◆−出逢い−ソニア (2004/6/20 21:02:47) No.30244
 ┣凄くいいです!!−TAX (2004/6/21 00:34:09) No.30246
 ┃┗ありがとうございます!−ソニア (2004/6/21 00:47:16) No.30247
 ┣Re:出逢い−chico (2004/6/22 15:21:21) No.30255
 ┃┗Re:出逢い−ソニア (2004/6/25 19:31:45) No.30289
 ┣Re:出逢い−エモーション (2004/6/22 20:56:18) No.30259
 ┃┗嬉しいです♪−ソニア (2004/6/25 19:33:42) No.30290
 ┣お初です★★−琴見奈々 (2004/6/23 21:29:15) No.30269
 ┃┗ありがとうございます♪−ソニア (2004/6/25 19:35:26) No.30291
 ┗出逢い・2−ソニア (2004/6/26 01:21:36) No.30294
  ┣一気に読ませていただきましたv−青月 かなた (2004/6/29 19:48:28) No.30314
  ┃┗有難うございます^^−ソニア (2004/7/2 21:56:50) No.30338
  ┣Re:出逢い・2−エモーション (2004/7/3 22:27:55) No.30344
  ┃┗恐縮です^^−ソニア (2004/7/4 06:21:07) No.30348
  ┗Re:出逢い・2−琴見奈々 (2004/7/4 21:40:59) No.30357
   ┗どうもです♪−ソニア (2004/7/5 23:31:36) No.30368


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30244出逢いソニア 2004/6/20 21:02:47


『出逢い』
・ ・・話は、3年前にさかのぼる・・・

「旅の傭兵の方とお見受けします」
商業都市として名を馳せるヴェゼンディ・シティのとある宿屋で、初老の厳格そうな剣士らしき男が発した言葉がそれだった。
「・・・」
問われた相手は黙々と進めていた食事を一旦止め、相手の方を向くと無言で短くコクリ、と首を縦に振った。正確には傭兵ではないのだが、そこをいちいち訂正するのはめんどくさいのでやめた。
「食事中失礼した。拙者、ゴルフィン=ユレイシアと申します」
そう言うとその男・・・ゴルフィンは深々と相手にお辞儀をした。
「見たところ・・・あなたも同業者みたいですけど・・・」
その相手・・・女性はゴルフィンに短い言葉を投げかけた。
「おっしゃるとおり、拙者も傭兵の端くれとして生活しております」
ゴルフィンはそう言うと重々しく顔を上げた。
「実は・・・お頼みしたい依頼があるのですが・・・」
「依頼内容は?」
女性はそれだけを言った。
「護衛です」
「報酬は?」
「金貨200枚」
女性はその報酬を聞いて少々瞳を開いた。ただの護衛のわりにはあまりに破格な値段である。
「なぜそんなに報酬が破格なんですか?そこを明らかにしてくれなければ引き受けかねます」
淡々としているが妙に威圧感のある口調に男は少々迷いながらも彼女の耳元に口を近づけた。
「その・・・依頼主がアサッシンに狙われているのです・・・既にあなた以前に受けた傭兵が何人か犠牲になっています。今までは辛くも撃退してきましたが、このままでは埒があきません。何とかしてアサッシンを亡き者にしたい。そのための報酬額なのです」
女性はそれを聞いてしばし考えたあと、ゴルフィンに向けて首を縦に頷いた。
「おぉ!それでは・・・」
「300枚ではいかがですか?何しろ命がかかる依頼ならばこれくらいの見返りはあって当然だとあなたの依頼主も納得してくれるはずですが・・・」
「・・・さすがですな・・・」
ゴルフィンは満足そうに微笑んだ。彼女は依頼主が商売人であることを考慮した。恐らくは最初の依頼額は商人根性逞しく自分の中でも低い設定額を設定するに違いない。つまり彼女は依頼額を吊り上げるとともに、自分の観察眼をそれとなく示したのである。ゴルフィンはそれに気づき、自分の選別眼が間違っていなかったことを知って満足したのだ。
「では早速、依頼主の場所に案内してください」
彼女はそう言うと音もなく立ち上がった。
「では早速・・・あ、あなたのお名前は何ですかな?」
彼女はゴルフィンを一瞥するとさしたる感情も見せずにその言葉を舌に乗せた。
「・・・ミリーナと言います」

その夜、一つの影がヴェゼンディの闇に降り立った。漆黒のマントにフード・・・しかし、そのフードの下からは鮮やかな赤髪がちらほらとたなびいていた。
「・・・たく・・・俺の出番かよ・・・」
フードの下から流れ出た声は意外に若い。チッと舌打ちすると、その影はすっと闇に溶け込んでいった・・・

「・・・ゴルフィン・・・わしは『強力な』傭兵を連れて来いと言ったのだが・・・」
依頼主・・・この町の豪商の一人、タジム=ウィルソンがミリーナを見るなり発した言葉がそれだった。
「いや・・・拙者の見るところ、彼女はかなりの使い手とお見受けします」
ゴルフィンはタジムに向かってはっきりとそう言った。タジムは尚も無表情なミリーナをジロジロと品定めする。
「タジムさん、俺は構いませんよ、美人が一人いたほうがこっちも張り切れますからね」
ゴルフィンの後ろに控えている5人の傭兵─彼らもミリーナと同じく、ゴルフィンに数日前にスカウトされた者達である─の一人、痩せ型の妙に卑屈な笑いを浮かべる男が、明らかにミリーナを馬鹿にした口調でそう言った。
「おいトリロア、お前だけいいカッコしようとしても無駄だぞ、彼女をものにするのは俺だからな」
トリロアの横に立っていたズングリした男がニヤニヤとミリーナに淫らな色を瞳に含ませてそう言った。それを合図に周りの男もザワザワと騒ぎ始める。
「ハッキリ言っておくが・・・」
ゴルフィンがジロリと五人を睨んだ。
「ワシの見たところ、お前たちの誰よりも、このミリーナ殿は強いぞ」
「何だとっ・・・!」
その言葉にズングリした男が気色ばんだ。他の男たちも瞬時に殺気立つ。
「冗談言っちゃいけませんよ・・・ゴルフィンさん・・・」
トリロアが殺気を含ませた笑みをゴルフィンに向ける。
「こんな色気の欠片もないガキより弱いなんて言われた日にゃ・・・」
トリロアがそう言った時・・・
ザッ!
不意にミリーナが前に飛び込んでタジムを押し倒した。がらにもなく少々頬を染めるタジム。しかしその瞬間、窓ガラスを突き破って飛び込んできたものがあった。咄嗟に重心をずらしてそれを避けるゴルフィン、しかし、ズングリした男にそこまでの敏捷性はなかったらしい。
「・・・ガ、ガヴァ・・・」
男が奇妙な声を上げる。その首には鋭利な刃物が生えていた。男が声を出すたびに口から血があふれ出す。全員が慌てふためく中、ミリーナは咄嗟に窓から飛び出した。瞬間、
『ファイヤー・ボール!』
「フリーズ・ブリッド!」
闇夜に浮かんでいる影とミリーナの声が交錯した。影が放ったファイヤー・ボールとミリーナの放ったフリーズ・ブリッドが衝突し、激しい煙とともに消滅した。
『へぇ・・・』
影の口から驚嘆したような声が上がる。この二つの呪文が相互干渉することを知っているということは、かなりの魔道知識があるということだからだ。
『俺の本当の目的はナイフじゃなく、その後のファイヤー・ボール、それを見越してフリーズ・ブリッドとは・・・姉ちゃん、やるねぇ』
「アサッシンにほめられても嬉しくないわ」
砂をはたきながらミリーナは立ち上がった。
『ハッキリ言うね』
フードの男は苦笑気味な色を声に混じらせる。
『まぁいいや、悪いけどどいてくんないかい?ちょっと野暮用があってね』
「こっちも野暮用があるのよ。どうやら貴方に関係してるみたい」
『へぇ・・・あんたみたいな美人にそぅ言われんなんて光栄だな。でもな・・・』
男は音も立てずに地面に降り立った。
『そこを曲げてどいてくれよ。フードを脱ぎたいんだが、顔を見られた相手は全員殺さなきゃなんないからな、あんたは殺したくないんだよ。出来たら今度街中ででもデートに誘いたいしな』
人を殺す・・・ルーティンワークのようかのようにあっけらかんとその男は言う。
「残念だけど無理ね、人間が出来てるとは言わないけど、私も依頼内容くらいは守る義務があるわ。あなたと同じにね」
そう言うとミリーナは腰元からソードを抜き放った。
『・・・チッ、今日は日が悪いや。てか、作戦が失敗した時点で帰ればよかったんだよな』
ブワッ!
その瞬間、男の周りから漆黒の闇があふれ出した。ミリーナの目が闇に慣れたころには、男の姿は影も形もなくなっていた。ようやく飛び出してきた男たちの喧騒を聞きながら、ミリーナは静かにソードをしまった。

フードの男が闇に紛れて音もなく走っている。息ももらしていないが、その足並みは異様な速さを誇っていた。
「あなたと同じ・・・か」
男の口から、不意にミリーナに言われた一言が飛び出る。
「俺と同じ・・・か」
男はその言葉を、何度も何度も繰り返していた。
                              (続く)

初めまして!ソニアと言います^^多分男の正体はバレバレだと思いますがw頑張って書きたいと思いますのでよろしくお願いいたします♪

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30246凄くいいです!!TAX URL2004/6/21 00:34:09
記事番号30244へのコメント

初めまして。
TAXと申します。
出会い、拝読させていただきました。
なんというか・・・凄くいいです!わたしはもともとゼルアメで、アニメよ
りなものですから、あまりルクミリは注目したことがなくて。
でも、この作品ですごく印象が変わりました。
彼らは元からパーティを組んでいたので、わたしの中ではある意味不動のCP
で・・・でも、こうやって彼らにも出会いがあったんだなと思うと、目から鱗
が飛び出るようでした。
すごくルーク=いい男、哀愁漂うようないい男という感じで、ミリーナも凛と
していてカッコいいです。いい女って、多くを語らないんだな、とか思ってみ
たりして。
あああっ(汗)
乱雑な文になってしまい、本当にすみません。

とにかく、こんな作品に出会えてすごく嬉しいです。

これからも、頑張ってください。
続き、本当に本当に、楽しみにしています。

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30247ありがとうございます!ソニア 2004/6/21 00:47:16
記事番号30246へのコメント

何だか、そこまで言ってもらえて本当に嬉しいです☆私は彼らの別れが余りに悲しかったので、彼にとって、きっと人生の中で一番素敵な出逢いを書きたいなと思っていました。それをこんな風に言って頂けて本当に幸せです^^頑張って書きますので、よろしくお願いしますね♪

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30255Re:出逢いchico 2004/6/22 15:21:21
記事番号30244へのコメント

ソニア様
こちらでは初めまして、でしょうか^^;
久しぶりにこちらに遊びに来たら、ソニア様のお名前が!!
ソニア様の文章ではいつも勉強させていただいてます。続きが楽しみです。

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30289Re:出逢いソニア 2004/6/25 19:31:45
記事番号30255へのコメント

ありがとうございます^^楽しみにしてくださってとてもうれしいです♪

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30259Re:出逢いエモーション E-mail 2004/6/22 20:56:18
記事番号30244へのコメント

はじめまして。

ルーク、ミリーナの出会いのお話ですね。
まず読ませていただいて、「護衛として雇われたミリーナと、そこへ暗殺者として
やって来るルーク」の図式に、ああ、先越された(笑)という気分が(笑)
それ以上に原作の14巻を読んで、想像してた出会いの図式だったのと、
「ルークはミリーナと会う前は、割合シリアスで「命」に対する認識は他人のものだろうと、
自分のものだろうと、かなり薄かった。下手すれば無かったんじゃないか?」
と思っていたので、同じ事を考える方がいらしたんだなと、この後の展開が
楽しみになっています。
……何せ、私が書いても、ここまで自然な二人の会話のやりとりと、展開には
ならない自信に満ちあふれてますし(^_^;) (書くとしても当分後になるでしょうし、
多分お間抜けな出会いになる可能性大)

ファースト・コンタクトで、ふとミリーナの言葉に何かを感じたらしいルーク。
この事が、彼にどんな影響を与えていくのでしょうか。
続きを楽しみにしています。
それでは、この辺で失礼いたします。

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30290嬉しいです♪ソニア 2004/6/25 19:33:42
記事番号30259へのコメント

誰もが考えそうな出逢いなんですが、やっぱり二人の出逢いはこんな感じなのかなぁって思ってました☆これからどうなるのか、ご期待を裏切らないようにがんばります!

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30269お初です★★琴見奈々 E-mail 2004/6/23 21:29:15
記事番号30244へのコメント


初めまして、ソニアさん(><)
琴見奈々といいます、これからよろしくですー。

出会い、むっちゃツボついてます!!!
そうそうそう!!こんな出会いを希望です!!

>「では早速・・・あ、あなたのお名前は何ですかな?」
>彼女はゴルフィンを一瞥するとさしたる感情も見せずにその言葉を舌に乗せた。
>「・・・ミリーナと言います」
とかいいながら、私はここで名前が出るまでこの人をリナだと思ってました;;;
傭兵だって言ってるのに……

>その夜、一つの影がヴェゼンディの闇に降り立った。漆黒のマントにフード・・・しかし、そのフードの下からは鮮やかな赤髪がちらほらとたなびいていた。
ヴェゼンディなところがまたvv

>「・・・たく・・・俺の出番かよ・・・」
>フードの下から流れ出た声は意外に若い。チッと舌打ちすると、その影はすっと闇に溶け込んでい
ああ、彼ですねえ♪♪彼ですねえ♪♪

>「あなたと同じ・・・か」
>男の口から、不意にミリーナに言われた一言が飛び出る。
>「俺と同じ・・・か」
>男はその言葉を、何度も何度も繰り返していた。
出逢ったその時から感じるものはあったんですね、お互いに。
先がすごく気になりますvvがんばってください★

自分感想書くの下手なので意味不なことばっか言ってごめんなさい↓↓

ではではー。。

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30291ありがとうございます♪ソニア 2004/6/25 19:35:26
記事番号30269へのコメント

ヴェゼンディは私が好きなズーマの町だったのでw舞台はここにしたいなって思いました☆ルークの、ミリーナのイメージを壊さないよう、頑張って書きますのでよろしくお願いします^^

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30294出逢い・2ソニア 2004/6/26 01:21:36
記事番号30244へのコメント

「よぉ、姉ちゃん、一人でノホホンと朝食かい?」
タジムの屋敷から少し離れた定食屋で簡単な朝食を取っていたミリーナに声をかけてきたのは、あの卑屈な笑いを浮かべるトリロアだった。
「ローテーションで私を夜の警備に回したのはあなた方です」
ミリーナはトリロアの目も見ずにモクモクとサラダをつまみながらそう言った。

「ワシとミリーナ殿はタジム殿を常に警備する。トリロア達四人はローテーションで屋敷の警備に当たってくれ」
「ちょっと待ってくださいよゴルフィンさん」
ゴルフィンの言葉に繋ぐようにすかさずトリロアが言った。
「昨日連れてきたような女にそんな重要な役回りやらせんのはちょっと軽率じゃないんですか?」
「・・・この町に来たのがおぬしが先なだけだった、それだけのことだ。昨日今日来ようが実力のある者につかせるのが当然であろうが」
ゴルフィンはじろりとトリロアをにらんだ。
「そうは言ってもね・・・タジムさんだって若い女と年老いたじぃさんのコンビじゃ不安でしょ?」
トリロアが得意の卑屈な笑いを浮かべながらタジムの方を見る。タジムはしばらく考えたように目を閉じた後、重々しく口を開いた。
「ゴルフィンはワシの後についてきてくれ。他の者はローテーション性で交代でわしについてくるのだ」

「何だよ、さっきのこと根に持ってんのかい?」
断りもなくトリロアはミリーナの前の席に座った。
「言っとくけどな、昨日の晩のことはお前がタジムさんの近くにいたから助けられたってだけだ。あそこに俺がいても同じ結果だったぜ」
「そうですか」
ミリーナはトリロアの軽口も意に介さないようだ。その返事にトリロアの口元がヒクッと不愉快そうに歪んだ。
「昨日死んだグルガだって俺らの中じゃ下っ端の下もいいとこだ。俺らの実力があれくらいだなんて思うなよ」
「なら良かったです」
ミリーナは目の前にあるミルクティーを飲み、一息ついた後、トリロアの目も見ずに次の言葉を繋いだ。
「足手まといは少ないほうがいいですから」
「てめっ・・・!」
トリロアが殺気を膨らませて立ち上がった時だった。トリロアの目が不意に白目を向いたかと思うと、そのままその場に倒れこんだのだ。トリロアの後ろに、一つの影が佇んでいた。
「大丈夫かい?」
鮮やかな赤髪の青年がそこにいた。

「・・・」
「・・・あの・・・」
何も答えずに朝食を取り終えたミリーナに向かって、その青年は決まり悪げにおずおずと言葉を発した。
「何か?」
「いや・・・その・・・一応助けたりなんかしちゃったりした気もするんだけど・・・」
「そうでしたね、どうもありがとうございました、それでは」
そのまま静かに立ち上がり、ミリーナはすたすたと出口に向かっていく。ぽかんとしていた青年は、我に返って慌てて彼女の後を追いかけていった。

「ちょ、ちょっと待って!」
青年はミリーナの前に慌てて立ちふさがったが、露骨にいやそうな顔をするミリーナに口をつぐんだ。
「さっきから何なんですか?」
「いや・・・その・・・運命的な出逢いなんじゃない?俺ら・・・ハハ・・・」
必死に笑顔を作る青年にミリーナはあきれたような表情を浮かべた。
「月並みなサーガみたいな運命的な出逢いほど私の嫌いなシチュエーションはありません。それに・・・私の嫌いな赤髪の男性に出逢えたからって、運命なんてものは感じません」
「あ・・・そぅ・・・」
コテンパンに言われた青年はそう一言だけ言うのが精一杯だった。そのまま立ち去っていくミリーナの後姿を見ながら、青年は一人寂しそうにポツンと立っていた。

タジムの屋敷の一室をミリーナは与えられていた。やはり女性ということで、男性が一部屋に集められているのに対し、ゴルフィンの配慮によってミリーナだけ一人部屋になっていた。ミリーナがそこで身支度をしているとドアを軽くノックしてくるものがいた。
「ハイ」
ミリーナがそう言うと、ドアがゆっくりと開いた。ゴルフィンが相変わらずの愚直そうな顔つきで部屋をのぞいた。
「ミリーナ殿の番ですぞ」
ミリーナはそれを聞くと、スッとソードを腰にさしてドアに向かった。

「今日は来ると思いますかな?ミリーナ殿・・・」
「分かりません。私の仕事は推測することではなく、襲撃を想定して護衛をすることですから」
ゴルフィンの言葉にミリーナはそれだけ応えた。
「お若いのにしっかりなさってますな」
ゴルフィンの感心したような言葉にミリーナは彼の顔を見た。
「昨日思ったんですが・・・彼は以前来ていたアサッシンとは違うんじゃないんですか?」
「どういうことですかな?」
ゴルフィンはミリーナを見た。
「いえ・・・彼は私が配置されたことを知らなかったようですので」
「それはそうでしょう、拙者がミリーナ殿を見込んだのは昨日ですからな」
「というか、ゴルフィン達のことも口伝でしか聞いていないような反応だったんです。だからこそ、私が配置されてもさしたる驚きも見せなかった。実際の配置をその目で見てなかったからだと思うんです。仕事を引き継いだんじゃないでしょうか・・・?仲間から・・・」
「仲間・・・?」
ゴルフィンのその言葉にミリーナは小さく頷いた。
「もしかして・・・相手はアサッシンの集団なんじゃないですか?」
「アサッシン集団ですと!?」
「あくまで推測です、それなら何故集団で来ないのかも分かりませんし一人の相手に集団で動くのにも納得がいきません。でももしこれが当たってるとするなら・・・ことはタジムさん一人の護衛だけじゃすまないのかもしれません・・・」
目を見張るゴルフィンを尻目に、それっきりミリーナは言葉をつむぐことはなかった。

ふわ〜あ
タジム邸の見張り台に立つ男が大きなあくびをしていた。どうやらミリーナと同じ雇われの傭兵らしい。安心した・・・ミリーナじゃないなら、彼は何もためらうことはない。
ブワッ!
傭兵の周りに不意に闇が広がった。傭兵が驚きの声を上げようとした瞬間、彼のナイフが深々と傭兵の喉を切り裂いていた。

「・・・あれは何だ?」
タジムが喉が渇いたといって食堂に向かうのをついていったミリーナとゴルフィンの目に、大きな闇が目に映った。その闇はミリーナが剣の先につけたライティングの光さえ通さないようだった。
「気をつけてください」
ミリーナはすかさずタジムの前に立った。
「昨日のアサッシンが逃走手段に闇を使っていました」
「なに!?ではあの闇は罠か!?」
ゴルフィンもミリーナの横に並んでタジムの前に立ち塞がる。タジムは怯えたような声をあげると後ずさりをした。その瞬間、タジムのちょうど真上の天井が音を立てて崩れてきて影が飛び出してきた。ゴルフィンが驚いたような顔をしながらも、咄嗟にタジムを弾き飛ばすと自分の獲物である大斧を影に向けて振り上げる。影は真っ二つに断ち割られた。
「やった・・・!」
ゴルフィンの喜びは途中で止まった。ゴルフィンが断ち割ったのは、喉を大きく切り裂かれている傭兵だった。
「何!?」
ゴルフィンの驚愕の声が響く中、ミリーナは呪文を唱えながら駆け出した。ミリーナの目には、ゴルフィンに弾き飛ばされたタジムの前に佇む一つの影が映っていた。
『これは読めなかったみたいだな姉ちゃん』
この状況の中、フードの男にはどこか嬉しそうな色が含まれていた。ミリーナは無視して呪文を唱えている。
『どんな呪文でも、あんたの依頼主に当たっちゃうぜ、残念だったな』
そう言うと男はスラリとナイフを取り出した。
「ヒッ」
タジムが声にならない悲鳴を上げたとき、ミリーナの呪文が完成した。
「ディム・ウィン!」
ミリーナの産み出した魔力の風が、まともにタジムの背中に直撃した。
「ぎゃぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!」
風に押されてすさまじいスピードで迫ってくる中年親父の顔に、思わずフードの男は横に避けた。その瞬間、男に向けてミリーナが剣を振り下ろす。
「うぉっと!」
危うく男はミリーナの剣を受け止めるとその場を飛び退った。避けた先にいたゴルフィンの攻撃を避けると天井に開いた穴にその身を滑り込ませる。
「まさかディム・ウィンで依頼主をふっ飛ばしてくるとは思わなかったよ・・・こりゃホントに気を抜けない相手みたいだな・・・ますます惚れそうだぜ」
「アサッシンしてる限りかなわない恋よ」
ミリーナのその言葉に男は少し口をつぐんだ。
「・・・つまり・・・まだ脈はあるんだな・・・」
苦笑気味に言った男の周りに闇があふれ出し・・・闇が消えた後に、彼の姿はなくなっていた。
「また逃してしまったか・・・」
くやしそうなゴルフィンの言葉を耳にしながらミリーナは剣をしまった。奇妙なデジャ・ヴを感じながら彼女はタジムの元へと歩き出した。

男は木の上にいた。葉の間からあふれ出るかすかな月の光を浴びながら男は傷の手当をしていた。先ほどの剣の一撃を受け止め切れなかったらしい。
「・・・アサッシンしてる限り・・・か・・・」
男はミリーナの言葉を繰り返していた。ふと男は、そんな自分の行動に、奇妙なデジャ・ヴを感じていた。
                           (続く)

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30314一気に読ませていただきましたv青月 かなた 2004/6/29 19:48:28
記事番号30294へのコメント

 はじめまして、こんにちは。青月(せいづき)かなたと申します。以後よろしくお願いします。
 今日、このお話しを発見し、読ませていただきました。
 台詞の感じとか戦闘シーンとかすごく惹かれました。素敵です。ミリーナ大好き人間としては嬉しい限りです。
 
>「昨日死んだグルガだって俺らの中じゃ下っ端の下もいいとこだ。俺らの実力があれくらいだなんて思うなよ」
>「なら良かったです」
>ミリーナは目の前にあるミルクティーを飲み、一息ついた後、トリロアの目も見ずに次の言葉を繋いだ。
>「足手まといは少ないほうがいいですから」
このへんのやり取りなんてうっとりです。

>「大丈夫かい?」
>鮮やかな赤髪の青年がそこにいた。
パソコンの前でガッツポーズをとりました。
>「・・・あの・・・」
>何も答えずに朝食を取り終えたミリーナに向かって、その青年は決まり悪げにおずおずと言葉を発した。
>「何か?」
>「いや・・・その・・・一応助けたりなんかしちゃったりした気もするんだけど・・・」
>「そうでしたね、どうもありがとうございました、それでは」
>そのまま静かに立ち上がり、ミリーナはすたすたと出口に向かっていく。ぽかんとしていた青年は、我に返って慌てて彼女の後を追いかけていった。
このへタレっぷりとクールっぷっりの対比が良いです!
>「さっきから何なんですか?」
>「いや・・・その・・・運命的な出逢いなんじゃない?俺ら・・・ハハ・・・」
>必死に笑顔を作る青年にミリーナはあきれたような表情を浮かべた。
>「月並みなサーガみたいな運命的な出逢いほど私の嫌いなシチュエーションはありません。それに・・・私の嫌いな赤髪の男性に出逢えたからって、運命なんてものは感じません」
>「あ・・・そぅ・・・」
>コテンパンに言われた青年はそう一言だけ言うのが精一杯だった。そのまま立ち去っていくミリーナの後姿を見ながら、青年は一人寂しそうにポツンと立っていた。
本当におもしろいです。
会話のテンポというか、なんというか。生き生きしたやり取りですよねv
キャラそれぞれの味とか魅力とかも出ていて、素晴らしいです。

>男は木の上にいた。葉の間からあふれ出るかすかな月の光を浴びながら男は傷の手当をしていた。先ほどの剣の一撃を受け止め切れなかったらしい。
>「・・・アサッシンしてる限り・・・か・・・」
>男はミリーナの言葉を繰り返していた。ふと男は、そんな自分の行動に、奇妙なデジャ・ヴを感じていた。
これまた次回への期待が膨らむラストで…vv 楽しみです♪

本当に楽しませていただきました。それでは、また何時か。

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30338有難うございます^^ソニア 2004/7/2 21:56:50
記事番号30314へのコメント

ファンの方のイメージを壊さないように頑張っているのでそう言っていただけるとほんと嬉しいです♪頑張りますね!

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30344Re:出逢い・2エモーション E-mail 2004/7/3 22:27:55
記事番号30294へのコメント

こんばんは。

ひたすらクールなミリーナと、正体を隠して素顔でアプローチを試みるルーク。
昼間の場面は、原作でのリナたちが知っているルークとミリーナの基本のノリが、
ちゃんとありますね。
尚かつ、それでもしっかり「まだ仲間でも何でもない他人同士」でしかないのも、
きちんと分かります。ミリーナのような、親しい相手でも割合クールな対応をする人物ですと、
この加減がほんとに難しいと思います。その点が上手いなと思いました。
そしてアサッシンと護衛としての手合わせ、第二ラウンド。
あくまで冷静に状況判断をして対応するミリーナと、ますますミリーナと戦う、
関わるのが楽しくなっているように思えるルーク。
対ミリーナの時と、そうでない時の差で、それがよく分かります。
アサッシンとしてミリーナと会うたびに、彼女の言葉の一言が心に残っていくルーク。
これからどうなっていくのか、楽しみにしています。
それでは、今日はこの辺で失礼します。

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30348恐縮です^^ソニア 2004/7/4 06:21:07
記事番号30344へのコメント

エモーションさんのコメントは、とても丁寧に書いてくださっていて凄いなって思います☆個人的にはこんなに他人の評価が上手なエモーションさんの小説見たいなって思いました♪

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30357Re:出逢い・2琴見奈々 E-mail 2004/7/4 21:40:59
記事番号30294へのコメント

二度目まして〜(><)またまたステキに展開中♪♪

素でミリーナに会うルーク。
顔が知られたらまずい関係なのに、会いにいっちゃうとこがもお既に惹かれてますね。でも今はまだ、そういうスリルを楽しんでいるのかなって感じもします。

アサッシンのルークは相手がミリーナじゃなかったら、平然と人も殺すし、その遺体で罠もはる。
その二面性が恐いぐらい出てると思いました。
このときの彼は命をとても薄っぺらいものだと定義してるみたいですね。原作で人体実験にされた人たちを見て激怒する場面がありましたが、そこまで変わるのはやっぱりミリーナの存在があったからなんでしょうね。
これからの変化が楽しみですvv

ソニアさんの小説は戦闘シーンにすごく動きがあってカッコよいです♪♪
アサッシン集団…なにやら敵方の様子も普通ではすまなくて。
ますます気になります!!

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30368どうもです♪ソニア 2004/7/5 23:31:36
記事番号30357へのコメント

二度目ましてっていいですねw琴見さんの期待を裏切らないように頑張ってますのでよろしくお願いします♪