◆−番外編 蛇の誘惑 第六話−エーナ (2004/6/22 22:19:16) No.30263
 ┣第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第二話−エーナ (2004/6/22 22:20:14) No.30264
 ┃┗第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第三話−エーナ (2004/7/3 21:10:45) No.30341
 ┃ ┗Re:第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第三話−エーナ (2004/7/6 21:06:32) No.30374
 ┗番外編 蛇の誘惑 第七話−エーナ (2004/7/10 08:17:02) No.30401


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30263番外編 蛇の誘惑 第六話エーナ 2004/6/22 22:19:16



――リリス。
  彼女はアダムの最初の妻であり、イヴを蛇の姿でそそのかした悪魔であるという――



            蛇の誘惑   第六話



くすくすと、笑う。
静かに。ほの明るい木の枝の上で。
透明な羽を背中につけた黒い少女。
彼女はグレーのバイザーをつけ、何が楽しいのか、木の上に乗ったまま足をぶらぶらと動かしている。
しかし、そのバイザーは遮光用のものではない。
その裏には大量のデータが流れては消え、その少女はそのデータをもとに『世界』を構成しているのだ。
あまりにも大量の情報を処理する事ができるのは、その少女を除いてもただ一人だけ。
彼女は今、新しく生まれた『娘』の作り出す情報を構成し、『世界』を作り出している途中なのである。
・・・『娘』というのには語弊があるだろう。
何しろ、彼女自身の存在と根本的に違うのだから。
今まで手塩にかけてきたモノがごくまれに産む『子供』――それが今、少女にデータを送り続けるモノ。
生まれたばかりで、その『子供』はまだ『世界』の作り方を知らない。
だから少女が教えているのだ。遠くはなれた場所にいる『娘』に。
その、『娘』の名は。


――ラミア。


「――調子はどう?リリス」

木の下でカリカリと万年筆を扱っていた女性の手がふと止まり、木の上の妖精の姿をした少女に語り掛ける。
その表情はあでやか。きらめく金の瞳は非常に楽しげである。
自らの弟を除いて、他の追随を許さぬその美貌。
朱を引いたような唇。
雪のように白い肌。
ふっくらとした血色のよいほほ。
長い睫毛。
絹のような金の長い髪。
人としてありえない色をした瞳は、まるでレストランで料理を待つ客のようである。

「調子?それを私たち精神生命体に聞くのは少々無粋じゃありませんかぁ?」

リリスが鈴の音を転がしたような声でいたずらっぽく言う。
それを聞いて、美しい声で悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》はそれもそうね、と肩をすくめて見せた。
彼女の手元にある紙には、純白の灯火を生み出す樹木のことが書かれている。

【――紫蛍桜とは、神聖樹《フラグーン》のオリジナルで、更なる耐久力を持つ樹木である。
紫蛍桜は一定のポイントに植えられてから一般の木で言うところの樹齢1000年程度の大きさに一気に育ち、そこから成長が極端に遅くなる。
わずか1年で1000年の時を重ねた樹木のような風格を持ち、そして以後は1000年で数センチ成長するかしないかのスピードで成長し続ける。
粗悪なコピーである神聖樹《フラグーン》と同じく、負の感情やその塊である障気を吸って成長するが、逆に生の感情をも吸収する。
が、あくまでも『放出された感情・気』であってそれをもつ存在から直接吸い取るわけではない――間接的にはないとはいわないが――ので、通常の働きはコピーであるものと大して差はないだろう。
しかし、着目すべきは次の4つ。
ひとつは先ほども記述したとおりに成長が非常に奇妙だと言う事。
ひとつは神聖樹《フラグーン》の十数倍の耐久力、そして容量を持つ事。
この樹木の容量は、魔王の完全体のレベルの障気も容易に処理できる。
冥王《ヘルマスター》程度の障気にやられるようなやわなものではない。
次に、その樹木が成長体になる。すなわちおよそ一年ほど生長すると季節に関係なく紫がかった薄桃色の花がさき、夜には花粉が飛ぶ。
その花粉は暗い場所ではには常に発光し、非常に微弱な物理的な衝撃でもたやすく崩壊する。
ただし、長い間この樹木と同調してきた者ならば、触れるなどしても、故意にやらない限りそれなりに壊れにくくなるようだが。
そして最後に。
この樹木は前述の通り、一種の結界を張る事ができる。
その結界は、物質世界側《マテリアル・サイド》と精神世界側《アストラル・サイド》を貫き、その内部に内包するあらゆる物質・エネルギー・現象を支配する。・・・もっとも、それは普段は操作しようとはしていないので見えないが。
この結界を壊そうとするのならば、樹木本体か、結界を発生させる中継点を破壊せねばならない。
それほどまでに強制力があるものなのである。
そしてこの結界は『王国《マルクト》』と呼ばれ、中継点として使えるものを挙げるなら、次のセフィロトシリーズである。
大量に生産可能な『王冠《ケテル》』(これは常に『輪』であるが、サイズは限定されていない。一番最初に作られたのが王冠タイプだったのでこの名がつけられた)。
銀の大天使ミカエルが持つ『美《ティファレト》』。
大海の悪魔アシュタロスが持つ『基盤《イエソド》』。
蠅の王ベルゼバブの持つ『剛毅《ネツァク》』。
大罪の王ベリアルの持つ『栄光《ホド》』。
蛍妖精リリスの持つ『理解《ビナー》』。
監視者アスモデウスの持つ『知恵《コクマー》』・・・・・・・・・】

記述はそこで止まっている。
そこから先を書く気はしばらくないらしい。
どうやら、こちらに気がついているようである。

「・・・さっさと様子を見に行きなさい。アスモデウス。
『王国《マルクト》』以外の機械系はあんたが一番得意だから任せてるのよ?リリスはこっちにかかりっきりだし」

普通なら見えないはずのそのカメラに、金色の魔王は少々呆れたように視線を向ける。

〔――それは失礼いたしました。L様〕

私はカメラ目線で言い切った自らの上司に肩をすくめ、私は視点を切り替えた。






あとがき

L:こんの馬鹿者ぉぉぉぉぉーーーっ!!

――ごりゅげしぃっ!

エ:はごふっ・・・!い、いきなりバイオレンスな展開に・・・

L:ええいっ!シリーズを今やってる話で終わらせるってヤツが新キャラなんぞ出すんぢゃないっ!

エ:だって・・・出したかったんだもんっv

L:・・・・・・名古屋湾経由地獄行きのチケット発行しておくわ。

エ:なにゆえっ!?

L:んっんっん。胸に手を当てて御覧なさい。
  新しい裏設定もできちゃってる上にこれじゃあね・・・

エ:がふっ!?
  精霊魔法の短縮呪文の原理とかがあるのを何で知って・・・!?

L:・・・ふ。ルキに唱えさせたのがそもそもの間違いね。

エ:雷光《ライトニング・ヴォルト》なんぞ出すんじゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

L:ってわけで。Go to hellv(地獄に行きやがれv)

――ごぐぁぁぁぁぁぁぁぁあんっっ!!



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30264第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第二話エーナ 2004/6/22 22:20:14
記事番号30263へのコメント


A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜
               二章 第二話





「・・・・・・どうしたものかねぇ」

夜の帳はすでに落ち、光量を抑えた『明かり《ライティング》』が外灯の上から石畳を照らしている。
この街の魔導士協会評議長の決定・・・
タリムにそれのごたごたがうんぬんかんぬんと聞かされた後、こうやって街を歩いているわけである。

「あ、リナ。宿はそっちじゃないわよ」

ルキにぐいっと襟を引っ張られ、曲がろうとしたところであたしは立ち止まる。

「・・・記憶がはっきりしてようがしていなかろうがろれつが回らなくなるほど飲むもんじゃないわよ」

冷静にルキはあたしに言う。
くそう。何でルキはこんなに酒に強いんだ。けっこうアルコール度数が高いのを飲んでたはずなんだけど。

「らりよぉ、ルキらってけっこうのんれたじゃないろよ」

「あたしは鍛え方が違うのよ。
・・・・・・うちの父さん酔っ払うと真顔できつい酒勧めてくるから(おまけに次の日記憶飛んでる)・・・母さんも止めないし」

そ・・・そうなのか?普通未成年に親が飲ませるなんてしないんじゃ・・・
確かにうちの父ちゃんも酔っ払うと酒を勧めながら泣き出して(泣き上戸)すがり付いてくるから似たようなもんだけど・・・
・・・『真顔で』って言うのはちょっと。

「とにかく。ちゃんとついてきてよ」

「うぷぅ・・・」

あたしはルキの背中を目印に、その後をついて行く。
ほんの数歩歩いたところで、こつん、とその背中にぶつかった。
・・・屋根の上。月の光が人影の形に黒く切り取られている。
それが、二つ。

「・・・リナ」

「・・・わかっれるわよ」

「いや、そうじゃなくって。とりあえず問答無用で倒しちゃっていいかなー。なんて」

・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・ええっと。ひとつ言っておこう。
屋根の上にたたずむ二つの人影。そいつらは異様な空気を撒き散らし、こちらを見つめている。
で、だ。単刀直入すっぱりきっぱり言ってしまえば・・・あいつらは、魔族である。
それを『とりあえず』『問答無用で倒』す。
・・・・・・・・・ルキってどんな教育受けてきたんだろ。さぞかしむちゃくちゃな親なんだろーなー。(←あんただよ)

「タリムの客か・・・まさかあやつの仕事、受けたのではあるまいな・・・やめておけ。長生きをしたいのならばな・・・」

緑色の宝玉を、本来目のある部分に埋め込んだタイル仮面が言う。

「我らが言葉に耳を傾けるもよし、逆らうもまたよし。
何となれば、そは汝らの選んだ生き方なれば・・・」

今度は厳かなけっこう渋い声で白い悪魔《デモン》の仮面の魔族が言う。
あたしは当然ながら鼻で笑ってやった。

「あに言っれんろよっ!あらららちいろーろー言られるふりらりはらひらっ!」

迫力に押されて(だと思う)後退る二対の魔族。

「ええっと・・・『何言ってんのよ、あなたたちにどうこう言われる筋合いはないわ』って言ってるわ」

律儀にもルキが通訳する。
うるさいやい。

「それから、あたしとしては今ここで戦《や》ってもいいんだけど?」

そのあたしと同じ赤い瞳が挑戦的に輝く。
ルキの右手が太ももにつけられた幅が広い皮のリストをなでると、いつの間にか三本の両刃のナイフがその手に握られていた。
・・・っておい。んなもんそんなところに仕込んであったのかっ!?
そーいやルキが腰につけてるポーチ、あそこから干し肉やら瓶詰め他いろんな道具を出し入れしてたのを見たことがあったけど・・・
あ、そういや瓶詰めのサイズ、ポーチより大きかったような・・・
どうなってるんでせうか・・・?
けど燻製の魚はおいしかったなー。
・・・じゃなくて!いかんいかん。ルキ相手だとどんなヤツでも漫才師に早変わりするからな・・・
純魔族を目の前にしてもいまいち緊張感が欠けると言うかなんと言うか。

「・・・リナ・・・何考えてるわけ?」

思考がこっちから全然別方向に行ってしまったあたしにジト目をむけ、ルキはナイフを持ったまま言葉を投げかけた。

「ひあ、ひゅんまろくろはりはおひほーらるひっれれっはいへんらほほろっへ」

注訳:いや、純魔族をはり倒しそーなルキって絶対変だと思って。

「・・・・・・。あたし・・・そんなに変かしら・・・?」

微妙な表情をしてルキはつぶやく。
こらこら。自覚のないセリフをはくんじゃない。
魔王を蹴り倒してたのはどこの誰だ。
あ。向こうの約二名、屋根の上でしりとりしてら。

「すずめ」

「めだか」

「か・・・からす」

「カラスはさっき出たぞ」

「むぅっ・・・海草」

「・・・海蛇」

「瓶詰めはさっき言ったしな・・・ビラ」

「ら・・・ラク○ェル・カ○ール」

「む。作者が違う。それは『棄○プリ』だろう」

「くッ・・・!それでは・・・ラード」

「ドンペリ」

「り・・・理科」

「鎌」

うあ。終わりそうにねえ。

「ま・・・『ま』か」

かたっぽがうなってかんがえる。
つーかもうどっちがどっちかなんてもうどーでもいーし。
ものすんごくあほらし。

「王国《マルクト》」

なかなか止まらないその二人の奇妙な応酬に、ルキが言葉を挟む。
えーと・・・『まるくと』って一体何?

『え゛っ・・・?』

屋根の上にいる二人の声が重なる。
しかも心なしか・・・いや、あきらかに引きつった声である。

「樋。基盤《イエソド》。ドラ。ラッコ。知恵《コクマー》。薪《まき》。杵《きね》。
えーと、それから剛毅《ネツァク》。首。理解《ビナー》。なまもの。野良猫。籠手《こて》。美《ティファレト》。
トイレ。レンガ。崖。王冠《ケテル》。ルビーアイ。イブリース・・・」

意味不明の単語を途中に挟みつつ、ルキは言葉を次々につむぐ。

「き、貴様・・・何故そのようなことを・・・」

「墨。ミカエル。ルアー。アスモデウス。スリ。リリス。数学。くるぶし。しもべ。ベリアル。
ルンバ。ババ抜き。気功。海辺。ベルゼバブ。ブランド。道路。金色の魔王《ロード・オブ・ナイトメア》」

タイル仮面に言われても無視して次々に言葉をつないでいく。
・・・ってオイ。一番最後のって・・・!?

『んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!?』

二人同時に絶叫する。
やっぱり漫才師だ。こひつら。

「な、な、なんっ・・・!?なぜあの方々を知っているっ!?」

おーおー。完全に気が動転してる。

「や。一応関係者v
案外アスモデウスあたりあたしたちの事見てるんじゃない?
なんたって『監視者』なんだし。でもあいつ説教くさいのよねー」

せ、性格まで把握しているとは・・・・・・
しかもしみじみと語るかそれをっ!?

「と、ともかく、この件からは手を引けっ!判ったなっ!?」

半ばやけくそにも近い感じでセリフを残して去っていく。
うーむ。魔族って謎。ルキも謎。






あとがき

エ:お久しぶりです。(一ヶ月くらいたってるって)エーナです。万華鏡の英単語がわかったんで改題してみました。
  打ち終わった後に補足するとどーも抜けるんで、文を打ち込むのと同時進行で突っ込んでみます。
  えーとですね。まず一番目ですが。
  リナがどうしてそんなに酒が強いんだといわれ、ルキが『鍛え方が違う』といいましたが・・・

  ――大嘘です!

  皆さんだまされないでください。
  お酒を分解するのは肝臓ですが、実を言うとこれ、遺伝の要素が大きいんです。
  鍛えてどうにかなるもんじゃありません。
  次に、ギオ=ガイアとセイグラムのしりとり中に会ったラ○ウェル・カスー○。
  ・・・どなたかわかった方いらっしゃいますか?ってか書店に普通に並んでるし。
  ああ・・・本を買って小遣いが・・・!いやまあ作者の嘆きはそこら辺に捨てといて。

L:あんたも名古屋湾に捨てましょう。

エ:ぅひぃぃぃぃぃいっ!?みつかったぁぁぁぁぁぁぁっ!!(逃亡)

L:うあこらにげるなっ!

         ――幕(ぢつをいうとこの幕引いてるのはアスモデウスですv)――



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30341第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第三話エーナ 2004/7/3 21:10:45
記事番号30264へのコメント


「と、ともかく、この件からは手を引けっ!判ったなっ!?」

「・・・追いかけて叩きのめすのが一番楽な手かも」

すでに魔族が去った後で、ルキはぼそりとつぶやいた。
そりゃそうだけどさあ・・・
人間にはまず無理でしょ、それ。
・・・いや、ルキのことだからできたりして・・・空間転移とか・・・・・・
・・・・・・・・・深く突っ込まないほうがよさそう。





A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜
               二章 第三話





昨日出てきた『モノ』のことを考えれば、実にさわやかな朝。
あたしとルキは階下で軽い朝食取りつつ、あたしは話題を口にした。

「んで、昨日の魔族のことなんだけど・・・」

あたしが問うと、ルキはレタスを飲み込んで、

「人の形はしてたけど完全に『人間』に見えるような形はしてなかったわね。
下の上ってトコかしら」

「・・・『下の上』って・・・そのランクはどこで決まるわけよ」

ボイルされたにんじんを一口。んむ。素材の甘みがなかなかいける。

「そうね。大雑把に5つのランクに分けて見ましょうか。
あたしたちがさくさく倒す亜魔族は最下級。
あの二人?だか二匹だかは下級。
人間に見えるけど異質な気配振りまいてるのが中級。
それなりに気配を隠せるのが上級。腹心直属の一番弱い部下・・・覇王のトコのあたりがこれの上のほうに入るかしら。
その上に位置するのが高位魔族。腹心や魔王がこれに入るわね。
んで、それよりさらに上にいるのが・・・
・・・俗に『旧世界級《ロストバイブルレベル》』と呼ばれる金色の魔王《ロード・オブ・ナイトメア》とその直属の部下たち6人。
魔族と・・・あまり知られてないけど神族も極端なピラミッド型社会なのよ。
金色の魔王《ロード・オブ・ナイトメア》を頂点としてその下に魔王たちがいて、その下に腹心が・・・」

「ちょっとまった。
何で魔族のことにそんなに詳しいか云々はあんただからいいとして、金色の魔王《ロード・オブ・ナイトメア》には直属の部下がいるんでしょ?その下に赤目の魔王《ルビーアイ》や、その同列の異世界の魔王がいるんじゃないわけ?」

「ああ、金色の魔王《ロード・オブ・ナイトメア》の6人の部下たちはいわば私兵に近いから。
魔王たちの直接の上司じゃあないわ。ちなみに、魔王の数、一体何人いると思う?」

「・・・?世界が4つだから・・・4人でしょ?」

「はっずれー☆答は・・・ごめんあたしも数えた事ないや。とりあえず数十。下手すると百越えるかもねー」

「おいおいっ!」

気楽な口調ですさまじいセリフをさらりと言ってのける女魔剣士、ルキ。
・・・お・・・おそろしひ・・・

「それから世界の数はそれよりさらに多い百数十。
さっきの話の続きで、腹心の下には直属の部下・・・すなわち神官と将軍がいるわ。
冥王《ヘルマスター》はすでに滅んだけど二人。
海王《ディープシー》も二人。
獣王《グレータービースト》は一人。
覇王《ダイナスト》は五人。
魔竜王《カオスドラゴン》は二人。
これらの将軍・神官は位こそ同じものの力量はかなり違うわ。
獣王《グレータービースト》の部下である獣神官《プリースト》は覇王《ダイナスト》配下の神官・将軍クラスの五倍。
同じ量のエネルギーを5つに振るか1つに振るかの違いね。
命令系統がしっかりしてるのはその下までね。
後はもう所属なんかごちゃごちゃ!そんなだから最下級のデーモンもぽこぽこ人間に呼び出されてこき使われてるってわけ」

「御講義ありがとうございました・・・・・・で、どうする?」

「わかりきってるでしょ。というか、あたしが止めたってやめないでしょーが」

「あはは。ばれた?」

当然のことながら、あたしはこの仕事を引き受ける気になっていた。
魔族が出てきてひいたのなれば、天下のリナ=インバースの名がすたる!

「・・・んで、魔族用のちょっとした対策があるんだけど・・・」

「ふぅん・・・で、どんなの?」

「そのね、かくかくしかじか・・・」

「ぶっ!」

ルキがいたずらっぽく笑って言ったそのセリフに、あたしは思わずふきだした。








人。人。人。
天下の往来に人が詰まりに詰まってもーうんざり。
大通りから横道へと入ったのだが、ここにもかなりの人数がいる。

「・・・狭い。うっとーしい。歩きにくい・・・!
っだぁぁぁぁぁぁっっ!まとめて風魔咆裂弾《ボム・ディ・ウィン》で・・・」

ルキひくひくと額に青筋を浮き上がらせて叫ぶ。

「やめんかぁぁぁっ!」

――すぱぁん!

少々座った目つきのルキをスリッパではたくが、全く効かない。
・・・いや・・・確かに気持ちはわかるけどさ・・・

「じゃあ・・・すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 我が手に集いて煉・・・」

「なお悪いわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

――かこんっ!

今度はすりこぎ(木製)でどつきたおす。
街中で裂火球《バースト・フレア》何ぞ一体何考えとるんだ、こいつはっ!

「・・・いっそこいつらの存在を消しちゃえば・・・」

「真顔で恐ろしいセリフを吐くなぁぁぁぁっ!
あんたやりかねないからホントに怖いのよっっ!
次は玉子焼き用フライパン(小さめ)でどつくわよっ!?」

「・・・ちっ」

舌打ちするなっ!ひたすら怖いぞっ!!
・・・ある意味ナーガより危険かも・・・この性格パターン常人より逸脱しすぎてるし・・・・・・

「・・・?」

ふと。あたしのそばに現れた気配。
あたしは足を止め、そちらに振り向く。

「お願いです―――」

それは敵意でも殺意でもなかったが、あきらかにあたしのほうに向けられた意識。
夕日色の髪。白い服。そしてどこか悲しげな―――その視線と、声。

「この件にはかかわらないでください――」

「・・・え・・・?」

「リナ?」

ルキが声をかけてくる。

「いや、今――」

すでにそこにいない存在を探し、あちこちを見回す。
・・・あ、いた。
見ると彼女は離れた場所で、こちらに向かって一度お辞儀をして人ごみへとまぎれた。

「―――・・・・・・」

「・・・行っちゃったわね、ルキ。・・・ルキ?」

向こうの一点から視線を放さず黙すルキ。

「・・・・・・いや、なんでもないわ」

・・・・・・・・・あんたがそう言ってなんでもなかった時ってあったけ・・・・・・?










あとがき。

エ:どーもっ!忘れ去られてないかドキドキのエーナですっ!

L:・・・・・・・・・・・・。シャレになってないわよ・・・それ・・・・・・

エ:いえ。私がそうだってことはここのL様も・・・

L:お・・・おほほほほほほっ!ほほっ・・・ほほほ・・・・・・ほ・・・

エ:・・・・・・見栄はって高笑いを上げたけど、途中で悲しくなってきた?

L:う゛っ・・・・・・

エ:だいじょーぶvコンピューターのメモリーは覚えててくれてるからv

L:あんた・・・言ってて悲しくない・・・?

エ:悲しいです。それでは、ここらへんで失礼させていただきます・・・・・・

L:笑いつつも滂沱の涙・・・・・・苦労してるのね・・・・・・

エ:しくしくしくしく・・・


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30374Re:第四部 A KALEIDOSCOPE〜万華鏡〜 二章第三話エーナ 2004/7/6 21:06:32
記事番号30341へのコメント


・・・今日、この文をごらんになっている皆様方。エーナです。
ほんっっっとぉぉぉぉぉぉに、申し訳ないのですが、私の力ではこの第四部を終わらせる事ができそうにありません。
そこで、この第四部を改めて書き直したいと思います。
内容は本編の半分以上を切り捨てる事になりそうです。
本当に申し訳ありません。かさねがさねお詫びさせていただきます。


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30401番外編 蛇の誘惑 第七話エーナ 2004/7/10 08:17:02
記事番号30263へのコメント


――睡《ねぶ》りたもう、願いたもう。
  夢に現るるは精霊の女王の御言葉なりて、人間ありく我に告げるは精霊たちに捧ぐ呪《しゅ》と唄なれば。
  集うは力と命の輝き。精霊の女王の御名において、我らに妙《たえ》なる恵みを与えたもう――

            ――本家の血筋が絶えた精霊信仰の巫女たちが使ったテキストより抜粋。



「ねえねえお嬢さ」

ごぎゅげめしぃっ!

皆まで言わせず、剣の鞘と鉄扇がベルゼの頭にめり込んだ。
それをやったのは、当然ながらゼルガディスとベリアルの二人である。

「申し訳ない。連れが迷惑をかけたようだ」

全くの無表情で言い切り、軽く少女に頭を下げる。

「は、はあ・・・」

緑の髪の青年が赤い髪の青年を花屋の看板娘から引き剥がして、首根っこをつかんでずるずると引きずっていく。

「・・・ベルゼ。貴様も少しは自重しろ」

「無理だ。ゼルガディス殿。こいつは言って聞くようなやつではない、無駄な労力を使うだけだ」

こめかみを引きつらせるゼルガディスにベリアルは憮然とした声で言う。

「・・・それもそうか」

ベリアルの言葉に盛大にため息をついて嘆息する。
胃の辺りを押さえて疲れた表情を見せるゼルガディス。
胃潰瘍になりそうなのだろうか?
・・・・・・見てる分にはいいが、巻き込まれるほうにはたまったものではないな・・・

「納得すんなッ!」

不満げにベルゼバブは抗議するが、二人は全くの無視である。
呆れられるような行動ばかりを取っているからだ。自業自得だ。

「・・・全く・・・・・・ベリアルのほうはともかく、何でこいつと一緒にいなきゃならないんだ・・・・・・」

彼はどうやら、ベリアルたちといっしょに行く事になった経緯を思い出しているようだ。




            蛇の誘惑   第七話




だるまさんが。

「・・・・・・」

俺は、ぴたりと足を止める。
ここは街道。
あれからデーモンを一掃して、町を出て北へと向かう道を歩いている。
さすがに街を氷付けにしたのはまずかったと思い、逃げ・・・もとい、騒ぎになる前に立ち去ったのである。
再び歩き始め、不意に。

転んだっ!

ばっ!と振り向く。

がさっ!かさざざざざっ!

「・・・・・・(怒)」

道の脇の木々が揺れる音にいらいらする。
こめかみに青筋が幾本も浮き出てそのまま破裂しそうだ。
再び前を向き、一歩。
そしてすかさず振り向くっ!

「ぉわっ!」

赤い髪の男――確かベルゼバブと名乗っていた――が、茂みから出ようとしてすっころぶ。

「お・ま・え・な〜っ!!」

「うわわ俺が悪かったすまんゆるせっっ!」

もはや半泣き状態で平謝りするベルゼバブ。
だったら最初からつけてくるんじゃない!!

「で」

仁王立ちになり、腕を組んでベルゼバブを見下ろす。

「何でついて来るんだ?」

「え?ええっと・・・・・・・・・そうそう、なんとなく!」

・・・・・・その間とか『そうそう』とか『なんとなく』って何だッッ!
問い詰めたい衝動に駆られたが、かろうじてそれをとどめる。
指はわなわなと震え、ひたいには青筋がさらに追加された。
いっそこいつを葬り去ってしまおうか・・・などと危ない考えが頭をよぎる。
と言うか一瞬本気でそうしようと思い――

――ざわり。

背筋を通り抜ける悪寒に、一瞬で左右に飛び退る!
同時に十数本の氷の矢が大地を凍らせる。

「・・・崩霊裂《ラ・ティルト》!」

唱えていた呪文を茂みに中に放ち、いつもより強烈な青白い閃光が影――おそらくデーモン――を包み込み、塵となす。

「・・・ってオイ!そんな危ない呪文《モノ》を俺にぶっ放すつもりだったのかっ!?
人間に直撃したら死ぬぞっ!マジでッ!」

「ああ。殺す気だった。と言うか、おまえならあれ喰らっても死にそうにないが」

いけしゃあしゃあと俺は言い放つ。
茂みの中にまだいる気配を探りつつ、剣を抜く。

「何でだッ!!?」

「なんとなく」

「なんとなくで精霊魔法最強の呪文ぶっ放されてたまるかぁぁぁぁぁッッ!」

ベルゼバブはむやみに騒ぎ、頭をかきむしる。
全く。絶叫している暇があるのなら剣を抜けばいいのに。

まあ、それはそうとして。
デーモンを一掃するのにさしたる時間はかからなかった。
何故だと?それは簡単だ。
このベルゼバブが魔族、もしくはその親戚だったから、とでも言っておこう。
・・・短絡的に言ってしまえば大技をあたりにところかまわずぶっ放しまくったからなのだが。
おかげで当たりは一面焼け野原。
冗談や誇張抜きにこんなやつをほうっておいたらそのうち世界が滅ぶかもしれん。(←大正解)
どうやらこいつらは俺についてくる腹積もりらしい。
これで行く先々で破壊活動なんぞ起こされてみろ。胃が痛くなるばかりだ。その上こっちが指名手配されかねん。

とりあえず暴走しようとすればこうやって首根っこをつかんで引きずっていると言うわけなのだが。
・・・・・・サイラーグを目前にしてストレスで死ぬかもな・・・俺・・・・・・・・・笑えん・・・・・・










あとがき

エ:くあっ!?何とか収拾ついてきたしっ!

L:本人が驚きながら言うんじゃないっ!帰れお前わっ!

エ:いやここ自宅ですし。

L:くぅっ・・・エーナの癖に生意気な・・・このあたしの攻撃をかわすとはっ!

エ:いやもうどうでもいいですし。終わっていいですか?(逃)

L:いやちょっとまてこらああぁぁ・・・・・・(ドップラー効果)