◆−はじめまして−米田 (2005/7/31 03:22:11) No.31632
 ┣変わり流れゆく世界1−米田 (2005/7/31 03:29:38) No.31633
 ┃┣Re:変わり流れゆく世界1−エスエル (2005/7/31 09:47:47) No.31634
 ┃┃┗Re:変わり流れゆく世界1−米田 (2005/8/1 17:54:12) No.31637
 ┃┗Re:こんにちわー!(まず挨拶)−青い小人 (2005/7/31 14:04:06) No.31635
 ┃ ┗Re:こんにちわー!(まず挨拶)−米田 (2005/8/1 17:58:23) No.31638
 ┣変わり流れゆく世界2−米田 (2005/8/1 17:49:15) No.31636
 ┣変わり流れゆく世界3(前編)−米田 (2005/8/2 03:18:07) No.31640
 ┣変わり流れゆく世界3(後編)−米田 (2005/8/2 03:22:15) No.31641
 ┗あとがき−米田 (2005/8/2 03:28:47) No.31642


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31632はじめまして米田 E-mail 2005/7/31 03:22:11



はじめまして!
米田という者です。

最近じわじわとスレイヤーズ熱が復活してきまして。
思わず書いてしまった所存です(汗)

文章を書くことに慣れておらず
拙いものでありますが、どうぞよろしくお願いします。


今回はフィリアとゼロスの話。

・・・と言いますか。
たぶん私が書く話は、
この二人のものばかりになる可能性が高いですが・・・

それはともかく、話は何か事件が起こるわけではなく
ただ世間話をしているだけの話です。
つまらなくてすみません;

しかもただ世間話をしているだけのはずなのに
なんか長いし(汗)

ともあれ、よろしくお願いします。

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31633変わり流れゆく世界1米田 E-mail 2005/7/31 03:29:38
記事番号31632へのコメント

「では、お願いしますね?
問題とか起こさないでくださいね?」
フィリアは念を押して二人に言った。

それは日が暮れようとしていた時間
買い忘れた物を、店員であるジラスとグラボスに頼んだ時だった。

「了解です!姉御!」

「だからその呼び名辞めてくださいと何度言ったら・・・」

と言いながら、フィリアは苦笑しつつ、まんざらでもない様子だ。



人は変わるもので。



あの事件の後、ここに来てからの毎日は割と順調である。
店の売れ行きはいまいちだが、まだ蓄えはあるし。
あの二人も頑張ってくれている。
そして何より、『彼』も問題なく成長している。
あの調子なら『生まれる』日も近いだろう。

それを思うと、フィリアはうれしくて仕方がなかった。
椅子にもたれながら、紅茶を飲む。




「なんだか嬉しそうですね?」

そんな一時の幸福を思いっきりぶち壊す者が現れた。


「ゼ!ゼロス!?」

それは忘れもしない彼女の天敵だった。
黒いマントの何処にでもいそうな、僧侶の風貌をした男。
ここ最近パシリとか言われて軽くへこんでいることは秘密でだ。(お約束)



「・・・何であなたがこんな所に?まさか!」

フィリアは『彼』を庇う様に立ち上がり、睨みつける。
しかし、当のゼロスは涼しい顔。

「そんな怖い顔しないでくださいよ〜。
その子を殺しに来たわけじゃないんですから。
そんな命令も出ていませんし。」


「じゃぁ、なんでなんですか?」

「それは・・・」

「秘密ですか?」

この時初めて彼の笑顔が変わった。
泣きそうな顔に。



イジケ始める彼から視線を逸らさず。
しかし彼女は彼に対する警戒を解き始めていた。

彼は不思議なほど「嘘をつくことが少ない」。
ただ、本当のことを言わないだけで。

それに気づいたのは、あの事件の後、しばらく経ってからだった。

彼が「ヴァルを殺しに来たわけではない」
というのならそうなのだろう。
嘘をつく理由もない。
もし殺しに来たのなら・・・

むしろ嬉々として宣言するはずだ。
そういうヤツだから。

ついでに、命令されてもいない事を率先してやる様なヤツでもない。


気を取り直したのか、ゼロスが落ち着いた風に言った。
「・・・まぁ、秘密ってわけでもないですよ。」

「ただ暇になったんで覗いてみただけです。」

「その子に抹殺命令が出るとしたら、早くて数百年後でしょうね。
今そんな子にかまっている暇は、魔族にはないんです。」

・・・それに、そんな簡単じゃつまらないですからね。
と、ゼロスは心の中で付け加えた。

「・・・・・・たった今、暇だから来たって言いませんでした?」



「魔族は今暇ではありませんが、僕は今暇なんです。」


なんとも、彼らしい言い分だった。



「ところで、この家は客人にお茶も出さないんですか?」

「魔族に飲ませるお茶なんてありません!」




**********************




「で、この子の名前はどうするんです?」


結局フィリアはお茶を出し、ゼロスはそれをさも美味しそうに飲んだ。
魔族なので味など分らないはずだが、それは本当に美味しそうに見えた。
しばらく談笑(ゼロス談)してから、
ゼロスはたまたま目に入ったまだ幼生の『彼』を見て、
フィリアに質問しのだった。


「・・・・・・」
つられ、フィリアも『彼』を見る。

「ヴァルガーヴですか?それか、ガーヴを取ってヴァル?
・・・それとも新たに別の名前を付けますか?」


少し間をおいて、フィリアは言った。


「・・・名前はヴァルです。」


それを聞いたゼロスは、それは楽しそうな顔になり。

「ほほう。忌まわしい魔族の名は取り去りますか。」
嬉々として言った。
しかし、それを見てフィリアは怒りもせず、
むしろ呆れ顔で、
「あなたはいちいち上げ足を取ろうとするんですね?」

「早とちりしないでくださる?」

「この子のフルネームはヴァル・ガーヴ・コプト」


それを聞いて、ゼロスは笑うのをやめ、不思議そうに言葉を返した。

「ほう、それはまたなんで?」



「・・・忘れてはけないと思うからです」

「貴女がですか?」

「この子が、です」

『彼』が入っているカゴを優しく撫でながら、フィリアは続

ける。


「魔王の名であることは、この際関係ありません。
この名はこの子にとって、かけがえのない半身、過去・・・」

「取り去ってはいけないと思うんです。」

釈然としない顔のゼロス。
「正直よく分りませんね。転生とは人生をやり直す事ではないのですか?」

「人生はやり直せますが、過去は消えません」

「今となっては何も知らぬこの幼子に、あの重い過去を背負えと?
随分と手前勝手な言い分にも聞こえますが?」



「・・・そうですね」

ゼロス意地の悪い笑顔でフィリアをからかったが、
彼女はそれを受け入れる様に笑った。

(つまらない。もっと突っかかってくるかと思ったのに)


「まぁ・・・『ガーヴ』についてはいいでしょう。では『コプト』は?」

「『コプト』は、この子は私が・・・」

言いかけたフィリアを、ゼロスは手で制した。

「や、待ってください。当てて見せます」




「自分が育てなければならないという戒め、ですか?」




「不正解です」

にやりと笑い。

「あなたが私の事をどう認識しているのか興味ありませんが・・・」

「『コプト』は、この子は私が育て上げてみせるという決意です。」


「偽善的な・・・言葉のすり替えじゃぁありませんかぁ?」
ニヤニヤしながら彼は言う。



「全然違います。」



「違うんですよ」



として彼女はにっこりと笑った。


彼女の目に迷いはなかった。







*****************************
米田です。
読んでいただいてありがとうございました。

実は三部作続き物なんですが、
続きが書けるか今怪しいです(汗)

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31634Re:変わり流れゆく世界1エスエル 2005/7/31 09:47:47
記事番号31633へのコメント

はじめまして。エスエルとかいう物体です。
いゃいいですねぇ〜。
先が気になります。暇…ってゼロスは何しに来たんでしょう…。

フィリアさん、決意見えますネェ〜。

すいません…短いですがこのへんで。
自作に期待しております

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31637Re:変わり流れゆく世界1米田 E-mail 2005/8/1 17:54:12
記事番号31634へのコメント

はじめましてエスエルさん。
感想ありがとうございます。
何分初めての事なので、不安だったのですが
先が気になりますと言われてちょっと安心しました;
といってもこのシリーズは、いわゆる続き物とは少し違うんですけどね。

決意見えますか?
あぁ〜〜よかった!(汗)

ありがとうございました〜


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31635Re:こんにちわー!(まず挨拶)青い小人 2005/7/31 14:04:06
記事番号31633へのコメント



 はじめましてですv 青い小人っていいます! どうぞお見知りおきを〜
では コメントさせていただきます

>「では、お願いしますね?
>問題とか起こさないでくださいね?」
>フィリアは念を押して二人に言った。
>
>それは日が暮れようとしていた時間
>買い忘れた物を、店員であるジラスとグラボスに頼んだ時だった。
>
>「了解です!姉御!」
>
>「だからその呼び名辞めてくださいと何度言ったら・・・」
>
>と言いながら、フィリアは苦笑しつつ、まんざらでもない様子だ。
光景が目に浮かんできますねぇ スレイヤーズアニメ面白かったです

>「秘密ですか?」
>
>この時初めて彼の笑顔が変わった。
>泣きそうな顔に。
>
>
>
>イジケ始める彼から視線を逸らさず。
>しかし彼女は彼に対する警戒を解き始めていた。
>
>彼は不思議なほど「嘘をつくことが少ない」。
>ただ、本当のことを言わないだけで。
>
>それに気づいたのは、あの事件の後、しばらく経ってからだった。
>
>彼が「ヴァルを殺しに来たわけではない」
>というのならそうなのだろう。
>嘘をつく理由もない。
>もし殺しに来たのなら・・・
>
>むしろ嬉々として宣言するはずだ。
>そういうヤツだから。
>
>ついでに、命令されてもいない事を率先してやる様なヤツでもない。
こんなにお互い分かり合えてる天敵同士って
何か良いですね〜 ・・青春(?)

>「ただ暇になったんで覗いてみただけです。」
>
>「その子に抹殺命令が出るとしたら、早くて数百年後でしょうね。
>今そんな子にかまっている暇は、魔族にはないんです。」
>
>・・・それに、そんな簡単じゃつまらないですからね。
>と、ゼロスは心の中で付け加えた。
>
>「・・・・・・たった今、暇だから来たって言いませんでした?」
>
>
>
>「魔族は今暇ではありませんが、僕は今暇なんです。」
 ゼロス・・良いご身分です・・

>結局フィリアはお茶を出し、ゼロスはそれをさも美味しそうに飲んだ。
>魔族なので味など分らないはずだが、それは本当に美味しそうに見えた。
>しばらく談笑(ゼロス談)してから、
いつも笑ってますしねぇv

>「魔王の名であることは、この際関係ありません。
>この名はこの子にとって、かけがえのない半身、過去・・・」
>
>「取り去ってはいけないと思うんです。」
>
>釈然としない顔のゼロス。
>「正直よく分りませんね。転生とは人生をやり直す事ではないのですか?」
>
>「人生はやり直せますが、過去は消えません」
>
>「今となっては何も知らぬこの幼子に、あの重い過去を背負えと?
>随分と手前勝手な言い分にも聞こえますが?」
>
>
>
>「・・・そうですね」
>
>ゼロス意地の悪い笑顔でフィリアをからかったが、
>彼女はそれを受け入れる様に笑った。
 うはぁ・・どっちも正論だぁ
・・でもフィリアの方がヴァルの事をよく考えてるのかもしれませんね

>「まぁ・・・『ガーヴ』についてはいいでしょう。では『コプト』は?」
>
>「『コプト』は、この子は私が・・・」
>
>言いかけたフィリアを、ゼロスは手で制した。
>
>「や、待ってください。当てて見せます」
あ〜 何かわかる!
自分も意味無く よく当てようと試みるんですが
当てた事は・・・まだ一度も・・・

>「自分が育てなければならないという戒め、ですか?」
>
>
>
>
>「不正解です」
>
>にやりと笑い。
>
>「あなたが私の事をどう認識しているのか興味ありませんが・・・」
>
>「『コプト』は、この子は私が育て上げてみせるという決意です。」
>
>
>「偽善的な・・・言葉のすり替えじゃぁありませんかぁ?」
>ニヤニヤしながら彼は言う。
あぁ惜しいですねゼロス 魔族と竜族の考え方の違いですねぃ

 
こんにちは!(本日2回目) 挨拶って大切です!
さて 書き慣れてない とありましたが
とても読みやすくて上手いと思いますよ
ご指導願いたい程です! ・・変なコメントになってスミマセンが、
続編楽しみにしてます 是非また書いてみて下さいねv(強制?)  それでは。


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31638Re:こんにちわー!(まず挨拶)米田 E-mail 2005/8/1 17:58:23
記事番号31635へのコメント

こんにちわ。青い恋人さん。
はじめまして。
感想ありがとうございます。

いやぁ、燃えるんですよね
無駄に分かり合ってる天敵(笑)

楽しんでもらえた様で光栄です。
読みやすいと言っていただけて、安心しました;

最後までいける様に頑張ります!
ありがとうございました。

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31636変わり流れゆく世界2米田 E-mail 2005/8/1 17:49:15
記事番号31632へのコメント



それは一般的には異様な光景だったかもしれない。
扉が開き、その人物が店に入ってきたと思った瞬間。
店員の二人が各々武器を手に取り威嚇する。
客に対して威嚇などおかしな話だが、そいつは客ではなかった。


「・・・そろそろやめませんか?
 毎度のことで飽きてきてるんですけど」
そういうとゼロスは困った顔で、頭をポリポリかいた。

「だまれ!魔族め!」
叫び鈍器を振り上げるグラボス。

「姉御とヴァル様に手、出すな!!オレ達、守る!相手する!」
今にも引き金を引きそうなジラス。

「と言われましてもねぇ〜。
 別に僕、いつも二人に何もしてないじゃないですか〜?」

ゼロスの言葉などどこ吹く風。
二人はやる気まんまんだった。が、

「ジラスさん。あなたがお持ちのそのオモチャ、
 なかなか面白い物ですが、魔族の僕には通用しませんよ?
 グラボスさん、あなたもです。
 もし僕を本気で追い返したいと思うのなら、
 せめてアストラルヴァインやヴィスファランクでも覚えるんですね。」

突然の指摘に、二人とも思わず、「うっ」と声を上げる。

「もっと言うなら、あなた達の攻撃は僕にダメージを与えることなく、
 むしろまわりの品物を壊すだけでしょうねぇ?
 そうなると困るのはあなた達ですよ?」

「ううう〜〜」
うなる二人。
・・・彼らはこれに似たやり取りが
今まで何回か繰り返されていることを覚えているだろうか?
ゼロスは軽く頭が痛くなった(様な気がした)

「痛っ、痛いですよ!ヴァル君!」
そこへこの二人に「守る」と言われた一人が
ゼロスの足を口ばしで突っついてきた。
漆黒の羽の鳥に似ていたが、彼は列記とした竜。
まだ声帯がしっかりしていないせいか、
キェーとかグェー等の奇声しか発せられないが、
何か怒っているらしいと言うことは見てわかる。

そんな彼を見て「さずがヴァル様だ!」
と喜ぶグラボスとジラス。

ゼロスはちょっとウンザリした。

「ほぉーら、そんな大きな声出したら、隣近所に聞こえて、
 ここの女主人が竜を飼っている事がバレますよー?
 まずいんじゃないですかー?」

「こちらとしては?竜がここに住んでることより、
 魔族が頻繁に出入りしていることがバレる方が、
 万倍まずいんですけど?」
声の聞こえた方を見ると、金髪のスラリとした女性が立っていた。
この店の女主人、フィリアだ。
今までいなかったのは店の奥で何かしていたらしい。

「あぁ!フィリアさん!お久しぶりです!」
それを見て、とてもにこやかに手を挙げ、挨拶するゼロス。

「えぇ!一般的には『久しぶり』でしょうね!一ヶ月ぶりですね!」
反対にこちらは、目をピクピク痙攣させている。

「いやぁ〜喜んでくれて僕は嬉しいですよ!」


「それはどうも!ワタクシもウレシイですわ!」
さらに青筋を立てて眉もピクピクさせ、
引きつらせた笑顔で答える。


「さぁ!さっさと中に入ってください!営業妨害ですわ!」

「ではお言葉に甘えて〜v」

・・・・・・これが何回目の訪問だろう。
はじめて来た時に、しっかりと追い返さなかったのが悪かったのだろうか?
あの時からゼロスは頻繁にこの店に遊びに来ていた。
どのくらい頻繁にかと言うと、ほぼ月一。

初めの方こそ、「さっさと帰れ」を連呼するだけだったフィリアだが
それだといつまでたっても帰らない上に、
品物にいちゃもんをつけたり、汚したりするものだから、
しばらくしてから嫌々家の中に入れることにした。

それでも「帰れ」と言うのを止めなかったが。

さらにしばらくしていろいろ試した結果、
さっさと家の中に入れ、適当に相手をするのが
ゼロスが一番早く帰る方法だと気づいた時のフィリアの顔は
なんとも形容しがたいものだった。


ジラス、グラボスに店の番をまかせ。
店の奥へと案内する。
(といってもそれほど広くない家である)
さっきからずっと、フィリアのブツブツ言っている声がするが
ゼロスはいつもの様にニコニコしながらついていった。

「いやぁ、フィリアさん、いつに増しても機嫌が悪いですねぇ・・・
 ・・・もしかしてあの日ですか?」

「おだまりなさい!」

がちゃんどっぱん!っとテーブルに置かれるお茶。
ティーカップにはヒビが入っていた

「まったく・・・」
椅子にドカリと座り、ため息をつくフィリア。

「まだ言葉話せないんですね」

「へ?」
突然かけられた話題に、間抜けな声を上げたしまった。

見るとゼロスは、二人の後をついて来たヴァルを見ていた。
ゼロスを睨みつけながら「グェッ」っと鳴く。

「・・・それはそうでしょう。ドラゴンの成長速度から言っても・・・
 むしろ、黄金竜にくらべて、古代竜の方が早いぐらいですよ?」

「ふ〜ん。ドラゴンってそんなもんですか。」
何故かつまらなそうな顔をする。

「如何にドラゴンと言えど、赤子ですから。」
近くに寄ってきたヴァルの頭をフィリアは優しく撫でた。
その姿はとても『母親』だった。




「・・・面白くありませんね」
つぶやくゼロス。

「はぁ?何がです?」
訝しげなフィリア。


「姉御!」
と、そこに、店の方からジラスが、何やら慌てた様子で駆けてきた。
「姉御!スミマセン!お客が!そのぉ〜」
身振り手振りでジタバタしだす。
何を言っているのか分らなかったが、
どうやら困った客が来てしまったらしい。

「・・・・・・」
無言でフィリアはゼロスを見るが

「誤解しないでください。僕の差し金ではないですよ?」


憮然とした表情のフィリアだったが「わかりました」というと、
ジラスと共に店の方へ駆け足で出て行った。

残されたのは二人。


「ふふ。フィリアさんも変な所で気が抜けてらっしゃる。
 僕と君を二人きりにするなんて、ねぇ?ヴァル君?
 僕が何かしたらどうするんでしょうね?」
ゼロスは可笑しそうにそう言うとお茶をすする。

そうしている間も、ヴァルは警戒を解かなかった。
あのリナ=インバーズをして曰く
横で談笑している相手の首を笑いながら掻き切るタイプ
そういうヤツなのだから。

「さっきの話ですけど、僕もねぇ、
 早く君とお話ししてみたいんですよって痛いですって、
 やめてください!突っつかないで;」
しゃべり始めたゼロスを強烈に突っつくヴァル。
その時、

〈お前!何しにいつもここに来るんだ!?〉

「ん?・・・」
まわりをグルリと見渡すゼロス。
「気のせい・・・?」

〈気のせいなんかじゃないぞ!〉
それは確かに頭、というか精神に響く声だった。
幼い声だが、ゼロスには声質に聞き覚えがある。

「おや・・・念話ってやつですか?
 そんな事出来るんだったら、早く話しかけてくれればよかったのに」
にやり、とヴァルを見て笑う。

ヴァルは睨みながら
〈何を考えているんだ!?お前〉
とゼロスに迫ったが、
「さぁ〜、何を考えているんでしょうねぇ?」
と返すのみ。


「いつからそんな事できるようになったんです?」

〈お前に言う必要はない!〉

それを聞いてゼロスは可笑しそうに笑う
「はっはっは、転生しても短気なんですねぇ〜
 誰に似たんだか・・・」

〈黙れ!ゼロス!〉

ふと引っかかり、ゼロスは不思議そうな顔をヴァルに向けた。
〈・・・な、なんだよ!〉

ニヤァっと笑い
「いやぁ〜、なんでもありませんよぉ?」


〈くっ!もうここへ来るな!今度来たら攻撃するぞ!〉

「おや!強気な発言ですねぇ?
 まさか勝てる気でいるんですか?」

あくまで挑発的なゼロス。




しばらく睨み(?)合い

「じゃぁ、取引しましょう。ヴァル君。
 僕がここに来る事に文句を言わなければ、
 あなたの『記憶』が残っていることを彼女に黙っておきましょう」

それを聞いて、ヴァルはあからさまに動揺した。

〈・・・なんでわかったんだ!?〉
そう言うと、ゼロスは事もあろうにプッっと噴出し、

「はっはっは!わかるわけないじゃないですか!
 カマかけたんですよ!
 こうも上手く引っかかってくれるとは思いませんでしたけど」
大きく口をあけて笑う。
「やっぱりお子様なんですねぇ〜ヴァル君v」

腹を抱えながらジタバタするゼロスを見て
ドンドン殺気と頬を膨らますヴァル。

しかし、

「といっても、そろそろ大仕事が入りそうなんで、
 しばらくここには来れそうにないんですけどね・・・」

あぁ、おかしい、と言いながら笑うのをやめて、一息つく。
お茶を飲み干して、


「少し残念」

と言った。

それは今まで見てきたゼロスの表情と
なんとなく違っているような気がした。
普段から何を考えているのかわからないが・・・

こいつの『無表情』を見たのは、これが初めてだった。


そしてやおら立ち上がり、こういった。

「では!もしかしたらもう一生会わないかもしれませんねぇ〜」
そう言って、初めから何もいなかったかの様に空間に消えていった。








「あら?もう帰ったの?
 あいつにしては珍しいわねぇ・・・・・・」
不思議そうな顔のフィリア。
先ほど店の方から怒鳴り声も聞こえたのだが
なんとかなったらしい。

拍子抜けと言った顔をして、
ゼロスが飲んでいったお茶を片付けた。



さっきのゼロスの顔を彼女が見たら、何を思っただろう・・・
ヴァルはそう思ったが、考えても仕方のないことと諦め、
「グェ」っといつもの様に彼女のソバにかけよった。
彼女は自分が守ると、決めているから。







・・・・・・結局その後、丁度一ヶ月後にゼロスが来たのは言うまでもない。












*****************************


はい。こんにちは。米田です。

第一弾に感想、ありがとうございます!
初めてだったんでとても嬉しいですねぇ〜
書いた甲斐があるといいますか。

なんとか第二弾を書くことが出来たんですが・・・
前回にも増して内容がない(汗)

まぁ、こんな感じのフィリア達とゼロスのかけ合いが好きなんですよね;
申し訳ない;

でもちょっとづつ心情が変わっていく彼ら・・・

ラストはちょっとシリアスに閉めます。
かなりオリジナルな設定になるので、
苦手な人はご注意を。

では・・・

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31640変わり流れゆく世界3(前編)米田 E-mail 2005/8/2 03:18:07
記事番号31632へのコメント



随分長い時間が過ぎた。


あれほど復讐を誓い、追い回したリナ=インバース達も
寿命であっさりと死んだ。
いや、あれだけの数の事件に巻き込まれながら、
寿命で死ねるというのは、さすが恐ろしい強運だ。

あれらの事件が噂話から昔話に、そして伝説になるぐらいの年月・・・
もう数千年になろうとしている。

異界からの来訪者を退けた、あの事件の詳細を知るものは
もう片手ほどの人数もいないだろう。
そして、あの事件に直接関わった者はもう3人しかいない。

その3人も2人になるのが近い・・・


・・・それほどの年月






暗く、深い森。その奥に俺達はひっそりと暮らしていた。
仲間たちはあわせて20にも満たない、小さなコミュニティー。

ここには最近妙な客が来る。
昔馴染みの妙な客が。
そいつは昔のように突然現れ、
たいした事をするわけでもなく帰っていく。
やる事といえば、彼女の髪を丁寧にとかしていくだけだ。
髪をとかして、談笑する。
それだけだ。

その時は人払いをして、3人だけになる。



彼女の髪を髪を丁寧にとかしている、そいつを見ながら
苦笑しつつ俺は言った。

「お前知ってるか?最近じゃマゾクってもんが
 どんなもんか知らない竜族もいるんだぜ?」

「笑えるだろ?」

そんな竜族の子ども達もいる、
このコミュニティーをまとめるリーダーを俺はやっていた。

「リーダーのあなたが笑ってしまったらダメでしょう?」
やはり苦笑交じりに、
今では珍しくなってしまった黒い神官姿の男が言った。



そしてそれを、楽しそうに、
少し困ったように微笑みながら聞いている老婆がいた。






高位魔族が少なくなるのに比例して、
魔術は徐々に廃れていった。
それに変わって、人間の科学力が進み、
そして、気がつくと他の生物を迫害し始めていた。
はじめは所詮人間のすることと高をくくっていた竜族も
とうとう重い腰を上げたのだが、
その頃には様々な種族が絶滅しかけていた。
元々、竜と人間ではポテンシャルに大きな差があったが
油断と情と、なにより絶対数の違いで徐々に竜族も土地を追われ、
それぞれのつながりも分断。

残った者達は人間の目から逃れるように身を寄せ合った。

昔のある知り合いはこう言った。
『いずれ魔族の役割は終わる』

その通りになったと言わざるを得ない。


「最近は、どうなんだ?そっちは。」
彼がここに来るたびに聞いている質問だ。

「特に。変わりはありませんよ。」
そして、いつもの答え。
「もう、どうなるか。僕には分りません。」

魔族達は、ある一時期を過ぎてから
とてつもない勢いで個体数が減少していった。
理由は今でも分らない。

ただ、世界が何かの手から離れていってしまった。
そういう感触が今でもある。





かつて、敵同士だった3人は
まるで無二の親友の様に談笑していた。

それはとても穏やかな光景で。




ある意味では、皆諦めていたのかもしれない。




世界は彼らのあずかり知らぬ所で
今も変わっていく。




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31641変わり流れゆく世界3(後編)米田 E-mail 2005/8/2 03:22:15
記事番号31632へのコメント


その覚悟は、随分前からしていた。
確信に変わったのは、
あいつが昔のように月一で来るようになってからだ。

「女性はいつまでも綺麗でいないと。」

そう言って髪をとかし続けた。



彼女の言葉数はどんどん少なくなって、
覚醒時間も短くなっていった。

そしてとうとう、
皆に愛され、慕われた、
このコミュニティーの最長老は
ゆっくりと息をひきとろうとしていた。




あいつはまだ来ない。








「二人に・・・して欲しいの。
 いいかしら?」


彼女が言った。

皆が渋々と、承諾し。
俺と彼女の二人だけになった。


「私は幸せです。こんなに思われて・・・」

「・・・埋葬されることもなく
 誰も知らずに、死んでいった人たちもいたのに・・・」

「私は幸せですよ。ヴァル。」


「そうだな。フィリア」
俺はたまらず、彼女の手を握る。

「ありがとう。ヴァル。
 あなたに会えて本当によかった。」

その微笑みは、昔と変わらず
暖かいものだった。



「・・・あいつは来ないのかしらねぇ?」


「どうだろうな・・・」

起こして、と頼む彼女。
おれはゆっくりと支えながら、彼女の上体を起こす。

「髪・・・最後にとかして欲しかった。」


彼女がそう微笑むと、あたりの風邪が舞った。





「・・・遅いぞ。ゼロス。」



「すいません。」

そいつらしくなく。
大人しくに謝った。




くしを持ち、
ゆっくりと、
丁寧に髪をとかす。


「ゼロス・・・」

とかす手を止める。

「なんですか?」





「ゼロス。私は・・・貴方の事、嫌いじゃなかったみたいだわ」



はっと、体が固まる。
この位置から、髪が邪魔でそいつの顔は見えなかった。






************************



その瞬間、僕の中の時間が止まった気がした。



「僕は・・・、



 僕は・・・  」



    最後の最後に

      絶望を与える言葉
 

  悔いを残す言葉



言葉がめぐる


『僕も・・・    』



「僕は、・・・貴方のことが嫌いですよ」


それを聞いて、
彼女は困ったように笑って

「そう、よかった・・・安心したわ・・・」


「今までわがままに付き合ってくれてありがとう。」




「さようなら」




************************


小刻みに震えているように見えたのは
俺の幻覚だったのだろうか?

「もう・・・ここに来る必要は・・・ないですね。」
声も震えているような気がした。


「だろうな」
俺は答えた。


「あなたと会うことも、たぶんもうないでしょう。」


「・・・・・・」

顔はまだ見えないが・・・
何かをつぶやいているのは見えた。







「ぼくは・・・・・・」




そう言ってから、首を横に振り。

彼はここから出て行った。











俺にとっての何かが、今終わった。





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31642あとがき米田 E-mail 2005/8/2 03:28:47
記事番号31632へのコメント

こんばんわ。米田です。

拙い文章を読んでくださり、
ありがとうございました。

勢いに乗っているうちに全部書いてしまいました。
3は文字が大目なのと、空白が多いのとで、
前後編になってしまいましたが。

この3人の関係、かなりの妄想の上に出来上がってしまってますが(汗)
しかも最後の設定、結構ありがちですしね;

精進します;

いかがだったでしょうか?
今回はこれでおしまいです。

次にここに投稿するのはいつになることやら・・・ですが。
(考えている長編があるのだが、
 長すぎる上に、頭が悪いので考えがまとまらない状態/汗)

ありがとうございました〜

ではでは〜またいつか〜