入れておけない。』だよ。
 ・・・・・・・・・それを、八百年前に気がつければ良かったんだけどね。」
「後悔しているのですか?」
「さあね。
 でも、してなきゃ、こんな面倒なことしてないでしょ?」
「・・・・・・・確かにそうですね。
 ミスタ・キャピュレット?」
「娘の恋心を否定して、別の男を宛てがおうとした、父親ね。
 否定しないわ。」
つらつらと、会話する二人。
当たり前のような、苦い恋人同士のような軽口の叩き合い。
サラディンとアルベスタの関係は、そんなものじゃなく、もう少し暗く昏い関係。
一番近いのは、『秘密』を共有し合う『共犯者』だろう。
本当の彼女が、死ぬことになった術を構築したのは、この二人なのだ。
そして、作ると言い出したのは、サラディン。
『あの子のため』という大義名分で、『あの子』の命を結局奪ってしまった。
だけど、『あの子』に、望まない『生』を与えたのも、サラディンなのだ。
「・・・・・あの子の『呪い』とは、別の私のルールだもの。
 あの子が、歩む道が、楽じゃないのも解ってたけど、それを誰かに話せるようになれば、全ての記憶を返そうって。」
「後悔しないのですね。
 サラディン。
 ・・・・・あの子に憎まれることになりますよ?」
「・・・・・構わないわ。
 それだけのことを私は、あの子にした。
 いくら、『あの子』のため、と言っても、許されることじゃないわ。」
「猊下の遠き御子ですが、私は、あのままにしておきたいと思うのですよ。
 『ベリアル』としては、憎しみに心を染めていただけると、大変やりやすいのですが。
 『アルベスタ』・・・・あの子に、術を少し教えた身としては、憎しみに心を染めて欲しくないのです。」
「私も、似たようなものよ。
 だけど、区切りをつけなくちゃ。」
そうこうするうちに、日本上空まで来たようだ。
時刻は、午前二時過ぎ。
草木も眠る丑三つ時と言ったところ。
吸血鬼や夜のものにしてみれば、真っ昼間と言ったところだろうか。













彼は、封ぜられた『宝玉』の中で、微睡むように思考する。

今は遥か遠くなった過日。
最愛の少女が自らの手で命を狩った光景を、この『牢獄』の中から自分は、ただ見ていることしかできなかった。
どれだけ、叫んでも、この声が届くことはなく。
どれだけ、手を伸ばしても、この手が彼女を引き止めることはなく。
どれだけ、願っても、彼女が死を思いとどまることはなかった。
彼女の身代わりになっても良かった。
・・・悪いのは、自分なのに。
そして、唯一愛したあの少女が黄泉路を辿ったという事実に、自分もまた絶望し、封印の中で深い眠りにつくことを決めた。
二度と覚めることを望まない、永久の眠りに。
けれど永く長い眠りの果てに、どこからか慟哭が聞こえてきた。
自分が眠りから目覚めると、既に亡くなってしまったはずの愛しい少女の気配を不意に感じた。
そして、同時に、自分を封じた八人と一柱が、彼女を蘇らせたことも知った。
また、その八人の中の一人が、一度死んだことで、術式に綻びが生まれ、かつては、完全であった『封じの宝玉』の中から、一部分だけではあったが、抜け出すことが出来た。
そして、抜け出したその先で見つけたのは、涙してもかつてと変わらない表情を表すことが苦手だったけれど、優しいあの愛しい少女いたのであった。
その傍に在るのは、自分ではなかったけれど、それでも、不器用なあの優しい微笑みを浮かべることが出来ているのは嬉しかった。
同時に、何故か、胸が少し痛んだけれど。
そして、同時に自分と過ごした数年も含む記憶をあの『鮮血微笑』は、奪い何処かに隠しているようだった。
それに、彼女は、前にもまして、哀しい人生を歩んでいる。
時の輪の中では全てが移り変わってしまった。
けれど、あの少女は違う。
少女の持つ美しい魂の本質は、決して穢れず、誇り高いものだった。
自分が愛した彼女そのものだ。
「ジュリさん・・・・・」
クツリ、クツリと。
自分は深い笑みを浮かべる。
今度こそ、貴方を幸せにする。
そのためなら、自分が、出会えなくても傍に居れなくても良い。
何故かは、知らないけれど、自分は、人間に転生した。
誰かに、導かれるように。
生まれ変わる会旅に、傍にはいることは叶わないけれど、それでも、何をしているかを少しは解るように、するために。
そういう風に、自分の魂を持つ人間の人生を操作した。
でも、出会ってしまった。
離れたくない。
そう思ってしまう。
自分が、干渉しないで、引かれ合うなら、代わりとは言わない、あの少女を幸せにしてくれるなら。
過去に自分たちを引き離した八人はもはや、あの少女のそばにいることさえ許されないのだから。
「愛していますよ・・・・・」
低い笑い声は、果てしない闇の中に吸い込まれて静かに消えていった。
それが、自分の精神と融合した赤ん坊―今は成長して青年になっていたがーに届いているとは知らずに。










「う〜、もう少し詳しくたって。」
サラディンとアルベスタが、日本上空に居た頃。
数日前話した自分の過去を、もう少し詳しいのを欲しいと、天春と乾の両方から、ダブルで頼まれ、今日昨日と、狩りにも出かけず、パソコンのキーをカタカタと叩いているジュリが居た。
「・・・・・・お腹減った。
 神影、何してんだろ、トマト雑炊。」
ジュリにしてみれば、お昼ご飯的な意味だろう。
神影・・・・自分の使い魔が、持ってくるはずになっているようだ。
「トマト雑炊に、桃缶バニラアイスに、甘いモカチーノ、梨だっけね。
 ・・・・・・・まともに、精気吸ってないから、早めに持って来るって言ってたのに。」
夜起きた時に、知らされていた献立をそらんじながら、今か今かと、待っている。
詳しいバージョンの自分の過去を記した文書は、ちょうど、ウルージが死んだ前後だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう言えば、なんでだろう。
ウルが、死んだ直後を思い出すと、浮かんでくる白い短髪と切れ長の瞳の青年とドラゴンの映像。
青年の方は、ジュリが、今現在主力に使っている『氷』の術基礎を教えてくれた先生だ。
ドラゴンの方は、覚えていない。
それに、何故、全く関係ないシーンにその先生が出てくるのか解らない。
「・・・・師匠にも、水晶球でたまに喋るぐらいで、独り立ちしてから会ってないな。」
「・・・・・・・・・・そうね、もうすぐ、700年だものね。」
「サラ師匠。
 お久しぶりです、お元気でしたか?
 ・・・・・・・・・・それと、アルベスタ。」
独り言に応じたのは、当のサラディンだった。
それと一緒に居たのは、アルベスタ。
アルベスタは、いつも通りのどろりとしたような笑みのままだったが。
サラディンは、ジュリの記憶にあるような自信に満ちた微笑みではなく、少し哀しげな微笑みだった。
「・・・・・・・・・ごめんね、ジュリ。
 決して、許してとは言わないわ。」
「えっ・・・・・・」
『それは、どういうこと?』と言う言葉を言葉にする前に、ジュリの意識は、遠のいた。
そして、サラディンの元へと倒れ込んだ。
「始めようか、サラ。」
「ええ。」
「すまない、遅くなっ・・・・サラディン様。」
小さい土鍋と取り皿などが乗ったトレイを持った、黒い部屋着姿の神影が、ちょうど入ってきた。
そして、サラディンとアルベスタが、一緒に居るのを見て、瞬時に一つのことを悟った。
「・・・・・・・主の記憶を返しにきたのかい?」
「何故それを?」
そう聞き返している時点で、肯定していることに、なっているのを承知でサラディンは、聞いた。
神影は、トレイをジュリのパソコンデスクに、置いた。
その後に、ジュリが一番始めに決めた黒いぞろりとした魔導師風のローブに、瞬時に変化した。
クツリクツリと、何を当たり前のことを?とでも言うように、こう返したのだった。
「・・・・・『嵐』のリュイネから。
 主の持つ、指輪の意味とそれに付随する主の過去を聞いた。
 滑稽だとは思うよ、私にも覚えが無い訳ではない、感情儺だけに。」
「イレギュラーね。」
「もう一人、当事者が必要なのだろう?」
「・・・・『封じの宝玉』は此処にあるぞ?」
「・・・・・・・・・四百年前、『雲』が一度死んだだろう?
 その時に、ほんの一部と人間の魂が、交ざり合って、輪廻の輪に乗った。」
「誰だ?」
「《ブラッディ・カタリナ》と呼ばれた退魔師。
 本名は、乾詠太郎、と言ったかな。
 ・・・・・連れてこようか?」
「・・・・・連れて来い。」
「クスクスクス。
 わかったよ、偽悪者で、偽善者のサラディン様。」
そう言って、神影は、虚空に消えた。
楽しそうでありながら、哀しそうな微笑み浮かべて。
「動揺するぐらいなら、やらなければ良いのではないですか?
 サラディン。」
「五月蝿い。
 ・・・・・アル、ジュリをベッドに寝かせてくれ。」
「はいはい。」




こうしてゆるゆると、
でも確実に、夜は、更けて行く。





@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@



さて、いろいろなことが解ってきました。
さて、いろいろなことが解らないままです。
半ば、倒叙型ですが、本編はあくまで時間軸通りに、進めます。
その前に、もう一話。
序章B―Aとして、お付き合いください。


それでは、次回も、皆様に、甘く優しい悪夢がありますように。

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32872知らない方がいい事もあるのか、知ったから超えないといけないのか…月読 乾 2006/11/15 20:34:56
記事番号32848へのコメント

>「くすくす、サラ。
> 愉快なことになっているようじゃありませんか。」
>「・・・・・・・・・・五月蝿いわよ、アル。」
>ユーラシア大陸の地上数千メートルを飛行する二つの人型。

ユーラシア大陸…
一体、そんなところにどういう目的で?
ここで、もしも偶然カメラ撮影とかをしてた人が居合わせていたら、
フライングヒューマノイドとして、タブロイド紙に載せられるんでしょうね(ぇ

>一人は、白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、紫闇色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。
>髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。
>胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。
>容貌から年齢は推し量りにくい。

バットマンのジョーカーみたいな感じですか(イメージは)?
もしも目を合わせると、負の意味で吸い込まれる様な感じですね。

>もう一人は、髪は、真紅色に盛大な天然パ−マが掛かり、瞳は、開いている方は蒼穹の青。
>開いている方というのは、片方は、緋染め革の眼帯で隠されていたからだ。
>短い丈の藍色の軍服風の上衣に、共布のフレアスカートに、茶色のロングブーツ。
>ただし、胸は不自然なふくらみであった。
>前者をアルベスタ=リバードラゴン。
>後者をサラディン=クレフォレム。
>二人とも、人ではない。
>それは、空を飛んでいることからも解るだろう。

片目を覆ってるのは、隻眼?
それとも、別に理由が?
軍人風ですけど、本業なのかお洒落なのか…

>しかも、軍用ヘリですら、追いつけないだろう。
>「『無価値』『邪悪』『無益』の意味の名と『偉大なる公爵』『虚偽と詐術の貴公子』『敵意の天使』『隠されたる賄賂と暗殺の魔神』。
> そういう、渾名を持つ悪魔に、それくらいで言われましてもねぇ。」
>「お前は、人間だったころからそうだったでしょうに。
> ・・・・・・・・・・・・・・・・それにしても、あの子が、相手が人間だとしても、過去のこと話せるなんて、ね。」
>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妬けますね。
> 私は、それこそ、イエスと一緒に居た頃から、ラブコールしていますが、貴方が惚れるのは、イエスや、クロイツさんとかの他の人ばかりですね。」
>「それが、『恋心は、小鳥のように籠に入れておけない。』だよ。
> ・・・・・・・・・それを、八百年前に気がつければ良かったんだけどね。」

…大体、どのくらい生きてるのか?
と、人間を超越してる事は分かりましたが…

むしろ、それ以前に人間だった頃(恐らく、せいぜい数十年?)
単位でそこまでの数と意味の通り名をもらうなんて、何やったんでしょうね、この方?

ある意味、そっちの方が凄いのかも…

>「後悔しているのですか?」
>「さあね。
> でも、してなきゃ、こんな面倒なことしてないでしょ?」
>「・・・・・・・確かにそうですね。
> ミスタ・キャピュレット?」
>「娘の恋心を否定して、別の男を宛てがおうとした、父親ね。
> 否定しないわ。」
>つらつらと、会話する二人。
>当たり前のような、苦い恋人同士のような軽口の叩き合い。
>サラディンとアルベスタの関係は、そんなものじゃなく、もう少し暗く昏い関係。
>一番近いのは、『秘密』を共有し合う『共犯者』だろう。
>本当の彼女が、死ぬことになった術を構築したのは、この二人なのだ。

本当の彼女の死…
その原因になった術…
ユーラシア大陸には、それと関係する何かが?

>そして、作ると言い出したのは、サラディン。
>『あの子のため』という大義名分で、『あの子』の命を結局奪ってしまった。
>だけど、『あの子』に、望まない『生』を与えたのも、サラディンなのだ。
>「・・・・・あの子の『呪い』とは、別の私のルールだもの。
> あの子が、歩む道が、楽じゃないのも解ってたけど、それを誰かに話せるようになれば、全ての記憶を返そうって。」
>「後悔しないのですね。
> サラディン。
> ・・・・・あの子に憎まれることになりますよ?」
>「・・・・・構わないわ。
> それだけのことを私は、あの子にした。
> いくら、『あの子』のため、と言っても、許されることじゃないわ。」
>「猊下の遠き御子ですが、私は、あのままにしておきたいと思うのですよ。
> 『ベリアル』としては、憎しみに心を染めていただけると、大変やりやすいのですが。
> 『アルベスタ』・・・・あの子に、術を少し教えた身としては、憎しみに心を染めて欲しくないのです。」
>「私も、似たようなものよ。
> だけど、区切りをつけなくちゃ。」
>そうこうするうちに、日本上空まで来たようだ。
>時刻は、午前二時過ぎ。
>草木も眠る丑三つ時と言ったところ。
>吸血鬼や夜のものにしてみれば、真っ昼間と言ったところだろうか。

あ、目的日本でしたか(…

>彼は、封ぜられた『宝玉』の中で、微睡むように思考する。
>
>今は遥か遠くなった過日。
>最愛の少女が自らの手で命を狩った光景を、この『牢獄』の中から自分は、ただ見ていることしかできなかった。
>どれだけ、叫んでも、この声が届くことはなく。
>どれだけ、手を伸ばしても、この手が彼女を引き止めることはなく。
>どれだけ、願っても、彼女が死を思いとどまることはなかった。
>彼女の身代わりになっても良かった。
>・・・悪いのは、自分なのに。
>そして、唯一愛したあの少女が黄泉路を辿ったという事実に、自分もまた絶望し、封印の中で深い眠りにつくことを決めた。
>二度と覚めることを望まない、永久の眠りに。
>けれど永く長い眠りの果てに、どこからか慟哭が聞こえてきた。
>自分が眠りから目覚めると、既に亡くなってしまったはずの愛しい少女の気配を不意に感じた。
>そして、同時に、自分を封じた八人と一柱が、彼女を蘇らせたことも知った。
>また、その八人の中の一人が、一度死んだことで、術式に綻びが生まれ、かつては、完全であった『封じの宝玉』の中から、一部分だけではあったが、抜け出すことが出来た。

それが罰なのかどうかは、結局自分で答えを見つけるしか無いのかも知れませんが…

悪意に翻弄される時に、ある意味厄介なのは個人には悪意が無く
それでも、個人にある様に見えるときがある事と、

それは、実は間違ってもいない事が多い事でしょうか?

>そして、抜け出したその先で見つけたのは、涙してもかつてと変わらない表情を表すことが苦手だったけれど、優しいあの愛しい少女いたのであった。
>その傍に在るのは、自分ではなかったけれど、それでも、不器用なあの優しい微笑みを浮かべることが出来ているのは嬉しかった。
>同時に、何故か、胸が少し痛んだけれど。

それは、自分が彼女の傷を感じたから…?
それとも、もう彼女も自分もあの頃とまったく同じではいられないから…?

>そして、同時に自分と過ごした数年も含む記憶をあの『鮮血微笑』は、奪い何処かに隠しているようだった。
>それに、彼女は、前にもまして、哀しい人生を歩んでいる。
>時の輪の中では全てが移り変わってしまった。
>けれど、あの少女は違う。
>少女の持つ美しい魂の本質は、決して穢れず、誇り高いものだった。
>自分が愛した彼女そのものだ。
>「ジュリさん・・・・・」
>クツリ、クツリと。
>自分は深い笑みを浮かべる。
>今度こそ、貴方を幸せにする。
>そのためなら、自分が、出会えなくても傍に居れなくても良い。
>何故かは、知らないけれど、自分は、人間に転生した。
>誰かに、導かれるように。
>生まれ変わる会旅に、傍にはいることは叶わないけれど、それでも、何をしているかを少しは解るように、するために。
>そういう風に、自分の魂を持つ人間の人生を操作した。
>でも、出会ってしまった。
>離れたくない。
>そう思ってしまう。
>自分が、干渉しないで、引かれ合うなら、代わりとは言わない、あの少女を幸せにしてくれるなら。
>過去に自分たちを引き離した八人はもはや、あの少女のそばにいることさえ許されないのだから。
>「愛していますよ・・・・・」
>低い笑い声は、果てしない闇の中に吸い込まれて静かに消えていった。
>それが、自分の精神と融合した赤ん坊―今は成長して青年になっていたがーに届いているとは知らずに。
>

彼は、どこへ行ったのでしょう?
そして、また現れるのは…

>「う〜、もう少し詳しくたって。」
>サラディンとアルベスタが、日本上空に居た頃。
>数日前話した自分の過去を、もう少し詳しいのを欲しいと、天春と乾の両方から、ダブルで頼まれ、今日昨日と、狩りにも出かけず、パソコンのキーをカタカタと叩いているジュリが居た。

注、自分がされて嫌な事を、他人にしては行けません
(2人とも、同じ文筆業なら)

>「・・・・・・お腹減った。
> 神影、何してんだろ、トマト雑炊。」
>ジュリにしてみれば、お昼ご飯的な意味だろう。
>神影・・・・自分の使い魔が、持ってくるはずになっているようだ。
>「トマト雑炊に、桃缶バニラアイスに、甘いモカチーノ、梨だっけね。
> ・・・・・・・まともに、精気吸ってないから、早めに持って来るって言ってたのに。」
>夜起きた時に、知らされていた献立をそらんじながら、今か今かと、待っている。
>詳しいバージョンの自分の過去を記した文書は、ちょうど、ウルージが死んだ前後だ。
>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう言えば、なんでだろう。
>ウルが、死んだ直後を思い出すと、浮かんでくる白い短髪と切れ長の瞳の青年とドラゴンの映像。
>青年の方は、ジュリが、今現在主力に使っている『氷』の術基礎を教えてくれた先生だ。
>ドラゴンの方は、覚えていない。
>それに、何故、全く関係ないシーンにその先生が出てくるのか解らない。
>「・・・・師匠にも、水晶球でたまに喋るぐらいで、独り立ちしてから会ってないな。」
>「・・・・・・・・・・そうね、もうすぐ、700年だものね。」
>「サラ師匠。
> お久しぶりです、お元気でしたか?
> ・・・・・・・・・・それと、アルベスタ。」
>独り言に応じたのは、当のサラディンだった。
>それと一緒に居たのは、アルベスタ。
>アルベスタは、いつも通りのどろりとしたような笑みのままだったが。
>サラディンは、ジュリの記憶にあるような自信に満ちた微笑みではなく、少し哀しげな微笑みだった。
>「・・・・・・・・・ごめんね、ジュリ。
> 決して、許してとは言わないわ。」
>「えっ・・・・・・」
>『それは、どういうこと?』と言う言葉を言葉にする前に、ジュリの意識は、遠のいた。
>そして、サラディンの元へと倒れ込んだ。
>「始めようか、サラ。」
>「ええ。」
>「すまない、遅くなっ・・・・サラディン様。」
>小さい土鍋と取り皿などが乗ったトレイを持った、黒い部屋着姿の神影が、ちょうど入ってきた。
>そして、サラディンとアルベスタが、一緒に居るのを見て、瞬時に一つのことを悟った。
>「・・・・・・・主の記憶を返しにきたのかい?」
>「何故それを?」
>そう聞き返している時点で、肯定していることに、なっているのを承知でサラディンは、聞いた。
>神影は、トレイをジュリのパソコンデスクに、置いた。
>その後に、ジュリが一番始めに決めた黒いぞろりとした魔導師風のローブに、瞬時に変化した。
>クツリクツリと、何を当たり前のことを?とでも言うように、こう返したのだった。
>「・・・・・『嵐』のリュイネから。
> 主の持つ、指輪の意味とそれに付随する主の過去を聞いた。
> 滑稽だとは思うよ、私にも覚えが無い訳ではない、感情儺だけに。」
>「イレギュラーね。」
>「もう一人、当事者が必要なのだろう?」
>「・・・・『封じの宝玉』は此処にあるぞ?」
>「・・・・・・・・・四百年前、『雲』が一度死んだだろう?
> その時に、ほんの一部と人間の魂が、交ざり合って、輪廻の輪に乗った。」
>「誰だ?」
>「《ブラッディ・カタリナ》と呼ばれた退魔師。
> 本名は、乾詠太郎、と言ったかな。
> ・・・・・連れてこようか?」
>「・・・・・連れて来い。」
>「クスクスクス。
> わかったよ、偽悪者で、偽善者のサラディン様。」
>そう言って、神影は、虚空に消えた。
>楽しそうでありながら、哀しそうな微笑み浮かべて。
>「動揺するぐらいなら、やらなければ良いのではないですか?
> サラディン。」
>「五月蝿い。
> ・・・・・アル、ジュリをベッドに寝かせてくれ。」
>「はいはい。」
>
>
>
>
>こうしてゆるゆると、
>でも確実に、夜は、更けて行く。


って?
そうだったんですか…!!?

う〜ん…ここに来て、意外な事実が。
次回も楽しみにしています!

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32875知らなければ行けないからこそ、苦悩しなければならない・・・・・。十叶 夕海 2006/11/15 23:38:39
記事番号32872へのコメント


>>「くすくす、サラ。
>> 愉快なことになっているようじゃありませんか。」
>>「・・・・・・・・・・五月蝿いわよ、アル。」
>>ユーラシア大陸の地上数千メートルを飛行する二つの人型。
>
>ユーラシア大陸…
>一体、そんなところにどういう目的で?
>ここで、もしも偶然カメラ撮影とかをしてた人が居合わせていたら、
>フライングヒューマノイドとして、タブロイド紙に載せられるんでしょうね(ぇ

移動中なのです。
下手に、飛行機とか使うよりも早いのです。
・・・・一応、番外として、モンゴル上空で、映画の撮影中に写り込んだと言う話も一応あります。

>
>>一人は、白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、紫闇色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。
>>髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。
>>胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。
>>容貌から年齢は推し量りにくい。
>
>バットマンのジョーカーみたいな感じですか(イメージは)?
>もしも目を合わせると、負の意味で吸い込まれる様な感じですね。

容貌の雰囲気としては。服とメイクは道化師めいてますが。
そうですね。
ある人は、それを恋だと言い、ある人は、恐怖だと言う。
そう言う人です。

>
>>もう一人は、髪は、真紅色に盛大な天然パ−マが掛かり、瞳は、開いている方は蒼穹の青。
>>開いている方というのは、片方は、緋染め革の眼帯で隠されていたからだ。
>>短い丈の藍色の軍服風の上衣に、共布のフレアスカートに、茶色のロングブーツ。
>>ただし、胸は不自然なふくらみであった。
>>前者をアルベスタ=リバードラゴン。
>>後者をサラディン=クレフォレム。
>>二人とも、人ではない。
>>それは、空を飛んでいることからも解るだろう。
>
>片目を覆ってるのは、隻眼?
>それとも、別に理由が?
>軍人風ですけど、本業なのかお洒落なのか…

片眼を覆っているのは、隻眼でもあり、もう一つ理由があります。
この話に、直接は関係ないですが。
一応、さらりと、過去編に関係します。
軍人風なのは、オシャレです、完璧。


>
>>しかも、軍用ヘリですら、追いつけないだろう。
>>「『無価値』『邪悪』『無益』の意味の名と『偉大なる公爵』『虚偽と詐術の貴公子』『敵意の天使』『隠されたる賄賂と暗殺の魔神』。
>> そういう、渾名を持つ悪魔に、それくらいで言われましてもねぇ。」
>>「お前は、人間だったころからそうだったでしょうに。
>> ・・・・・・・・・・・・・・・・それにしても、あの子が、相手が人間だとしても、過去のこと話せるなんて、ね。」
>>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妬けますね。
>> 私は、それこそ、イエスと一緒に居た頃から、ラブコールしていますが、貴方が惚れるのは、イエスや、クロイツさんとかの他の人ばかりですね。」
>>「それが、『恋心は、小鳥のように籠に入れておけない。』だよ。
>> ・・・・・・・・・それを、八百年前に気がつければ良かったんだけどね。」
>
>…大体、どのくらい生きてるのか?
>と、人間を超越してる事は分かりましたが…

約二千年ですかね。
最低でも、キリストと昔なじみですし。

>
>むしろ、それ以前に人間だった頃(恐らく、せいぜい数十年?)
>単位でそこまでの数と意味の通り名をもらうなんて、何やったんでしょうね、この方?
>
>ある意味、そっちの方が凄いのかも…

ベリアルとしての異名でもありますが。
アルベスタと言う存在だったときでも、幾つかは渾名されてました。
凄いと言えば、そうなのかもしれません。

>
>>「後悔しているのですか?」
>>「さあね。
>> でも、してなきゃ、こんな面倒なことしてないでしょ?」
>>「・・・・・・・確かにそうですね。
>> ミスタ・キャピュレット?」
>>「娘の恋心を否定して、別の男を宛てがおうとした、父親ね。
>> 否定しないわ。」
>>つらつらと、会話する二人。
>>当たり前のような、苦い恋人同士のような軽口の叩き合い。
>>サラディンとアルベスタの関係は、そんなものじゃなく、もう少し暗く昏い関係。
>>一番近いのは、『秘密』を共有し合う『共犯者』だろう。
>>本当の彼女が、死ぬことになった術を構築したのは、この二人なのだ。
>
>本当の彼女の死…
>その原因になった術…
>ユーラシア大陸には、それと関係する何かが?

ぎくりん
ユーラシアと言うよりは、崑崙関係なのですよ。
術の媒体が。

>
>>そして、作ると言い出したのは、サラディン。
>>『あの子のため』という大義名分で、『あの子』の命を結局奪ってしまった。
>>だけど、『あの子』に、望まない『生』を与えたのも、サラディンなのだ。
>>「・・・・・あの子の『呪い』とは、別の私のルールだもの。
>> あの子が、歩む道が、楽じゃないのも解ってたけど、それを誰かに話せるようになれば、全ての記憶を返そうって。」
>>「後悔しないのですね。
>> サラディン。
>> ・・・・・あの子に憎まれることになりますよ?」
>>「・・・・・構わないわ。
>> それだけのことを私は、あの子にした。
>> いくら、『あの子』のため、と言っても、許されることじゃないわ。」
>>「猊下の遠き御子ですが、私は、あのままにしておきたいと思うのですよ。
>> 『ベリアル』としては、憎しみに心を染めていただけると、大変やりやすいのですが。
>> 『アルベスタ』・・・・あの子に、術を少し教えた身としては、憎しみに心を染めて欲しくないのです。」
>>「私も、似たようなものよ。
>> だけど、区切りをつけなくちゃ。」
>>そうこうするうちに、日本上空まで来たようだ。
>>時刻は、午前二時過ぎ。
>>草木も眠る丑三つ時と言ったところ。
>>吸血鬼や夜のものにしてみれば、真っ昼間と言ったところだろうか。
>
>あ、目的日本でしたか(…
>

そうですよ。
日本なのです


>>彼は、封ぜられた『宝玉』の中で、微睡むように思考する。
>>
>>今は遥か遠くなった過日。
>>最愛の少女が自らの手で命を狩った光景を、この『牢獄』の中から自分は、ただ見ていることしかできなかった。
>>どれだけ、叫んでも、この声が届くことはなく。
>>どれだけ、手を伸ばしても、この手が彼女を引き止めることはなく。
>>どれだけ、願っても、彼女が死を思いとどまることはなかった。
>>彼女の身代わりになっても良かった。
>>・・・悪いのは、自分なのに。
>>そして、唯一愛したあの少女が黄泉路を辿ったという事実に、自分もまた絶望し、封印の中で深い眠りにつくことを決めた。
>>二度と覚めることを望まない、永久の眠りに。
>>けれど永く長い眠りの果てに、どこからか慟哭が聞こえてきた。
>>自分が眠りから目覚めると、既に亡くなってしまったはずの愛しい少女の気配を不意に感じた。
>>そして、同時に、自分を封じた八人と一柱が、彼女を蘇らせたことも知った。
>>また、その八人の中の一人が、一度死んだことで、術式に綻びが生まれ、かつては、完全であった『封じの宝玉』の中から、一部分だけではあったが、抜け出すことが出来た。
>
>それが罰なのかどうかは、結局自分で答えを見つけるしか無いのかも知れませんが…

彼は、多分、『罰』でしょう。
『好きな人を助けれないで、何が力だ』的な自傷行為的な罰でしょうが、
>
>悪意に翻弄される時に、ある意味厄介なのは個人には悪意が無く
>それでも、個人にある様に見えるときがある事と、
>
>それは、実は間違ってもいない事が多い事でしょうか?

だからこそ、始末が悪いと言うのもありますね。
この彼と本当の彼女と八人の間のことは、少なくとも『悪意』はないですから。

>
>>そして、抜け出したその先で見つけたのは、涙してもかつてと変わらない表情を表すことが苦手だったけれど、優しいあの愛しい少女いたのであった。
>>その傍に在るのは、自分ではなかったけれど、それでも、不器用なあの優しい微笑みを浮かべることが出来ているのは嬉しかった。
>>同時に、何故か、胸が少し痛んだけれど。
>
>それは、自分が彼女の傷を感じたから…?
>それとも、もう彼女も自分もあの頃とまったく同じではいられないから…?


前者ですかね.
彼女の本質は変わってないんです。

>
>>そして、同時に自分と過ごした数年も含む記憶をあの『鮮血微笑』は、奪い何処かに隠しているようだった。
>>それに、彼女は、前にもまして、哀しい人生を歩んでいる。
>>時の輪の中では全てが移り変わってしまった。
>>けれど、あの少女は違う。
>>少女の持つ美しい魂の本質は、決して穢れず、誇り高いものだった。
>>自分が愛した彼女そのものだ。
>>「ジュリさん・・・・・」
>>クツリ、クツリと。
>>自分は深い笑みを浮かべる。
>>今度こそ、貴方を幸せにする。
>>そのためなら、自分が、出会えなくても傍に居れなくても良い。
>>何故かは、知らないけれど、自分は、人間に転生した。
>>誰かに、導かれるように。
>>生まれ変わる会旅に、傍にはいることは叶わないけれど、それでも、何をしているかを少しは解るように、するために。
>>そういう風に、自分の魂を持つ人間の人生を操作した。
>>でも、出会ってしまった。
>>離れたくない。
>>そう思ってしまう。
>>自分が、干渉しないで、引かれ合うなら、代わりとは言わない、あの少女を幸せにしてくれるなら。
>>過去に自分たちを引き離した八人はもはや、あの少女のそばにいることさえ許されないのだから。
>>「愛していますよ・・・・・」
>>低い笑い声は、果てしない闇の中に吸い込まれて静かに消えていった。
>>それが、自分の精神と融合した赤ん坊―今は成長して青年になっていたがーに届いているとは知らずに。
>>
>
>彼は、どこへ行ったのでしょう?
>そして、また現れるのは…

また、悪夢に微睡むのでしょう。
解放される日のことを夢見て。

現れるのは・・・・・それは秘密です。

>
>>「う〜、もう少し詳しくたって。」
>>サラディンとアルベスタが、日本上空に居た頃。
>>数日前話した自分の過去を、もう少し詳しいのを欲しいと、天春と乾の両方から、ダブルで頼まれ、今日昨日と、狩りにも出かけず、パソコンのキーをカタカタと叩いているジュリが居た。
>
>注、自分がされて嫌な事を、他人にしては行けません
>(2人とも、同じ文筆業なら)

それでも、必要だったですからね。
話としても、二人にしても。
天春は、厳密に言えば、文筆業ではないです。

>
>>「・・・・・・お腹減った。
>> 神影、何してんだろ、トマト雑炊。」
>>ジュリにしてみれば、お昼ご飯的な意味だろう。
>>神影・・・・自分の使い魔が、持ってくるはずになっているようだ。
>>「トマト雑炊に、桃缶バニラアイスに、甘いモカチーノ、梨だっけね。
>> ・・・・・・・まともに、精気吸ってないから、早めに持って来るって言ってたのに。」
>>夜起きた時に、知らされていた献立をそらんじながら、今か今かと、待っている。
>>詳しいバージョンの自分の過去を記した文書は、ちょうど、ウルージが死んだ前後だ。
>>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう言えば、なんでだろう。
>>ウルが、死んだ直後を思い出すと、浮かんでくる白い短髪と切れ長の瞳の青年とドラゴンの映像。
>>青年の方は、ジュリが、今現在主力に使っている『氷』の術基礎を教えてくれた先生だ。
>>ドラゴンの方は、覚えていない。
>>それに、何故、全く関係ないシーンにその先生が出てくるのか解らない。
>>「・・・・師匠にも、水晶球でたまに喋るぐらいで、独り立ちしてから会ってないな。」
>>「・・・・・・・・・・そうね、もうすぐ、700年だものね。」
>>「サラ師匠。
>> お久しぶりです、お元気でしたか?
>> ・・・・・・・・・・それと、アルベスタ。」
>>独り言に応じたのは、当のサラディンだった。
>>それと一緒に居たのは、アルベスタ。
>>アルベスタは、いつも通りのどろりとしたような笑みのままだったが。
>>サラディンは、ジュリの記憶にあるような自信に満ちた微笑みではなく、少し哀しげな微笑みだった。
>>「・・・・・・・・・ごめんね、ジュリ。
>> 決して、許してとは言わないわ。」
>>「えっ・・・・・・」
>>『それは、どういうこと?』と言う言葉を言葉にする前に、ジュリの意識は、遠のいた。
>>そして、サラディンの元へと倒れ込んだ。
>>「始めようか、サラ。」
>>「ええ。」
>>「すまない、遅くなっ・・・・サラディン様。」
>>小さい土鍋と取り皿などが乗ったトレイを持った、黒い部屋着姿の神影が、ちょうど入ってきた。
>>そして、サラディンとアルベスタが、一緒に居るのを見て、瞬時に一つのことを悟った。
>>「・・・・・・・主の記憶を返しにきたのかい?」
>>「何故それを?」
>>そう聞き返している時点で、肯定していることに、なっているのを承知でサラディンは、聞いた。
>>神影は、トレイをジュリのパソコンデスクに、置いた。
>>その後に、ジュリが一番始めに決めた黒いぞろりとした魔導師風のローブに、瞬時に変化した。
>>クツリクツリと、何を当たり前のことを?とでも言うように、こう返したのだった。
>>「・・・・・『嵐』のリュイネから。
>> 主の持つ、指輪の意味とそれに付随する主の過去を聞いた。
>> 滑稽だとは思うよ、私にも覚えが無い訳ではない、感情儺だけに。」
>>「イレギュラーね。」
>>「もう一人、当事者が必要なのだろう?」
>>「・・・・『封じの宝玉』は此処にあるぞ?」
>>「・・・・・・・・・四百年前、『雲』が一度死んだだろう?
>> その時に、ほんの一部と人間の魂が、交ざり合って、輪廻の輪に乗った。」
>>「誰だ?」
>>「《ブラッディ・カタリナ》と呼ばれた退魔師。
>> 本名は、乾詠太郎、と言ったかな。
>> ・・・・・連れてこようか?」
>>「・・・・・連れて来い。」
>>「クスクスクス。
>> わかったよ、偽悪者で、偽善者のサラディン様。」
>>そう言って、神影は、虚空に消えた。
>>楽しそうでありながら、哀しそうな微笑み浮かべて。
>>「動揺するぐらいなら、やらなければ良いのではないですか?
>> サラディン。」
>>「五月蝿い。
>> ・・・・・アル、ジュリをベッドに寝かせてくれ。」
>>「はいはい。」
>>
>>
>>
>>
>>こうしてゆるゆると、
>>でも確実に、夜は、更けて行く。
>
>
>って?
>そうだったんですか…!!?
>
>う〜ん…ここに来て、意外な事実が。
>次回も楽しみにしています!


そうだったんです。
だからこそ、一年半前の殺人事件もあったようなものですし。
問題は、彼自身がそれを知らないことなんですけどね。



はい、お早いレスをお待ちしてますね。

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32856貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 序章BーA十叶 夕海 2006/11/6 00:54:46
記事番号32829へのコメント





   序章B―A 夢ノ ユメノ ゆめの 微睡み









乾のマンションー。


乾は、夢を見ていた。
今日は、結構忙しかったから、朝までぐっすりだと思ったのに。
夢を見ていた。
乾は、跳ね起きた。
夢ノ内容を反芻する。
此処最近よく見る夢だ。
外見相応の、少し不器用だけど、綺麗な微笑みを浮かべるジュリさん。
まだ、退魔師として現役だった頃に、一度だけ会った、鮮血微笑のサラ。
他は、知らない顔だったけど、夢の中の自分に、敵意か警戒を向けてくる七人。
友好的なのか非友好的なのか解らない微笑みを浮かべてくる燕尾服の悪魔。
それでも、少なくとも、夢ノ中の『俺』は、ジュリさん以外に嫌われていても、あの数年間が、居心地が良いと。
失いたくない、春の日溜まりのような暖かい生活だったと。
夢の中の『俺』の妖魔としての性質がそれを永くは許しはしなかったけれど。
出来るだけ永く続けば良いと思っていた。
「・・・・・叶わないって解ってても、続けば良いと思うほどあの生活が好きだったなんて。
 なんで、夢の中の俺は、そう思ったんだろう。」
『・・・・主?』
ベッドサイドのロウチェストに置いてある式神が入っているカエルのぬいぐるみから、小太郎が、そう声を掛けてきた。
完全に身を起こし、そのぬいぐるみを膝の上に乗せる。
「なぁ、小太郎 。
 お前はさ、自分が幸せにならなくても良いから、幸せになって欲しい人って居る?」
『主です。』
「そうじゃなくてな。
 例えば、自分が忌まれていて、それを誰かが受け入れてくれたけど、その誰かを生かしたいから、離れなくちゃいけないけど、離れたくないときはどうする?」
『・・・・・・?
 ・・・・そうですね、私が離れることで、その人が幸せになれるなら、離れます。
 だけど、温もりから、はぐれるのはとても寂しいです。』
「そっか。」
『主?
 何故、泣いておられるのですか?』
「泣いて・・・・・」
泣いてなんか居ない。そう言おうとしたが、たしかに、乾は泣いていた。
解らない。
解らないが、泣いていた。
「・・・・小太郎も、なんか飲む?」
ナイトキャップ代わりに、ベイリーズでも、飲もうと立ち上がる。
ベイリーズは、リキュールの一種。
彼が、家族のことで覚えている数少ないモノの一つなのだ。
想い出は、もちろんある。
だけど、品物は、もう十年前のあの日に消えてしまった。
だから、父親と兄がよく飲み、母親と妹がよくお菓子に使っていた。
そのせいと、彼自身、ビールやブランデーなどの苦い味のアルコールがダメなせいもあり、このリュキュールを常にストックしているのだ。
後は、カクテル瓶を何本か。
決して、火炎瓶ではないのであしからず。
『ご相伴させていただきます。』
「残念だけど、それは今日は諦めてもらえるかな?」
「・・・・・神影ね。
 何の用?」
ベッドから抜け出し、台所へ向かおうとした乾に、神影が扉の前に、立ちはだかる。
小太郎は、主人の腕の中でも、庇うようにカエルのぬいぐるみの身体を広げる。
「もう少し、TPOを考えると思っていたのは勘違いだったかな、神影?」
「・・・・・・《鮮血微笑のサラ》を知っているかい?」
「・・・ジュリさんのお師匠様で、《ノーライフキング》の中でも、最高に、恐く長生きなオカマの吸血鬼。」
「・・・・それが、主の家で待ってる。
 お前も、あの頃の関係者だからな。」
「は、い?話が見えないんだが。」
「・・・・・・・昔のジュリやサラ師匠が出ている夢を見たことが無いか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが?」
「それ関係だ。
 教皇庁でいうなら、13世紀頃が最期の目撃情報の有名な《魂喰い》のことだ。」
「で、行かないと行けないんだな。」
半分、寝入り端を邪魔されるような形になった乾は、不機嫌に応じる。
しかし、今少し前も見てしまい、気になっていることを言われたせいか、興味が出てきたようだ。
「じゃ、着替える。
 5分待ってくれ。」
「そのままでいい。
 話自体はすぐに済むし、ほとんど夢の中で語ることになる。」
「なに・・・・・」
『何を!!』の言葉は、乾は出したつもりだったのだろうが、それが音になることは無く、彼は意識を消失した。
それを軽々と、神影は、受け止め、横抱きで抱き上げた。
俗にいう『お姫様抱っこ』だ。
「・・・そこの式神も来たければくれば良い。」
『い、言われずとも。』
こうして、神影は、乾を連れサラの元へと戻ったのだった。








「サラディン、後悔するならしない方が良いのではないですか?」
「・・・・・過去は、変わらないわ。
 それを隠したのは、私の罪。
 赦してなんて、言えないけどね。
 せめて・・・・・・ね、私なりのケジメかな。」
ジュリを、彼女の私室のベッドに寝かせたサラディン。
その表情が、少し暗かったせいか、アルベスタは、声をかける。
返った答えは、何処か痛みに堪えるようなそんな声音をしていた。
「・・・・・君は、救われても良いとは私は思いますよ。
 わざわざ、自分だけでも振りほどける呪いを【アルコイリス】なんかと一緒に受けたんですから。」
「・・・・・・・相変わらずだね、アル。」
苦笑するかのように、サラディンは、呟く。
そして、窓から見える月に、視線をやる。
ちょうど、満月だった。
「・・・・・・・過去は変わらないわ。
 だからこそ、生き残った人を責めさいなむ。
 私はね、ジュリの幸せを望んでいたの。
 ・・・だけど、あの子は、ジュリは、私のこと怨んでる。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからこそ、今視せる必要があるのよ。」
「・・・・辛いもんですね。
 語れぬ真実、を覚えているのは。」
「そうね。
 ・・・そろそろ帰って来たみたいね。」
そう言って、『この話はおしまい』とでも、はぐらかす。
アルベスタも、それに乗る。
彼女・・・アルベスタに取っては、二千年も前から『彼』なのだけれど・・・・の『話したくない/話題にしたくない』というのは、痛いほどに理解が出来る。
だから、乗らない。
「連れてきた。
 ・・・・・終わったら、隣の部屋に居る。
 呼んでくれ。」
それだけをいうと、神影は、乾をアルベスタに渡して、乾の式神入りぬいぐるみをもったまま、隣の部屋に行ってしまった。
内容を知っているだけに、これ以上繰り返し聞きたくないとでも言うように。









「ねぇ、アル。
 これで効くの?
 ・・・・前に、悶絶して死んだじゃない?」
「・・・・・・・・・・・たぶん。
 かなり、中和剤を混合しましたから。」
そんな会話と、ミントに似た香りで、乾は起こされた。
自分を覗き込む、美女風の男と道化師風の男。
おそらく、片方が、サラディン=クレフォレム。
もう片方が、アルベスタ=リバードラゴンだろう。
どの道この道、特務エクソシストとしての戦列から離れて三年の自分が間違っても勝てる相手じゃない。
いや、まだ特務エクソシストだったとしても敵わないだろう。
「で、これが、《魂喰い》?
 前に殺したのと同じ魂の色なのは解るけど、その前は解らないんだけど?」
「・・・・・こう言うのは、魂マニアのアスタロトが、得意なんですけどね。」
「特徴的な魂の色だと言ったのは、アルでしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ああ、間違いない。
 なんで、一年半前に気がつかなかったのでしょうね。」
「・・・・・どういうことだ、なんのことだ?」
「・・・・・・・・・・・・・《魂喰い》と言うのは聞いたことが無い?
 特務エクソシストの養成講義の中で。」
「・・・・・・・・・・・精気を吸う人外の中でも、意識無意識関係なく、対象が死ぬまで吸引をヤメない存在の総称。」
「・・・・・・それの一番有名なのが、貴方の過去世。」
「端的すぎないですか?」
「なら、補足説明したら、アル、貴方が。」
「・・・・・・坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い。ですか。」
サラディンは、これ以上は話す必要がないと言うように、視線を外し、ジュリの方へ行ってしまった。
それを困ったように、流しつつ、アルベスタは、例のにィというよりは、どろりとしたような微笑みを浮かべる。
人間にしてみれば、氷の手で心臓をわしづかみにされた方が、よほど安心できるだろうと言うほどに、怖気が走るそんな微笑みだ。
「まぁ、僕が語れることは、本当に少ないものです。
 だけれど、言えることの多くを占めるのは、ライアと呼ばれた《魂喰い》とジュリと呼ばれた《樹姫》は、本当にお互いがお互いを補い合うような関係です。
 ・・・・『天に在りては比翼の鳥、地に在りては連理の枝』。
 そんな二人でしたね。
 もちろん、恋人と言っても、中学生日記のように、せいぜいキス止まりの他愛のなく初々しい関係でしたよ。
 しかし、彼の《魂喰い》は、存在自体が、『罪』なのですよ。
 彼が、人であれば、同族であれば、たとえ悪魔であっても、《魂喰い》でなければ、あれは起きずに済みました。
 ・・・・・・・・これ以上のことは、貴方自身が、貴方自身の夢の中から見つけて下さい。」
乾に、言葉を次がせないほど滑らかに、でも静かに淀みなく、言葉を紡ぐアルベスタ。
それは、『恐ろしさ』を伴う『気迫』と言うよりも、『哀しみ』を伴う『気迫』でもあった。
「・・・・・・・」
「あとは、夢の中で。
 Arrivederci(アリヴェルチ)、おやすみなさい。」
また、乾に眠気が襲う。
クロロホルムを嗅がされたような、急激な眠りが。
しばらく、この部屋は、沈黙の帳に支配される。
「さて、やろうか、アル。
 サポートと術式の中の案内は頼んだよ。」
「はいはい。
 一言一句、間違えることが出来ないですね。」
ベッドに、ジュリと乾を寝かせ、それを挟むように、足元から向かって、右にサラディン、左にアルベスタが、並ぶ。
そして、手を触れるか触れないかの位置で合わせる。
眼を半眼に空ろにする。
特に、合図もせずに、呪言を互いの口から流れ始める。


【時は遥か遠く 祈りも届かず ただ願いだけが降り積もる 時に想いを託し
 
 時よ導け 遠く儚い糸を手繰り寄せ 想い出の飾り布(タペストリー)を編み送り
 
 真実(まこと)の心(おもい)を 彼の者達へと探し贈れ 
  
 彼の者達の出逢い別れ 想いの酌み交わし 虹と微笑み達との心の交差
 
 時の中に埋もれし 真実(まこと)よ 哀しみと喜びの真実よ
 
 時の中に埋もれさせた 真実(まこと)よ  怒りと楽しみの真実よ
 
 汝らの真実が主 【樹姫】と【魂喰い】の元へ 

 届け 来れ 案内人の導きの元 過日を幻が夢として 紡ぎ見せよ      】


「それじゃ、行ってきますね、サラディン。」
「頼んだ、アル。
 それと、サラディナーサだ、今は。」
呪言を最後まで、淀みなく、抑揚少なく唱え終わると、鏡合わせのようにあった、アルベスタの輪郭が、ぼやけ翳(かす)み、ジュリと乾に吸い込まれるように消えた。
「頼んだぞ、アル。
 ・・・・・ジュリ、坊や、お前達に取っては、易しくも優しくない夢で過去夢だ。
 恨み言は、幾らでも聞く。赦してなど決して言わない。
 押しつぶされるな、戻って来い。」
祈り、願うようにサラディンは、壁に背を持たせかけ、顔を伏せた。
こうして、ジュリと【アルコイリス】、サラディンと、【魂喰い】との間にあったことが今明かされるのであった。








@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―@―



予定の二倍量で、お届けしました序章B。
いろいろと暴露しすぎな、序章もこれで終わり。
現在まで引きずることになった『楔』も、明かされます。


それは、甘く優しく、苦く辛い悪夢のような過去夢です。
だからこそ、思い出して、向き合わなければならないこと。


さあさて、八百年近い昔に何が在ったのか。
何が、【樹姫】と【アルコイリス】【鮮血微笑】を分ってのでしょうか?


次回に、中書き兼序章で判明していることの整理を挟んで、本編です。
それでは、また次回です。

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32921醒めた時に気づく物…月読 乾 2006/12/1 23:27:33
記事番号32856へのコメント


>乾は、夢を見ていた。
>今日は、結構忙しかったから、朝までぐっすりだと思ったのに。
>夢を見ていた。
>乾は、跳ね起きた。
>夢ノ内容を反芻する。
>此処最近よく見る夢だ。
>外見相応の、少し不器用だけど、綺麗な微笑みを浮かべるジュリさん。
>まだ、退魔師として現役だった頃に、一度だけ会った、鮮血微笑のサラ。
>他は、知らない顔だったけど、夢の中の自分に、敵意か警戒を向けてくる七人。
>友好的なのか非友好的なのか解らない微笑みを浮かべてくる燕尾服の悪魔。
>それでも、少なくとも、夢ノ中の『俺』は、ジュリさん以外に嫌われていても、あの数年間が、居心地が良いと。
>失いたくない、春の日溜まりのような暖かい生活だったと。
>夢の中の『俺』の妖魔としての性質がそれを永くは許しはしなかったけれど。
>出来るだけ永く続けば良いと思っていた。
>「・・・・・叶わないって解ってても、続けば良いと思うほどあの生活が好きだったなんて。
> なんで、夢の中の俺は、そう思ったんだろう。」
>『・・・・主?』
>ベッドサイドのロウチェストに置いてある式神が入っているカエルのぬいぐるみから、小太郎が、そう声を掛けてきた。

同じ夢を見る時は、それに囚われている事。
それは、傍にその時の亡霊が居る事。

>完全に身を起こし、そのぬいぐるみを膝の上に乗せる。
>「なぁ、小太郎 。
> お前はさ、自分が幸せにならなくても良いから、幸せになって欲しい人って居る?」
>『主です。』
>「そうじゃなくてな。
> 例えば、自分が忌まれていて、それを誰かが受け入れてくれたけど、その誰かを生かしたいから、離れなくちゃいけないけど、離れたくないときはどうする?」
>『・・・・・・?
> ・・・・そうですね、私が離れることで、その人が幸せになれるなら、離れます。
> だけど、温もりから、はぐれるのはとても寂しいです。』
>「そっか。」
>『主?
> 何故、泣いておられるのですか?』
>「泣いて・・・・・」
>泣いてなんか居ない。そう言おうとしたが、たしかに、乾は泣いていた。
>解らない。
>解らないが、泣いていた。
>「・・・・小太郎も、なんか飲む?」
>ナイトキャップ代わりに、ベイリーズでも、飲もうと立ち上がる。
>ベイリーズは、リキュールの一種。
>彼が、家族のことで覚えている数少ないモノの一つなのだ。
>想い出は、もちろんある。
>だけど、品物は、もう十年前のあの日に消えてしまった。
>だから、父親と兄がよく飲み、母親と妹がよくお菓子に使っていた。
>そのせいと、彼自身、ビールやブランデーなどの苦い味のアルコールがダメなせいもあり、このリュキュールを常にストックしているのだ。

こういう考えが浮かぶ時って、自分が弱くなってるのかな…?
と考えますよね(経験あり)?
傍に、誰か居るだけで救われる…です。


>後は、カクテル瓶を何本か。
>決して、火炎瓶ではないのであしからず。

いや、と言うよりも使う様な時があるんですか(汗?
断りを入れるという事は…

>『ご相伴させていただきます。』
>「残念だけど、それは今日は諦めてもらえるかな?」
>「・・・・・神影ね。
> 何の用?」
>ベッドから抜け出し、台所へ向かおうとした乾に、神影が扉の前に、立ちはだかる。
>小太郎は、主人の腕の中でも、庇うようにカエルのぬいぐるみの身体を広げる。
>「もう少し、TPOを考えると思っていたのは勘違いだったかな、神影?」
>「・・・・・・《鮮血微笑のサラ》を知っているかい?」
>「・・・ジュリさんのお師匠様で、《ノーライフキング》の中でも、最高に、恐く長生きなオカマの吸血鬼。」
>「・・・・それが、主の家で待ってる。
> お前も、あの頃の関係者だからな。」
>「は、い?話が見えないんだが。」
>「・・・・・・・昔のジュリやサラ師匠が出ている夢を見たことが無いか?」
>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが?」
>「それ関係だ。
> 教皇庁でいうなら、13世紀頃が最期の目撃情報の有名な《魂喰い》のことだ。」
>「で、行かないと行けないんだな。」
>半分、寝入り端を邪魔されるような形になった乾は、不機嫌に応じる。
>しかし、今少し前も見てしまい、気になっていることを言われたせいか、興味が出てきたようだ。
>「じゃ、着替える。
> 5分待ってくれ。」
>「そのままでいい。
> 話自体はすぐに済むし、ほとんど夢の中で語ることになる。」
>「なに・・・・・」
>『何を!!』の言葉は、乾は出したつもりだったのだろうが、それが音になることは無く、彼は意識を消失した。
>それを軽々と、神影は、受け止め、横抱きで抱き上げた。
>俗にいう『お姫様抱っこ』だ。
>「・・・そこの式神も来たければくれば良い。」
>『い、言われずとも。』
>こうして、神影は、乾を連れサラの元へと戻ったのだった。

まあ、体勢にはノーコメントの方向で(汗
やっぱり、運命の渦はすぐ近くまで来てるみたいですね。

>「サラディン、後悔するならしない方が良いのではないで
すか?」
>「・・・・・過去は、変わらないわ。
> それを隠したのは、私の罪。
> 赦してなんて、言えないけどね。
> せめて・・・・・・ね、私なりのケジメかな。」
>ジュリを、彼女の私室のベッドに寝かせたサラディン。
>その表情が、少し暗かったせいか、アルベスタは、声をかける。
>返った答えは、何処か痛みに堪えるようなそんな声音をしていた。
>「・・・・・君は、救われても良いとは私は思いますよ。
> わざわざ、自分だけでも振りほどける呪いを【アルコイリス】なんかと一緒に受けたんですから。」
>「・・・・・・・相変わらずだね、アル。」
>苦笑するかのように、サラディンは、呟く。
>そして、窓から見える月に、視線をやる。
>ちょうど、満月だった。
>「・・・・・・・過去は変わらないわ。
> だからこそ、生き残った人を責めさいなむ。
> 私はね、ジュリの幸せを望んでいたの。
> ・・・だけど、あの子は、ジュリは、私のこと怨んでる。
> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからこそ、今視せる必要があるのよ。」
>「・・・・辛いもんですね。
> 語れぬ真実、を覚えているのは。」
>「そうね。
> ・・・そろそろ帰って来たみたいね。」
>そう言って、『この話はおしまい』とでも、はぐらかす。
>アルベスタも、それに乗る。
>彼女・・・アルベスタに取っては、二千年も前から『彼』なのだけれど・・・・の『話したくない/話題にしたくない』というのは、痛いほどに理解が出来る。
>だから、乗らない。
>「連れてきた。
> ・・・・・終わったら、隣の部屋に居る。
> 呼んでくれ。」
>それだけをいうと、神影は、乾をアルベスタに渡して、乾の式神入りぬいぐるみをもったまま、隣の部屋に行ってしまった。
>内容を知っているだけに、これ以上繰り返し聞きたくないとでも言うように。

変えられないけど、修正はできる。
変えられないからこそ、修正する。

今度こそ、出来なかった事に何かをやれるんでしょうか?

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32924それが、吉凶どちらか・・・・十叶 夕海 2006/12/2 14:54:37
記事番号32921へのコメント


>
>>乾は、夢を見ていた。
>>今日は、結構忙しかったから、朝までぐっすりだと思ったのに。
>>夢を見ていた。
>>乾は、跳ね起きた。
>>夢ノ内容を反芻する。
>>此処最近よく見る夢だ。
>>外見相応の、少し不器用だけど、綺麗な微笑みを浮かべるジュリさん。
>>まだ、退魔師として現役だった頃に、一度だけ会った、鮮血微笑のサラ。
>>他は、知らない顔だったけど、夢の中の自分に、敵意か警戒を向けてくる七人。
>>友好的なのか非友好的なのか解らない微笑みを浮かべてくる燕尾服の悪魔。
>>それでも、少なくとも、夢ノ中の『俺』は、ジュリさん以外に嫌われていても、あの数年間が、居心地が良いと。
>>失いたくない、春の日溜まりのような暖かい生活だったと。
>>夢の中の『俺』の妖魔としての性質がそれを永くは許しはしなかったけれど。
>>出来るだけ永く続けば良いと思っていた。
>>「・・・・・叶わないって解ってても、続けば良いと思うほどあの生活が好きだったなんて。
>> なんで、夢の中の俺は、そう思ったんだろう。」
>>『・・・・主?』
>>ベッドサイドのロウチェストに置いてある式神が入っているカエルのぬいぐるみから、小太郎が、そう声を掛けてきた。
>
>同じ夢を見る時は、それに囚われている事。
>それは、傍にその時の亡霊が居る事。

だからこそ、それに浸りたいと思う。
彼に取っては、過去にあったことなのだから。

>
>>完全に身を起こし、そのぬいぐるみを膝の上に乗せる。
>>「なぁ、小太郎 。
>> お前はさ、自分が幸せにならなくても良いから、幸せになって欲しい人って居る?」
>>『主です。』
>>「そうじゃなくてな。
>> 例えば、自分が忌まれていて、それを誰かが受け入れてくれたけど、その誰かを生かしたいから、離れなくちゃいけないけど、離れたくないときはどうする?」
>>『・・・・・・?
>> ・・・・そうですね、私が離れることで、その人が幸せになれるなら、離れます。
>> だけど、温もりから、はぐれるのはとても寂しいです。』
>>「そっか。」
>>『主?
>> 何故、泣いておられるのですか?』
>>「泣いて・・・・・」
>>泣いてなんか居ない。そう言おうとしたが、たしかに、乾は泣いていた。
>>解らない。
>>解らないが、泣いていた。
>>「・・・・小太郎も、なんか飲む?」
>>ナイトキャップ代わりに、ベイリーズでも、飲もうと立ち上がる。
>>ベイリーズは、リキュールの一種。
>>彼が、家族のことで覚えている数少ないモノの一つなのだ。
>>想い出は、もちろんある。
>>だけど、品物は、もう十年前のあの日に消えてしまった。
>>だから、父親と兄がよく飲み、母親と妹がよくお菓子に使っていた。
>>そのせいと、彼自身、ビールやブランデーなどの苦い味のアルコールがダメなせいもあり、このリュキュールを常にストックしているのだ。
>
>こういう考えが浮かぶ時って、自分が弱くなってるのかな…?
>と考えますよね(経験あり)?
>傍に、誰か居るだけで救われる…です。

人間ならば、だれでもね。
思い浮かんで、ある種当然なんです。
温もりが在るだけで、救われますしね。

>
>
>>後は、カクテル瓶を何本か。
>>決して、火炎瓶ではないのであしからず。
>
>いや、と言うよりも使う様な時があるんですか(汗?
>断りを入れるという事は…

カクテル瓶≒火炎瓶なのです。
大麻をマリファナとかというように、異称なのです。
それに、炎による浄化って、一番早いですし。

>
>>『ご相伴させていただきます。』
>>「残念だけど、それは今日は諦めてもらえるかな?」
>>「・・・・・神影ね。
>> 何の用?」
>>ベッドから抜け出し、台所へ向かおうとした乾に、神影が扉の前に、立ちはだかる。
>>小太郎は、主人の腕の中でも、庇うようにカエルのぬいぐるみの身体を広げる。
>>「もう少し、TPOを考えると思っていたのは勘違いだったかな、神影?」
>>「・・・・・・《鮮血微笑のサラ》を知っているかい?」
>>「・・・ジュリさんのお師匠様で、《ノーライフキング》の中でも、最高に、恐く長生きなオカマの吸血鬼。」
>>「・・・・それが、主の家で待ってる。
>> お前も、あの頃の関係者だからな。」
>>「は、い?話が見えないんだが。」
>>「・・・・・・・昔のジュリやサラ師匠が出ている夢を見たことが無いか?」
>>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それが?」
>>「それ関係だ。
>> 教皇庁でいうなら、13世紀頃が最期の目撃情報の有名な《魂喰い》のことだ。」
>>「で、行かないと行けないんだな。」
>>半分、寝入り端を邪魔されるような形になった乾は、不機嫌に応じる。
>>しかし、今少し前も見てしまい、気になっていることを言われたせいか、興味が出てきたようだ。
>>「じゃ、着替える。
>> 5分待ってくれ。」
>>「そのままでいい。
>> 話自体はすぐに済むし、ほとんど夢の中で語ることになる。」
>>「なに・・・・・」
>>『何を!!』の言葉は、乾は出したつもりだったのだろうが、それが音になることは無く、彼は意識を消失した。
>>それを軽々と、神影は、受け止め、横抱きで抱き上げた。
>>俗にいう『お姫様抱っこ』だ。
>>「・・・そこの式神も来たければくれば良い。」
>>『い、言われずとも。』
>>こうして、神影は、乾を連れサラの元へと戻ったのだった。
>
>まあ、体勢にはノーコメントの方向で(汗
>やっぱり、運命の渦はすぐ近くまで来てるみたいですね。

ですね。
彼は、自覚してやってる訳じゃないです。
・・・・ええ、大きな渦がすぐ傍まで。

>
>>「サラディン、後悔するならしない方が良いのではないで
>すか?」
>>「・・・・・過去は、変わらないわ。
>> それを隠したのは、私の罪。
>> 赦してなんて、言えないけどね。
>> せめて・・・・・・ね、私なりのケジメかな。」
>>ジュリを、彼女の私室のベッドに寝かせたサラディン。
>>その表情が、少し暗かったせいか、アルベスタは、声をかける。
>>返った答えは、何処か痛みに堪えるようなそんな声音をしていた。
>>「・・・・・君は、救われても良いとは私は思いますよ。
>> わざわざ、自分だけでも振りほどける呪いを【アルコイリス】なんかと一緒に受けたんですから。」
>>「・・・・・・・相変わらずだね、アル。」
>>苦笑するかのように、サラディンは、呟く。
>>そして、窓から見える月に、視線をやる。
>>ちょうど、満月だった。
>>「・・・・・・・過去は変わらないわ。
>> だからこそ、生き残った人を責めさいなむ。
>> 私はね、ジュリの幸せを望んでいたの。
>> ・・・だけど、あの子は、ジュリは、私のこと怨んでる。
>> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからこそ、今視せる必要があるのよ。」
>>「・・・・辛いもんですね。
>> 語れぬ真実、を覚えているのは。」
>>「そうね。
>> ・・・そろそろ帰って来たみたいね。」
>>そう言って、『この話はおしまい』とでも、はぐらかす。
>>アルベスタも、それに乗る。
>>彼女・・・アルベスタに取っては、二千年も前から『彼』なのだけれど・・・・の『話したくない/話題にしたくない』というのは、痛いほどに理解が出来る。
>>だから、乗らない。
>>「連れてきた。
>> ・・・・・終わったら、隣の部屋に居る。
>> 呼んでくれ。」
>>それだけをいうと、神影は、乾をアルベスタに渡して、乾の式神入りぬいぐるみをもったまま、隣の部屋に行ってしまった。
>>内容を知っているだけに、これ以上繰り返し聞きたくないとでも言うように。
>
>変えられないけど、修正はできる。
>変えられないからこそ、修正する。
>
>今度こそ、出来なかった事に何かをやれるんでしょうか?


変えられるけど、振り返れない。
だけれど、修正で、良かったと思えるようにする。

何かが変わるか解らない、解らないから、コトを起こそうとする。

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32867貴方ノイナイ世界ハ・・・・+赦して欲しいとは言えない+ 解説&整理十叶 夕海 2006/11/12 15:25:18
記事番号32829へのコメント





さてさて、皆様。
優しいけれど、甘い毒のような悪夢を見るお覚悟は出来ましたでしょうか?
その悪夢の前に、幾つか、事実関係を整理してゆきましょう。




『ジュリは、102歳まで、サラディンの元で、修行していた。』

このお話ではないですが、『光への憧憬+どうか忘れないで+』でも、ある通り、ジュリは、サラディンの元で修行していたというのは、明言されてます。
また、ファスファリオンが、明言している通り、あわせて、『八十八年』修行しておりますので。



『今のジュリ≒本当の彼女。or 今のジュリ=本当の彼女。』

ある意味、このお話のクライマックスなので。
レスにあった矛盾を少しだけ解消。
今のジュリの身体と本当の彼女・・・昔のジュリは、同一肉体です。
何故、齟齬が生まれているかは、もう答えを提示しております。



『【三千世界の鴉を殺し 主と朝寝をしてみたい】とは?』

幕末頃に、作られたどどいつです。
多少、破調ではあるそうですが。
はい、時間軸、滅茶苦茶です。
ですが、意味が、刹なに切ないので、使用しました。
意味としては、『全世界の朝告げ鳥を全て殺して 愛しい貴方と何時までも朝寝坊して居たい』と言うもの。
朝寝坊だけでも、三千世界の鴉を殺さなければ行けないほどの障害のある恋。
【魂喰い】と『本当の彼女』の恋なのです、それが。




『【アルコイリス】の人外からの評価と立ち位置は?』

八百年前、【アルコイリス】の七人と【鮮血微笑のサラ】は、当時の人外及び魔道・法術《この世にあらざる力》二関わる人間からは、恐れられていました。
当時は、【鮮血微笑のサラ】とその配下【アルコイリス】は、とある小国に縛られていましたが、それでも、その強さと優しさと冷酷さは、欧州のみならず中東、中国にまで、その名前を知られ、恐れられていました。





『【アルコイリス】は、本当の彼女とジュリからの立ち位置は?』

本当の彼女とジュリから見て、【アルコイリス】は、兄であり、姉であり、父であり、母でもあった。
家族のような存在でした。
だからこそ、『本当の彼女』は、【アルコイリス】に、【魂喰い】との仲を認めて欲しかったのです。
もう、遅いですけれど。





『サラディンのこと。』

サラディンは、フルネーム『サラディン=クレフォレム』。
偽名と言うか、公称『サラディナーサ=クレフォレム』。
女装が大好きな最高位の吸血鬼の一人。
最高峰と唄われる【十二月】の【十一月】でもある。
なお、アルベスタ=リバードラゴンこと、ベリアルとは、二千年前、イエス・キリストを含めた幼馴染み。
基本的に、無関心主義者を装っては居るが、興味のある存在には優しい父親な感じ。
800年前のデキゴトのそもそもの発案者。




『ベリアルのこと。』

ベリアルは、役職名。
本名、『アルベスタ=リバードラゴン』
二千年前に、親友がゴルゴダの丘に磔刑にされ、もう一人も人外になって絶望したところを、初代(オリジナル)ベリアルに、拾われ、役目を受け継いだ。
一応、どころか歴とした、悪魔の最高幹部・【七罪】の一人。
【本当の彼女】とジュリの番外講師。



『 【呪い】のことは?』

本当の彼女が、今の際に掛け、その後二年間をかけて、編み込んだ呪いのこと。
幾つか、制約があり。
死ねないことー死んでも生き返ること。
行動制約。
その二つが小説内で、明言されています。



『 【天に在りては比翼の翼 地に在りては連理の枝】とは?』

ええと、たしか、楊貴妃と玄宗帝を詠った【長恨歌】の一節。
で、意味は、『仲がいいつがい』です。
ようするに、『仲睦まじい夫婦・恋人』を刺した言葉です。
アルベスタが言うには、まだキス止まりだったけど、それくらいに仲が良かったと評しているようです。






さあさて、悪夢が始まりまする。
その果てに、あるのは、幸福は不幸か、どちらかはわかりません。
それでは、甘く苦いチョコラッテのような悪夢の過去夢が微睡み始まります。

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32928デス・ノート…?(リスト!月読 乾 2006/12/4 09:17:18
記事番号32867へのコメント

さてさて、皆様。
>優しいけれど、甘い毒のような悪夢を見るお覚悟は出来ましたでしょうか?
>その悪夢の前に、幾つか、事実関係を整理してゆきましょう。

おはようございます。
今回は、物語も急変に向かう事に合わせておさらいといった感じですね。
ゆっくり、見直して今後に備えさせてもらいます
(冒頭の言葉は、怖いのでさらっと無視。)


>『ジュリは、102歳まで、サラディンの元で、修行していた。』
>
>このお話ではないですが、『光への憧憬+どうか忘れないで+』でも、ある通り、ジュリは、サラディンの元で修行していたというのは、明言されてます。
>また、ファスファリオンが、明言している通り、あわせて、『八十八年』修行しておりますので。

「88年」が、大体吸血鬼にとってはどの程度の感覚なのか…
後、その期間は長いのか短いのかも気になります。
いずれにせよ、この話だけでなく他の物語ともリンクしている訳ですね。


>『今のジュリ≒本当の彼女。or 今のジュリ=本当の彼女。』
>
>ある意味、このお話のクライマックスなので。
>レスにあった矛盾を少しだけ解消。
>今のジュリの身体と本当の彼女・・・昔のジュリは、同一肉体です。
>何故、齟齬が生まれているかは、もう答えを提示しております。

…ふむ、
もう一度、よく読みなおして見ます。

>『【三千世界の鴉を殺し 主と朝寝をしてみたい】とは?』
>
>幕末頃に、作られたどどいつです。
>多少、破調ではあるそうですが。
>はい、時間軸、滅茶苦茶です。
>ですが、意味が、刹なに切ないので、使用しました。
>意味としては、『全世界の朝告げ鳥を全て殺して 愛しい貴方と何時までも朝寝坊して居たい』と言うもの。
>朝寝坊だけでも、三千世界の鴉を殺さなければ行けないほどの障害のある恋。
>【魂喰い】と『本当の彼女』の恋なのです、それが。
成る程!
(無知です)
たとえだけでは無く、どうもその詩自体にも意味はありそうですね。


>『【アルコイリス】の人外からの評価と立ち位置は?』
>
>八百年前、【アルコイリス】の七人と【鮮血微笑のサラ】は、当時の人外及び魔道・法術《この世にあらざる力》二関わる人間からは、恐れられていました。
>当時は、【鮮血微笑のサラ】とその配下【アルコイリス】は、とある小国に縛られていましたが、それでも、その強さと優しさと冷酷さは、欧州のみならず中東、中国にまで、その名前を知られ、恐れられていました。

大体、貿易をしてた商人や宣教師を通じて…って感じでしょうか?
しかし、海を隔てたとこの同じ世界に生きる者には、どう反応されたのか…
直接の本編の関係者以外にも気になります。




>『【アルコイリス】は、本当の彼女とジュリからの立ち位置は?』
>
>本当の彼女とジュリから見て、【アルコイリス】は、兄であり、姉であり、父であり、母でもあった。
>家族のような存在でした。
>だからこそ、『本当の彼女』は、【アルコイリス】に、【魂喰い】との仲を認めて欲しかったのです。
>もう、遅いですけれど。

同じ形では戻せないかも知れないけど、答えを出そうとはしていると?



>『サラディンのこと。』
>
>サラディンは、フルネーム『サラディン=クレフォレム』。
>偽名と言うか、公称『サラディナーサ=クレフォレム』。
>女装が大好きな最高位の吸血鬼の一人。
>最高峰と唄われる【十二月】の【十一月】でもある。
>なお、アルベスタ=リバードラゴンこと、ベリアルとは、二千年前、イエス・キリストを含めた幼馴染み。
>基本的に、無関心主義者を装っては居るが、興味のある存在には優しい父親な感じ。
>800年前のデキゴトのそもそもの発案者。

……
さすがに、凡人を超えすぎた基準で言われるとどうすればいいのか…(汗
けど、興味はあります。


>『ベリアルのこと。』
>
>ベリアルは、役職名。
>本名、『アルベスタ=リバードラゴン』
>二千年前に、親友がゴルゴダの丘に磔刑にされ、もう一人も人外になって絶望したところを、初代(オリジナル)ベリアルに、拾われ、役目を受け継いだ。
>一応、どころか歴とした、悪魔の最高幹部・【七罪】の一人。
>【本当の彼女】とジュリの番外講師。

元は人間と。
人間時代の詳細も興味が同じく。

>『 【呪い】のことは?』
>
>本当の彼女が、今の際に掛け、その後二年間をかけて、編み込んだ呪いのこと。
>幾つか、制約があり。
>死ねないことー死んでも生き返ること。
>行動制約。
>その二つが小説内で、明言されています。

今後、重要なキーワードになる一つですね。

>『 【天に在りては比翼の翼 地に在りては連理の枝】とは?』
>
>ええと、たしか、楊貴妃と玄宗帝を詠った【長恨歌】の一節。
>で、意味は、『仲がいいつがい』です。
>ようするに、『仲睦まじい夫婦・恋人』を刺した言葉です。
>アルベスタが言うには、まだキス止まりだったけど、それくらいに仲が良かったと評しているようです。

中国系の関係者とも、今後は接点が出そうな感じでもありますしね。




>さあさて、悪夢が始まりまする。
>その果てに、あるのは、幸福は不幸か、どちらかはわかりません。
>それでは、甘く苦いチョコラッテのような悪夢の過去夢が微睡み始まります。

では、本編を心して読ませてもらいます
(怖いものは気にしない)

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32930さあさて、次は、悪夢の前の幸せな夢さね、十叶 夕海 2006/12/4 22:38:43
記事番号32928へのコメント


>さてさて、皆様。
>>優しいけれど、甘い毒のような悪夢を見るお覚悟は出来ましたでしょうか?
>>その悪夢の前に、幾つか、事実関係を整理してゆきましょう。
>
>おはようございます。
>今回は、物語も急変に向かう事に合わせておさらいといった感じですね。
>ゆっくり、見直して今後に備えさせてもらいます
>(冒頭の言葉は、怖いのでさらっと無視。)

こんばんは。
そうですね、設定理解済みを前提に書く予定ですので。
はい、では、答え合わせを。


>
>
>>『ジュリは、102歳まで、サラディンの元で、修行していた。』
>>
>>このお話ではないですが、『光への憧憬+どうか忘れないで+』でも、ある通り、ジュリは、サラディンの元で修行していたというのは、明言されてます。
>>また、ファスファリオンが、明言している通り、あわせて、『八十八年』修行しておりますので。
>
>「88年」が、大体吸血鬼にとってはどの程度の感覚なのか…
>後、その期間は長いのか短いのかも気になります。
>いずれにせよ、この話だけでなく他の物語ともリンクしている訳ですね。

大体、十分の一ぐらいで、お願いします。
短くはないでしょうね、一応、義務教育分程度の長さですので。
ですね、シリーズですし。

>
>
>>『今のジュリ≒本当の彼女。or 今のジュリ=本当の彼女。』
>>
>>ある意味、このお話のクライマックスなので。
>>レスにあった矛盾を少しだけ解消。
>>今のジュリの身体と本当の彼女・・・昔のジュリは、同一肉体です。
>>何故、齟齬が生まれているかは、もう答えを提示しております。
>
>…ふむ、
>もう一度、よく読みなおして見ます。

はっきりとは、書かれていません。
わかりにいですが。

>
>>『【三千世界の鴉を殺し 主と朝寝をしてみたい】とは?』
>>
>>幕末頃に、作られたどどいつです。
>>多少、破調ではあるそうですが。
>>はい、時間軸、滅茶苦茶です。
>>ですが、意味が、刹なに切ないので、使用しました。
>>意味としては、『全世界の朝告げ鳥を全て殺して 愛しい貴方と何時までも朝寝坊して居たい』と言うもの。
>>朝寝坊だけでも、三千世界の鴉を殺さなければ行けないほどの障害のある恋。
>>【魂喰い】と『本当の彼女』の恋なのです、それが。
>成る程!
>(無知です)
>たとえだけでは無く、どうもその詩自体にも意味はありそうですね。

私も、とあるガイズラブコメディで知りましたし。
意味は、『全世界の朝告鳥を殺してでも、愛おしい貴方と朝寝をしたい』です。

>
>
>>『【アルコイリス】の人外からの評価と立ち位置は?』
>>
>>八百年前、【アルコイリス】の七人と【鮮血微笑のサラ】は、当時の人外及び魔道・法術《この世にあらざる力》二関わる人間からは、恐れられていました。
>>当時は、【鮮血微笑のサラ】とその配下【アルコイリス】は、とある小国に縛られていましたが、それでも、その強さと優しさと冷酷さは、欧州のみならず中東、中国にまで、その名前を知られ、恐れられていました。
>
>大体、貿易をしてた商人や宣教師を通じて…って感じでしょうか?
>しかし、海を隔てたとこの同じ世界に生きる者には、どう反応されたのか…
>直接の本編の関係者以外にも気になります。
>

あとは、世界を回るような同じ人外を通じてですね。
海を隔てた同胞には、畏敬の念でしょうか。
番外、一本書くかもしれないです。


>
>
>
>>『【アルコイリス】は、本当の彼女とジュリからの立ち位置は?』
>>
>>本当の彼女とジュリから見て、【アルコイリス】は、兄であり、姉であり、父であり、母でもあった。
>>家族のような存在でした。
>>だからこそ、『本当の彼女』は、【アルコイリス】に、【魂喰い】との仲を認めて欲しかったのです。
>>もう、遅いですけれど。
>
>同じ形では戻せないかも知れないけど、答えを出そうとはしていると?

ですね。
そのきっかけが、『ジュリ』が、『誰か』に過去を打ち明けることです。


>
>
>
>>『サラディンのこと。』
>>
>>サラディンは、フルネーム『サラディン=クレフォレム』。
>>偽名と言うか、公称『サラディナーサ=クレフォレム』。
>>女装が大好きな最高位の吸血鬼の一人。
>>最高峰と唄われる【十二月】の【十一月】でもある。
>>なお、アルベスタ=リバードラゴンこと、ベリアルとは、二千年前、イエス・キリストを含めた幼馴染み。
>>基本的に、無関心主義者を装っては居るが、興味のある存在には優しい父親な感じ。
>>800年前のデキゴトのそもそもの発案者。
>
>……
>さすがに、凡人を超えすぎた基準で言われるとどうすればいいのか…(汗
>けど、興味はあります。


そう言う過去の濃いお人なんです。
ジュリに出逢うまでもいろいろあったのでしょう。

>
>
>>『ベリアルのこと。』
>>
>>ベリアルは、役職名。
>>本名、『アルベスタ=リバードラゴン』
>>二千年前に、親友がゴルゴダの丘に磔刑にされ、もう一人も人外になって絶望したところを、初代(オリジナル)ベリアルに、拾われ、役目を受け継いだ。
>>一応、どころか歴とした、悪魔の最高幹部・【七罪】の一人。
>>【本当の彼女】とジュリの番外講師。
>
>元は人間と。
>人間時代の詳細も興味が同じく。

元は、ですが。
人間時代も、基本性格は、ああいう風です。

>
>>『 【呪い】のことは?』
>>
>>本当の彼女が、今の際に掛け、その後二年間をかけて、編み込んだ呪いのこと。
>>幾つか、制約があり。
>>死ねないことー死んでも生き返ること。
>>行動制約。
>>その二つが小説内で、明言されています。
>
>今後、重要なキーワードになる一つですね。

そうですね。
今も、彼らを縛るモノですから。

>
>>『 【天に在りては比翼の翼 地に在りては連理の枝】とは?』
>>
>>ええと、たしか、楊貴妃と玄宗帝を詠った【長恨歌】の一節。
>>で、意味は、『仲がいいつがい』です。
>>ようするに、『仲睦まじい夫婦・恋人』を刺した言葉です。
>>アルベスタが言うには、まだキス止まりだったけど、それくらいに仲が良かったと評しているようです。
>
>中国系の関係者とも、今後は接点が出そうな感じでもありますしね。

そうですね。
じゃなきゃ、ベリアルが、こういう歌知る分けないですね。

>
>
>
>
>>さあさて、悪夢が始まりまする。
>>その果てに、あるのは、幸福は不幸か、どちらかはわかりません。
>>それでは、甘く苦いチョコラッテのような悪夢の過去夢が微睡み始まります。
>
>では、本編を心して読ませてもらいます
>(怖いものは気にしない)
>


はい、なるべく早く、投稿できるように頑張ります。
では、次回。