◆−月光王・ろく−桜月 梓 (2004/4/19 14:36:57) No.29847
 ┣月光王・なな−桜月 梓 (2004/4/20 19:47:19) No.29858
 ┣月光王・はち−桜月 梓 (2004/4/22 19:49:05) No.29870
 ┣月光王・きゅう−桜月 梓 (2004/4/25 20:21:52) No.29891
 ┗月光王・じゅう(最終話)−桜月 梓 (2004/4/28 18:47:18) No.29912
  ┗面白かったです!−紗希 (2004/4/29 18:06:48) No.29924
   ┗Re:本当ですか?!(かなり嬉しい)−桜月 梓 (2004/4/29 19:31:10) No.29927


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29847月光王・ろく桜月 梓 2004/4/19 14:36:57


梓:どーもおはようございます(違)
  というわけで番外編で一端一部終了して、「ろく」でツリー変えなのです。
L:何か適当ね・・・。
梓:それは言わないで下さい。
  では、あらすじでも。

降魔戦争時、時空の王・Kの世界へと身を隠した金色の魔王・Lの弟である、月光の王・
金髪金眼少年・ディース=コズミット。本名・ディスロット=カオシェール=トゥ=ナイトメア。
ひょんな事からゼフィーリアに戻っていたリナの力に寄って、赤の世界に呼び戻される。
そして、あれやこれやといううちにディース・リナ・ガウリイは旅に出る事に。
セイルーンでアメリアと再会し、また彼女も父を説得し旅の仲間となった。
そこに現れるはちまたで有名な生ゴミゴキブリ使いっぱしリ魔族(酷)のゼロス。
旅の途中、とある街で謎の魔族・デリタとルスタと接触し、闘いが始まる。
ルスタは1人の少女を人質に取るが、あっけなくディースに滅ぼされてしまった。
少女は宇空菫と名乗り(実はKにディースの同行を頼まれた宇宙の姫様である)、旅の仲間となる。


梓:今はこんな所ですかね。
L:長っ!!もっと完結にしなさいよ、誰もが分かりやすいような完結に!!
梓:私はまとめる事が最も苦手です。
L:・・・。
梓:それでは「ろく」行ってみましょう!!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 「それで?」

 いらいらとした声色で、戻ってきた部下に男は問う。

 「・・・それでって・・・それだけですよォ?そいつにあっけなくやられましたァ」

 デリタは答える。どうやらルスタについて報告していたようだ。
 声の主である男は腕組みをしながら舌打ちする。

 「どうするんですかァ?クリス様ァ」

 「・・・まぁいい・・・。新月まで後3日・・・。それまでに準備を整えておけ」

 「はッ」

 デリタが消えるのを見ると、男はくくく、と怪しげな笑い声をもらす。

 「・・・新月・・・そうだ・・・月さえ、月さえなければいいのだ・・・」














 ろく













 一夜明けて。

 リナ達はまた襲撃されたらたまらないと、朝早く街を出て、別の街にたどり着いた。
 隣のテーブルには1人の魔剣士などが食事を取っていたが、我関せずといった雰囲気なので
 夕食を食べ終わったリナ達を待ってから、アメリアは小さめな声で開いた。

 「それにしても昨日の敵は一体何だったんでしょうか?」

 リナはことんとカップを置いてから、心なしか影の薄いゼロスを見て、ディースを見る。
 その視線を受け取ると、ディースはリナに向かってにっこりと笑った。

 「ディースの知ってる事を教えてくれないかしら」

 もちろん、リナとしてはしごく真剣な顔で聞いたつもりだったのだが。
 ごぶばぶっ!!!
 ゼロスは飲んでいたホットミルクを噴出し、ユニットはくすくすと笑っている。
 ディースもその様子にくすくすと笑っていたが、軽く頷いた。

 「あの敵は一体何なの?何の目的で襲ってきたの?」

 「そそそそそそっ!!!それは僕がお話しますぅううぅぅううっ!!!」

 慌てて待ったをかけるゼロスに、アメリアは大きな目をもっと大きくして驚いた。

 「秘密じゃないんですか?」

 「しくしくしく・・・そう言いたい所ですが・・・もうこうなっては仕方ありません・・・」

 ごしごしとテーブルの上に零したミルクを拭きながら、ゼロスは話し始めた。

 「えーっと・・・僕が最初受けてた命令は、“リナさん達の敵意をこっちに向けさせずに
  ディースさんの事を調べて来い”っていうものだったんです」

 「あら、どうして?」

 まだくすくすと笑っていたユニットがそう聞く。
 その問いに、ようやく吹き終わったのかゼロスは手に持っていた布巾を置いて答えた。

 「ディースさんの気配が突然この世界に現れたからです。そのすぐ後、ディースさんを追うようにして
  また、別の気配が現れたんです。この世界で言う所の、いわゆる“魔族”みたいな者達ですね。
  デリタさんやルスタさんは部下だと思うんですが・・・首謀者はまだつかめてないんですよ」

 肩を竦めるゼロスにガウリイが眉を潜めた。




 「でも、どうしてディースが狙われてたんだ?」




 「「「え゛ぇ゛っ?!!」」」

 リナとアメリア、そしてゼロスは、息を合わせて驚きの声を上げた。
 ディースとユニットだけはくすくすと笑いながら「さすが」と言っていたが。

 「・・・分からなかったのか?あの2人がディースだけに殺気向けてた事・・・」

 「「「普通分からないわよ(りません)、そんな事っ!!」」」

 3人は、ばっ!とディースの方にかなりの勢いで向き直る。

 「そうだよ。あれは僕が狙われてたんだ」

 にっこりと笑って言う台詞じゃないだろう、と誰が思ったかはご愛嬌。
 ディースは一口、コーヒーを飲む。
 はぁー・・・と重く溜息をついてからリナは問いかける。

 「何でよ?」

 「んー・・・・・・・・・・・・・・・僕の存在が彼らにとって厄介になるからかな・・・・・・」

 少しだけ間をおいてからディースがぽつり、と呟く。
 それを聞いていたユニットは、付け加えるようにして楽しそうに口を開いた。

 「それも違わないけど、あくまでもディースは通過点でしかないわよ♪本当の目的は
  L、というか、金色の魔王を滅ぼす事♪なんだからね♪」















 どしゃぁぁぁぁあああああああんっっっ!!!!!!!!!!














 軽く言ってのけたユニットに、ディースを除くその場にいた全員は思いっきりコケた。
 力の限り。
 ゼロスなどは先程より本気で影が薄くなっている。

 「・・・せ、世界の反逆者・・・だと?!」

 ふいに隣のテーブルから声がした。
 見ると、白い装束を纏った男が、床にぴくぴくと痙攣しながら突っ伏していた。
 その声に反応してがばりっ!と起き上がったアメリアは、嬉しさ全開な声で叫んだ。

 「ゼルガディスさんじゃないですかぁああっ!!」

 男はゆっくりと起き上がった。
 銀色の針金の髪の毛、冷たい岩の肌、それを隠すような白いフードとマント。

 そう、ゼルガディス=グレイワーズである。

 ゼルガディスは偶然にもこの街の、偶然にもこの食堂に立ち寄ったのだ。
 そこに偶然にも隣のテーブルにリナ達が座ったのである。
 こう“偶然”が重なるとかの御方の“必然”というような“悪戯”に思えてくるのは、何故だろうか。
 ゼロスやディースやユニット達がいたので、声をかけるのもどうかと思い(・・・というか
 最大の理由は、まだ姿が戻っていないのにアメリアに会うのはどうかと思ったから)
 黙って他人を決め込んでいたのだがユニットの言葉に全部泡となって消えた。

 旅に出ていたゼルガディスは、スィーフィード・ナイトの噂を聞き、一度ゼフィーリアへと出向いた。
 そしてその彼女に会ったのだがきっぱり「無理だ」と言われ、仕方なく図書館で調べていた所
 とある禁呪の本を見つけたのである。
 その本というのが、ディルスより詳しく書かれた金色の魔王に関する物だったのだったりする。














 やはり出会いや再会は“偶然”というより“必然”かもしれない。













―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


梓:・・・は、話が進まなひ・・・。
K:進まない、じゃなく・・・ただお前が進めてないんだろうが。
梓:・・・その通りです。
  ネタを考えるためにも、ではでは皆さん「なな」までしーゆーあげいんっ!


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29858月光王・なな桜月 梓 2004/4/20 19:47:19
記事番号29847へのコメント


梓:なんなんでしょう、この苛立ってくるような蒸し暑さは。
  私は夏が嫌いです。えぇそりゃあもう大っ嫌いです。
  っていうか今は4月ですよ?!初夏の暑さ?!何考えてんだ自然めぇえ!!
L:もしもーし?梓?何をいきなりキレてるのよ・・・。
梓:すみません取り乱しました、テスト終わったので変なハイテンション気味です。
L:ちょっと待って。テスト明日もあるんじゃなかったっけ?
梓:勉強するもしないもストレス発散しないとやる気が起きません(激待)
  というわけで、昨日に続いて「なな」更新ですっ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







 「クリス達が仕掛けてくるのは、いつだと思う?」

 『新月の・・・明日の夜だろう』

 少しだけ不機嫌そうに問いかけたLの言葉に、鏡の向こうのKはそう答える。

 「・・・そう、明日の夜に間違いないわ・・・。
  あたしが太陽、あの子が月、シャディは海、ユニットは星の力を司る・・・。
  月が出ない新月の夜は、ディースの力が衰える唯一の日だと思うのも当然なんだけどね」

 溜息をついてLが言うとKは頷き返すが、きっぱりと言った。

 『そんなものまったくもって浅知恵だがな』

 「えぇ、勘違いもほどがあるわね」

 『どうするんだ?』

 静かに微笑みを浮かべてそう言うKの言葉の意味は、幾つも考えられる。
 だがLは答えの迷いは見せずに、すぐさまKに言った。

 「大丈夫よ。最後になるだろうけど、行くわ」















 なな

















 「そういえば・・・菫ちゃんと言ったか?どうしてその目的の通過点が、ディースなんだ?」

 簡単に再会の言葉や自己紹介などを終えた後、ゼルガディスも同じテーブルにつくと
 ふいにユニットの方に向き直ってそう聞いた。
 その問いにリナ(とガウリイ?)は微妙な顔つきをし、アメリアも「それもそうです」と同意し、
 後ろが透き通る姿になってしまったゼロスにいたっては、おもむろに目線を逸らした。
 聞かれたユニットはちらり、とディースを見てからくすくすと答える。

 「それはもちろん、ディースが金色の魔王に多大な関係があるからに決まってるじゃない♪」

 「・・・どういう事だ・・・?」

 ゼルガディスが顔をしかめてディースの方を振り向く。
 その視線を受け取ると、今度は静かに微笑んでディースは4人を見つめる。
 そしてしばらくしてから肩をすくめて言った。

 「今以上に・・・深く巻き込まれる事になるけど?」

 ディースの言葉に4人は顔を見合わせるが、ふっと笑みを浮かべた。

 「あたしは最初から関わってるしね」

 「おう、俺もだ」

 「ここで背を向けるだなんて、正義じゃありません!!」

 「話を聞いた時点で充分巻き込まれてるしな」

 その各々の答えに、ディースとユニットはまたくすくすと声を立てて笑い始めた。
 はらはらとその光景を見ていたゼロスは、どことなく安堵したような顔である。
 そしてディースと目線を交すと「定時報告に行ってきます」と虚空に消えた。
 それを見届けてから、ディースは辺り一体に結界を張った。




 「それじゃあ、話そうかな。
  僕はディース=コズミット。本名は、ディスロット=カオシェール=トゥ=ナイトメア」

 「・・・ナイトメアって・・・まさかディースさんはっ?!」

 アメリアが上げた驚愕の声に、こくり、と1つだけディースは頷く。

 「混沌にただよう月は僕の事。司る力が月だから、別名で“キング=オブ=ザ=
  ムーンブラス”、つまり“月光の王”って呼ばれてるんだ」

 「後は“ブラザーズ=オブ=ナイトメア”、“金色(悪夢)の弟”とも呼ばれてるわね♪」

 「・・・ろ、ろーど=おぶ=ないとめあの弟・・・なるほどな・・・」

 いささかテーブルに突っ伏し気味のゼルガディスが、小さめな声でそう言ったが
 しかし何とか気力で顔を上げる。
 ふと、今度はリナが怪訝そうな顔をしてユニットの方を向いた。

 「ねぇ・・・どうして菫ちゃんはそこまで知ってるの?」

 「くすくす♪だって私もディースの姉のような存在なんだもの♪」

 軽く言われた言葉の意味に、びしりっ!!と固まる4人。

 「じゃあ私も改めて♪
  私は宇空菫、本名はもっと長いけど、ユニット=ユニバースって言うの♪
  “ユニバース=オブ=ザ=プリンセス”、“宇宙の姫”って呼ばれる事もあるわね♪
  あぁ、でも今まで通りに“菫”で構わないから♪」











 何だかすごい人達集結中?











 「話を戻そうか。・・・神魔戦争の時に出来た歪みの中で生まれた奴ら・・・僕らは外族って呼んでるんだけど。
  チャンスがあれば姉様の存在を滅ぼして自分達が全ての者の上に立ってやろうっていう
  まったく馬鹿げた考えを持ってるんだよねぇ。
  その時、丁度僕がその歪みの近くにいて、僕という存在の事を知られちゃったわけなんだ。
  “月光の王”という存在が知られると・・・厄介な事に僕は人質になっちゃうんだ」

 「人質・・・?」

 首をかしげてガウリイが問うと、ディースは苦々しく笑って頷く。

 「そう。姉様の対なす力を持つ僕という存在は、外族に言わせると姉様の弱点にもなる。
  だから、通過点として僕を滅ぼしてから姉様を滅ぼすっていう寸法なんだよ。
  降魔戦争の時、この戦法で1回攻めてきたんだ。あっけなく歪みに帰ってもらったけどね・・・。
  その時から今までずっと、存在を知られないために異世界に身を隠してたんだけど・・・。
  ・・・さて・・・これ以上に僕の存在が知れ渡るとどうなると思う?」

 ディースが溜息をついて4人に問い掛けると、アメリアが真剣な顔で言った。

 「・・・“金色の魔王”を良く思っていない者達が、それと同じ戦法で攻めてきます・・・」

 「当たりよ、アメリアさん。何も学ばないっていうのは、本当にこういう事をいうのよねぇ」

 その当時を思い出したのか、疲れたようなディースに代わってユニットが答えた。
 ディースは話を続けていく。

 「デリタとルスタからは同じ気配がしたよ。・・・今回は、その時と同じ外族みたいだ。
  ・・・ボスの、首謀者の名前はクリス。クリスファンド=ヴェルジオールだよ。」







 そこでいったん言葉を区切るディースに、誰も何も言葉を出せなかった。
 しかし、その微妙な沈黙を破ったのは帰って来たゼロス。
 ゼロスはどこかで負の感情でも調達してきたのか、もう姿は薄くなかった。

 「タイミング良かったみたいですね」

 先ほどまで自分が座っていた席に戻ると、ゼロスはそう言う。
 苦笑してディースは頷き返す。
 そして、先ほどよりは真剣な顔付きへと直してから、口を開いた。

 「襲撃は多分・・・いや、100%の確実で明日の夜だよ」

 「何故だ?」

 ゼルガディスの問いかけに、ディースは答える。

 「言っただろう?僕は“月光の王”、司る力は月・・・。明日は新月。月が出ない夜は
  僕の力がいつもの僕の力より衰える、クリスはそう考えてると思うから。
  ・・・あ、でもそれは浅知恵だよ?月が出ないといっても、それは地上でだけの話だからね」















 新月。


 それは、月が、太陽の後ろに廻る事によって、銀河の法則で起こされるもの。


 遠い昔・・・その事を知らなかった地上では、月がなくなってしまったと、騒ぎが起こったという。


 しかし―――月は、見えないだけでそこにあるのだ。


 月が、なくなってしまうはずがない。


 太陽の方を向いている月は、いつも銀色に光り輝いているのだから。
















――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



梓:区切りのいい10話で終わらせる予定なんですが・・・終われるでしょうか。
K:お前のまとめかた次第なのだろう?私に聞くな。
梓:・・・ごもっともです。
K:それにしても、今回の話はディースの秘密大暴露しまくっているな・・・。
  と、言っても私の話こそは出ていないが・・・。
梓:いやあのまあ・・・大丈夫です、L様と一緒にK様も後で出す予定ですので!!
K:・・・ならいいが。
梓:えーっと、それでは皆様「はち」でお会いましょうっ!!


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29870月光王・はち桜月 梓 2004/4/22 19:49:05
記事番号29847へのコメント



梓:本当に10話で終われるか不安になってきた、打ち込み中の今日この頃・・・。
  でも頑張りたいとは思っています。
  それにしてもディースさんは微妙にシスコンですねぇ・・・。
L:このあたしが姉なのよ?当たり前じゃない♪
梓:それでは「はち」行きましょう!!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










 【【また、いつか】】

 重なった自分の声と姉の声にまどろんでいた意識は完全に覚醒した。
 目に映る広がる空には、丁度太陽が真上にくる所だった。
 くしゃりと髪をかきあげると、その中の掬い漏れた髪がさらりと瞳にかかる。
 その金髪を太陽が照らしてきらきらと光を反射する。
 少し、眩しかった。
 自分の金髪は純粋な金色ではなく、少しだけ銀色が入っている事は知らなかった。
 知ったのは、姉が自分の髪の毛で遊んでいた時に教えてくれたからだ。
 その事を教えてくれた後で、姉は言った。

 【最初は銀髪でも良かったんだけど・・・あたしと共通点が欲しかったのよね】

 それを聞いた時、嬉しかったのを確かに覚えている。
 姉は僕を、唯一繋がっている者として、愛してくれているのだ―――と。
 ・・・会いたい。
 それを実現させるためには、早くこの闘いを終わらせること。
 終わらせる。
 自分を狙うものたちは姉を狙うものたち、姉を狙うものたちは自分を狙うものたちである。
 わざとだとしても、そんな奴らの力ごときで滅んで見せる気は毛頭ない。
 2度も攻めてくる奴らだ。後で面倒になる前に滅ぼすだけ。

 静かに微笑してから、ディースは立ち上がった。

 「・・・今日の夜・・・終わるよ。」


















 はち




















 昨日一晩話し合い。
 相手は今日の新月の夜、ディースは力が衰えると勘違いしている。
 それを逆に利用しようという作戦になった。

 つまり。

 街に被害が及ばないように、ディース達は街から離れている神殿へと行く。
 そして夜にクリス達がデリタや他の雑魚らしき外族を連れて、襲撃してくる。
 しかし、リナ達の事はたかが人間、ディースの力の事を勘違いしまくっているので鷹を括っているはず。
 ディースの力で、一時的に魔力をかなり高めたリナ達が闘いのおとりになり、
 油断している所を裏をかいてディースが仕留める、という寸法だ。
 何だかおーざっぱな戦法だが、もっと詳しく調べないで部下を送ってきたクリスだ。
 少しは効くだろうという事になったのである。
 加えて。
 相手は知らないが、ユニットがいるという事もあるのだ。
 話が纏まったリナ達は朝早く、街を離れて神殿にとやってきた。

 「ディースさん、僕に力を与えていいんですか?」

 ディースが後ろを振り向くと、そこにはゼロスが立っていた。
 そう、ディースはリナ達だけではなくゼロスの魔力をも高めていた。
 その問いにいつもみたいに軽く頷く。

 「うん、一時的なものだからね」

 「そうですか。・・・あ、さっきリナさん達にも言いましたけど、僕はデリタさんを
  やろうと思ってますので。クリスさんとやらは、ディースさんがお願いしますね?
  僕は、今回ディースさんの作戦通りに動くだけなので」

 「分かってる」

 笑って答えると、ゼロスもにっこりと笑ってリナ達の方へ歩いていく。
 どうやらディースがまどろんでいる間に、リナ達は昼食をとる事にしたらしい。
 ディースのいる所にまで声こそは聞こえないが、肉を取り合うリナとガウリイの姿は見える。
 見慣れたはずだったその光景を見ていると、ディースはまた、笑ってしまった。
 リナ達の隣にいたユニットも、それは楽しそうに笑っていた。
















 日はだんだんと傾き、太陽は西の森へと消える。
 薄闇にかこまれていく神殿の中には、ディースが所々に明かりを灯した。
 まるで、早くかかってこいと挑発するように。
 今、ディース達がいるのは神殿の外でなく、神殿の中の1番広い中央部屋。
 もちろん神殿が壊れないように結界も張ってある。
 ふと入り口の方の明かりが、ほんの小さくだが確かに揺れた。
 ガウリイが静かに剣の柄に手を添える。

 ふいにその緊迫した雰囲気をぶち壊すような声がした。






 「おいおい何だよォ・・・こんな所でやんのかァ?・・・狭いんじゃねェかァ?」






 かつんかつん、と少しゆっくりめな足跡がした後で、明かりがその姿を照らす。
 ―――デリタ。
 その後ろには30ダースくらいの、外族。
 ディースに言わせると、外族は1度目の闘いでその数を異様に減らしたという。
 力が強い代わりに、クリスやデリタのような完璧な人間形態を取れる者は、かなり少ないと。
 確かに後ろでざわめく外族の形態は人間に近い者もいるが、肌が緑色だったり角が
 数本頭に生えていたりと、到底完璧といえるシロモノではなかった。

 「それは僕も賛成ですねぇ・・・何しろここはスィーフィードさんを祭る神殿なんですよ」

 1歩、ゼロスが前に出る。
 デリタはその言葉を聞くと声を立てて笑った。
 闘いの経験が無知であるか、ほとんどない者ならば、ただのふざけてあっているような光景だっただろう。
 しかし顔は笑っていても2人の周りにあるオーラは―――違う。

 「それじゃあ辛ェよなァ!・・・それじゃァ・・・てっとりばやく終わらせちまった方がいいよなァ・・・」

 にっこり笑うゼロスに、手に白い光を集めながらデリタが地を蹴って突っ込む。
 その俊敏としか言い様のない動きに、ゼロスは微塵にも動揺せずに空間を渡って
 後ろに現れ、デリタの背中に魔力を上乗せした錫杖を突きつける!
 だが、それを気配で察したデリタは身を仰け反らせて交すと、後ろに向かって光を炸裂させた!

 ズドォォオオオンッ!!

 一瞬だけ神殿が大きく揺れる。
 が、ゼロスも結界でそれを防いたのが、何事もなかったかのように悠然と立っている。
 デリタも別に同様などせずにその様子を見て、ニヤリと笑った。

 そんなデリタとゼロスの闘いに感化され、後ろにざわめいていた外族もディース達に襲い掛かってきた。

 「ラ・ティルト!!」

 アメリアが手をかざして叫ぶと、いつもの数倍に拡大された蒼い閃光が外族を襲う。
 タイムロスを避ける為に、ディースは詠唱無しでも魔力が発動するような力を与えていたのだ。
 しかし、雑魚でも外族でもある。こちらで言うレッサー・デーモンなどの力の非ではない。
 確かに中心にいた数匹は滅んだであろうが、他の外族はピンピンしている。

 「おおおっ!!」

 ガウリイも向かってきた外族に力を加えたブラスト・ソードで一刀両断していく。
 その近くではリナがガウリイを援護するように、闘っている。

 「ダイナスト・ブレスッ!!!」

 魔力を高まったので遠慮する事なく、リナはどんどん攻撃魔法を使っていく。
 対してゼルガディスはガウリイと同じように、魔力剣で応戦している。
 ユニットもきゃあきゃあと楽しそうな声を上げながら、ロッドに触れた外族を
 軽々とした手の動きで(ほとんど立つ位置は変わってない)次々と滅ぼしている。
 ディースもディースで、さも力が弱まっているような振りをしながら、時間をかけて滅ぼしていった。

 ゼロスとデリタもその光景を視界に移しながらも、激しい戦いを繰り広げていく。
 デリタが攻撃を避ければ、その間合いに素早く入り攻撃し、もう一度それを避けて今度はデリタが
 ゼロスを攻撃し、ゼロスが防ぐか避けるかを想定して、違う攻撃を繰り返す。
 力は―――互角か―――それとも少しだけ上回っているのか・・・。










 ふとディースが1体の外族を滅ぼした時、虚空に顔を上げた。
 立ち止まったディースを襲ってくる外族がいるが、先ほどを変わらぬ動作で攻撃していく。
 周りで闘っていた30ダースくらいの外族は、すでに5ダースくらいに減していた。
 しばらくそれを見ていた後で、ディースはアストラル・サイドから話し掛けた。

 【どうしました?ディースさん】

 すぐに答えが返ってくる。
 ちらりと目線を向けると、丁度ゼロスはデリタとの間合いをとった所だった。

 【あいつが来たみたいだから、もうやっちゃっていいよ】

 「【分かりました】デリタさん・・・といいましたね」

 ゼロスはディースにそう答えると、にっこりと開眼しながら、デリタに話しかける。
 少し変わった雰囲気に、デリタは表紙抜けしたような間抜けな声を出す。

 「んァ?」

 「あなたと遊んでいる暇はなくなりましたので、それでは」







 ドンッ!!!!!








 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・にィ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」








 デリタの背中から胸に突き刺すものは、魔力弾でもなく錫杖でもなく、紫がかった漆黒の三角錐。

 ゼロスの本体―――。

 上回っている力を持っていたのはデリタではなく、冷笑して立っているゼロスだった。
 クリスが与えた力より―――ディースが与えた力の方が、勝っていたのだ。

 「さようなら、デリタさん」

 ゼロスが言ったその言葉は、虚空に砂となって消えるデリタには、聞こえなかっただろう。























 「デリタは失敗したか」

























 神殿の祭壇の方の虚空から声がしたのは、デリタが消えた数秒後。































――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



梓:・・・やっぱり何だか10話で終れないような気がしないような・・・(滝汗)
K:どっちだ、それは。
  というかその前に、1話ごとの大まかな設定は決めておけ・・・。
梓:やだなぁ・・・よく言うじゃないですか!!「イキアタリバッタリ」って。
K:(Kの目に殺意が沸く!!)
梓:そっ、それでは皆さん「きゅう」までさよーーーならーーーーーぁ!!!(マッハ逃走)



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29891月光王・きゅう桜月 梓 2004/4/25 20:21:52
記事番号29847へのコメント


梓:ゆっくりとまったりと気長に連載でも・・・と始めた月光王も今回で9話になりました。
  ・・・ふぅ・・・本当はもう少し短めにする予定だったんですけどね。
L:これ以上短くしたら、本当にあたし達の出番がなくなっちゃうって言ってるじゃない。
梓:大丈夫ですって、再会させますから。
L:本当に?
  会いたいんだからそこのシーンはちゃんと書いてくれないと、あたし、この
  新品の刺付きハンマーの威力試したくなっちゃうわ(泣き真似しながら手に持つ)
梓:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が・・・・・・・・・・・・・・・・頑張らせてもらいます(汗)
  あ、あの、ここらへんで「きゅう」に行きましょうかっ!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







 祭壇の前に、緑色のマントを羽織った1人の男が立っていた。
 デリタやルスタと同じく、緑色の髪と緑色の瞳を薄明かりに照らさせている。

 “美老人”でも“美中年”でも“美青年”でもなく、まぎれもない1人の “美少年” 。

 しかし、少年が放っている威厳・・・プレッシャーはとてつもなく凄まじいもので
 ディースに魔力を高めてもらったリナ達やゼロスでさえもが、少しも動けない。
 だが等のディースだけは、いつものように穏やかに笑ったまま片手を上げた。

 「やぁ、クリス・・・と僕達に呼ばれるのは好きじゃなかったんだっけ?
  それじゃあ改めて。
  降魔戦争以来だから一千年と十数年ぶりだね、クリスファンド=ヴェルジオール」

 クリスはディースに名前を呼ばれると、すぐさま嫌悪したような表情になる。

 「慣れなれしく口を聞くな」

 クリスの言葉は無視してディースはしゃべり続ける。

 「最初誰かと思っちゃったよー。確か前は中年の髭が似合うおじさんの姿だったしさ。
  ・・・あ、もしかしてフィブリゾに感化されちゃった?」

 その言葉に驚いたのはリナ達である。
 冥王・フィブリゾ、数年前にリナ達が対峙し、倒した魔王の腹心の1人。
 (まぁ、あれは気がつかなかった事が『自業自得』としか言えないのだが・・・)
 何故その彼の事が今出てくるのか分からずに首をかしげていると、それを見た
 ディースがくすくすと笑ってリナ達にと人差し指を立てて言った。

 「彼らが生まれた歪みを最初に見つけたのが、フィブなんだ。だからだよ。
  フィブの言った通りで、その姿だと多くの人間が油断してくれただろうね?」

 嫌悪の表情を消して肯定するようにクリスが鼻でせせら笑う。
 渋い顔をするリナ自身、フィブリゾのその魂胆に引っ掛かった事があるのだ。

 「月光の王―キング=オブ=ザ=ムーンブラス―・・・金色の弟―ブラザーズ=オブ=ナイトメア・・・」

 クリスが口を開く。

 「今宵こそ、貴様を葬り、金色の魔王を葬ってみせよう・・・」






















 きゅう






















 「それは出来ない相談だね。みすみすやられてあげるわけにはいかないし」

 錫杖を手でくるくると回しながらディースはにこにこと笑って言う。
 冷笑していたクリスはその表情が気に入らなかったのか、声に嫌悪の色を混ぜる。

 「力の落ちた貴様ごときが力のない人間ごときと、どう抗えるというのだ?」

 戦闘態勢を取ったままのリナ達がディースの周りに集まり、まるで力のない者を
 守るかのように、ディースの隣に立ちはだかるのを見てクリスは言う。
 しかしそんな挑発にディースは乗らない。

 「人間ごときとはまた酷いなぁ・・・皆は僕の仲間なんだけど?」

 「ふっ!」

 鼻で笑い飛ばしながら軽く振り上げた右手を、クリスは下に振り下ろす。
 途端に、こちらも動けなくなっていた雑魚外族の残りが一気に襲いかかってきた。

 「あー、うっとおしい!!ドラグ・スレイブ!!!!!!」

 リナがそう叫びながら姿勢を変えて群れる外族に向かって放つと一撃で滅びていく。
 だが、その中から逃れた1匹の外族がディースへと突進していった!
 それに気がついたディースはすぐさま錫杖を構えたが、間に合わずに衝撃音とともに
 輪から大きくはじき飛ばされる。
 リナ達がディースの方を向きディースが体制を持ち直そうとする、その一瞬の隙を
 冷笑しながら見ていたクリスが、見逃すはずがなかった。
 懐から1つの小さな金の球を取り出し、ディースの方に向けて、ぱきんっ!と指でかち割った。
 それと同時に、水色の透き通ったクリスタルがディースの体を硬く閉じ込めた。



 「・・・これでもう止められないわね・・・」



 ユニットがそう言ったが、小さい声だったので誰にも聞こえなかったようだ。

 「このクリスタルは・・・冥王様が使っていたものと・・・同じものですね?」

 「そうだ―――奴の魂をクリスタルに具現化させたのだ」

 ゼロスの問いに答えられたその言葉に、4人の顔に酷く苦い表情が浮かんだ。
 フィブリゾとの闘いの時。
 彼はリナを残した全員を、目の前にそびえるクリスタルに閉じ込めた。
 彼は怪しく笑ってリナに言ったのだ。

 【―――クリスタルが砕ければ中の人間は死んじゃうんだ―――】

 勝ち誇った冷笑を浮かべながらクリスタルに無造作に手を伸ばすクリス。

 ビキッ・・・!

 その動作に連動するように、クリスタルの表面に無数のヒビが走った。

 バキンッ!ピシィッ!

 そのヒビは走る事を決して止めない。
 ヒピとクリスタルに反射する薄明かりのせいで、もうディースの表情は見えなくなっている。

 ピシンッ!

 一瞬―――ヒビが走る音が止み。






















 パキ―――――――――――――――――――――――ンッ!!!!!!!!!!






















 次の瞬間、クリスタルは澄んだ音を上げて粉々に砕け散った。
 薄明かりの光をきらきらと反射しながら、クリスタルの破片は虚空に舞い落ちる。

 【―――このクリスタルはねぇ、砕ける時がすっごくキレイなんだ―――】

 リナの頭の中で、しまいこんでいたはずのフィブリゾの言葉が響いた。
 彼を失いそうになった前の瞬間に聞いた言葉が。
 
 「ふ・・・ふはは・・・ふはははははははははは!!!!!!月光の王は滅びたのだ!!!!!!!
  ようやく・・・ようやっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何っ?!!!!!」

 狂ったように嘲笑っていたクリスだったが、ある一点を見て驚愕する。
 クリスタルが砕け散った場所に、滅ぼしたはずのディースが立っていたからだ。
 いつもと何も変わらない静かな穏やかな微笑を浮かべながら、悠然と立っている。
 驚愕したままのクリスは、じりっとあとずさる。

 「貴様・・・何故・・・何故・・・生きて・・・!!」

 「あの程度の小技で僕が滅ぼせると本気で思ったのかい、クリスファンド=ヴェルジオール?」

 神殿に響いた静かな声に、もう1歩、クリスはあとずさる。

 「君『ごとき』が、僕の魂全てをクリスタルに具現化出来るはずがないだろうに・・・。
  あの具現化したクリスタルは、僕の力の末端さ」

 「フィ・・・フィブリゾは・・・!!」

 「フィブリゾが使えたのは、相手が『人間』だったからだよ。少し考えれば分かっただろう?」

 月光の王と人間では、魂、生命の力が、どんなに比べ物にならないか誰にでも分かる。
 クリスはフィブリゾの力を過信し、疑いもしなかった、それだけのこと。










 「僕には止められないよ?」







 苦笑まじりに言うディースに、クリスはびくりと震える。








 「何っ・・・?!!」








 もう1歩あとずさるクリスに、ユニットが軽く溜息をついて言った。









 「とうとうキレちゃったのよ。クリスがディースにしてくれた事にね」











 「ま・・・まさか・・・っ!!」
















 「そのまさかよ(だ)」







 重なる男女の、神々しいほどに綺麗に透き通る声。
 虚空からふわりと地面に降り立つ、長い金髪金眼の女性と長い黒髪黒眼の男性。
 ゼロスはその2人を目の当たりにするとスッと膝まついた。

 「―――久しぶりだね―――姉様、兄様」

 にっこりとしながら、ゆっくり言うディースの言葉に、その場にいた誰もが沈黙する。







 降臨せしは




 金色の魔王―ロード=オブ=ナイトメア―と




 時空の海―クロノス=オブ=オーシャン―





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



梓:・・・・キレちゃいましたねー・・・クリスさん勝ち目ないでしょうねー・・・。
K:そりゃあな。特にLが容赦しないだろう。
梓:・・・ですね。
  それでは、最終話あくまでも予定の「じゅう」まで、皆さんアディオス!!
K:何故「アディオス」なんだ・・・。



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29912月光王・じゅう(最終話)桜月 梓 2004/4/28 18:47:18
記事番号29847へのコメント


梓:そしてやってきました最終話、あくまでも予定。
L:・・・かなりぶち壊しね・・・。
梓:いやそう言われても(汗)これ編集して打ち込みしてるわけじゃないんで。
L:あ、そういえばそうだったわね。
梓:はい。だからこの前書きでは“あくまでも予定”となるんですよねー・・・(汗)
  という事で、さっそくいってみましょう、「じゅう」!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 【・・・く・・・・・・っ!!!】

 歴然な力の差を見せ付けられた軍勢は、もはやその半分以下に減少していた。
 肩膝をつきながら大きく息をつく男は、目の前に悠然と立つ女性を睨んでいた。
 その女性は、その男を見下ろしながら威厳を保った声で言った。

 【・・・お前の歪みの力でこの我を滅ぼせるとでも思ったか】

 【ここまでだね、クリスファンド=ヴェルジオール】

 そう言うのは、男が利用するはずだった、女性の弱点でもある少年。

 【もう二度目はないと思え。―――歪みの中で、眠っているのだ―――】

 女性は、男へと手をかざした。























 じゅう























 「ろ―――ロード=オブ=ナイトメアに・・・く―――クロノス=オブ=オーシャン・・・だと・・・っ?!」

 微笑みなどかけらも浮かべずに自分を見る2人を目の当たりにし、クリスは動揺する。
 ユニットはそれを見てからLとKの方に歩き寄って隣に立つ。
 かつんっ!と足音を上げて、Lがクリスの方へ進み出た。
 顔は真っ青になりながらも唇を噛み締め、クリスはそのプレッシャーに耐える。
 その様子を見ると、Kが無表情のままに言う。

 「・・・ほう・・・?その精神でLのプレッシャーに耐えるか・・・」

 足を止めて、クリスにLは怒りと力を込めた声色で名前を呼んだ。

 「・・・クリスファンド=ヴェルジオール・・・」

 クリスがびくりと震える。 
 あの仕事口調を聞いたのは久しぶりだなぁと、何とものん気にディースが考えていると、
 クリスの前に雄雄しく立ったまま、Lはクリスを見下ろして言葉を続ける。

 「あの時我は“二度目はない”といったはずだが・・・我の忠告も聞かずに二度目を起こしたばかりか、
  我が弟を標的にしたのも・・・これで二度目となったのだ・・・」



 ゴウッ!!!



 瞬時にLの周りに混沌の力が集まってくる。
 被害が及ばないように、ディースは素早くリナ達の周りに混沌の結界を張った。
 残っていた他の雑魚外族は、そのLのプレッシャーで全て滅びていく。
 クリスは尚もしぶとく結界などを張っているが、それもいつまで持つものか。

 「そんなに我に反逆したいというのならば良いだろう―――。
  二度と反逆など出来ぬように・・・我がお前の歪み本体に直接・・・滅びを。」

 Lが手をかざすと、ばしりっ!とクリスの結界が解かれる。
 そしてKとユニットもLを挟むように隣に立つ。

 「金色の魔王に逆らいし精神、それは我らが作りだした混沌そのものに抗いし意志。
  ・・・強制的に封印を解いたその時・・・我の時空にも影響をきたしている・・・」

 「そして、月光の王を滅ぼすという事は銀河の法則そのものを、無にしてしまう事。
  あなたが赤の世界に降り立った時、私が管理する宇宙空間にも影響が及んだ」

 Kとユニットも、Lと同じようにクリスに手をかざした。
 その3人を中心に混沌の力はどんどん増していき、その増した力はクリスの体へと収縮していく。
 その混沌はクリスの体の中からその魂を滅びへと少しずつ導いていく。
 その力に地面に伏せるクリスはもがき苦しんでいく。


 「ぐっあ・・・ああぁぁあ・・・ぁぁあああああ・・・・あああああぁぁあああ!!!!!!!!」


 何もせずにそれを見ていたディースは、そこで初めてクリスへと近づいた。
 1歩1歩歩くごとに、ディースの周りにも漆黒と白銀の光が収縮し渦巻き始めていく。
 苦痛と恐怖と悲痛の叫びを上げ続けるクリスに、ディースは手ではなく錫杖をかざした。
 クリスを少し哀れみの色を含んだ瞳で見下ろすと静かに言った。


 「クリスファンド=ヴェルジオール。・・・今、我らの力もて・・・汝に安らかな滅びを与えよう。

  ―――静かに混沌の底で眠り続けるが良い―――」



















 そして、漆黒と白銀の光力が4人を中心に、クリスを包み込んだ―――。

































 
 朝の光が神殿の中に差し込んできた頃、ディースはリナ達の結界を解いた。
 圧迫されるようなプレッシャーが消えるのを感じると、リナ達はそのままぺたりと座り込む。



 ―――これが、世界の創設者達の力(の一部)―――。




 「さて・・・改めて久しぶりね、ディース。元気にしてたみたいね、良かったわ」

 Lが落ち着いた表情でディースの方を向くと、ディースもにっこりと笑った。

 「うん、久しぶり。姉様も元気そうで安心したよ。それに兄様も来てくれるとは思わなかったな」

 「もう少しいたいが、ゴドリック達が呼んでいるから、もう帰らないといけない」

 Kは肩を竦めて苦笑する。
 するとユニットもくすくすと笑いながら頷いた。

 「私ももう帰らないとフェアリーが心配するわね。終わったらすぐ帰るって言っちゃったから。
  ・・・ディースはどうするの?まだここにいるの?それともLと帰るの?」

 その問いにディースはただ笑って答えると、Lに「ちょっと待ってて」と言う。
 そしてリナ達の方へと向き直る。
 錫杖を掲げると、ディースが高めていた魔力は一瞬にしてリナ達から消えた。

 「否応無しに闘いに巻き込んじゃったけど、助かったよ、ありがとう」

 ディースが笑ってそう言うと、呆然としていたリナは我に返って、苦笑した。

 「少し疲れたけど・・・嫌ではなかったわね」

 その答えにくすくすと声を立てて、ディースはもう一度錫杖をかざす。

 「そっか。じゃあ、今回のせめてものお礼に・・・。
  ――― 汝等に 月光の加護を 捧げよう ――― 」

 ふわりと5人の周りに優しく暖かな白銀の光が舞い降りる。
 その光は全ての傷を癒し、全ての疲労を回復し、全ての魔力を戻していく。
 ふいに声を上がる。
 そちらを振り向くと、黒髪の青年が驚愕した表情で自分の手を見つめていた。
 そう、人間に戻ったゼルガディスである。

 「ゼルガディスのはオマケ」

 にっこりとディースは微笑みを浮かべてそう言うと、Lの方へ歩き寄った。
 そのディースを見てLも優しく微笑すると、リナ達の方を見る。

 「弟が、世話になったわね、あたしからもお礼を言うわ・・・・・・ありがとう♪
  あんた達は特に気に入ってるわ、これからも楽しませてちょうだいね♪」

 「じゃ、リナ、ガウリイ、アメリア、ゼルガディス、ゼロス。本当にありがとう、またね♪」


















 そして、L、K、ユニット、ディースはその場から姿を消した。





 5人が最後に見たのは、ばいばいと片手を振るディース。





 ようやく、終わった―――。


















 しかし・・・・・・・・またねとはなんだったのか・・・・“またね”とは。













 END




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


梓:終わりましたよゆっくりまったり気長連載「月光王」最終話「じゅう」が。
  “予定”で終わらなくて良かったー・・・。
K:・・・いいのか?この短絡主義な終わり方は・・・ひねりないな。
梓:いや・・・それに関しては確かにちょっとは考えたんですけどね・・・ま、いっか♪となりました。
K:待て。
梓:見てる人はいるかどうか分かりませんが、一先ず「月光王」連載は終了です!!
  次からは短編が少し続いて、気力があればまた連載を始めたいと思ってます。
  それでは、私の気力が復活するまで、さよーーーーならーーーーー!!!



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29924面白かったです!紗希 2004/4/29 18:06:48
記事番号29912へのコメント

こんにちは、桜月さん!
月光王シリーズ、またとなく読みまくってしまいました!
?:その割には、レスしないし、前の時には言わないし…
やかまし。
お前はひっこんどれ、混沌へ!
?:……。

>梓:そしてやってきました最終話、あくまでも予定。
>L:・・・かなりぶち壊しね・・・。
>梓:いやそう言われても(汗)これ編集して打ち込みしてるわけじゃないんで。
>L:あ、そういえばそうだったわね。
>梓:はい。だからこの前書きでは“あくまでも予定”となるんですよねー・・・(汗)
>  という事で、さっそくいってみましょう、「じゅう」!!
小説が、正しく『書き殴り』とは……!!
?:お前とえらく違うな……
だからやかまし―!
?:お前は詩でしかやれんじゃないか。
  小説なんて、まともなのってあったか?
うるさい!
『今宵〜』は今の所、1番まとも!
?:…せめて自分のガキの小説を1番に持ってこいよな…

> 「そんなに我に反逆したいというのならば良いだろう―――。
>  二度と反逆など出来ぬように・・・我がお前の歪み本体に直接・・・滅びを。」
やっぱり、L様って最強ですねv
なんか、フィブリゾを思い出しました。
それにしても、マイナー魔王が出てこないとは、驚きですv

> ふわりと5人の周りに優しく暖かな白銀の光が舞い降りる。
> その光は全ての傷を癒し、全ての疲労を回復し、全ての魔力を戻していく。
> ふいに声を上がる。
> そちらを振り向くと、黒髪の青年が驚愕した表情で自分の手を見つめていた。
> そう、人間に戻ったゼルガディスである。
>
> 「ゼルガディスのはオマケ」
よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!
?:良かったな、全員…
ゼルが元に戻った!!
?:…そう言えばそうだったな。お前、結構ミーハーだし。
そう!だからお前も美形!
?:…………。

> しかし・・・・・・・・またねとはなんだったのか・・・・“またね”とは。
え!?
また出てくるんですか!?
?:何が言いたいんだ?
え?
だから、もう1回連載でもやってくれるんかな?って。
?:その苦しみは、お前も知っているだろ。
む〜…。

>梓:終わりましたよゆっくりまったり気長連載「月光王」最終話「じゅう」が。
>  “予定”で終わらなくて良かったー・・・。
良かったですねv
私など、続ける事が出来ない上に、終わらせることが下手ですからv
?:自慢するな

>K:・・・いいのか?この短絡主義な終わり方は・・・ひねりないな。
>梓:いや・・・それに関しては確かにちょっとは考えたんですけどね・・・ま、いっか♪となりました。
>K:待て。
いや、良いでしょう!
?:だから、お前が言うな。
くどいけど、やかましいんじゃ―――――!!

>梓:見てる人はいるかどうか分かりませんが、一先ず「月光王」連載は終了です!!
>  次からは短編が少し続いて、気力があればまた連載を始めたいと思ってます。
>  それでは、私の気力が復活するまで、さよーーーーならーーーーー!!!
おめでとう!
これからを応援します!
?:私は母達の活躍がみたいしな
またねv

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29927Re:本当ですか?!(かなり嬉しい)桜月 梓 2004/4/29 19:31:10
記事番号29924へのコメント


こんばんは、紗希さん。お久しぶりですね♪
月光王シリーズを読んでいてくれたと?!
うわー・・・嬉しいですっ!
レスがあると恐縮しながらもやはり嬉しいかぎりです♪

>小説が、正しく『書き殴り』とは……!!

はい、本当にそのままの書き殴りと言えるシロモノですね。
いつもはメモ帳やら何やらに書いてからコピペして
こっちで編集して投稿してますから・・・多分、短編と詩を抜いて
連載としては珍しくも初めてですねー。

>> 「そんなに我に反逆したいというのならば良いだろう―――。
>>  二度と反逆など出来ぬように・・・我がお前の歪み本体に直接・・・滅びを。」
>やっぱり、L様って最強ですねv
>なんか、フィブリゾを思い出しました。
>それにしても、マイナー魔王が出てこないとは、驚きですv

大のL様FANですから、連載は殆どL様がらみが多いですねぇ・・・。
そうですねー、フィブリゾの名前を打ち込んでる時に思い出しました。
最後の部分「滅びを与えよう」だったんですけど、まんまなのでやめました。
あはは、私、部下Sの隠れFANでもありますからね(笑/どこが隠れ?)
まぁ、今回出さなかったのは、オリキャラ介入しまくりだったからです。

>え!?
>また出てくるんですか!?

・・・どうでしょう?(ニヤリ)
嘘です。紗希さんは月光王シリーズ初のレスさんなので、教えましょう。
次に書こうかと目論んでいる連載に、ディースさん出てきます!!
やはりこの連載がまた、L様がらみになってるんで(笑)
主人公は違います。今度はディースは脇役的存在になるかと・・・でもあくまでも予定です。

それでは、レスありがとうございました!!