◆−dream〜夢〜 第五話−エーナ (2003/11/14 21:11:24) No.28103
 ┣Re:読ませていただきましたよー−すぅ (2003/11/14 21:20:38) No.28104
 ┣dream〜夢〜 第六話−エーナ (2003/11/15 07:02:32) No.28112
 ┃┗Re:dream〜夢〜 第六話−はるか (2003/11/15 16:53:06) No.28119
 ┃ ┗Re:dream〜夢〜 第六話−エーナ (2003/11/15 22:07:08) No.28134
 ┃  ┗Re:いえいえ。−はるか (2003/11/15 22:40:39) No.28135
 ┣dream〜夢〜 おまけ−エーナ (2003/11/15 22:51:39) No.28136
 ┣Unbalance〜不均衡〜 第一話−エーナ (2003/11/16 00:01:31) No.28145
 ┃┣Re:懲りずにちゃんと読みました♪−すぅ (2003/11/16 04:48:42) No.28147
 ┃┣Unbalance〜不均衡〜 第二話−エーナ (2003/11/16 18:20:04) No.28155
 ┃┣Unbalance〜不均衡〜 第三話−エーナ (2003/11/17 15:19:21) No.28172
 ┃┃┗Re:三角関係ですかー−すぅ (2003/11/17 16:15:32) No.28173
 ┃┣Unbalance〜不均衡〜 第四話−エーナ (2003/11/22 12:21:01) No.28263
 ┃┃┗Unbalance〜不均衡〜 第四話 かいてーばんです。−エーナ (2003/11/22 19:41:43) No.28270
 ┃┃ ┗Re:Unbalance〜不均衡〜 第四話 かいてーばんです。−エーナ (2003/11/27 22:48:53) NEW No.28357
 ┃┣Unbalance〜不均衡〜 第五話−エーナ (2003/11/25 15:10:31) NEW No.28308
 ┃┗Unbalance〜不均衡〜 第六話−エーナ (2003/11/25 16:28:32) NEW No.28309
 ┣詩?死の間違いじゃ・・・−エーナ (2003/11/18 18:55:21) No.28188
 ┃┗Re:詩?死の間違いじゃ・・・−はるか (2003/11/18 20:21:58) No.28197
 ┗誰かこんなこと思いませんでした?−エーナ (2003/11/18 19:52:43) No.28195
  ┗Re:思いましたっ!!(きっぱり)−はるか (2003/11/18 20:31:20) No.28198


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28103dream〜夢〜 第五話エーナ E-mail 2003/11/14 21:11:24




エーナです。寒い!
学校から帰ってきたとき味噌煮込みうどんが欲しくなったよ。あたしゃ。
・・・って、あたしの話はどうでもいいか。
さて、ここでポピュラーな設定と超マイナーな設定が1:1で混合されたりしてる(?)第五話!
何はともあれっ!どうぞ読んじゃってほしぃのん!(何語っ!?)






Dream〜夢〜
      第五話



昨夜の騒動から一晩たち、あたしたちはとりあえず一眠りして、朝。
食事中は取り合ってもらえないと知っているのでゼロスは茶をすすり、リナとガウリイはナイフとフォークの金属音を響かせていた。
ちなみに、ルキが食べている料理は一人前。
二人のようにたくさん食べられない事はないのだが、栄養は必要な分だけとればいい。
それがルキの持論である。
リナとガウリイの間には、ルキの皿からはとらないという暗黙の了解ができている。

「相変わらずすごい食欲ですねえ・・・」

「まったくだわ。まあ、これが二人のエネルギーになってるんでしょうけど」

ルキははこの光景を眺めつつ、ベーコンを一口。

「ふう、ご馳走様」

ルキは布で丁寧に口を拭き、食べ終える。

ぎぃんっ!

白銀の光が皿の上を掠め、皿に乗っていたオレンジ色の物体――にんじんが相手の口の中へと消える。

「ああっ!?俺のにんじん!」

しまった!という顔で父さんが叫ぶ。

「ふ・・・あたしの勝ちね、ガウリイ」

勝ち誇った顔で言い放つリナ。

「ぐぅぅ・・・」

うめいたガウリイは心底悔しそうだ。

「これで1282勝7234引き分け1281敗・・・あたしのリードよ!」

何が基準なのかはルキとゼロスにはよく分らないが、とにかくそういうことらしい。
ってか。んなモンを数えてたのか。
ルキの心の中でつっこみが入るが、それを口に出しては面白くない。

「・・・そういえばルキ、今日は食欲がないな。いつもを100としたら96だぞ?」

「そういえばそうねえ。いつもはぺろりと1人前食べるのに、サラダが少し残ってるわ」

おい。あの激戦の中で観察してたのか。あんたら。

「それになんだか顔が赤いような・・・」

「・・・なんでもないわよ」

ガウリイの指摘に『そっけなく』返すルキ。
ますますおかしい。
いつもならくすくす笑いながら、『父さん、んなわけないでしょ♪』くらいは言うのだ。

「・・・本当ですか?」

ゼロスがいう。

「・・・本当よ。
あたしが一晩外に出ただけで、風邪を引くわけが・・・な・・・い・・・?」

ぐらり。

ルキの体がかしぎ、横へふらりと倒れる。

『わわっ!?』

はっし。

ゼロスがルキの身体を支え、ひたいに手を当てる。

「・・・約39度・・・かなりの熱です」

「あれ・・・?そんなに・・・?」

熱で頭が半分動いていないのか、るきがぼぉっとした目つきでゼロスを見上げる。

「あっちゃー・・・ほんとは看病してたいところなんだけど・・・ルキに病人食とか食べさせなきゃならないけど材料がなあ・・・
ゼロスに買い物行かせるのは不安だし・・・ガウリイには無理だし・・・仕方ないわね、あたしが行くわ。ガウリイ、ルキを頼むわよ」

「わ、わかった」

「ゼロス、容態が急変したらすぐに空間転移してあたしに知らせて。わかったわね?」

「・・・わかりました。リナさんに今逆らっても得する事はありませんからね。
このことに関してはいいですよ。全面的に協力しましょう」

肩をすくるゼロス。ガウリイはルキを抱えて二階へ。







「あわわわわわ・・・」

うろうろうろうろ。

「ええっと・・・ガウリイさん?」

部屋の前でうろうろしているガウリイに声をかけるが、反応らしい反応は返ってこない。

「ルキが風邪ひいたルキが風邪ひいた・・・」

「いやあの」

「かぜかぜぜかぜぇっ!ああああああああっ!」

なんだかバーサーカーのごとく声を上げるガウリイ。他の客に非常に迷惑である。

ばんっ!

「眠り〔スリーピング〕」

ばた。すかーっ。

「え・・・ええっと・・・・・・いいんですか?」

ゼロスは、勢いよく扉を開け、ガウリイに魔法をかけた張本人――ルキに尋ねる。

「いーのよ。てか、あのままほっとくとうっとうしくてしょうがないわ」

にべもなく言い放つルキ。心なしか目が据わっている。

「・・・はあ」

「おやすみ。ああ、そうそう。父さんはそのままほっといてあげて」

「・・・はあ」

その返事を待たず、ルキは再び扉の中へ。

ばたん。

部屋の中で、何かが倒れる音。
ゼロスが不思議に思い、そっと中を覗くと・・・

ルキが倒れている。

「ちょ・・・ちょっとぉ!?」

病状を悪化させれば、リナに殺される。
・・・よくても、だ。
高位魔族であるはずのゼロスは、本気でそう思っていた。

あわてて駆け寄り、ルキの身体に触れ――

――ちりっ。

指先から何かが突き抜けるような感覚。
とっさに手を引っ込めたゼロスは、この感覚に戸惑った。

――これは・・・一体・・・?

再び、ルキに触れる。


イメージの奔流。

闇の収束。

「っっ!?」


全ての痛みはあたしのせい――

全ての悲しみはあたしのせい――

全ての怒りは・・・全ての憎悪は・・・全ての・・・全ては・・・


あたしの、せい!


あたしは弱い。
何も受け止められない。
心の底にたまり、澱み、重くなるだけ。

前を向きたい。でも、できない。

だからあたしは過去を望み続ける。

誰か・・・あたしを助けて・・・



「あ・・・・・・」

イメージがそこでぷつりと途切れる。

「このイメージは・・・障気よりもさらに重い・・・そして、さらに深い、闇・・・?
彼女が・・・本当に赤目の魔王〔ルビー・アイ〕様の宿主なんでしょうか・・・?」

ゼロスのその言葉に、返すものは誰もいなかった。






「ガウリイ・・・ガウリイ!?」

倒れたガウリイを発見し、駆け寄るリナ。
その表情は焦燥のそれで。ゼロスが虚空から現れたとき、彼女はきっとにらみつけた。

「あんた・・・ガウリイに何したのよ!」

「えぇっと・・・それ、やったのルキさんなんですけど」

「・・・は?」

リナの目が点になる。

「いえ、ですから。
部屋の前で騒ぎまくってたガウリイさんに、部屋から顔を出したルキさんが怒って眠り〔スリーピング〕であっさりと」

「・・・・・・ガウリイらしいわ」

リナはあんなに怒っていた自分にあほらしくなり、嘆息する。

「ああ、ルキはどうしてた?」

「寝てましたよ。ガウリイさんを魔法で眠らせた時以外はそれはもうぐっすりと」

「そう。よかった」

はあ。とため息をつく。リナは立ち上がり、階下へ。

「・・・・・・。ガウリイさん、どうするんでしょう・・・?」

その問いにも、答えるものはいなかった。






雪雲の間から、満月がランタンのように地面を照らしている。
銀色の大地は光を反射し、よりいっそうあたりを明るくさせている。

穏やかな表情。ルキは部屋に備え付けてある椅子に座り、窓の外を眺めていた。
闇の中、しんしんと降る雪。その中をリナとガウリイが歩いてゆく。

「・・・おや・・・どうかしたんですか?というより・・・眠っていなくていいんですか?」

「起きたばっかよ?眠れないの。
ってか。乙女の部屋に無断で入ってきちゃって・・・母さんなら即呪文ものね」

「そ・・・それはすみません。すぐに出ますから・・・」

ゼロスが言ってUターンしようとする。心なしか顔が引きつっていたり。

「別にかまわないわよ。あたしは母さんじゃない」

「・・・はあ」

どうも女性の心は1000年たとうが理解しにくい。
ゼロスは思いつつ、そばにあった椅子に腰掛ける。自然に丸テーブルを挟んでルキと向かい合う形になった。

「ねえゼロス」

「なんです?」

「人間って・・・一体なんなんだろうね」

ルキの口から、唐突にそんな言葉が出る。

「・・・?・・・質問の意図がわかりかねるんですが・・・」

「・・・人間という種族が完成されたのは、いつだと思う?」

「は?」

「2万年前よ。ホモサピエンスの登場・・・他の動物は駆逐され、追いやられ・・・
そののち、ドラゴンやエルフの祖先たちが生きるために人間の物理的技術を学び・・・そして神族と魔族が地に降り立つ。
それらは争いを繰り広げ、魔導的な『力』をみせる。
魔力において人間よりぬきんでていたドラゴン、エルフたちは研究に研究を重ねた。
でも、先に基礎理論を成立させたのは人間。
人間は多種多様だわ。だから、色々な位置からものを見て、空想し、あらゆる仮説を立てた。
時には『常識』という枠にとらわれて停滞する事があったけど、それもたかだか百数十年程度。
人間は先を行く。命が短いからこそ、その期間を精一杯生きようとする。
生物的サイクルが短ければ短いほどいいってモノじゃないわ。人間くらいがちょうどいいのよ。
知識を重ね、理論をたて、先を見て、進んで行く・・・魔族や神族はどうかしら?未来を望む?望まないでしょう?
魔族は、未来のない滅びを望み、神族は、発展のない今を続けようとする・・・
人は、今は神族を信仰しているけど、きっと人間の想像力が勝つわ。思いを神という形にし、今とはまったく別のさまざまな神々がきっと生まれる。
そして、魔族を越える手段をも持つでしょうね。それが1000年後か、2000年後かはわからないけど・・・
ドラゴンとエルフは消えてしまうわ。きっと。非効率的過ぎるのよ。寿命が長すぎて、環境の変化に対応できなくなる。
魔族や神族はもっとそう。アンバランスなのよ。自然にあんな生き物が生まれるわけないわ。
神や、魔王すらも膝を折るその相手・・・その存在すら、人間についていけないかもしれないわね」

「な・・・っ!?」

一気にまくし立てられたその理論に、ゼロスは絶句する。

「アンバランスな魔族と神族はどうなるのかしら?消えてしまう?・・・違うわね。一度生まれたものは、そう簡単に消えたりはしない。
きっと彼らは長い時を待つのよ。戦いは休戦状態になるわ。
あきらかに増えてゆく人間たち・・・そして赤の竜神の力は人間同士の間では意味を成さなくなる。魔の力もそう。
今は、魔族と神族が今の状態で安定させている。
魔族は恐怖をまき、神族は平穏という名の停滞を。それが今、楔の役割を果たしている。
・・・でも、遠からずその楔は崩壊する。その楔自身に入った、『リナ=インバース』というヒビによってね。
そのヒビは小さなものかもしれない。でも、そのヒビを指し示し、伝える人がたくさんいるわ。
セイルーンの巫女姫しかり。レゾの孫しかり。黄金竜〔ゴールド・ドラゴン〕しかり。エルフもまた。そして姉であるルナ=インバース・・・赤の竜神の騎士〔スィーフィード・ナイト〕もね。そして最後に・・・魔族自身。
そのヒビは、伝説となり、不可能という考えを捨てさせる。魔族と神族はその可能性を無視する事ができなくなる。
時が経つにつれて、人間は神や魔のことを忘れてしまうわ。
何も恐れなくなる。
障害を壊し、広がってゆく。
そして、ほとんどの・・・もしかしたら、全ての存在の手には負えなくなる。
ならば、世界を滅ぼすのも救うのも・・・人間なのかしら・・・?
いいえ・・・もっと・・・その世界の壁すら越えてしまう何かを持ってしまうのかも・・・」

ルキはそこまで話を続け、黙る。
ゼロスは凍りついたように動かない。

「・・・ふう・・・何言ってるのかしら、あたし。熱のせいかもね・・・」

ルキは椅子から立ち上がり、ベッドにもぐりこんだ。




――彼女は一体、何を考えているのでしょうか?何を感じているのでしょうか?
  それはきっと、彼女にしかわからない事。
  ならば自分は、それを垣間見てみたい――






あとがき

エ:やたらめったら長かった今回の話!根気よく読んでいただけたでしょうか?

M:いやー。風邪の意味無かったよね、これ。

エ:ああっ!弟さん、それは言わない約束っ!って、あれ?L様は?

B:『うるさいっ!』・・・と言われて顔を真っ赤にしてクッション投げつけられたぞ。

エ:出たな妖怪蠅男!

B:は・・・蠅男!?俺は蠅の『王』だ!『王』!

M:いやどっちも汚そうな名前だね。あ、女たらしってのもあったよ。軽薄男くん。

B:ううう・・・(床にのの字を書いていぢける)

エ:と、まあこいつはほっといて、と。質問が多々ありそうな表現があったんで補足します。

M:L様・・・おっと、作中ではルキ様だね。
そのルキ様の一人称の文・・・第四話の最初のほう、『前に塵化滅〔アッシャー・ディスト〕を使おうと〜』の部分だね。
  元作中で、他の存在の力を借りる事は、自分の存在を否定する事に他ならないと冥王〔ヘルマスター〕が言っていたよね。
ええっと・・・確か姉さんにもらったメモが・・・あったあった。
  『あたしが部下の力を使って何が悪い。文句ある?部下の力を使うのは上司の特権よ。とっ・け・ん!』
・・・だってさ。

エ:存在意義とかそういう前に、部下の力は利用するもの・・・というわけね。なるほどなるほど。

M:それじゃあ、次も見てくれると僕もうれしいな。

エ:さようなら〜♪


(作中の超マイナー設定。わっかるっかなぁ?)





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28104Re:読ませていただきましたよーすぅ E-mail URL2003/11/14 21:20:38
記事番号28103へのコメント

こんばんわー
dream〜夢〜 第五話読ませていただきました。
たのしかったですよぉー
次回も読みます♪絶対に!!
ってことで、がんばってくださいね♪
であ、すぅでした。

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28112dream〜夢〜 第六話エーナ E-mail 2003/11/15 07:02:32
記事番号28103へのコメント


こんにちは。エーナです・・・
なんだかテンション低いですが、気にしないでください・・・喪中で年賀ハガキが出せないんですよ・・・
買ってすらいません。イラスト描きたかったのにぃ・・・
てか、プリンタとか欲しいよう。
作中の季節は冬の終わり。
物語も、もうすぐ終わりになるといいなあ・・・・・・
なんだか最初の意図とぜんぜん違う・・・書いてるのも行き当たりばったりだし・・・
でてくるはずの設定が・・・次の作回し・・・
それではどぉぞ。




Dream〜夢〜
       第六話


日が当たりわりと暖かな午前中。あたしたち四人はひたすら走っていた。

「っだぁあああっ!」

どごん。

母さんが叫び、後方に爆発。

「なんなんだこれは!何で問答無用の爆発!?」

ごばん。

父さんが嘆き、上空に閃光。

「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け・・・って、ちがぁうっ!」

づぼん。

あたしがセリフにがつっこみ、横手から爆風。

「いやぁ。レファグロンさん暴走してますね」

ごがん。

一人だけのんきに言うゼロス。
おにょれ!後でシメちゃるっ!

『にぃぃがぁぁさぁぁんんぞぉぉ!』

「うっわ嫌だ男の執着って!しつこいっ!」

その声にあたしの背筋にぞわぞわと寒気がはしる。

「夢にみるっ!気色悪ぃっ!誰かどうにかしてくれぇっ!」

父さんが本気で言う。

「無理ですねえ。相手の位置がつかめませんから、僕でも攻撃できません」

「ルキ、『あれ』は!?パート2!」

指を二つだし、あたしにたずねる母さん。

「ゼロスに同じっ!位置がつかめないから発動しても空振り!」

「いっやぁぁっ!いつまでこれ続けるわけっ!?」

『貴様が死ぬまでだ!ルキ=ガブリエフ!』

・・・ってことは・・・

「ゼロス、ちょっと耳貸して!」

ふとした思い付きに、あたしは言ってみる。

「・・・は?まあいいですけど・・・」

ごにょごにょごにょ。

「・・・え・・・?できますけど・・・いいんですか?」

「できるんだったらさっさとやって!」

「ルキ、何やるつもりっ!?」

「父さん、母さん・・・ごめん」

「いきますよ!」

ざわり。

母さんと父さんの姿が消える。

――空間転移。ゼロスに指示してひとつ先の町までひとっ飛びさせたのだ。

そしてあたしは足を止める。それにつられてゼロスも。

「――光よ、闇よ。汝の化身らよ。我、悪夢を統べたもう王の名のもとに、今ここに、我が敵を撃て・・・」

「ちょっとぉっ!?」

「・・・!?よけてっ!」

背筋にはしる、びりびりとした感覚。
あたしはそれに従い、ゼロスに言う。

「は、はいっ!」

どぅんっ!

あたしたちは左右に分かれて飛び退る。

『くくく・・・かかったな!』

「!?」

あたしはあわててその場をはなれようとする・・・が。もう遅い。

ごぅん!

紅い閃光。灼熱。

あたしは、飲み込まれた。


「つぅ・・・っ・・・」

全身にはしる引きつるような痛み。

「大丈夫ですか!?」

「・・・ん。何とか・・・ところどころやけどしただけみたいね。
今、ダメージを軽減させてくれたでしょ。ありがと」

『ち・・・ならば別の方法をとるだけだ!』

う゛ぅん・・・

「あ・・・?」

景色がゆがむ。

ああ・・・そういえば、ここは・・・

リナ=インバースと、レゾ=シャブラニグドゥが戦った地。

なるほど。母さんが使った重破斬〔ギガ・スレイブ〕によって引き込まれたあたしの力・・・
エネルギーは完全版には届かないが、あたし一人を閉じ込めるには十分だとでも思ったのだろう。

「くくくくく・・・」

ゆらりと現れるレファグロン。

「・・・で、どうするつもり?」

「死ね」

やっぱり。

「・・・と、言いたいところだが・・・それではつまらん」

「・・・ふぅん?」

どっ。

「・・・っ!?」

腹部に来る衝撃。

「なぶりころしてやろう・・・っくくくくくく・・・」

かはっ。

胸からこみ上げてくる鉄の味に顔をしかめ、身体をくの字に折り曲げてそのまま吐き出す。

・・・おかしい。

ごっ。

「ぅあっ!」

あたしの軽い身体は、爆風に吹き上げられ、地面に叩きつけられる。

・・・どうもおかしい。
こいつは神族だ。それはわかっている。
でも、おかしい。
前の時もそうだった。死の餓者〔デス・イーター〕などというものをもってきて、あたしにけしかけた。
あれに噛み付かれれば、あたしの封印は解ける。
そして・・・同じようにシャブラニグドゥも。
それはわかるはずだ。だが、それを頭に入れていない、という事は・・・

こいつの存在そのものがゆがんできている。
なぜ?どういうこと?

まさか・・・

あるひとつの可能性に、あたしは思考をめぐらせる。

歪み。それはどこから発生した?こんなことは今までなかった。
あたしはその歪みを発生させないように気をつけて降臨した。
他の世界でもなかった。ならば、原因は?
他の世界になくて、この世界にあるもの・・・

――あたし自身の力ではないか!

どうやらあたしはとんでもないものを作ってしまったようだ。
いくら母さんを寄り代としていたとはいえ、あたし自身のエネルギーを忘れていたとは。

修正しなければならない。
あたしから発生した歪みは、あたしにしか正せない。

こんな歪みが、他にもあるかもしれない。

どうやら、ここにとどまらなければならない理由ができてしまったようだ。

「次に・・・こんなのはどうだ・・・?」

可視光線が曲げられていくのがわかる。
通常の夢幻覚〔イリュージョン〕とは異なり、視覚だけの幻。


栗色の髪の毛。
虚ろな紅い瞳。
それはにごり、虚空を見つめる。
首から下は・・・ない。


「・・・っあ・・・」

胸が熱くなる。

「・・・いや・・・」

あたしは首を左右に振る。

「いや・・・!こんなの、いや・・・!」

瞳から雫がこぼれだし、止まらない。

「・・・嫌だ。こんなの・・・」

ぱきり。

胸の中で、何かが音をたてる。

「嫌。絶対に・・・嫌」

ぱり・・・ん。

「嫌い」

ぱききっ・・・

「大っ嫌い」

――許さない。ただ滅ぼすのでは生ぬるい。未来永劫、虚無の中に閉じ込めてやる。

「あんたはあたしの逆鱗に触れた。
覚悟は・・・できてるんでしょうね?」

ぎんっ!

あたしの瞳が、赤から金へと転じる。

「何・・・!?」

あたしの変化を感じ取り、光の屈折をもとに戻す。

「あたしの名前は、ルキ=ファー=ガブリエフ。
ファーストネームのつづりはLuci。ミドルネームのつづりはFer。
Lucifer。ルシファー、ルシフェル・・・マイナーなところでは、ルキフェルやルキファー、ルチフェルとも呼ばれてるわね」

「なんだ?それは・・・一体どういう・・・」

まだ気付かないのか、こいつは。
それともあたしの本名を知らないだけか。
どちらにしろ、そのことに興味はない。

「・・・ふ。・・・滅びなど――生ぬるい。我が怒りを知れ!」

ごぅおっ!

かざした手から、虚無の触手が伸びる。

「あ・・・あああああああっ!?」

逃れようともがくが、無駄。
冥王ほどの力すらないこいつに逃れられる訳がない。

やがてそいつはは飲み込まれ・・・混沌の奥底へと放り込まれた。

あたしの瞳が、赤色へと戻ってゆく。

ふと、考える。
母さんは戦う時、何を感じたのだろう?そしてどんな思いだったのだろう?

何かを守りたい、そう思っていたはずだ。
それは自分の命であったり、父さんの命であったり。何かの思いであったり。
それがきっと強さということなのだろう。

うん。わかった気がする。あの輝きはきっとここから生まれたんだ。
だから、きっとあたしも強くなれる。



「・・・さん・・・ルキさん!」

景色が元に戻り、目の前には紫水晶のような瞳を持った神官が一人。

「・・・あ。ゼロス」

「『あ。ゼロス』・・・ぢゃあないですよ!・・・まったく。その様子だと大丈夫なようですが・・・おや?やけどはどうしたんです?」

「ああ。虚無の力を使った時にちょっとね」

「・・・・・・って・・・・・・重破斬〔ギガ・スレイブ〕ですかっ!?
しかも髪が銀色になってないところを見ると完全版っ!?
お・・・・・・思い切った事を・・・」

たじろぐゼロス。

「いや。まあ・・・ね」

あたしはほほをぽりぽりかきつつ、あいまいに言う。

「さて、全部終わったし、母さんたちのところに行かなきゃね」

あたしは満足げにいった。

「え?・・・ああ。そうですね・・・」

「あんたの仕事はこれで終わりなわけ?」

「いいえ。終わりませんよ。でも、しばらくお別れです」

にっこりと微笑んでみせたゼロスの表情に、ほんの少しだけ違和感を感じたが、あたしはそれをあえて言わなかった。

「・・・そう。また会いましょう」

「・・・リナさんなら『会いたくない』というんですけどね・・・いやはや」

「いったでしょ?」

あたしと母さんは、違うって。

あたしはウインクをして、微笑んでみせた。

End





あとがき

エ:あああっ!発投稿の連載作品で、前書き書いたときはこの話で終わるかどうかすら不明だったのに!母さんはうれしいわっ!

L:あんた高校生でしょ。しっかしまあ・・・微妙なゼロLなんてものを書いちゃって・・・ちゃんと後始末はつけるんでしょうね?

エ:知らない。

ざっす。

エ:げふっ・・・い・・・いや・・・続きは書きますけど・・・このあとどうなるかは不明ってことで・・・

M:しかも、ゼロスなんてロリコンだよね。ロリコン。

エ:弟さん・・・それはないでしょ・・・第二部は、L様もとい、ルキが成長して出てきます。
  肉体年齢14。見た目17。いやあ大人っぽい。

L:・・・そういえば、その大人っぽいって設定どこから出てきたのよ。

エ:いや、なんとなく。

L:やれ。

がすっ。ごががががががが・・・

M:うわあ・・・すごいね。

A:久々の出番ですっ!嬉しいわね?ベリアル。

V:・・・別に。

A:うっわこの酒飲み薬剤師愛想悪。

V:・・・うっかりはちべえ・・・(ぼそっ)

L:あんたら黙りなさい。
  ・・・さて!掘削機で掘削されてエセ物書きも黙ったところで!ここに第一部Dream〜夢〜編を終わります。
  第二部も待っててね〜♪





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28119Re:dream〜夢〜 第六話はるか 2003/11/15 16:53:06
記事番号28112へのコメント

わぁい!!L様だぁっ!!L様だぁ!!
・・・・・・・・こほん。
こんにちは。なにやら最初っから錯乱中のはるかです。

dream、始めからみてきました。レスいれてなくてすいません。
あれ?もしかしたらいれたかもしんない。いやぁ、最近物忘れが激しくて。
(わたしゃガウリイかッ!?)とにかく、レスもしいれてたりしたらごめんなさい。

わたしL様ファンなんです。わたしが好きなキャラベスト5は、
1:L様 2:重破斬 3:神滅斬 4:リナ 5:竜破斬
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんです。
つまりは、やたらと強力なのが好きなんですよわたし。
(あぁ、己のことながらアブない趣味っ!)
2,3,5は呪文だろってつっこみはおいといて。(だって好きなんだもん)
(キャラだけだと
 1:L様 2:リナ 3:ゼロス 4:ガウリイ 5:アメリア
   ・・・・あぁっ!またしても強い奴ばかりっ!!)

ともあれ、そんな趣味なんでこの作品はかなりツボついてるんですよ。
L様、リナでてくるわゼロスやガウリイでてくるわ。
ちょっぴりL様が強力無比じゃないのが不満だったり。
(あ、別に気にしないでくださいね。こんなアブない趣味の奴の言うことなんぞ。)

続きが楽しみです♪待ってます♪(まて!自分の方はどうしたッ!?)
それでは♪
     (これにて、まったくもって書いてる本人にも意味不明なレスを終わらせていただきます。)



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28134Re:dream〜夢〜 第六話エーナ E-mail 2003/11/15 22:07:08
記事番号28119へのコメント

>わぁい!!L様だぁっ!!L様だぁ!!
>・・・・・・・・こほん。
>こんにちは。なにやら最初っから錯乱中のはるかです。

>dream、始めからみてきました。レスいれてなくてすいません。
>あれ?もしかしたらいれたかもしんない。いやぁ、最近物忘れが激しくて。
>(わたしゃガウリイかッ!?)とにかく、レスもしいれてたりしたらごめんなさい。

ありがとうございます。こんな高1の小娘のしり切れトンボな連載などというのもおこがましいもの(長っ)を読んでいただきまして。(ほろり)

>わたしL様ファンなんです。わたしが好きなキャラベスト5は、
>1:L様 2:重破斬 3:神滅斬 4:リナ 5:竜破斬
>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんです。
>つまりは、やたらと強力なのが好きなんですよわたし。
>(あぁ、己のことながらアブない趣味っ!)
>2,3,5は呪文だろってつっこみはおいといて。(だって好きなんだもん)
>(キャラだけだと
> 1:L様 2:リナ 3:ゼロス 4:ガウリイ 5:アメリア
>   ・・・・あぁっ!またしても強い奴ばかりっ!!)
>
>ともあれ、そんな趣味なんでこの作品はかなりツボついてるんですよ。
>L様、リナでてくるわゼロスやガウリイでてくるわ。
>ちょっぴりL様が強力無比じゃないのが不満だったり。
>(あ、別に気にしないでくださいね。こんなアブない趣味の奴の言うことなんぞ。)

すみませぇん・・・L様が主役なんで、最強のままだと話がギャグ路線へ・・・(しくしく・・・)

>
>続きが楽しみです♪待ってます♪(まて!自分の方はどうしたッ!?)

ああ☆こんなものを待っていただけるなんてうれしい!あたしゃ幸せものだぁよ・・・ごふごふっ・・・(←をい)

まあ、それはおいといて。
本当にありがとうございます。こうやって書いているのは皆様のおかげっ!
それでは、またあえたらいいですね♪

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28135Re:いえいえ。はるか 2003/11/15 22:40:39
記事番号28134へのコメント

>ありがとうございます。こんな高1の小娘のしり切れトンボな連載などというのもおこがましいもの(長っ)を読んでいただきまして。(ほろり)
高校1年生なのであられますか・・・。
ふっわたしなんかまだ中1ですぞい。
バス子供料金でとうりますよ。12歳だし。(はや{おそ?}生まれなのです。)
>すみませぇん・・・L様が主役なんで、最強のままだと話がギャグ路線へ・・・(しくしく・・・)
あ、分かります。それ。シリアスなんてどう書けっちゅーんじゃ!?
って感じですよね。最強だと。
>本当にありがとうございます。こうやって書いているのは皆様のおかげっ!
>それでは、またあえたらいいですね♪
もちろんです♪

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28136dream〜夢〜 おまけエーナ E-mail 2003/11/15 22:51:39
記事番号28103へのコメント



こんにちは(これ書いてる時はこんばんは)。エーナです。
Dreamおまけ。書かせていただきました。これはおまけで、補則みたいなものなんで読まなくてもたぶん大丈夫です。
登場キャラはわずか二人!
それでもよければどうぞ。




Dream〜夢〜
      おまけ


緑の中、日差しがこぼれる春のある日。

ぱささささっ・・・

羽どうしがこすれる軽い音。
日の光に銀色にきらめく小鳥は、金髪の少女の指に止まった。

「・・・で、レファグロンのことだけど・・・どうだったの?」

『うん。ランゴートの眷属でね、暴走していたってのがそいつらの言い分だよ』

少女が催促すると、小鳥からなんとものんびりとした、青年の声が聞こえた。

「・・・ふぅん・・・なるほどね・・・まあ、暴走していたといえない事もないけど・・・」

『で、どうするの?姉さん』

「・・・放っておきましょう」

『いいの?仮にも姉さんに攻撃を仕掛けたやつらだよ?』

そっけない言葉に小鳥が首をかしげる。

「よくないに決まってるじゃない。ホントならとっちめたいところだけど、やる事ができちゃったしね・・・」

『例の歪みってヤツ?あんまり実感ないなあ・・・僕らが直接手を下しても、完全に消滅しないだなんて・・・』

「あたしの力が基礎にあるから、その部分が滅ぼそうとしても残るのよ。
で、そこから再生してエンドレス。周期も普通の精神生命体の死のサイクルより格段に早いし、もとのまま再生するわ。
それを完全に滅ぼせるのは虚無だけ。
どうせなら楽しんでいたいし、誰にも知らせたくないのよ。だから他に協力させるような事はしないわ。
ないとは思うけど、歪みをもし結界の外の世界で見つけたら、こっちに誘導するなりなんなりしてね」

『――了解』

まじめな口調で小鳥が言う。

「それじゃあ、ベルゼたちにもよろしくいっといてね、ミカエル」

『うん、わかった。姉さん、またね』

「ええ、またね」

ぱささささっ・・・

少女は微笑み、飛び立った銀色の小鳥を見送る。

「さて、レーダの木の実も結構取れたし、そろそろお昼ごはんね」

少女は足元の、中身の詰まった袋を少し重そうに持ち上げた。

口元をほころばせて。





あとがき

M:おや。僕が結構出張ってるね。鳥だけど。

L:何気ない会話ってとこかしら。ほんとにおまけね。

エ:おまけですから。

L:そう言えば、第二部のタイトルが決まったんですって?

エ:はい。Unbalance〜不均衡〜ですね。メインキャラは、当然L様ことルキ=ファー=ガブリエフと、アメリアとゼルの子供のレオナルド(レオン)=デュー=レシア=セイルーンです。ああ、ゼルガディスは入り婿のくせに国王です。そしてもちろんゼロス。

L:・・・あんたやっぱりゼロLにする気?

エ:もちろん☆そうじゃなかったら第二部なんてやりません!それに、やりたかった設定もあるし♪

L:ま、がんばんなさい。

エ:はいっ!(久々に攻撃受けずにすみそう♪)

L:今のあたしのセリフは、お仕置きしたげるからがんばれって意味♪

エ:ええっ!?

ごすっ。げぺぺぺぺぺ・・・

M:・・・姉さん、何?この音。

L:さあ?まあ、いいんじゃない?

M:それもそうだね。それじゃあ、また読んでね♪



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28145Unbalance〜不均衡〜 第一話エーナ E-mail 2003/11/16 00:01:31
記事番号28103へのコメント


エ:ああ!第二部!第二部ぅぅっ!

L:やかまし。

びっす。

エ:だ・・・第二部ぅ・・・皆さん、楽しんでいただけたら幸いかな・・・と・・・げっふ。

L:しぶとい・・・やっと倒せたわね。
  それでは、エセ物書きことエーナのあたしが主役のお話始まり始まりぃ♪




Unbalance〜不均衡〜
             第一話


――わぁぁぁぁ・・・!

広がる喧騒。流れる血臭。

デーモンの発生。それも特殊な。
街にいた警備隊はほとんど倒され、残りの者たちが倒れるのも時間の問題。
ここは、聖王都・セイルーン。
皆が皆、街の外へと逃げようとしていた。
・・・わずかなものたちを除いて。

一人は、黒髪の王妃。そして、その夫である国王。
その子供二人と女王の父。

――最後に。金髪をなびかせた、見た目16・7の赤い瞳の魔剣士。

「・・・見つけた」

つぶやいたのは、魔剣士。
春のうららかなはずである午後の日差し。しかしそれは、デーモンの雄たけびや、人々の悲鳴で引き裂かれていた。



「――離して!あたしは戦います!」

短い黒髪を持った、小柄な王妃は王宮の裏で悲痛に叫ぶ。

「アメリア!あのデーモンは普通と違う。ここはいったん避難を・・・」

こちらも黒髪黒目の王が王妃を羽交い絞めにしている。

「この街の者たちを・・・死んで行った者たちを裏切るというのですか!?」

「母様!わがまま言っていないで、早く・・・!」

「ここで逃げたらあたしの正義が廃りますぅっ!はぁなぁしぃてぇくぅだぁさぁいぃっ!」

ずるずるずる。

大の大人と、子供を引きずって、アメリアはドレスのままで叫ぶ。

「はなすかっ!」

「離してっ!」

「離すかっ!」

「・・・・・・・・・・・・。あんたらうるさい」

金髪の魔剣士が呆れた声を出し、言い放つ。

「・・・ルキ!?何でこんなところに・・・いや、それよりも!母様を何とかしてくれっ!」

黒髪の少年が、金髪の魔剣士の姿を確認し、言う。

「ま、がんばんなさい。あたしやる事があるから」

『そこを頼むっ!』

国王と王子と王女が大声で言う。

「やだ」

言って、背中を向ける。

「何でなのよっ!とにかくお母様を止めてぇぇっ!」

「ルキ!頼むからアメリアを止めてくれっ!」

「やだ。だって・・・あっちをはったおしたほうが早いんだもん」

「あたしの正義の炎は燃え尽きたりしないんですぅぅぅぅっ!兵士たちだってがんばってるんです!あたしたちががんばらなくてどうするんですか!」

「・・・アメリア王妃。この城の兵士は、あなたたちを逃がすためにがんばってるのよ。
まあ、あたしとしてはどっちでもいいんだけどね」

ふわりと、彼女は浮いた。
ルキは猛スピードで空中を舞う。
そして彼女は虚無の触手を左右に広げる。
通常のデーモンとはふたまわりほど大きなそれを目指して。
虚無の触手を漆黒の翼のように広げて飛ぶさまは、まさに堕天使のよう。

「――消えなさい!」

ざわっ!

触手が声と同時にデーモンへと絡みつき、侵食する。
数秒。たったそれだけの間に、デーモンは消えた。

「まったく・・・手間かけさせてまあ・・・」

ふぅ。と、ルキはため息をついた。





王宮の奥にある一室。
デーモンを倒してくれたという事で、お礼をしようといったのは、城の中で兵士を引きずっていた王妃の父だった。

「礼を言おう。ルキ殿」

白髪混じりのドワーフ・・・もとい、王妃の父、フィリオネルはちょびっとだけ額にたんこぶを作った姿でルキににお辞儀した。

「おぬしがあのデーモンを倒してくれたおかげで被害は最小限にとどまった。死者は20にも満たない。負傷者は多いが・・・重傷なものはほとんどおらん」

「・・・父さん、あのデーモン、絶対おかしいんです。
あんな大きくなったのはなんでかはわからないし、あんなに強いなんて・・・へたな純魔族よりも絶対強いんですよ!」

テーブルをばんっ!と叩き、アメリアが言う。

「・・・それは俺も感じていた・・・しかし・・・どういうことだ・・・?」

「お父様、デーモンとはそういうものなのでは・・・」

「そうだよ父様。魔族は強いんだ。あれぐらいでもおかしくは・・・」

「――おかしいわよ。十分。あれは特殊なの」

二人の言葉に紅茶のカップを丁寧におき、ルキは言う。

「特殊とは、どういうことなんですか!?知っていることを教えてください!」

「・・・アメリア王妃・・・いえ、アメリアおばさん。とにかく落ち着いて」

「・・・あ、そうですね」

おとなしくアメリアが椅子に座る。

「あれは特殊な存在。
誰でも・・・どんな存在でもなりうる可能性。
ただ、一人一人がそうなる可能性はかなり低いけど」

「・・・何?」

ゼルガディスが眉をひそめる。

「歪みによって発生する、存在のオリジナル化。
あらゆる存在の定められた枠を超えてしまう可能性」

「あたしが最初に見た兆候は、中級の神族。
魔王の宿主を殺すとか言っておきながら、その魔王を目覚めさせるような精神的な攻撃をやってたヤツ。
次にある街にいた猫。これはわりと平和的だったわ。熱い物ばかりを狙って店の食べ物を掠め取ってた。
・・・で、今回のデーモン。最下級の魔族のはずなのに、その力は中級と下級の中間ってとこね。頭は馬鹿だったけど」

「ただ異常なだけなのではないのか?」

フィリオネルが顎に手を当てながら言う。そのポーズ、似合わんぞ。

「そう、異常よ。でもそれには共通点があるの。・・・あんまり言いたくないけどね」

ルキの顔が少し暗くなる。

「共通点ですか?それは興味深い」

ルキの後ろからふむふむと納得しているような、青年の声。

「何者だ!」

王子が立ち上がり、腰につけた剣に手をかける。

「無礼者!ここは王宮!一般の神官などが立ち入れる場所ではないわ!誰か・・・」

「・・・よせ!セラーネ!」

ゼルガディスが王女を制止する。

「・・・なるほどね。異常なデーモンの調査、あんたにお鉢が回ってきたみたいね・・・
――ゼロス」

ルキは、後ろを向くことなく言い放った。







あとがき

エ:第二部っ!第二ぶぐはっ!?

L:しつこいっ!いい加減にせんかっ!

エ:すみません・・・つい・・・興奮して・・・

L:うし。やっと落ち着いたか。けど、なかなかな展開ね。あり?国王ってゼルガディスの事でしょ?何で黒髪黒目?

エ:人間の身体にもどったってことで。

L:どうやって?

エ:さあ?

がぅん。がららがんがらぅんがら。

L:さて、このエセ物書きを鋼鉄製・トゲつきたらいを落として沈黙させたところで、あとがきを終わります。
  なんか今回あとがき短かったわね・・・まあいいか。
  それじゃあ、さようなら〜♪


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28147Re:懲りずにちゃんと読みました♪すぅ E-mail URL2003/11/16 04:48:42
記事番号28145へのコメント

おはようございまーす♪
ううっ・・・でも何気に眠かったり・・・
それはともかくとして、Unbalance〜不均衡〜 第一話読ませていただきました。
今回はセイルーンですかー・・・
楽しみですね♪
であ、すぅでした。

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28155Unbalance〜不均衡〜 第二話エーナ E-mail 2003/11/16 18:20:04
記事番号28145へのコメント


エ:休日ってすばらしい!もぉ連続で投稿です。
  投稿が登校と表示されるパソコンで打ち込んでる今日この頃。
  まあそれはおいといて、Unbalance〜不均衡〜第二話ですっ!





Unbalance〜不均衡〜
             第二話


「・・・それで、共通する事とはなんなんですか?六年前のレファグロンさんのことも例に挙げてましたけど」

ずずずず・・・と茶をすすり、ゼロスがのんきにたずねている。

「あ、このクッキーおいしいなあ」

レオンはクッキーを手に取り、ぽりぽりと食べている。

「うむ。なかなかうまいではないか」

フィルさんもなんだか同じような感じである。

「これ、あたしが見つけたお店で焼いてもらったんです。甘みがいいでしょ?」

へえ、このクッキーの店、セラーネが見つけたんだ・・・

「そうですね、ちょうどいい感じです。これぞ正義って感じの味ですね」(←おいしいといいたいらしい)

あたしもクッキーを手に取り、ぽりっと音をたてて食べてみる。
ホントだ。なかなかにおいしい。

「あ、セラーネ、その店教えてくれる?後で寄ってみるわ」

「いいですよ。北の大通りの西側で・・・確か、王宮から三つ目の角のところに」

「うん。ありがと」

「・・・ええっと・・・・・・」

あたしたちがほのぼのと会話している中、少し困った様子のゼロス。

「・・・お前らな・・・なんちゅうのんきな・・・」

こめかみをひくひくさせているゼルガディスおじさん。

「このクッキーほんとにおいしいのよ。ゼルガディスおじさんも食べたら?」

あたしのすすめに、おじさんはさらにこめかみをひくひくとさせた。

「っだああああ!ゼロスは魔族だろうが!いいのか!?これで!」

びしぃっとゼロスに指をさし、大声で言うおじさん。

「いいんです。おいしいんですから」

「そうです!これを食べなきゃ正義じゃありませんっ!」

「ってか、父様。カルシウム足りてる?」

「・・・ああああああああ・・・」

口々に言う妻と子供たちに、現国王は部屋の隅でいぢけだした。
ふむ。やっぱりお茶目だ。母さんの評価は間違ってはいなかった。

「ええと・・・レファグロンさんとあのデーモンの関係は・・・?」

はたはたと手をふり、なおもチャレンジするゼロス。

「ゼロス、後でね。このクッキーおいしいし」

「・・・僕の立場って言うものは・・・?」

「ない。ンなモン」

「しくしくしくしく・・・・・・」

あたしの言葉に、ゼロスはおじさんと並んでダブルでいぢけだした。







「・・・で、レファグロンさんとあのデーモンの関係は?共通点とはなんですか?」

少々疲れた様子でゼロスがあたしに尋ねたのは、北の大通りにある店で、クッキーを買った直後の事だった。

「んー。あんまり言いたくはないんだけど・・・ああ、ゼロス、ひとつ聞いていい?これであたしが答えるかどうかが決まるけど」

「なんです?」

「ここであたしが答えて、それから魔族はどう動くと思う?」

「・・・は?世界を滅ぼすものなら、たぶん喜んで煽ると思いますけど・・・」

「もし――それが『悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕』にとって重要な事だとしても?」

そう。これはあたしにとって重要な事。これを見逃したらあたしの沽券に関わる。

「へ!?そんなにことは重大なんですか!?」

「なるかもしれないし、ならないかもしれない。どっちにしろ可能性はあるのよ・・・で、もしなってしまった上で、それを魔族や神族が煽ったら・・・どうなるかわかるでしょ?」

「あ・・・『あのお方』じきじきに、制裁・・・ですか?」

負の感情だくだく垂れ流し、ゼロスが言う。うーん・・・なんだか不幸そうだ。

「ビンゴ!それよ。少なくともあたしはそう思うわ。
もしそうならなくても、関与はあるわね。それが魔族や神族にとって好ましい事態なはずがないわ」

びっと指をたて、あたしがさも楽しそうに言った。

「それはわかりますけど・・・って、根本的にそんな情報どこから手に入れたんです!?」

「それはね・・・」

「それは?」

「秘密よ♪」

「それをここで使いますかっ!?」

「いいじゃない。便利だし」

ゼロスにあっさりとそういってやる。

「・・・そういうことなら・・・
『あのお方』が出てくるのなら、たぶん魔族はそれらを積極的に滅ぼそうとしますね・・・おそらく神族も同じでしょう」

「あ、それ無理」

「何故です?」

「何故って、ロード・オ・・・」

言いかけて、あたしはゼロスの手を引っつかみ、走り出す。

「ルキさん!?一体どうし・・・」

「あんたも走って!『あいつら』が来てる!」

「あ・・・あいつら!?」

「ああもう!共通点があるって言ったでしょ?それを持つやつらの半分くらいが加わってる組織!
ったく・・・この街に来るのが遅れたのはそいつらのせいなのよ・・・撒いたと思ったのに・・・!」

横目でちらりと後ろを見やるが、それらしき影はない。
そこが余計なのだが。

「それだったら、何でルキさんを狙ってるんです!?」

「あたしもその共通点をもってるからよ!レファグロンを倒した時にばれたみたいなの!」

「・・・で、その共通点ってなんなんですかっ!」

「ホントなら言いたくなかったんだけどね・・・!悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の力の欠片を吸収したやつら!
存在のオリジナル化・・・悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕に反目したやつらよ!」

「えええええええええっ!?ルキさん『あのお方』に反目したんですか!?」

あたしの言った事実に驚愕するゼロス。

「ちっがぁぁうっ!反目したのは組織のやつらであって、あたしじゃないわよ!」

誰が好き好んで自分自身に反逆するかっ!・・・という抗議は飲み込んで、あたしはゼロスに言い放つ。

「どうしてそんな事態になったんですかぁっ!?」

「あんたさっきから質問してばっかりね!・・・まあそれは置いといて・・・母さんが原因よ!母さん自身は知らないけどね!」

「もしかしてもしかしますと・・・!?」

「もしかしなくても重破斬〔ギガ・スレ〕放ったときにあふれた金色の力!ゼロス、あたしと一緒に街の外に転移できる!?」

「え?できますけど・・・」

「じゃあやりなさい!」

「・・・わかりました!」

ぉおぉ・・・ん

あたしたちの周囲が鳴り響くような感覚と共に、軽い違和感。

「っとと・・・」

あたしの一歩は、石畳ではなく草を踏みしめていた。
あたりは草原。少しはなれたところにある森の向こうの方に、セイルーンの王宮の屋根が見えた。

「・・・それで・・・どうして追いかけられてたんです?」

「それは――」

『それは、お前が強い力を持っているからだ』

「・・・また追いついてきちゃったわけね・・・あんたしつこいわよ」

その声に、あたしは嘆息する。
これは肉声ではない。どうやらテレパシーのようだ。

『どうしても・・・仲間にならないというか?お前ほどの力の持ち主なら、組織のナンバー2になれるというのに・・・』

「あたしが一番なら考えてもいいけど」

『それは無理だな・・・その座にはすでに――』

「魔王がいるって言うんでしょ?金色の力を抱え、ゆがんでしまった魔王が」

「そ・・・それは本当なんですか!?」

驚愕するゼロスの声。あんた、今回驚きまくってばっか。
この声・・・ゼロスにも聞こえているらしい。

「情報は確かよ」

『ほう・・・そこまで察知していたか・・・お前の情報収集能力もすばらしい・・・ますます欲しいぞ』

「・・・なんかいやらしく聞こえるんだけど・・・」

『あほかっ!我はゆがもうが精神生命体だ!そんな人間のような下心など持ち合わせてはおらんっ!』

あ、ちょびっと怒っちゃった。
・・・ん?なんだかゼロスの様子が変だが・・・まあいいか。ゼロスだし。

「あんたが魔王(仮)本人で、じきじきに交渉に来ようが、い・や」

「・・・なんです?そのカッコカリって」

「魔王だけど魔王じゃないから(仮)ね」

「・・・はあ」

「まあ、それはおいといて、嫌よ。絶対」

『ぬぅっ!では金貨百!』

「母さんならそれでつれたかも知んないけど、あたしは母さんとは違うのよ。
・・・で、いくらまでなら出す?」

『おぬし・・・言ってることが違うぞ!』

勧誘に来たあほ(決定)は叫んだ。

「・・・母さんに叩き込まれた教訓でつい・・・」

ほほに手を当て、うんうんとうなずく。

「・・・と、言うと?」

ゼロスの質問。

「一にご飯二にお金。三四がなくて五にお金」

『むうっ・・・120までなら!』

魔王のくせに意外とせこい。やっぱりあほだ。

「と、あほな事言ってるやつはほっときましょ」

『先に言ったのはおぬしだろうがっ!』

あ、また怒った。

「カルシウム足りてる?」

『話にならんっ!また来るぞっ!』

あたしの質問と共に、勧誘に来たあほの声は途切れた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・で、一体なんだったんですか?」

「さあ?」

ゼロスの言葉に、あたしはそう返した。







あとがき

エ:後半ギャグです。

L:言う事はそれだけかっ!

ごしゃぁっ!

エ:げっふ・・・鎖鎌はヤメテ・・・・・・

L:何よ勧誘に来たあほって!

エ:いえ・・・たまにはギャグもいいかと・・・それに、組織に追い掛け回される理由も欲しかったし、それなら勧誘が手っ取り早いかと。
  どうしても追い掛け回される理由をこの時点では『勧誘』にとどめておきたかったんですが、力は第一部の最後で封印が解けているので、冥王〔ヘルマスター〕なみになってて、その上で相手を倒すわけにはいかないんですよね。で、そうなると交渉相手は魔王と自動的に決まるんです。
  で、魔王を出してシリアスにしちゃうと、ここでバトルして終わり、なんてことになっちゃいますから。自動的にギャグになっちゃうんです。

L:・・・まあいいわ・・・次こそはかっこよくしなさいよ!

エ:はいぃ・・・


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28172Unbalance〜不均衡〜 第三話エーナ E-mail 2003/11/17 15:19:21
記事番号28145へのコメント


エ:こんにちは。エーナですぶぐぉっ!?

L:さて、しょっぱなから意味もなくエセ物書きを沈黙させたところで第三話、始まり始まり♪






Unbalance〜不均衡〜
             第三話


「母様がさ、そろそろ旅に出てみてもいいころなんじゃないかって言ったんだ」

王宮の食堂で、レオンが一言。

「・・・そういえば、アメリアおばさんが旅に出たのって、レオンと同い年の時だっけ」

ベリアルから仕入れた情報を思い出し、ルキが言った。

「うん。で、その言葉に甘えさせてもらう事にしたんだよ」

「・・・正直言って、おばさんの『正義暴走』にうんざりしてたからなんじゃ・・・?」

「・・・あはははははは☆」

どうやら図星らしく、ルキの言葉に、レオンは頭の後ろに手をやり、冷や汗を流しながら笑ってみせた。

「まあ、それはおいといて・・・で、何であたしについてくるってことになったわけ?」

「ああ、それはね、知り合いだったら何かと気安いだろうし、それ以上の理由として、僕はルキのことが――」

「お二人とも、こんにちは」

レオンがほほをほんの少し赤らめ、何かを言いかけたところにゼロスが虚空から現れた。

「・・・あら、ゼロス」

「・・・ちっ」

舌打ちするレオン。

「で、上はなんていってた?」

「あなたの言う事が本当か嘘か判断できかねるので、僕がお供としてくることになりました♪」

なんだかちょっぴり幸せそうに言うゼロス。

「・・・まあ、妥当なところよね・・・」

「・・・ルキの言ってたことが・・・なんだって?」

「ほら、あのデーモンの一件の話よ。
正直、あたしについてくるって言うのなら・・・ああいうのに深く関わる事になるけど。
――場合によっては、死ぬわよ?」

レオンの問いに、ルキは真剣な口調で言う。

「・・・・・・・・・大丈夫だよ。僕はそんなにやわじゃない。
父様から受け継いだ剣術と精霊魔法、母様から受け継いだ体術と白魔法・・・
この際正義の心やらなんやらは置いておくとしても、足手まといにはならないつもりだよ」

ごくりとつばを飲み、レオンはゆっくりと言葉をかみしめながらそういった。

「あ、そ」

ルキは、それに短く返事をした。

「いいんですか?無関係な人間を関わらせて」

少々不満げにゼロスが言うが、

「よくないけどね。レオンは昔から頑固なところがあったから。あたしが言ってもたぶん聞かないわ」

「やっぱりルキについて行くことにしてよかったよ。僕の性格をよく知ってるし、背中合わせでもお互いに信頼して戦える」

レオンがにっこりと微笑み、言い放つ。

「おや?やわな人間よりかは僕のほうがずっと強いですよ。生兵法のお坊ちゃまよりはよほど役に立ちます。いざ戦闘になったら僕のほうが信頼できますね」

ゼロスもこれまたにこりと微笑み、言った。

「くそ魔族・・・」

「くそガキ・・・」

・・・なんだか目線の間で火花が散っている。

「あんたたち、いくら人間と魔族だからってくだらない言い合いしてるのよ。
仲悪いとあたし一人で行っちゃうわよ?」

・・・どうやらルキは、この状況を理解していないようだ。

「ル・・・ルキ、ごめん」

「・・・すみませんでした」

しかし最後の一言に少々あわてた二人はお互いに謝る。

「仲直りの握手でもしたら?」

「そうだね。ゼロス、握手しようか」

「ええ。しましょうか」

ぎゅ。・・・・・・ぎりぎりめぎぎっ!

『ふっふっふっふっふっふ・・・』

なんだかアヤシイ笑い方を二人ではもらせながら、お互いにぎりぎりと手を握りつぶさんばかりに握っている。
・・・というか、握手?

「・・・ダメだこりゃ」

原因である当の本人は、嘆息していた。







あとがき

A:な・・・なにこれっ!あっはははははは!鈍いっ!鈍すぎっ!

エ:三角関係ですねっ。この話がなきゃ、ライト過ぎ・・・って言うか、ゼロスの片思いにすら気付いてくらない方が多かったかも。
  で、L様は今どこに?

A:えっとね・・・顔真っ赤にして部屋に閉じこもってたよ!
  L様が・・・世の中で一番お偉いさんなのに・・・っ!恋愛で超奥手だなんてっ・・・あははははははぶぅっ!?

ごぎゃしぃっ!

エ:あ。ピアノに轢〔ひ〕かれた。まあ、うっかりはちべえさんはおいといて、ここあとがきを終わります。
  楽しみにしててね〜♪



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28173Re:三角関係ですかーすぅ E-mail URL2003/11/17 16:15:32
記事番号28172へのコメント

こんにちわー
Unbalance〜不均衡〜 第三話またまた読ませていただきました。
三角関係・・・
これからの恋の展開が楽しみです♪
もちろん、恋だけではないですけれどね。
まあ、次も楽しみにして読みます。すぅでした。

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28263Unbalance〜不均衡〜 第四話エーナ E-mail 2003/11/22 12:21:01
記事番号28145へのコメント



Unbalance〜不均衡〜
             第四話


春の半ば、とある宿の一室にて。

「この世界に現存しているエネルギーは、あたしを含めて82%・・・含めないと57%か・・・」

少女とも取れる女性は、奇妙な文様が書かれた機器に表示された文字に目をやり、つぶやいて嘆息した。この機械には、金色の力が微量組み込まれている。
己の力のうちから沸き起こる感覚は正直だ。間違っているとは思えない。

「・・・できたら間違いであって欲しいんだけどね・・・それもいいほうに」

言って、その可能性がどれだけ低いか自覚する。

唐突に、開け放たれた窓から深い藍色の小鳥が飛び入る。
確か、このこの深い藍色の事を搗〔かち〕と言わなかったか・・・と、とめどもない思考をめぐらせながら、鳥をみる。

ただの鳥ではない。自分の部下だ。
見る人が見れば――たいていは魔族か神族だが――普通の鳥ではないとわかる。
その見る人を精神生命体――魔族や神族の総称――と限定して、その存在がこの小鳥のことを知っていれば、恐れおののくか、目の前でひざをつき、こうべをたれるだろう。自分を除いて。
自分は頭を下げられるほうだという事を不意に思い出し、混沌にいたころとの違いを漠然と感じる。
確かに自分は、この存在たちにとってもっとも高位にあるとされる存在だ。
だが、ミスを起こし、自分の力をばら撒いた。
その結果のひとつが嘆息の原因。
自分が存在するだけで、内からにじみ出てしまう力をそのままにして出現したあの時・・・冥王〔ヘルマスター〕の一件で、自分の力が流れ出し、さまざまな存在の内部に定着されてしまった。今はその力を抑えてはいるが。
中級の神族。ガイリア・シティの猫。セイルーンに出現したデーモン。
――そしてあの魔王(仮)。
あれらが持つ金色の力からもたらされる感覚の情報・・・すなわち視界に収まる場所にいる存在が、金色の力を持っているか否かという判断をする。
封印を自分に施している状態ならば、否とされて無視されたのだろう。
しかし、レファグロンとの戦闘で封印を解いてしまい、連中にそれがばれた。たぶんどこかで覗いてでもいたのだろう。
自分自身の力でないために、金色の力によりもたらされる感覚は、どれだけ正直でも自分と同じ力を持っているか否かという情報だけ。量の情報もいたって大雑把だ。
己を見て答えが『YES』だとしても、同類と思われるだけ。まさか悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕本人だとは思うまい。この非常事態ならば、神や魔王でも混乱するだろう。

小鳥が、自分の座っている簡素な椅子と対になる、備え付けの小さなテーブルの上で飛び回る。
とりあえず、テーブルの上にある花瓶とは不釣合いに大仰な枝振りの、花がついた物に足を下ろし、くちばしを開いた。
そのくちばしから発せられたのは、小鳥のハミングではなく――

『L様、リナ=インバースとガウリイ=ガブリエフの要素を前提とした、肉体の残り時間の算出ができました』

「・・・そう」

中にある液体の過度の圧迫による器の破壊。
今起ころうとしているのは、それなのだ。
封印をしたままなら問題はなかったのだが、この非常事態で解かざるをえなくなった。
その結果、金色の力による肉体の破壊が起こってしまう。
長い間力を内部に溜め込むとパンクしてしまう。
かといって力をばら撒けば同じことの繰り返し。金色の力があふれてしまう。
なんとも頭の痛いことだ。

『残り時間は、あと――です』

「・・・ずいぶんと短いわね」

小鳥から発せられた情報を聞いて、顔をしかめる。

こんこん。

ドアが指の付け根の間接で叩かれる音――普通はノックの音というだろう――が聞こえ、ルキはそちらに目をやった。
藍色の小鳥・・・アシュタロスは飛び立ち、窓の向こうへと去った。
ルキは立ち上がり、ドアを開ける。

「レオン?どうしたのよ」

ルキの問いに、レオンはぎこちなく、

「えーと・・・この女の人が『ゼロスの代理』だって言うもんだから・・・」

「代理ぃ?本人・・・いや、魔族だから本魔族か・・・って、くだらない事言ってる場合じゃなくって・・・ゼロスは?」

「仕事だ」

答えを言ったのは、レオンではなく、その後ろにいる女性だった。

鋭いイメージに、まとめられた金髪に、旅装。スレンダーな身体だが、締まっており以外に筋肉質そうだ。
年のころは、20と少しに見・・・
そこまで彼女を見ていたルキがはっとする。
もろ獣王〔グレーター・ビースト〕だ、と。

「リディアだ。始めまして」

名乗った名前はまったく違うもの。姿が同じなだけかもしれない。

「・・・こんにちは。リディア・・・でいいわよね?」

「そう呼んで貰ってかまわない」

「ゼロスの仕事って・・・いつもの?」

「そうだ」

という事は、写本の消去か。

「ここで立ち話もなんだし、食堂で話しましょ。・・・ああ、レオンはちょっと席をはずしててね」

「いいだろう」







「聞きたい事がある」

口を開いたのは、リディアのほうだった。

「何かしら?」

ウィンナーをかじりつつ、あたしがたずねる。

「金色の力を持ったために起こる『存在のオリジナル化』とは本当のことか?」

「ええ。本当よ」

「私にはいまいち信じられない。あの方の力が、世界中にばら撒かれているなど」

「まあねー。あたしもその現象を目にして始めて気がついたくらいだし」

言ってジュースを一口。

「・・・おまえ自身もそのひとつだと聞いたが」

「ゼロス、そんなふうに報告してるわけね・・・別にいいけど」

「証拠はあるか?あるのならばみせて欲しい」

「証拠、ね。そうね・・・」

ふむふむと考え込む。

あたしを悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕と疑わせず、あまり目立たず、なおかつ金色の力を感じさせる方法・・・少し難しい。

「・・・なら、こういうのはどうかしら?」

いって、あたしの瞳が鮮やかな金色に染まる。
その色の中にあるのは、確かな力の揺らめきが見えているだろう。

「・・・っ・・・」

リディアはびくりと反応し、凍りつく。

「他には何か?」

すっ、と瞳の色を元に戻し、あたしが問う。

「あ・・・ああ、今のでお前が金色の力を有しているのはわかった。
しかし、他の存在たちが集まって、ある組織を作ったと聞くが?」

「ああ、あれね。『歪んだ魔王』をトップとした、あのかなり大雑把な組織」

「・・・『歪んだ魔王』?赤眼の魔王〔ルビー・アイ〕様のことか?」

「まあ、そう言えない事もないけどね・・・
魔族の滅びの衝動と、人間の思考・・・その二つを掛け合わせた、傲慢で、強欲で、卑怯で、上昇思考の強い魔王。
・・・あれはすでに魔族の一員とは呼べないわね。魔族としての滅びの衝動と、力のみが残り、後は寄り代とされた強欲な人間の思考が支配しているわ。伝承などで人間たちが捏造した魔王に近いものがあるわ。他の全てを滅ぼしたいくせに、自分だけが生き残ろうとする。ホント、嫌なやつね」

そして自分も同じことを考えていた。
リナ=インバースたちと関わってその気持ちはかなり薄れたが、あることには変わりはない。
自分も嫌なやつなのだろう。

「なるほど。そのトップに立っている存在は、魔王様と考えなくていいのだな。
・・・ところで、魔族や神族が金色の力を持った存在を滅ぼす事が無理だと言っていたそうだが、それは・・・」

「――いたな!ルキ=ファー=ガブリエフ!」

ばんっ!とドアを威勢良く開け放ち、響いたのはおっさんの声。

「・・・あら、お客さんね。あたしに。それも『ご同類』の」

おっさんからあたしは金色の力を感じた。・・・が、あんまり強そうではない。今の状態のあたしを100としたら、6か7といったところだろう。この前のデーモンでも二桁はあった。よほど弱いということだ。

「・・・あのどこにでもいそうな魔導士がか?」

そう。見た目は、だ。

「試してみたら?ちょうどいい相手もいるし」

「・・・ふむ」

眉を跳ね上げ、リディアがつぶやく。
数秒黙考したのち、ぱちんと指を鳴らした。

人の影が次々に消え――いるのはあたしとリディア、そしておっさんだけになった。

かたん。

リディアが椅子から立ち、おっさんのほうに向き直る。

「・・・なんだ?貴様は。そこをどけ」

リディアは無造作におっさんのそばへと歩み寄り、目の前で止まった。

「・・・・・・・・・・・・」

一瞬、リディアの体が沈む。

どぅっ!

リディアのコブシがおっさんの胸に突き刺さっていた。

「うわ、いたそー・・・胸部にクリティカルヒット・・・」

人事のように言いながら、あたしはぶっ倒れたおっさんに目をやる。

「わざわざ力を使うまでもない。肋骨と内臓、脊椎を破壊した」

「じゃあ、即死ね」

そっけなく言ってやる。

「その通りだ。しかし・・・人間の死に顔色ひとつ変えないとは、変わっているな」

「母さんなら怒るところだろうけど、あたしは違うもの。人間の生き死になんてどうとでもなるわ。
たとえばそうね・・・こういう風に」

すっとあたしが指をさし――その向こうにはおっさんが。

「・・・・・・ぐほっ・・・・・・やるではないか・・・」

むくりと起き上がるおっさん。

「並の人間なら、あのまま死んでいただろうな・・・
しかし、私は違う!力に選ばれた存在!神すらもしのぐ、この不死の力を得たからには、もはや負けはしない!」

「な・・・!?馬鹿な!今確かに殺したはず・・・」

彼女の顔が驚愕へと歪む。

「もう一度やってみたら?今度は、物理攻撃じゃなく、魔力攻撃で」

「・・・言われなくとも」

掌に光が集まる。

「無駄無駄ァっ!」

ひゅばぢっ!

リディアは魔力を集めた掌で頭部をはじく。
おっさんの頭が小さな爆発と共に吹き飛んだ。
・・・が。

「・・・っ!?」

リディアが後ずさる。

「・・・おえ・・・」

おっさんの頭が、金色の光を放ちながら再生してゆく。
めちゃめちゃ気持ちの悪い光景だ。

「くくく・・・次は、貴様が吹き飛べ!」

今度はおっさんのかざした掌の前に黒い塊が出現し、リディアに向かって放たれる。

あー。中級程度であれ喰らったら滅びるわね。
あたしは嘆息し――

ぱんっ!

「何ィ!?」

凍りついたように硬直していたリディアに向かっていた虚無のかたまりが、軽い音と共にはじけて消えた。
もちろん、やったのはあたしだ。

「わかった?混乱している時ならまだしも、理性が身体を支配している時、金色の力を向けられたら、動きを止めるしかないもの。
第一金色の力は金色の力でしか潰せない・・・冥王〔ヘルマスター〕の時のように相殺する事があっても、攻撃して、相手の力を削ぐ事はできないわ。
あなたがそいつの内部にある金色の力を潰そうとするなら、ある程度の痛手は覚悟しなきゃならないわよ?」

くすりと笑い、あたしが言う。

「それからそこのおっさん。あんた弱いから、とっとと消えちゃってちょうだい」

「わしが弱い?ふん。ボスの勧誘を断ったお前に言われたくないな・・・お前こそ、自分が弱いとさらけ出すのが怖いのだろう!貴様はわしが殺してくれるわ!」

「・・・ああ、なるほど。何であんたが無鉄砲にもあたしのところに来たのかわかったわ」

おっさんの言いように、あたしは納得した。

「いいこと教えてあげる。あなたたちのボスはね、あたしを誘う時、なんて言ったと思う?」

「はん!何を言って・・・」

「ナンバー2になれって言ったのよ。わかる?魔王の力と、金色の力とを持ち合わせたヤツが、よ?」

「でたらめを!」

「――なら・・・その身で試してみなさい」

ぶわっと虚無の触手がいく筋も叫ぶおっさんのほうに伸びる。

「ひ・・・!?」

叫び声と共に、そいつは虚無に飲み込まれた。

「・・・・・・金色の力は、金色の力でしか潰せない・・・なるほどな」

「厳密に言えば、を悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕と同等の存在の力でも可能だけど、あたしそんなやつ知らないもの」

言いながら、周りの様子が元へと戻ってゆく。

「ああ、ご飯の途中だったわね。座ったら?」

何もなかったかのように、あたしがリディアに言う。

「・・・む・・・」

あたしの言葉に、リディアがおとなしく座る。

「もうひとつ聞きたい事ができた」

「・・・何かしら?」

ご飯をあらかた口の中に放り込み、レタスにフォークをさす。

「正直言って・・・お前はどれくらい強い?」

「あなたよりは。しっかしあなた、結構思い切ったことをするわね」

言って、レタスを飲み込む。

「何の事だ?」

「魔族は矛盾を嫌うから滅びを望む。だから、嘘をつくことは自分の存在そのものを否定する事と同じ。
で、『リディア』・・・偽名は嘘をつくことになるから、もうひとつ新しい名前をつけるってのはかなり思い切ってるわ。
一体いくつ名前があるのかしら?獣王〔グレーター・ビースト〕さん?」

そのことばに、無表情だったリディア――獣王〔グレーター・ビースト〕はふっと笑う。

「なるほど。さすがリナ=インバースの娘だ。私の事を見破るとはな。
私の名前はリディアとゼラス=メタリオムを含めて4つだけだ。そのときにあわせて色々変えている。
お前との会話、なかなか楽しかったよ」

「そうね。あなたもなかなか面白いわ。『魔族と人間』じゃあなかったら、友達になれたかもよ?」

「かもしれん」

言って、獣王〔グレーター・ビースト〕はその場を立ったのだった。




   ☆おまけ☆


「しくしくしくしく・・・」

かび臭い倉庫の中で、写本を探しながらゼロスは泣いていた。・・・いや、まねではあったが。

「獣王〔グレーター・ビースト〕様もひどいですよぅ・・・僕に仕事を押し付けて、ルキさんと会いに行くなんて・・・くすん」

情けないぞ、ゼロス。
お前ホントに竜を滅せしもの〔ドラゴン・スレイヤー〕か?
殺された竜たちも、この様子を見たら情けなくなってくるだろう。

「ルキさぁぁんっ!これ燃やしたらいきますからねっ!あのくそガキに獲られてたまりますかっ!」

獲ら・・・ルキは鹿やウサギじゃあないぞ、ゼロス。字が間違ってるぞ、ゼロス。
とにかく終わってしまえ。うん。






あとがき

L:・・・何この最後の行っ!

エ:思い切りギャグでしめさせていただきました。

L:ってーか最初のほうの文と終わりがぜんぜん違うし。

エ:最初のほうは秋田忠信先生(オーフェンやエンジェルハウリングを書いていらっしゃる先生です)のまね。見事に玉砕。

L:死んどけっ!お前わっ!

ぞぎゃぁっ!

L:愛用のスコップで串刺しにされた作者を眺めながら、ここにあとがきを終わります。


 ――幕――


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28270Unbalance〜不均衡〜 第四話 かいてーばんです。エーナ E-mail 2003/11/22 19:41:43
記事番号28263へのコメント


エーナです。
お昼ごろ載せた文があまりにもいい加減だったんで訂正。
まことに申し訳ありません。



Unbalance〜不均衡〜
             第四話


春の半ば、とある宿の一室にて。

「この世界に現存しているエネルギーは、あたしを含めて82%・・・含めないと57%か・・・」

少女とも取れる女性は、奇妙な文様が書かれた機器に表示された文字に目をやり、つぶやいて嘆息した。この機械には、金色の力が微量組み込まれている。
己の力のうちから沸き起こる感覚は正直だ。間違っているとは思えない。

「・・・できたら間違いであって欲しいんだけどね・・・それもいいほうに」

言って、その可能性がどれだけ低いか自覚する。

唐突に、開け放たれた窓から深い藍色の小鳥が飛び入る。
確か、このこの深い藍色の事を搗〔かち〕と言わなかったか・・・と、とめどもない思考をめぐらせながら、鳥をみる。

ただの鳥ではない。自分の部下だ。
見る人が見れば――たいていは魔族か神族だが――普通の鳥ではないとわかる。
その見る人を精神生命体――魔族や神族の総称――と限定して、その存在がこの小鳥のことを知っていれば、恐れおののくか、目の前でひざをつき、こうべをたれるだろう。自分を除いて。
自分は頭を下げられるほうだという事を不意に思い出し、混沌にいたころとの違いを漠然と感じる。
確かに自分は、この存在たちにとってもっとも高位にあるとされる存在だ。
だが、ミスを起こし、自分の力をばら撒いた。
その結果のひとつが嘆息の原因。
自分が存在するだけで、内からにじみ出てしまう力をそのままにして出現したあの時・・・冥王〔ヘルマスター〕の一件で、自分の力が流れ出し、さまざまな存在の内部に定着されてしまった。今はその力を抑えてはいるが。
中級の神族。ガイリア・シティの猫。セイルーンに出現したデーモン。
――そしてあの魔王(仮)。
あれらが持つ金色の力からもたらされる感覚の情報・・・すなわち視界に収まる場所にいる存在が、金色の力を持っているか否かという判断をする。
封印を自分に施している状態ならば、否とされて無視されたのだろう。
しかし、レファグロンとの戦闘で封印を解いてしまい、連中にそれがばれた。たぶんどこかで覗いてでもいたのだろう。
自分自身の力でないために、金色の力によりもたらされる感覚は、どれだけ正直でも自分と同じ力を持っているか否かという情報だけ。量の情報もいたって大雑把だ。
己を見て答えが『YES』だとしても、同類と思われるだけ。まさか悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕本人だとは思うまい。この非常事態ならば、神や魔王でも混乱するだろう。

小鳥が、自分の座っている簡素な椅子と対になる、備え付けの小さなテーブルの上で飛び回る。
とりあえず、テーブルの上にある花瓶とは不釣合いに大仰な枝振りの、花がついた物に足を下ろし、くちばしを開いた。
そのくちばしから発せられたのは、小鳥のハミングではなく――

『L様、リナ=インバースとガウリイ=ガブリエフの要素を前提とした、肉体の残り時間の算出ができました』

「・・・そう」

中にある液体の過度の圧迫による器の破壊。
今起ころうとしているのは、それなのだ。
封印をしたままなら問題はなかったのだが、この非常事態で解かざるをえなくなった。
その結果、金色の力による肉体の破壊が起こってしまう。
長い間力を内部に溜め込むとパンクしてしまう。
かといって力をばら撒けば同じことの繰り返し。金色の力があふれてしまう。
なんとも頭の痛いことだ。

『残り時間は、あと――です』

「・・・ずいぶんと短いわね」

小鳥から発せられた情報を聞いて、顔をしかめる。

こんこん。

ドアが指の付け根の間接で叩かれる音――普通はノックの音というだろう――が聞こえ、ルキはそちらに目をやった。
藍色の小鳥・・・アシュタロスは飛び立ち、窓の向こうへと去った。
ルキは立ち上がり、ドアを開ける。

「レオン?どうしたのよ」

ルキの問いに、レオンはぎこちなく、

「えーと・・・この女の人が『ゼロスの代理』だって言うもんだから・・・」

「代理ぃ?本人・・・いや、魔族だから本魔族か・・・って、くだらない事言ってる場合じゃなくって・・・ゼロスは?」

「仕事だ」

答えを言ったのは、レオンではなく、その後ろにいる女性だった。

鋭いイメージに、まとめられた金髪に、旅装。スレンダーな身体だが、締まっており以外に筋肉質そうだ。
年のころは、20と少しに見・・・
そこまで彼女を見ていたルキがはっとする。
もろ獣王〔グレーター・ビースト〕だ、と。

「リディアだ。始めまして」

名乗った名前はまったく違うもの。姿が同じなだけかもしれない。

「・・・こんにちは。リディア・・・でいいわよね?」

「そう呼んで貰ってかまわない」

「ゼロスの仕事って・・・いつもの?」

「そうだ」

という事は、写本の消去か。

「ここで立ち話もなんだし、食堂で話しましょ。・・・ああ、レオンはちょっと席をはずしててね」

「いいだろう」







「聞きたい事がある」

口を開いたのは、リディアのほうだった。

「何かしら?」

ウィンナーをかじりつつ、あたしがたずねる。

「金色の力を持ったために起こる『存在のオリジナル化』とは本当のことか?」

「ええ。本当よ」

率直に、淡々と。あたしはそう言った。

「・・・私にはいまいち信じられない。あの方の力が、世界中にばら撒かれているなど」

まあ、これが普通の反応だろう。

「まあねー。あたしもその現象を目にして始めて気がついたくらいだし」

言ってジュースを一口。

「・・・おまえ自身もそのひとつだと聞いたが」

「ゼロス、そんなふうに報告してるわけね・・・別にいいけど」

「証拠はあるか?あるのならばみせて欲しい」

「証拠、ね。そうね・・・」

ふむふむと考え込む。

あたしを悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕と疑わせず、あまり目立たず、なおかつ金色の力を感じさせる方法・・・少し難しい。

「・・・なら、こういうのはどうかしら?」

いって、あたしの瞳が鮮やかな金色に染まる。
リディアにはその色の中にある、確かな力の揺らめきが見えているだろう。

「・・・っ・・・」

リディアはびくりと反応し、凍りつく。

「他には何か?」

すっ、と瞳の色を元に戻し、あたしが問う。

「あ・・・ああ、今のでお前が金色の力を有しているのはわかった。
しかし、他の存在たちが集まって、ある組織を作ったと聞くが?」

「ああ、あれね。『歪んだ魔王』をトップとした、あのかなり大雑把な組織」

「・・・『歪んだ魔王』?赤眼の魔王〔ルビー・アイ〕様のことか?」

「まあ、そう言えない事もないけどね・・・
魔族の滅びの衝動と、人間の思考・・・その二つを掛け合わせた、傲慢で、強欲で、卑怯で、上昇思考の強い魔王。
・・・あれはすでに魔族の一員とは呼べないわね。魔族としての滅びの衝動と、力のみが残り、後は寄り代とされた強欲な人間の思考が支配しているわ。
伝承などで人間たちが捏造した魔王に近いものがあるわね。
他の全てを滅ぼしたいくせに、自分だけが生き残ろうとする。ホント、嫌なやつよ」

そして自分も同じことを考えていた。
リナ=インバースたちと関わってその気持ちはかなり薄れたが、あることには変わりはない。
自分も嫌なやつなのだろう。

「なるほど。そのトップに立っている存在は、魔王様と考えなくていいのだな。
・・・ところで、魔族や神族が金色の力を持った存在を滅ぼす事が無理だと言っていたそうだが、それは・・・」

「――いたな!ルキ=ファー=ガブリエフ!」

ばんっ!とドアを威勢良く開け放ち、響いたのはおっさんの声。

「・・・あら、お客さんね。あたしに。それも『ご同類』の」

おっさんからあたしは金色の力を感じた。・・・が、あんまり強そうではない。今の状態のあたしを100としたら、6か7といったところだろう。この前のデーモンでも二桁はあった。よほど弱いということだ。

「・・・あのどこにでもいそうな魔導士がか?」

そう。見た目は、だ。

「試してみたら?ちょうどいい相手もいるし」

「・・・ふむ」

眉を跳ね上げ、リディアがつぶやく。
数秒黙考したのち、ぱちんと指を鳴らした。

人の影が次々に消え――いるのはあたしとリディア、そしておっさんだけになった。

かたん。

リディアが椅子から立ち、おっさんのほうに向き直る。

「なんだ?貴様は。これをやったのは貴様か?
・・・まあいい。そこをどけ」

リディアは無造作におっさんのそばへと歩み寄り、目の前で止まった。

「・・・・・・・・・・・・」

一瞬、リディアの体が沈む。

どぅっ!

リディアのコブシがおっさんの胸に突き刺さっていた。

「うわ、いたそー・・・胸部にクリティカルヒット・・・」

人事のように言いながら、あたしはぶっ倒れたおっさんに目をやる。

「わざわざ力を使うまでもない。肋骨と内臓、脊椎を破壊した」

「じゃあ、即死ね」

そっけなく言ってやる。

「その通りだ。しかし・・・人間の死に顔色ひとつ変えないとは、変わっているな」

「母さんなら怒るところだろうけど、あたしは違うもの。人間の生き死になんてどうとでもなるわ。
たとえばそうね・・・こういう風に」

すっとあたしが指をさし――その向こうにはおっさんが。

「・・・・・・ぐほっ・・・・・・やるではないか・・・」

むくりと起き上がるおっさん。

「並の人間なら、あのまま死んでいただろうな・・・
しかし、私は違う!力に選ばれた存在!神すらもしのぐ、この不死の力を得たからには、もはや負けはしない!」

「な・・・!?馬鹿な!今確かに殺したはず・・・」

彼女の顔が驚愕へと歪む。

「もう一度やってみたら?今度は、物理攻撃じゃなく、魔力攻撃で」

「・・・言われなくとも」

掌に光が集まる。

「無駄無駄ァっ!」

ひゅばぢっ!

リディアは魔力を集めた掌で頭部をはじく。
叫んだおっさんの頭が小さな爆発と共に吹き飛んだ。
・・・が。

「・・・っ!?」

リディアが後ずさる。

「・・・おえ・・・」

おっさんの頭が、金色の光を放ちながら再生してゆく。
めちゃめちゃ気持ちの悪い光景だ。

「くくく・・・次は、貴様が吹き飛べ!」

今度はおっさんのかざした掌の前に黒い塊が出現し、リディアに向かって放たれる。

あー。中級程度であれ喰らったら滅びるわね。
あたしは嘆息し――

ぱんっ!

「何ィ!?」

凍りついたように硬直していたリディアに向かっていた虚無のかたまりが、軽い音と共にはじけて消えた。
もちろん、やったのはあたしだ。

「わかった?混乱している時ならまだしも、理性が身体を支配している時、金色の力を向けられたら、動きを止めるしかないもの。
第一金色の力は金色の力でしか潰せない・・・冥王〔ヘルマスター〕の時のように相殺する事があっても、攻撃して、相手の力を削ぐ事はできないわ。
あなたがそいつの内部にある金色の力を潰そうとするなら、ある程度の痛手は覚悟しなきゃならないわよ?」

くすりと笑い、あたしが言う。

「それからそこのおっさん。あんた弱いから、とっとと消えちゃってちょうだい」

「わしが弱い?ふん。ボスの勧誘を断ったお前に言われたくないな・・・お前こそ、自分が弱いとさらけ出すのが怖いのだろう!貴様はわしが殺してくれるわ!」

なんとも言ってくれる。
弱い犬ほどほえたがるというが、こいつはその典型だ。

「・・・ああ、なるほど。何であんたが無鉄砲にもあたしのところに来たのかわかったわ」

おっさんの言いように、あたしは納得した。
やはりこいつらの組織は大雑把だ。下っ端の教育すらできていない。
何しろ、あたしの情報が届いていないのだから。
そしてこいつも頭が悪い。
わざわざ魔王(仮)が、なぜあたしを誘いに来た理由など微塵も気付いていないのだ。

「いいこと教えてあげる。あなたたちのボスはね、あたしを誘う時、なんて言ったと思う?」

「はん!何を言って・・・」

「ナンバー2になれって言ったのよ。わかる?魔王の力と、金色の力とを持ち合わせたヤツが、よ?」

「でたらめを!」

うあ。ちょっとむかつく。

「――なら・・・その身で試してみなさい」

ぶわっと虚無の触手がいく筋も叫ぶおっさんのほうに伸びる。

「ひ・・・!?」

叫び声と共に、そいつは虚無に飲み込まれた。

「・・・・・・金色の力は、金色の力でしか潰せない・・・なるほどな」

「厳密に言えば、を悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕と同等の存在の力でも可能だけど、あたしそんなやつ知らないもの」

言いながら、周りの様子が元へと戻ってゆく。
リディアが結界を解いたようだ。
朝食を食べに来た客たちのざわめきが戻った。

「ああ、ご飯の途中だったわね。座ったら?」

何もなかったかのように、あたしがリディアに言う。

「・・・む・・・」

あたしの言葉に、リディアがおとなしく座る。

「――もうひとつ聞きたい事ができた」

「・・・何かしら?」

ご飯をあらかた口の中に放り込み、レタスにフォークをさす。

「正直言って・・・お前はどれくらい強い?」

「あなたよりはね。
・・・しっかしあなた、結構思い切ったことをするわね」

軽く言って、レタスを飲み込む。

「何の事だ?」

あたしへの問の答よりも、その後に言った言葉が気になるらしく、リディアが問う。

「魔族は矛盾を嫌うから滅びを望む。だから、嘘をつくことは自分の存在そのものを否定する事と同じ。
で、『リディア』・・・偽名は嘘をつくことになるから、もうひとつ新しい名前をつけるってのはかなり思い切ってるわ。
一体いくつ名前があるのかしら?獣王〔グレーター・ビースト〕さん?」

ピコピコとフォークを動かして言ったそのことばに、無表情だったリディア――獣王〔グレーター・ビースト〕はふっと笑う。

「なるほど。さすがリナ=インバースの娘だ。私の事を見破るとはな。
私の名前はリディアとゼラス=メタリオムを含めて4つだけだ。そのときにあわせて色々変えている。
お前との会話、なかなか楽しかったよ」

「そうね。あなたもなかなか面白いわ。『魔族と人間』じゃあなかったら、友達になれたかもよ?」

あたしは唇の端を吊り上げ、いたずらっぽく笑う。

「かもしれん」

同じような笑みを返し、、獣王〔グレーター・ビースト〕はその場を立ったのだった。




   ☆おまけ☆


「しくしくしくしく・・・」

かび臭い倉庫の中で、写本を探しながらゼロスは泣いていた。・・・いや、まねではあったが。

「獣王〔グレーター・ビースト〕様もひどいですよぅ・・・僕に仕事を押し付けて、ルキさんと会いに行くなんて・・・くすん」

情けないぞ、ゼロス。
お前ホントに竜を滅せしもの〔ドラゴン・スレイヤー〕か?
殺された竜たちも、この様子を見たら情けなくなってくるだろう。

「ルキさぁぁんっ!これ燃やしたらいきますからねっ!あのくそガキに獲られてたまりますかっ!」

獲ら・・・ルキは鹿やウサギじゃあないぞ、ゼロス。字が間違ってるぞ、ゼロス。
とにかく終わってしまえ。うん。






あとがき

L:・・・何この最後の行っ!

エ:思い切りギャグでしめさせていただきました。

L:ってーか最初のほうの文と終わりがぜんぜん違うし。

エ:最初のほうは秋田忠信先生(オーフェンやエンジェルハウリングを書いていらっしゃる先生です)のまね。見事に玉砕。

L:死んどけっ!お前わっ!

ぞぎゃぁっ!

L:愛用のスコップで串刺しにされた作者を眺めながら、ここにあとがきを終わります。
  終わっとけ。とりあえず。

 ――幕――



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28357Re:Unbalance〜不均衡〜 第四話 かいてーばんです。エーナ E-mail 2003/11/27 22:48:53
記事番号28270へのコメント


>「わかった?混乱している時ならまだしも、理性が身体を支配している時、金色の力を向けられたら、動きを止めるしかないもの。

・・・すいません。この文ちょっと説明足りないですよね。
これに当てはまるのは精神生命体だけです。

まことにすいませんでした。
この文に首をかしげた方がいらっしゃると思いますが、見逃してください。

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28308Unbalance〜不均衡〜 第五話エーナ E-mail 2003/11/25 15:10:31
記事番号28145へのコメント



Unbalance〜不均衡〜
             第五話



からっとした、洗濯物がよく乾きそうな、初夏の日差しの中。
あたしたちは次の街へ向かうべく、街道を移動していた。

「・・・そういえば・・・・・・」

「何?ゼロス」

「いちっっばん大切な事聞き忘れてました」

ぴっと指を立てて言うゼロス。

「・・・あ。そういえばそんな気もするわね・・・一番大切なことを聞かれなかったよーな」

「なんだっけ」

レオンも何か引っかかるものがあるようだ。

「魔王(仮)さんがやろうとしてる事ってなんなんですか?」

「ああ!思い出した。それよ、それ。聞かれなかったからそのまま話が進んじゃったのよね」

ぽんと古風な表現方法をやりながら思い出し、あたしはそう言った。

「あいつはね、悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の座を狙ってるらしいのよね〜。
いやだわ。下克上なんて。ルキちゃん笑い飛ばしちゃう」

「・・・いや・・・笑い飛ばすって・・・」

にっこりというあたしに、レオンとゼロスがあとずさる。

「笑いながらどつくに決まってるじゃない(怒)」

そう、あたしはものすごく怒っているのだ。

「・・・というか、悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕の地位というのはけして下克上で奪い取れるような代物じゃないですよね?」

「当たり前じゃない。そもそも力量比べるほうが間違ってるのに、あいつは何考えてるのかしら」

『・・・全てを手中に収める事だ。ルキ=ファー=ガブリエフよ・・・』

「・・・・・・噂をすれば、なんとやら・・・ね」

テレパシーで聞こえる声に、あたしは嘆息し、どうやったら追っ払えるかに思考をめぐらせる。
なぜか?
こいつを今の状態のあたしで倒す事はできない。
今の状態で倒そうとすると、どこかに無理が生じてしまうのだ。

・・・ゅぉ・・・ぉお・・・・・・

聞こえてくる音にあたしは舌打ちをする。

「な・・・なんだ!?」

レオンが剣を抜き、あたりを警戒する。

「これは・・・異空間!?引き離されます!三人かたまらないと・・・」

「お前と密着するなんて死んでも嫌だ」

「そんな事を言っている場合では――」

「ゼロス!?」

景色がぐにゃりと歪み、ゼロスの姿と共に消える。

「・・・消えた!?」

「レオン!」

そして、レオンの姿もまた。

・・・引き離された。

周囲に広がるのは、岩も何もない荒野と、雲の欠片すらない青い空。
異空間・・・・・・それは皮肉にも、母さんがルーク=シャブラニグドゥを滅ぼした時と、そっくりな場所であった。

魔王(仮)が何の前触れもなく、姿を現す。

「・・・そろそろ、答えを聞かせてもらおうか」

赤き闇の力をえた存在は、あたしに対して口を開いた。

「あら、なんの?」

「・・・今までその調子で答えをはぐらかされてきたが、今回ばかりはそうはいかない」

とぼけるあたしに、魔王(仮)は表情を変えず言い放つ。

「あ、そ」

すっとあたしの目が細まり・・・金色にきらめく。

「・・・あくまでも、非協力的な態度をとるか・・・あの二人・・・いや、一人は魔族だったか・・・あの二つの存在は、我が手の内にある」

「・・・人質ってわけ?」

「悪く言えばそうなる。
金色の力を持つ存在に、殺された生物や、滅ぼされた精神生命体は、力に取り込まれて二度と再生はかなわん。
――我がもとへ来い」

すっとそいつはあたしに手を差し伸べる。

「・・・質問があるわ。何故あんたは執拗なまでにあたしを誘う?」

「お前が金色の力を、もっともたやすくコントロールしているからだ。
それと同じように、混沌の海に横たわっているエネルギーも操れるのではないかと思ってな・・・」

微動だにせず、そいつはそう答えた。

「・・・もうひとつ聞きたい事ができたわ・・・
・・・あんたは、悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕のことをどこまで知っているの?」

「金色の王、闇よりもなお昏きもの、夜よりもなお深きもの、全ての闇の母、混沌の海・・・
シャブラニグドゥから受け継がれた知識の中に、その言葉の断片があった」

「・・・・・・なるほど、ね」

かすかな知識。それだけで全てを知ったような気になっているのだ、こいつは。
神でさえ、分身である四体の竜王は、全ては知りえていないのだ。
あたしを間違うことなく知っているのは、『完全な』神と魔王のみ。
・・・あ、でも母さんはカンがいいから分かっちゃったけど。

しかし、だ。今そのことは問題ではない。
今の問題はあたしの事を知っているかではなく、こいつがどう行動を起こし、この世界がどうなってしまうかという事。
それから、ゼロスとレオンのことも気になる。

だけど・・・あたしは悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕。
いつ、どこで何をしようが、あたしは『支配者』であり、『管理者』。
大の犠牲と小の犠牲、天秤にかけて、重いほうをとらなければならない。
そう、在らなければならない。
この誘いは断らなければならない。

ゼロスと・・・レオンを犠牲にしてでも。

――いやだ。

あたしの心のどこかで、悲鳴を上げる。

――いやだ。

・・・失いてくなんて・・・ない。
分かってる。
分かってる、けど・・・。

「・・・いや・・・・・・」

唇が震え、小さな声が漏れる。
それは目の前の男には聞こえていないようだ。

思考をめぐらせる。
この際開き直ってしまおう。
あたしは欲張りだ。傲慢だ。あたしは後悔しない・・・したくない。

・・・打つ手が・・・あった。
しかし、それには犠牲が必要。
でも、迷わない。
あたしは・・・力を解放した!

「あたしをなめないでよねっ!」

あたしの中で、金色の力が炎のように燃え盛る。






あとがき

エ:物語りもいよいよクライマックス!(と、言うようないいいものではないけど)

L:ほう。ならば終わったあとに、心置きなくぶちのめせるのね☆

エいやあの・・・!番外編もありますし!

L:ふっ・・・文化の進歩に遠慮は無用っ!

エ・・・うああああああああ・・・とりあえず、これであとがきを終わります・・・しくしくしくしく・・・・・・



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28309Unbalance〜不均衡〜 第六話エーナ E-mail 2003/11/25 16:28:32
記事番号28145へのコメント



Unbalance〜不均衡〜
             第六話





「あたしをなめないでよねっ!」

一瞬にて、あたしの仲にある力を活性化させ、感覚を極限まで広げる。

「ふん・・・金色の力が強くとも、エネルギーの総量では私の勝ちだ。まともにやり合えば、お前の負けは目に見えている」

「だぁれが正面切って闘うって言ったかしらっ!?」

――見つけた!

広げた感覚の中に、引っ掛かりを感じ、あたしはすぐさま空間移動した。


「・・・レオン!」

ふわりとあたしは地面に着地する。
周囲にはさまざまな生き物たちがいる。
人間はもちろん、エルフ、ドラゴン、ドワーフ・・・おいおい、植物がのたくってるのまで・・・・・
レオンは剣をふりまわしながら、傷つき、疲労も目に見えるほど。

「あたしの仲間に手を出して、ただですむと思ったら大間違いよ」

「ルキ・・・!?よせ!多勢に無勢だ!どうやってここに来たかは知らないが、逃げろ!」

「い・や☆
さぁて・・・あばれるわよっ!」

あたしはぺろりと唇をなめ、好戦的な目つきで周囲を見回す。

「消え去れっ!」

虚無の触手が手中からあふれ出し、四方八方へと伸びて行く。

周囲にいるそいつらは、次々に飲み込まれてゆく。
多少抵抗するものもいるが、この程度で逃れられるわけがない。

あたしは虚無を消し、レオンのほうを見る。

「大丈夫?」

「・・・何とか。体力は・・・ちょっとやばいけど・・・」

力なくレオンが笑い、ばったりと倒れこむ。
意識を失ってしまったようだ。
しかし、命に別状はない。

「眠らせる手間が省けたわね・・・」

つぶやいて、あたしはレオンをこの空間の外へと転送する。

「次は、ゼロス・・・!」

あたしは、もうひとつのエネルギーのわだかまる場所へと向かう。


はじける金色。

あたしは舌打ちをした。

ぱんっ!

金色の力の集中放射。
狙いはもちろんゼロスだが、届く直前にあたしが防いだ。

「大丈夫・・・そうじゃないわね」

シールドを張りつつ、あたしはゼロスに声をかけた。

「そう・・・なんですよね・・・っ、これ、が」

苦しそうに言うゼロス。
左肩から胸にかけて、大きな裂け目。
他にもさまざまな傷が見られる。

「・・・逃げてください」

「いやよ」

レオンと同じことを言うゼロスに、あたしは少しカチンと来た。

「僕が、足止めしますから」

「いやだって言ってるでしょ!レオンもあんたも・・・あたしに『逃げろ』ですって!?冗談じゃないわ!」

「このまま放っておけば、僕は確実に『死』にます・・・ですから、あなただけでも・・・」

「・・・放っておかなきゃいいんでしょう?」

あたしはゼロスの傷口に右手を当てる。

「ルキ、さん・・・?一体、何を・・・」

「勝手に死ぬだのなんだの言ってくれちゃって・・・怒る、わよ?」

あたしの右手に光がともる。その光は、ゼロスの傷を埋めてゆく。

「・・・ルキさん?様子が変・・・あなた、体が・・・!」

右手が・・・光が透けて見える。
過度の急激なエネルギー負荷による、肉体の分解。
『器』が、壊れ始めたのだ。

「――あたしは」

「・・・え・・・?」

「わがままで、傍若無人で、何でもあたしの思い通りにならないと、気がすまないの。
誰に迷惑がかかろうが、誰が怒ろうが、泣こうが、あたしはあたしの道をいかなきゃならない。
あたしは進むわ・・・『ルキ=ファー=ガブリエフ』を犠牲にしても」

・・・そう。あたしの打つ手とは、『ルキ=ファー=ガブリエフ』を殺して、悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕を呼び出す事。
この異空間ごと、力で飲み込んでしまえば、『気』ももれない。
そして、愚かな魔王となった人間の魂と、シャブラニグドゥを分離する。
人間のほうは、レファグロンと同じところに閉じ込めてやる。

「・・・ゼロス。あたしは今からあんたをこの空間の外へと放り出す。レオンを、近くの町までつれて行ってあげて。
それから伝えて。父さんと、母さんと、レオン・・・セラーネにアメリアおばさん、ゼルおじさん・・・
みんなに、『さよなら』って」

「・・・っ!?
い・・・嫌です!そんなのは認めません!」

ゼロスは頭をぶんぶんと左右に振り、アメジストのような瞳をまっすぐにこちらへ向ける。

「・・・ごめん」

「いや、です・・・っ。
あなたをもっと知りたい・・・あなたの考えている事、感じていること・・・もっともっと・・・知りたいんです・・・
あなたと・・・ずっと居たい・・・
そ・・・そうです、僕と契約すれば・・・!」

「お断りよ。それに、あたしの抱えている力はあんたじゃ受け止めきれない・・・無理な話ね」

「あ・・・」

あたしは静かに首をふり、ゼロスが泣き出しそうな顔をする。

「バイバイ、ゼロス。あんた、魔族のくせにやたらと人間くさかったけど・・・
結構、好きだったよ?」

あたしは笑った。
そして、ゼロスを外へと送る。

乾いた大地に、ひとしずく。
かすかにぬれて、すぐに乾いた。

「・・・滅びを・・・!」

ごぅっ!

竜巻のように、あたしを中心にして虚無が広がる。
そして当然、あたりの存在をすべてのも込んでしまった。

虚無の力がおさまり。

「・・・貴様・・・そうまでして私を邪魔するか!」

「ええ、そうね。そうじゃなきゃ、あたしの沽券に関わるもの」

現れた愚かな魔王に、あたしはそう言い放つ。

「貴様・・・きさま、キサマきさまァぁあっ!」

金色と交じり合った紅い力が押し寄せてくる。

「――闇よりもなお昏きもの・・・夜よりもなお深きもの・・・」

悪夢を統べる存在〔ロード・オブ・ナイトメア〕を呼び出す呪文。

「混沌の海よ、たゆたいしもの・・・金色なりし闇の王」

切り離されたあたし自身と、混沌の海をつなぐ。

「我、ここに誓う。我、ここに願う」

あたしがあたしで満たされてゆく。
あたしのからだが、片方は壊れ、もう片方は力に満ち満ちてゆく。

「我が前に立ちふさがりし、全ての愚かなる者に」

愚かなる魔王よ、滅ぶがいい。

「等しく、滅びを与えん事を!」

この空間ごと、『あたし』に飲み込まれるがいい!





そしてあたしは。




ほんの少しだけ、泣いた。






あとがき


エ:第六話、アップですよ奥さん!
  あら、エーナってエセ物書き、テスト期間中なんでしょう?
  それがね、明日ちゃちいテストしかないからって勉強サボってるんですって!

L:あほかぁぁぁぁぁっっ!!

ごしゅがぅん。

エ:ぐ・・・ぐふぅっ・・・・・・
  燃え尽きたぜ・・・真っ白によぉ・・・・・・

L:・・・こひつ・・・あほだ、絶対。
  しっかしレオン、ちょっとかわいそうじゃない?

エ:所詮当て馬。引き立て役。

ごめぇっ!

L:と、ゆーわけであとがきを終わります。(ぺこり)



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28188詩?死の間違いじゃ・・・エーナ E-mail 2003/11/18 18:55:21
記事番号28103へのコメント









浮いては、はじける気泡。





全てが、あたしで満たされていたあの時。





はじける気泡を覗き込んで。





孤独という言葉を知ってしまった。






無知でありたかった。

寂しくなんてなりたくなかった。

どうにも満たされない心の穴を、さまざまな存在を生み出す事で消そうとした。

それは気泡の中に降り立ち、進化というタペストリーを織っていった。

気泡の中に降り立たず、あたしに頭をたれた存在も在った。

あたしのそばにいて、あたしに忠誠を誓い、笑いかけ、話しかけ、時には気に入らない事もした。

それでも。あたしの心の穴は満たされなかった。






無知でありたかった。






孤独なんて知りたくなかった。







戻りたい。






戻りたい!






・・・でも、この存在たちを消したくはない。







矛盾した心。



相反した思い。



あたしは迷う。









『闇よりもなお昏きもの・・・』




・・・誰?




『夜よりもなお深きもの・・・』




あなたは、誰?




『混沌の海よ、たゆたいしもの』




あたしを呼んでいるの?




『金色なりし闇の王』




何がしたいの?




『我、ここに汝に誓う』




何を望むの?




『我、ここに汝に願う』




わかる。強い想いが。




『我らが前に立ちふさがりし、全てのおろかなるものに・・・』




・・・引き寄せられる。




『等しく滅びを与えん事を!』




その想い・・・受け取った!














「滅びを望むなら、従うがいい!」










あたしの声が。










朗々と響いた。











あとがき


L:連載はどうしたっ!!

がっす。

エ:がふっ・・・ネタがつまって・・・すいましぇん・・・

L:とっととやれぇっ!

エ:精進しますです・・・




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28197Re:詩?死の間違いじゃ・・・はるか 2003/11/18 20:21:58
記事番号28188へのコメント

わぁおぉぉぉ!!!!
わぁいぃぃぃ!!!!
L様だぁぁぁ!!!!
孤独だぁぁぁ!!!!

〜〜〜〜ピンポンパンポ〜ン♪
突如わけのわからん叫び声でスタートしました、
レスの時間でございまぁ〜す♪
       ピンポンパンポ〜ン♪〜〜〜〜

こんばんは。まったくもって意味不明のはるかです。

いいですねぇ。なんか偉大で。

『ありし日の姿に帰るを望む存在』
これだけがとけなかったんですよぉ。
L様書こうとしても、これがひっかかってひっかかって。
なんか魔族な感じがつよいじゃぁありませんかぁ。
神族人間竜族エルフにドワーフ、生きとし生けるものの王って感じがしなくて・・・・・・・・。
あとがきでも、『滅びのみちをおしすすめるのよっ!!』
とかって言ってるじゃぁないですか。

なんかすっきりっ!!って感じです。
そっかぁ。孤独がいやだって考えればいいのかぁ。

>「滅びを望むなら、従うがいい!」
>
>
>
>あたしの声が。
>
>
>
>
>朗々と響いた。
いいですねぇ。なんかもぉ、これこそL様ってかんじで!!
うーん。ますますファンになっちゃうかも♪

それではぁ♪なんかしみじみ言葉でいいあらわせないことに感動しましたはるかでしたぁ♪なんか意味不明だけど(汗)



   〜〜〜〜ピンポンパンポ〜ン♪
     これにて、約200ページわたるレス(大嘘つき)を
      おわらせていただきます♪
           ピンポンパンポ〜ン♪〜〜〜〜



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28195誰かこんなこと思いませんでした?エーナ E-mail 2003/11/18 19:52:43
記事番号28103へのコメント




「村の予言にはこうある――
力ある者の心闇に堕つる時、其は魔王と化し世界を滅びの淵へと導かん。
されど人よ絶望するなかれ。光掲げる剣士と魔導士現れ出て、深き闇を打ち払うであろう――」

神妙な口調で、彼女はそう語った。

「・・・とか何とかいっときながら、やたらスケールは小さいわ剣士はランプ職人の子供で弱いし隅っこでぷるぷるするわ!
魔王は魔王でキャベツ食べるだけでよわっちいし女幹部がナーガで結局金貨100枚はもらえなかったしっ!
ンでもってあたしが魔王にされてくそ寒い芝居なんかをやらされたし!
しかもさっきの予言とやらが村長の祖父さんの手書きよ!?て・が・き!」

リナは大声で自分の夫と娘に話す。

今日は雨。家の外へは遊びにいけないし、洗濯物も干せない。
暇だということで、5歳になる娘ルキと、夫であるガウリイとおしゃべりしていたのだ。

「ほー。そうだったのかぁ。たいへんだなぁ」

ガウリイが相槌を打つ。

「でも、お芋はおいしかったんでしょ?」

「うん。」

ルキの言葉に即座にこっくりとうなずくリナ。

「しかもさ、予言当たってるし」

「え?何で?」

「『力ある者』および『其』=赤法師レゾ。『深き闇』=シャブラニグドゥ。
『光掲げる剣士』=父さん。『魔導士』=母さん」

ぴっと指を立て、ルキが言った。

「・・・って・・・・・・あああああああああっ!?」

「・・・もしかして・・・・・・今頃気付いたの?」

叫ぶ母に、少々驚愕したらしいルキがたずねる。



ガブリエフ一家では、珍しく穏やかに時が過ぎていった。






あとがき

エ:誰かこんなこと思いませんでした?な感じの番外編。
  スペシャルの魔王降臨を見ていないとわからないネタかも。
  まあ、とにかくちょっとやってみたいネタだったので書いてみたり。
  え?連載のネタがつまってるからこんなものを書いたんだろうって?
  その通りです!(どきっぱり)
  それではまた会えるとよかったり!


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28198Re:思いましたっ!!(きっぱり)はるか 2003/11/18 20:31:20
記事番号28195へのコメント

思いましたっ!!メチャクチャ思いましたっ!!
当たってるじゃん予言っ!じいちゃんあたっちまったよぉ〜!!
ちょっとそこの奥サマ!!きいたっ!?予言あたったんですってっ!?
まさかじいちゃん・・超能力者・・・?(汗)
って感じで。(どんな感じだ?)

やっぱり思いますよねぇ。そのまんまですもん。
けどあれ?ゼルガディスは・・・・?
あ、もしかしたら、ルークのことかもしれませんねっ!!


それではっ!!(しゅたっ!!)←右手を真上に勢いよく上げる音
同感です!思いましたっ!!ということでぇっ!!
またぁ〜!!