◆−導かれちゃった者たち 冒険の書を作る(やり直す)−(Dirac改め)助さん核酸 (2004/3/24 20:56:18) No.29689 ┣導かれちゃった者たち プロローグ−助さん核酸 (2004/3/24 20:58:35) No.29690 ┃┗旧作は「お気の毒ですが、冒険の書は消えました」なのですね。−エモーション (2004/3/24 22:36:21) No.29694 ┃ ┗『あらすじ』の時点で消えているという説あり−助さん核酸 (2004/3/26 00:59:35) No.29707 ┣導かれちゃった者たち 第一話 神の敗北−助さん核酸 (2004/4/2 18:07:26) No.29748 ┃┗ゴミのポイ捨てはやめましょう−エモーション (2004/4/2 21:47:02) No.29750 ┃ ┗ちゃんとトイレに流しました−助さん核酸 (2004/4/10 12:17:22) No.29801 ┣導かれちゃった者たち 第二話 勇者の旅立ち−助さん核酸 (2004/4/10 11:56:09) No.29800 ┃┗いい日〜、旅立ち〜♪−エモーション (2004/4/10 20:47:53) No.29805 ┃ ┗僕達は〜、幸せになるため〜、この旅路を行く〜♪−助さん核酸 (2004/4/17 02:01:58) No.29837 ┗導かれちゃった者たち 第三話 復活の呪文−助さん核酸 (2004/4/19 23:45:16) NEW No.29854
29689 | 導かれちゃった者たち 冒険の書を作る(やり直す) | (Dirac改め)助さん核酸 | 2004/3/24 20:56:18 |
お久しぶりor初めまして。 この度、わたくしDiracは『助さん核酸』として復活し、精神的な行き詰まりから無断中断した『導かれちゃった者たち』を装いも新たにリニューアルします。以前の書きそこね原稿は残っておりますが、推敲のため投稿速度は遅いです。 旧作とは設定が多少変わっておりますが、ファンダメンタルは全くもって変わっていません。旧作をお読みになられていた方、ご安心下さ……もとい、気をお引き締め下さい。旧作をお読みになったことのない方は、旧作をお読みにならずに新作をお読みになった方が、お楽しみいただけるかと思います。 旧作『導かれちゃった者たち』を知らない方へ タイトル通りドラクエ4のパロディなので、ドラクエ4をご存知ない方にはちょっと分からないかもしれません。また、スパークしているキャラも何名かいますので、心臓の弱い方は特にお気をつけ下さい。 ちなみに、メインキャラの登場は比較的少ないです。 |
29690 | 導かれちゃった者たち プロローグ | 助さん核酸 | 2004/3/24 20:58:35 |
記事番号29689へのコメント 雲一つなく広がる青い空がくすんだ灰色に包まれた時、巨人たちが行進をしているような大地の脈動によって、花園の楽園は一瞬にして引き裂かれる。 それまで軽やかに待っていた人々の歓喜の歌声は、降り注ぐ雷鳴によってかき消される。 やがて大地は血と炎によって紅蓮に染まり、行き場を失った生が枯渇を始める。 「あ、あ、あぁ……」 命がまるで塵のように放り投げられる様を目の前にし、少年はその場に立ちすくむ。自分が失禁していることを恥じる余裕などもちろんない。 だが、悪意は無力な子供にも例外なくその手を伸ばす。 ガシッ 何色も絵の具を混ぜたようなどす黒い何かが、彼の喉もとを掴む。 「あがが……」 少年は首を絞める『それ』を必死に緩めようとするが、『それ』はビクともしない。 「……あぁっ」 やがて彼の腕は萎え始め、息も細くなる。 「……も、もうダメだ」 死が徐々に彼の心身を蝕んでゆく。だが、それは通り過ぎれば何の苦痛もなくなるかもしれない。彼は大人しく身を委ねた。 その時、 「諦めちゃだめ!!」 自分を励ます声がした。その声は彼がとてもよく知っている幼なじみの声。 『――!?――』 その瞬間、彼のもとに七つのまばゆい光が集った。 ――まるで、運命に導かれるかのように。 「はぁ、はぁ」 眠たい体には心地よいはずの春の日差しが注いでいるにもかかわらず、突き動かされたように飛び起きた少年の顔色は、いつになく青白かった。 『……い、今のは!?』 止まぬ汗を拭いながら、少年は頭の中で混在するコマ切れの記憶を夢と現実に分ける。 『まさか……俺は……』 ドクッ……ドクッ…… まるで自分が生きていることを確かめるように、少年は無意識に手を胸に当て、底冷えのする恐怖に掴まれた心臓が収まる気配も見せずに鳴らす鼓動を探った。 ガチャ 不意にドアが開いた。 『――!?――』 驚いた少年が、ドアの方に向くと、 ガンガンガンガン 「ほら朝よ……って、あら?」 彼の母親がフライパンとおたまを振り上げながら間抜けな顔をしていた。 「珍しいわね。もう起きてるなんて」 息子を起こすことが半ば日課となっていた母が、調子を崩されたかのように言った。 「……うるさいなぁ」 二、三ヶ月ほど前から親の干渉が鬱陶しくなってきた少年は、まだ名残惜しい毛布に包まりながら、不機嫌そうな顔で立ち上がる。 「あっ!?」 突然、母親が素っ頓狂な声を上げる。 「とうとう追い抜かれたわね」 「はっ?」 母親の言葉の意味がわからず、少年は眉をひそめた。 「背丈よ、背丈。あっという間にこんなに大きくなっちゃうんだから」 おたまを持った手で二人の高低差を表す素振りをする母。 『…………』 この時、少年は生まれて始めてお互いが立った姿勢で母親を見下ろしていることに気付いた。 …………………………………………………………………………………… 「……メシ」 少年はどう言っていいのか分からず、声変わりしきれていない声でぶっきらぼうにそう言った。 ――母親の声に潜んだ意味を素通りしたまま。 まだ十三歳の彼には、果たしてこれからいかなる運命が待ち構えているのかなど知る由もないし、またそんなことを考えることもないだろう。 だが、か弱い野ウサギを狩る獰猛な獅子の如く、運命は確実に彼を嗅ぎ付け、研ぎ澄まされた爪や牙で彼に襲いかかるであろう。 少年の名はディオル。 やがて来るであろう災厄から世界を守るという、あまりにも重すぎる使命を背負った勇者の血を引く者である。 彼が己の使命を知るのはそれから四年後であった。 ……計り知れない悲しみを伴って。 「こらっ! ディオル!! あんたはいつになったら寝小便しなくなるのっ!?」 「やべぇっ!!」 ズザザザザッ ディオルは逃げ出した。 ちなみに、彼がオネショから卒業するのはさらに二年後のことであった。 新たにプロローグなんぞ付けてみました。 リニューアルしても、勇者はやっぱりディオルで決まりです(作者公認)。旧作をお読みでない方は、今後の配役を予想してみて下さい。 |
29694 | 旧作は「お気の毒ですが、冒険の書は消えました」なのですね。 | エモーション E-mail | 2004/3/24 22:36:21 |
記事番号29690へのコメント でんでんでろでろでっでっでっ♪ とあの魔のメロディを口ずさみつつ(^_^;) お久しぶりです。 最初にまず改名されたお名前に爆笑してしまいました。 新たに「冒険の書をつくる」ですね。 再び最初から始まった勇者の冒険……。 シリアスな始まり、正統派ファンタジーしているっ!! では、主役も交代か?! ……と思いきや、 > まだ十三歳の彼には、果たしてこれからいかなる運命が待ち構えているのかなど知る由もないし、またそんなことを考えることもないだろう。 > だが、か弱い野ウサギを狩る獰猛な獅子の如く、運命は確実に彼を嗅ぎ付け、研ぎ澄まされた爪や牙で彼に襲いかかるであろう。 > 少年の名はディオル。 > やがて来るであろう災厄から世界を守るという、あまりにも重すぎる使命を背負った勇者の血を引く者である。 > 彼が己の使命を知るのはそれから四年後であった。 > ……計り知れない悲しみを伴って。 やはり主役はディオルさん。 そして何より彼がゾンビではなく、若返っていることが、今回一番の衝撃でした。 では、あの魔性(笑)のお方も……? でも意表を突いてそのままかも……(ちょっとドキドキ) >「こらっ! ディオル!! あんたはいつになったら寝小便しなくなるのっ!?」 >「やべぇっ!!」 > ズザザザザッ > ディオルは逃げ出した。 > ちなみに、彼がオネショから卒業するのはさらに二年後のことであった。 そして正統派ファンタジーしつつ、しっかりギャグが……(笑) 15歳までオネショ……。病気でなければ確かに滅多に出来ない偉業です。 まさに勇者。……んな勇者嫌だ(^_^;) リニューアルの「導かれちゃった者たち」。 旧作との違いを比べながら(そして知っている故に裏をかかれながら)、 楽しんで読んでいきたいと思います。 それでは、復活おめでとうございます。 続きをお待ちしていますね。 |
29707 | 『あらすじ』の時点で消えているという説あり | 助さん核酸 | 2004/3/26 00:59:35 |
記事番号29694へのコメント >お久しぶりです。 >最初にまず改名されたお名前に爆笑してしまいました。 どうもお久しぶりです。 名を変えて出なおしてまいりました。名の由来は、わたしの遺伝子の構成物質からです。(笑) 他にも『ダ−メネーター』や『HERO骨折』などがありましたが。 >シリアスな始まり、正統派ファンタジーしているっ!! まあ、いわゆる『ネタふり』ですけど。 >やはり主役はディオルさん。 勇者といったらやはりこの人です。 >そして何より彼がゾンビではなく、若返っていることが、今回一番の衝撃でした。 まだ彼が己の運命を自覚していない頃ということで。 >15歳までオネショ……。病気でなければ確かに滅多に出来ない偉業です。 『さらに二年後』とは『自分が勇者であることをディオルが自覚してさらに二年後』という意味なので、彼がオネショを卒業したのは十九歳です。 >リニューアルの「導かれちゃった者たち」。 >旧作との違いを比べながら(そして知っている故に裏をかかれながら)、 >楽しんで読んでいきたいと思います。 今のところ、若干の配役の変更とちょっとしたエピソードの追加くらいで、旧作とそれほど違いはないと思いますが、コレはとんでもないモンスター・ノヴェルですから、本能のままに暴れまくる可能性も否定できません。 >それでは、復活おめでとうございます。 >続きをお待ちしていますね。 勇者に見習い、倒れても這い上がって執筆を続ける所存でございます。 それでは。 |
29748 | 導かれちゃった者たち 第一話 神の敗北 | 助さん核酸 | 2004/4/2 18:07:26 |
記事番号29689へのコメント 天空城。 その名の通り、地上より遥か彼方に浮かぶこの城は、天空人の住まう家である。 太古より幾千年もの間、彼ら天空人は天上より下界を見守り、時にはその力でもって平和を守り続けてきた。 彼らは言わば悠久の歴史の証人である。 世界が滅びない限り、彼らはこれからも証人でありつづけるであろう。 ――あるいは、彼らが滅びない限り。 農業国であるソレッタ王国は、根を煎じたものはあらゆる病に効くと言われている『アイレウス』により、長年その富を潤していた。 だが、最近起こった干ばつにより、環境に敏感なアイレウスは激減してしまった。そのため、たちまちソレッタは経済の拠り所を失い、現在は国家崩壊の危機に瀕している。 故に、ソレッタ国王グランド=マスターは、自分を見守る民衆の眼差しを背に、燃え上る火柱の前で、一心不乱に天に雨を求めていた。 「神よ!」 祈祷はすでに十日を越えていたが、その成果は一向に現れない。それでも、グランドは声を発することを止めようとしない。 「我らに雨を与え給え!!」 己の力ではどうにもならない時、その存在を信じようが信じまいが、人は神に頼らざるをえない。 だが今、神はその声に耳を傾ける余裕もなかった。 王の間にて、比類なき二つの存在が対峙していた。 一つは天空城の主である第十五代マスタードラゴン・スィーフィード。 もう一つは魔族の頂点に君臨する若き王、ガウリイ=ガブリエル。 「何と恐るべき男だ。貴様は」 下の階から聞こえてくる天空人たちの苦悶の声が、徐々に少なくなっていく様に耳を傾けながら、玉座に構えるスィーフィードが身じろぎもせず言った。 「貴様を入れて五人。魔族とはいえ、たったそれだけの人数でこのわたしたちと戦いを挑み、そしてここまで辿り着いた」 スィーフィードのため息混じりの自虐的台詞が、唯一原形を止めている王の間に虚しく響き渡る。 「それだけではない。我々の偉大なる先祖が英知を結集して生み出した、天空にまで浮遊する技術をも生み出してしまうとは。……恐れ入った」 「ふん」 スィーフィードの称賛の言葉にもさして興味も示さず、ガウリイが腰に差してあった鞘から剣を抜く。 「聞きたいのはそんな誉め言葉などではない」 細い刀身から放たれる薄紫の輝きが、突き刺すようにスィーフィードに向けられる。 「ブラスト・ソードか。……なかなかの剣を持っておるな」 反骨心で満ち溢れた教え子の信念のたくましさに一目置いている師のような素振りで、スィーフィードがそう言った。 「俺が聞きたいのは――」 軽やかなステップでガウリイが床を蹴る。 同時にスィーフィードが目を見開く。しかし、それ以上の目立ったは動きはない。 ガウリイとスィーフィードとの距離が狭まる。 リーチが届くくらいの間合いまでスィーフィードに近づくと、ガウリイがブラスト・ソードを振り上げた。 剣の軌道は一切の無駄なくスィーフィードの喉へと向かう。だが、当のガウリイはスィーフィードの首を刎ねる気などない。 「勇者の居場所だ!」 ブラスト・ソードは音も立てずに玉座の背もたれを斬り、スィーフィードの首に触れて止まった。 それでもスィーフィードは動かない。 …………………………………………………………………………………… しばし流れる静寂。 「どうした? 怖気づいたか?」 大胆にも、マスタードラゴンに挑発をかますガウリイ。 しかし、 カタカタ 玉座が小刻みに振動する。 「むっ!?」 ガウリイの顔つきが変わる。 「むん!」 浮かんでいる水晶玉に手をかざす様に、スィーフィードが胸の高さまで手を挙げる。 ガタガタガタガタ 玉座の揺れはさらに激しさを増す。 「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 それまでとは打って変わり、スィーフィードがガウリイを押し倒すかのように倒れ込んできた。 まるで、ウサギを押さえ込むライオンの如く。いや、竜の如く。 「くっ」 危険を察知し、ガウリイがスィーフィードから離れる。 勢い余って、スィーフィードが床に倒れ込む。しかし、その動作一つ一つが、理性が吹き飛んだ本能剥き出しの獣の獰猛さを感じさせる。 ガウリイが身構えるが、 「ん?」 スイーフィードは床に額を押しつけ、 「このスィーフィードに聞きたいことがあるのなら、ご遠慮などせずに何なりとお申し付け下さい!!」 媚びた。 「はっ?」 予想外の事態に、ガウリイが間の抜けた声を上げる。 「どうぞ犬とお呼び下さい!! いくらでも肩揉みます!! 貴方が望むなら靴も舐めます。ですから、何とぞ、何とぞこの命だけはお助けを!!」 床にキスして土下座するスイーフィード。どうやら本当に怖気づいていたようである。 「いや、あの……ただ勇者の居場所を教えていただきたいだけなんですけど」 思わず丁寧な言葉遣いになるガウリイ。目の前の相手に突然土下座されれば、誰だって反射的に敬語を使ってしまうものである。 「ゆ、勇者の居場所ですか? えーと、ブランカ王国の北に深い森があるんですけど、その奥に村があって、勇者の野郎はそこに住んでいます」 魔族の王に勇者を売るスィーフィード。しかも勇者を野郎呼ばわりしている。 「そこの村ですけど、実は救いようのないアホな田舎者の集まりで」 勇者が暮らす村を悪く言うスィーフィード。 「わたくしとしましては、貴方のような高貴なお方が行かれるような場所ではないと思うのですが」 「……そうですか」 ブラスト・ソードを鞘に収めながら、ガウリイが言った。……まあ、それしか言い様がないが。 「やはり、勇者を討伐なさるのですよね? わたくしとしては、貴方にそのようなお手間をかけさせるのは気が引けまして、……どうでしょうか? わたしが――」 ガウリイに取り入るつもりなのか、マスタードラゴンにあるまじき発言をするスィーフィード。 「いや……いいです」 さっきまでの張り詰めた緊張感が一気に萎え去り、だらりと肩を落とすガウリイ。 すると、 「スキありいいぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」 先ほどの低姿勢はどこへやら、突然スィーフィードが血気づいた。 「愚かな! 第十五代マスタードラゴンであるこのスィーフィードを前に、あろうことか剣を収めるとはなぁっ!!」 どこにどうやって隠し持っていたのか、スィーフィードが剣の柄に手を伸ばした。 「何一つ姑息な手段を用いずにこのわたしに挑んだ貴様の勇気に免じて、我が名刀、赤竜の剣の錆びにしてくれるっ!!」 一体何を免じるつもりなのかは不明だが、スィーフィードが見るに堪えない無様な剣さばきを披露する。……と思いきや、 すっぽーん 何百年も経って取り付けが緩くなったのか、刃が爽快な音を立ててすっぽ抜けた。 ヒュウゥゥゥーーーー 刃はきれいな放物線を描き、窓から王の間の外に飛んでいく。 …………………………………………………………………………………… 柄を握ったまま硬直するスィーフィードに、ガウリイが冷たい視線を向ける。 「や、やだなぁ。……ジョークだよジョーク、ちょっとした遊びさ、セニョリータ」 一転、今度はヤケクソ気味に馴れ馴れしい態度でガウリイに接するスィーフィード。ちなみに、セニョリータとはお嬢さんという意味である。 「そんな人を寄せ付けないような雰囲気作っちゃダメダメ。もっとユーモアに――」 バキッ 顔の辺りを飛びまわるハエを叩き落すかのように、ガウリイの拳がスィーフィードを黙らせた。 「ガウリイ様」 しばらくして、主のいなくなった王の間に禍禍しい法衣を纏った男が入ってきた。 「ゼロガディスか」 その声に、ガウリイが振り向く。 「下の階は粗方片付きました。しかし天空人どもには逃げられました」 「そうか。できれば『実験台』がほしかったがな」 ガウリイが冷徹な言葉をさらりと吐いた。 「まあいい。勇者の居場所も聞けたし、ここなら『進化の秘法』の手がかりが見つかるかもしれん」 そう言うと、ガウリイはスィーフィードをゼロガディスの方へと蹴り飛ばし、 「あとはこの物体をトイレにでも流しておいてくれ」 「はっ」 ガウリイに一礼すると、ゼロガディスはまるでゴミ袋を扱うかのようにスィーフィードの処理を始めた。 グランド=マスターの頬に何かが当たった。 「ん!?」 長らく感じていなかったその冷たい感覚に、思わずグランドが祈りを中断し、その頬をさする。 「こ、これはっ!!」 それに手を触れるやいなや、グランドの手が震える。 ぽつ……ぽつ…… 天を見上げるグランドの顔に降り注ぐのは……。 「雨だ!!」 グランドが歓喜の声を上げる。 「あれ?」 「ま、まさか!?」 やがて、波紋が広がるように、民衆たちも雨が訪れていることに気付き始めた。 『ウオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーー!!』 ある者は手のひらを天にかざし、ある者は肩を抱き合い、涸れた大地に降り注ぐ雨を迎える。 「お、お、おぉ……神よ……」 小さくなる炎の前で、グランドの頬は雨ではない水で濡れていた。 と、その時――、 ズガアアアアァァァァァァァァァァァン 第十五代マスタードラゴン・スィーフィードが貴重なアイレウスの畑に墜落し、めでたくアイレウスは全滅した。 神は不滅だと誰が決めたのだろうか? どれほど巨大な存在であろうと、それを凌駕する力と衝突すればひしゃげてしまうというのが自然の摂理である。天空城の主、つまり天界の統治者である、第十五代マスタードラゴン・スィーフィードでさえ、それは例外ではない。 天空城は陥落した。 しかし、それはさらなる悪夢の呼び水に過ぎない。 天秤の片一方にだけおもりを乗せるように、静かに、しかし確実に世界の平和は崩れ始めていた。 ……何故スィーフィードがマスタードラゴンなのか、疑問に思う方も多々おられると思うが、下手に詮索せず受け入れた方がいいというのが、世の中という名の荒波をくぐり抜ける秘訣である。 スィーフィードが実際はどんなキャラなのかは知りませんですが、彼(彼女?)のファンの方々、まことに申し訳ありません。 また、ガウリイはガブリエ『ル』であってガブリエ『フ』ではございません。お気をつけ下さい。 |
29750 | ゴミのポイ捨てはやめましょう | エモーション E-mail | 2004/4/2 21:47:02 |
記事番号29748へのコメント こんばんは。 天空城を攻め落とした若き魔族の王、ガウリイ=ガブリエ「ル」と 対峙するスィーフィード様。 ころころと態度が変わ……いえ、臨機応変に対応し、倒されてしまったことで、 世界に異変が起き始めたのですね。ああ、なんて恐ろしい(笑) ……と、比較的真面目に纏めましたが……微妙に何かが違う気がするのは何故でしょう? それはさておき、シリアスしつつ……しっかりギャグですね。 アイレウス全滅の悲劇は、これが原因でしたか(笑) 経済の基盤を、特定のものだけに頼っていてはいけないというのが、よく分かりますね。 ……ところで、こうなると勇者が出会うマスタードラゴンは16代目になるのでしょうか? 勇者の居所を知ったガウリイ=ガブリエ「ル」。 平和な村での(いろんな意味での、しかし誰にとってかは不明な)悲劇が 始まる(かもしれない)のですね。 それでは、短いですがこの辺で失礼いたします。 続きを楽しみにお待ちしていますね。 |
29801 | ちゃんとトイレに流しました | 助さん核酸 | 2004/4/10 12:17:22 |
記事番号29750へのコメント >こんばんは。 どうも。助さん核酸です。返事が遅くて申し訳ありません。 前回言い忘れましたが、2週間ほど前に引越したため、20日以降まで自宅でのネットができません。(現在インターネット喫茶で返事を書いています) >天空城を攻め落とした若き魔族の王、ガウリイ=ガブリエ「ル」と >対峙するスィーフィード様。 >ころころと態度が変わ……いえ、臨機応変に対応し、倒されてしまったことで、 >世界に異変が起き始めたのですね。ああ、なんて恐ろしい(笑) スィーフィードがマスタードラゴンになった時点で異変ですが。 >……と、比較的真面目に纏めましたが……微妙に何かが違う気がするのは何故でしょう? このエピソードは旧作の構想から引っ張ってきたもので、エスタークを倒した後の予定でした。(導かれちゃった者たちが天空城へ行く動機付けです) ただ、アイレウス全滅の理由や、赤竜の剣の一件(第2話参照)は新しく作りました。その場のノリで……。 >それはさておき、シリアスしつつ……しっかりギャグですね。 >アイレウス全滅の悲劇は、これが原因でしたか(笑) >経済の基盤を、特定のものだけに頼っていてはいけないというのが、よく分かりますね。 >……ところで、こうなると勇者が出会うマスタードラゴンは16代目になるのでしょうか? 16代目のような、そうでないような感じですが……。 >勇者の居所を知ったガウリイ=ガブリエ「ル」。 >平和な村での(いろんな意味での、しかし誰にとってかは不明な)悲劇が >始まる(かもしれない)のですね。 はい。ここから彼は転落の一途を辿ります。 >それでは、短いですがこの辺で失礼いたします。 >続きを楽しみにお待ちしていますね。 区切りのいい第3話で『あらすじ』へとつながるように努力します。(ちょっと厳しいかも) それでは。 |
29800 | 導かれちゃった者たち 第二話 勇者の旅立ち | 助さん核酸 | 2004/4/10 11:56:09 |
記事番号29689へのコメント ブランカ王国より北には、まるで外界との交流を一切拒絶するかのように、険しい山脈がそびえ立ち、奥深い樹海が生い茂っている。 一度森を侵したらもう戻ってはこれないであろう、その辺境に地に、好んで足を踏み入れるものなどあまりいない。入るとすれば、おおかた警戒心より好奇心が強い子供か、世の中に希望を見いだすことができなくなった悲しき自殺志願者くらいである。 樹海の中はどうなっているのか、興味を持つものも少なくなかった。ある者は『森の奥にはエルフの隠れ里がある』と唱え、またある者は『恐ろしい竜が棲んでいる』と主張する。中には『千年前に封印された古代遺跡がある』という噂もあるが、無論、噂以上のものではない無責任な代物である。 だが、この緑の果てに何があるのかを知った者がいた。 その男の名はガウリイ=ガブリエル。魔族の頂点に君臨する若き王。 彼はこの地に訪れた。 ――この地に住まう伝説の勇者を抹殺するために。 迷宮の奥にある、名もなき小さな集落。 狩猟採集が中心の文化で、生活用品は草木や石、動物の骨や皮、粘土といった、極めて原始的な原料を用いている。農耕技術も古代に比べてろくに発展しておらず、金属品が全く見当たらない。それは、この集落が完全に世界から隔絶されていることを意味している。 「ここか! 勇者が生まれ育ったという村は!」 そんなこの村の平和な空気をガウリイの声が切り裂いた。 突然の来訪に驚き、村人たちが一斉にガウリイに視線を集める。 「……おめえさん……こんな辺鄙な村に何の用だべさ?」 やはり外来者は珍しいらしく、通りすがりの農婦が不思議そうな顔で尋ねた。 「じらす意味もないから単刀直入に言おう。勇者を出せ」 「ユーシャ?」 村人たちがお互いに顔を見合わせる。だが、彼の目にはその態度がごまかしに映った。 「とぼけても無駄だ。ここに勇者をかくまっていたことはわかっている」 ここで怒声を張り上げてしまったら威厳がない。テンションを維持し、余裕を見せるガウリイ。 …………… 「確かに勇者をかくまうにはうってつけの場所だな。ここまで辿り着くのにえらい骨が折れたぞ」 ………………………… 「だが、もう年貢の納め時だ。大人しく素直に差し出せば、貴様らは生かしておいてやる」 …………………………………………………… 「先の短い余生だ。静かにすごしたいだろう?」 …………………………………………………………………………………… ガウリイが言いたいことを言い終えた後、齢八十はありそうな腰が曲がった農婦が、ふるふると震わせた手を添えながら耳をガウリイに向け、 「はぁぁっ?」 どうやらご老体は耳が遠いらしく、ガウリイのセリフが聞こえなかったらしい。 『くううっ! これだから人間というヤツはっ!!』 ガウリイのこめかみの血管がちょっと隆起したが、ここで怒りに任せては魔族の王としてカッコ悪いと思い、彼はブラスト・ソードに手をかけるのを制した。 「ええい、よく聞け!!」 先ほどと同じセリフを、高齢者の方々にも意味を把握できるよう、極めてゆったりとしたリズムで、文節ごとに区切りながら、所々でジェスチャーなどを織り交ぜ、咽を嗄らして言うガウリイ。 言い終えてから肩で息しているところがちょこっとぷりちー。 「何のこどだがさっぱわかんねべ」 伝えたいことは伝わったらしいが、農婦からは期待する返答は得られなかった。 「……そうか。そういう態度を取るなら仕方がない。ならばわたしが――」 「おーい! みんな!!」 濃厚な殺意を纏いながら決めゼリフを言おうしたガウリイを尻目に、彼女はいつもの井戸端会議仲間を呼び寄せた。 思わずオーソドックスにコケるガウリイ。魔族の王にふさわしく礼儀正しい。 「何だべ? ウメコさんよ?」 「このお若いの、わざわざこげなとこさやって来て、ゆーしゃとやらを探してるようなんだが、ゆーしゃってなんだが知ってっか?」 「ユーシャ? 何だべ? 食いもんか?」 「そげなもん知らね。聞いたこともね」 いつの間にか二十人ほど集まった村人たちは、次々とその顔に『?』を浮かべる。 「貴様ら……いい加減に――」 ガウリイが拳を固く握りしめ、持ち前の美形を怒りに染める。 「お若いの。怒ってばっかじゃすぐハゲっぞ」 「腹減ってんじゃろ。ホレ、食うか?」 だが、亀の甲より年の功。心優しき村人たちは、怯えるどころか彼に梅のオニギリを差し出した。 そこには、自分たちが魔族の王と対峙しているという緊張感は全くない。異なる身分の者とも分け隔てなく振舞うその純朴な姿は、汚れてしまった現在に何かを訴えているようである……わけがない。 「あー、そう言えば……」 そんな中、たまたまついて来た村長があることを思い出した。 「ほれ、あの時、『ユーシャ。ユーシャ』って、ディオルさんがうわ言の様に何度も言ってたっけ」 「おお! そう言やそうだっだな!」 「何ぃっ!!」 その言葉を聞いたとたん、ガウリイが村長の胸ぐらを掴んだ。 「そのディオルとやらはどこにいる?」 「んー! んー! 三つ目の角を右に曲がったところじゃ!」 「そうか」 村長から場所を聞き出すやいなや、ガウリイはコミカルにさえ思える猛ダッシュでそこへと向かうが、 「じゃが、ディオルさんはもうお亡くなりになっちょるけん」 すっぴょおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーん ガウリイが大爆発した。 ――すでに勇者は常世の国へと旅立っていた。 村人に瓦礫の下敷きから救い出されたところで、何故かガウリイは勇者の墓前で村人と談話モードに入っていた。 生前の勇者の愛用品だろうか、『ディオルここに眠る』と彫られた大理石の横には、見るからに立派な刀身がそびえ立つように突き立っている。 『……どこかで見たような』 その剣に妙なデジャビュを感じるガウリイ。柄がないのが特に心に引っかかった。 「粗茶でずが」 手ごろな切り株をテーブル代わりに、マツがガウリイに一番煎じの緑茶と、あんこが入った三色団子を振る舞う。 「……上手い」 結構なお手前で茶をすすりながら、ガウリイが深くてすっきりとした独特の苦味を堪能する。団子の方も、あんこの自己主張しない控えめな甘さと、三色の団子が持つそれぞれの風味が、ケーキの重苦しさとは違う優しさを醸し出し、ガウリイの舌鼓を誘う。 「ディオルさん、いい人だったんだがねえ」 ディオルの隣に住んでいたキクが、手を合わせながら彼の生前に思いを馳せた。 「そうさなぁ。ディオルさん、初めで外から入っできた人だども、外の話を色々聞かしてくれで、楽すかった」 ディオルから聞いた外の世界の話を反芻しながら、仲のよかったタロマツが墓標の石を磨いている。 外の世界では、海というでっかくてしょっぱい水たまりがいっぱいあって、そこでは川や湖とは違う魚が獲れて、氷ばっかりある寒いところもあって、そこに住むベンギンという飛べない鳥がいて、暑いところでは砂漠という砂ばっかのところもあって、サボテンというトゲばっかの植物があって……。 深い森に囲まれた山村で暮らしている村人たちは、彼の話を聞くたびに好奇心に胸を弾ませた。 「だども、おがげで若けぇ衆はみんな村を出て行っちめって……」 ディオルから話を聞いた若者は、外の世界への興味が膨れ上がってしまい、ここに留まって骨を埋めることに我慢ができなくなってしまったのだ。そして、村を支えるはずの若者は全員森の外へと出ていってしまい、村は一気に過疎化してしまった。 それに責任を感じたディオルはしばらく村から姿を消した。 「バカァ! ディオルさんの前でそげな話すんな!!」 「ああ、そうだった。……すまぬぇ、ディオルさん」 言ってはならないことを口にしてしまったモサクが、菊といちご大福を添えてディオルに謝る。 「まあ、若けぇ衆はいなくなっぢまっだが、ディオルさんが『きめら』とかいうやつをつぐっだおがけで、働き手には不自由しねぇ」 と言ったドンベエの視線の先では、デーモンらしい胴体に人間の女とドラゴンとサーペントらしいモンスターが合体したようなキメラ一匹と、冬には百発百中カゼをひく悪の女魔道士ルックをした人間の女のホムンクルス十体が、黙々と農作業に勤しんでいた。 即、見なかったことにしたガウリイ。 「だども……」 ヤシチが墓標のそばにある剣に視線を移し、 「五日ほど前、こいづが空から降っできで、ディオルさんの頭に……」 ディオルの死を乗り越えるにはまだ日が浅い。ヤシチの言葉が深い悲しみが溶け込んだ嗚咽に詰まるのも無理はない。 ヤシチのすすり声に、幾人かはもらい泣き、もう幾人かは涙する彼らも肩を優しく叩いて励ます。 そんな中、ガウリイは、 『……まさか……ひょっと……しなくても……』 五日ほど前、天空城にて、見るも無残な手段で自分を倒そうとしたスィーフィードの赤竜の剣がすっぽ抜けたが、どこを探してもその刃が見つからなかったことを思い出した。 「世話になったな」 魔族の王ガウリイ=ガブリエルは、村人に勧められるがまま、何故か勇者に線香を一本あげながら礼を言った。 「何言っちょる、ディオルさんの友人なら、けてぇごど言うぬぁ」 いちいち説明するのが面倒なので、ガウリイは『ディオルの古い知り合い』ということにしている。 「しかし、こんなものをもらうわけには……」 「かまわねっぺ。ディオルさんの遺品は、オレたぢよりオメさんが持ってる方がええ」 勇者ゆかりの品、ラージャ・ドラゴンの肩当て。ラージャ・ドラゴンの骨を原料にした武具は丈夫なわりに軽く、かなりの評判があるが、そのためラージャ・ドラゴンは乱獲され、絶滅危惧種となってしまった。そのせいか、ラージャ・ドラゴン系のアイテムの持ち主には必ず不幸が訪れるのだ。 もしや勇者もこれで? それともガウリイへの捨て身の攻撃? 『……まあ、すぐ捨てりゃいいわけだし』 やはり説明するのが面倒なので、大人しく受け取っておくことにした。 「じゃあな」 様々なモノが萎えてしまい、もう帰りたくなったので、強引に帰ろうとするガウリイ。 だが、そうは問屋が卸さない。 「待つべ」 去りゆくガウリイの背中を、ウメコさんが掴んだ。 「うごっ!」 思わず後ろに引っ張られるガウリイ。その力はとても老婆のそれとは思えない。 「何を……って何だ?」 何かを言い出そうとしたところで、ガウリイは老婆たちに取り囲まれていることに気づいた。 「ちょっ……え?」 ガウリイの文句が喉から外に出ることはなかった。 彼女らは豹変していたのだ。 『はあああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』 焦点の合っていない瞳、獣のように荒い呼吸、滴り落ちる生ぬるい涎、音をかき消して這いずり回る足の運び。 まさにそれは、生きた血肉を求めるゾンビ。 「あんた、エエ男だ」 「この村さ、若けぇモンがいねぇべ」 「久しぶりぬぃ、火が付いつぃまった」 どうやら、彼女たちはイケメンのガウリイを見てムラムラきてしまったようである。 春が訪れた彼女たちの果てしない欲望を前に、ガウリイは思わず後ずさりする。 「ちょっと待ってくれ! オレにはリ――」 ガウリイが己の魂と存在意義をかけた抵抗を試みるが、巨象の大群にアリンコ一匹がどうあがいたところで勝機はない。 「観念すろ。もう年貢の納めどぎだ」 「先の短けオラたつに、いい夢の一づぐらい見させけろ」 「別に減るもんじゃねっぺ。若けえから何度でもやり直しは聞くっぺ」 三つ目竜の肩当ての呪いは、ガウリイが身構える前にいきなり襲い掛かってきた。 「ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 ガウリイは逃げ出した。 しかし、回りに囲まれた。 ――かくて一つの悪は滅びたのだった――。 旧作第一話の繰り下げです。後半部分を少し変えてみました。 どうでもいいけど、この村、狩猟採集が中心のわりに食と葬式の文化がいびつに発展してないか? にしても、相変わらず村人の方言ムチャクチャ……。 |
29805 | いい日〜、旅立ち〜♪ | エモーション E-mail | 2004/4/10 20:47:53 |
記事番号29800へのコメント こんばんは。 お引っ越しなさったのですか。 ある程度片づいて、落ちつくまでが大変ですね。無理をしないようにして下さいませ。 リメイクにおけるガウリイ=ガブリエ「ル」と勇者の邂逅は、 すでに勇者が(黄泉路へ)旅立った後でしたか。若いVrで続くのかと思ったのですが(笑) ふと頭に「確かに彼は勇者はだった。しかし、彼の生前には肝心の魔王が いなかったのだ!」という言葉がふつふつと浮かびました。 ……ところでプロローグに書かれていた「数年後の悲劇」が何だったのかが気になります。 キメラ製作に目覚めて、故郷の村を追い出されたとかでしょうか?(笑) 微妙に違いの加わった今回のお話。 勇者の死亡原因が、まさかガウリイ=ガブリエ「ル」とスィーフィード様の、 戦いの影響(……(汗))だったなんて……(^_^;) 「おお ゆうしゃよ。しんでしまうとは なさけない」とやたら偉そうに言っていた、ドラクエ1の王様の言葉が脳裏に浮かびました。 ……今思い出すと、ほんとに偉そうですね。この言葉。 軍資金50G程度よこしただけで、魔王を倒せとか無茶苦茶言っているくせに(笑) >デーモンらしい胴体に人間の女とドラゴンとサーペントらしいモンスターが合体したようなキメラ一匹と、冬には百発百中カゼをひく悪の女魔道士ルックをした人間の女のホムンクルス十体が、黙々と農作業に勤しんでいた。 リ○ラとオリジナル込みなら「11人いる!」なあれが黙々と農作業……。 人手不足の平和な田舎でなくては、受け入れにくい光景ですねぇ……。(遠い目) ラストはやはり……ああ、悪はやはり滅びるのですね(笑) ……悪を滅ぼしたのが、正義の味方とは限りませんが(^_^;) 微妙に発展している食と葬式の文化は……ディオルさんが持ち込んだと言うことで(笑) それでは、この辺で失礼します。 続きを楽しみにしていますね。 |
29837 | 僕達は〜、幸せになるため〜、この旅路を行く〜♪ | 助さん核酸 | 2004/4/17 02:01:58 |
記事番号29805へのコメント >お引っ越しなさったのですか。 >ある程度片づいて、落ちつくまでが大変ですね。無理をしないようにして下さいませ。 進学(と言っても大学院)のためです。 大阪に移ったのですが、ここ最近妙に暑いです。 >リメイクにおけるガウリイ=ガブリエ「ル」と勇者の邂逅は、 >すでに勇者が(黄泉路へ)旅立った後でしたか。若いVrで続くのかと思ったのですが(笑) やはりこの設定は捨てがたいので継承しました。 彼の享年は考えてませんが、前と同じということで。 >ふと頭に「確かに彼は勇者はだった。しかし、彼の生前には肝心の魔王が >いなかったのだ!」という言葉がふつふつと浮かびました。 実際の(?)RPGにおいても、勇者に子供が生まれる度に魔王が誕生することはないでしょうから、勇者の生前に魔王がいないのは普通で、魔王が現れた世代は貧乏クジを引いたと考えてもいいかも。 そうなると、勇者に衰えが見えない時に魔王が出てくるのはご都合主義なのかもしれません。 それと、勇者の子供が五つ子だったら、勇者の後継ぎ問題が発生したりして……。 >……ところでプロローグに書かれていた「数年後の悲劇」が何だったのかが気になります。 >キメラ製作に目覚めて、故郷の村を追い出されたとかでしょうか?(笑) 勇者の試練です。アレ十着買わなければならないという……。 >勇者の死亡原因が、まさかガウリイ=ガブリエ「ル」とスィーフィード様の、 >戦いの影響(……(汗))だったなんて……(^_^;) 当初は前作通りにする予定でしたが、赤竜の剣がすっぽ抜けるシーンを書いている時に思いつき、勢いで変えてしまいました。 >「おお ゆうしゃよ。しんでしまうとは なさけない」とやたら偉そうに言っていた、ドラクエ1の王様の言葉が脳裏に浮かびました。 >……今思い出すと、ほんとに偉そうですね。この言葉。 >軍資金50G程度よこしただけで、魔王を倒せとか無茶苦茶言っているくせに(笑) ロトだけに、後は宝くじで稼げということでしょうか? >リ○ラとオリジナル込みなら「11人いる!」なあれが黙々と農作業……。 >人手不足の平和な田舎でなくては、受け入れにくい光景ですねぇ……。(遠い目) 実はリ○ラはエスタークの予定でした。 それと、他にもゼルとコピーレゾも登場させようかとも思いましたが、くどくなるので止めました。 >ラストはやはり……ああ、悪はやはり滅びるのですね(笑) >……悪を滅ぼしたのが、正義の味方とは限りませんが(^_^;) あの村に外界との交流がないのはコレが原因かも。(笑) >それでは、この辺で失礼します。 >続きを楽しみにしていますね。 どうやら第3話はあとがきの後になりそうです。 つたない返事ですが、それでは。 |
29854 | 導かれちゃった者たち 第三話 復活の呪文 | 助さん核酸 | 2004/4/19 23:45:16 |
記事番号29689へのコメント 「お気の毒じゃが、アイレウスならあの有様じゃ」 ソレッタ国王グランドの指差す方を向くと、そこには無残に押し潰されたアイレウスの塵が横たわっていた。 『……………………』 その有様に、スィーフィード直属の部下ラグラディアは絶句するしかなかった。 彼は天空城での戦いで深く傷を負い、絶対安静を要していた。しかし、だからといってガウリイを放っておけば、まだ脆弱な勇者は確実に抹殺され、世界は闇にその身を染められてしまう。ならば己を犠牲にしても勇者だけは絶対に生かそうと、悲鳴を上げる身を引きずって必死にガウリイを追っていたのだが……、 ――じゃが、ディオルさんはもうお亡くなりになっちょるけん――。 ガウリイのモチベーションを消滅させたその言葉で、ラグラディアの精神は徹底的に蝕まれ、自律神経失調症を患ってしまった。そこで、彼は伝説の薬草アイレウスを求めてソレッタまでやって来たところであったのだが、現実は実に残酷であった。 「チクショウ! どこ行きやがった!!」 「逃げ足の速いやつめ!!」 そんな中、ラグラディアの周囲では、武器になりそうな農具を片手にした民衆たちが穏やかならぬ声を上げる。 「さっきから物々しい雰囲気ですが」 「ああ、アイレウスの畑をメチャメチャニした輩を探しておってな。今総出で探しているところじゃ」 と、グランドが懐から手配書らしき紙を取り出し、 「その極悪人はこんな男じゃ。もし見かけたらわしに連絡してくれ」 手渡されたそれを見て、ラグラディアが硬直したのは言うまでもない。 「全く……あの人は一体何をやっているんだか……」 関係者である自分まで目をつけられているような錯覚とさらなる病魔の進行を覚えつつ、スィーフィードを探すべく、ラグラディアは森の中を歩き回っていた。 「まあ、逃げ足は超一流のあの人だろうから、そう簡単には捕まらないだろうけど」 天界の長は鬼ごっこと隠れんぼの神であったらしい。妙に納得。 しかし、地の利を備えた数百ほどの人数を相手に、彼が先にスィーフィードを見つけるのは至難の技である。 と……。 「――!?――」 ラグラディアが茂みに何かの気配を感じた。感じ取れるその挙動は人間のそれとは明らかに違う。そう、平凡な知性とは程遠い、彼が深く不覚知っているオーラ。 ガサッ スィーフィードがいるという期待を込めて、ラグラディアが茂みを掻き分ける。 「くぅ〜ん」 しかし、そこにいたのはチワワであった。 『……………………………………………………………………………………』 しばし茫然とするラグラディア。 チャンチャンチャンチャンチャン チャンチャン チャンチャン…… 「はっ! いかんいかん……」 少しの間どうするか迷ったが、ラグラディアが正気に戻った。ご利用は計画的に。 「すまないなぁ。今飼ってるペットで手一杯なんだよ」 自分の心境を具体化したような声を上げるチワワを優しく撫でるラグラディア。 「あ、アレはペットじゃなくて主人か。……お前の飼い主もロクでもない野郎なのか?」 と、ラグラディアが思わずぽろっと本音をこぼすと、 「オイコラ!」 「ををっ!」 チワワにぷりちーな声でメンチを切られ、ラグラディアが大きく後ろにのけぞる。 「貴様、腹の中ではわたしをそのように思っていたのか……」 「ま、まさか! スィーフィード様!?」 思わぬ方向から見えないパンチが放たれた。 「おそらく貴様ならもう知っていると思うが、今追われていてな。今、身を隠しているのだが、このチワワに使い魔技術を施し、外の様子を調べようとしたのだが――」 使い『魔』ってあんた……。 「調査の結果、まさか我が部下の心の内が判明するとはな……」 「お言葉ですが、今はそんなことをしている場合ではございません!!」 スィーフィード相手に論点をすり返るなど赤子の手をひねるようなもの。ラグラディアは言葉巧みに話題の軌道を反らし、勇者の訃報を報告した。 「な、何だと!!」 歴代マスタードラゴンの勇者マニュアルが想定していなかった事態に、スィーフィードはかつてないほどの衝撃を受けた。 「間違いないのか?」 スィーフィードが再度尋ねる。そこには「実は間違でした」という返事をどこかで期待していた。特に彼の死因について。 「間違いありません」 そんなスィーフィードの意図とは裏腹に、ラグラディアの答えは変わらなかった。 「ファイナル・アンサー?」 …………………… 「はい」 往生際の悪いスィーフィードに、しかしラグラディアはご丁寧にもしっかりと間を溜めてから答えた。 「フィフティー・フィフティー!」 「選択肢は『はい』しか残りません」 「オーディエンス!」 「観客の答えは全員『はい』です」 「テレフォン!」 「アドバイスは『はいが答え』です」 「ドロップ・アウト!」 「しないで下さい」 …………………… 「ああ! 何ということだ!!」 何度も何度も回り道を繰り返しながら、スィーフィードはようやく認めるべき真実へと辿り着いた。 ――運命に導か(ちゃっ)た者が集結し、この地は救われるであろう―― 天空人に古くから伝わる伝説である。『(ちゃっ)』の意味が未だに解読不能だが、そう記されていたので取り敢えずそう言い伝えている。 「こ、このまま、では……せ、世界はお、終わってし、……うっ! ゴブッ、ゲホゲホゲホッ!!」 体が弱っているわけでもないのにスィーフィードが吐血した。危機的状況に対する心理的な防衛本能と思ってくれればいい。 まあ、ラグラディアにはその音が聞こえるだけなのだが……。 「無理をなさらずに」 別に何の効果もないが、チワワの背中をさするラグラディア。 もう三百年近くスィーフィードに使えているラグラディアにとって、主の現実逃避は日常の出来事と等価である。彼はすでにあるがままを受け入れ、五十年ほど前には冷たい視線を浴びせることもなくなった。 「す、すまんな」 そんなこととは知ってか知らずか、スィーフィードよろよろと立ち上がった。その手の込みようたるや、立ち上がろうと必死で岩肌に手をかけておいて、その手を滑らせて再び倒れるという小芝居まで入っている。 といっても、ラグラディアにはその音が聞こえるだけなのだが……。 「えぇい! こうなったら――」 さっきの吐血はどこへやら、スィーフィードは凛とした声で叫んだ。 「もう手段は選んではおれん! 勇者を墓場から甦らせてやる!!」 スィーフィードは拳を血が出るほど固く握り締め、他力本願丸出しの決心をここに力強く宣言した。 少しは自分で何とかしろオッサン。 「魔王に魂を売ってでもだ!!」 それ本末転倒。 というわけで、ラグラディアは、現在僧侶で元筋金入りの腕利きネクロマンサーのウィニーに勇者ディオル再生を依頼した。 「えー? あたしがですかぁ?」 勇者ディオルの墓を根こそぎ持ってきたラグラディアに事情を説明されるなり、ウィニーはいまいち臨場感のない驚きの声を上げた。 おそらく、「勇者が復活してもゾンビだろ」と思われる方もいるであろう。だが、勇者と言われる人間が美男美女とは限らない。 どうでもいいことではあるが、スィーフィードは勇者復活の瞬間に立ち会おうとはしなかった。「わたしがそこにいる間に、邪悪なる眷属たちが世界を滅ぼすための本格的な活動を始めたら、その時一体誰が指揮を執ると言うのだ!」と彼は言っていたが、来なかった本当の理由は、隠れ場所を出るのが恐かったからである。 ラグラディアはそれに対して何も言わなかったが、スィーフィードがついて来たところで、戦力にならないどころか足を引っ張るだけなので、まあ当然であろう。下手に抗議して、「じゃあわしも行く」と言われても困る。 「どうかこの通りです。あなたの望まれるものは何でも差し上げますから」 それで「世界征服」なんて言われたら、それこそ本末転倒じゃないのかという疑問もあるが、背に腹は返られないのである。 「……ホントですか?」 やや躊躇いながらも、『望まれるものは何でも差し上げます』の言葉に、気持ちが引き受ける方に傾くウィニー。 「はい」 「……分かりました。やってみます」 ウィニーがやや怖々と承諾した。 「ご協力感謝します。それで、何をお望みで?」 何故か腰を低くしながら、ラグラディア。 「えぇっとぉ……アンデッドが生きていける世界をお願いしますぅ」 「はぁっ?」 全く予想外の願いに、思わずラグラディアが素っ頓狂な声を上げた。 「だからぁ、あたしたちとアンデッドのみなさんがぁ、仲良く楽しく暮らせる世界を創って下さい」 ………………………………………… 一瞬、 『人間とアンデッドが手を取り合って共存する世界になるくらいなら、滅んだ方がマシかもしれない。いっそ我々の手で滅びを与えてやるか。いや、むしろそれ自体が滅亡した世界と定義されるべきものなのではないか』 という、全人類が考えなければならない根源的な問いを己に問いかけたラグラディアであったが、 「分かりました。今すぐには無理ですが、世界が平和になった暁には、必ずその願いをかなえて見せます。――天空人の誇りにかけて」 最終的には、 『まあ、彼女をアンデッドだらけの孤島に住まわせておけば大丈夫だろう。そもそも、『世界』という短い言葉によって表現される対象の大きさや広さやに、厳然たる制限を強いる規則が存在しているわけではないのだから、よりグローバルかつフレキシブルな視点で理論を再構築していけば、このアンデッドの島を『世界』という言葉で叙述しても、文学的には決して間違えてはいないはずだ』 という、極めて哲学的な終点を見いだすに至った。 「わーい、ありがとうございますぅ」 ラグラディアの返事にウィニーの顔が喜びで輝いた。 「でもぉ、ここ何ヶ月かネクロマンシー使ってなかったんでぇ、成功する自信はあんまりないですよ」 「大丈夫です。ウィニー様なら絶対勇者を復活させることができます。わたしの目に狂いはありません」 と言ってはいるが、あの能なしスィーフィードを第十五代マスタードラゴンに推薦したのが、他ならぬこのラグラディアだったりする。 「ありがとうございますぅ。そう言っていただけると出来そうな気がしますぅ」 しかし、都合よく勇気がふつふつと湧いてきたウィニーは、早速勇者再生を開始したのであった。 ディオルは再びこの世に生を授かるのに大した時間はかからなかった。 生前の面影はコレっぽっちもないのは仕方がないが。 『マスター。ご命令を』 すっかり黄土色に酸化した前歯からぬめり気のある光を輝かせ、ディオルが営業スマイルを浮かべた。 「これこれこういうわけですからぁ〜、世界の平和を守って下さ〜い」 『イエス。マスター』 緊張感のないウィニーの事情説明に、多大な不安を感じさせるディオルの返答。 「頑張って下さいねぇ〜」 奇跡の復活を遂げた勇者ディオルは、ウィニーの間延びした声援に背中を押されながら、『導かれ(ちゃっ)た者たち』を探す旅路を歩んだのだった。 ――こうして。 錆びついていた歯車はついに回り出した。 辿り着くのは、果たして希望か? それとも絶望か? それは、神ですら知り得ない。 世界の命運をかけた冒険が、ついに幕を上げたのだった。 「むっ、こんなところにゾンビが」 「待たれよ旅の者、わたしは伝説の勇者である」 「やかましい! 聞く耳持たんわ!! メギド・フレア!!」 …………………………………………………………………………………… 勇者は光の彼方に消え去った。 「ふぅ。……最近はゾンビがしゃべる時代になってしまったのか。しかも、こともあろうに伝説の勇者を騙りだす始末。やれやれ、物騒な世の中になったものだ」 こうして、勇者ディオルの冒険に幕が下りたのだった。 余談だが、現在ガウリイ=ガブリエルは消息不明である。 新ツリーを作ろうかとも思いましたが、キリがいいのでこちらにしました。 ここで終わらせるも一つの手段ですが、まだまだ続きます。(『―完―』にしとけという説あり) それはともかく、今まで出番が少なかったためくすぶっていたディオルファンの方々、長らくお待たせしました! いよいよ彼の活躍が見られます!! |