◆−光と闇の狭間で †序章T† 始まりはすぐそこに−ソエル (2005/5/29 15:49:40) No.31473
 ┣ †序章U† 戦いの兆し−ソエル (2005/5/29 16:17:44) No.31474
 ┃┣Re: †序章U† 戦いの兆し−パッチー (2005/5/29 21:13:49) No.31477
 ┃┃┗Re: †序章U† 戦いの兆し−ソエル (2005/5/30 07:58:20) No.31482
 ┃┗投稿欄では初めまして。−ぷらすとーる (2005/6/1 21:17:55) No.31486
 ┃ ┗Re:投稿欄では初めまして。−ソエル (2005/6/2 21:17:49) No.31490
 ┣すみません;;−ソエル (2005/5/29 16:40:34) No.31475
 ┣ †序章V† 予感−ソエル (2005/6/5 18:41:11) No.31498
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 ┣†風の詩† 凍り付いた砂時計−ソエル (2005/6/9 00:51:44) No.31510
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 ┣†序章W† 宿命〈さだめ〉の遭遇(であい)−ソエル (2005/6/19 02:22:04) No.31544
 ┣†序章X@† 事の裏に潜む者−ソエル (2005/6/26 17:45:07) No.31565
 ┗†序章XA† 静かなる攻防戦−ソエル (2005/6/30 02:27:03) No.31572


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31473光と闇の狭間で †序章T† 始まりはすぐそこにソエル E-mail 2005/5/29 15:49:40


「来ないな・・・二人とも」
日がだいぶ傾いた頃、一人の剣士が噴水の前で佇んでいた。短めに切り揃えた銀の髪に切れ長の蒼い瞳。長身のすらりとした美人である。
先ほどから来ないを連発しているあたり誰かを待っているのだろう。
別に来ないと連発しても相手がそれで来るとは思えないのだが・・・ともあれ、その剣士はかれこれ小一時間ほど噴水の傍で佇んでいた。
「・・・探しに行くか」
どうせ探しに行くならもっと早く行けばいいものを・・・容姿に似合わずマイペースなようである。
「ふむ・・・どこから探すか・・・」
言いながら、顎に手を当てて考えている。
「まずは酒場と料理屋か」
剣士は割と早く決断を下し、さっさとこの近くの酒場に向かって歩き出した。

「まずはあそこの酒場だな」
少し歩くともう酒場の看板が見えてくる。歩くのが早いのかこの辺に酒場が多いのか・・・ともあれ、剣士はその酒場のドアを開けた。
「ライド、いるなら返事しろ」
ドアを開けていきなりそれはないだろうと酒場にいた者達は思ったが、相手の格好が格好なだけにうかつな事はいえない。
なにせ、その剣士が纏っているのはこのゼフィーリアの王立騎士団の物である。
その剣士は酒場の中を一瞥すると、
「邪魔したな」
といって去ろうとする。どうやら探している人はいないようである。
「ちょっと待て・・・」
見かねたのかなんなのか、疲れた様子で店主が剣士を引き止める。対して、剣士は顔をそちらに向けただけである。
「・・・おい、姉さん・・・でいいのか?いきなり来てそりゃあないだろ」
「ん。悪いが時間がないので相手をしていられない。これでいいか?」
言って剣士は金貨を肩越しに放り投げる。受け取った店主が固まっていると、さっさと店から出て行ってしまった。


ふと。
剣士は空を見上げて「綺麗なものだな」とつぶやいた。辺りはいつの間にか茜色につつまれている。
“     ”
剣士は空を見上げたまま、声には出さずに誰かの名をつぶやいていた。


「ライドは置いておくとして、ソレイユがいそうなのは・・・魔法道具屋(マジックショップ)か」
一人ごちて、剣士は大街道を突っ切って魔法道具屋(マジックショップ)の立ち並ぶ、魔法街へと向かった。

魔法街についた後。
「すまないが、ここに金髪を二つ結びにした15才位の巫女がこなかったか?」
といって剣士は魔法道具屋を一軒一軒しらみつぶしに探していた。さっきとは偉い違いである。が、どの店でも首を振るばかり。
それでもあきらめずに尋ねて回っているあたり、よほど心配らしい。
「どこで迷ってるんだ、あいつは」
剣士はぼやいてまた次の店に向かった。


しばらくの後。
「どこにもいなかったな・・・」
剣士はため息をつくように言った。あれからあちこち探したようだが、結局二人とも見つからなかったようである。
「宿に戻るか。戻っていなかったらその時だな」
言って剣士は宿に向かって歩き出した。探すのを諦めたらしい。因みに辺りはすでに日が沈み、闇につつまれかけている。

「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」

静かな通りにいきなり叫び声が響いた。
「ソレイユ!」
言って剣士は声のした方へ走り出す。探していた人の叫び声だったらしい。・・・よくわかるものである。

―――ギィンッ

「っ大丈夫か」
剣士はたった数秒で通りの半分を駆け抜けて、叫び声のした路地にたどり着いていた。そこでは一人の巫女が5人
のごろつき風の男達に絡まれていた。今の音は巫女に向かって振り上げられた剣を、走ってきた剣士がその間に滑り込んで
剣を払った時のものだ。
「レヴィアス・・・」
巫女――ソレイユは腰が抜けた様子で地面に座り込んでいた。
「ごめんなさい。無茶するなって言われてたのに・・・」
「話は後で聞く。―――――行くぞ」
ソレイユの話をさえぎって、剣士――レヴィアスはごろつき達に向かって剣を構えた。ごろつき達から何かを感じ取ったらしい。
「これはこれは。天下のレヴィアス様が、どうしてこんなまねを?」
その様子に、リーダー格の奴が小ばかにした調子で聞いてくる。
「・・・貴様、何者だ?」
殺気を強くしてレヴィアスが問う。剣を抜いていない時とは別人である。
「さあ?何者でしょうねえ」
リーダー格の男は笑みを深くして返してくる。どうやらかなりの使い手である。
「さしずめ暗殺者といったところか・・・何故わざわざそんな格好をしている?」
「おお、流石はレヴィアス様。仰せの通りです」
レヴィアスの問いには答えず、その男は大仰に礼をしてみせる。
「・・・・・・訊いても無駄という事か」
言ってレヴィアスはその男に向かって駆け出す。が、
「ん・・・」
すぐに、レヴィアスは足を止める。それと同時に、

「「炎の槍〈フレア・ランス〉!!」」

暗殺者達が火炎呪文を放った。二人が話している間にでも唱えていたのだろう。
が、レヴィアスに炎の槍が届く直前―――

「封気結界呪〈ウインディ・シールド〉」

ソレイユの防御魔法が発動し、魔法の炎をすべて消し去ってしまう。
「こっちに巫女がいるのを忘れてたのか?」
呆れたようにいって、レヴィアスは手近にいた暗殺者を斬りつける。反撃する間も与えず一人を葬った後、隣の者とも剣を合わせるが、2合と持たせずに倒してしまう。めげずにまた一人暗殺者がレヴィアスに斬りかかろうとするが、

「炎霊滅鬼衝〈ルーン・フレイア〉」

ソレイユの火炎呪文が決まり、焼き尽くされてしまう。
―――キキィンッキィンッ
今度はそのソレイユを狙って別の暗殺者がナイフを放ったのだが、半分以上をレヴィアスが叩き落し、残るのもソレイユは軽くかわしていく。
「後二人」
ナイフを叩き落した後、レヴィアスは低くつぶやいてそれを投げた暗殺者の横をすり抜け、路地の奥へと走る。そのまま路地の奥に積んであった木箱を足場にして跳躍し、屋根の上で高みの見物をしていたリーダー格の男に斬りかかる。
「おっと。あの小娘はいいんですか?」
男はその剣を軽くよけて、またもや人を食った笑みを浮かべて訊いてくる。

「冥壊屍〈ゴズ・ヴ・ロー〉」

今のはソレイユの声である。レヴィアスの方も剣を振り下ろすが、男の短剣が鋭い音をさせてそれを受け止める。
「この通りだ。さっきすれ違いざまに手刀をたたきこんできたからな。これで下は片がついただろう」
レヴィアスはいったん剣を引いて、何度となく切り結びながら言った。
「なるほど。残るは私一人というわけですか・・・・・・」
言って男はレヴィアスの剣を打ち払い、そのまま大きく後ろに跳躍する。
「今日はこれで引かせていただきますよ。でもまた貴女とは会うでしょうねえ・・・ククッ」
嫌な笑い声を残して男は闇夜に消えてしまう。だが、レヴィアスに追う気はないらしく、剣を収めて屋根の上から飛び降りる。

「追わなくてよかったの?」
ソレイユが傍に駆け寄ってきて尋ねる。それに答えようとレヴィアスが口を開きかけた時、
「おーい二人ともー。大丈夫か〜?」
遠くから男の声がした。その声にレヴィアスとソレイユは狭い路地を出て、広めの通りに出る。すると、声の主であろう戦士の姿をした男も二人の姿を認めて走ってくる。
「わりぃ。さっきソレイユの声がしたから来たんだが、どこにいるのかさっぱりわからなくて・・・」
息を切らせて謝る戦士に向かって、女性二人は冷たい視線をあびせた。
「ライド・・・いまさら何しに来たの?」
「遅い」
二人にじと目で言われ、ライドは額に汗をかきながら
「だから悪いって・・・・・・えーと・・・すみませんでした」
結局は謝った。
「と、とりあえず宿に戻りませんか・・・?」
ライドの口調が敬語になっている。この二人、よほど怒らせると怖いらしい。
「それもそうだな・・・」
レヴィアスがため息をついてそう言うと、
「夕食も取ってないしね」
ソレイユもそれに同意する。

「・・・戻るか。話は宿で聞かせてもらう」

何気なく言ったレヴィアスのその一言に、あとの二人は凍りつく。が、当の本人は気にせずさっさと歩いていってしまう。
レヴィアスがだいぶ先に行ってしまった後に、残された二人は我に返り慌てて後を追いかけていった。



―――夜の帳が下りてしばらく
「どうやらまた厄介事に巻き込まれたらしいな・・・」
空に浮かんだ満月を見上げて、レヴィアスはそうつぶやいた。


そして同じ頃、
一つの影が満月を背に足下の街を見下ろしていた。
「ここに来るのは、ずいぶんと久しぶりですねぇ・・・さて、どこから探しましょうか・・・」
呟いて、その影は闇の中へと消えた。

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31474 †序章U† 戦いの兆しソエル E-mail 2005/5/29 16:17:44
記事番号31473へのコメント

いろいろあった次の日の朝。
レヴィアス達は、フロスト・シティのほぼ郊外にとった宿の料理屋で朝食をとっていた。郊外といっても別に薄汚れてるとかいうわけではなく、むしろまともな所である。
それにしても、春のうららかな天気だというのに彼女のまわりだけやたら温度が低い。同席しているライドとソレイユは血の気をひかせて蒼くなっている。
そんな中で、当の本人のレヴィアスは淡々と運ばれてきた料理を口に運んでいた。
「・・・で?二人とも昨日は何をしていたんだ?」
レヴィアスはふと手を止めて、静かな声で訊いた。怒っているようには見えないが、纏う雰囲気が薄ら寒い。その言葉と空気にソレイユは怯えたようにびくっと身を震わせ、ライドの方は身を固くした。
二人とも沈黙したまま何も言わないので、レヴィアスはため息を一つついて
「ライド、お前は?」
と訊くが、目も向けていない。ライドは一瞬更に身を固くしたが、これで黙っていると後々怖いので勇気を振り絞った。
「えーっと・・・俺は、その・・・昨日は昼飯食って解散した後、傭兵組合とか酒場でいろいろ聞き込みやって、んで後は・・・武具屋回ってました」
最後の辺りは声が小さくなっていたりするが、レヴィアスはそんな事は気にも留めず、淡々と
「そうか。聞き込み結果については後で聞く。・・・にしても組合と武具屋か・・・一応行ったんだが」
と言って言葉を区切り
「すれ違ったな」
と今度はため息交じりにいった。
それを聞いて、ライドはレヴィアスがそこまで怒ってないとわかり、内心胸をなでおろした。まあ、レヴィアスの方はそんな事を知る由もないが。

そしてしばしの沈黙の後。レヴィアスが口を開いた。
「で、ソレイユは?」
彼女の声のトーンが下がっている。因みに今度はソレイユの方にちゃんと目を向けている。
「あ・・・の」
その目線と声に、ソレイユは思いっきり気まずそうにしながら
「えっとそのぅ・・・魔法街に行こうと思ったんだけど・・・迷っちゃって・・・」
「へえ?」
心なしかレヴィアスの言葉遣いがいつもと違う。
「あのでも、一応魔法街にはついたんだけど・・・」
「ふうん?で?」
だから怖いってレヴィアス。とソレイユの隣にいたライドは思ったが、まさか口に出せるわけがない。
「それで・・・えっと、魔道士協会に行った後、魔法道具を買おうと思ってあちこち見てたら、その・・・どうやって帰ればいいかぜんぜんわかんなくなっちゃて・・・・・・あう」
「一応魔道士協会には行ったんだ?」
「うん・・・人に聞いて」
笑顔で聞いてくるレヴィアスに、ソレイユはかろうじて答える。
「そう。じゃ、なんで今の格好にしてなかったの?巫女服じゃなかったよね?」
この言葉にソレイユは凍りついた。
「・・・・・・」
「私には言えない事?」
レヴィアスがそういうと、ソレイユは我に返り慌てて否定した。
「違っ、そうじゃなくて・・・その、目立ちたくなかったから・・・」
「じゃあ、何でそう言わなかったの?」
あくまでも笑顔のレヴィアス。対してソレイユは蒼くなって震えている。
「・・・忘、れ、てて・・・」
「地図は?持って行ったの?」
「・・・・・・大丈夫だと思ったから、その・・・・・・ごめんなさい」
ソレイユは蚊の鳴くような声になっている。レヴィアスはため息をついて
「あのね、ソレイユ。このフロスト・シティは広い上にかなり複雑な構造になってる。何回か来てても迷うんだよ。特にソレイユは方向音痴だから、地図もってけって言ったよね?それに、この街はかなり人通りも多い。ただでさえ見つけにくいのに、変装なんてされちゃほとんど見つけられない。それはわかるよね?」
と笑顔を戻して子供に諭すような口調でいうが、この人がいうとはっきり言って怖すぎである。


ところで―――
このフロスト・シティ。
説明が遅れたが、この街はゼフィーリア王都ゼフィール・シティから歩いて2・3日の所にある上に、すぐ近くには運河も流れているかなりの交通都市で、その大きさは、王都のゼフィールシティに次ぐものとして知られている所だ。
同時に、この街は魔道都市とも呼ばれており、ゼフィーリア近辺の魔道の要にもなっている。
何故この街が「魔道都市」と呼ばれているのかというと、二十数年前にとある女魔道士が「魔道士協会はそれぞれ好き勝手に動いてて連絡が取れないから不便で仕方がない」とかいう理由でゼフィーリアとその周辺の魔道士協会を統括したのだが、その拠点にしたのがこのフロスト・シティだったからだ。

まあ、それははともかくとして、この街は魔道と流通の要としてかなり栄えていた。当然、街の中はかなり広い上に複雑な構造になっている。立体交差になっていたり、道がものすごく多かったり、何故か似たような建物が多かったり・・・
そんな訳で、この街は何度か来ていても迷う人が多い。更に言うなら、この街で誰かとはぐれたら、見つけるのは至難のわざと化していたりする。
まあ要するに地元の人でもない限り、地図なしじゃ動けないし、誰かを見つけるにはその目印となるモノが必要と言う事だ。

そんな訳でレヴィアスが怒るのもはっきりいって無理はない。事実ソレイユを探すのに相当苦労したのに見つからなかったし。


ソレイユはレヴィアスに言われた後しばらく口をもごもごさせていたが、結局は
「あ・・・の・・・・・・ごめんなさい」
の一言に落ち着いた。それにレヴィアスはまたにっこり微笑んで
「迷いたくなかったら次からは地図をもっていくように。変装するなら前もって私に言うこと。いい?」
と念を押した。そのあまりの怖さにソレイユは蒼くなってぶんぶん首を縦に振る。それを確かめると、レヴィアスはライドの方も見ながら、
「ところで、ライドもソレイユも食べ終わったら部屋に戻るからそのつもりで」
といった。―――二人とも全然食べ終わっていなかった。


「で、ライド」
「んあ?」
「これくらい言わなくても解れ。聞き込みはどうだった?」
部屋に戻ると、レヴィアスがいつもの口調に戻っていた。
「んーっとそうだな。いろいろ訊いて回ったけど、ろくなのはほとんどなかった。わかったのは『あの領主が裏でいろいろやってる』ってことぐらいだな。
具体的なのはほとんどでてこなかった。あるにはあるんだが、どれも確証がもてないような話ばっかで、な」
ライドは長台詞をいい終えてから、肩をすくめた。
「有力な情報は、なしか・・・」
「よっぽどガードが固いんだろ。聞いた感じじゃ、具体的な話は何一つ洩らさないようにしてる」
「なるほどな・・・ソレイユは?」
さっきのがよほど怖かったのか、ソレイユはまだ放心状態だった。レヴィアスに尋ねられてもなんの反応もしない。
「おい?」
「・・・ふえっっ!?」
レヴィアスが顔を覗き込むと、流石に反応した。
「どうした?」
いやまあ・・・どうしたもこうしたもないんですが・・・というか思いっきりレヴィアスのせいなんですけど。
とは言えるわけもなく、ソレイユは慌てて手を振った。
「なんでもないの。なんでも」
「そうか。で、ソレイユは何か聞けたのか?」
レヴィアスは特に気にする事もなく、ソレイユを促した。
「えーっとね。こっちの方はまだ情報があったかなぁ。まずは、あの領主が魔道士、傭兵を裏っていうかこっそり集めてるって事。
後は・・・いろいろ実験や研究をやってるみたい」
「軍備増強、だな。研究というのは具体的に何をやっている?」
「さあ・・・そこまではわかんない。一応、あの領主のお抱え魔道士って人に聞いたんだけど」
「ふむ」
ソレイユの話を聞いて、レヴィアスは顎に手を当てて考えていた。と、今までソレイユの話を黙って聞いていたライドが口を開いた。
「研究ってキメラのじゃないか?それじゃなきゃホムンクルス」
「後は毒とか?」
ソレイユも言うが、レヴィアスはその予想にいまいち納得していない様子で
「キメラにホムンクルス・・・戦力として使う、と言う事か?毒は・・・作るとしたら暗殺用だろうな。だが、どちらも憶測に過ぎない。確証を得るには忍び込むか何かして調べるしかないだろうな」
と言って仕方がないと言う風に首をすくめた。
「それで、レヴィーは何か情報を得られたの?」
ソレイユがふと尋ねた。――因みに彼女は普段レヴィアスをレヴィーと呼んでいる――が、彼女の問いにレヴィアスは首を振って、
「私も似たようなものだ。あの領主が妙な実験を繰り返している事と、魔道士や傭兵を秘密裏に集めている事。
それに、武器や魔法道具を買い集めている事―――」
最後の方だけゆっくりと言った。
「武器はまあわかるとして、魔法道具ってのは何だよ?」
ライドが横から口を挟んだ。
「聞いた話では、呪術に使う物や魔法剣といったものらしいが・・・・・・」
ライドにそう答えてから、レヴィアスは眉をしかめた。
そして―――

「まあ・・・何にせよ、あの―――セレストの領主が反乱を起こそうとしているのは間違いないだろうな・・・」

声を低め、嘆息するように言った。そうしてから、レヴィアスは考えるように瞑目する。
―――セレストというのはここ、フロストシティから程近い所にあるセレスト領のことである。話によるとここの領主がここ最近おかしな動きを見せているらしいのだが・・・いや、領主と言うよりその一族、と言った方がいいのかもしれないが―――
しばしの間の後、レヴィアスは決意の色をにじませながら口を開いた。

「陛下には様子を探って来いとしか言われなかったが、そんな悠長な事をしている場合でもなさそうだな」

開かれた蒼い瞳は強い光を湛えていた。

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31477Re: †序章U† 戦いの兆しパッチー 2005/5/29 21:13:49
記事番号31474へのコメント

こんばんわ。こっちでは初めまして。パッチーです
光と闇の狭間で。楽しく読ませていただきました。
ゼフィーリアのお話なんですね。まだスレイキャラは出ていないみたいですが、これからどういった展開になるのかが楽しみです。
それにしても、ゼフィーリアの騎士ですか・・・・
『あの』ゼフィーリアの騎士・・・・続き、楽しみにしています。
それでは。

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31482Re: †序章U† 戦いの兆しソエル E-mail 2005/5/30 07:58:20
記事番号31477へのコメント

>こんばんわ。こっちでは初めまして。パッチーです
こんばんわwいつぞやはお世話になりました
>光と闇の狭間で。楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます^^色々謎な部分が多くてわかりにくかったかと・・・
>ゼフィーリアのお話なんですね。まだスレイキャラは出ていないみたいですが、これからどういった展開になるのかが楽しみです。
スレイキャラはですね、次の序章VかWで一名登場します。後は本編に入るまで、通り名だけかと思います^^;えーと人間キャラはある事情で(笑、たぶん本編でも出てこないと思います。

>『あの』ゼフィーリアの騎士・・・・続き、楽しみにしています。
はい(笑。あのゼフィーリアの騎士です。彼女も只者ではありません。スレイキャラとの関係もちゃんとあります。ネタバレになるのでこれ以上はやめておきますが・・・
>それでは。
はい。読んでくださってありがとうございました

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31486投稿欄では初めまして。ぷらすとーる URL2005/6/1 21:17:55
記事番号31474へのコメント

こんばんは、ソエルさん。小説読ませて頂きました。

ゼフィーリアの騎士団の話ですか〜!レヴァイスはクールでカッコいい女の人って感じがします!

3人の個性が良く出てますね。これから話がどう動くか楽しみです。
続きが出来たら、また読ませてもらいますね。
それでは。

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31490Re:投稿欄では初めまして。ソエル E-mail 2005/6/2 21:17:49
記事番号31486へのコメント

えーっとレス遅れてごめんなさい。学校の合宿にいってました^^;では気を取り直して。
>こんばんは、ソエルさん。小説読ませて頂きました。
こんばんわw読んでいただき、ありがとうございます。
>ゼフィーリアの騎士団の話ですか〜!レヴァイスはクールでカッコいい女の人って感じがします!
う〜ん。少しいいにくいのですが、主人公はレヴィアスです・・・ややこしい名前でごめんなさい。ついでに、騎士はレヴィアス一人です。で、ソレイユは巫女で、ライドは傭兵です。そこらへんの説明、ちゃんとしてませんでした・・・(ーー;)
>3人の個性が良く出てますね。これから話がどう動くか楽しみです。
>続きが出来たら、また読ませてもらいますね。
ありがとうございます。話はこれから、ゆっくりではありますがかなり動いていきますので。とはいっても序章ではあまり動きませんが・・・・
>それでは。
ではではw

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31475すみません;;ソエル E-mail 2005/5/29 16:40:34
記事番号31473へのコメント

えーとすみません、序章Tのほうで最後のワンシーンというかワンフレーズを抜かしてしまいました。一番いるとこなのに・・・です。ああ。気づくの遅すぎですね、私・・・本当にごめんなさい。
で、UPしなおすにあたって序章TもUもちょっと手を加えました。特にTの方ですね。結構変えてしまったので、お暇なら読み直していただけると嬉しいです。概要はかえてないんですが・・・描写の方をいじりました。多少はましになってると思います。たぶん。

後書きを抜いてしまったのでここに書きますが、光と闇の・・・を読んでくださった方、本当にありがとうございました。いろいろおかしな点、説明不足など多々あったかと思います(直す前は特に)。何しろまだまだ私も経験不足というか、小説そのものを書いたのもこれが初めてで・・・この「光と闇の狭間で」で腕を何とか上げていきたいと思っている状態です。ですので、気づいた所は直していくつもりですが、説明不足や言葉の使い方がおかしい所は遠慮なく指摘してくださると嬉しいです。ちゃんと直していきますので。
また、批評や感想などもいただけると嬉しいです。

では、失礼いたしました

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31498 †序章V† 予感ソエル E-mail 2005/6/5 18:41:11
記事番号31473へのコメント

「あ、そーだ」
いつまでも部屋に閉じこもっていても仕方がないということで、レヴィアスたちが宿を引き払って外に出たころ。ソレイユが思いついたように口を開いた。
「どうかしたのか?」
いいながら、少し前を歩いていたレヴィアスが振り返る。
「んと、昨日なんであの怪しい奴追わなかったのかなーって思って」
ソレイユが子供っぽく聞いてくる。レヴィアスは少し下がってソレイユの歩調に合わせた。
「あぁ・・・・・・大抵、ああいう奴は深追いするとろくな事にならない。昨日は疲れていたし、罠を仕掛けられたらまずい事になっただろうからな」
言って言葉を区切る。そして目を細め、不快そうにしながら言った。
「それにあの男・・・実力の半分も出していない。私の顔を知っていたと言う事は、私の強さも知っているはず。それなのに、部下があの程度の強さということは、たぶんあいつは私の強さを実際に確かめに来たというところだろう」
「なぁるほど。んじゃ、なんでライドは来るの遅かったの?」
ソレイユが何気なく訊いて振り返ると、二人の後ろにいたライドはぎくっという感じで一瞬固まった。そして、取って付けたように乾いた声をあげた。
「いやぁ、ソレイユの声がどこからしたのかよくわかんなくてさ・・・」
頭の後ろを掻きながら言う。因みにソレイユはライドのほうを向きながら、要するに後ろ向きで歩いている。
「あんな路地だとは思わなかったんだよなーー」
「ふーん・・・・・・」
つとめて明るく言うライドに対して、ソレイユの声はどこまでも冷たい。
「あの、なあ・・・・・・俺が遅かったってのもあるけど、それ以前にあんたらがあいつら瞬殺してたんだろーが!」
じと目でみるソレイユに、流石にライドが反論した。
「レヴィアスはすぐに助けに来てくれたけど?」
ライドの反論にもソレイユは動じず、じと目のまま言い返す。というよりむしろ、さらにつめたい目線でライドを見る。
「それは・・・・・・レヴィアスが走るの早すぎるからだろ」
「ふーん、言い訳するんだ」
「事実だろーが!つーか、もとはといえば、お前があんな時間に出歩いてるのが悪いんだろ!」
「出歩いてたんじゃなくて、迷ってたの!」
二人とも、口ゲンカに熱中していつのまにか歩くのをやめてしまっている。
レヴィアスはと言うと、少し先のほうで壁にもたれかかってそれを眺めている。
「はあ・・・」
ため息などつきつつも、止める気はないらしい。ライドとソレイユの方を見ながら、「本当に仲がいいな。あの二人は・・・」などと思っていたりするが、口に出すと二人に全力で否定されるので言わないらしい。


止めるのも面倒なので、しばらく二人を眺めていると。
―――目の前を黒い影がよぎった。
その見覚えのある姿に、レヴィアスはがばっと身を起こす。が、その直前にちらりと振り返っただけで、既にその黒い人影は人ごみに紛れてしまっていた。なおもレヴィアスは黒い人影を探して辺りを見回すが、もう、その人影が目に入ることはなかった。
―――まさか。まさか、そんなはずは・・・・・・
黒い人影が遠く、見えなくなった後も。レヴィアスは壁にもたれかかり、ずっと考え込んでいた。


しばらくして、太陽が中天に差し掛かった頃。
「あれ?どうしたの?レヴィー」
口ゲンカに勝利したソレイユが、いまだに考え込んでいるレヴィアスの方に走ってくる。それに気づいたレヴィアスは、身を起こしながら
「ん?ああ、なんでもない」
と言って本当になんでもないという風に首を振った。そして、ふとライドがいない事に気づいたらしい。ソレイユに向かって問いかける。
「ライドは?」
「あっちでへこんでるよー」
言ってソレイユは、さっきライドと口ゲンカしていた方にある荷物の影を指差した。
「本当に仕方がない奴だな」
ぼやくように言ってレヴィアスは少し多めに息を吸い込む。
「おいライド!いつまでそんな所にいるつもりだ!置いていかれたくなかったらさっさと来い!」
元々声が響くだけあって、少し音量を上げただけで通り中に響いている。
「わーったよ。いきゃあいいんだろうが、いきゃあ。んな大声で言うなよな・・・」
ライドがなにやらぶつくさ言っているが、レヴィアスはそんな事には取り合わない。
「さて、行くか」
言って踵を返し、さっさと街の外に向かって歩いていく。その後をソレイユが追いかけ、ライドは置いて行かれた。それでも少しの間の後に、ライドも我に返って
「うお!ちょっと待てって!」
半分懇願のような感じで叫びながら、慌てて追いかけていった。



3人揃って無事にフロスト・シティを発ち、日も天頂に差し掛かった頃。レヴィアス達はセレスト領に入る街道を歩いていた。辺りは、街道が鬱蒼とした森を横切っているために今でも薄暗くなっている。
とはいえ、何かある訳ではなく、セレスト領へ向かう旅は順調に進んでいた。
「ねー、それで、セレスト領のどこにいくの?」
ソレイユがふと思い出したかのように、隣を歩いているレヴィアスに向かって訊いた。
「・・・・・・知らずについて来ていたのか?」
「うん」
きっぱりはっきり言い切られ、レヴィアスは頭を抱え込みそうになる。それでもなんとか立ち直って答えた。
「・・・・・・ジルギス・シティだ」
「ジルギス・シティ・・・・・・って、敵の本拠地に乗り込むの?」

――――ジルギス・シティというのは、セレスト領を治めるラインハルト家の城を中心とした城下町のことである。そして、ラインハルト家というのは、言うまでもなくセレストの領主一族である―――

「ああ。その手の情報がほとんど集まるフロスト・シティで、具体的な情報が全くと言っていいほど調べられない。出てきても、判断材料と成る程正確で有力な情報はほとんどない。こうなったら、本拠地のジルギス・シティに行って調べるしかないだろう」
仕方がない、と言う風に話すレヴィアスの後を、ライドが継いだ。
「ま、そういうこったな。確かに危険度は増すが、確証もない情報を報告するわけにはいかないしなー」
「ふーん。じゃあ、お城に忍び込んだりとかもするの?」
「ああ、たぶん――――――」
いいかけて、レヴィアスが何かに気づいた。
「ライド、ソレイユを引っ張って後ろに下がれ!」
「え・・・」「おう!」

ズドンッッッ

ライドがソレイユを掴んで跳び退った直後、目の前を炎の塊が通り過ぎる。その大きさは人の身長をゆうに超えている。 
「マジかよ」
ライドの頬を一すじの汗が通った。炎の塊は、辺りの木々を跡形もなく焼き尽くしていたのだ。それどころか、地面が溶岩のように赤くなっている。
――ふと、頭上を一つの人影がよぎった。

「防呪結界〈ディス・シールド〉」

ほぼそれと同時に、ソレイユが結界を発動させる。すると、

 コウッッ

頭上から青い光が降り注ぎ、一瞬、辺り一帯が青一色に染まる。直後、

 パキィィィッッン

光のあたった所のほとんどが凍り付いていた。とはいえ、結界を張ったソレイユの周りだけは全く凍り付いていない。
「っておいレヴィアス!俺たちまで凍らす気かよ!」
ライドが頭上から降りてきたレヴィアスに向かって叫ぶ。が、そのレヴィアスはライドの前方に音もなく着地した後、一瞥をくれただけで一言も言い返さない。何かを呟きながら、剣を抜いて、凍りついた地面に突き立てる。

「解氷呪〈サウ・グレイシアル〉」
 ジュゴワッッ

さっき呟いていたのは呪文だったらしい。レヴィアスの放った呪文は剣を中心として、一気に辺りの氷を消してゆく。
辺りを覆っていた氷を跡形もなく消した後、レヴィアスは剣を引き抜き、
「出て来い。隠れても意味は無い」
と、ライドから見て左の方に向かって言い放った。すると、
「流石はレヴィアス様。木々より高く跳躍してあの炎を避け、辺り一帯を凍らせるだけではなく、私共の位置まで確認しておられるとは・・・・・・」
言いながら暗殺者姿の男が、魔道士姿の初老の男性を引き連れて森の中から出てくる。先程レヴィアスが放った呪文は、横の魔道士が結界か何かを張って防いだのだろう。
「御託はいい。何故こんな所にいる?」
どうやらこの暗殺者、この前レヴィアスと戦った者らしい。レヴィアスは目を細め、徐々に殺気を強くしながら言う。
「貴女ならもうご存知のはずでしょう?」
笑みを浮かばせながら、暗殺者姿の男は答えてくる。
「・・・・・・ラインハルト卿の手の者、と言うわけか・・・・・・」
レヴィアスは顔をしかめて、呻くように言った。
「ラインハルトっていやぁ、セレストの御領主サマの名前じゃねーか」
ライドが横から口を挟む。
「正確に言えば、セレストの領主一族の名前、だがな・・・」
いってレヴィアスは剣を構えなおす。
「既にこちらの情報は伝わっていると言う事か・・・・・・ライド、急ぐぞ」
「おう!」


レヴィアスとライドが暗殺者姿の男と初老の魔道士の二人に向かって走り出し、ソレイユが呪文を唱え終えようとした時。
―――黒い気配が辺りに満ちた。


  ・ ・ ・ ドクン ・ ・ ・

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31503戦闘シーンに四苦八苦 《小》後書 ソエル E-mail 2005/6/7 21:54:04
記事番号31498へのコメント

†塵芥
こんばんわ(こんにちわ?
タイトル通り、戦闘シーンがうまく書けず悲しくなっているソエルです。映像は頭に浮かぶのに、うまく文章にできない(T_T)・・・あああ。自分の表現力と描写力のなさを改めて感じました;;それと、戦闘シーンの難しさを思い知りました・・・

†後書
えーっとまずは、文中の防呪結界(ディス・シールド)と解氷呪(サウ・グレイシアル)はオリジナルです。原作で凍るのを防いだり、氷を溶かす呪文が見当たらなかったので、勝手に作りました^^;
後、広範囲に青い光を放って当たった所を凍らせるのは 蒼煌凍波(フリーズ・ライト)、人の身長をゆうに超える大きさの紅い炎の塊を放つのが 紅炎塊(カーディナル・ブレイズ) などと名前を付けてたりします。
・・・それにしても、呪文の名前付けるのって結構大変ですね^^;いっそ呪文名募集とかやろうかな(笑

そうそうそれで、ソレイユとライドはよく口げんかしてますwレヴィアスは大体それを横から眺めてるだけ。で、いつもソレイユが勝利してます。原因は・・・大体ライドの余計な一言ですね。口は身を滅ぼすと言うやつです(何か違う)ソレイユの挑発にもあっさり乗っちゃうし。彼は売られた喧嘩は必ず買いますw
後レヴィアスは、ついて来ない者は置いて行きます。「待て」と言われた所で待ちませんw
ソレイユは、肝心な事を聞いてなかったり覚えてなかったり・・・妙に世間知らずな所があって、結構単純です。いろいろ。

最後に、黒い気配の主とは? TとこのVにちょっと伏線をはってみたのですが・・・誰かわかったら書き込んでくださると嬉しいですw

†予告
次の序章Wは詩を1・2個はさんでその後になります。詩の方は、レヴィアスの心情などを書きたいと思います。

ではw

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31510†風の詩† 凍り付いた砂時計ソエル E-mail 2005/6/9 00:51:44
記事番号31473へのコメント

†風の詩 -カゼノウタ-

風の詩
風の紡ぐ詩
風の運ぶ詩

  語られぬ想い
  胸に秘めしこと
  吟遊詩人の譚詩(バラード)
  
――――風に乗せて――――


†心緒 -ココロノオ-

夢を見ていた

果て無き夢を

見果てぬ空に
想いを託す

君と過ごした想い出は
今もなお 
艶を帯びたまま

―鮮やかに残る―

忘れえぬ日々 君への想い
―――我が心はまだ 君に囚われしまま―――


†凍り付いた砂時計 

もう、君はいないと
わかっている筈なのに
君の面影を
求めてしまう
どんなに時間が過ぎても
いつか
君が戻ってくるような気がして―――

心は あの時からずっと 
凍てついたまま
時さえも 凍り付いて流れない

    |
    |
    |
    |
    
†春の兆し

凍てついた心と時刻-トキ-
変わるはずなど無いと そう 思っていた

けれど

もうすぐ 変わり始める
もう少しで 始まりを迎える
――そんな予感がした

きっかけが どんなに些細なものだとしても
たとえ どんな結果になろうとも
それはいずれ 大きな流れとなる――

―――春まで、後少し



◇Next◇

変動の予感は 
今、現実へと変わる

凍り付いていた心と時刻-トキ-が 
今、鼓動と共に動き出す

next⇒光と闇の狭間で †序章W†

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31542Re:†風の詩† 凍り付いた砂時計F−2 2005/6/18 22:31:36
記事番号31510へのコメント

お久しぶりです!
覚えていらしゃるでしょうか?
中間テストやらなんやらでくたくたです。
小説は夏休みになってしまうかもしれません。
その代わりしっかりと、ソエルさんに頂いたコメントを生かして、
勢いのある小説を書きたいと思います。
よろしくお願いします!

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31545お久しぶりですソエル E-mail 2005/6/19 02:29:12
記事番号31542へのコメント

お久しぶりですね〜F−2さん
もちろん覚えてますw
中間テスト、大変だったんですね^^;
小説は書くのに時間かかりますしね〜。無理に急ぐ必要はないかと。
ところで、勢いっていうのが結構小説書くときっていりますよね。自分で書いててしみじみ思いました。お互い頑張りましょう!楽しみにしてます。

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31544†序章W† 宿命〈さだめ〉の遭遇(であい)ソエル E-mail 2005/6/19 02:22:04
記事番号31473へのコメント

 ・ ・ ・ ・ ドクン ・ ・ ・ ・

―――予感がした。何かが、もうすぐ変わりはじめる・・・そんな予感が。

 ・ ・ ドクン ・ ・

―――鼓動が、早くなっていくのがわかる。

 ドクン ・ ・ ドクン ・ ・

―――動、けない・・・

 ドクンッッ



辺りに、黒い気配が満ちていた。殺気とも瘴気ともつかぬそれは、急激に濃さを増してゆく。その異質な感触に、そこにいた人間達は皆動きを止めていた。
「何だ・・・これは・・・?」
誰かの口から疑問の声が上がる。直後、

 ザンッッ

空中に“丸いもの”が放り出されていた。ゴロンッと重そうな音を立てて地面に落ちたそれは、暗殺者の隣にいた魔道士のものだった。即ち――驚愕に目を見開かせた男の頭・・・
――誰も動かない。否、誰も、動けない。

「さて。そろそろ渡していただけません?貴方が隠し持っている物・・・」
後ろからいきなり聞こえた声に、ライド達が驚いて振り向くと、いつの間にか。少し離れた街道の上に、黒い神官が佇んでいた。20歳前後の黒髪で、黒い法衣を纏った神官。その顔にはいっそ友好的とも言える、にこやかな笑顔が浮かんでいる。ただし、その纏う雰囲気は背筋が凍るほど冷たいものだった。
「貴様は・・・!!!」
暗殺者姿の男が叫ぶ。が、その言葉を黒い神官がさえぎる。
「ほんとせっかちな話で申し訳ないんですけど、とりあえず“あれ”、渡してくれません?あんまりゆっくりはしていられませんし、僕としても余計な労力は使いたくありませんからねぇ。」
「くっ」
涼しい顔で言う黒い神官に対し、暗殺者姿の男は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「・・・ここまで、か・・・」
「おや。やっと渡してくれる気になりましたか」
呻くように呟いたその声に、黒い神官はにこやかな笑顔のままで「いやぁ、助かります」などと言いながら、歩み寄っていく。
「・・・・・・この戦いは、ですがね」
ライドの脇を通り過ぎ、二人の距離が後十歩あるかないかにまで迫った時。不敵な笑顔を浮かべて暗殺者姿の男が言い放った。
「空〈ヴォイド〉!」
「!?」
――瞬間、男の姿が掻き消えた。


「「・・・・・・・・」」
しばしの沈黙。
「・・・・・・えーと」
やがて、黒い神官はくるっと振り返り、いまだ呆気にとられているライド達に向かって口を開いた。
「とりあえず・・・あの人たちの足止め、ありがとうございました」
他に言う台詞が無いのか、ぎこちなく礼を述べる。
「いや、俺達は別にそんなつもりじゃ・・・」
ライドが言い掛けた所で、ソレイユがその足を踏んづけて黙らせる。
「いえ、こちらこそ助けていただいて、ありがとうございましたー」
靴の踵で、人の足をグィッと踏んづけながら言っているとは思えないほどのきらきら笑顔。
「そんな大した事はしてませんよ」
それを受ける黒い神官の方は、苦笑交じりの笑顔で返す。
「結局逃がしちゃいましたし」
小さく付け足して、肩をすくめた。

「ところで、あちらの方はどうされたんです?」
「え・・・?」
黒い神官の指し示す先を見て、ソレイユはようやくライドの足を踏んづけるのをやめ、慌てたようにそちらに向かって走っていく。
「レヴィー!?大丈夫??」
――即ち、レヴィアスの傍に。レヴィアスは先ほどから全く動いていなかった。ずっと何かに縛り付けられたかのように、立ち尽くしている。それこそ、ソレイユに何度か名前を呼ばれても何の反応も示さない。
「レヴィー・・・?」
「・・・・・・ん・・・・・・?」
ソレイユが更にもう一度呼びかけて、心配そうに顔を覗き込むと、流石に気づいたらしい。
「あぁ、ソレイユか・・・・・・大丈夫だ」
言ってなんでもない事だとでも言うように首を振る。ソレイユはまだ何か言いたげにしていたが、レヴィアスの言葉を一応は信じたのか、何も言わなかった。
「・・・これは?」
ふと、レヴィアスが初老の魔道士の死体を見て言った。
「あ、これは・・・いきなりその人の首が飛んで・・・」
ソレイユは少しためらった後、言い辛そうに続きを言った。
「たぶん、あの人が・・・」
珍しく語尾を濁した上に、声もようやく聞き取れるかどうか、といった感じである。
「あの人・・・・・・?」
反芻して、ソレイユがちらりと見やった方向に視線を合わせる。そしてそのまま―――レヴィアスは固まった。その様子に気がついたのか、黒い神官の方もレヴィアスのほうを不思議そうな顔をしながら見ている。


「――――イリ、ス・・・」

しばし時が流れた後。レヴィアスは、絞り出すようにしてその名を呼んだ。――おそらく、無意識に。
「・・・・・・はい?」
「っ―――すまない。人違いだ」
え、と言った感じで聞き返したその様子に、レヴィアスははっと我に返り、慌てて首を振った。
「はぁ・・・」
黒い神官の方は、やや納得いかなさそうに頬を掻いている。
「イリス、という方はお知り合いなんですか?」
やや躊躇った後に、レヴィアスに向かって問いかけた。
「ああ・・・昔の知人だ」
レヴィアスの方は先程よりもよほどしっかりした口調で返す。その瞳にも力が戻っていた。
「ところで、貴兄は?」
「僕の名前―――ですか?」
「そのつもりだ」
「――ゼロスです。ま、見ての通りの旅の神官ですね」
けど、どうして?とでも言いたげなゼロスに、レヴィアスは軽く笑って返す。
「あの暗殺者を追っているなら、私も心当たりがある。それにあの連中、色々と手ごわそうだからな・・・人手は多い方がいい」
「なるほど。確かにそれはいえてるかもしれませんね。貴女の情報力と戦闘能力を借りれるならば、十分に」
含みのある言い方に、レヴィアスは片眉を軽く跳ね上げる。
「ほぅ・・・よく調べておられる様だ」
「貴女の事は、色々調べるうちに山ほど出てきましたからね。レヴィアス=セラ=アルフィスさん?」
その言葉に、レヴィアスはひやりとするような含み笑いを浮かべる。とはいえ、端から見ているライドとソレイユにとって空恐ろしい事この上ないだけで、当の本人達にはどうということもないらしい。
「よくそこまで・・・」
「結構有名みたいですよ?一部の人たちにとっては、ね」
それに何を感じ取ったのか、レヴィアスは笑みを深くした。
「―――何のために?」
「・・・単なる探し物、ですよ」
「連中とは?」
「それの取り合いをやってただけです。ま、まんまとあの人たちが手に入れちゃったから、僕が今ここにいるんですけどね」
淀むことなく言い切って、やれやれというように肩をすくめる。
「なるほど。私も売られた喧嘩は買う主義―――というより、連中が何をしているのかが気になる」
レヴィアスは肝の冷える笑みを消して、ゼロスをまっすぐ見据える。
「――商談成立、ですね」
「ああ」
うなずいて、レヴィアスは片手を差し出す。それにゼロスはちょっと驚きながらも、その手を取って軽く握った。

「改めて、よろしく頼む」

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31565†序章X@† 事の裏に潜む者ソエル E-mail 2005/6/26 17:45:07
記事番号31473へのコメント

「ま、ほんとはあの連中、もっと早くに片付けるつもりだったんですけどね」 

四人で夕食を取りながら話しているとき、ゼロスは肩をすくめてそう言った。
あの後、あんな騒動があったとは思えないほど、何事もなくときは過ぎていた。レヴィアスとゼロスがあの後色々話し合っていたようだが、結局あの暗殺者がどこに行ったのかはっきりした事はよくわからなかったので、とりあえず一行はそれまで通りジルギス・シティに向かうことになった。今は、ソレイユが「お腹減ったー!!」と喧しいのと、連中のアジト他を調査する必要もあって、レヴィアス達は早めに街道沿いの宿場町に宿を取り、食事をしていた。
――何だかんだ言って昼はろくに取れなかった上、ライドとソレイユはレヴィアスのおかげで朝食も食べた心地がしなかったので、二人ともかなりご機嫌だった。レヴィアスはというと、そんな二人を横目で見ながら、もっぱらゼロスと話していた。無論、少し離れた所で。
「・・・そんなに手こずってるのか?」
「ええ、まぁ・・・」
ストレートなレヴィアスの台詞に、ゼロスは苦笑しながらうなずいた。
「これでも結構大変なんですよ?やっと見つけたと思ったら、陽動とか今日みたいに逃げられちゃうとか・・・ほんと、やんなっちゃいますよ」
はっはっはと笑いながら言うゼロスに、レヴィアスはジト目になりながら「笑えることか?」と思いっきり呆れ声で呟いた。
「ところで」
不意に、レヴィアスがゼロスに向き直った。
「何です?」
険しい顔つきのレヴィアスに対し、ゼロスは気楽な様子で答える。
「・・・ずっと気にはなっていたが・・・あの暗殺者、何者だ?」
「何者・・・ですか?」
レヴィアスの意図を図りかねるように、ゼロスは聞き返した。
「・・・空間を渡る術は、元来神族か魔族しかもたぬはず。それを、何故あの暗殺者が使える・・・?」
レヴィアスは瞑目し、自問するように問う。
「・・・神族が、神官でもないあのような者に力を貸すとは思えない。かといって、魔族との不死の契約にも、そのような内容は含まれていない・・・」
「どうして、それを・・・」
レヴィアスの言葉に、ゼロスは驚いて彼女を見つめた。
「大魔道士リナ=インバースの遺した文献に、な。魔を滅する者〈デモン・スレイヤーズ〉といったほうがいいか?」
顔を上げて、ゼロスのほうを見遣る。
「リナ=インバースの・・・」
驚きを隠せないかのように反芻して、ゼロスは考え込んでしまう。
「話を続けていいか?」
「うーん・・・これは・・・やはり・・・しかし・・・」
レヴィアスが訊くが、ゼロスは何やら呟きながら考え込んだまま、上の空である。

 パンッ

「ゼロス、大丈夫か?」
レヴィアスがゼロスの眼前で手を一打ちして、身を乗り出している。
「・・・あ、はい・・・大丈夫です・・・」
音に驚いたのか、それともレヴィアスの顔が思いっきり近くにあるのに驚いたのかは知らないが、ゼロスはかなり気の抜けた声を返す。
「で―――あの暗殺者が何者か、貴公なら知っているのではないか?」
腰を下し、レヴィアスはひたとゼロスを見つめて、再び問いかける。
「・・・少なくとも、ただの人間ではないでしょうね」
「よくはわからないという事か」
「ミもフタもないですね・・・まぁ、その通りですけど」
余りと言えば余りなレヴィアスの台詞に、ゼロスはやや複雑な苦笑を浮かべる。
「こちらからも一つ聞いていいですか?」
「ん?」
「どうして、ジルギス・シティだと思われるんです?」
「単なる推測だ。まずは、あの暗殺者は私達がジルギス・シティに向かっていることを知っていた。そうでなければ、あんな所で待ち伏せなどしないだろう。それに、前にフロスト・シティで『また会うだろう』と言ってたしな・・・。それに様子からして、たぶん私達の目的も知っているだろう」
レヴィアスはふぅと一息ついて、運ばれてきた食後の香茶をすこし口に含む。
「それでいて、私達を襲った。他の者の依頼を受けていたとも考えられるが・・・大体、私を疎むような連中は、ジルギス・シティに揃っている。私達がジルギス・シティに行くのを阻んだと見るのが妥当だろうな」
「そこのひとが貴女を近づけない、もしくは抹殺するためにあのひとを雇ったと?」
「どういう経緯かは知らないが・・・おそらく、ジルギス・シティに雇い主はいるだろう」
「なるほど・・・」
「ついでにいえば、ゼロスが探しているものを奪わせたのも、近くにいるだろうな」
「ま、おそらくは同じ方でしょうね」
「だ――――」
レヴィアスが口を開きかけた時。――ソレイユの声が響き渡った。

「あーーーー!!!ライド、何を勝手に人のコロッケ盗ってんのーーーー!?!?」
「いいだろ、別に!いっつも食べきれなくて残してんだか・・・ら!?」

 ゴンッ

「言うに事欠いてそれ!?わたしが朝も昼もろくに食べれなかったの知ってるでしょー!?」
「っってーー。だからって殴るこたないだろ!」
・・・どうやらトレイの角がクリーンヒットしたようである。しかも金属製の。
「殴られてあたりまえでしょ!勝手に人のものとったんだから!」
「いつもは何とも言わないだろーが!」
「今日は別なの!」

少し離れたテーブルでは。
ゼロスは口ゲンカを始めるソレイユ達を呆気にとられた様子で眺め、レヴィアスはレヴィアスでげんなりした様子でため息をついている。
「・・・・・・止めてくる・・・」
レヴィアスはなんとも億劫そうに席を立ってソレイユたちのほうに向かう。

「ライド、ソレイユ、そういう事は外で―――――」
レヴィアスがソレイユたちに向かって声をかけようとした時。台詞の途中で水の入ったコップが飛んでくる。

 ビシャァァァ

 あ。

とばっちりでレヴィアスに水がかかってしまったようである・・・。詳しく話すと、ソレイユがコップを投げて、それをライドが避けたため、後ろの方にいたレヴィアスに水がかかったということだ。

 しぃぃぃぃん

何も言わないレヴィアスに、凍りつく他一同。――痛いほどの沈黙の後、やがてレヴィアスが口を開いた。
「・・・・・・氷付けにされるのと、湖に沈められるの、どちらがいい・・・・・・?」
滴る水を拭おうともせず、その顔には悪魔の微笑みがはりついている。

その後二人がどうなったかは・・・・・・・・・・・・言わずもがなである。


―――夜もだいぶ更け、人々が寝静まり始めた頃。
レヴィアスは只一人、バルコニーで夜風に吹かれていた。まんじりともせず、片手にグラスなど持って香りの高い果実酒を飲んでいる。

 ザァァァァ・・・

涼風が服をはためかせ、顔を撫でてゆく。ふと、彼女は顔だけ出入り口のほうへ向けた。
「お一人ですか?」
そこには、闇の色を纏った神官が佇んでいた。


◆後書き◆
え〜ごめんなさい。これ以上やると長くなりすぎるので、ちょっと中途半端な所で切りました。・・・それにしても、ほんと話がすすまない・・・。

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31572†序章XA† 静かなる攻防戦ソエル E-mail 2005/6/30 02:27:03
記事番号31473へのコメント

「お一人ですか?」
そこには、闇の色を纏った神官が佇んでいた。
「何のようだ?」
驚きもせず、レヴィアスは聞き返す。
「来ていきなりそれはないでしょう。貴女こそ、こんな夜更けに何をしていらっしゃるんです?」
そっけないレヴィアスにゼロスは苦笑して、傍に向かって歩いて行く。
「別に・・・唯、天を見に来ただけだ」
「天を・・・・・・」
何故とは訊かない。ただ彼女の傍に行き、「隣、よろしいですか?」と言うだけ。そしてふと、彼女の手元を見て少し驚いたような表情を浮かべる。
「果実酒、ですか?」
意外そうにしているゼロスに、今度はレヴィアスが苦笑して答える。
「私は酒には強いからな・・・ならばせめて、香りにでも酔おうと思ってな」
「あなたまだ17才かそこらでしょう?」
くっくっとレヴィアスは喉を鳴らして笑う。
「・・・この世界を生きてるとそうはいかないもので、な」
ひとしきり笑った後、レヴィアスは自嘲するように言った。

「で?何が訊きたいんだ?」
「流石・・・鋭いですね」
笑みすら浮かべてこたえるゼロスに、レヴィアスは「それ以外ないだろう」と心の中で呟いた。
「まず、は・・・貴女、あのひとが空間を渡ったとき、どうしてそれがわかったんです?」
ゼロスはあの様子で、と小さく付け足す。
「ん?・・・ああ、それの事か。確かに何かに閉じ込められたように、動けも見えもしなかったが・・・気配でなんとなく、な」
何でもないことのようにレヴィアスは言う。
「それに、ソレイユに後で聞いたときも、あの暗殺者がいきなり消えたと言ってたしな」
くっとグラスの中の酒を飲み干すと、体ごとゼロスに向ける。
「いきなり気配も全て消えたとしたら、空間を渡ったと考えるしかないだろう」
「・・・・・・」
何も言わず、ゼロスは只レヴィアスを見返す。それでもしばし後には、レヴィアスに向かって問いかけた。
「では、貴女方の目的は―――――」
ゼロスの台詞も終わらないうちに、レヴィアスはふっと笑って口を開く。

 ザァッッッ

「お前が訊きたいのは、そんなことではないだろう?」
風を背に受け、いささか威圧的な態度でゼロスを見据える。
「やれやれ・・・・・・本当に貴女は勘がいいというか何というか・・・」
「一応、褒め言葉として受け取っておこう」
「で、聞きたいことですけど―――――」
「その前に。私が答えたら、こちらからも訊かせてもらう。私ばかりが答える義理はないだろう?」
レヴィアスがまたもやゼロスの台詞を遮る。ゼロスは別に気にしていないようだが。
「―――わかりました。仕方ありません、お答えしましょう」
ゼロスは口にこそ出さなかったものの、やれやれといった様子で肩をすくめる。
「文句でもあるのか?」
「ありませんよ。ただ―――いえ、やめにしときましょう。こんなことをいいに来たわけじゃあないんですし」
つまらなそうなレヴィアスは見なかったことにして、ゼロスはしゃんっと錫杖を床に打ち据える。
「さて、お聞きしましょう。――――貴女は、一体・・・・・・何者ですか?」

率直なゼロスの問いに、レヴィアスはふっと微笑んだ。――が、その目は全く笑っていない。ゼロスから少しも視線を逸らさず、改めて対峙する。
「私は、レヴィアス=セラ=アルフィス。ゼフィーリア極秘部隊《静隠》師団長、そして前軍総帥。二つ名は軍神、蒼き戦神、血濡れの死神他、色々言われているな」
レヴィアスは、ゼロスを先程よりもなお強い視線でとらえたまま、口調だけは淡々と答えた。

――――ゼフィーリア極秘部隊《静隠》。かつてより名を知られるかの部隊を現在指揮するのが目の前にいるレヴィアスだというのである。規模的にはかなり小さい《静隠》が、師団を冠する所以はその強さに他ならない。どれ程かというと、自らの3倍以上はある大軍隊を何の苦もなく勝利してのけたくらいである。その将兵の質の高さはいうまでもないが、それを指揮するレヴィアスの実力も推して知るべし、ということだ。
更に彼女は前ゼフィーリア軍総帥だったというのである。――まぁ、前総帥の名がレヴィアスだという事は、余程の辺境の地にでも住んでいない限り、ゼフィーリア国民のほぼ全てが知っている事ではあったが。
ついでに彼女の冠する二つ名。いずれも余程の実力がなければつかないものばかりである。

とまあ、何も知らない普通の人間が聞けば卒倒しかねないほどの事をあっさり言ってのけたレヴィアスだが、あいにく目の前にいるのはゼロスである。さして驚いた様子も見せず、先程と同じく泰然と構えている。

「これ以上の詮索は無用のようですね」
対峙したまま静かな声で言う。そのいつもと同じように見える笑顔からは、何を考えているのか察することはできない。
「そういうことだ」
レヴィアスのほうも笑顔で答える。もっともこちらは見る者を戦慄させるような氷魔の微笑だったが。それを見届けると、ゼロスは張り詰めた気をほとんど霧散させた。
「しっかしなんですねぇ・・・・・・その答えではこちらの方が割に合わないと思うんですけど?」
「別に、答えてはいるだろう?」
しれっと言い放つレヴィアスに、ゼロスは苦笑を浮かべた。
「僕が聞きたかったのは、そんな事じゃあないんですが・・・・・・ま、詰めの甘かった自分のせいですから、約束どおり貴女の問いには答えるとしましょう」
そう言ったゼロスに、レヴィアスはかすかに驚いたような表情を浮かべ、感心したように「律儀だな」と呟いた。
「で、なんです?貴女が僕に聞きたい事というのは」
「別に大した事ではない。ただ、お前が連中と『何』を取り合っていたのか聞いておこうと思っただけだ。いや、今もその最中か」
平然と問いかけてくるレヴィアスに、ゼロスはおもしろそうな顔をした。
「へぇ・・・・・・聞いて、どうなさるおつもりです?」
「単なる興味本位だ。それに、聞いておいて損はないだろう?変な魔道効果などをもっていられたら迷惑だからな」
――要するに、彼女は連中が所持し、現在ゼロスと取り合っているものが宝珠〈オーブ〉だったりしたら、変な魔力反応が起こらないように使う魔法を考える必要があるといっているのだ。
そのいかにもレヴィアスらしい理由に、ゼロスは何故か納得したらしい。
「ま、いいでしょう。お教えします。僕が探しているのは・・・・・・『写本』、ですよ」
あっさりと極秘事項に近いような事を教える。
「『写本』・・・異界黙示録〈クレアバイブル〉、か・・・」
こちらも並大抵の――いや、ほとんどの魔道士は間違いなく驚き感心を持つであろう『写本』に関する事柄に、全く動じず、平然と構えたままその姿勢を崩さない。
「おや?驚かれないんですね」
「そちらこそ、よくこんな事を『私』に言えるな」
「どうせわかる事でしょう。『貴女』にならね」
軽口を叩きあって今度こそ、二人は緊張を解いた。
「ま、今日はこの辺にさせていただきます。『貴女』のことはまたいつかお伺いに来ますよ」
「いずれ、な」
わざわざその部分だけ言い直したレヴィアスに妙な予感でもしたのか、ゼロスはふと問いかけた。
「時が来れば、教えてくださるとでも?」
「私の気まぐれ次第だがな」
何を含んでいるのかわからない問いかけに、いかにも意味深な受け答えをするレヴィアス。両者の間をしばし沈黙が流れる。

「・・・まぁとにかく、僕はこの辺でおいとまさせていただきますよ。それでは」
沈黙を破り、半ば強制的に今夜の談笑には程遠い会話を打ち切ったのはゼロスだった。くるりと背を向けて、扉の方に歩いてゆく。その背中にレヴィアスは「また明日」と声をかけ、再び夜空を見上げて香りの高い果実酒を飲み始めた。