◆−月光王・いち−桜月 梓 (2004/4/1 14:31:31) No.29739
 ┣月光王・に−桜月 梓 (2004/4/5 14:57:47) No.29778
 ┃┗月光王・さん−桜月 梓 (2004/4/10 20:06:58) No.29803
 ┣月光王・よん−桜月 梓 (2004/4/13 19:29:41) No.29817
 ┗月光王・ご−桜月 梓 (2004/4/15 19:34:19) No.29831
  ┗月光王・番外編 「宇宙(そら)」−桜月 梓 (2004/4/17 20:06:16) No.29840


トップに戻る
29739月光王・いち桜月 梓 2004/4/1 14:31:31



梓:ゆっくりまったり気長連載始めました。
L:ちょっと何それ?どっかの飲み屋の「○○○始めました」的な発言は。
梓:いや、月光王様の話を本格的に書こうかなぁと思いまして。
  って・・・L様、飲み屋行くんですか・・・?
L:今は関係ないでしょ。さっさと始めなさい!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 いち




 「まったく・・・・・・クリスは結局何も学んでいかなかったね・・・・・・」 

 「躾がなってないのよ。アレ位で滅ぶなんて情けないったら!!」

 「まぁまぁ、2人とも落ち着け」

 「でも、こうなった以上僕はどうしようか?」

 「・・・・・そうねぇ・・・・・・。・・・一段落するまで・・・シャディの所にでもいる?」

 「あぁ、それでも私は構わないぞ」

 「ありがとう兄様。じゃあ、何なら兄様の世界の中の方がいいな、僕は」

 「確かにその方がいいかもしれないわね」

 「分かった。神託、出しておかなくちゃな・・・」

 「部下の記憶は封印しとくわね。今まで以上に存在知られたら厄介だもの」

 「うん、僕もそうしてくれた方がいいと思うよ」

 「私も力を上乗せるすか?」

 「大丈夫よ。ここに戻ってきて刺激するまで。それじゃ、ディース―――」

 「それじゃあ姉様」


 「「また、いつか」」


 「ディースはしっかり預かる。少し忙しくなるがお仕置きはほどほどにな?」

 「分かってるわ。・・・えぇ、ディースをお願いね」

 「あぁ」










 ――― そして一千年と数十年の月日が流れた ―――











 場所はゼフィーリア。

 ある森の中の小さな広場に1人の女性が立っていた。
 ―――里帰りしてきたリナ=インバースである。
 ルーク=シャブラニクドゥの戦いの後から、何故だか、だんだんと魔力が増大・・・・というより暴大し始めた。
 姉のルナ曰く、「デモンブラッドを飲み込んで吸収したから」らしいが。
 何とかルナに力を抑えてもらったリナだったが、この魔力でどこまでの魔法を
 使いこなせるのか実験していたのだ。
 もちろん、危ないのでギガ・スレイブこそは試さないものの、ラグナ・ブレードは
 何と完全版を前よりもかなり持続できるように制御できたのが昨日の事。
 すぅっとリナは息を吸い込み、呪文を唱え始めた。

 「太陽と対なりし 混沌に漂う月光よ―――
  金色の光を纏う汝よ 今我の力に手を差し伸べ力をかさん―――
  我リナ=インバースの名の元に その姿を現したまえ―――!!!」

 そして―――何も起こらない。

 「・・・たははっ(汗)やっぱり失敗だったか」

 少し気恥ずかしくなり、リナは中央からくるっと背を向けた。


 すたんっ!!


 何かが上手に着地したような音が、後ろからした。
 驚き、ばっと振り向いたリナは“それ”を目の当たりに、硬直してしまった。
 今の呪文は、かの伝説の中の伝説である、魔王のさらに上の魔王・・・・
 その者の力を対とする者の力を借りた、かなり高位に値する召喚呪文。

(最も禁書に置かれているであろう文献に、たった2行しか書かれていないが)

 クレアバイブルを見、なおかつギガ・スレイブを使ったことのあるリナになら
 そのイメージはたやすい事だった。
 しかし、それでも失敗すると思っていた。

 「(い・・・・・いくら・・・ラグナ・ブレードを制御出来たとしても・・・・)」

 呆然としたままのリナの頭の中では、その言葉がぐるぐると回り続けている。
 そんな事を知ってか知らずか。

 「やぁ、初めまして♪君が僕を呼び戻してくれた本人さんだよね♪?」

 リナが召喚してしまった。
 その金髪金眼の青年は、にっこりと笑いながら、リナにそう問いかけてきた。





 ――――――――――――――――――――――――――――






 つか つか つか つか 


 少し早足で歩く青年は、とあるガーゴイルの前で合言葉を言い、螺旋階段を上って
 ガチャリとドアを開け、机に座っていた1人の老人を見やった。
 その老人はその老いが嘘のように、すっくと立ち上がる。

 「結構この世界での生活も面白かったけど、僕は帰る時が来たみたいだから。
  アルバス、今までありがとう♪あの子を宜しくね?」

 にっこりと笑って青年が言うと、アルバスと呼ばれた老人はゆっくりと頷く。

 「もったいないお言葉ですじゃ・・・・無論、あの子を守る事がわしの使命・・・」

 「重々しく感じても余計気を張るだけだよ?暇を見て、また来るとするから♪
  まだリドルを存分にからかってないし♪多分兄様も来るんじゃないかな?」

 楽しそうな青年に、アルバスも長い髭を撫でながら顔を緩めた。

 「兄様に連絡頼んだよ。じゃ、僕は行くね」

 スッとその場から姿を消す青年。アルバスはしばらくそのままだった。


 ―――――――――――――――――――――――――――






 青年は驚いた表情をしたままのリナを見、くすくすと笑う。

 もう1度青年はリナに笑いかけて言葉を発しようとしたが、それは遮られた。
 いつのまにかガウリイがリナの後ろに立っていてディースを睨んでいたのだ。
 そんなガウリイの出現に、リナはここでようやく我に返った。

 「ちょ、ちょっとガウリイ?!何でここに?!」

 リナの問いにガウリイは黙ったまま答えない。
 そのガウリイの真剣さに、リナも口を閉じる他なかった。
 しかし、等のディースはガウリイの殺気を諸共せずに2人に微笑みかける。
 少しもディースに対する警戒は怠らずに、ガウリイが低い声を出した。

 「お前―――人間じゃないな?」

 ディースは楽しそうに、否定せず軽く頷いた。

 「僕はリナの召喚呪文でここに来れたから、それはそうだねぇ。
  うん。僕はリナにお礼が言いたいくらいだよ?
  だって、僕をここに、赤の世界に呼び戻してくれたんだから♪」

 赤の世界。
 その言い方に、リナがまた驚きに目を見開いた。
 滅びたと言われる赤い竜神スィーフィードと、本体がカタートに封印されし
 赤眼の魔王シャブラニクドゥが神魔の上に立っている、リナ達の世界の現状。
 しかしそれはリナがクレアバイブルに触れ、その呼び名を知っていただけ。
 普通にこの世界に住む人間ならば、その呼び方すら知らないだろう。

 「リナ=インバース、ガウリイ=ガブリエフ。・・・・君達なら分かるはずだよ?
  この僕の気配はね。あの空間に入った、君達2人なら」

 ディースの見据えた微笑みに、一瞬、ふと脳裏をよぎるデジャ・ヴュ。
 そして周りに感じる、空気の中の目に見えない威圧感。
 これにはガウリイも警戒を忘れてしまったようだ。
 数年前に直接感じた事のある、神々しくて全てを包み込むような気配―――。


 黄昏より昏き 暁よりなお眩ゆき

 全ての源が生まれし場所 全ての源が還りし場所

 すなわち


 「とことん―――」


 「あんたはぁああ!!!混沌って何回言ったら覚えるのよぉおおおお!!!」


 すっぱぁぁあああああん!!!

 かなり良い音を立ててリナのスリッパがガウリイの脳天を直撃した。
 ゼフィーリアの外だったならば、その台詞で半径5m位にいた魔族は滅びただろう。

 「冗談だよ、冗談。
  何とかの母とかゆー人がリナを連れて行っちまった所だろ?」

 シリアスなムードを2人に期待するのが無駄なのだろうか。
 その反対をしろと言ったとしてもこれまた無理だろうが。
 気を悪くする事なく、というか余計に楽しそうにディースは笑っている。

 「そう、混沌だよ。さっきの呪文、覚えてる?リナ」

 「え?そりゃ・・・・・・って、まさか?!!」

 さぁっとリナの顔から血の気が引いた。

 「太陽―――。
  金色の魔王と対なりし月は、リナの考え通り、僕の事だよ。
  僕はディース=コズミット、ディースって呼んでくれた方が嬉しいかな♪」





 1ヶ月後。
 リナ、ガウリイ、そしてディースの3人はともに旅に出る事になった。







 世には。
 
 魔道士達が知るものや、ヒロイック・サーガに出回る伝説がある。

 それは魔王と神との闘いの場面であったり。

 ある町を壊滅させた魔獣を滅ぼした剣のことであったり。

 純魔族をも一撃で倒せるという攻撃魔法であったり。

 1人の魔道士が魔族を退治して回る旅の話であったり。

 世界を創設した、混沌の海に漂う魔王の中の魔王の、禁呪の伝説も―――。


 しかしもう1つ。


 殆ど知られていない伝説が存在している。

 金色の魔王―――ロード=オブ=ナイトメアともう1人の者の伝説。

 混沌に漂う金色の魔王と対なりし月光の力を司りし者。

 存在を知る者たちは、その者をこう呼んでいる。



 キング=オブ=ザ=ムーンブラス ・ 『月光の王』 。




 そして。




 ブラザーズ=オブ=ナイトメア  ・ 『金色の弟』 。






 その者の名は。

 ディース。
 ディース=コズミット。


 本名を。


 ディスロット=カオシェール=トゥ=ナイトメアという・・・。









 時空宮。


 「ディ、ディース様が赤の世界に戻られたぁぁああああああ?!!!!!!!」

 部下の叫び声に、書類に目を通していたKが顔を上げる。

 「ん?それがどうかしたか」

 「K様っ?!あの方・・・ディース様は・・・L様が直々に!!まだクリスは!!」

 「・・・名前だけでは何が言いたいのか分からないぞ、ゴドリック」

 さらりと言い退ける上司に、ゴドリックと呼ばれた部下が床にへたれる。
 その肩にぽんと手を置くのは彼の同僚達。

 「諦めろ、ゴドリック。早急とはいえディース様の意志もあったのだ」

 「・・・何よりディース様ですもの、L様が良しなに計らってくれるでしょう」

 「・・・過保護すぎよ、ゴドリック・・・いつかは戻ることになっているんだから」

 「期限がまだあるのにか?!!早すぎだぁあああ!!!」







 ――――――――――――――――――――――――――――――




「―――まだ分からんのか?!!!」

とある神殿の中。
1人の怒鳴り声が響き渡る。

「総動員して奴を見つけろ!!奴はもうあの世界にいるのだ!!」

「わ、分かりました!!」

ばたばたと足音が去ると、怒鳴り声の主はまだ怒気がある声で呟く。

「早々に奴を見つけ―――滅ぼしてしまえ―――あの世界は我が手中に・・」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

K:聞いてもいいか?何なんだ、この連載もどきは。
梓:ゆっくりまったり気長連載ですっ。
K:読みにくい。
梓:しくしくしくしく・・・分かってますけど・・・そんな事・・・。
  ちなみにこれは碧の世界(ハ○ポタ)と繋がってるので分からない人は
  さらっと流してやって下さい。私の趣味なので。

※ゆっくりまったりなので「に」をいつ更新するか分かりませんので。
 あしからず・・・。ではでは。

トップに戻る
29778月光王・に桜月 梓 2004/4/5 14:57:47
記事番号29739へのコメント


梓:ゆっくりまったり気長連載「に」でえす。
L:・・・本当遅かったわね・・・。
梓:前のあとがきでちゃんと言いましたから。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





 どんぐあらがっしゃんぱりーんっ!!!!!!!!!!!!!!!



 ルナは盛大にずっこけた。

 「でぃでぃでぃディース様・・・・っ?!ななななな何故っ?!」

 「こんにちは。まぁそういうワケでリナ達と一緒に旅することにしました」

 ディースはにこやかにずっこけたままのルナにそう言う。
 リナは最強(最恐)だと思っていた姉のこんな姿を目の当たりにし、呆然としている。

 「わわわわ分かりましたが・・・りりりりリナ絶対に迷惑かけるんじゃないわよ!」

 「ひゃ、ひゃいっ!!」

 しかしルナに絶大な迫力で睨まれて、返事した声が裏返ってしまった。
 隣でガウリイは良く分からんという風にぽりぽりと頬をかいていた。






 に







 「やっとついたねセイルーン♪」

 城下町から聳え立つ大きな城を見上げて、ディースはにこにこと言った。
 後ろのガウリイはゆっくりと大きく頷いた。

 そう。ここまでの道のりは長かった。

 ディースが“対”だと分かった後、そしてルナに言われた手前なので、リナは
 極力、迷惑をかけないように控えな行動を心がけていた。
 もちろん、ガウリイはいつものように“リナまかせ”にのほほんとしていた。
 しかしディースはあれこれと「楽しそう」などと言い、寄り道に足を突っ込みまくる。
 それが延々と続き、今ではリナもそんな遠慮は止めて盗賊いぢめに励む毎日。
 誰も、ガウリイさえも止められない。

 結果。

 予定に立てていたより大幅に遅れてしまったのである。




 「それにしても久しぶりよね、セイルーンは。・・・あの子元気かしら」

 「あの子?」

 リナがポツリと呟いたのを耳にし、ディースは振り返る。

 「・・・前に旅してた仲間なんだけどね・・・この街に住んでる子なのよ」

 それが正義をたくの兆号金娘、もといセイルーンの第二王女だと言う事は伏せて。
 城を見上げて、リナは懐かしそうに思い出しながらそう言った。
 もちろんディースは誰なのか知っているが、聞かれなかったから答えなかった。


 げしんっ!!


 その音の方を振り返ると、人だかりの山が出来ていて中心は見えなくなっていた。
 しかし2、3人の怒声を掻き消すように甲高い声が朗々と上げられた。

 「か弱いおばあさんから金品を強奪するとは、それすなわち悪!!
  このセイルーンでそんな悪はこの私が許しませんよ!!正義の鉄槌をくらいなさいっ!!」

 どこか聞きなれた声のどこか聞きなれた台詞と、もう1度蹴り倒した音付きが
 ご丁寧にも3人の耳に向かって真っ直ぐ飛び込んできた。
 リナとガウリイは顔をちらりと見合わせて、その中心へと歩きよる。

 「大丈夫でしたか?」

 「あぁ、ありがとうございます・・・。ほんに助かりました」

 膝をついていたおばあさんに手をかすのは、肩にかかる黒髪を揺らす1人の少女。
 そのおばあさんを見送って、くるっと振り返るその少女と3人は目が合った。
 一瞬だけ沈黙するその少女だったが、ぱぁあっと顔を輝かせた。

 「おおっ!
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アメリアじゃないかぁっ!」

 長い沈黙の後でぽんっ!と手を打つガウリイに、少女は頭からずっこけた。

 「嬉しいです!!・・・と言いたいです所ですけど・・・その沈黙は嬉しくありません」

 感動(?)の再会では当たり前である。
 リナはスリッパでガウリイを沈めてから、ようやく少女を見てにっこり笑った。

 「アメリア久しぶり。身長は少し伸びたけど、そういう所は変わってないんだから」

 「お久しぶりです。そういうリナさんも変わってませんね・・・ガウリイさんも」

 立ち上がって呟く少女―――アメリアは、苦笑しながらリナにそう言った。
 地面に伏せて“冗談なのに”とうめくガウリイを、ディースは笑って見ていた。
 ふと、アメリアはそんなディースに気がついた。
 くすくす笑っていたディースもアメリアの視線に気がついて、軽く挨拶した。

 「やぁ、こんにちは、ディース=コズミットだよ。リナ達と旅をしてるんだ♪」

 その言葉にアメリアは盛大に驚いた。

 「えぇええっ?!!リナさんとっ?!!命は尊いものです、もっと冷静に!!」

 ぴくりとリナの眉が動き、アメリアに向かって手を伸ばす。

 「ふっふっふっ・・・アーメーリーアーちゃーん?どういう意味かなぁ?」

 「そういう意味で・・・・ひぇあああ嘘ですぅううリナさんごめんなさぁああいっ」

 頷きかけるがリナの真面目な瞳に気がついて、すぐさまアメリアは否定した。
 それをまたまたくすくすとディースは笑いながら見ていた。






 ――――――――――――――――――――――――――――――――






 「はい?今何と?」

 珍しくもそう聞き返す部下に、上司は苦々しくもう1度だけ言った。

 「リナ=インバース殿と剣士殿がまた旅に出た」

 「・・・あの・・・リナさんには“手を出すな”と魔王様から命令を受けて・・・」

 「分かっている・・・最後まで話を聞け・・・。
  その旅の仲間に新しく金髪金眼の青年が同行しているらしい。
  リナ殿の敵意をこちらに向けさせずに、その青年が何者か調べて来いと」

 「・・・何で僕が・・・」

 「お前はリナ殿達と面識があるだろう」

 「・・・それはそうですが・・・結局とばっちりは僕がくうんですね・・・」

 「・・・お給料上げてやるから頑張って来い・・・」

 上司と部下はそう言い終わると沈黙した。





 ――――――――――――――――――――――――――――――――



 「何・・・見つけたと!!」

 いらいらしていた男は報告を聞いて、がたんっ!!と立ち上がる。

 「はっ!赤の世界で旅をしている模様にございます」

 「・・・くくく―――ようやく―――ようやく見つけた・・・」

 歓喜の声を上げるが、ふとその言葉を止める。

 「旅だと?」

 「はっ!報告では女魔道士と男剣士とともに旅をしている様子にございます」

 「ふむ・・・早々に芽はつみたい所だが・・・」

 忌々しそうに男は呟いてから沈黙し、しばらくして報告を持ってきた男に言う。

 「・・・もう少し詳しく調べて来い・・・情報は多くに越した事はなかろう」

 「はっ!」

 男が去ると、男はどっかりとイスに座りなおした。

 「―――奴を滅ぼしてしまえ―――そうなればあの世界は我が手に―――」

 そしてもう1つだけ呟いた。

 「金色の王・・・そんなモノなど我が前には無用に等しい」





 ――――――――――――――――――――――――――――――――






 「ディースが?・・・そう、もうそんな時期だったのね」

 『あぁ』

 女性は机の上にぱさりと書類を置くと、鏡に向かって話しかける。

 「・・・大丈夫・・・と言いたい所なんだけどね・・・クリスの方、頼めるかしら」

 『もちろんだ。ただ、良い報告にはなると思えないがな』

 「・・・そうね」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


梓:しりきれとんぼでゆっくりまったり気長連載「に」を終わります。
  「月光王」作者代表・・・桜月梓・・・。
K:・・・。
梓:すみませんごめんなさい許して下さい。
  ただ明日始業式なので、今日で春休み最後なのでボケてみただけですはい。
K:確かにしりきれとんぼだな。
梓:はいそうです。そしてあとがきもしりきれとんぼで終わります。

  ではでは。


トップに戻る
29803月光王・さん桜月 梓 2004/4/10 20:06:58
記事番号29778へのコメント


梓:そして伝説に・・・なりもしない駄文のゆっくりまったり気長連載「さん」更新です!!
L:長いわよ。せめて「駄連」にしなさい。
梓:いやそれは(汗)もはや何の略なのか分かりませんよ、L様・・・。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――











 「K様!!K様大変ですぅうううう!!!!!!!!!!」

 「どうした、ロウェナ」

 ばたばたと慌てて走ってくる部下に、Kは怪訝な顔をして振り向いた。
 同僚の部下たちも、いつも冷静沈着で落ち着いているロウェナの慌てぶりに首を傾げる。
 Kの前まで来るとロウェナはぜぇはぁと肩で息を整えてから書類を引っ張り出す。

 「ほ、報告、し、します!!クリスは・・・すでに赤の世界にいるという事です!」

 かすかだがぴくりとKの眉があがる。
 他の部下達はあまりの事の大きさに驚いて、無言になってしまった。

 「・・・なるほど。ロウェナ、もう少し詳しく」

 「は、はい!!」

 そして、時空宮の中は一時騒がしくなっていく・・・。















 さん
















 再会したフィルは変わりなく、いつものドワーフか山賊と間違えられそうな体で
 アメリアの説得、というか

 「リナさん達とまた旅に出て正義を広めてきます!!」

 という言葉1つに

 「うむ頑張ってくるのだぞ!!」

 とだけ言い、後は大きくがっはっはっ!!と笑っていた。
 リナとガウリイがフィルの性格を分かっていたので

 「(・・・おいおい・・・)」

 とか思いつつ、そしてそれを笑って見ているディースと一緒に、黙って
 その光景を見ていた。

 旅支度を終えたアメリアに、リナは聞いた。

 「行事はどうするのよ」

 するとアメリアは、えっへん!!と大きく胸を張って言ってのけた。

 「丁度帰って来た姉さんに全部押し付けてきちゃいました!!」

 「いいのか?それは」

 その威張りっぷりに対してガウリイが苦笑して突っ込むと、アメリアは頷いた。

 「いいんです!姉さん、ずっと道に迷ってばかりで私に押し付けてたんですよ?
  ようやく家に帰ってこれたんですから、少しはやってもらわないと!!」

 アメリアは言うが、それのどこまでが少しで全部なのかは計り知れない。

 「道に迷ってばかりって・・・」

 呟くリナ。
 ふと嫌に聞きなれてしまった高笑いが聞こえてきた気がして、ぶるりと頭を振った。

 「気のせい気のせいありえないありえない聞こえない聞こえない」

 「・・・くすくす・・・リナ?どうかしたの?」

 耳を塞いでぶつぶつ言うリナにディースが聞くが、リナは何でもないと答える。

 リナは思いたくなかった。
 かつて出会ったあの悪の魔道士スタイルのはちゃめちゃ姉ちゃんが、アメリアの姉なのだと。
 しかしそこで考えを終わらせてしまった、リナは、甘かった。












 「おーっほっほっほっ!!アメリアってば・・・もっとおおまかな仕事だったら良かったのに・・・
  どうしてこんなに細かくて地味で疲れる仕事ばっかり持ってくるのかしら」





 どこかの城のどこかの部屋で、彼女は時折高笑いを上げながらせっせと仕事をしていた。











 事実は―――時として残酷なものである。
















 セイルーンを旅立ったリナ達一行。
 森の街道を歩いていると、ふいにガサリ、と茂みが揺れた。

 「あ

 「帰れゴキブリ魔族。って事でルークの恨みだ吹っ飛べドラグ・スレイブッ!!!!!」










 ちゅどごぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおんっ!!!!!!!!!!!











 キラリ、と空の彼方に星が光った。
 いきなりの事に唖然としているガウリイとアメリアの横で、リナはぱんぱんと手を払う。
 その見ていない一瞬の隙に、吹っ飛んだ道をちゃっかりディースが復活させた。
 そして数分後。
 星になった何かのコゲた物体が、ずるずると地面を這いつくばって戻ってきた。

 「ひ・・・酷いですよぉリナさぁああん・・・いきなり吹っ飛ばすなんてぇええ(汗)
  それに、あの件はルークさんの意思でしょう?僕は何も関係ありませんよぉ」

 「傍観者が何言ってんのよ。それにゴキブリ魔族が1匹滅んでも、あたしには関係ないし。
  でもフィリアだったらかなり喜ぶだろーけどね」

 リナが冷たくそうきっぱり言い捨てると、そのコゲた何かの物体・・・もとい青年は
 すっかり拗ねてしまって、いじいじと暗く地面にのの字などを書き始めた。
 ディースはもちろん、アメリアもその青年を知っている。
 紫のおかっぱ頭、人の良さそうな、だがどこか胡散臭そうなにこにこ顔、黒の神官服、
 どこにでく売っているような宝玉のついた杖、そしてその声。

 そう・・・ゼロスである。

 ふいにいじけ終わって顔を上げたゼロスと笑っていたディースの目線が、ぱちりと重なり合った。
 一瞬だけその紫の瞳を開眼したが、むくっと立ち上がるとにっこりと挨拶をする。

 「どーも初めまして、僕はゼロスと言います」

 等のディースも何事もなかったかのように、ゼロスに向かって穏やかに笑った。

 「うん、初めまして、僕はディース=コズミット。ディースって呼んで♪」

 アメリアやゼロスの2人が、ディースの正体を知るのはいつになるのだろうか。
 しかし、そのディースの事。
 楽しめないからと、すぐにはバレないようにするのだけは、分かっている。












 ――――――――――――――――――――――――――――――――――












 「・・・と、いう事です・・・」

 報告しているうちに落ち着いてきたロウェナは、その言葉で報告を終わる。
 Kは黙ってしばらく何かを考えて込んでいたが1つだけ頷いた。

 「・・・ふむ、分かった。ロウェナはヘルガと一緒に引き続きクリスの動きを調べてくれ。
  ゴドリック、君はサラザールと一緒にその仲間と内通者の動きと、私の世界には
  異常がないかどうかを調べてくれ。私はLに連絡する事にしよう・・・」

 「「「「はっ!!」」」」

 4人の部下が一斉に仕事を開始すると、Kは1つ息を付いてから鏡に向かって話しかける。

 「L」

 『シャディ。・・・何か分かったの?』

 その言葉にKは一通りロウェナの報告を教えると、聞いていたLは怪訝な顔をした。

 『・・・本当に・・・何も学ばなかったのね、クリスは』

 「どうする?」

 『と言っても、あたしは今ディースの所には行けないし・・・どうしようかしら』

 「では私の方から最適な者に頼んでおく」

 『頼むわ』

 そして連絡は途絶える。
 Kはいつもと変わらない動作でイスに座り、ちらっと自分の空間である銀河を見つめた。









  「・・・そうだな・・・頼むとなれば・・・」











 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――





梓:ふぅ・・・ようやく「さん」の終わりです。
K:またしりきれとんぼな終わり方を・・・。というか・・・まだ許可貰ってないだろうが。
梓:いやぁ・・・あっはっはっ(汗)えっと、許可はこれから、なのですが・・・。
  ま、もし許可貰えないとしても他に伽羅は考えてあるので大丈夫ですよ!!
K:そういえば、そっちは許可おりてるんだったな?
梓:はい、さりげなくだいぶ前に。いやあ私の考えていたその伽羅がとある私の好きな
  オリキャラさんと性格が結構似てたんですよねぇ。・・・ね?雄馬さんv?(激待)
K:・・・許可おりたとすれば、結局日の目はあびないな・・・。
梓:・・・その子の話は考えてませんからね・・・。
  それでは、いつ更新するか分からない「よん」でお会いしましょう!!




トップに戻る
29817月光王・よん桜月 梓 2004/4/13 19:29:41
記事番号29739へのコメント


梓:ゆっくりまったり気長連載「よん」です!!
  今回だけはハイテンション気味なうちに更新する事に決めました。
L:何で?
梓:ふっふっふっ・・・その理由は、前回言っていた許可がおりたからですよvvv
  今回あの!オリキャラさんを出しますvかおさん、許可ありがとうございましたv
  それでは「よん」いきます!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 Kは銀河を一通り見回してから、もう一度鏡に向き直った。


 『あら、久しぶりね♪シャディ』

 ヴンッ・・・と音がし、鏡に映ったのは鏡を見る自分の姿でもなく、Lでもなく。
 にっこりと笑う黒髪をポニーテールにした、10歳くらいの1人の少女だった。
 Kもその鏡に映った少女に微笑を返す。

 「相変わらずそうだな。フェアリーが大変そうだ」

 『失礼ねぇ』

 だがその言葉とは裏腹に、さらに少女は楽しそうにくすくすと笑う。
 そして笑みを消さずに少女はKに話し掛ける。

 『それで、一体どうしたの?』

 「おっと忘れる所だった・・・ディースがLの所・・・正確には赤の世界に戻ったよ」

 『本当?』

 Kの言葉を聞いて、少女は楽しそうな笑みから、嬉しそうな笑みへと表情を変える。

 『嬉しいわ♪これでようやく、そっちに遊びに行く理由が出来たわねv』

 「そこでだ」

 Kは少女に向かってにっこりと笑い、ピン!と人差し指を上げる。

 「うってつけの頼み事があるんだが?ユニット」

 『あらあらv丁度いいタイミングじゃないv聞かせてくれる?』




 鏡ごしでの、彼にユニットと呼ばれた少女の会話は続いていく・・・。












 よん













 アメリア、そしてゼロスが加わりながらも、旅はどんどん続く続く。
 時々、リナが盗賊いぢめをしまくって逆恨みした奴らに狙われたり、ガウリイが天然ボケ
 炸裂しまくって一同脱力したり、ディースが面白そうな事に足を突っ込みまくったり、
 アメリアがやって来た山賊に正義の言葉を言いまくって隣のゼロスがダメージを受けたり、
 それをディースにからかわれどんよりいじけていたりと、散々疲れる旅路であったが・・・



 ようやくリナ達一行は街についた。

 と、言ってもセイルーンのような大きな街ではなく。
 何かでちょこっと栄えたみたいだなぁ、というくらいの、街と村の中間ほど。
 ちなみにゼロスは「定時報告をしてきます」と一時獣王の所に帰ってしまった。
 ようやくベットで寝れる!と嬉しそうに言っていたリナとアメリア。
 一方後ろを歩いていたディースは静かに笑っていた。



 1歩。



 「街」に足を踏み入れると、一行は即座に様子がおかしい事に気がついた。
 人がいないのだ。
 誰1人として街の声が聞こえない、不自然に静まり返る「街」。
 リナ、ガウリイ、アメリアはこの感覚を覚えている。
 すなわち―――結界である。








 「・・・ふゥん・・・この俺の結界に気づくとはァ・・・中々やるもんだねェ?こッちの人間はァ・・・」


 かなり間延びした声に振り向くと、神官服のような物を着た男が立っていた。
 彼の瞳は青空よりも深い真っ青な色をしている。
 そして瞳と同じ真っ青な髪の毛は、無造作に肩の少し下まで伸びている。

 「あッと・・・違うかァ・・・うんそう一部はァ、だねェ!・・・一部の人間はァ・・・」

 その間延びした声の色には、焦りも動揺も含まれていない。
 かなり珍しくて面白そうなモノを新発見したような、好奇心丸出しの声と瞳。
 しかし彼から感じるプレッシャーは相当なもの。
 本能に従ってみれば、それは“怖い”という感情より“危険”という感情に近い。
 彼は、へらへらと笑いながらリナ達の方へ軽く頭を下げた。

 「あーえェッとォ、どーも初めましてェ?んーと俺はデリタッつーんだけどォ」

 そして背筋の凍るような笑みを、にやりっと浮かべた。












 「クリス様の命令だからァ、死んでくれなァ」










 「散って!!」











 キュゴォンっ!!!!!!!!!












 リナの叫び声と重なるようにして、白い光線が轟音を上げて襲ってきた。
 間一髪避けた4人は、その白い光線が炸裂した後を見て息を呑んだ。

 何もなかったのだ。

 そこにあったはずの、いや・・・あるはずの街の一角が、跡形もなくなかったのだ。

 白い光線によって微塵に吹っ飛ばされていた。

 「・・・う・・・そっ?!!」

 その圧倒的な破壊力にアメリアが驚愕した声を上げる。

 「あー・・・避けちまったのォ?」

 面倒くさそうに頭をかいているデリタには、街の一角を吹っ飛ばした事はどうでも良さそうだった。
 ただ攻撃を避けて死んでくれなかったリナ達に、呆れた表情を向けるばかり。
 そして、3人は攻撃態勢をとる。

 ―――が。





 「・・・聞かせてもらいましょうか?その“クリス様”という方の事を」





 ふいっ!と虚空に現れたのは、ゼロス。
 瞳は冷たく開眼し、デリタに劣りもしない正真正銘の魔族の笑みを浮かべていた。
 ゼロスを見上げてデリタは首を傾げる。

 「誰だァ?お前ェ」

 そう問われたゼロスは少しも表情を変えないままに、答えた。

 「ゼロスといいます」

 「ん、ゼロスなァ。・・・お前もォ、結構やれる奴みたいだなァ・・・」

 にやりっとデリタが笑うが、対するゼロスは少しも表情を崩しはしない。
 そしてデリタにいつもと変わらない声で告げる。

 「質問に答えていただきたいのですが」

 リナやガウリイやアメリアは、2人の凄まじいプレッシャーに少しも動けない。
 ただディースだけは、さも当然といわんばかりに平然として2人を見ている。
 ・・・まぁ・・・ディースにプレッシャーを与えられる者など、いないに等しい事のだが・・・。
 というか、プレッシャーを与えるよりもその相手が怖気づくのが早いだろうが。


 「・・・んーむゥ・・・クリス様の事をかァ・・・」

 何故かデリタは悩み始めた。
 ゼロス、そしてディースはそれを動かずにじっと見ている。




















 「・・・デリタ・・・何をしている?」

















 そこにもう1つの声の主が現れたのは、まさにその時だった。










 ――――――――――――――――――――――――――――――――――








 時間は数時間前に遡る。

 獣王宮に定時報告をしにきたゼロスは、ゼラスにある事を聞いていた。

 「他所の世界の魔族が・・・ですか?」

 「あぁ、そうだ。それについてはまだ良く分からぬのだが・・・良い企みなどあるわけがないだろう」

 「・・・ゼラス様・・・その“他所”とは一体何処の・・・?」

 「分からぬのだ。ただ他所の魔族が我等の世界に入り込んできている、としかな・・・」

 ゼラスは忌々しそうに溜息をついた。

 「それで、ゼロス?そっちの状況はどうなのだ?」

 「ディース=コズミットというらしいのですが・・・素性はまだそれだけしか分かっていません。
  後はただ・・・面白い事や楽しい事が好きな性格、だとしか」

 「そうか」

 何とも言えない顔でそれを聞いていたゼラスだったが、ふいに眉を潜める。
 それにゼロスも気がついたようで、ひざまついていた姿勢から立ち上がった。

 「・・・あちらから・・・出てきたような。・・・ディース殿とやらは一先ず置いておこう・・・。
  ゼロス、招かざる客を丁重に、持て成してこい」

 「はい」

 ゼラスの言葉に頷いたゼロスは、瞬時に獣王宮から「街」へと移動した。
 そして招かざる客とディース達を交互見てから、姿を現し口を開いた。











 「・・・聞かせてもらいましょうか?その“クリス様”という方の事を」















―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



梓:・・・終わったよ・・・えーっと、総合してまるまる2時間打ち込み?!(汗)
K:ハイテンションはどうした?
梓:「ご」で出すはずだったデリタを出したあたりの頃から・・・ちょっと・・・。
K:というかそれは早すぎだろうが。
梓:今回の「よん」はユニットちゃんvvvを出すはずだったのに、何故か最初だけにっ・・・!!!
  流れが合わなくなるから、「よん」と「ご」が入れ替えになったと・・・(涙)
  でも「ご」は活躍させますよ!!ユニットちゃんvとディースを!!宣言!!
K:最近主人公のはずのディースが目立ってないかならな。
梓:・・・それは・・・言わないで下さい。「ご」で必ず活躍させてみますよ、しくしく・・・。
  ではでは・・・「よん」を終わります・・・。


トップに戻る
29831月光王・ご桜月 梓 2004/4/15 19:34:19
記事番号29739へのコメント


梓:ふふふ、何気に続くゆっくりまったり気長連載「ご」です。
  今回のサブタイトルは!!「〜宇宙の姫様、登場の巻!〜」でいきます!!
L:早く私を出しなさいよ。
梓:うーん・・・L様は話的にもう少し後になると思います。
  ではいきませう!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









 「確かにユニットなら適任ね。・・・でも羨ましいわ・・・」

 Lは最初はうんうんと頷いていたが少しすると、ふぅ、と溜息をついた。
 鏡の中に映っているのは、Lと同じ金髪金眼の大事な弟。
 そしてその周りには、結構気に入っている栗色の髪をした女魔道士、金髪碧眼の青年、
 部下の上司よりは使える紫髪の魔族、そして今問題になっている者の部下である
 真っ青な髪と瞳をした男と、茶髪茶眼の男が映っている。

 「はぁ」

 「L様、ディース様の所に行きたいのなら、早くダークスターのお仕置きを終えられたらどうですか?
  さっきから見てましたけど・・・彼、数時間前から少しも動いていませんよ?」

 側近の部下に言われて、そこで初めてLはちらっと床を見た。
 黒い服を着た男がぐったりとして倒れている。
 それを見たLはとても情けなく感じた。

 「・・・はぁ・・・」

 Lはもう一度溜息をついてから、手に持っていた大鎌を下ろした。
 ぐさっ!!
 振り下ろした鎌の先で、何かに刺さる音がしたが気のせいだと思いたい。













 ご













 「おォ、ルスタじゃねぇかァ。どうしたんだァ?これは俺の仕事だろォ?」

 後ろからかけられた声に、デリタは驚いた顔をして体ごと振り向いた。
 そこには、デリタと同じ神官服を着た茶髪茶眼の不機嫌そうな顔をした男が立っていた。
 ルスタ、と呼ばれた男はさらに不機嫌そうな顔をする。

 「さっさと始末してしまえばいいものを、何をのん気に遊んでいるんだ」

 「俺だってよォさっきの1発で殺そうと思ったんだぜェ?なのに避けちまうんだもんよォ」

 「ならばさっさとしろ!おいそこの貴様!何故人間ごときに味方する!?」

 ルスタに一喝されてデリタは渋い顔をした。
 それを見てから、ルスタは虚空に浮かんだままのゼロスを睨んだ。
 ルスタの問いに、ゼロスは普通に答える。

 「おや、味方なんてしてませんよ?・・・僕達は、ただあなた方にお帰りいただきたいだけなんですよ。
  ・・・ここは、僕達の世界なんですからね」

 そんなゼロスの言葉に、ルスタはピクリと眉を上げたがそれだけで終わった。
 2人は睨みあう。

 「ルスタァ早く終わらせようぜェ」

 しかし、緊張感のないデリタの声にルスタは眉間に青筋が走ったが、いらいらと
 デリタの頭を叩きながら、睨みあっていたゼロスから目線を外した。
 そして何かに気がついたルスタが素早く動いた。










 「きゃあああっ♪!!」









 「ひ、卑怯です!!」

 アメリアが怒声を上げる。
 素早く動いた先のルスタの腕の中に、黒髪をポニーテールにした、10歳くらいの
 1人の少女が捕まっていたのだ。
 何故か、辺りに響く悲鳴が楽しそうに聞こえるが。
 その少女に目線を向けたディースが、懐かしさに「あれぇ?」と目を丸くする。
 対してリナ達はルスタの企みを見抜いたのか、顔を青くした。
 ルスタは自分の手を腕の中の少女の頭にと向ける。
 俯いているので少女の顔は見えない。

 「動いたらこいつを攻撃する。デリタ、やれ」

 「えェー・・・でもォ、俺はそーゆーの嫌いなんだけどなァ・・・」

 「やれ!!」

 「ふゥ・・・分かったよォ・・・」

 デリタがリナ達の方を向く。少女に対するルスタの行動は本気だ。
 動く事が出来なくなってしまったリナ達は奥歯をかみ締める。
 ゼロスは動かない。
 街の一角を吹き飛ばした先ほどの白い光を、手の平に集めていく。

 ふいに、呆れた声がした。












 「君達、礼儀悪すぎだよ。あまつさえその人を人質にするなんてね・・・」













 声の主は、ディースだった。
 いつもの穏やかな顔をしているが、手には銀色の宝玉がついた金色の杖を握っている。
 しかし、声をかけた場所はリナ達の隣からではなく、ルスタの後ろから。
 振り向いて驚きの声を上げるまでの、その数秒をディースはルスタに与えなかった。


 ドンッ!!


 「・・・ぐっ・・・ぁぁああああっ?!!!」

 たった1発だけ。
 たった1発の銀色の魔力弾を背中に喰らっただけで、ルスタは苦痛に叫んだ。
 その隙に、少女はルスタの腕から抜け出してディースの隣まで歩き寄っていく。
 リナ、ガウリイ、アメリア、ゼロス、デリタはその光景を見て唖然としている。
 酷い苦痛に顔を歪ませながらルスタはディースを睨む。

 「・・・き・・・貴様・・・何だその魔力は・・・!?何故ただの魔力弾がそんな力を持って・・・!!」

 「知る必要はないよね、それじゃあ」

 さらりと言ってディースはさらにもう1発、杖から銀色の魔力弾を放つ。
 しかしその魔力弾の威力は先ほどと同じくらいのようだったが、大きさが違った。
 大人1人くらいが包み込まれそうなくらいの魔力弾。
 ダメージが大きくて苦痛に耐えていたルスタには、当然避けれるはずも無く。
 銀色の魔力弾が体に当たった刹那。



 ルスタは跡形も無く混沌に落ちた。



 「・・・うわォ・・・」

 呆然としてデリタは呟いたが、すぐさま我に返って慌て始めた。

 「あいつすっげェ!!闘ってみてェけど今日は退散ッ!!」

 そして虚空に消えてしまった。
 しかしゼロスは後を追う事は出来ずに、ただ呆然とディースを見つめている。
 だが、注目の的になっているディースはにこにこと少女と話をしていた。
 捕まっていた少女も、これまたにこにことディースを会話している。

 「それにしても久しぶりねぇ、ディース♪シャディの所でも元気にしてた?」

 「もちろんだよ♪あ、もしかして姉様と兄様の頼み?」

 「えぇ♪」




 静まり返った全員の中で、2人の楽しげな会話は終わらなかった。











 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――









 街は外部にバレないように結界が施されていただけなのか、ゴーストタウン化していた。
 無人の宿を見つけ、リナ達は仕方なく今日はここに止まろうと言う事になった。

 「どうも初めまして、宇空菫です。すみれでいいわよ♪」

 ディースの知り合いと言う事ですみれ・・・もといユニットも、旅に加わる事になった。
 何故かその少女の雰囲気は、10歳という感じではなかった。



 そして、夜。

 皆が寝た後で、ディースは宿の屋上に座って1人でのんびりと満月を見ていた。
 そんなディースに声がかかった。

 「こんばんは、ディースさん」

 「やぁ、ゼロス。君もお月見しに来たの?」

 「いいえ」

 穏やかな問いかけにゆっくりと首を横に振る。

 「・・・あなたが一体何者か・・・それを聞きに来たんですよ」

 「知りたいんだ?」

 くすくすと笑うディースを見てから、ゼロスはディースの隣に腰掛ける。

 「別にいいけど報告しちゃ駄目だよ?」

 ゼロスは開眼はせずに、微笑した。

 「何故です?」

 「だってもし言っちゃったら、ゼロス、お仕置きされるよ?L様とK様とユニット様に」







 「・・・え・・・?」








 「僕はディース=コズミット。L様とK様とユニット様の、弟みたいな存在♪」







 「・・・え・・・!」






 え、としか言葉に出せないゼロスは、だらだらと滝汗を流しまくっている。
 その様子を面白そうにディースは見ている。

 「あの・・・と、いう事は・・・あの・・・でぃ、ディース・・・様・・・ですか・・・っ?!!」

 座ったままでつるんじゃないかというくらい、ゼロスは背筋を伸ばした。
 ディースは片手をひらひらと振ってもう1度言った。

 「上に報告しちゃ駄目だよ?」

 「はっはい!!言えませんもとい言いません!!」

 「くすくす、言葉は普通に戻しといてね」

 そしてディースは微笑して、また満月を見上げて眺め始めた。
 隣には滝汗を流し続けるゼロス。
 そしてもう隣にはいつのまに来たのやら、ユニット。





 ゼロスは、まだユニットの存在に、気がついていない―――。







 宇空すみれ、ユニット=ユニバース。

 彼女はLとKと同じ存在。

 ―――宇宙の姫である―――




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


梓:さようならルスタさん一発伽羅。
K:・・・身も蓋もないな・・・。
  まぁ、知らないとはいえユニットに手出ししたのだから仕方ないだろうな。
梓:当たり前です。ちなみにデリタさんはまた出す予定だったり。
  ・・・あまりにあっけなさすぎて、活躍していないような気がするのは何故?
  それでは「ろく」まで、皆さんさようならっ!!


トップに戻る
29840月光王・番外編 「宇宙(そら)」桜月 梓 2004/4/17 20:06:16
記事番号29831へのコメント


梓:本編とはまったく関係のない、でもどこか関係のあるお話(どっちだよ)
  前からどうしてようか迷っててでもやっぱり書いてしまった月光王番外編です。
  今回はちょっぴりしんみり系で行ってみようと思います。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










 ほら 星の数を数えよう

 宇宙(そら)一面に広がる 生命(いのち)の輝き

 地上を照らす 全ての光に手を伸ばそう

 僕らはその中の 1つに生まれたんだから













 宇宙(そら)












 ゼロスがダメージを受けてアストラル・サイドに帰っていった後。
 ディースはまだ満月とその周りに輝く星を眺めていた。
 隣に座るのはユニット。
 ふと、ディースが小さい声で歌い出した。
 少し切なめのメロディに、ユニットが小さく笑った。

 「会いたい?エルに」

 口ずさんでいたメロディを止めてユニットの方に小さく振り返った。
 満月と星に照らされているディースの微笑みはどこか儚さが見え隠れする。
 ディースは目線を上空に戻すと、呟いた。

 「・・・うん」









 ユニットに会ったからか、ディースの中に眠っていた感情が起きてしまった。

 エル。

 ここにいるユニットや兄のようなKとはまた違う、たった1人のディースの姉。
 会おうと思えば、会える距離なのだが・・・
 今の状況を分かってしまっているディースは、エルには会えない。
 そしてエルも今の状況からして、まだこちらにはこれない。







 月光の王として、気の遠くなるような月日を過ごしてきて―――




 月光の王として、幾つかの世界を創設するのも手伝ってきて―――




 その自覚は魂そのもの以上に分かっているはずなのに。





 姉に・・・エルに会いたいという気持ちだけは、どうしようもないのだ。
 







 「ほんと、エルには適わないわよねぇ・・・ディースの事だけは」

 「・・・ユニット姉様も感謝してるよ、もちろんフェアリーさんにもね」

 「フェアリー仕込みがやっぱり効いたわねv」

 以前(といってもかなりの昔だが)、ユニットの所に遊びに行っていたディースは
 そこでフェアリーに歌を教えてもらっていたのだ。

 「・・・僕が1番尊敬してるのは、エル姉様、ユニット姉様、シャディ兄様の3人だよ・・・ありがとう」

 「それはエルに言った方がいいんじゃない♪かなり喜ぶわよ♪」

 「・・・そうだね・・・」

 そう答えたディースの顔は、うってかわって嬉しそうな微笑みに変わっていた。
 そして、また歌い出す。










 ほら 星の数を数えよう

 宇宙(そら)一面に広がる 生命(いのち)の灯火

 地上を照らす 全ての光に手を伸ばそう

 僕らはその中の 1つに生まれたんだから



 歩いた道は僕らの後ろに 未来の道は僕らの前へと

 選んだ過去は僕らの下に 見守る星は僕らの上に

 いつでも輝いている



 ほら 星の数を数えよう

 宇宙(そら)一面に瞬く 生命(いのち)の誕生

 世界を照らす 全ての光に手を伸ばそう

 僕らはあたたかな 1つの星のひとかけら



 太陽は全てが還る場所 月光は全てが眠る場所

 星達は全てを包む場所 宇宙(そら)の加護は心の中に



 ほら 星の数を数えよう












 fin.





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


梓:・・・しまった・・・また歌ネタをやってしまった・・・(汗)
  ていうか、フェアリーが歌の師匠て・・・どーもかおさん勝手にすみません(汗)
  ちなみに歌の歌詞はオリジナルだったり(汗)