◆−起爆剤(ゼルアメ)−G.O. (2004/2/12 21:02:18) No.29322
 ┣ああ…導火線に火が…!!−B.BALL (2004/2/12 23:28:39) No.29323
 ┃┗消火、消火!(汗)−G.O. (2004/2/14 00:57:53) No.29334
 ┣Re:起爆剤(ゼルアメ)−イヌひこ (2004/2/13 12:11:33) No.29325
 ┃┗とんでもないです−G.O. (2004/2/14 01:10:45) No.29335
 ┣Re:起爆剤(ゼルアメ)−ぷか (2004/2/13 22:27:14) No.29332
 ┃┗あいかわらずで−G.O. (2004/2/14 14:38:36) No.29338
 ┗ゼルが愛おしいです!−ひよ子 (2004/2/21 18:39:49) No.29400


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29322起爆剤(ゼルアメ)G.O. 2004/2/12 21:02:18


「ぷれみあむ」で旅する二人を思い出しつつ、お邪魔します。
やはり二人でなんとなく旅してるってシチュが好きです。

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やたらめったら敵に遭遇する深い森だった。
敵と言ってもどれもこれも大した相手ではなく、倒すのに苦労がない程度の、いわゆる雑魚だ。
しかし、それでも小山を築き、津波と襲いかかられては鬱陶しいことこの上ない。
ゼルガディスは無表情に、言葉もなく、事務的に剣を薙ぎ、
アメリアは眼前の悪を倒すことに、藍の瞳を煌めかせていた。
二人の周囲にリナとガウリィの姿はない。
森の深部、東西に対になって配置された遺跡を探索するため、一行は二手に分かれて行動していた。
長身の剣士が自称保護者として赤毛の魔道士に同行するのは考えるまでもなく、
当然のようにゼルガディスは黒髪碧眼と組むことになる。
別に不満はない。
巫女姫などという肩書きながら戦闘能力は決して低くなく、敵対するなら差は歴然としているが、
共に戦う戦力として充分な実力を備え、機敏な動きは振るう剣の邪魔になることもなかった。
むしろ効率良く歩を進めるにはもってこいの相棒と言って良い……とりあえず戦闘に於いては。
しかし、だ。
何度目かの敵との攻防を繰り広げた後に、ゼルガディスがうんざりした溜息をつく。
横目で伺ったアメリアは、のされた敵の小山に向けて胸を張り、派手なガッツポーズを取っていた。
「…………アンタな、その無駄なフリをなんとかしたらどうだ。」
低く吐き捨て、舌を打つ。
「無駄なフリって?」
アメリアが怪訝な表情で振り向くと、隙有りとばかりに反撃に身を起こした敵が、
無惨にも即座に小柄な姫君の足蹴にされて、再び地に顔を埋めた。
「こっそり背後を取ろうとは……舐めてもらっちゃ困るわよ!」
がっしりと敵の背中を踏みつけたまま、力強いVサインでとどめを刺すアメリア。
「正義は必ず勝つのです!」
「そいつだ。」
すぐ傍らまで歩み寄った男が、手にした銀の刀身を一振りし、するりと鞘に収めた。
アメリアが再度眉を寄せて冷めた視線を見上げる。
「だから、なんのことですか。」
「いちいち戦闘中に入る無意味な口上と、不必要な動きのことだ。」
敵と見れば高らかに唱えられる、誰も聞いちゃいない正義の講釈と、
見ているこっちが戦意喪失しそうな決めポーズの数々。
幸いというか、不幸にもというか、周囲には彼女がよじ登るのに最適な大木がひしめいていている。
別にどうだって良いと割り切っているものの、
剣を構えた背後で鈍い音を立てて地面に激突されるたびに
ついつい脱力して肩が下がる思いをするのだ。
何より、セットで並ぶ自分に敵が向ける呆れ果てたような視線が、かなり痛い。
「ええーっ!?不必要なんかじゃないですよ!」
アメリアが露骨に不満げな声を上げて抗議した。
「名乗りを上げるのは正義の使者として当然のことです!必要不可欠です!」
「とてもそうは思えんがな。」
憮然とした表情でアメリアを一瞥し、
さっさと倒れた獣人を跨いで歩を進めたゼルガディスが、
「第一、それ抜きじゃ、どこに力を入れればいいのか分かんないですよ。
 戦う力も半減します。やはり悪にはベストな状態で挑まないと!」
彼女のセリフにピタリと足を止める。
「アンタの戦闘能力に影響するのか……アレが?」
「あたりまえです!」
大きく頷くアメリアを、眉をひそめて暫し見つめた。
「………馬鹿な。そんなはずが………」
ないだろうが、と言いかけて口をつぐむ。
有り得ないとは思うが、この奇天烈な姫君に関しては確かに理解を超えたものがあり、
ゼルガディスも頭ごなしに否定して良いものか、少々の混乱をきたした。
最近、己の周りには理解を超えた人間が多すぎる。
今ごろ、別な場所で冴え渡る剣を振るっているはずの男に関しても、
なぜそうも腕が立つのかと問うて、くらげ頭ゆえと答えられればやはり、
もしかしてそうなのか?
ぐらいには納得してしまいそうな自分が居た。
「ゼルガディスさんには無いんですか?」
なぜだか黙り込んで動きを止めた相手に、アメリアが首を傾げる。
「何が。」
「何って……なんていうか、こう……能力に影響するような要素が。」
自分が持てる以上の力を引き出せるような何か……?
一応、考えを巡らせてみるが、ゼルガディスには思い当たるようなことは浮かばなかった。
敵に出会えば、冷静に相手の特性を見極め、的確と思われる行動を取る。
それだけだ。
効率良く敵を倒すにはベストな方法であるし、疑問を持ったことすらない。
「…………俺には別に、そんなものはない。」
なくても充分間に合っている………曖昧に答えて、再び歩き始めた。
黒い頭が後ろを振り向き、倒した敵に捨てゼリフを投げるのを聞きながら、ふと思う。
考えたこともなかったが、もし万一、そういうモノが存在すれば、
自分は今以上の強さを手にすることが出来るのだろうか。
図らずも道中を共に歩く羽目になった三人の道連れは、確かに予想外の強さを見せることがある。
彼らが持っていそうな、能力に影響する『何か』を考察してみた。
リナの天井知らずの金銭欲。
ガウリィの想像を絶する記憶力欠落。
アメリアの傍迷惑な正義かぶれ。
…………駄目だ、どれを取っても自分にはとうてい受け入れられるモノではない。

「まあ、ゼルガディスさんは『何もなくても』充分、強いですから。」

アメリアが、さも面白くなさそうに肩を竦めた。
「そいつは嫌味か?」
………なんとなく引けを取ったようでムカつく。
「強いて言えば………その老人じみた落ち着きと、後ろ向き加減な思考……あ、
 執念深さと負けず嫌いと自分本位なマイペースも、強さの秘密なんでしょうね、きっと。」
「……………なんだと?」
不機嫌を絵に描いたような顔で振り向いた男の怒気は、
「あっ!遺跡です!行きますよ、ゼルガディスさん!」
アメリアの大声に霧散し、一気に加速して駆け出した彼女を慌てて追う内に、
意識は目の前に現れた遺跡へとあっさり移った。
そこに潜むかもしれない探し求めるなにものか。
自分にとって、重要で価値のある何かが眠る希望が先に立ち、些細な逡巡など忘れ去った。




………そういえば、そんなこともあったな………

畳み掛けるような展開を見せた魔竜王や冥王との戦いですっかり忘れ果て、
その後に流れた長い長い時間の中でも、ついぞ思い出すことすらなかった。

「持てる以上の力を手にするための何か、か。」
穏やかな陽光を受けて木漏れ日を揺らす大木を見上げ、
ゼルガディスが、ふいに思い起こした過去をそれに重ねてぼんやりと呟く。
「え、何か言いましたか、ゼルガディスさん?」
でっぷり太った頭上の枝上から顔を覗かせたアメリアが、足下の男に向かって大声を上げた。
「………なんでもない。」
なぜだか自分の道行きの傍らを占め続ける黒髪碧眼を、眩しげに見上げて口の端で笑む。
「お前は相変わらず馬鹿げた奴だと、そう思ってな。」
アメリアは今も木に登っては耳にタコができるほど聞き飽きた口上を述べ、
おそらくそれが彼女の戦闘能力を高めていた。
とても理解し難いことではあるが、今となっては認めざるをえない。
己がいつの間にか手に入れた『何か』を知った今となっては。
「ななっ、なんですかソレ!なんか凄く失礼なんですけど!?」
「いいから、さっさと降りてこい。捨てて行くぞ。」
太い枝の上で拳を振り上げる彼女に言葉を投げ、構わずその場を離れると、
大慌てで飛び降りてきた黒い頭が、ピタリと横に並んで揺れた。
不満げな膨れっ面も、飽き飽きするほど見慣れたものだ。
「お前と一緒にこのまま旅をするってのも、ちょっと考えものだな。」
「え………なんでですか?」

気丈な藍に浮かぶ、ほんの少しだけ不安そうな影。
それにガラにもない安堵を感じる。

「馬鹿が伝染ると困る。」

リナの金銭欲と、ガウリィのくらげ頭も今はどこの空の下か……
傍らには傍迷惑な正義オタクのみ。
どれも馬鹿馬鹿しいことこの上ないが、彼らの持てる力に影響を与える『何か』であるのは確かだ。

「馬鹿とはなんですかっ!」

自分が手にした『何か』も、我ながら、かなり怪しい。

「聞き流しとけ。」
「流せませんよ!」

時に驚くほどの力を与える鍵を握った、藍の双眸。
それもやはり、馬鹿馬鹿しい話だった。

「今さら気にしたところで、どうせ治らん。お前も………」

俺もな。

愚かなセリフは胸の内だけに。
馬鹿なヤツだと笑われるのは……




まだもう少し先でいい。

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29323ああ…導火線に火が…!!B.BALL 2004/2/12 23:28:39
記事番号29322へのコメント

こんばんは! B.BALLです!!
「起爆剤」って…私がバクハツしそうです。嬉しすぎて。

拝読いたしました!(><)
なんて正統なゼルアメなんでしょう!!
言外に、いかに自分がアメリアに溺れているのかを堂々と披瀝するゼルガディスの惚気っぷり!
それにまったく気がつかない、可愛いアメリア!

いいです。やっぱりゼルアメはいい。ロマンです。究極の組み合わせです。
そしてG.Oさんの文章はやっぱりイイ……!(><)
まことに素敵なものを見せていたきまして、感謝感激です。ありがとうございました!!

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29334消火、消火!(汗)G.O. 2004/2/14 00:57:53
記事番号29323へのコメント

B.BALLさん、こんにちは。
早々のコメントありがとうございます。
今さら何を、てな感じですが、二人旅してる日常が好きなんです……とことんゼルアメ者。常に魔剣士視点なので、姫のことがあまり書けなくて、しかも溺れ魔剣士で失礼しました。書いてる人間がそうとう姫に溺れてますんで、どうかお見逃しを!
こんなん投稿してて良いのかしらと思いつつ(汗)ありがとうございました!

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29325Re:起爆剤(ゼルアメ)イヌひこ 2004/2/13 12:11:33
記事番号29322へのコメント

こんにちは、イヌひこです。
こんな素敵な文章に、感想なんて書いていいのかしらと思いつつ、
挙動不審気味に失礼します(笑)。

G.O.さんのゼルは、私にとって未知の存在です。
か、かっこよすぎなんですもん……(ブルブル)!
ゼルって無口だけど心の中で悩みまくり、と言うイメージあるんですけど、
あんなふうに考えてるんですね。奥深すぎですごいですっ。

今回のお話を読んで、フィブリゾとの戦いを思い出してしまいました。
鍵…。結局アメリアはゼルにとってそういう存在なんですよね。
そして2人の言い合いが素敵です。
喧嘩してても通じ合ってる感じがたまらなく…!
わ、私もいつかこんな素敵な文章を…!
…スイマセン身の程知らずでした(TヮT)。

では、感想っぽくなくて恐縮ですが、この辺で。
これからもがんばってください!
失礼しました!

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29335とんでもないですG.O. 2004/2/14 01:10:45
記事番号29325へのコメント

イヌひこさん、こんにちは、感想ありがとうございます。
自分の書くゼルって、オヤジなだけで、カッコイイとか思った事ないんですが……むしろ泥臭いばかりのクソ真面目でかっちょわるいんじゃないかと(汗)無口だけど、心の中じゃ、けっこうお喋りですよね(笑)魔剣士視点なのでどうしてもそうなっちゃいます。つらつらと考えすぎというか。

>今回のお話を読んで、フィブリゾとの戦いを思い出してしまいました。

私はアニメベースなので、NEXTは外せません。ガーブ戦・フィブリゾ戦はヒジョーにゼルアメ度高かったですから。甘くはないんだけど、マジで「ちょっと、ちょっとゼル〜」と、突っ込みたくなりましたよね(笑)大好きです。

>わ、私もいつかこんな素敵な文章を…!

て、イヌひこさん、充分すぎるほど素晴らしい文章を書いていらっしゃるではないですか!欲を言えば………もっともっと読みたいです(ぐっ)!また新たな文が読めることを心待ちにしてます。レスありがとうございました!

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29332Re:起爆剤(ゼルアメ)ぷか 2004/2/13 22:27:14
記事番号29322へのコメント

私の心にも起爆剤が舞い降りてきた気分でございます(笑)・こんばんわ!
G.O.さんの魔剣士さんには萌えに萌えさせて頂いてますが、
この魔剣士さんは特にツボヒットでした。
阿呆な展開を頭ごなしに真向否定するわけでもなく、
ちょっぴり大人なサマがたまりません。
ラストの『まだもう少し先でいい』にノックダウンでしたv

これからも、姫と魔剣士な心の起爆剤、期待してます(笑

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29338あいかわらずでG.O. 2004/2/14 14:38:36
記事番号29332へのコメント

ぷかさん、コメントありがとう!
………ちょっぴり大人……三時過ぎぐらい?(黄昏まであと一歩!)
魔剣士には常に姫スイッチで爆発していただきたいモノです。
どうしようもなく日常で失礼しました。

ちなみに私、ぷかさんの描かれる姫で、爆発し続けてますので、どうかひとつ今後ともヨロシク!!

レス感謝します!

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29400ゼルが愛おしいです!ひよ子 2004/2/21 18:39:49
記事番号29322へのコメント

遅レス失礼致します。
やはりG.O.さんの書かれる魔剣士はイイです!(><)
出てくる言葉は素っ気ないものばかりだけれど、その裏に隠れたアメリアへの想いは強く優しくカッコよくてv
持てる以上の力を手にするための何か。
いつの間にか手に入れて、それが何であるか認めるところまで辿りついた。あとは口に出すのみ、根性入れて頑張れよ魔剣士!と拳握って応援せずにはいられません(^^)
うふ〜、素敵なゼルアメありがとうございました!
これからもゼルアメ起爆剤をお待ちしております!
では!