◆−日溜まり(ゼルアメ)−たま (2004/6/2 09:38:33) No.30124
 ┣Re:日溜まり(ゼルアメ)−TAX (2004/6/4 16:44:41) No.30130
 ┃┗は、初のレスですよ〜−たま (2004/6/4 21:07:31) No.30131
 ┃ ┗Re:は、初のレスですよ〜−TAX (2004/6/5 00:21:41) No.30135
 ┣2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)−たま (2004/6/6 17:57:29) No.30156
 ┃┗2-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)−たま (2004/6/7 10:25:23) No.30159
 ┃ ┗Re:2-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)−TAX (2004/6/8 00:25:12) No.30169
 ┃  ┗Re:2-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)−たま (2004/6/8 03:03:25) No.30171
 ┣3. 『夢の跡地』next最終話(ゼルアメ)−たま (2004/6/9 09:38:03) No.30181
 ┣4. 『コイダトカアイダトカイウノカモシレナイ』next最終話(ゼルアメ)−たま (2004/6/9 11:55:54) No.30182
 ┃┣Re:4. 『コイダトカアイダトカイウノカモシレナイ』next最終話(ゼルアメ)−TAX (2004/6/11 10:48:23) No.30187
 ┃┃┗実はまだまだ・・・−たま (2004/6/12 01:16:18) No.30194
 ┃┗始めまして。−くーねる (2004/6/11 11:44:47) No.30188
 ┃ ┗こ・・こちらこそ///−たま (2004/6/12 02:21:57) No.30195
 ┣5,『餞別』NEXT〜TRY(ゼルアメ)−たま (2004/6/13 07:18:41) No.30197
 ┃┗初めまして−じょぜ (2004/6/14 21:28:35) No.30209
 ┃ ┗ありがとうございます!−たま (2004/6/14 23:00:34) No.30211
 ┗6,『ふるえて眠れ』NEXT〜TRY(ゼルアメ)−たま (2004/6/15 03:38:27) No.30213


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30124日溜まり(ゼルアメ)たま 2004/6/2 09:38:33


皆さんはじめまして。たまといいます。
は・・・初投稿です・・。うああ緊張。

NEXT2,16話にこれでもかとゼルアメフィルターをかけ書き殴ってみました。
が。
タイトルにゼルアメといれてみたものの
むしろまだ始まってもいない?かもしれません。
それでも構わんと言う心優しい方は読んでやって下さい。
暇つぶしにでもなれば幸いです。
では
__________________________________

少年はよく笑うようになった。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

少年はよく話すようになった。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

少年は彼の助けになろうとした。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

だから少年は力を求めた。
しかし青年はもう微笑むことはなかった。


少女は笑う。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

少女は語る。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

少女は彼の助けになろうとする。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

そう信じて。


__________________________________

『日溜まり』---sideZ---


遠い遠い記憶。それは日溜まりの様に穏やかで。


誰も入ってくるなと閉ざしたはずの扉が何故か何の抵抗もなく開かれる。
そこには見たことのない青年が立っていた。
「寂しかったでしょう。」
一人で膝を抱えていた自分を抱き上げる大きな手。
優しい微笑み。開かれることの無い目。
「おじちゃん誰?」
泣き続けて枯れた声で少年は問う。
「わたしはレゾ。
 あなたのお爺ちゃんです。」
頭を埋めた肩はとても暖かかった。
「これからはわたしが傍にいますよ。
 ゼルガディス。」
その声は、微笑みは、いなくなった二人に似ていた。
「レゾ・・・おじいちゃん?」
「・・・レゾでいいですよ。お爺ちゃんはいりません。」
微笑みを苦笑に変えて青年は答える。
「さあ、いきましょうゼルガディス。
 お腹が空いているでしょう。暖かいスープを作ったんです。」
自分を降ろそうとする青年の首にしがみつく。
暖かさを、手放すのが恐かった。
「・・もう大丈夫ですよ。」
青年が開け放った扉から差し込む日射しが涙で滲んだ。

青年の傍は暖かかった。
癒された人々の笑顔、部下達の笑顔、
そして青年の微笑み。
笑顔に包まれたその場所は日溜まりのように穏やかだった。


しかしいつからか日溜まりは陰りはじめた。

少年はよく笑うようになった。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

少年はよく話すようになった。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

少年は彼の助けになろうとした。
そうすれば青年は微笑んでくれるから。

だから少年は力を求めた。
しかし青年はもう微笑むことはなかった。

遠い遠い記憶。それは日溜まりの様に穏やかで。

それ故に少年は再び扉を閉ざした。


「これは俺個人の問題だ。」
もはや誰を頼る事もなく
「お前らには関係ない。」
誰を傍に立たせることもない

扉は閉ざしたのだから


__________________________________

『日溜まり』---sideA---

初めて見たのはコピーレゾとの戦いの最中、
まるで別人のようなその微笑みは、とっても暖かくって
わたしもとっても幸せになれるんです。


「ゼルガディスさん・・・髪の毛ちゃんと生えてくるかしら?」
久しぶりに再会したゼルガディスさんは以前より険を増したように見えて、
だから励まそうとしたんですけど・・・。
「アメリア〜。そんな気にすんじゃないわよ。」
俯いてしまった私にリナさんが声をかけてくれる。
「でも、なんか傷つけちゃったみたいで・・・」
「ま〜。ゼルにとっちゃあの身体のことは、ね。・・・はぐっ・・・」
「・・・リナさん。今食べたの私のお肉・・・。」
いつのまにか二人とも食卓に戻ってます。
そういえばまだ食事の途中でした。
「あたし達にとってゼルはゼルってこと。あいつもわかってるわよ。
 ちょ〜っとからかいすぎたみたいだけどね〜。」
「そうですね・・。また笑ってくれるの見たかったんですけど。」
「なに?ゼルが笑うってニヤリとか・・そおいう・・・?」
「違います!もっとこう優しくてあったかくて・・
 こっちも笑顔になっちゃうようなやつです!」

・・・リナさん?・・・ガウリィさんも・・・
・・・何で固まってるんですか?
・・・わたし何か変なこと言いました?

「ゼルのそんな顔見たことある?がウリィ?」
骨つき肉を両手に問うリナさんに、
プルプルとスパゲティをくわえたまま首を横に振るガウリィさん。
「そうなんですか?なかなかいいんですよ〜あの笑顔!」
そう、思い出すだけで幸せになれるくらい・・
「でもなんか・・久しぶりにあったのに・・」
彼は笑ってくれそうにない。
「前より辛そうで・・」

また俯きそうになったわたしの頭に手が置かれて
くしゃくしゃと撫でられる。
「まっ、だからついてくんだろ?
 どーやったって一人じゃ笑えんからな。」
さすがわかってますねガウリィさん!
「そーです!私たち仲良し四人組の友情パワーで!!
 ゼルガディスさんに笑顔を取り戻すんです!!!
 これぞ正義の・・・何ですかリナさん?いいところなのに〜」
「・・・座れ・・・頼むから・・・
 視線がイタヒ・・・」
そ・・そういえばここ食堂でした・・・。




少女は笑う。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

少女は語る。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

少女は彼の力になろうとする。
そうすればまた青年は微笑んでくれる。

そう信じて。



アトラスシティで狂気に捕われた魔導師と戦い
セイルーンでは魔族と戦った。
妙な着ぐるみを着たり
さらに妙な歌を歌ったり・・・
様々な事件を乗り越え、
4人での旅も自然なものになった。

しかしクレアバイブルの手がかりを得ることはなく

青年の微笑みを再び見ることもなかった。

そして今

青年は独り難しい顔で考え込んで、
少女の手には金色のカップ。
少女はそれを青年に差し出す。
微笑みと共に

「はい、見たかったんでしょ。クレア・バイブルの手がかり」

驚いた顔をして
カップを手にした青年は

やっと微笑んだ。

そう、その笑顔が見たかったんです。

まるで別人のようなその微笑みは、とっても暖かくって
わたしもとっても幸せになれるんです。

だから、


__________________________________

『日溜まり』---no side---

「えへへ・・」
「さっきから何をにやけてるんだ。」
悪い冗談としか思えない落ちがついたブラスラケッツ大会の帰り道、
隣を歩くアメリアはことさら上機嫌だ。
いつもの事だと言えばそうなのだが、
さすがにここまで破顔している様を見ると問いかけてみたくなる。
「にっ・・にやけてますか・・?」
両手で赤くなった頬を押さえる。
「ああ。かなりな・・優勝したのがそんなに嬉しかったのか?」
「違いますよ!」
言って俺の前にまわって足をとめる。
「久しぶりに笑顔が見れたからです!
 ゼ・・ゼルガディスさんの・・・」
振り向かない彼女の表情は見えない。
「俺の笑顔だと?」
この肌になってから笑った記憶はないような気もするが・・・
つい顎に手をやり岩肌をなぞる。

「知らないんですか?やさしくってあったかくって
 幸せにしてくれるんです!」
唐突に振りかえった彼女の顔にはほんの少し前、
差し出されたカップと共に見たあの笑顔。

「だから、また笑って下さいね!」
言葉を置いて走り去った。




夕暮れの町は赤く染まり
残された青年は
いつの間にか失った笑顔と、
いつの間にか傍らにある笑顔を思う。


「はい、見たかったんでしょ。クレア・バイブルの手がかり」

そこに、日溜まりのような暖かさを感じて。

誰も入ってくるなと閉ざしたはずの扉が何故か何の抵抗もなく開かれる。

目の前で微笑んだ少女を見て、

遠い昔の日溜まりを思いだした。

そこはやはり暖かく・・・



__________________________________
ここまで読んで下さった方いるんでしょうか?
いたらもう平身低頭して感謝を・・・
数多の素敵な文章に触発されて初投稿に踏み切ったものの
よくもこれでゼルアメと言えたもんダとか
色々あるでしょうが・・・ホントニスイマセンデシタ。

まあ言い訳はこれくらいにして・・
私にとって16話がゼルアメのきっかけかなと思ったんです。
アメリアは恋心のような自分の気持ちに自覚はないし
ゼルのほうはアメリアを仲間としてしか見ていないような状態ですが
肉親の愛情を信じられないゼルにとってアメリアの
こういう無償の愛みたいな行動はきっと大きかったんではないか!
というゼルアメフィルターでした。

ああ、これからこの「投稿する」ってのを押さなきゃいけんのですね?
何故か指がプルプルしますが・・・
ガンバッテオシテミマス。
読んでいただいた方にもう一度感謝を・・・ではでは



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30130Re:日溜まり(ゼルアメ)TAX URL2004/6/4 16:44:41
記事番号30124へのコメント

ゼルアメゼルアメゼルアメ・・・(←怪しい)
アメリア、健気ですねぇ。
ゼルアメは、やっぱりよいです!
何がいいって?
あの二人って、お互いないものを補い合うって感じですよね。

ううみゅ。
ブラスラケッツの回は、わたしも好きでした。
後は、フィルさん暗殺事件編とかですかね?
なんとなく、あの辺りから、ゼルアメ、ガウリナがセットっぽくなったような気が・・・

何は、ともあれ、
温かい作品で癒されました!

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30131は、初のレスですよ〜たま 2004/6/4 21:07:31
記事番号30130へのコメント

TAXさんありがとうございます。
HPも見せていただきました!
お気に入りにゼルアメサイトがまた一つ!

>あの二人って、お互いないものを補い合うって感じですよね。
そんな二人が理想です。

>ブラスラケッツの回は、わたしも好きでした。
>後は、フィルさん暗殺事件編とかですかね?
絶叫してましたしね〜「アメリア〜!!」って。

>温かい作品で癒されました!
いやもうほんと・・・なんといっていいか・・・///
私もいろんなゼルアメ書きさんに癒されてるんで
この一言はうれしいです。むしろこのレスに癒されてる私。
いくら感謝してもしたりない・・

TAXさんの連載も続き楽しみにさせていただきます。
こんな新参者にレス下さってありがとうございました。
ではでは。

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30135Re:は、初のレスですよ〜TAX URL2004/6/5 00:21:41
記事番号30131へのコメント

たびたびすみません・・・(汗)
何気に、フィルさん暗殺編はもえもえなポイントがたくさんあると思うのです!
一瞬なんですが、「アメリア〜!!」んでもってフレアーアローの直後、証拠探しに行って、魔族がおそってくるじゃないですか?
そのとき、ゼルってばちゃっかりアメリア抱えて避けてるんですよ。
小説のネタ探しにDVD見てたら判明!

HP見ていただいたんですね☆
あんなどーしょーもないHPですが、楽しんでいただけたのなら幸いです!
ありがとうございます!

・・・こんなトコに書いていい事なのだろうか・・・?

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301562.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)たま 2004/6/6 17:57:29
記事番号30124へのコメント

調子にのって2度目の投稿。たまといいます。

今回はNEXT22〜23話にゼルアメフィルターをかけ・・・。
このままつらつらと流れを追ってみたいななどと考えだしております。
が。
あまりスレイらしくないような・・・

結構な駄文で、しかも今回途中までですが。
取りあえず投稿。
それでも構わんと言う心優しい方は読んでやって下さい。
暇つぶしにでもなれば幸いです。
では
__________________________________

月の美しい夜だったのを覚えている。
しかしとても眠れる気分ではなかった。

ドラゴンズピークでの戦いを終え、ふもとの宿で4人それぞれ部屋をとる。
しかしそこには金髪の剣士の姿はない・・・

『朧月の下で』ー1ー

とても眠れる気分ではなかった。

ゼルガディスはじっと天井を見上げる。
頭に上った血は引きそうにない。
様々な映像が浮かんでは消えていく。
「くそッ・・なんだって今さら・・・」
独りごちて枕元の酒を口に含む。
紛らわそうと流し込み続けたそれは意味を成さず。
最悪の気分を助長することしかできない。

空になった酒瓶を放り投げゼルガディスは身を起こした。
マントをはおり剣をはき宿を出る。
眠れぬ夜には剣を振るのがいい。
この体になる前からの癖だ。
御しきれぬ思いは沈めてしまえばいい。

宿の奥の林で、朧に霞んだ月がやけに大きく見えた。


ゼルガディスは独り剣を振るう。
無心で剣を突き、払い、振り降ろす。
月明かりを受け剣の軌跡が円の残滓を目に残す。
ただただ静かに。
彼は剣を振り続けた。

やがて朧月は雲に包まれ姿を隠す。

闇が濃さを増した林の中。
彼はそこに壮年の剣士を見る。
髭をたくわえた陽気な魔道師。
赤い衣。
浮かび、消えていく亡骸さえ残さず消えた者達の影。

圧倒的な力の前に。
何もできない自分の目の前で。

怒りを映し刃は乱れる。
しかし止める気すら起きず。
一心に振るい続ける。

捕われた金髪の剣士。
およそ似合わない、呆然とした表情を張り付かせた赤毛。

風のように自らに纏わりついた淀みを吹き飛ばした二人。

・・・代価は払ったはずだ・・・
忌わしい体の代わりに力を得たのではなかったか・・

飲み続けていた酒がまわっていくのを自覚する。

冷たくなっていく体。
疎みながらもいつの間にか
傍らに立つことを許しはじめていた。
暖かかった少女が冷たくなっていく。

・・・代価は払ったはずだ・・・
だのに何故まだ奪われるのか。
圧倒的な力の前に。
何もできない自分の目の前で。

浮かび、消えていく影。
もうたくさんだ・・・
振り払おうと彼は剣を振るう。

振り払えない影を。
振り払えない淀みを。
振り払おうと彼は独り剣を振るう。

__________________________________

『朧月の下で』ー2ー

とても眠れる気分ではなかった

アメリアはじっと朧月を見上げる。
月を見るのは好きだった。
しかし今日の月はどうにも不安にさせる。
朧に霞み形を無くしたそれは・・・
いつも与えてくれていた暖かさを無くしてしまったように感じる。

知らず魔竜王の言葉が反芻される。
「父さん・・・母さん。」
自らの信じるものの象徴のような二人を呼ぶ。

何故揺らいでしまったのか。
あの程度の言葉で。

聖王国で皆の笑顔を願い。
それを守る事。
暖かいそれを正義と呼び自分は愛してきた。

1人と皆を天秤にかけ、
傍らの人物を守ろうと願うことは悪なのだと。
魔竜王はそう言った。

何故揺らいでしまったのか。

冷たくなっていく体を思う。
両の手に張り付いた赤。
何度呼び掛けても答えず、
暖かかった青年が冷たくなっていく。

1人の笑顔と皆の笑顔を天秤にかけ、
傍らの人物の笑顔を願うことは悪なのだと。
魔竜王はそう言ったのだったか。

思考は惑い繰り返す。
確かだったものが形をなくし
不安をあおる。

「・・・散歩にでもいきますか。」
溜め息と共にアメリアは腰を上げる。



宿の奥の林で、朧に霞んだ月がやけに大きく見えた。

晴れない気分を押し込めるように、
上をむいてアメリアは歩く。


宿を出てほどなく、
唐突に辺りに静寂が訪れた。
「ま・・まさか魔族?」
身構えて辺りを伺う。
しかし魔族の結界とは質が違う気がした。
急に音が消えるのは結界に取り込まれる時と同様だが・・
首を巡らすアメリアの目に白い法衣が飛び込んできて
「・・・。」
アメリアは息を飲んだ。

朧月の下、剣を振るうゼルガディスは、とても美しく見えた。
振るう剣に淀みは無く。
残滓の描く軌跡が闇の中浮かび、消える。

その剣に迷いはなく、
とても、とても美しかった。
そう感じた。

何故あの人はこんなにも強くいられるのだろうか。

暗闇の中独り剣を振るい、
あのように迷いなく、強くある事が自分にできるのだろうか。

あの程度の言葉で・・・
迷い、悩む自分が、とても小さく感じられて。
知らず頬を涙がつたった。


やがて朧月は雲に包まれ姿を隠す。

伴い次第に軌跡は乱れる。

アメリアは体術こそ超一流に属するが
剣術に関しては素人だ。しかしその彼女にさえわかる明らかな乱れ。
ひたすらに剣を振るう。
何かを振払うように。
美しく円を描いた残滓は途切れ
彼の好む魔法のような赤い光が刀身に纏わりついているように見えた。


そして一瞬垣間見たその表情に・・
「ゼルガディスさん!」
思わず声をあげていた。

彼が、泣いているように見えた。

-------------------続---------------------

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301592-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)たま 2004/6/7 10:25:23
記事番号30156へのコメント


『朧月の下で』ー3ー

「アメリアか・・・」
剣を振るう手を止め彼が問う。
「す・・・すいません。邪魔しちゃいましたか?
 月が綺麗なんで散歩してたんですけど・・・。」
顔を上げた彼は普段と変わり無く。
今見たものが幻だったような気にさせる。
「お前・・大丈夫なのか?」
唐突な問いかけ。
「何がですか?」
「ひどい顔だぞ。」
言われてはじめて涙が止まっていないことに気がついた。

「や・・・そんな言い方しなくても。」
慌てて涙を拭き
「デリカシーに欠けてます!」
指をさして言い放ってみる。
「俺にそんなものを求めるな。」
言いながら指した指を捕まれ降ろされる。
その顔はやはり普段と変わりがなかった。


木の下に並んで腰を降ろし、
再び顔をのぞかせはじめた月を見上げる。

「剣の練習ですか?」
まさか何故泣いていたかなどとは聞けず
当たり障りの無いような質問を投げる。
「眠れる気分ではなくてな・・・」
あっさりと答える少し掠れた声を訝しみ、
顔を向けるとほのかに漂う香に気付く。

「ゼルガディスさんひょっとして酔ってます?」
「悪いか。」
一睨みと共に短く答えそっぽを向いてしまう。
「・・・色々ありましたからね。」
つい先程までの、命をかけての戦いと奪われた仲間を思う。
「ああ。大変なのはこれからだろうが・・・」

答える声に平素の強さは感じられず。
何故だか朧げな彼が不安にさせる。
そっぽを向いたままの顔は伺う事ができない。

だからつい・・
「ゼルガディスさん?」
掌を重ね呼び掛けた。

びくりと体を震わせ目を見開いて重ねられた掌を凝視する。
ほんの少し前にあれほど強いと感じていた彼は
やはりひどく朧げに映り、
重ねた掌に知らず力がこもる。
「あの・・大丈夫ですか?」
「何が・・・」
掌を見つめ俯いたままのゼルガディスを見る。
「泣いてるように見えます・・・。」
口をついた言葉はとても言えないと思っていたものだった。
「俺は・・・」
ゼルガディスは顔を上げない。
続かない言葉をアメリアは待った。

「繰り返したくない。」
眠っているのかと思うほどの間を開け
紡がれた言葉は理解できないものだった。
「・・・何をですか?」
問いを投げても答えは返されず。
「それだけだ。」
続けられた言葉もまた理解できない。

しかし最後の言葉はいつもの通りの彼の声で。
やっと上げられた顔に浮かぶ表情は、
強い光を宿していた。

彼の行動が理解できないのはいつもの事だ。
しかし彼の言葉がこうあやふやな事は珍しい。

けれど、さっきまで朧に霞んで
冷たくなっていく体を思い出させた彼は今。
いつも与えてくれる暖かさをもっている。
それだけで十分だった。

自然と頬が緩む。
なんだかずいぶんと久しぶりに、
笑顔になれた気がした。

「・・・そういえば。」

頬と共に緩んだ心のせいか。
一つの問いが口をついた。

「何であの時庇ってくれたんですか?」

__________________________________

こいつの行動が理解の範疇を超えているのはいつもの事だ。
ぼろぼろの泣き顔で立っていようが
泣いているだのとわけのわからん問いをかけられようが。
いきなり手を握ってこようが
今また傍らで満面の笑みを浮かべていようが、だ。
別に驚きはしない。
・・・多分だが。

しかしそんな事を聞かれても。
正直答えに困る。

第一なんだってこいつがそんなことを聞くんだか
もともと勝手に庇ったのはそっちの方だ。
「なら・・・なぜあんたは俺を庇ったんだ?」
問いかけをそのまま返す。
「?」
思い当たらないといったように首をかしげる。
「サイラ−グでだ。」
「それは・・・守りたいと思ったからですよ?」
当然のように答える。
ほらな。やっぱり理解できん。
出会ったばかりの「怪しい」男を何故庇ったりするのか。
御得意の正義ってやつなんだろうが。

・・・しかし、守りたい・・か・・・

確かにさっきまで捕われていた闇の中には。
守れなかった者達と
守りたいと感じている者達がいた。

余計な荷物になると思っていた。
それを認めてしまう事は。

今までそういう思いを抱いた者は
誰1人生きちゃいない。

今回だって十分厄介な事になっている。

しかしそれでも自分は・・・
繰り返す事を望みはしない。

確かなのは守りたい人間がいるという事。

「それで十分だろう。」

アメリアが目を見開く。
その深い青からつい目を逸らす。

この理解できないお姫さまもやはり。
その中の1人だ。

そういえばこいつがいつだったか、
俺の笑顔が暖かいと言った事がある。
それも理解できん、
俺に言わせれば暖かいのはむしろ・・

傍らの少女が重ねた掌を見る・・・
掌を・・・・?

・・・・重ねていない・・・・

いつの間にか立ち上がったアメリアは
あさっての方向を見ながらぶつぶつ言ってやがる。
大抵こういう時は。
「そーですよね・・・それで十分なんですよ・・・」
「おい・・・アメリア?」
深夜にこれはまづい。
「守りたいってのは立派に正義です!
 もしそれでダメだって言うなら
 両方とも守っちゃえばいいんです!
 それでこそ正義ってもんです!・・・ぅぐぇ・・」
握りこぶしを作ったところでマントを強く引いて黙らせる。
振り向いた彼女はにかっと笑って言った。
「ありがとうございます!ゼルガディスさん!」
ほらな。やっぱり理解できん。
いつだってこいつはころころと表情を変え、
最後に笑うんだ。

全く理解できんしできるようになりたいとも思わんが・・・
まあ、悪くはないといったところか。
・・・・・・多分だが。

「何に対する礼だ?それは。」
まともな答えが帰ってくるとは思っちゃいない。
こいつが落ち込んでいるのに気付いてはいたが
今の会話のどこに立ち直る要素がある?
「いろいろです。
 私も色々迷うところはあったんですが!
 これでぐっすり寝られそうです!」
言い放って踵を返して走り去る。

「なんなんだかな・・・」
問いかける暇も与えず走り去った少女に対して独りごちて、
彼は木に頭を預け月を見上げる。

いつの間にか霞は去り、美しい月がそこにはあった。

何かを美しいなどと感じたのはずいぶんと久しぶりで、
だから。
月の美しい夜だったのを覚えている。

___________________________________________________________________
私がアメリアを書くと、
1、絶対に演説をする。
2、絶対に走り去る。
という事がわかった2度目の投稿、たまでした。

23話が好きなんです。アニメでも小説でも。
でもあの台詞を言うまでに二人なりに葛藤があったろうと。
そこに自家製フィルターをかけてみようと。
しかしこれはゼルアメフィルターなんだろうか?
言ってはいるけど結果どうよ・・・自分自身はそこで葛藤。

こんな奥深く?までおつきあいいただいた方いましたら。
もしいましたら。
ホントにありがとうございました。

そろそろちゃんとゼルアメだと胸をはって言える文が書きたし。


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30169Re:2-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)TAX URL2004/6/8 00:25:12
記事番号30159へのコメント

またまたTAXです!

たまさんの作品がゼルアメでなくて一体何なのですか!?
毎回、楽しみにさせていただいています☆

NEXTで、ガウが攫われる辺りから最終話にかけては、けっこうたくさ
んの方が書いていらっしゃいますよね。わたしは書いたことがありませんが。
いろいろな方が書いた作品を読んだ結果、ない頭ではあえてその部分を書く
勇気がありません(汗)

「朧月の下で」
タイトルからして、見た瞬間にページを開いてしまいましたよ!!
相変わらず静かな文章には、頭の下がる思いです。

きっと、アメリアはあの後よく眠れたでしょう。
けど、ゼルはどうだったのかな・・・なんて。アメリアがセイグラムにぶっ
た切られたあたりで、間違いなくゼルはアメリアに対する自分の変化に気が
ついたはずですから。だから、あの後よく泣きよく笑うアメリアの事が頭に
ちらついて、ついでに夢にまで出てきてくれたら本望です(←おいっ)

あああっ。
毎度毎度、意味のわからんコメントで失礼いたします(滝汗)

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30171Re:2-2.「朧月の下で」next22〜23(ゼルアメ)たま 2004/6/8 03:03:25
記事番号30169へのコメント

>またまたTAXです!
>たまさんの作品がゼルアメでなくて一体何なのですか!?
>毎回、楽しみにさせていただいています☆
って勿体無いお言葉を・・・。

というか毎回のレスほんとにありがとうございます。
レスって嬉しんですね〜(しみじみ)
小心者なんで日参状態のサイト様がたくさんあるのにも関わらず
2回しか書き込みした事無し・・・いかんなあ。

>NEXTで、ガウが攫われる辺りから最終話にかけては、けっこうたくさ
>んの方が書いていらっしゃいますよね。

そーなんですよね・・・。
わかってはいたんです。
ほんといい話たくさんあって、、、
ふう・・・。
この事は忘れよう!もしくは知らなかったと言いはってみるとか・・・?

>ついでに夢にまで出てきてくれたら本望です

本望です。
そんな話をいつか書いてみようと思い拳を握りつつこの辺で。
またふらっと投稿する予定なので見かけたら読んでやって下さい。
あったかいレスありがとうございました。


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301813. 『夢の跡地』next最終話(ゼルアメ)たま 2004/6/9 09:38:03
記事番号30124へのコメント

暖かな陽光が降り注ぎ、
水面は静かな表情をくずさない。
廃虚さえ光に包まれたそこは
ついさっきまでの戦いがまるで夢であったかのように
とても、とても穏やかだ。

ゼルガディスは独り廃虚の先に立ち、
木漏れ日を反射する水面を眺めていた。

『夢の跡地』

混沌から生還した二人は枕を並べて熟睡している。
戻ってきてすぐにお馴染みの夫婦漫才を展開した2人ではあったが
やはり疲労は相当なものがあったのだろう。
結局廃虚と化したサイラ−グの片隅で骨休めをしてから出発という事になった。

あの時。
とても信じられなかった。
少女が呼吸を止めた時。

名を呼びながら、何故か少女の笑顔だけを思っていた。
いつだってこいつはころころと表情を変え、
そうして最後に笑うんだ。
こんな最後なはずが無いと。
冷えきった体を抱え、もう一度少女が笑うのを馬鹿みたいに待った。
笑わない彼女を認める前に、体が動きだしていた。
認める事ができなかった。とても、信じられなかった。

振り返ると眠る二人に毛布をかけてやっていたアメリアがこちらに気付く。
満面の笑顔で手を振る彼女に笑みを返す。

結局自分には何もできなかった。
しかしそれで十分だと感じている。
あの夜、守りたいと思った物は、欠ける事なく傍らにある。
よく笑う少女も、風のような二人も。
それで十分だと感じている。

全てがとても暖かく感じた。
だからつい気が緩んだのかもしれない。

一歩踏み出し水面を覗き込んで息を飲む。
そこに映るのは異形の姿。
なぜだか、そこに人間が映ると思ってしまっていた。当然のように。
全てがとても暖かく感じていた。
それは遠い記憶の中の、人間だったころの暖かさ。
だからつい気が緩んだんだ。
自らの業を忘れるほどに。

俺は水面に小石を放り込む。
小石は波紋を生み、異形をかき消した。


「隣よろしいですか?」
ふと声がかけられる。
「・・・・シルフィール。」
サイラ−グの巫女は微笑んで傍らに腰を降ろす。
かつてこの街を魔の手から救おうと戦った二人。
赤法師の狂気の代償を肩代わりするはめになったこの不運な街は、
再び廃虚と化した身をさらしている。
「綺麗ですね。」
シルフィールの顔に浮かぶのは影の無い笑み。
今回一番辛い思いをしたのは彼女かもしれない。
残酷な形での肉親との再開。
愛した街を、人を、思いを踏みにじるようなフィブリゾの凶行。
しかし傍らで笑みを浮かべる彼女は恨みや怒りを感じさせない。
訝しみながらも腰を降ろし彼女の表情を伺う。

「お父様を最後に見たのは、あの時だったんです。」
コピーレゾに狂わされ、ウィゼアと共に立ちふさがった男は、
血走った目で実の娘に刃を向けた。
森へと逃げる最中、蒼白なままで涙をこらえていた彼女が頭をよぎる。
「だから、たとえ死人だとしても、最後に笑顔が見れて、
 抱きしめてもらえて・・・」

「幸せだったんです。きっと。」

「そうか・・・。」
彼女が何故笑うのか、笑わなければいけないのか。
朧げながら自分にはわかる気がする。
しかし口をつくのは愛想の無い相づちだけ。
「ふふ、誰かに話を聞いていただきたかったんです。
 すいませんでした。」
すいませんか・・。
確かにただ話したい時ってのは自分のように、
ただ聞くだけって相手がいいんだろうな。
苦笑を返して視線を戻し、しばし目の前の景色を見遣る。

それにしても・・・最初に会った時。
レゾに近づく手段として目をつけた彼女の部屋で、
大きな力の奔流に怯え肩を震わせていた事を思い出す。

「あんたは、強くなったな・・・」
自然ともらした言葉に、シルフィールは再び笑みを返す。
「無くてもいい強さだとは思いますけどね。」
しかし、浮かぶのは寂し気な笑み。
「何かを失って得る強さなんて。」

立ち上がったシルフィールは振り返って言う。
「ゼルガディスさんは無くさないで下さいね。」


彼は照れたような、困ったような表情を浮かべる。

最初に会った時。
レゾの影を恐れるばかりだった私の部屋で、
戦えと言った。
守りたい物があるならば戦えと。

冷たい目をして闇を纏った男。
氷のような目と凍えるような声音でレゾの暗殺を持ちかけてきた。

笑みを浮かべる事など想像もさせる事の無かった男が、
今は穏やかな表情でいる。

その理由が私にはわかります。
たった1人で立っていた男の横で
クルクルと表情を変える小さな存在が。
あなたにこんな表情をさせるのでしょう?

無くさないで下さいね。あなたは。


シルフィールの視線の先に目をやると、
頬をパンパンにはらせたアメリアがこっちを睨んでいた。

シルフィールと顔を見合わせ吹き出して笑う。

手招きをすると転がるように走りよってきた。
入れ代わりに去ったシルフィールに会釈した後傍らに腰を降ろす。
膨れっ面はそのままに。

「何を怒ってるんだ?」
「別に!怒ってなんかいませんよ!」
ぷいと顔をそらす。
「なんだか知らんが機嫌をなおせ。」
くしゃくしゃと頭を撫でてやると、
ぶんと頭を振って手を振り払う。
「怒って無いですってば。」
今度は満面の笑顔で。

ほらな。
いつだってこいつはころころと表情を変え、
そうして最後に笑うんだ。

2度と見れないと思った笑顔は。
やはりとても暖かく。

俺は本当に久しぶりに、
声をあげて笑った。


暖かな陽光が降り注ぎ、
水面は静かな表情をくずさない。
廃虚さえ光に包まれたそこは
ついさっきまでの戦いがまるで夢であったかのように
とても、とても穏やかだ。

二人の笑い声は、軽やかに風に乗り、
夢の跡地に響き渡っていった。


__________________________________

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301824. 『コイダトカアイダトカイウノカモシレナイ』next最終話(ゼルアメ)たま 2004/6/9 11:55:54
記事番号30124へのコメント

私幸せだったんです。
ちょっぴり残念でしたけど。

暖かい腕の中で。
薄れていく意識の中で。
私を見つめるあなたがいて。
私幸せだったんです。

旅の途中何度も見たその表情。
あなたの顔はひどく辛そうで。
でも私が見たいのは。
暖かいあなたの笑顔。

だから私は下手な嘘をついて。
大丈夫ですと繰り返した。

今考えたら当然なんですけど。
あなたが微笑む事は無く。
ちょっぴり残念でした。

『コイダトカアイダトカイウノカモシレナイ』

仲睦まじく並んで眠るリナさんとガウリィさん。
微笑ましい二人に毛布をかける。
ついさっきまでの戦いがまるで夢であったかのように
とっても平和な昼下がり。

崩れた壁の先端に佇むゼルガディスさんに手を振る。
そして彼が笑う。
とても幸せな光景。
暖かい陽光に包まれて、ぽかぽかと。

でも目の前を綺麗な黒髪が掠め、
シルフィールさんがゼルガディスさんの傍に腰を降ろしてから。
なんだかお日さまが陰ってしまったような気がしているんです。


シルフィールさんは綺麗な人。
美しい長い髪も、知的な言葉も、優しい微笑みも。
どれも自分には無くて憧れる大人の女性。

それで、ちょっとだけあの人に似てるんです。
あの人は男だったけど。
シルフィールさんは大人の女性。

2つ並んだ後ろ姿はとてもお似合いで。
あの人はあんな女性が好きなのだろうと。
守りたくなるような美しい人。
そういえば初めて会った時もあの人が隣にいた・・・。

「私、何考えてるんでしょう・・・。」
ぶんぶんと頭を振って暗い思考を追い出す。

冥王は倒れ皆無事に帰ってきた。
これぞ正義の力ってやつです!
リナさんとガウリィさんもなんだかいい雰囲気だったし。
お日さまもあったかいし・・・。
そう、今は幸せな昼下がり。

幸せなはずなんです。

けれど、ゼルガディスさんがシルフィールさんに向けた笑顔を見て。
どうしようも無く胸が軋んだ。

暖かさをくれるはずの笑顔が何故だか遠く感じられて。
最後の瞬間に見たいと願った笑顔が、何故だか今は見たくも無い。

「私・・けっこう汚い人間なんですね・・・」
好きな人の笑顔すら憎らしく感じてしまう。
魔竜王に言われた言葉が蘇る。
私が悪だと言った。

・・あれ?・・・・

・・・・?・・・・好きな・・人?

自分の思考をたどって出てくる答え。

私は・・・ゼルガディスさんの事が・・

うああ・・・そんな・・・
顔に血が上る。

何故あれほど笑顔が見たいと思ったか。
何故あれほど幸せな気持ちになれたのか。
やっとわかったような気がして。


けれどあの人は別の人を見て微笑んでいる。
それが切なくて。
ゼルガディスさんがとても遠くに感じられて。

2人がこちらを見ているのに気付いても。
どんな顔をすればいいのかわからなかった。



それでも、ゼルガディスさんに手招きされて。
それがとても嬉しくて。
つい走りよってしまう。

「何を怒ってるんだ?」

「別に!怒ってなんかいませんよ!」
ぷいと顔をそらす。
これも私の下手な嘘。

「なんだか知らんが機嫌をなおせ。」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。
子供扱いされている気がして
ぶんと頭を振って手を振り払う。
「怒って無いですってば。」

それでもその手はあったかくって。
ゼルガディスさんの隣はとてもあったかくって。

つい笑顔を見せてしまう。

ゼルガディスさんが笑う。
私も笑う。

身勝手な私の幸せな昼下がり。


月の美しい夜に、目の前の人を守ろうと決意した。
それが汚くても、悪だと言われても。
この人の隣にいる事は、とても正しい事だと感じる。

ゼルガディスさんの肩に頭を預けて目を閉じる。

ここはとってもあったかい。

こういうのを、

恋だとか愛だとか言うのかもしれない。
__________________________________

駄文を連ねて四作目でございます。
徹夜明けのとろけた脳髄で書き上げたこのニ作。
いかがなもんでしょか?眠さに頼って甘い物を書こうと。
結果これはきっとゼルアメです!と言ってみる事ができるかもしれない。
(キヨミズノブタイカラトビオリルツモリデネ)

ええと、ここまで読んでくれた方。
ほんとにありがとうございます。
段々お礼のバリエーションも無くなってきましたが。
感謝の気持ちは変わりません。
ほんとここまで読んでくれた方がいたらもう・・・
すごいですよ?
ではでは。このへんで。

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30187Re:4. 『コイダトカアイダトカイウノカモシレナイ』next最終話(ゼルアメ)TAX URL2004/6/11 10:48:23
記事番号30182へのコメント

アメリア・・・可愛いです。
やばいくらい、可愛いです。
そんでもって、シルフィール!
今回のシルフィール、一押しです!!
原作ではそうでもなかったけど、アニメ版はシルフィールちょっと可愛すぎましたから、なんて言うかカッコいいシルフィールって感じで凄く良かったです!
シルフィールって、やっぱりいい女です。
アメリアが、ゼルとシルフィールとお似合いって思っても仕方がありません。
けど、ガウLOVEなシルフィールにはちょっと不本意かもしれませんね(笑)
ゼルアメって、すごく自分にコンプレックスをもってるカップルだと思うんです。ゼルはゼルでアメリアには相応しくないとか、アメリアはアメリアで子供過ぎて相手にしてもらえないとか、けど本人どうにかできる問題でもないし。
そんな雰囲気がすごく出ていて、ツボなシリーズでした。
ブラボーです!!

最終話という事で寂しい気もしますが、新作を楽しみにしてますね!
ってゆーか、書いて下さい!!
待ってます!!!

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30194実はまだまだ・・・たま 2004/6/12 01:16:18
記事番号30187へのコメント

ほんとに毎回ありがとうございます!
ノミの心臓を自負する私がここまで書いてられるのは
TAXさんのあったかいレスのおかげです。ほんとに。

>アメリア・・・可愛いです。
>やばいくらい、可愛いです。

てほんとですか〜。
アメリア書くのは毎回苦労するんでそう言っていただけると。

>今回のシルフィール、一押しです!!

ほんとにもう・・。
感謝の言葉もございません。
実はこの文シルの父に対する思いをガウリィに対する思いに変えても
成立するんですよね。
ガウリィの隣にはリナがいて。思いは実らなくても思った事は幸せだと。
本当はそんな思いはしたくは無いけど。
そこで笑えるシルフィールはやっぱり大人で。切ないなあと。

こ・・・こんなところで語りにはいってスイマセン。
>シルフィールって、やっぱりいい女です。て嬉しかったもので・・・///

>最終話という事で寂しい気もしますが、新作を楽しみにしてますね!
>ってゆーか、書いて下さい!!
>待ってます!!!

あ、あのですね・・実はまだまだこの流れ続ける気でおりましてですね・・
最終話ってのはnext何話目か調べるのをさぼったためでして・・・
紛らわしくってすいませんでした。
またおつきあいいただければ幸いです。

最初にも書きましたがもう一度。
毎回レス下さってほんとにありがとうございます。
レスが作品に繋がる私にとってほんとに救いです。うぅ。
ではでは。

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30188始めまして。くーねる E-mail URL2004/6/11 11:44:47
記事番号30182へのコメント

 始めまして、たまさん。くーねると申します。
 たまさんの作品を連続して読ませて頂き、あまりの文章の素晴らしさに今こうして画面に向かっております。

 たまさんの書かれる文章はとても自然で、すんなりと自分の中に入ってくる魔剣士と姫に幸せを感じています。
 アニメの二人と違和感が無い、と申しましょうか、まるで続きを読ませて頂いているような気がしてなりません。
 二人を良く理解していないと書けない文章ではないか、と一人愚考しておるのですが・・・本当にお素晴らしい!
 
 これからもたまさんの文章がたくさん読める事を祈っております。
 是非是非、頑張って下さい。
 ・・・・・・なにやら押し付けがましい感想になってしまいました・・・どうかご容赦下されば幸いです。
 本当に素晴らしい作品をありがとうございました。
 では失礼致します。
 

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30195こ・・こちらこそ///たま 2004/6/12 02:21:57
記事番号30188へのコメント

く−ねるさんはじめまして。

たまは非常に緊張しております。
何故って・・・。実は庵のほうにはこそこそと日参させていただいておりまして・・・。
そんな私に書くエネルギーを下さった方からレスなんて・・・。
嬉しいです。ありがとうございます。

非常に丁寧な文で誉めていただいて、
照れて引用もままなりません///
オリジナルのストーリーを作る才がないので
アニメを読み解くところから初めて見るかと書きはじめたので。
そう言っていただけて胸をなで下ろしています。

> これからもたまさんの文章がたくさん読める事を祈っております。
> 是非是非、頑張って下さい。
> ・・・・・・なにやら押し付けがましい感想になってしまいました・・・どうかご容赦下されば幸いです。
> 本当に素晴らしい作品をありがとうございました。

押し付けがましいなんてとんでもない!
レスによって生かされてる私には何よりの贈り物です。
こんな駄文でよろしかったらもう今からでも書きはじめますから!

なんというか舞い上がって失礼な文章になっていないか心配です・・・
・・ゆ・・許して下さい・・・。

レス下さって本当にありがとうございました。
書いてよかったなぁとしみじみと。
また読んでいただけたら幸せです。

ではでは。


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301975,『餞別』NEXT〜TRY(ゼルアメ)たま 2004/6/13 07:18:41
記事番号30124へのコメント

『餞別』 
     -1-

ここはゾアナ王国のはずれ。国境近くの宿場町である。

酒場の円卓を5人で囲み、
あたしはガウリィといつものように食事の争奪戦を展開していた。

そう、いつものように。

冥王が倒れ戻ってきた日常。

ここ何日かは
あたしにしては穏やかな旅である。
そこ!つっこまないように!
確かにそこらの盗賊団のアジトが軒並み塵と化したりしたのは事実だが。
それは乙女のロマンとゆーやつである!
う〜ん、なんて穏やかな日常!

あらかた食事をかたづけた頃
「新しい情報がはいってな・・・」
唐突にゼルが口を開いた。
自然あたし達の目はゼルに集まる。
「ここであんたらとはお別れだ。」

「な、なんでですか!」
アメリアが立ち上がって問う。
「あんたらはセイルーンに向かうんだろう?
 その情報ってのは逆方向だからな。」
コーヒーを片手にあっさりと言い放つ。
「そっか。」
・・・まあゼルがこう言い出すのは予想していた。
一度は見つけたクレアバイブルへの道は閉ざされ、
また当ての無い旅に戻る。
手がかりは今のあたし達には無い。
それに正直今回はあたし絡みでずいぶん寄り道をさせてしまったし。
彼が行くと言うならあたしは止められない。
ただ・・・
視線を立ったまま固まっているアメリアに移す。

「ま、縁があったらまた会う事もあるだろうさ。」
言ってゼルは席を立ち部屋に続く階段に向かう。

「・・しかた・・ないですよね・・・。」
俯いて呟くアメリアを残して。

その日は、月の見えない夜だった。
幾重にも重なった雲が空を覆い、
静寂に包まれたはずの森の中で

「ファイヤーボール!!」
あたしの一撃を受け自称ゾアナ最強の盗賊団の首領は宙を舞った。

あの後、珍しく立ち直りの遅いアメリアを寝かし付け、
やつあた・・・もといゼンリョウナシミンノアンゼンノタメ。
あたしは盗賊狩りにいそしんでいた。

しかしなかなか気分は晴れない。
あの日、冥王との戦いの後。
肩を寄せあって眠っていた2人を思い出す。
ゼルのあんな穏やかな寝顔は初めて見たし、
アメリアの気持ちにも・・・
あたしは何となく気付いている。
「あ〜あ・・なんかすっきりしない・・・」
最後の金塊を回収し、あたしは帰路につく。

しかたない。

ゼルには目的があって、
アメリアは帰りを待つ人がいる。
あのかたい男がそれを無視するとは思えない。

・・・はあ・・・
知らず溜め息がこぼれる。
・・・確か・・・山を越えたところにもいっこ盗賊団が・・
などと考えはじめた頃。

白い法衣姿が目の前に現われた。

「ゼル・・・あんた何してんのよ。」
知らず声が低くなる。
「急ぎの情報でな。」
・・・この男は・・・
「それで挨拶も無く行くつもり・・・?
 アメリアはどうすんのよ。」
必死で涙をこらえていたアメリアが浮かぶ。
「・・・。何故そこでアメリアが出てくる?」
さっと頭に血が上り胸ぐらを掴む。
「あんたとぼけんのもいいかげんにしなさいよ!
 アメリアがどんな・・・。」
その先の言葉はつげなかった。
ゼルの顔がさっきまでのアメリアとだぶって見えたのだ。
「どうした・・?吹っ飛ばされる覚悟でいたんだが。」
掴み掛かった腕を離しゼルに背を向ける。

何となく、わかってしまったのだ。
ゼルの気持ちが。
傍らで常に微笑んでくれる存在がどれだけ助けになるか。
あたしも今回思い知った。

「あんた勝手よね。やっぱり。」
「いまさらだな。どうにもならん。」

・・どうにもならん・・・か・・
「そりは性格?それともアメリア〜?」
背を向けたまま意地悪く問うてやる。
「くだらんな。」
あたしは振り返って、
肩を竦めるゼルに短剣を投げる。
盗賊から奪い・・コホン・・・回収?したものだ。
銀の柄に包まれたなかなかの業物。
「餞別よ。今回の戦利品。」
目を見開いた彼は・・・
「呪いとかかかって無いだろうな・・?」
真顔で言いやがった。
「やっぱり吹っ飛ばそうか?」
「ありがたくいただいとくよ。」
短剣を懐にしまう。
「売ったりするんじゃないわよ。」
「ああ。」
苦笑と共に答える。

「あんたらとの・・・旅は、悪くなかった。」
「言う相手間違ってるんじゃない・・?」
どこまでも素直じゃない奴。
でも、ま、悪くない、ってやつかな。
「アメリアに伝えとくわ、アメリアに。」
「頼む。」
珍しく素直に言った彼は。
そのまま踵を返した。
「ほんと、言う相手間違ってるわよ・・・。」
彼を見送って、あたしも帰路につく。

闇の中に消えていった彼の辿る道に、
光が指す日はきっとくる。

ま、どうしようもないとか仕方ないなんて。
あたしには似合わないしね。

     -2-

まどろみの中で私の思考はぐるぐるまわる。

いつかくる事はわかっていたんです。
もうそろそろだって事も。

でもちょっといきなり過ぎじゃないですか・・・
一緒に笑ってくれるようになって、
すこしだけれど距離が近くなったような気がして。

けれどまたあの人は1人で行ってしまう。
ゼルガディスさんには体を戻すって目的があって
私にはセイルーンで待っている人たちがいて。
いつまでも今のまま旅を続けることはできない。
それはわかっていたくせに。

いかないで下さいとも
連れていって下さいとも
何も言えなかった私には、何かを言う資格もない。

でも本当はそう言いたい。
みっともなくても、迷惑でも。
そばにいたい。
けれどゼルガディスさんはきっと困った顔をして。
あの笑顔を見せてくれる事はないのだろう。

身勝手な私は、ゼルガディスさんの事さえ後回しにするんでしょうか?
「いやだな・・・こんな私。」
まどろみの中私は呟く。
さっきまで頭を撫でてくれていたリナさんはいなくなっていた。
「明日は笑顔でお別れしなきゃ・・・」
私は眠りに落ちていく。


そして朝を迎えて、今私はゼルガディスさんの部屋の前。
また会えると彼は言った。
縁があるのを信じて。
今は笑顔で見送ろう。

いつものようにドアを開け、
いつものように挨拶をして、

笑顔で見送らなくちゃ・・・


深呼吸をしてドアを開ける。
「おはよ〜ございます!ゼルガディスさんっ!!」
目に映るのは空っぽの部屋。
・・・いない・・・?
まさか。
嫌な予感に捕われて階下の食堂に駆け降りる。
そこにも誰もいない・・・。

・・・行っちゃったんですね・・・

ゼルガディスさんは旅立つ時に
必要な物以外は持たない人。

机の隅にはきっともう読み終わったのだろう、
魔道書が几帳面に積まれていた。

いらない物は置いていく。
置いていかれた私は、
いらないもの。

私は座り込んで膝を抱える。
抱えた膝にぽたぽたと雫が落ちた。

もう一度笑顔が見たかった。

名前を呼んで、名前を呼ばれて。
挨拶をして、挨拶を返されて。
彼に纏わりついて言葉を投げて、
鬱陶しそうな顔をしながらかまってくれて。
昨日まで、
当たり前のようにしていた事なのに。

もういない。

涙は止まらなかった。


「アメリア・・・」
いつの間に近付いていたのか真上からリナさんの声がしたけれど、
私は顔を上げる事ができずにいた。
「置いてかれちゃいました・・・」
絞り出したのはただの愚痴。
情けなくってまた涙が出る。
「あんたには帰る場所と、待っている人がいるわ。」
「わかってます・・。でも!別れの挨拶くらいさせてくれたっていいじゃないですか!
 笑顔で見送って・・・旅の無事をお祈りして・・・」
リナさんは優しく抱きしめてくれた。
「だからちゃんと戻ってくんのよ。」
「へぇ?」
「実はね・・・」


     -3-
「じゃ〜いってきます!」
旅支度を終えたアメリアは全開の笑顔で拳を握る。
「効果は一週間。ちゃんと見つけんのよ!」
「はい!」
「よろしい!」

昨夜、ゼルに背中を向けている間、
あたしはこっそりあの短剣に探査魔法の目印になるよう細工をしておいたのだ。
呪いじゃないわよ!
これはあたしからの餞別。

時間がないなら作ってしまえばいいだけだ。
少しくらいの寄り道ならセイルーンも許すだろう。

ま、どうしようもないとか仕方ないなんて。
あたしたちには、似合わないしね。

「一ヶ月以内には帰んのよ。フィルさんには上手く伝えとくから。」
「はい!必ず!ではみなさんもお元気で!」
言って走り去っていく背中を見ながら思う。

ゼルはきっと少しだけ怒るだろう。
けどあんな顔見せるくらいなら、荒療治ってのもたまにはいい。
それに、2人旅ってのも案外、悪くないもんよ?

振り返って金髪にウインクをおくる。
「さっ!あたし達も出発しますか!」

去っていった大事な仲間。
けれどこれで終わりなわけじゃない。
きっとまた会う日も来るだろう。
その時に2人の顔に笑顔がある事を願って、

あたし達はあたし達の旅を。

_____________________________________________________________________

初チャレンジのリナ一人称!
いかがなもんでしょうか?というかやっぱりむづかしいや・・・。
イメージおかしかったらすいません。

暖かいレスに支えられなんだかんだで5作目です。
モノローグばかりで未だに一度も呪文が出てこないという
首をかしげたくなるような展開。

にもかかわらずここまで読んでくれた方に心からの感謝を。

次回もNEXTとTRYの間を書いてみようと思ってます。

ではでは。

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30209初めましてじょぜ 2004/6/14 21:28:35
記事番号30197へのコメント

 初めまして,たまさん。じょぜと申します。

 「餞別」読ませていただきました。とっってもよかったです。
 「日溜まり」から「餞別」まで、ゼルアメを中心に書かれたお話ですが、四人組の印象も強く感じました。そこがすごくいいなあ、と。
 というのは、私はアニメからスレを知ったのですが、特にNEXTの仲良し四人組のあの微妙な距離感が大好きなんです。
 リナ一人称、素敵でした。すごく、らしかったです。ゼルとリナの会話もよかったし(この二人のコンビも好きです)、餞別よ、と言って渡した剣が最後の伏線になっているのも、しゃれてると思いました。
 一連のゼルアメのお話もあったかいなあと感じました。シルフィールも素敵でした。なんというか、たまさんの各キャラへの愛情を感じました、すべての作品に。

 ではあまりうまくない感想ですがこのへんで。失礼します。

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30211ありがとうございます!たま 2004/6/14 23:00:34
記事番号30209へのコメント

じょぜさんはじめまして。
レスありがとうございます!
いやほんとにレスしていただけると有り難くってもう・・・。

私は小説からはいったんでアニメ好きの方にそう言っていただけると・・・
背中の冷や汗が少しはおさまります。

スレのキャラは1人1人ほんとに魅力的で。
ぶっちゃけゼルアメに限らずみんな好きなんですが。
だからこう言っていただけると嬉しいです。

あったかいとか、らしいとか、四人組とか。
自分の文がこうあればいいなと思っていた事を書いて下さって、
ワタクシシアワセモンデゴザイマス。

というかほんっとにあったかいレスありがとうございます。
このレスをやる気に変えて次回作を鋭意制作!

じょぜさんのように楽しい文はとても書けない私ですが
今後も読んでいただければ幸いです。

ではでは。

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302136,『ふるえて眠れ』NEXT〜TRY(ゼルアメ)たま 2004/6/15 03:38:27
記事番号30124へのコメント

ええと6作目になります。
今までで最長の文になりました。
が。
今回は随分と暗い、重い、気持ち悪いと自負する、
微妙な立ち上がりになっています。
前作「餞別」の直後の魔剣士一人旅。

そんなんでもいいよという方は、
是非。
__________________________________

『ふるえて眠れ』

ある街の裏通り、
表向き治安の良いこの街は、
一つ道を違えるだけで暗い掃きだめへと姿を変える。

ランプの明かりに照らされ赤く染まったその通りを
ゼルガディスは1人歩いていた。

どこからか品の無い笑い声が響き、
道の端にたむろする浮浪者たちの異臭が鼻をつく。
朽ちかけた石段を踏み締め彼は歩を進める。

歩きなれたはずの裏街道が、
何故か彼にはひどく疎ましいものに感じられた。

蒸し暑い夜、油でも含んだかの様に重い風が彼の法衣をなぜる。

自分は暖かい場所にいすぎた。
自分は光を見すぎた。

明るい場所から暗がりに戻って、
まだ目が慣れていないだけだ。

じきに、
慣れる。

やがて目的の酒場に辿り着く。
目当ての男は最も奥の、最も暗い場所を好む。

「・・・マルメラドフ。」
名を呼ぶと背中のまがった小男がびくりと身を震わせる。
「やあ・・・ずいぶんと珍しい男だ・・・」
ネチリとした笑みを浮かべた男は片方しかない目を見開いて答えた。
もう片方の目は腫れ上がった目蓋に隠れ伺う事ができない。

「レゾの旦那はどうしてる・・・?」
せわしなく両手で酒瓶をこねる。
「この近くにリッチが棲むと聞いた。」
「か、か・・合成生物の次はリッチかい。
 あの旦那もいかれた趣味は変わらんなぁ。」
びくびくと体を震わせ無気味な笑い声をあげる男の
顎を掴み壁に叩き付ける。
「余計な口を聞くな。商売道具を引き抜いてやろうか・・?」
「あんたこそ忘れてる・・・この舌を動かそうと思うんなら・・・」
顔色を変える事もなく左手でこんこんと机をたたく。
無言で数枚の金貨を投げてやるとかけられた手を振りとき
奇声を上げた。

「あんたは気前がいい。あんたは気前がいい。ひっ・・ひ・・」
金貨を捧げ持ち目の前で揺らす。
「これでまた酒が飲める・・あんたは気前がいい・・」
吐き気がする。
「金は払った。はやく動かせ。」
醜悪な男も、淀み切ったこの場所も。
「北に二つ山を越えな。リッチが棲むのはその洞窟だ。」
しかし何より醜悪なのは、
「深いぞ・・・あんたは気前がいいから教えてやる・・・」
未だこんな場所に俺を縛り付けるこの身体だ。

「あんたは気前がいい・・・これで酒が飲める・・・あんたは気前がいい・・・」

男はいつまでも繰り返していた。

明るい光りを知り、
風を感じ、
穏やかな場所を見つけ、
しかしこの光の指さない、
風の吹かない、
泥濘を選んだのは自分だ。

男は、いつまでも繰り返している気がした。


2

黙々と出発の準備をする自分を
何を言うでもなく眺めていた剣士が、
ふいに呼び掛けてきた。

「なあゼル。お前さんは1人でも笑えるのか?」
「なんのことだ?」
「俺はど−やったって1人じゃ笑えん。」
うんうんと頷きつつ語りかける男が問う。
「お前さんはこれから笑わないままか?」

「俺が追っているものは・・・笑いながらいけるようなものではない。」

例えば強姦されたとすれば、こんな気分になるのだろう。
自分が汚された気がして。
その傷がいつまでも残り、
奇異の目にさらされ、
鏡を見るたび思い知らされる。

自分は勝ちたいのだ。
この呪縛に。
過去の己に。
赤法師に。
そのためには。

「ゼル、お前さんは強いが。」

何かを犠牲にしなければ、
到底辿り着けない。

「でもやっぱり1人じゃ笑えんと思うぞ。」

強いと言うなら、目の前のこの男。
戻れと叫ぶ自分の遥か上に。
高く高く飛んでいった。

「俺はあんたほど強くない。」

だからここにいると不安になる。

暖かいこの場所が、

また崩れ去るのが。

「ゼルガディス・グレイワーズだ。」

だからこいつのように暖かな場所で、
笑い続ける事はできない。

だからせめて、次会う時までこいつらが笑顔でいられる事を願う。

「次会う時まで、ちゃんと覚えていろよ。」

笑って拳を差し出す剣士と拳を打ち合わせる。

「なあぜル・・・・」

背中に声がかけられる。

「グレイ・・・なんだっけ・・・?」


3

ぱちぱちと音を鳴らし火がはぜる。
ぼんやりと照らし出された闇の中、
彼は木にもたれかけ空を見上げる。

月は見えず、ただただ闇が広がっている。
2つ目の山を越え、野宿の場に選んだ谷の中。
彼はいつか見た美しい月を思い出していた。

あの少女は笑っているだろうか。

あそこではいつも風が吹いていた気がする。

炎は揺れ、それにあわせて生まれた影が闇に踊る。

「・・・・・さん!見て下さいっ!」
「・・・・・さん!綺麗ですねっ!」
「・・・・・さん!聞いてますか?」

名を呼ぶ声が思い出せない。
別れたのはほんの数日前なのに。

「やさしくって、あったかくって、幸せにしてくれるんです。」

俺に言わせればむしろ、それは。

名を呼ぶ声を発する事ができない。
ほんの数日前まで普通にしていたはずなのに。

例えば縋り付いて、例えば力ずくで。
あの場所に留まったとして。

少女は笑うだろうか?

少女には待っている人がいる。

自分の守れなかった暖かい場所。
それを奪われた少女を見て、何故か怒りを覚える自分がいた。
あの珍妙な暑苦しい王子は、嫌いではなかった。
自分がいつか失った日溜まり。

それを自分が奪うのだとしたら。

それこそ救いようがない。

自分はレゾを嫌う。
コピーレゾになるわけにはいかない。
執着し、溺れていくものを何人も見てきた。

自分は弱く、愚かだ。

しかし誰かをこの泥濘に巻き込む事はすまい。

それがせめて自分にできる事だ。

つかの間辺りを照らした火は消え、
再び闇に包まれた森の中。

彼はいつまでも空を見上げていた。

月の見えない空を。


4

リッチのもとへと続く道程は困難を極めた。

襲いくるゾンビの群れ。
リビングメイルに埋め尽くされた回廊。
様々な罠。

ゼルガディスは闇に包まれた心を振りかざし

剣を薙ぐ。

突く。

払う。


裂き、

割り、

打ち砕く。


殺し、

破壊し、

滅ぼす。

いつしか嘲笑が漏れる。
白い法衣は血にまみれ、
赤黒く染まっていった。

血なまぐさいこの場所に光は指さない。
ゼルガディスは独り、奥へ奥へと進んでいく。

そして、やっと辿り着いた洞窟の最深部にそれはいた。

「ここまで来たのが何者かと思ったが・・・
 レゾの狂戦士か。」
目の前にいるのは人間としての生を捨て、
不死の身体を得た魔道の追求者。
屍肉でできたその口で、
聞きたくもない名を口にする。

「この身体をもとに戻す方法を探している・・・」
幾度も問うた問いを繰り返す。

「なぜ力を手放す?」

フードを払ったリッチの側頭部にもう一個の顔が浮き上がる。

「ここまで辿り着くほどのその力を。」

そしてまたひとつ、じゅるりと耳障りな音をたて新たな顔が現われた。

「俺が求めたのは力ではない。」

『嘘をつくな。』
三つの口が同時に、
またかわるがわる言葉を紡ぐ。

「ぬしの姿を顧みよ・・・」

「血にまみれ笑っておった。」

「笑っておった。」

『ぬしはもう人間ではない。』

「たとえその身体ではなくとも」

「戻ったとしても」

『ぬしはもう人間には戻れん』

「おまえはその術をもたない・・・か。」
「合成生物ごときの研究をなぜ私がせねばならん?」

わかっていた事だ。
リッチが興味を示すのは己の事のみだ。
しかし万に一つに賭けた。いつものことだ。

「邪魔をした。」
踵を返した彼に、火球の呪文が投げられる。
術を纏ったままだった剣で火球を吹き散らし、
同時に唱えた防御結界でその後の衝撃から身を守る。

「我が求めるは、力のみ。」
「暇潰しに相手をせよ。」
言ってそれぞれの口が数個の火球を生み出した。

「奇遇だな。
 俺もその無駄に多い口を潰したいと思っていたところだ。」
ゼルガディスも剣を構え術を紡ぐ。

一瞬の静寂の後、

ぐごうんっ!

凄まじい音をたてリッチの放った火球が炸裂し、
「ダイナスト・ブレス!」
刹那炎の影から身を踊らせたゼルガディスが発動した氷の蔦が床を這う。
聞き慣れぬ呪文を唱えリッチの錫杖が正円を描く。
キンッと澄んだ音をたて氷はその進撃を止めた。
氷を追うように切り掛かったゼルガディスの剣は
しかしリッチの片口から生まれた腕のような触手に阻まれる。

「ほう・・なかなかやる。」
再び距離をとり対峙し、2つの口で術を紡ぎだしながら1つ残った口で語りかける。
「なぜそこまでの力を捨てようと望む?」
耳をかさずゼルガディスは思考を巡らせる。
厄介な相手だ。
こいつに致命傷を与えるには・・・
『恐ろしいかっ!』
言葉と共に人間の生むフレアアローの数倍はあろうかという炎の矢が生まれる。

ゼルガディスはそれを見て取るとリッチに向かって駆け出した。
「馬鹿がっ!」
矢は放たれ、
直撃する。

ゼルガディスは炎に包まれ
そのまま壁に叩きつけられる。

しかし、直撃を受ける数瞬前に彼の放った短剣が、
リッチの喉元を貫いていた。


ひゅーと空気の抜けるような音をたてる喉元を
不思議そうな顔を浮かべリッチは見た。

自らの不死の身体に突き刺さった銀の短剣。
油断。

「合成生物ごときがっ!」
怒りに身を震わせ視線をもとに戻す、と。
いつの間にか駆け寄っていた男の剣で両断されていた。

ゼルガディスは痛む身体を引きずりリッチの上半身に足をかけた。
「おまえは・・・ここで何を得た?」
力を求め、人である事を捨て、こんな洞窟の中で1人。
剣を突き付け問うた。
「哀れんでいるつもりか・・・?きさまも・・・同類だ・・・」
言い放ったリッチは怨嗟の言葉を吐きながら新たな火球を生み出す。
しかしそれが形を成す前に。
首を落とされリッチの身体は灰と消えた。

いまさらのように、
奴の言葉が身を苛む。

お前はもう人間ではない。

確かにそうかもしれない。

闇を選んで。

こんな光の指さない場所で。

たったひとりで。

ふいに笑いがこみあげる。

その笑いは部屋中に反響し、動けない彼を、
いつまでも苛んだ。


5

動かない身体になんとか治癒を施し、
洞窟を這い出たのはもう夜明け前。
東の空が赤く染まっている。

重いままの身体を無理矢理動かし街道に出る。

鉛の様に重いから、もうここで眠り込んでしまいたい。
そのまま目覚めなくてもいい気がした。

「きゃあ〜」
と、ありがちな悲鳴が耳にはいる。

こんな時ほってはおけない奴が脳裏をよぎって。
馬鹿げた考えを頭から追い出す。

なんとなく、本当に何となく、
彼はそこに向かった。

予想どうりの光景。
盗賊に絡まれている商隊。

本当に何となくだったのだ。
以前の仲間のように、
こいつらを救えば。
自分もまだ人間でいられる気がした。

しかし

商隊も、盗賊団さえも、
彼の姿を目にした瞬間逃げ出した。
化け物と叫びながら。

「は・・・はは・・・」
笑える。
自分はもう・・・・
人間ではない。

膝をついてしまう。
鉛の様に重いから、もうここで眠り込んでしまいたい。
そのまま目覚めなくてもいい気がした。

ただ笑いが止まらない。
誰か、この笑いを止めてくれ・・・・
このままじゃ眠れない・・・・。
















「こんな朝早くから強盗とは不届き千万!
 しかし!
 たとえ今この時太陽がなくとも!
 明けない夜がないように!
 闇を照らす光が指さない朝はないのです!
 観念して正義の鉄ついを・・・・・ってなんで誰もいないんですか〜〜〜!?」

・・・・・止まった。

「ゼ・・ゼルガディスさん!?」

名を呼ぶ声が思い出せなかった。
別れたのはほんの数日前なのに。

でも、声が聞こえる。


「・・・泣いてるんですか?」

真上にあった声はいつの間にか自分の横に。

馬鹿を言うな。俺はずっと、笑っていたんだ。

泣いてなど

少女の手が俺の顔にこびり着いた血を拭う。
顔をあげると、目の前にはいるはずの無い少女が。

「・・・アメリア?」

名を呼ぶ声を発する事ができなかった。
ほんの数日前まで普通にしていたはずなのに。


少女の背中から、朝日が上る。
ああ・・・ここは暖かい。
とても、暖かい。

俺はアメリアを抱きしめる。
この暖かさを、光を、風を、確かに抱きしめた気がして、
俺は意識を手放した。


6

目を開けると、そこにアメリアの顔があった。
うつらうつらと舟を漕ぐその顔をまじまじと見る。
頭の後ろにあるのは・・・
慌てて身を起こす。

いつの間に自分は眠ってしまったのか。
木漏れ日の指す木の下で。
膝・・

未だ目覚めないアメリアを呆然と見ていると・・
突然ビクッと身を震わせた。
目を開き膝を見つめ泣きそうな顔できょろきょろと首を振る。

俺の姿を認めると
「いたぁ・・・・・」
満面の笑みで言う。

なぜここにいる?だとか、
セイルーンに帰ったんじゃ?とか、
浮かんだ疑問を忘れ目を奪われる。

しかし見る間にその目に涙をため俯く。
「なんで、だまっていっちゃったんですか?」

「ちゃんと笑ってお別れしなきゃって。
 旅の無事をお祈りしようって。
 がんばってそうしようって思ってたのに。
 置いてかれちゃって。」
アメリアの口から出る別れと言う言葉に思わず身が竦む。
身勝手なもんだ。
「だから、見つけたら正義の鉄ついを!って思ってたんですけど。」
俯いたまま拳が握られる。
「・・・すまん。」
いたたまれなくなって詫びが口をつく。
何を今さら。だが。
「でも、さっきの顔見たらどうでも良くなっちゃいました。」

「あんな顔して、1人で泣かないで下さい。」
俺は笑っていたはずだった。
けれど。
ずっと泣いていたような気もする。

「あと少しだけですけど、旅を続けられます。
 その間・・・ついていっていいですか?」

「なぜだ・・・?」
心にもない問いを投げると、
ついと近寄り、俺の法衣に身を埋める。

「迷惑かも知れませんけど、鬱陶しいかも知れませんけど、
 あんな顔するくらいなら・・・
 というかですね・・・?
 私も多分あんな顔してたんです。
 だから・・・。」

アメリアの背に手をまわす。
「すまん・・・。」
そっと抱きしめ言った言葉はまたもや詫びで、
今の俺にはこんな言葉しか発せない。
けれど、
「しかしお前、ずいぶんと積極的になったもんだな。」

ばっと顔を上げ真っ赤な顔で跳び退る。
「な・・な・・な・・・」
指を指した手がウロウロと彷徨う。

「・・・いくぞ。」
せめて時間の許す限り。
今だけは。

隣に立つこの笑顔を見ていたいと思う。
「はいっ!」
隣でこの声を聞きたいと思う。



「しかしお前なんだってここにいるんだ?」
偶然にしては出来過ぎだ。
まさか正義の力とか言わないだろうな・・・
「まだまだ甘いですね!ゼルガディスさん!
 リナさんから物をもらってただですむと思っちゃダメですよ!」
ニカッと笑ったアメリアが俺の胸を指差す。
懐の短剣。
「そうか・・・やっぱり呪いをかけてやがったか・・・」
肩を落として呟く。
「私呪いですか・・・。ひどいですよ、それ!」

傍らでくるくると笑うアメリアを見て、
俺はあの日受けとった餞別と
おせっかいな仲間に、心から感謝した。



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こんな腐れた駄文。
ここまで読んでくれた方にはほんとに感謝です。

(蛇足な補足)
「マルメラドフ」
1に出てくる情報屋はドストエフスキ「罪と罰」から
姫をおいてった魔剣士に罰を。みたいな。

「ふるえて眠れ」
内容と繋がらないタイトルはYukiのPRISMICというアルバムの中の一曲から。
かなりゼルアメっぽかったりします。
聞いてみてもらえれば、なぜこのタイトルにしたかわかるかと。
どうでもいいかも知れませんが。一応。

しかし今回スレイの世界観無視の文になってしまいました。
私的にはNEXT,TRY間に映画、プレステのゲームがあると思ってるんで。
そこで一緒に旅してる2人のやり取りがとても素敵で。
ああいう関係になるって事はこういう事があったんじゃないかと。

勝手に想像。にしたって何でこんなに暗いのヨ?
ここまで読んで下さった方にはこれまで以上の感謝をば。