-異界黙示録伝《水の書》その3-魔沙羅 萌(4/16-22:53)No.2311
 ┗Re:異界黙示録伝《水の書》その3-松原ぼたん(4/17-18:01)No.2319


トップに戻る
2311異界黙示録伝《水の書》その3魔沙羅 萌 4/16-22:53

今回は螢ちゃんの一人称です。はい。

――3年前だった。
刻の森が崩壊の危機にまでさらされたのは。
それも、話によれば一人の少女の手によってだという。
その破壊が現実にならなかったのは一匹の竜……古より森を守ってきたエンシェント・ドラゴンの長のおかげだという。
その長はその時に命を落としたという。
当事者によればそれは絶対に違うという。
真実は……その少女と死んだ古の竜、そして当事者だけが知っている……それだけは本当のことだ。


英雄〜忘れ去られた哀しみの偉人に贈る〜


「うるさい!人間じゃないくせに!化け物はおとなしく森に帰りなさいよ!それとも今度はあたしの命を奪っていくって言うの?!あなたなんて死んじゃえばよかったのよ!!ううん、うまれてこなければよかったのよ!!」
水輝は萌に対してそう言っていた。
……まにあわなかった……。
わたしの心の中はその一言だけで埋め尽くされていた。
一番最初に彼女の声が聞こえたのは多分玉髄だと思う。
あいつは姉弟の中で一番耳がいいから。
それでも気付くのが遅すぎていたみたい。
私たちの一番恐れていたことが起こってしまったんだもの。
《人間じゃない》《化け物》《死んじゃえばよかった》《生まれてこなければよかった》………。
そんなこといわれて平気だったヒトをわたしは一度も見たことがない。
「み、水輝ちゃん!なに言ってるの?萌だってちゃんとした人間でしょ!」
リナ姉のううん、エマの叫び声が聞こえる。
その声ではじめて水輝は私たちの存在に気付いたようだ。
「リナン……あなたに関係ないでしょ!」
「――わたしは……確かに今のままでは人間ではないわ」
「萌……。」
「でも……でも、何もしないで……何もしないで見てただけのあなたには言われたくないわ!
……りんちゃん。わたし、まだ、食べ物、とってきてないの……それじゃあ、いってくるね♪」
「ちょ、ちょっと萌!」
萌はとびっきりの笑顔を見せてから走り去っていった……。
わたしは知っている……彼女があの笑顔を見せるのはとてもつらいことがあった時だけ……。
萌が走り去った後……その場には私たちと、今ではうざったく聞こえる雨音だけが残っていた。
リナさんも、ガウリイさんも、玉髄すらも押し黙ったままで……。

『哀しみの記憶 悲劇の星 身代わりの月よ
ヒトにより創られた ヒトの大地 ヒトの海よ
ヒトの宇宙 ヒトにより作られたヒトよ
哀しみの地となりて 哀しみの伝説とならん』

〔続く〕

トップに戻る
2319Re:異界黙示録伝《水の書》その3松原ぼたん E-mail 4/17-18:01
記事番号2311へのコメント
 面白かったです。

>そんなこといわれて平気だったヒトをわたしは一度も見たことがない。
 あたしもない。
>わたしは知っている……彼女があの笑顔を見せるのはとてもつらいことがあった時だけ……。
 つらいですねー。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。