◆−GAME−潮北 かずら (2003/3/14 23:32:20) No.25179
 ┗Re:GAME−渚 (2003/3/15 09:05:46) No.25184
  ┗Re:GAME−潮北 かずら (2003/3/16 00:45:04) No.25209


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25179GAME潮北 かずら 2003/3/14 23:32:20


こん○○わー。
すーっっっっごーく久しぶりな投稿です。

なんとなく書いたものなので、なんとなく読んでくださると、嬉しいです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『GAME』

「どういうつもりよ!!」
 机の向かいから身を乗り出し、リナは評議長の胸座に掴みかかった。
「おっ、落ち着いてくだされ……」
 どうにか抵抗と説得を試みる初老の被害者。しかし、噴火寸前のごとく怒りを露わにしたリナは、その感情の矛先を評議長へ向けるのを止めようとはしない。
「これが落ち着いていられる訳ないでしょう! よりにもよって、何? あたしに泥棒になれですって? 冗談じゃないわよ!!」
「い、いぁや。こ、こ、これにはその、理由が」
「やかましい!!」
 哀れな評議長を尻目に、しかし、この状況に居合わせた四人の仲間は、誰も止めようとは動かなかった。と言うより、依頼の内容を一緒に聞いていた分、皆に生まれた不満がリナの静止を、思いとどまらせていた。右からアメリア、ゼルガディス、ガウリィ、そして一人分の間を開けてゼロスの順で一列に並んでいる。誰もが複雑な面持ちで二人を見ていた。
「お前が止めに入らんというのは、めずらしいな。アメリア」
 ゼルガディスはすぐ隣に小声で言った。
「当然です。盗みを依頼するなんて、どう考えたって正義じゃありません!」
 喉元で拳を固めながら、アメリアはきりっとした表情を、問い主に向ける。聖王都の姫であり、正義のヒーローを目指す少女には、今回の依頼はすこぶる評価の悪いものであるようだ。
その気迫が心像的に見えるのか、ゼルガディスは頬の筋肉を一瞬引きつかせた。
「まぁ、確かにそうだが……」
 曖昧な言い方だが、彼にしてみれば他に答えようがない。アメリアが言っていることは、基本的には間違いではないのだ。が、しかし、事リナが絡んだ場合、例外とするべき事情が多いという事実も存在したりする。その現実が、彼にその表情と返答をもたらしていた。
「でもよぅ。なんかまずくないか」
 珍しく会話に割り込んできたは、自称リナの保護者、実質サンドバックの超一流剣士ガウリィだ。目の前の状況を知らせるように指差しながら二人に言う。
「いいんです」
 しかし、アメリアは一言であっさり却下。ガウリィの言い分も、今のアメリアでは、弾かれて明後日の方向へと消えていく。
「だけどよぅ……」
「いいんです!」
 さらに強い口調で、アメリアはガウリィを制した。
「ですが――」
 すると、さらに横から割入ってくる声があった。今日はどういう訳か朝から一緒に居るゼロスである。一番端っこでのほほんとしながら、口を開く。
「そろそろ止めないと、あの評議長さん、窒息死しそうですよ」
「へ?」
 その指摘に間のぬけた声を出して、アメリアが現状を再度見やると、そこにはすっかり顔色が変化し、視点が定まっていない評議長の、無残な姿が飛び込んできた。
「わぁーっ!!リナさん、それ以上はーっ!!」
「だからまずいっていったんだ!」
「だったら先に止めろっ!!」 
 ガウリィとゼルガディスも、同様の光景に慌ててリナを羽交い絞めにし、引き剥がしに掛かる。無論リナとて無抵抗なわけではない。結局、事態が修繕するまでに、数刻の時が要されるのだった。





『会いたくない人物ランキング』を行えば、おそらくは上位に入るであろう有名な少女が、今の世には確実に一人存在していた。彼女の行くところ巻き起こっている怪事件、珍事件は無理やり解決し、ついでに近隣の盗賊団は壊滅の憂き目に遭うという。
 そして今日もまた、依頼内容と事情説明の順序を間違えた、哀れな犠牲者が生産された。長椅子に横になり風に当たっている、モルエーザ・シティの魔道士教会の評議長である。
「それで、皆さんに依頼した次第です」
 管楽器の低音のような声。評議長を横に、一人の青年が一通りの事情を代わりに説明してくれた。彼の名はマルセル=リーボ。評議長の秘書らしい。
 それにしても、マルセルの見た目と職業は、他人に違和感を覚えさせた。目鼻立ちを一つ一つ取れば、なかなかの好男児。背はガウリィほどではないが、まず長身の部類に入るだろう。歳はリナたちよりも若干年上かと思われる。ただ、秘書という職についている人間にしては、随分といい体格をしていた。それが実際よりも、彼を大きいと錯覚させる。ローブを着ているより、いっそ鎧に身を包んでいた方が似合いそうだ。
「そういうことで、お分かり頂けたでしょうか」
 彼の話しが終わると、全員の反応は次のようなものであった。
「なんだ。そういうことだったの」
「そうだったんですか」
「それならそうと、先に言ってくれればいいものを……」
「要領が悪いですねぇ」
「全くだな」
 彼女らには、反省どころか悪いと思っている様子は微塵も無い。
「つまり、泥棒っていうのは、あくまでもゲームなわけね」
 リナの見解に、秘書はハイと頷く。
「それにしても、幾らお祭りとはいえ、国を挙げての伝統行事が「泥棒」なんて、変わっていらっしゃいますね」
 誰もが思ったであろう変則をゼロスが言う。見た目を嘘つきと言いたくなるほど、この世界に存在しつづけている彼でも、この国の行事は初耳であったらしい。
「そうでしょうね」
 マルセルは苦笑する。
「それにしても、盗む先が王城なんて、どう考えても納得できません」
 こぶしを握りしめての発言はアメリア。理解し難い伝統行事への不満を隠し切れないでいる。
 だが、アメリアの意見はもっともであろう。
 そのあたりの事情をも、マルセルは丁寧に話してくれた。
 三六〇年の歴史をもつこの国は、その歴史の一端に、「悪政のために国民が貧困に苦しんだ時代」があった。贅を極める日常を継続する為に、国民は重税を科せられ、日の暮らしもままならぬ状況にあったそうだ。
 そして時を同じくして、この国で名を馳せた一人の義賊がいた。
 義賊とは、私利私欲に走った貴族や、悪徳商人等からだけ金を盗み、貧しい者たちにばら撒いて回る盗賊の事である。
 今にち、英雄と称され愛される彼は、事もあろうに、他国との交流を深める為に国王が主催した舞踏会の会場、つまりは王城に、大胆にも単独で忍び込み、国賓の目前で国王を丸裸にし、身に付けていた装飾品を全て奪うという偉業を成し遂げたのであった。変装と魔術を得意とする、彼ならではの仕事振りであったという。
 しかし、義賊といえども所詮は盗人。歴史に残る大業といえど、犯罪は犯罪である。結局彼はこの一件が仇となり、事件を起こした七日後、絞首刑となっている。
数日後に開かれる祭りのメインイベントは、その事件に準えたゲームらしい。
「だからって……なにも国の恥を、内外にこんな形でさらさなくともよかろうに……」
 ゼルも賛同は出来ない様を見せている。
「祭りでなくとも、すでにこの本で近隣の国々にも知れ渡っていることなんですよ」
 マンセルは手にする絵本を掲げてみせた。童話集と書かれてあるところを見ると、かなり幼年層から浸透している話のようだ。
「いいのか……それで……」
 さすがのリナも呆れる。きっと、当の義賊は、あの世で複雑な顔をしていることだろう。
「自国他国を問わず、国家安泰と国民の生活安定への祈り。それと、同じ轍を踏まぬようにという思いを込め、先々代の王が自ら提案し実現したそうです。国王が決めたことでは、我々にはどうしようもないですから」
 マルセルは、簡単ながらもちゃんと説明してくれる。
「いや、どうしようも無いってのは分るけど……。本当にいいのか、それ……」
 ……。
「まぁ、それに。兵士たちにとってもいい訓練となりますし、なにより、この祭りが生み出す経済効果は他に類を見ません」
「名より実を取る。そういうことですね」
 ゼロスの率直な言い様に、「そうともいいますね……」と、マンセルも苦笑いを浮かべた。図星を指されて笑うしかないと言うことだろうか。
「皆さんへの依頼は、この祭りの花形ともいうべき役回りです。どうでしょう、お引き受けいただけないでしょうか」
 こういうもぶっちゃけて言われると、さすがのリナも面白いと思うのか、迷っているようだ。
「祭り自体は楽しいものですよ」
 と、マンセルは言う。
「確かに面白いだろうが。しかし――」
 覆面の下から、ゼルガディスの呟きがもれた。
「なんでまたリナなんぞに……」
 ボソボソと、呼吸に紛れさせるような声であったのだが……。
「それは、どういう意味かな?」
 聞き流すに聞き流せなかったか、即座にリナがきつい眼差しを向ける。口元にうっすらと浮かぶ笑みが、彼女の心理をうまく表現していた。しかしこの場には、ゼルガディスの言葉に同調する人間が、もう一人。
「おまえなぁ、少しは自覚したほうがいいぞ。ただでさえ、盗賊いじめなんていう、変な習性が……」
 メシッ……!
 全部を言い終える前に、ガウリィの顔にリナの拳が突き刺さった。バランスを保とうと二、三たたらを踏み、ガウリィは鼻を抑えてしゃがみこんだ。普通の人ならば、そのまま後ろへひっくり返っていただろう。事実、これまで何人もの盗賊が、口上中に不意にこれを食らって、無様な姿を晒してきている。
「たく……」
 哀れ。苛立つリナの神経をさらに逆なでしたガウリィは、二人分の怒りを一身に受ける羽目となったのだった。口は災いの元である。
「しかし、ゼルがディスさんの言うことも、もっともな事だと思いますよ」
 今度はゼロスが言う。
「だから、どういう意味よ」
「僕なら、絶対にリナさんには頼みません」
 ゼロスは言い切った。それはリナ以外の全員が思うところだろう。が、言われたリナが激怒しないはずはない。
「なっ! なんですってーっ!!」
「リっ、リナさん……」
 あまりの様子にアメリアは後方に飛び下がり、右に少しずつ移動してゼルガディスの背中に逃げ隠れている。側に居たら、巻添いをくってトバッチリを受けるからだ。
「何で俺の後ろに……」
「だ、だってぇ……」
 マントにしがみついて目をウルウルさせる姿に、さすがのゼルガディスもそれ以上は何も言わない。気持ちはわかる。
「どうしたんだゼル。顔赤いぞ。風邪か?」
 鼻の辺りをおさえたままで、無神経に突っ込みを入れるガウリィに、
「……なんでもない」
と、そっぽを向いて答えるゼルガディスであった。
「あんたら……なに恥ずかしい遣り取りしてんのよ……」
 見ていたリナも一瞬怒りを忘れて、一人呟く。それを聞きつけゼロスも。
「まぁまぁリナさん、あの二人に……んぎぇっ!」
 しかし近づいてきたゼロスの首に、リナはすかさずヘッドロックをかますのだった。もっとも、そんな技は根本的にゼロスには効かない。彼は純魔族。物理的な攻撃は基本的に無効なのである。それでもわめいたりしているのは、彼の付き合いの良さの賜物であろう。ゼロスも、なかなかに芸は細かい。
「仰る事はわからないでもないんですが……。正直、力の無い方や所業に問題のある方では、この役は務まりません。余興とはいえ窃盗行為は勿論、それなりにやり合うわけですから」
 マルセルの表情に、苦悩の色がわずかに浮かぶ。――苦悩の本当の原因が何か(目の前の事)は問わないように――どうやら、協会側の微妙な立場が問題のようだ。勝敗に関係なく、協会の体面に多少は関わる、ということだろう。
「でも、リナさんに任せたら、勝っちゃうかも知れないですよ」
 ゼルの後ろから顔を出すアメリア。
「勝敗の結果云々は気にしなくてもいいんです。所詮お祭りですからね。悔しい思いは、来年に持ち越しです」
「ホントにいいの!?」
 今度はリナが問う。その手はゼロスのこめかみに、拳を当ててグリグリグリグリ……。
「……リナさん……」
 器用に泣き真似をするゼロス。当然リナは聞く耳持たない。
 マルセルは汗を浮かべて、大きく首を縦に振った。
「それに、ここ十年の成績を見ても、協会側の成績は二勝八敗と負け越しています。勝ちを意識するって言うのも、役回り上問題がありますが、今年負ければ五連敗です。ですから、そろそろここらで勝っておいてもいいと思うんですよ。その為にも、出来得る限り有能な方に依頼したいというのが、こちらの要望なのです」
 なるほど。兵士の訓練も兼ねている為、力量の足らない人物は使えない。事が事であるから、実力があっても、人間性に問題のある人物もまた、選ぶわけにもいかない。なるべくならば勝ちを得たいところだが、配役が盗賊では、視野を狭くするほどに強く堂々と勝利を望むにわけにもいかない。しかし、事は国家行事。負け続けるのは魔道士協会の面子に関わる。
 何にしても、人選は楽ではないようだ。
しかし、事情はわかるとしてもなぜにまた、よりにもよってこの悪名高い少女に依頼するのか……。
顔をあわせて、ため息をつくゼルとアメリアであった。
一応の事情を察すると同時に、リナは腕を組んで新たな問題を考え始めた。
「無論、仕事に見合うだけの報酬はあると思います」
「報酬ねぇ」
「ひ……ひナはーん……」
 リナは、ぱっとしない表情を作る。その手元には、両頬を引っ張られたゼロスが泣いていた。
 無論、リナは無視。
 彼女の頭の中は、『魔道士協会の依頼=たいしたお金にならない』という図式が、思考を占領していた。
 過去の依頼から察するに、やはり多くは望めないだろう。面白い仕事ではあると思うが、金にならなくては、魅力半減である。
 とはいえ、無下に断るわけにもいかなかった。世間の風評がすこぶる悪いリナにとっては、魔道士協会に恩を売ることができる機会は、できる限り、モノにしておいて損はないからだ。
「我々の方からは、金貨十枚。それとは別に、このイベントで勝利すれば、持ち出せた物の価値に応じて、国王様からも褒賞金が頂ける筈です」
 リナはおもわず手を止め、ゼロスを右にポイッと退ける。
「それ本当なの!?」
「はい」
 礼金+α。リナの瞳が輝いた。
 その真横で、嬉そうなリナに背を向け、ゼロスは涙ながらに、のの字を床に描いていた。
「ひどい……。リナさん、あんまりです……」
 元を正せば、彼の不用意な一言が原因なのだが、それも何処へやら。
「ゼロスさん……ははは……」
 難を逃れていたアメリアは、笑いたくても素直に笑えないという苦笑いを浮かべてゼロスの様子を見た。だが実際、両頬を晴らしたゼロスの顔は、気の毒を通り越して笑うしかない。
「何をバカなことを……」
 ゼルガディスも呟く。
 それぞれの態度を他所に、かくして依頼は成立するのだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あうぅ……続いてしまいました……。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
続きも読んでくだされば幸いです。

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25184Re:GAME2003/3/15 09:05:46
記事番号25179へのコメント

はじめまして渚と申しますー。
面白かったです!特にゼロスのいじめられっぷりが!(笑)
最後にはのの字を書くなんて・・・・・うーん、ますます獣神官には見えませんねー。
そーいえば、なぜゼロスはいるんでしょう?何か目的があるとか・・・・。
さてさて、リナのことだから騒いで報酬もおじゃん、
にならないことを願いながら続きを楽しみにしてますー。

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25209Re:GAME潮北 かずら 2003/3/16 00:45:04
記事番号25184へのコメント

渚さん、はじめまして!
読んでくださって、ホントありがとうです!

>面白かったです!特にゼロスのいじめられっぷりが!(笑)
>最後にはのの字を書くなんて・・・・・うーん、ますます獣神官には見えませんねー。
はっはっは! そう言って頂けると嬉しいです。
よし! ゼロスにはもう少し苦労してもらいましょう!(何故!?)

>そーいえば、なぜゼロスはいるんでしょう?何か目的があるとか・・・・。
多分あると思います。でなきゃ一緒にはいないだろうし……。とはいえ、このGAMEの没タイトル、「リナちゃんの 楽しいゼロスの使い方講座」もしくは「リナちゃんの 簡単!魔族の脅し方講座」というものだったので(爆)、その目的が語られることは無いでしょう。(^^;)

>さてさて、リナのことだから騒いで報酬もおじゃん、
>にならないことを願いながら続きを楽しみにしてますー。
ぎくっ!
うーむ……。
そうですね。報酬がお釈迦にならないよう、がんばって書きます。(^^;)

では、続きもがんばりますので、また気が向いたら、続きの方も読んでやってください。
ありがとうございました。