◆−兎(RAIさんへ)−星村さゆる (2004/5/4 23:03:51) No.29976
 ┗よろこんでお受け取りさせていただきます!!−RAI (2004/5/6 22:45:15) No.29988
  ┗ありがとうございます><−星村さゆる (2004/5/7 03:33:24) No.29989


トップに戻る
29976兎(RAIさんへ)星村さゆる 2004/5/4 23:03:51


 RAIさん、お久し振りです。この間の「花」でレス下さったのに、お返事書けなくて・・・申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!(土下座)
 いつもいつもいつも温かいご声援をくださるRAIさんに何たる無礼をっっ・・・本当にすみません・・・。それで、お詫びとして、こんな最低最悪な、かつアホアホな、そして慇懃無礼なやつの作品でもRAIさんが「好きだ」とおっしゃってくださったので、この作文を捧げたいと思います。少しでもお気に召されれば幸いです・・・。どうかお許しください・・・。
 そして、こんなやつにレスありがとうございましたvvたくさんの嬉しいお言葉ありがとうございました><

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 兎が死んだ。
 まぶたを閉じて、ひっそりと。
 彼女が腕に抱いた時には、すでに息はなかった。

 ――兎―― 

「・・・もういい加減、泣き止んだらどうだ」
 無駄だと知りつつ言ってみる。
「・・・っ・・・ふっ・・・えぇぇ〜〜〜・・・」
 案の定、言葉の意味を成さない声だけが返ってきた。
 すぐさま泣き止むことなど期待していなかったので、溜息をつくと隣に腰をおろした。
 もしかしたら、気が済むまで泣かせておいてやりたい、と思ったのかも知らない。
 アメリアの―そして俺の前には、小さく盛り上がった土の山があった。
 白にも見える薄い桃色の花は、アメリアが摘んで供えたものだ。
 そして、この土の下には兎がいる。



 何の変哲もない日だった。
 魔族の攻撃も、盗賊の襲撃もなく。
 気候も穏やかな、ただの平和な日だった。
 森の中をアメリアと歩いていた。
 キレイな森ですね、とはしゃぐアメリアを見失わないように気を回すのもいつものことだった。

 突然。
 サッと、上機嫌なアメリアの表情がこわばった。
「・・・?」
 ただならぬ気配に彼女の視線を追うと、そこには本来真っ白なはずの兎が、真っ赤な血にまみれて倒れていた。

 アメリアはすぐさま駆け寄り、「リザレクション」の呪文を唱えた。
 だが、・・・遅かった。
 おそらくは狼などの獣に襲われたのだろう。
 内臓は飛び出し、無残に食いちぎられた後もある。
 いくら彼女がセイルーンの高位の巫女で、白魔術が得意でも。

 所詮限界があった。


 近くの野原に穴を掘り、兎を埋めた。
 その前にアメリアは座り込み、祈り始めた。
 兎の魂を弔っているのか。
 もしくは救えなかったことへの懺悔か。
 両手を胸元で固く握り締め、それに額をつけるように頭を垂れ。
 そして、細い肩が激しく震え始めた。
 肩だけでない。
 華奢な全身が震え、息が震え。
 閉じられた目から、大粒の涙がこぼれた。

 アメリアは泣いた。
 こんなにも激しく
 こんなにも哀しく
 こんなにも痛々しく泣く人間を見たのは、初めてのような気がする。
 とめどなく両目から流れる雫が、ぽたぽたと地面に落ち、吸い込まれてゆく。
 兎に捧げられた花びらは、もしかしたら彼女の涙が変化したものかも知れない、などと思う。
 懸命に食いしばった歯から漏れる嗚咽が、耳に響く。


「・・・泣くな」
 両手で顔を覆ったアメリアの肩をつかみ、引き寄せる。
 胸にあたる黒髪をそっと撫でた。
 あやすようによしよし、と背中を叩くと、アメリアは更に肩を震わせた。

 ――こういうとき、自分が嫌になる。
 ――こういうときに、相手を慰める言葉が見つからないからだ。

 

 不意にフッ、と。疑問がよぎった。
 それはどうでもいいことのようだった。
 実際どうでもいいことだろう。
 というよりくだらない。
 何より今、こいつに言うべき言葉ではない。

 なのに、気がつけば声に出していた。
 お前は愚かだと、自分を罵った。


「お前は、俺が死んでもこんな風に泣いてくれるのか?」


「・・・?・・・」
 アメリアが、顔を上げる。
 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を。
 何か恐ろしいものでも見るような、怯えた顔を。

「・・・どうして、そんなこと言うんですか!?」
 思わぬ大声に、顔を思いっきり張られたようだった。
「当たり前じゃないですか!!私が泣かないとでも思ってるんですかっ!?」
 しゃくり上げたアメリアの頬を、新たな涙がすべる。

「・・・どうしてそんなこと、言うんですか!?
 私・・・今っ・・・そんなこと、考えたくありませんっ!!」
 
 思いっきり怒鳴って顔を伏せ、泣きじゃくる。
 アメリアは本気で怒っているようだった。
 そりゃそうだろう、と間抜けなことを思い、再びアメリアを抱き寄せる。
 嫌がるかも知れないと思ったが、アメリアは素直に俺に抱かれていた。
 あがらう気力もなかったのかも知れない。
 結局俺の言葉は、火に油を注ぐ結果となった。

 
 アメリアは泣いた。
 名も無き兎のために。
 倒れるほど激しく
 壊れる哀しく
 ひどく痛々しく。



 ・・・っ・・・ふぅっ・・・ひっく・・・
 泣き声が、小さなしゃっくりに変わったのはいつだっただろう。
 もう涙は止まったようだが、代わりにしゃっくりが止まらなくなったらしい。
 あれだけ泣いたのだから、横隔膜の痙攣も相当なものだろう、と思う。

 手の甲で、あるいは拳で目をぬぐい、アメリアは顔を上げた。
 濡れた真っ赤な目が俺を見つめる。
 その目に、先ほどにはなかった何かが浮かんでいるのに気づく。
 開かれた唇がつぶやく。
「・・・死なせません」
 ポツリと。だがはっきりと。
「私は、ゼルガディスさんを死なせたりしません!」
 グッ、と決意を表すように拳を握る。


「ゼルガディスさんは、絶対私が守ります!
 絶対私が助けてみせますから!」

 
 真剣そのものの表情で。大真面目な口調で。
 唐突に宣言したアメリアに、呆気にとられた。
 そりゃあ男のセリフだろう、と思ったが、言えば「そんなの関係ありません」と言われそうだったのでやめた。
 代わりに苦笑する。
「ああっ!何を笑ってるんですかっ!」
「お前に守ってもらわなくても大丈夫さ」
 とたんに頬を膨らませ、アメリアが反論する。
「む!ひどいです!いいですか、そういう力の過信は油断に繋がるんですよ!」



 死にはしないさ。
 

 こいつを
 あんなに激しく
 あんなに哀しく
 あんなに痛々しく泣かせたりはしない。

 ――決して。

 
「お前はまず、自分の身を守れ」
 
「・・・え?・・・」
 
 

            FIN

 






トップに戻る
29988よろこんでお受け取りさせていただきます!!RAI 2004/5/6 22:45:15
記事番号29976へのコメント

おっおっおひさしぶりです!さゆるさま!!!!
このごろお姿を拝見していなかったのでどうなさったのか心配で心配で(泣)
土下座なんてしないでください!!誰だって都合が悪くてできないことだってあるではないですか!!
さゆるさんの作品大好きですから、これからも無理せず頑張ってくださいね。
↓それではかんそうへ

●○●○●○
悲しい、目の前で動物が死んでしまっていたらすっごく、そうおもいますよね
泣きじゃくる、アメリアの気持ちすっごくわかります
何事もないようかに思えた日に、目の前での兎の死と、自分の力でも助けることができなかった。とゆう二重の悲しみを受けてしまったら泣くのは当たり前だと思いました。
ゼルが慰めの言葉が出てこない自分を嫌になっている所では、私もこんな状況の所では慰めの言葉が一つも見つからないだろうと思いました
でも、ゼルがいきなり、もし自分が死んだときの話をしてきたことには驚きました
火に油を注ぐような結果になってしまってたけれども。
アメリアがゼルを死なせませんって行ったときにやはりアメリアらしいな。
と思いました
そしてゼルも、アメリアを悲しませないと固く誓ったところで、
この二人は、やはり、絆がとってもきつくむすばれた人なんだなと
再度認識させていただきました。
○●○●○●
こんな素晴らしい小説どうもありがとうございました!
とにかく、さゆるさんの書く小説が大好きなのでこれからもがんばってください!
それではまた!

トップに戻る
29989ありがとうございます><星村さゆる 2004/5/7 03:33:24
記事番号29988へのコメント


>おっおっおひさしぶりです!さゆるさま!!!!
>このごろお姿を拝見していなかったのでどうなさったのか心配で心配で(泣)
RA−−−−−−−Iさぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・んんん・・・おっお久しゅうございますっっ!!まさかこんなに早くお返事があるとはっ・・・星村・感激☆(語呂が悪い上に若い子は何のモノマネかわからない)実は最近スランプでして;ああ・・・前なんか「2週間に1度は投稿」なんて言っといて・・・大嘘ブッこいてしまいましたな;後別ジャンルに浮気(殴)
>土下座なんてしないでください!!誰だって都合が悪くてできないことだってあるではないですか!!
>さゆるさんの作品大好きですから、これからも無理せず頑張ってくださいね。
 なんてお優しい方なんでしょう・・・RAIさんってば・・・(涙)嗚呼、天使のように慈悲深き君よ、どうかそこら辺歩いてるクリィミィおじさんなんかについて行かないでね。嬉しいお言葉ありがとうございますvv舞い上がっちゃってますから、変な文章になっててもあんまり気にしないでくださると嬉しいかなぁなぁ〜〜んちゃってぇ〜〜v(・・・;)

>何事もないようかに思えた日に、目の前での兎の死と、自分の力でも助けることができなかった。とゆう二重の悲しみを受けてしまったら泣くのは当たり前だと思いました。
RAIさんは人の気持ちが分かる方ですね。アメリアが目茶苦茶に泣いたのは、得意な白魔術でも救えなかったことに対して自分を責めたのと、もう一つは彼女が育ってきた環境にあると思うんです。アメリアは小さいときに、母親を失っていますよね。だから、アメリアは人間であれ何であれ、「死」というものをひどく恐れていると思うんです。そして、彼女は大国の姫です。アメリアはしょっちゅう白を抜け出してはいますが、セイルーンを自分の国として、愛していると思います。だから、なんていうか・・・何に対しても「守りたい」気持ちが強いんでしょう。「守ること」、「救うこと」に、人一倍強い思いがあるんでしょうね。なのにそれができなくて。しかも相手は、小さくて弱い兎です。引き裂かれた兎のように、アメリアの胸も痛かったでしょう。
>ゼルが慰めの言葉が出てこない自分を嫌になっている所では、私もこんな状況の所では慰めの言葉が一つも見つからないだろうと思いました
 私も、友人の親御さんが亡くなったとき、何と言っていいかわかりませんでした。分からないんですよね、ホント。こういう時って、何も言わず一緒に泣いてあげるのが一番いいそうです。
>でも、ゼルがいきなり、もし自分が死んだときの話をしてきたことには驚きました
 なんでゼルはこんなこと言ったんでしょうね。あんまりアメリアが泣くものだから、つい「もし自分だったら・・・」と考えてしまったのではないでしょうか。もし自分が死んだら、同じようにこいつを泣かせるんだろうか、って。
 もしゼル独りだったらこんなこと考えないでしょう。でも、アメリアがいるから。そっか、死んだらダメだな。悲しませたくないな、って。自分が生きてたら、アメリアは笑ってくれるんだな、と。それがゼル「生きたい」という願いを強めたのでしょう。
>アメリアがゼルを死なせませんって行ったときにやはりアメリアらしいな。
>と思いました
>そしてゼルも、アメリアを悲しませないと固く誓ったところで、
>この二人は、やはり、絆がとってもきつくむすばれた人なんだなと
>再度認識させていただきました。
 アメリアの中にも、色々暗い部分があると思うんです。この子は「生と死」に関しては、敏感です。だから、悩んだりするけど、結局は前向きな答えをだして、上を見る。それがアメリアだと思います。だから、兎は癒せなかったけど、ゼルは守りたい!と、また強く決意したんです。アメリアの「死なせません」のセリフが書きたかったんです^^
 死ぬことなんて、あんまり考えたくありませんけど。でも、それは避けられないもの。死に怯えるより、明るく生きることを選んだ2人のように生きたいもんです。
>こんな素晴らしい小説どうもありがとうございました!
>とにかく、さゆるさんの書く小説が大好きなのでこれからもがんばってください!
 あ・ありがとうございます>▼<素晴らしいだなんてそんな////途中で書いて手「何が言いたかったんだ私」って不安になってたんで・・・。「大好き」って言葉がどれほど励みになっているか、伝えられないのが悔しいです><
 RAIさん、これからもよろしくお願いします!あと、なんか色々えらそーなこと書いちゃってゴメンなさい;
 
 それでは、またお会いしましょう♪