◆−黒き刃の大暴走記2−ドラマ・スライム (2002/10/31 12:18:26) No.23045
 ┣黒き刃の大暴走記2:前書きと言うか何と言うか−ドラマ・スライム (2002/10/31 12:25:35) No.23046
 ┃┗黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:プロローグ−ドラマ・スライム (2002/10/31 12:33:25) No.23047
 ┃ ┣黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:1章:午後12時半−ドラマ・スライム (2002/10/31 12:34:39) No.23048
 ┃ ┗黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:2章:午後1時−ドラマ・スライム (2002/10/31 12:41:56) No.23049
 ┃  ┣黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:3章:午後2時半−ドラマ・スライム (2002/11/1 20:46:40) No.23063
 ┃  ┗黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:4章:午後4時−ドラマ・スライム (2002/11/1 20:58:06) No.23064
 ┃   ┣黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:5章:午後5時半−ドラマ・スライム (2002/11/2 09:50:25) No.23076
 ┃   ┗黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:6章:午後6時半−ドラマ・スライム (2002/11/2 09:59:04) No.23077
 ┃    ┗黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグ−ドラマ・スライム (2002/11/2 10:00:36) No.23078
 ┃     ┣黒き刃の大暴走記2:後書き−ドラマ・スライム (2002/11/2 10:23:00) No.23079
 ┃     ┃┗遅くなりました〜−陽月 (2002/11/10 19:04:17) No.23234
 ┃     ┃ ┗Re:遅くなりました〜−D・S・ハイドラント (2002/11/10 19:39:59) No.23235
 ┃     ┗Re:黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグ−エモーション (2002/11/2 21:42:29) No.23092
 ┃      ┗Re:黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグ−ドラマ・スライム (2002/11/3 08:46:16) No.23096
 ┗黒き刃の大暴走記2追記−ドラマ・スライム (2002/10/31 16:32:43) No.23050
  ┗改名します。−D・S・ハイドラント (2002/11/6 21:56:53) No.23157
   ┗一時休止−D・S・ハイドラント (2002/11/13 16:32:51) NEW No.23290


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23045黒き刃の大暴走記2ドラマ・スライム 2002/10/31 12:18:26


お待たせいたしました。(って待ってくれた方いるのかな)
第2話完成いたしました。
少しづつアップしていきます。(いきなり何話も並べたらひく方もいらっしゃられるかと・・・)
それでは〜
ちなみに1話の方は著者別に載せてあります。

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23046黒き刃の大暴走記2:前書きと言うか何と言うかドラマ・スライム 2002/10/31 12:25:35
記事番号23045へのコメント

それではアレを書きます。

くそっ何で俺がこんなド田舎に来なきゃなんねえんだ。
そもそもあいつが勝手に付いて来るからこんなことに・・・
それに何であんなやつがこんなところに・・・
謎も深まる衝撃の烈火球(かなりランクが落ちてる〜)ファンタジー第2弾

では本編開始です〜。

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23047黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:プロローグドラマ・スライム 2002/10/31 12:33:25
記事番号23046へのコメント

 昼間だというのにそこは静寂だった。風の音くらいだろうか・・・。賑わいの日である人間の日――ただの名前であって特に意味などはないが――にここまで寂れたところが他にあっただろうか・・・。
「・・・というここに宿泊されている方にお会いしたいのですが・・・。」
その声には生気がない。
ここには2人の男がいた。40過ぎの男と20代くらいの若い男だ。
 「彼なら引き払いましたよ。」
 皮肉を込めたような声で答える40過ぎの男。
 「そうですか・・・行き先などは・・・。」
 暗く冷たい・・・そんなことはないはずだがそう思える声だった。
 「さあな。」
 「失礼しました。」
 男は店を出た。そこは小奇麗な感じだったが、周りの景色とひどく合わない。少し斜め上を見れば看板がある「ホテル・アドバーグ」・・・これも不似合いな名前だ。
 「逃げた・・・いや追ったようですね。」
 若い男は呟いた。
 彼は裏路地をひどく無関心に歩いく。その虚ろな目は虚空のみを捉えていた。
 「公都なら止まるでしょう。」
 ふと足を止めて呟く、表情は変化しないが、内面よりは歓喜の感情が滲み出ていたのかも知れない・・・誰にも分かることではないのだが、この男のことは・・・。
 男の身に付けた鎧が光を反射して自然的な銀に輝く・・・。
 「だが、やるのは私ですよ。」
 まるで誰かと話すように呟きを延々と漏らす・・・。
 火陽の光を浴びて輝く金髪はどんな黄金よりも美しかった・・・。
 「彼は私の手で・・・。」
 その眼だけは闇の如く虚ろだった。
 「・・・殿。」

 その通りを行くものは彼が消えて、後は誰もいなかった。
 そして静けさと風が辺りを支配する。
 足音も・・・消えた。
 夏の温かい風と天空の果てに輝く火陽玉の光はけして混ざらずにただ独立しながらも違う熱をそれぞれ持ち続けた。

◇◆◇◆

 無・・・違う。無ではなく何かは確実にそこに在る。虚無など存在しない・・・少なくともこの大陸には・・・。すべてには何かが在る。物質の存在が在るのを認めてそれを虚無と言うならば、ただの比喩表現に過ぎない。むしろ虚無はくだらない比喩表現に使われるだけではないのか。
 そうそこに少年はいた。
見た目だけで言えばただの平凡な少年だ。あえて特徴を挙げるなら茶髪混じりの黒髪に赤味の混じった土色の瞳、背は低めだろう。
見た目だけならすべての人間に特徴はあるだろう。平凡というのはけしてすべての同質のものの平均ではない。ただの想像だ。
想像は魔道士にとっては重要かつ必須のものだ、少年はそれを特に必要とはしていないだろう。
彼は平凡ではない。大陸で有数の・・・非凡な人間の1人・・・。いやそんな言葉はあまりに過少すぎるだろう。
少年は黙している・・・自分に話すことは多かったが、今はそれをする気配はない・・・。
だが少年は確実に進んでいた。その標となるものは少年にしか見えてないのだろうが・・・。
そして虚空は少年をかき消した。
虚空とは適切ではないのかも知れないがそれは虚空だった。本当に何もない・・・。いや何かは必ず在るはずだ。
何かは確実に存在している。ただの不完全な意思を持っただけの物質に見えるものかは定かではないが・・・。
虚空でも虚無でもない。だが物質の支配する世界ではない。・・・大陸も実はそうではないのかも知れないが。

◇◆◇◆

 「何でお前が来るんだよ。」
 黒ずくめの男、エッジは叫び気味に言った。
 「だって〜ちょうど密偵があなたが旅するっていう情報を掴んだから・・・。」
 「密偵?」
 怒りの一部を疑問にすり替えられたエッジが訊ねる。
 だが答える前にふと思いついた名前を言ってみる。
 「まさか・・・アルフのことじゃねえだろうな。」
 「あら、何で分かったの?」
 一時会話が止まり、
 「それに親父が心配しているんじゃねえのか。」
 「大丈夫よ、こんなこと昔に3回ほどあったから。」
 「・・・。」
 エッジは黙り込んだ。

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23048黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:1章:午後12時半ドラマ・スライム 2002/10/31 12:34:39
記事番号23047へのコメント
大陸・・・。おかしな名前だ。
 大陸というのはけして大陸ではない。誰もが知っているだろうか・・・学業の学び始め以下の子供は知らないだろうが・・・。納得する子供が多いだろうか・・・いや理解出来ない子供の方が多いだろう。それを理解し、いきなり否定したり笑ったりする子供もいるかも知れない。
 その後年を重ねればそれを変だと思うようにもなるかも知れないがそんなことを疑問と思うのには意味もないし時間や頭脳の労力の無駄に過ぎない。後者はそれほどでもないと言うか気にすることも全くない。
 それにそれ以外の意味での大陸は存在しないし、その名前もまた自然に思えるようになって来る。成長の1つだろうか・・・。そんなくだらないことが成長と呼ぶに値するかは分からないが、成長を現す上での目安にはなるのではないだろうか。そうなるとそれを認めない・・・つまり意地を張る者は成長していないと言うのか・・・。普通は言わないだろうが、中にはそれを未熟と呼ぶ者もいるだろう・・・。
 大陸とは1つの陸地ではない。この世界と呼ばれている中で人間の管理するすべての地域を大陸と呼ぶ。
 現在――約100年前に船という技術が生まれた後――の大陸はすべてが陸続きではない。いや陸でもない地域であろうと人間の管理下にあればそれは大陸の一地方だ。逆に陸地だろうが人間の管理していない地域は大陸外・・・秘境と呼ぶ。
 そう彼らがいるのも大陸の中の1つの島に過ぎない。・・・同時に広大でまた大陸内にある主要的な2つの島のうちの1つでもあるのだが・・・。
 公爵領。・・・大陸で貴族と呼ばれる5人の内の1人、文字通り、公爵が治める地域だ。
 細長い野菜に似た島。・・・中央部の自然荒廃した地域、北部の2つの壁である結界の森とグレートロック・・・そんな巨大な秘境をも擁していおり、また大陸魔道士の最高峰のである≪霧の塔≫や大商都≪エルヴェント≫――昔はグラッド・シティと呼ばれていたはずだ――が存在する。そんな島だ。
 これが彼らのいる島。そして彼らはその島の西部に位置する小さな村にいる。
 
◇◆◇◆
 
 そこは馬車の停留所だった。それにしても粗末な停留所だ。馬糞でも落ちていても不思議ではない。降りる人もいたが、同年代の人間はほぼ皆無だった。
 「何でこのわたしがこんな田舎で・・・。」
 割と大声で呟く金髪の少女、無理もないかも知れないが大声はやめて欲しいとそれの隣の黒い男――肌の色はむしろ白いが――は思った。
 男は20歳ちょうど、黒いジャケットに黒い眼、そして何よりその黒のイメージを浮かばせるのは、その光沢すらない漆黒の頭髪だろう。
 その隣には少女がいる。まだ20にはなっていない――恐らく17〜8だろう――人を惹きつける愛玩精霊獣のような雰囲気を持っている。
その少女は金髪に暖色系の服を着ている。旅を考慮してか以前よりは遥かに動きやすそうな格好をしている。さすがに大陸有数の大富豪の娘とは思われないだろうが、それでも気品は完全に隠せてない。それは、この性格とはあまり関係のないものだが・・・。

この場所を一言で表すなら、ド田舎・・・。もう少し長く言うなら、自然の無駄に多い超ド田舎。
つまりはド田舎である。エルヴェントから少し離れた――と言っても島の地図で見れば目と鼻の先だが――ところに位置するド田舎である。
彼らがこんなド田舎で馬車から降りなければいけなかった理由・・・簡単だ。
経済的理由・・・最もベーシックでスタンダードで一般的で情けない、理由の1つであり、頭に思い浮かびやすい理由でもある。それは普通の人ならば発生を出来るだけ防ぐし、まず発生しにくい。
それでもこの年代の人間が「ここで降りたかったんだ。」と本心から思うよりはよっぽど現実的に思えるかも知れない。自然が好きなやつならお手軽な地域かも知れないが、観光地なら近くにいくらでもある。
ここはド田舎だが、ここより自然的な土地ならいくらでもある。ここより田舎的な土地は少ないかも知れないが、それでも馬車が止まるのだから、下には下があるのだろう。最下層を見たいような気がしないではない・・・。
まあ「ここに来たい。」と思う若者が10年に一度くらいはいても不思議ではないだろう・・・。
とにかく彼らはそこにいた。
こんなところに来てしまったのだから、この場所の名前くらいは覚えるだろう。
・・・キース・ヴィレッジ、これがこのド田舎の名前だ。

「とにかく行くぞ。」
黒い男、エッジのその言葉が生まれる頃にはあたりは静まり返っていた。すでにここで降りた人々は村に入っている。そこにいたのはその言葉を聞いていた少女、エリアナのみだった。
「うん。」
小さな声・・・彼女には似合わない小さな声では返事をするとゆっくり立ち上がる。その頃にはエッジは数歩先行していた。
「まだそんなところか。」
咎めるように・・・かつそれをかなり優しくした感じの口調だ。そんなに嫌悪感を覚えさせるものでもないと彼は思っているものだろう・・・。
少女は動き出した・・・。

停留所はかなり狭い・・・狭すぎるスペースに短い木製のベンチが2つ3つあるくらいだ。
それを外から眺めるエッジ・・・。
(ったく誰のせいでこんなところに)
争いは避けようと思い出来るだけ怒りの感情は抑えたようと努めた。
かわりに落ち込んでいるように見えたが・・・。
今は大体12時を少し過ぎた頃・・・まだエルヴェント出発から数時間しか経っていない。けして今のところそれそれ以上は経っていないのだが、かなり遠くへ来たように感じた。それは錯覚ではなく、ただあの大都市から超級のド田舎へ来たからだろうか・・・。
(とりあえず・・・飯まだだな。)
そして言葉を選ぶ・・・いや言葉に込める感情を選んで・・・。
「昼飯食おうぜ。」
出来るだけ明るめにそう一言。
「そうね。」
明るい声だがエリアナの表情には少量だが遠慮が見られた・・・。
気にするほどのことではないと思ってか、こちらにも遠慮があったのか、それにあえて触れようとはしなかった。

「見つからねえな。」
実は探し出してからそれほど経っていない。ただ意味もなく独り言を言ったわけだが、それを複雑な表情でエリアナは見ていた。
「大丈夫かお前。」
この村に来てから彼女は沈んでいたのだが、エッジはあえて今までは口を出さなかった。
「大丈夫よ。」
やたらとそれは明るい声だった。だが無理して作った声にも感じられる。さらにその後の表情にも変化はなかった。
「まあそれならいいが・・・。」
そう言っておいた・・・。

(人に聞いた方がいいのか)
今度は口に出さなかったが、こちら声にしても問題はなさそうだ・・・。
(だが肝心の人が・・・)
その村はゴースト・タウンの如く静まり返っていた・・・。
「ねえ、人いないね。」
出来るだけ明るく言おうと思ったのか、そんな感じでエリアナが言ってくる。内容は明るくはないが・・・。
(農作業・・・とか。)
「ねえってば。」
「何だよ。」
その返答は一瞬だった。
そして次に先を制したのは
「だから考えてんだよ!」
怒鳴る・・・には遠いものの穏やかとはけして言えない口調だった。
「そう・・・。」
そこで両者の間に幕が下りたように会話が途絶えた。

だがそれが終わるのもすぐだった。
「ねえここ結構空気いいと思わない。」
単なる話のきっかけ作りかと思ったが、実際、空気はよかった。
「そうだな。」
これが今までの彼の言葉で一番優しいものだったと思える。
それはともかくその時、道の向こうから彼らの前に、誰かが姿を現した。
・・・普通の村人ふうの男である・・・40はとうに過ぎているだろう。
そしてその距離は縮まっていく。
そして・・・。
「すみませ〜ん。」
声を上げたのはエリアナの方だった。エッジも声を出そうとしたが途中でそれを静止させた。
「ここら辺で何か食べられるところありませんか〜。」
・・・
・・・
「ああ、食堂ならこの道をまっすぐ行ったら確か1つあったで。」
エリアナに見とれてか少し返答に間があるように思えたが、口調は普通だった。
「〜で」と言うのは方言だろうか・・・?だがエッジもそれについては全く知らないようだ。
「ありがとうございました〜。」
商人の娘だけあって礼儀は欠かさない。いやお嬢様な育ちのせいかも知れないが・・・。

「あっアレじゃない。」
エリアナの声と同時にエッジの目に食堂らしい看板を掛けた建物が映った。・・・それ以外は普通の木造の民家――恐らく今まで見た建物はほぼ民家だろう――と変わりない。
近づいて見るとかなり古い建物だ。ゆうに30年は越えている・・・。
もしかしたらエルヴェント――グラッド・シティ、と昔の名でいった方がいいのか――が出来る前から建っていたかも知れない。
正面にある窓はひびが入っており、木材はところどころ腐っている。地面の草はむしられているようだが、湿気があって環境はよくない。自然的なので環境はいいはずだが・・・。
店は開いているようだった。一応食堂ではあるらしい。
エッジはノブを回し、扉をそっと押す。ドアを開けるのにも不快な音を聞く他なかった。
中は暗く静まり返っていた。観光客がいるのならば何人かくらいはいてもよかったのだが、あいにく客はいないようだった。
少し寂しいが、借金取りに追われたり、怪物が出現したり、暗殺者と死闘を繰り広げたりするハードな日常――一般人には非日常にしか思えないだろう――から逃れられてこの上文句を言うのはあまりにも我がまま過ぎるだろう。出来るだけ安息の日々に馴染もうとエッジは思った。
とりあえず適当なテーブルへ行き、あまり上等とは言えない椅子に向かい合わせで座る。
「親父〜メニューくれー。」
昼間なのに薄暗い店内でそれを跳ね除けるために出来るだけ明るい声でそう言った。
そして場違いな声に無言でメニュー表らしきものを運ぶ店の店主らしき50近いくらいの男・・・どうやら従業員を雇えるような余裕はないらしい。
(まあ無理もないか。)
思考の続きを頭の中で声にする。そのまま頭を今日の昼食に切り替えて、メニュー表を凝視する。
「早く見せてよ。」
それを聞いてか店主はメニュー表をもう1つ持って来た。表情は虚ろで無愛想だ。これなら客が寄り付かなくても何の不自然もない・・・。
「ありがと。」
そう言ってメニュー表を受け取るエリアナの表情は複雑そうだった。
その間もずっとメニューしか目に入ってなかったエッジがようやく口を開く。
「Aランチ1つ。」
「うそ、そんなもの食べるの!」
大げさに驚くエリアナを無視する。
(ランチを食って何が悪い。)
わけの分からない発言にはあえて口を挟まない。・・・その言葉にも店主は動じてない。
「じゃあ、わたしはステーキセットにサラダ。」
ステーキセットはこの店で最も高いものだった。
「おい、俺の金でそれ食おうってか!」
「当たり前じゃないv」
驚愕のエッジにエリアナは軽くそう言い放つ。
「せめて田舎風ハンバーグセットに替えてくれよ。」
5グラッドも安いメニューに替えてくれという懇願とも思える声もあっさり無視される。
「Aランチが1つに、ステーキセットが1つ、サラダが1つですね。」
表情を変えずに店主は黙々と口にする。
「おい親父、どうしたんだよ、この店。」
口に出すべきでないと思ったが、それでも今までその衝動に耐えてきたのだ、エッジはついに口に出してしまった。
(やはり魔道士失格か俺。)
それと同時にエドのことも浮かんでくる。
(殺してしまった。)
(だが生きていた。)
エドに出会ってまだ1日だが、それでも忘れようと努めていたし、その感情を抑えることも出来た。
だがこんな一言で再び悪夢が押し寄せてきた。
(くっ・・・。)
その襲いかかって来る感情を必死で押し殺す。
(もう少しだ。)
「ねえどうしたの。」
エリアナ声は逆にすべての感情を閉じ込めた。
気付けば店主もそこにはいない。厨房にでも行っているのだろう。・・・そうでなければこちらは困るが・・・。
(それにしても金足りるかな・・・。)
財布の中を必死で探る。
「惨めねえ。」
横から口を挟むエリアナには
(その俺の金に頼ってたくせに・・・)
口には出さず胸中で吐き捨てる。
そして・・・。
(こいつ、いつの間に普通に戻ってやがる!)
それに気付く・・・。
(あれは演技か?そーなのか?)
胸中で問いかけ、返るはずの返事を数瞬待った。
そして財布にぎりぎり足りる金があるのを確認すると、安堵とともに哀しくなった。
(ったく大富豪の娘なら金くらい持って来やがれっ!)
その呟きの後・・・なぜ口に出せないのかと軽く悩む。

「お待ちいたしました。」
無愛想な声とともに店主が再び姿を見せた。確かにAランチにステーキセットそしてサラダが店主の大きめの盆にあった。
(とりあえずどうでもいいことは飯の後にするか。)
エッジはAランチに食らいかかった。
横では美味しそうにステーキをほおばるエリアナの姿があった。
無愛想な店主は笑みを見せた気もする。特に2人は気にすることはなかった。元よりその方を見てなかったし・・・。
だがその空気は打ち砕かれた。

◇◆◇◆

 そこはエルヴェントから延びる街道である。自然は多いが平原地帯なので似たような景色が多く飽きやすい。
 「ねえ疲れたよーー。」
 情けなくうめく声。発するのは茶髪の少年。そう宿屋の息子アルフレッドである。
 「仕方ない金がないんだ。」
 哀しいセリフを無愛想に吐く大男。
「まったく、あの馬鹿社長め交通費までケチりおって、帰ったら馬の蹄でピンボールの刑に処してくれるわ。」
(ガコン!)
何か硬いものが当たる音の直後
「んっ何かで殴られたぞ・・・まさかラッシーよ先輩を殴るわけがないよな。」
「当たり前だ。」
うそを無表情で付く大男ラッシー。
(お前の信頼がないからだ。)

「グシャララボラスさん。」
「グラシャラボラスだ。」
無表情で訂正する。
「えっとラシャグボラ・・・さん。」
「ラッシーでいい。」
彼らの旅はまだまだ始まったばかりだ。
午後12時半火陽玉の輝きはほぼ絶頂に近い。。





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23049黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:2章:午後1時ドラマ・スライム 2002/10/31 12:41:56
記事番号23047へのコメント

そこは街道・・・森に間を通る部分。森からは闇が天からは光が・・・それらが交差するところ・・・。
「保険金目当ての暗殺に、乗合馬車狩りの野盗・・・いつから大陸は汚れたのでしょう・・・。」
 表情には変化はないが悲しげに語る男。黄金色の髪に、白銀の鎧、そして美麗な容貌を持つ。
 その傍らで倒れる様々な男達、だがよく見ないとその違いは、ほとんど分からない。すべて息絶えている。
 「貴方達が悪いのですよ・・・。」
 その眼の方向には無残な姿の人々――こちらは命のある人もいる――とグチャグチャに壊された乗合馬車と馬の死体。
 「ただ殺しただけで終わりじゃあ、ただの殺人鬼と同じですねえ・・・。」
 そこで言葉を切って・・・。
 「私のために糧となってもらいましょうか。」
 その声は冷たく響き・・・瀕死状態の人々が震え上がる・・・。その震えは時の刻みとともに悪化してゆき・・・そして・・・。
 「さて・・・この数だと無理をしなければなりません。」
 小さく冷たい声は絶対零度の冷気となり辺りを震わす・・・。
 そして冷たい詠唱が始まる・・・。
 「帰り来たる 過ぎし時の旅人 汝 すでに刻まれることなく虚ろと果て そして我へと」
 静寂・・・そして周囲の存在は熱を失っていく
黄金の髪と白銀の鎧のみがただ熱を持っていた・・・。

    ◇◆◇◆

 そこは薄暗い建物の中・・・。静寂の中でいくつかの音が単調に響く。
 それが続けばそれでよかった・・・のだが。
 (ドン!)
 その音により一方から光が差し込む。・・・入り口の方だ。
 その光の手前に人影が映る・・・。複数だった。
 それは少しずつ闇へと入ってくる。その影を見て脅えたような表情を見せる男。ここは食堂でありその男は食堂の店主である。
 その体が震え表情がこわばる・・・。
(何だ、ただのゴロツキ・・・か。)
 こう呟いたのはもちろん店主ではない。
 この店の客の1人――客は2人しかいないが――だ。
 ゴロツキ連中・・・その格好から黒ずくめ客の男はそう決め付けた。
 彼にとっては特に何でもない敵だ。そういう自信あった。一般人には充分脅威であるが・・・。
 彼はチャンスを待った。すでに向かい合ってステーキセットを黙々と食べている――表情から見ればこの状況に全く動じてないわけではなさそうだが――金髪の少女は目に入らなかった。
 (こいつら片付ければ礼がもらえそうだな。)
 そう内心呟いて、勝手に皮算用を始める。もはやそれに完全に集中している・・・。今の状況では全く意味のない行為に・・・。
 そして次の瞬間、彼は我に返ることになった。
 (何かに触れた・・・いや触れられた。)
 そう彼は胸倉を掴まれていた。すでにこういう連中はなめきっていたので油断したのだ。           
向かい合わせに汗を一滴垂らしながらもサラダにドレッシングをかけている少女が横目に入った。
 そして声が聞こえる。
 「商売の邪魔だ、消えろ。」
 ゴロツキ達の1人が低い声で脅すように言う。背後には数人の男が待ち構えている。
 それを聞いて彼は怒りを覚え、拳を握る。
 「あんた達何者なのよ!」
 サラダに手をかける直前の状態でいきなり怒鳴る少女、エリアナ・・・。
 背後の男の1人が口を開いたそのとき拳が彼、エッジの胸倉を掴む男の顔面にめり込んだ。
 離れたところでは不安そうにそれを眺めている店主の姿があった。同時に別の感情も浮かべているようだが・・・。
 「てめえ、やりやがったな。」
 少女の問いに答えようとしていたらしい男が言葉を月並みなものに変化させた。
 向かって来る数人のゴロツキ達。彼らの座るテーブル周りを囲むように散らばる。
 拳が飛んでくる・・・エッジはそれを受け止め膝を当てる。
 苦悶の表情が男の1人の顔に浮かぶ。そのまま昏倒した。 
 続けて飛びかかって来る男を避ける。
 「エリちゃんクラーッシュ!」
 エリアナが椅子を振り回して男を倒す。結構凄い。
 「なめやがって」
 再び月並みなセリフとともに怒りに燃えて突っ込んでくる1人を肘打ちで倒し、同時にもう1人を蹴り倒す。
 「エッジ危なーーい。」
 エリアナが叫ぶもそれは数瞬遅く、背後から1人が椅子を後頭部にぶつける。
 紙一重で左手を盾に受け止めるも、前方で倒れていた男が力を振り絞り突っ込んでくる。・・・避けきれずに腹部に打撃を受ける。
 悶えながらも背後の男を吹き飛ばし、前方の男を蹴り倒す。
 その直後また1人が突っ込んでくる。・・・手には鈍い光が見えた。
 (ナイフ・・・。)
 だがその攻撃は阻止された。
 「エリアナ!」
 エッジの声の方向に椅子を持って立っている金髪の少女がいた。
 だが次の瞬間そちらに男が飛びかかって来る。エッジは咄嗟に懐から刃のようなものを取り出す・・・それを鞘ごと相手にぶつける。
 同時だった。その男が倒れるのと・・・エッジが血を吐き出すのは・・
 背後の男・・・赤い髪に黒のローブ、白霧(デス・フォッグ)を象った金属製の首飾りをぶら下げている20代半ば。身長はエッジより少し低い。(エリアナよりは少し高いが・・・。)
 その男の拳がエッジの右頬を捕らえていた。そのまま背後に向けた肘も受け止められた。さらに左手ではナイフを喉元に突きつけている。
 エリアナがそれに気付き体が反応する。
 「動けば・・・死ぬ。」
 低い声、表情は冷静・・・暗闇でもそう見える。
 エリアナが椅子を捨てる。
 同時に一度引いた右の拳がエッジを打ち付ける・・・。
 エッジはそのまま倒れた。
 「くっ・・・。」
 苦しげにうめく。
 「思ったより強いな・・・刃しか扱えんと思っていたがな・・・。」
 赤髪の男はエッジを見下ろしながら話しかけて来る・・・。
 「・・・基本は・・・教えられた。」
 血とともに声を吐き出す。エリアナも店主もただ傍観するのみだった。
 「君も我々の敵だがあいにく命が出てないのでね・・・残念だ。」
 冷徹な視線とともに冷たい口調で声を放つ。
 「・・・ったく、つまんねえ人生歩んでるようだな。」
 血とともに吐き捨てる。
 「君達のところとは違うのでな。」
 そう言うと赤髪の男は出口に向かう。
 「雰囲気が悪いな・・・一時帰らせてもらう。」
 「待ちなさいよ!」
 エリアナの声に振り向く赤髪の男。
 「悪かった。」
 そう言って立ち去る。エリアナはまだ声を上げるがすべて無視する。
 そして光に消えた。

 「エッジ!」
 エッジ・・・エッジ・・・繰り返される。
 それが永遠に続くが如く・・・。
 暗闇が支配している。そしてその声が照らす明かりとなり・・・。
 それはどんどん・・・強くなる。
 そして・・・。
 「はっ!」
 口に出して飛び上がる。そこには顔が見えた。
 (エリアナ・・・。)
 「もう心配したのよ。」
 心配・・・辺りを見回してみた。そこは広くはない片付いた部屋で自分は部屋の窓際にある、シンプルな古いベッドに寝ていたことに気付く、思考はまだ完全に回復してなかったようだが、そこは寝室か何かだろうと思えた。
 エリアナは安堵を浮かべているようだった。
 「大丈夫でしたか。」
 続いて男の声・・・店主のものだった。
 「俺は・・・負けたのか。」
 悔しそうに呟く。
 「不意打ちじゃない。」
 励ましのような声でエリアナが言ってくる。
 「そう・・だな。」
 (・・・全く気付かなかった。)
 胸中で呟いた直後に声にして
 「結局あいつら何者なんだ。」
 「ただのゴロツキでしょ。」
 エリアナはそう言うが・・・。
 「実は・・・。」
 口を開いたのは店主である。
・・・
話が・・・終わり、
「「借金取りぃ〜?」」
同時に声を発する。

◇◆◇◆

 「これは、どういうことなんだ?弟子よ。」
 「さあ?・・・でも僕があなたの弟子じゃないことは確かだね。」
 会話・・・普通の日常会話・・・場所は特殊だったが。
 小ささとみすぼらしさが目立つ――それでも体には生気が満ちている――小さな男と茶髪の少年の会話だ。後には大男が立っている。
 そこは木々のトンネルのようなところに出来た道――島内唯一の街道の一部分である――だ。
 そこには無残な姿の人々と壊れた馬車や命を失った馬がある。
 まだ死体は腐っていない・・・。
 「どうやらあまり時間は経ってないようだな。」
 後の大男が言う。
 「あのラッシーさん・・・こっちには違う人種もいるようです。」
 茶髪――赤味がかかっている――の少年、アルフが馬車とは違う方を指している。
 「野盗・・・か。」
 表情は全く変わらないが内部では思考を始めていた。
 (妙だな・・・。)
 「よめたぞ!」
 突然、声を上げたのは小さな男である。その顔は自信に満ちている。
 まあ聞いておくか・・・2人はそう思っただろう。沈黙のまま声を待った。
 「これは極めて残酷な者の犯行だ。」
 そこで切って・・・すこしの間の後、
 「犯人は金を持っていなかったのだ。」
 「はあ?」
 アルフが声を上げる。
 「まあ弟子よ、落ち着いて聞け。」
 (誰が弟子になるって言ったんだよ。)
 と思ったが口には出さず続きを聞くことにした。
 「犯人は乗合馬車の乗車賃が払えずなかったため、客もろともすべての人々を殺して逃げた・・・。」
 話は続いているようだったが・・・。
 「でも、こっち側の人どう見てもこの馬車を襲った野盗だよ。」
 アルフが偏見混じりすぎだが実に正しい発言をする。大男グラシャラボラス――愛称はラッシー――は黙っている。
 「それはそちらに罪を着せるつもりで用意したんだ。・・・事前に力ずくで脅したのだろう。」
 そこで切るが即座に口を開きなおし、
 「そう犯人は・・・あの黒い借金男だ!」
 「・・・。」
 推理――のようなもの――はいい加減だが、在り得ない話でもないかも知れない。
 「エッジはそんなことするわけないないじゃないか。」
 アルフは反論する。
 「ほう・・・やはりやつの本性は知らんようだな。」
 そして小さな男――本人は、二キータ・ガトリング・マシンガンと名乗っている。――は≪やつ≫の本性について語り殺しの刑に処そうとしたとき・・・。
 「ううっ・・・。」
 声が聞こえる・・・。どうやら馬車の近くかららしい・・・。
 近づいてよく聞くと、それは20くらいの女性の声だった。
 「大丈夫か。」
 ラッシーは無表情で話しかける。
 「大丈夫・・・。」
 そのまま声を失った。
 「気絶しただけのようだ・・・手当てすればまだ間に合う。」
 ラッシーはそれにも表情1つ変えなかった。
 「おお、これは幻の100グラッド札ではないか。」
 まるで考古学者が新しい発見をしたときのような表情だった。
 「ダメだよ人の財布漁っちゃ。」
 アルフの声はニキータには全く聞こえなかった。
 「とりあえず急ぐぞ。」
 ラッシーは声とともに1人先行する。
 「うーん死人に人権はないからなあ。」
 そう言って荷物を漁るニキータとそれを阻止しようとするアルフ。
 やがて厳選してグラッド札だけを抜き取ったニキータとアルフが後を追った。
 ラッシーの速度は遅かったのですぐに追いついた・・・。1人抱えているからか、彼らを待ちながらだったのか・・・その両方か・・・。
 どれでもよかった・・・。それより早く村や街はまだかと思っていた。
 午後1時まだまだ昼は始まったばかりだ。

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23063黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:3章:午後2時半ドラマ・スライム 2002/11/1 20:46:40
記事番号23049へのコメント

≪古代、昼は夜だった。≫
 そんなわけの分からないタイトルの本だ・・・。大昔の宗教を理論詰めで解説した本でやたらと分厚く、またわけの分からない推測や妄想が含まれている。
 くだらない本だ。その男はそう思った。
 男はまだ20代半ばといったところだ、黒のローブにがっしりとした体格に長い黒髪、まだ若く、年相応の魅力も高いが熟練の風格も覗かせる。
 物音が聞こえる。
 男は部屋を見回した。
全体的に片付いている。そして本がたくさんある。すべて男の背後から窓際に向けていくつも並ぶ、背の高い木製の本棚に入っているが――男のデスクには本が山積みだ、≪すべての存在は2面性を持っている≫何かのくだらない本――彼に言わせればすべての存在はくだらないものだと言いかねないが――にそんなことが書いてあった。
(間に受けたわけではないがな。)
片付いた部屋と散らかったデスク、これも2面性かと思って苦笑し、さっきの物音――扉をノックする音だ――への反応を忘れていることを思い出す。
そのデスクにさっきの本を置くと面倒くさそうに立ち上がり、扉を開ける。
「君か。」
姿を確認し、そう一言呟くと、デスクに戻りさっき腰掛けていた上等な金属製の椅子――値段は高そうだ――に腰掛ける。
「冷たいのね。」
扉をノックしていた女が中に入ってくる。
こちらも年齢はほぼ変わらない。蒼穹を微かに思わせる黒髪はしなやかで長くも短くもなくちょうどいいと思える、端正な顔付きで少々華奢に見える。
 茶色のゆったりとした服――地味な服だが、彼女はけして地味ではない――を一歩ごとに起こる微かな空気の揺れに震わせながらゆっくり男の方へ近付いて来る。
そして男のデスクを覗き込んだ。
「今日もここにいるのね。」
「わざわざ聞かなくてもいいだろう。」
男は本から彼女へと視線の目標を替え面倒くさそうにそう言った。
「まさか本当にこんなもののために・・・。」
女は不思議そうにそう言った。あまり驚いてはないようだ。
「悪いか。」
そう言って本に方向を戻す。
「いえ。」
そして女は黙り込み、ただ男が本を読むのを見ていた。
「まあそれよりも、あの男よりもこちらの方が遥かに魅力的でね。」
男はそう言うと
「もういいだろ。」
今まで出一番面倒くさそうな声だ。
「嫌だといったら。」
「君をここで殺すがね。」
平然となおかつ冷徹に言い放つ。
「あなたにだったら殺されてもいいわ。」
 強くそして小さく叫ぶように声を上げた。
「くだらない冗談はやめてくれ。」
その冷たい言葉を受けると彼女は短い笑いを浮かべそのまま去って行った。
「やれやれ。」
必要のない言葉だと分かっていながらも男はそう呟かなければ落ち着かなかった。
再び本に目をやり――くだらないと思いながら――そのまま時が過ぎた。
もしかしたらその時をただくだらないことに使うのが彼の理想なのかも知れない。そうならば彼はすでに彼の理想だと思うのだが・・・。

◇◆◇◆

 「何で言わなかったのよ。」
 少女の声は聞いていて不快な――つまり苛立ちや怒りを含んだ――声を2人いる内の歳が上の方に向けて言う。
 その言葉を受けた男――ここは住家を兼ねた食堂であり、彼ここの店主だ――は安堵から申し訳無さそうな表情に変わる。
 「おいエリアナ。」
 ベッドに座っている男がはっきりとした声で名を呼ぶと・・・、
 「何よ。」
 少女、エリアナは鋭い声で反応する。
 「俺達だって勝手にその借金取りをぶちのめしたんだ、悪いのはむしろ俺達の方なんだよ。」
 「・・・そう。」
 エリアナは灼熱の火陽玉が突然の曇ったように黙り込んだ。
 (変化の激しいやつだな。)
 内心呟いて辺りを何となしに見回すと扉の方に人が増えていることに気付いた。
 始めてみる少女――エリアナより歳は下だろう――がいる。身長はエリアナよりやや高めでおとなしそうな外見で、なおかつ年相応に幼げ名雰囲気を残す、かなり華奢な体格をしていて、あまり上等とは言えない薄い青のシャツにジーンズをはいている。
 「そちらは・・・。」
 ベッドに座りながら男、エッジは遠慮がちに店主に話しかける。
 「私の娘のアメリアです。」
 ・・・どこかで聞いたことあるなあ。
 「そう言えばあんたの名前も聞いてないようだった・・・な。」
 先ほどより少し自然な声に近かったがまだ遠慮は消え去らないようだ。
 「ああ、私はフィリオネル・・・フィルでいいです。」
 こちらも聞いたことあるなあ・・・どちらもかなり別物のようだが・・・。
 再び辺りを見回し、少し間を開けた後、
 「ちょっと聞いておきたいんだが、・・・借金ってのはいくらあるんだ。」
 「・・・10000グラッドほどなのですが。」
 ためらいの間の後、一気に言い切るように答える。
 「そうか・・・。」
 気の毒そうな表情に変化した。
 「ですが最近・・・違うものを要求してきまして・・・。」
 「違うもの?」
 即座に聞き返すと・・・。
 「付いて来てください。」
 店主フィルとアメリアは外に出た。
 「ほら、エリアナ行くぞ。」
 「うん。」

 寝室らしき部屋を出たエッジ達は廊下を歩いていた。
 先ほどからそう思っていたがここは2階のようだ。けして広くはないが外から見るより広くは見え、また外から想像できないほど奇麗に片付いている。
 食堂ならば外見に気を使うべきなのだが・・・。その家に住む者にとっては内部の方が大事だろう。つまり掃除などは娘のアメリアがやっているらしい。恐らくそうだろう。
 そんなことを――その思考の時間はごく短い――思っていると前方の足が止まったようだ。
 「ここです。」
 フィルが指した所は2階の隅の方に位置する扉だった。
 「ところで本当にそれを俺達が見てもいいのか」
 恐らく借金取りに狙われるものなのだから、フィルにとっても大事なものなのだろう。エッジはそう推測してなのか、そんなことを言った。
 「いえ、いいんですよ。」
 見せるという行為には肯定のようだが、それがどの程度の肯定なのかはエッジには読めなかった。
 (まあ敵なわけでもないしいいんだが)
 そう思って後でわくわくした表情を隠そうとしているエリアナの方を向き、そして音とともに開いた扉に向きなおった。
 
 そこは物置のような部屋だった。埃が中を舞っている・・・。物置の場所としてはあまり適切な場所ではないように思えるが、特に法律で決められているわけでもないので、そんなことを気にする必要はなかった。
 こんなところなら掃除されてもいいんじゃないかと、思ったがそちらも頭に残るほどの疑問には程遠い。
 先頭はフィル。続いてアメリアにエッジ、最後がエリアナだ。
 そこはそれほど広くはないようだ。整頓はそれなりにされているようだが物が多い。よく分からない物だらけだ。
 動きが止まる。
 「これです。」
 その声で一同が集まる。
 そして・・・無言だった。
 静寂だが時の刻みはある。床におかれた木箱から何かが出てきた。
 (刃!)
 それは紅き鞘に入った刃だった。・・・いやただの刃を強制的に肩代わりに奪おうとする借金取りなど普通考えられない。むしろこれが高価で貴重で恐らく特殊な効果を持った剣――彼の持つ剣は例に漏れず高価だが特殊効果は確認されていない―――である方が充分可能性が高い。
 「でこの刃一体何なの?」
 エリアナがただの安い刃と思ってか不思議そうに尋ねる。まあすぐ刃こぼれする安刃と人知を越えた脅威の魔剣の区別が見た目で付くわけではないのだが・・・。
 「これは私の祖父の遺産なのです。」
 フィルが語るように言う。
 「そうか・・・。」
 意味もなくため息混じりに呟くエッジ。本当に意味は全くない。ないったら、ない。
 「じゃあ大切な宝物ってわけね。」 
 目を輝かせているエリアナ。まさか狙っているのか。エッジはその横顔を見つめていた。
 「そう・・・です。」
 この間の意味は分からなかったが気にしないでおいた。
 「今日宿などはすでにご予約なされておりますでしょうか。」
 やたらと丁寧な口調だが、それより話題が突然変わったことに2人は――少なくとも1人は――気にしていた。
 「別に・・・っていうか。」
 「泊まるお金もないよね。」
 細い針を刺されたような感覚に、しばし震え不快な表情を見せるエッジ。
 「よければうちに・・・。」
 口を開いたのはアメリアだった。フィルが言ってもよかったことなのだろうが別にそれは気にならない。
 「でも・・・ここ宿じゃ・・・。」
 そう独り言のようにそれでも相手に届くように呟き終えかけるが、
 「もちろん喜んで。」
 隣からのあまりの変化した表情とその言動により声を静止するが口は閉ざさず、
 「いいのぉ。」
 驚いた声を上げる。
 「いいだろ。」
 自分が言うべきことではないかとも一瞬で思っていたが、他の2人の声を待てず即そう放つ。
 「でもどこで寝るの。」
 先ほどより微妙に落ち着きながらも口調自体はそれほど変えない。
 「さあな、どこでもいい野宿よりはマシだろ。」
 「・・・。」
 納得したのか違うのか、だがそれを追求はせずにただ曖昧な肯定だと勝手に受け取りそのまま向きを変え、
 「じゃあ頼むよ。」
 笑顔を含んだ口元からのその声
 「はい。」
 アメリアは短く頷き、エッジからは見えない反対側のエリアナは表情を変化させているようだった。何やら複雑な表情だ。
 そしてアメリアが視界から消えるとフィルの方に向けて、
 「この辺で名所みてぇなところ知らないか。」
 即座には返答が来ないようなので辺りを見回し、ほんの短い時間を潰す。
 意外にも沈黙は長かった。その間にエッジは何で用も済んだのになぜ、まだここにいるのだろうと2回ほど思い、それを別の思考で消した。
 僅かだと思った時間が長いのは結構きついものだ。だがそれも永遠ではないし、実はそんなに長いわけでもない。
 「確か・・・古い遺跡が・・・。」
 遺跡・・・色んな種類があるが、すべてが観光名所となり得るわけではなく、危険なものもある。
 もしかしたらそれは必死でそんなところを探していたわけではなく、それを言うのをためらっていたのではないか。
 エッジはそう思ったし、この考えは大事ではないかとも思ったが、どうせこれを聞けば、そんなことを理由にそこに行くのを止めることは出来ないだろう。
 (こいつがいるからな。)
 特に前例があったわけではないが、多分どうしても行きたがる。いや多分などの曖昧な表現ではなく、行きたがるだろう。そう決め付けた。
 (せめて油断だけはしないようにしないとな。)
 そして彼らが物置を出たのはエッジが予想通りの言葉を聞いてすぐだった。
 (まあ久しぶりの落ち着いた1日なんだから観光ってのもいいかな。)
 (いや別に落ち着いてないよな今日って。)

 空は明るく、陰りは全くない。快晴とまではいかなかったが、それに近いものではあった
    ◇◆◇◆

 「ううっ・・・。」
 苦しげな声が光の中より起こる。けしてその場より光が生まれているわけでもないのに、窓から射す火陽の光はまるでこの女性より生まれたのではないかと錯覚する。
 「う・・・ここは。」
 「わはははは、よーやく気付いたようだな。」
 頭に響く声がその空間に広がる。不快な空気の振動はけして声の大きさだけではないようだ。
 「貴様の身柄はこのニキータ・ガトリンぐぇ・・・。」
 そして声は自然の終末を見せる前に闇の如き刃の鞘の手により終わらされた。
 何となく寝ている女性の方を眺めてみる。少々脅えているようだ、少し震えている。
 「あんたは街道で倒れていた。」
 違う方向からの声にそちらを向くと、淡々と話し続ける大男がいる。
 「私達はそれをここまで運んだ。」
 口調は表情1つ変えずに・・・、
 「そうでしたの・・・。」
 脅えは少しながら低下したようだ。
 「聞きたいことがある。まず何と呼べばいい。」
 全く表情を変えないのは失礼なんじゃないか、と思い、意味はないだろうと思いながらも、自分の表情を安堵と喜びを混ぜたようなものに出来るだけ近くしようと努めた。
 「失礼だったな、私はグラシャラボラス、ラッシーでいい。・・・ここで倒れているのは気にしないでくれ。」
 「・・・わたしはクレア。」
 クレア――偽名かも知れないが、そうは思えなかった――はベッドから辺りを見回すように首を動かす。これにつられてか自分の座っている、比較的貧相な椅子から視界を回転させる。
 この部屋は比較的、整頓された白をイメージさせる清潔だが狭く部屋の入り口である木の扉から木の床を斜めに最も遠い場所にある、窓際の一般的なベッドがかなりの割合を占める。また花なども室内においてあるが客がそれに水をやる義務などあるのだろうか。
 客・・・そうここは小さな村の小さな安宿の1つである。
 「銀鎧の男・・・あんたはそう言ったな。」
 相変わらず馴れ馴れしく失礼で無愛想で顔が怖いと思ったが、こういう人種には1種の抵抗があるので、せめて自分だけはと微笑んでみた。
 「銀の鎧を着る男など、この大陸にそうそういるものではないだろう。」
 顔は無愛想と言うより無表情だ。だがそれでも声には微かな変化はないわけではない。
 「ええ・・・わたしが乗合馬車で公都を目指していたとき」
 恐怖・・・彼女は恐怖に支配されかけている。・・・まるで幽霊(テラー)に出会ったときのように。
 「野盗が・・・馬車を・・・それを銀鎧の・・・。」
 途切れ途切れに紡がれる言葉だが、何となく分かったような気もする。
 「野盗は・・・わたし達も・・・あの銀鎧。」
 声は震えていた。確かに震えていた。
 「分かった後で聞こう。」
 少し温かみのある声を器用に投げかけた後、
 「出直すぞ。」
 そう言って後手に何かを引きずりながら部屋を出た。
 午後2時半・・・本当に2時半か怪しくなってきたぞ

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23064黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:4章:午後4時ドラマ・スライム 2002/11/1 20:58:06
記事番号23049へのコメント

 (無用心なところだ。)
 けして声には出さない。声は運命に影響しうる。
 (やはり、あれは。)
 (どうする。)
 (奪うか。)
 そう、それでいい。そう思った。
 (だが・・・あれがそんなに重要なものなのか?)
 自問するも答えは思いつかない。
 (まあ一旦出直すか。)
 赤い髪が風に揺れた。

◇◆◇◆

 「これか・・・。」
 広大なド田舎の大地に広がる小麦畑ではない広大な平原。
 3時を少し過ぎ、輝きが薄れつつある火陽玉――本島では太陽と呼ぶ地域もあるらしいが――は不思議と調和する温かな風とともに優しい熱気を吹き付ける。
 穏やかな午後、彼らはここにいた。
 そこは原始の静寂と太古に消えた文明の虚像の遺こる――遺跡――。
 それは巨大だった。大平原に生い茂る草に護られ眠る石造の廃墟・・・。
 しかしまだ失われし過去の繁栄の一部を頑なに守り続けているが如く原型をとどめている。
 「でかいな。」
 風にジャケットを軽くあおられながら、内部から驚きの感情を漏らすエッジ。
 「燃えるわね。」
 「それはよく分からんが・・・。」
 表情が露になるがそれは驚きではなくまるで呆れたような感じだった。
 「とにかく、入りましょ。」
 背の高い緑を掻き分け残骸の中の1つの空洞を目指した。」
 
 そこは虚ろだった。そして冷たい石壁は天上からの火陽射しを拒絶し、そこから漏れる僅かな光も凍てつく闇の中ではただ薄れてゆく。
 そこは暗闇だった。僅かな明かりはあるがそれを頼りにすることは無謀すぎる。
 「さっさっ寒いぞここは。」
 情けない声が狭苦しい廃墟の中に響き渡り、冷たく消え去る。
 「この程度の寒さに負けちゃダメよ。」
 同じ境遇にありながら苦を見せないエリアナ。
 「何でお前は平気なんだ。」
 声は震えている。夏の暑さと比べるとそれは凄まじい差だが、零度には遠く達していない。
 「決まってるじゃない、純情な乙女の(はあと)は、お宝の前に冷めることはないのよ。」
 自信に満ちた声は逆境にけして屈してない。というかそれに気付いてすらない。
 「・・・それは違うと思うぞ。」
 そう言った後、ふと思って言葉を紡ぎだす。
 「おい、お宝っていうのは、どーゆーことだ!」
 「遺跡と言えばお宝に決まってるじゃない。」
 自信に・・・いや確信しているような口調だった。
 「・・・。」
 反論する言葉もあったが、それをする気も萎えた。
 ちなみに明かりはなぜか携帯ランプをエリアナが持っていたので助かった。助かるもなにも明かりがなければなかには入らなかっただろう。その方が真に助かったという方だろう。つまりそのランプ救われてはないのだ。
 
 「本気で宝があると思ってるのか。」
 突然思い出したかのように長い間の後のことだった。
 「うん。」
 短い返事からは彼ならば様々な感情が読み取れる。だが――多少の恐怖や緊張はあれど、自分の発言に全くの疑いを持っていない。それは1つに収束し、確信となる。
 とりあえずその思考は捨てることにしたが、それでも頭の中に纏わりつこうとする。
 
 遺跡に入ってそれほどの時間は経ってない。事実この遺跡は暗くそれなりに広いが内部の複雑さはそうでもない。
遺跡内はただ適当に歩いていると言うか、彼女の後を付いて行っているだけだ。それについては気にも止めなかった。
 (好きに歩かせとけばいい。)
 彼は大体の道を把握することに努めているのだが、暗闇ではそう簡単に出来ることではない。いや不可能の方に大きく反れている。
 「で?」
 彼女が角を曲がったので何となくそう言ってみる。
 「この天才超能力美少女のエリちゃん、ついにお宝の在処を感知したわ。」
 「それは何回目かなぁ。」
 まあ毎回セリフは微妙に変わっているのだが・・・。
 「今度のはホントよ、ホント。」
 ばたばたと手を振りながら言い、そしてある方向を指差す。
 その方向を暗闇より探すと、突然そばにいた少女が消えているのに気が付いた。
 そして明かりも遠くへ移動している。エッジはその方向に向かった。

 光は思った通り、そして最もいいものだった。エリアナがそこにいた。
 そしてそこは光に満ちていた。ランプの暗い光ではない。白く輝く天からの光だった。
 そこは恐らく地下なのだろう。かなり広い円形状の平らなホールだ。余計な物がなく、片付いているというよりむしろ寂しい。
 1つだけ目に付いたのは、彼らが来た通路から正面に位置する石で出来た大柄な戦士の像である。
 (何か不自然だ。)
 その像を見て感じたことだった。それほど重要と思えないが何かが足りないような・・・。
 (武器!)
 「ねえねえ、この石像の人、刃持ってないね。」
 遠目から見てもそれは明らかだった。右手は空を握っているようだ。
 (まさか・・・在りえんよな。)
 その考えは我ながらおかしすぎると思ったので捨てることにした。
 「分かったわ。あそこにフィルさんの持ってた刃を差し込むと・・・。」
 同じだった。――自分の考えと・・・。それを口に出すか出さないかの違いだったが。
 (だがあの刃は金属製、この像は石で出来てる。)
 「とりあえず帰りましょ。」
 つまり帰ってあの刃を借りようとか思っているのだろう。
 「でも道覚えられなかったぞ。」
 謝るような感情を含みながらも、主体的には強気な口調で言う。
 「大丈夫よ。」
 完全な自信だ。どうしたらこうなれるのだろうか。
 「大丈夫って・・・。」
 「ほらここ上登れるでしょ。」
 「・・・・・・・ホントだ。」
 2人はホールから上に続く、梯子を登った。

 「ふああ高いな。」
 疲れた声であくびする。
 「ふう降りれそうね。」
 高い空と辺りを覆う自然を眺めている。
 「なあ・・・。」
 訊ねるような口調、いや訊ねているのだろう。
 「何?」
 それにしばし、間をおいて
 「ここから一気にあそこまで行けるんだな。」
 「そうね。」
 軽く答えて、そのまま下に降りる。
 「さて戻るか。」
 そう時間が潰せてないなあ思いながら、村へと帰った。

◇◆◇◆

 「遅かったか・・・。」
 木製の床にシミ・・・赤い。
 ――血だ――
 そしてシミの中心に倒れる異形・・・。それは2つある。
 だが明らかに元は人間だったのだろう。
 (まさか・・・やつか!)
 さっと軽い恐怖感が横切った。
 赤い髪を残してそこを去った。
 そこにあるものが、消えていることに気付いたからだ。
 (まさか私がいながら・・・。)
 (降格か・・・。)
 (それで済めばいいが・・・。)
 胸中で呟きつつ急いだ。
 (待てば彼らに会えるのではないか。)
 だが待てるはずもない。そして彼は頼りになりそうだが、一番は自分だ。そう確信している。
 この村で1人だけ急いでいた。
 それを不自然だと思ったが、気にはしなかった。
  
    ◇◆◇◆

 その少し前だった。
 「――を渡してもらいましょうか。」
 「貴様・・・何者だ。」
 強気に反抗するも・・・。
 その瞳は心を激しく凍てつかせる。
 「・・・やめろ見逃してくれ。」
 その声は対峙する男にはすでに分かっていたかのようだった。いやそれを望んでいたのかも知れない。
 その瞳はすべてを語り・・・そして奪う。ただの錯覚かも知れない。いや錯覚だろう。
 「すみません・・・貴方の魂まで冒涜することはないので御安心を。」
 その虚ろな瞳は冷たい笑みを発した。
 「やめ・・・ろ・・・。」
 「どうしたの父さん。」
 駆けつけてきた少女はそれを見てしまった。
 凍える眼を虚ろな瞳を――人のものではない。
 だが人間以外のどんな種族がその瞳を持つだろうか。悪魔族の末裔・・・炎魔獣(ドラゴン)や暗黒鬼(デーモン)彼女はどれも見たことはないが、事実違う。そしてそうだと彼女も思った。
 それは冷たい機械的・・・だが狂っている。
 機械的ですらないのかも知れない。まるで幽霊(テラー)で会ったようだと、思った――1度遭遇したことはある――がそれとは違う恐怖・・・そしてそれを超越していた。
 だがどこかで似ている。恐怖とは別の部分で・・・。
 「貴方も邪魔ですねえ。」
 楽しんでいる・・・狂気。それが渦巻いた。だがその瞳だけはただ昏い。
 時間間隔すらも恐怖に埋もれ永遠をさまようが如く辛く苦しい状況で希望など微塵にも感じなかった。
 絶望・・・いや恐怖だけがあった。
 「では終わりにしましょう。」
 その声に彼女は震え上がった。激しい鼓動が止まらない。汗が体中を這い回り、表情がおぞましいものへと変わろうとしている。
 だがそれはそう感じただけに過ぎない。
 そう、真の悪夢はこれから始まるのだ。そしてそれはけして覚めることはない永遠の悪夢の始まりなのだ。
 木の床、壁、天井、そして対峙する男の銀と金。すべてが恐怖だった。
 「行きますよ。」
 そして絶叫へと・・・だがそれは大気にすら見捨てられ声にも音にもならなかった。
 だがまだ始まってないのだ。
 「狂気より生まれし虚ろなる風 そこに在りし見えざる屍 そして潜む真なる恐怖」
 風が纏わりつく・・・冷たい。
 それは風ではなく恐怖の具現体だと瞬時に悟った。
 だが恐怖の声は届かず
 ただ終わった。
 苦しみの果てに・・・
 「これはもらって行きますよ。」
 笑い声が聞こえ視界が薄れていく、金の髪と銀の鎧が窓からの光に反射して眩しい・・・それが最期だった。

    ◇◆◇◆

 「俺様は眠いぞ。」
 「そうなの?」
 火陽玉と光と平原に吹く風はすべての戦士達に一時の休息を与える。
 そんなことを頭の中で思うニキータ。
 「ほう、貴様は先輩に向かってタメ口を聞くのか67−2、虫と一緒に飛んで火に入るの刑だぞ。」
 わけのわからない発言だ。
 「いや・・・僕は君の後輩になったつもりはないし・・・それにそんな変な名前じゃなく・・・。」
 戸惑いながら必死で訴える。
 「だあああーーーーうるさ〜い!」
 その叫びとともに少年が近くの草むらに向かって吹き飛ぶ。
 「何するんだよ。」
 怒りを浮かべながらも完全な怒りは出せずに立ち上がる。彼が突っ込んだ草むらに赤味がかった美しい茶髪が数本、宙を待った。
 「貴様の声が頭にガンガン響くではないか。」
 戻ってきた少年に拳で殴りかかるニキータ。
 「何で殴られるの?」
 微量の涙を浮かべ訴える。
 「255−56よ、人生とは厳しいのだ。」
 「さっき番号変わってるし・・・。」
 その呟きは聞こえなかったようだ。
 「アルフ・・・だったか、あまりあいつと関わるなよ。」
 声は違うところから来た。
 それが背後だと気付いたときはすでに斜めに彼の隣へ向かっていた。
 「ラッシーさん、いたんですか。」
 「ああ。」
 無愛想な男だ・・・そして恐ろしい巨体の持ち主だが、不思議と恐怖は沸かない。
 「おいラッシー先輩を何だと思っている。」
 「えっ・・・この人先輩なんですか。」
 アルフは小さな借金取りを一瞥して少々不思議そうに言った。
 「ああ・・・これが現実だ。」
  無表情で答えるラッシー。
 「そうだそして業績は俺様の方が上だぞ。」
 威張るような声・・・いや実際威張っているのだろう。
 「そうなの?」
 さっきよりさらに不思議そうな声をラッシーに向ける。
 「返済件数はな・・・。」
 悔しいのだろうか・・・まあそうならば、無理もないだろう。
 「この組織では小銭取りの二キータと呼ばれた男だ。」
 「だが返済金額は今週で30グラッドだ。」
なんとなく納得できるような、謎が深まるような・・・。
(まあいいけど・・・。)
 温かい風が喉かな平原を過ぎ去って行った。
 午後4時絶対4時じゃないぞ今。

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23076黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:5章:午後5時半ドラマ・スライム 2002/11/2 09:50:25
記事番号23064へのコメント

 火陽の光も薄まり、吹く風もどこか寂しげだ・・・。
 そして小さな村は寂しくただそこにある。
 「楽しかったわね。」
 嬉しそうな笑みを浮かべている。
 「・・・。」
 笑顔の少女の隣に無言で歩く黒ずくめの男。
 夏なのに暑いジャケットを着ているが、すでに夕刻、それもどうということはない。
 黒い男エッジは疲れた眼で辺りを何となしに見回してみる。
 (・・・んっ。)
 その瞳は何かに注目したようだ。
 (・・・まあいいか。)
 「どうしたの。」
 横の少女の金髪が頬に当たり、そちらを振り向き、すぐ向き直る。
 「いや・・・。」
 彼らの目的地はもう、すぐそこだった。
 「さてと、・・・やっと着いたな。」
 そこは小さな建物――食堂だ。
 少し後の方にいる少女を気にせずにそのまま中に入る。
 「あっ待ってよ。」
 後の声とともに気配が強まる。意味もなく後を振り返り、少女の顔を見て中に入って行く。
 入り口の扉を開ければ食堂である。だが客はいない。明かりも灯っていない。
 「おーい親父いるか〜。」
 声を上げるが返事はない。
 「上じゃないの。」
 少女は素早く駆け出し上へ向かった。
 その少女の表情が変化するのに時間はかからなかった。
 「きゃああああ〜!」
 悲鳴を上げたようだが少々大げさにも取れる。
 「どうしたエリアナ。」
 その声は届かなかったようだ、下で待っていた男エッジもすぐに上へ向かった。
 「これは・・・。」
 そこにはエリアナと2人はいた。だがそれは・・・。
 恐怖・・・それがそこにはあった。その見えない力にひどく震えた2人――すでに死んでいた。
 「まさか・・・あいつ。」
 凍りついたような表情のエッジ。
 「あいつって?」
 意外に気楽そうなエリアナ。
 「・・・昼飯の時の。」
 彼は震えていた。
 「あの男ね。」
 そう言ったエリアナは部屋を見回す。
 「あれっ?・・・これって。」
 それの目の方向には細長い空の木箱――刃が入っていた――
 エッジの言葉すら待たずに駆け出した。
 エッジは死体から目をそらし、
 「ったく。」
 呟いた後、心を落ち着け、
 (どうする。)
 エリアナを追うか、死体を片付けるかだ。
 警備官に知らせるという選択肢は彼にはなかった。
 「悩む必要はねえな。」
 (生きてるやつからだ。)
 エリアナを追った。

    ◇◆◇◆

 暗い閉鎖空間・・・その扉は大きな音を立てて開いた・・・。扉を守護する石の戦士は、紅き剣を手に持ち・・・主を奥へと誘う。
 「我が主の求めるものはこんなものとは。」
 それは男の虚ろなる眼差しにけして恐怖することなく、ただ眠る。
 「仕方がないですね。」
 それを拾い上げる。
 それは紅く、妖しく輝いた。
 「おやっ・・・。」
 何かを察知すると、その瞳は冷気を帯び始める。
 そして見えた人影。
 「貴様の始末に来た。」
 相手の声はこれで終わった。
 「光栄です。」
 男の返事も短かった。
 渦巻く冷気が場を包みつつも荒れ狂う。
 男はゆっくり歩む、風もない中で、その黄金の髪は嵐のように揺れる。銀の鎧は輝き失わない。
 「まさかついに、≪塔≫の暗殺者ですか。」
 それは微かな笑みだった。
 「それが最期の言葉か。」
 人影は落ち着いていた。その赤髪が相手の金髪のように吹き荒れる錯覚を感じ、すぐにかき消した。
 「いえ・・・まだ貴方のお名前をお聞きしていません。」
 虚ろな瞳は視線を合わせようとしている。
 その視線を避けながら、
 「6シリオン・・・だ。」
 そして沈黙が生れた。
 長い対峙・・・実はそれほどでもないらしいが、彼らには永遠にも思える。
 両者の位置は狭まり、赤髪の男の殺し屋の眼と、金髪の男の死者の眼が合わさった。
 (くっ!)
 声には出さなかったものの、シリオンと名乗った男のその表情は恐怖を受けていた。
 「貴方では勝てません。」
 そう言いながら近寄る金髪の男。
 (こっ・・・こいつは何者だ?)
 声には出なかった。
 「刺客はこれで12人目です。・・・貴方はその中で一番強い。」
 そこで言葉を切るが身を駆ける恐怖という名の冷気は強烈なものへと変わっていく。
 シリオンは必死で心を落ち着けようとした。だがそれは恐怖を増やすのみ・・・。だが必死で抗う。
 「気丈ですねえ。」
 明らかにこちらの苦しむ様を楽しんでいる。瞳だけはただ虚ろだったが・・・。
 彼の白霧(デス・フォッグ)のペンダントも情けなく震えている。
 「そろそろ終わりにしましょうか・・・。」
 「きっ貴様・・・何者だ。」
 声を振り絞る。
 「それより貴方に・・・最期に訊ねたいことがありまして・・・。」
 シリオンは返答を断ろうと必死で声を紡ぐ・・・。
 「エッジ・・・私はそう呼ばれる方を探しているのですが・・・。」
 冷気がなお吹き付ける。
 その名も顔も知っていた。
 「ああ・・・妙な意地は張らなくていいんですよ。」
 その声は冷たくも優しさがあった。
 (むしろ吐き気がする。)
 そう思うも声には出せそうもない。
 「・・・私の問いにも・・・答えろ。」
 必死の声・・・。
 「私は貴方の知っている通りの者です。」
 その声は温もりがあった。その声に一瞬体を解放されるも・・・すぐにまた凍り付く。
 「さて答えていただけるでしょうか。」
 笑いは微かながら大きく聞こえた。
 「貴様が・・・奪った剣・・の・・・持ち主の・・・食堂・・・。」
 途切れながらもはっきりと聞き取れる声だった。
 「まさかあそこにいらっしゃりましたとはね。」
 次の言葉が来るまでは一瞬だった。だが彼にはどれほどの時間だったろうか。
 「終わりです。」
 その頭髪よりなお紅き・・・血が床を濡らす。
 「・・・クレア・・・頼んだぞ。」
 苦しげな声だった。恐怖に歪んでいた。
 「愚かな・・・彼女もすで死にましたよ。」
 男はその死体と思えるものをしばらく見つめ・・・
・・・そして
 「ぐっ・・・!」
 苦しげな声を上げた。
 銀にきらめく刃が首に刺さっていた。
 「まさか生きてらしたとは・・・。」
 冷たい手で軽く刃をどける。
 そして
 「ただ流れる時 すべてを癒すがため。」
 傷が急速に塞がる。魔法でもこの速さはなかなか出来るものではない。
 そして双眸をシリオンに向けようと首を動かす。
 シリオンは動揺を覚えたが、即座に、
 「恐怖だけで私を殺せるとは思わないでくれ。」
 自信に満ちたような声を上げる。
 「虚勢は惨めですよ。」
 凍れる声に逆に自信を奪われる。
 だがシリオンはその震えに耐えて拳を突き出す。
 「ほう・・・。」
 それは軽く受けとめられた。素早く鋭い拳がだ・・・。だがそれは明らかに途中から勢いを失っていた。
 視線を受けている・・・凍り付きそうだ。だがそれを抑える。
 「少々抵抗力は持っているようですね。」
 「これでも暗殺訓練は受けている。」
 そのまま返すように冷たい言葉だったが、明らかに遠く及ばない。闇に生きるものすら遥かに超越した、この死神は明らかに別格だ。
 その言葉とともに受け止められた拳を解き、一度退いてから、また飛び出す。そして死角を取り、刃で斬りかかる。体全体を銀の鎧で覆っているため攻撃は頭部・・・または首である。
 その刃は火花とともに動きを止められる。・・・腕で止められた。
 「くっ・・・。」
 刃とともに身を退き再び死角へ回る。相手も動きを見つめながら反応を待っている。
 火花が再び起こる。シリオンはそのまま退こうとした・・・が、恐怖が襲い掛かり動きが止まる・・・。
・・・手からこぼれる刃・・・。その音と同時に拳を受け止められる。
両者の位置が急接近した。その虚ろなる眼から放たれる恐怖が再びシリオンを締め付ける。
「そこまでよ!」
声は違うところから響いた。
そこにはいた。
金の揺れる髪に愛らしい瞳・・・そうエリアナが・・・。

◇◆◇◆

 (どこ行った。)
 夕暮れは近い・・・寂しげな村の中を疾走する。狭い村だが、走り回るには少々広い。
 エッジは外に飛び出したエリアナを必死で追った。
 (ったく・・・あいつに消えられたら、脅迫して身代金ふんだくることも出来ねえしな・・・。)
 (って何言ってんだよ俺。)
 頭の中では変なことを考えているようだが・・・。
 だがすぐに頭を切り替え、走り出す。
 (多分あの遺跡だろ。)
 そう思いながら目的地を目指す。

 しばらく走っていると突然、衝撃が体を襲う、視界が揺らぎ、倒れそうになるのを堪えて、
 「てめえいきなり何さらんすんじゃボケ!」
 声はエッジのものではなかった。
 頭が痛くなるような大声の主に視線を向ける。
 柄の悪そうな男達が神官風の男――20代前半くらい――に絡んでいる。その男達の1人にぶつかったようだ。・・・よく見ると昼頃に殴り合った男達も数人混じっている。
 ただその男の1人を無言で睨みつける。
 「うっ・・・。」
 その形相に脅えてかその男が後退りを始める。
 何となくその顔を見て小さく笑ってみると脅えに怒りが混じって微妙な表情になる。
 「何してんだよ!」
 別の男が声を上げる。
 「やばいっすよ、あいつ・・。」
 情けない声の男は昼にぶちのめしたやつだ。顔面がぐちゃぐちゃになっているが大丈夫なのか・・・。
 「全員あいつをぶち殺せ〜。」
 声とともに突撃してくる男達。
 エッジは涼しい顔に笑みをうかべてながら片っ端から剣の鞘で殴り倒している。
 「くっ・・・。」
 倒された男が数人起き上がろうとしている。
 「いい根性してんな・・・。」
 面白そうにそれを眺め、左手で懐から何かを取り出す。
 「これが何か分かるか?」
 その左手には青い金属製の≪杖≫があった。
 「まさか・・・。」
 全員の顔に陰りが見える・・・そして脅えの色が強くなり。
 「ぎゃあああ魔道士だ〜〜!」
 逃げ出す・・・情けない。
 「ったくこんなド田舎じゃあ魔道士ってのはよっぽど恐れられてんだな。」
 そう呟いて絡まれていた神官風の男に向き直る。
 「助かりました。」
 声は神官の方が早かった・・・。エッジは出かけていた言葉を殺し、間をおいて微笑んでいる神官に向けて、
 「あんた神官だろ・・・エレベメンスト教か?」
 最もメジャーな信仰である。
 神官はニッコリとした笑みを浮かべて
 「ハズレです。残念ですねえ。」
 エッジはすぐさまその神官衣を眺め、
 「ううん、スィーフィード教でもねえし、精霊信仰でもねえな・・・まさか天道信仰な分けねえよな。」
 そして言葉を切って・・・少しの間の後思い切ったような感じで、
 「まっどうでもいいから金くれや。」
 少し戸惑いながらも神官はエッジに近寄り、
 「これで・・・。」
 手に数枚の硬貨を握らせる。グラッド札の普及で姿を消しつつある硬貨だが、価値は今でも当時のままなので、別に不満はない。
 それを恐る恐る観察すると・・・
 (おおーーー金貨だぁ〜)
 金貨は1枚で約100グラッドの価値を持つ・・・。それが5枚あるのでもうしばらくは食糧難に陥ることは避けられるだろう。
 「おお我が神よ・・・。」
 いきなり態度を一変する。
 「いえ・・・当然のことですから。」
 微笑みながら答える。
 「ところであんた名前は・・・あっ俺はエッジ・・・。」
 そういえば聞いてなかったと思いながら金貨を握り締めつつ答えを待つ。
 「謎の神官(プリ―スト)です。」
 ・・・。
 「はあぁ?」
 思わずそう口に出してしまう。
 「それでは近い内にお会いしましょう。」
 謎の神官は去っていった。そしてしばらくそちらを眺めていると急に道の途中で消え去った。
 「何だったのだ・・・。」
 金貨を握り・・・本物だと確かめながらそう呟いた。

    ◇◆◇◆

 「入るぞ。」
 冷たい声だった。だがその奥底まではけして凍てついてはなかった。
 返事はない。
 扉のノブを回す。眼前の光景が変化し、部屋の中が映る。
 「逃げた・・・というべきか。」
 ベッドは空になっており、風が吹いている。
 「まあいい。」
 その大男は無表情で帰って行った。
 
 夕暮れに近い頃この小さな食堂は田舎なりには賑わいを見せつつある。
 「えっ・・・いないって。」
 驚きと心配の眼差しで大男の方を眺める少年アルフ。
 「ったくグラッド札の1枚の礼すらもなく帰っていくとは・・・。」
 ぶつぶつ言っている小さな男ニキータはとりあえず無視して・・・
 「まあ1人で歩けるようだ、いいんじゃないか。」
 大男ラッシーは完全にアルフの方に顔を向けて言う。
 「でも・・・。」
 驚きはもう消えたが、逆に心配になって来た様だ・・・。
 「彼女の自由だ・・・。」
 ラッシーはそれだけ言って口を閉ざし違う方を向く。
 アルフは腑に落ちないようだが同じく黙る。
 「がははははあの強烈外道女め今度あったら雨の中、路上で貯金箱持って棒立ちの刑に処してくれるわ〜。」
 その声が店内に響き渡り、
 「他のお客様に迷惑です。」
 即最寄のウェイトレスに注意される。
 「ほうこの俺様にたて突くか・・・。」
 自信たっぷりな声を放つニキータ。
 (ゴンッ!)
 「うげっ・・・。」
 突然倒れこむ。
 (バタン!)
 椅子から倒れ込む・・・。
 「家の馬鹿が迷惑をかけたようだ。」
 「・・・。」
 軽く言い捨てるラッシーに殴られたニキータ、それに呆然とするウェイトレスに静まり返る店内、すべてがアルフの心に襲いかかった。
 午後5時半・・・気まずい雰囲気の中、料理が来るのをただ待つのみ
 

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23077黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:6章:午後6時半ドラマ・スライム 2002/11/2 09:59:04
記事番号23064へのコメント

 黄昏が天を覆い、火陽が焔の中に消えようとしている。漆黒の闇が世界の影から這い出し、闇夜に妖しく輝く火月が姿を見せるのもそう遠くなりそうにない。
 精霊信仰では火陽玉とともに精霊の王であり神、天道信仰では邪悪なる魔と呼ばれた夜の明かりである。時にその光は炎のものとなるときもあるが、平時は黄金色の光をもたらす。その神秘的な光を崇めるのも当然のことだろう。
 平原には短く生えた草が夕闇の風に揺れ、寂しげなメロディを奏で出す。それは辺りに止めどなく広がり、夏の夕刻の何気ない寂しさ切なさを大陸中、世界中に伝えているのだろう。
 空は紅く、そして暗い・・・。この大陸、この世界の夏では6時頃にはすでに無明の闇が辺りの焔を征し始め、火月が出始めている。今日はまだ出てないことから昼が少々長い日なのだろう。

 乱れてもなお規則的な呼吸の音と全身に流れるすでに冷めた汗が彼の感じるすべてだった。その2つが次第に薄れていくようになると他の感覚が明白になって来る。
 彼にはそれが見えるようになった。さっきからずっと視界に入っていたが、それに気付き、感じることは出来なかった。
巨大な廃墟――どうやら1つの建物になっているらしい――遺跡・・・この地に遺こる数少ない謎の遺産である。
 風に揺れた漆黒の髪と黒のジャケットがそれぞれ違う小さな音を響かす。
 天を見上げ、そのまま視線を落とし、再び向き直るとその双眸が写す世界へとゆっくりと歩む・・・。
 
 草の背が高くなる。それを掻き分けながら進めば、それが少しずつ巨大なものへと変わっていく。
 下を見れば緑が黒となりそして闇に閉ざされている。
 ふと視線を上に向けてみれば、さっきより空の闇が勢力を増しているように思えた。
 こんな村外れの・・・しかも得体の知れない遺跡の付近である。化け物――この世界に化け物などいるはずがない。そんな存在も広い大陸内にはいるが、それはただの凶暴な精霊獣である。――もいるかも知れない。
 ふとそんな予感に見を軽く震わせ、辺りを見回す。そんな気配は全くないがその感情はまだ断ち切れずにいる。
 それでも確実にそれは近づいている。そして眼前にはそれから放たれる夜よりもなお暗き闇が恐怖心をさらにあおる。
 (っ・・。)
 気合で恐怖を振り払う。それは結構効いたようだ。
 (伊達に訓練受けてるわけじゃねえしな。)
 胸中で余裕で呟き、再び前方を見て今度は闇の持つ恐怖を弾く。
 
 それは巨大だった。夕刻の闇に映える謎めいた石の建造物はついさっききた頃より遥かに不気味だ。
 (おいおい。)
 少々焦りと後悔を覚えながらも、けして恐怖だけは受け入れないように努めた。
 もう空腹に近いはずだが、それはまだ感じることはなかった。
 エッジは建物の屋根の部分に登って一気に最深部らしき場所に降りるため石壁を登り始めた。
 (結構きついな。)
 息を荒々しく吐きながら石壁の微妙に出っ張った部分に足をかけ、登っていく。
 こんなことはほとんどしたことはない。そんなに屋根の部分まで、高さはない、せいぜい2〜3メートルだろう。だが疲れ切った上に、空腹を感じてきているので充分辛い。
 (あいつ・・・ここ登ったのか。)
 ここは違ったのかと・・・もしかしたらすでにこんな村から出てしまっているのでは、などと思いながら石壁を登り終えた。
 そう時間はかからなかった。だが彼には少しでも長く感じられたかも知れない。
 エッジは隠されたように――実際そうなのだろう――欠けた石の天井から吹き出しているが如く強烈に強い闇を感じ、しばらく見つめた後、思い切ったようにそこに足を踏み入れた。
 (だが、俺があいつに勝てるか。)
 自問したが、答えはなかった。
 
    ◇◆◇◆

 「ほう・・・面白いですねえ。」
 不気味に微笑む男――銀の鎧を着ている――とそれと対峙する少女。睨み合ってから時間ごとに銀鎧の男の表情に生気が満ちてくる。最初は機械的な表情だったが・・・。だがその双眸は明らかに虚ろで冷たい。
 「まさか・・・効かないとは。」
 その声からは余裕が充分に取れる。恐ろしいくらいに・・・。
 だが向かい合った少女はそんなものは気にしていない。いや気付いてないのか・・・。
 「あなたが悪者なのね。」
 向かい合った男に言い放ち、その傍らで倒れている別の男の方に視線を一瞬向けて
 「大丈夫?」
 少し屈んで、優しく聞く。
 「ああ・・・。」
 これで言葉は終わったが、他に言いたいことはたくさんあるだろう。
 「許さないわよ。」
 倒れている男が昼間の襲撃者だと分かっているはだが、それを気にする様子もない。大富豪の家庭に生まれていながら、何と不思議なことだろう・・・。自分の猛反対で学校を有名な私立から寂れた裏通りの公立に変えさせたこともある。
 「許さない・・・面白いですねえ。」
 笑いは冷たい・・・。そしてその眼は凄まじい冷気を放つ・・・。
 「何よ・・・突っ立っているだけなら、こっちから行くわよ。」
 強気なセリフ・・・だが何か強大な力に抗おうとしているような、必死で自分を優位に立てようとしていろうような、そんなセリフだった。
 「ほう強いですねえ。」
 笑みを浮かべてはいるが、本当に心から笑っているとは思えなかった。
 (この人・・・脅えてる。)
 そう感じた・・・。
 (いえ・・・怖がっている。)
 冷たい視線から放たれる強制的な力に抗いながら強く呟いた。
 (わたし・・・じゃない。)
 かぶりを振って何とか襲い来る力――恐怖をやり過ごし、
 「何が怖いの・・・何が・・・。」
 それは小さく悲しい・・・そしてやがて絶叫に――
 「怖い・・・私が怖がっている?馬鹿な。」
 嘲笑うが、確かに表情には焦りが・・・そして何より――恐怖が
 「私は何も怖くない、この力がある。誰にも負けない・・・。私の前にすべてが崩れていく。そう何も怖くない。」
 必死で否定しようとする。だがその度に焦りと恐怖が強さを増して・・・、
 「やめろ・・・私は・・・殺す・・・全部・・・殺す・・・ぎゃあああああ。」
 発狂し・・・。
 「怖いものなどないんだ。存在しない。」
 自らを必死で抑えようとする。
 「そう何も・・・怖くないんだよ。」
 急に落ち着く・・・、
 「そう何も怖くない。」
 声は異様に落ち着いていた。息は荒くかなり汗をかいていたが、急にそれが感じられなくなり、
 「さあ終わらせよう。」
 恐怖が再び吹き出した。さっきよりも冷たく強く・・・。
 「えっ・・・。」
 一瞬の戸惑いの後は、声も出せないような圧迫感だった。自分が脅えている。いや恐怖していると分かった。
 「うっ・・・。」
 体の自由が利かない、そして心までも侵されようとしている。
 抗った。必死で抗った・・・がそれごとに恐怖が強まる。
 「や・・・め・・・て。」
 苦しそうにうめくが、それもただ多くの恐怖を受けるだけだけだった。
 「愚かですねえ。」
 銀鎧の男はさっきまでの焦りは消え去っている。つい前のあの叫びが嘘のように・・・なかったかのようだ。
 「んっ、そういえば、貴方・・・もしかしてクリークさんのご息女とか・・・。」
 「何で知ってるのよ。」
 声は恐怖を突き破って男の耳に届いた。
 「いえ・・・もしかしたらと・・・。」
 自信がないように言ったが優位はあくまでも保っていた。
 「ほう・・・これで私は依頼人に不幸を届けることになります。まあどうでもいいんですが・・・。」
 どうやら人を殺すことに何の抵抗もないようだ、もうすでに分かっていたが、それは確信にさらなる恐怖の対象に変わっていく。
 「っ・・・。」
 声は出そうもない。何か罵りか自分を優位に立てることを言いたかったのだが・・・。
 「さて・・・。」
 笑みは強くなる。不気味でそして冷たく本当に凍てつきそうだ。それがただの錯覚ではなく、銀鎧の男の何か得体の知れない力だということは何となく分かった。
 「終わりにしましょうか。」
 またこちらを殺すのをためらっている、またはもったいぶっているということも分かった。恐らく後者だろう。
 「狂気より生まれし・・・」
 詠唱が響いた。冷たい、印象はそれだけだった。
 「ブラストォ〜!!」
 一瞬光が起こった。・・・。
 「ぎゃあああ。」
 声を上げたのは銀鎧の男だった。
 「ふううまく言ったな。」
 暗闇から人影が見える。それはやがて少女の知った姿へと変わっていく。
 「エリアナ無事だったか。」
 その優しい声――普段はそうは思わなかったが――恐怖をかき消した。
 「エッジ・・・。」
 エッジはエリアナの目に感涙のようなものの兆しを感じた。
 「・・・何でこんなにタイミングいいの?」
 それは勘違いだったようだ。
 「いや・・・実は・・・。」
 タイミングを図っていたんだ。・・・そう小さく呟く。
 「馬鹿・・・。」
 「いやお前に馬鹿と言われる筋合いはないし、それにこんなことしてるヒマもないぞ。」
 冷静に言って、剣を取り出し、
 「誰だお前。」
 強烈な魔法を受けて倒れている銀鎧の男にそれを向ける。
 だが一瞬目が合ってしまった。
 「っ・・・。」
 恐怖が彼に襲いかかる。
 「って、んなもん効くかよ。」
 余裕でそれを振り払う。
 「面白い・・・私の術を破るものがいますとはねえ。」
 まだ余裕があった。
 「まあ、てめえが本気を出さない限りはな・・・。」
 こちらも余裕だったが、むしろ倒れている銀鎧の男の方がそれが強そうだった。
 「俺はてめえを殺せないし尋問すらも出来ない・・・どちらかをしようとすれば俺が逆に殺されるだろうな。」
 諦め・・・少し違ったが・・・。
 「なあ・・・霊術士さんよ。」
 「気付いてましたか。」
 霊術士――厳しい修行を積んで精霊獣のように霊術を身に付けた人種。主に精霊信仰を狂信的に行う、結界の森のシャーマン部族多い。だが育ちの環境や境遇、または驚愕的な体験などでそれが備わる場合もある。
 基本的に自然の力を借りるものだが、情報や精神、時間や空間を操るものも存在する。
 これは師であるブレイド教師に教わったことだ。
 そしてこの銀鎧の男は感情――恐怖を操る霊術士だろう。
 「当たり前だ。」
 そう言い放って歩みを進め、もう1人の男に近寄った。
 「あんたは気付いてたのか。」
 倒れている赤髪の男はうめくように、
 「君と・・馴れ合う理由など・・ない。」
 外傷はなかったが、精神はズタズタになっているらしい。
 「さすが≪霧の塔」の暗殺者だけあるな。」
 そう呟いて、≪杖≫を取り出し、
 「まどろみの風よ」
 優しい呪文詠唱
 「スリーピング。」
 男は眠りについた。
 その瞬間後でただ見ていた少女が、氷が溶けたように、
 「ねえ、今のもしかして魔法?エッジって魔法使いだったの?」
 あまりにも騒がしい声、しかし
 (やっぱりこっちの方がいいかな。)
 胸中で呟いた言葉を切って
 「ああ・・・実はな。」
 小さく笑みを浮かべて、
 「帰るぞ、腹減ったし、」
 「でもこの2人は?」
 心配そうに言ってくると
 「両方、敵だ。殺し合ってくれるのは祈るだけだ。」
 冗談のつもりで言ったが、少女は嬉しそうな楽しそうな、それでいて不気味とも思える笑みを浮かべていた。
 「後、これ高く売れそうだな・・・もらっていくぞ。」
 足元から小型の額に紅い宝石が埋め込まれた水晶のようなもので出来た女神像――恐らくこの遺跡に眠っていた宝なのだろう――を拾い上げた。
 「ホントに拾って大丈夫それ?」
 エリアナの声は無視した。

◇◆◇◆

 「がはははあの黒い悪魔め今こそ、この俺様が捕まえてくれるわ〜。」
 その声はこの場では常に響くやや規則的気味な騒音を打ち破り、そこにいる人達にうるさく響く。」
 「でもキース・ヴィレッジって田舎だよ。そんなところにエッジがいるとは・・・。」
 そう溜息とともに呟く少年アルフ。
 「まあ少しでも先に進むことだ。」
 その声は落ち着いていた。大男ラッシーのものだ。
 「がはははあいつめ、ガスバーナー――そんなものはこの大陸には存在しない――で丸焼きの刑だぁ〜!」
 午後6時半・・・急行馬車で疾駆する。目的地に着くのは後ほんの1時間ほどだ。

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23078黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグドラマ・スライム 2002/11/2 10:00:36
記事番号23077へのコメント

 「殺せない?・・・私を殺す方法くらい、いくらでもあったでしょう・・・。情けですか。それとも・・・。」
 薄暗い中、立ち上がり・・・。
 「貴方達はなぜ私達の邪魔をするのですか。・・・仲間とも呼べるはずの関係ですのに。」
 それは倒れている男に向けたものであるが独り言のようでもあった。
 「・・・。」
 男は答えない。
 「貴方をここで始末することも出来ます。」
 その声は冷たかったが男はそれを感じてはいないようだった。
 「1つは成功しましたが1つ失敗してしまいました。」
 それは明らかに独り言のようであったが、男へ向けていた。
 「彼は強い・・・ただ力だけではないようです。よかったら手を組みません。」
 そしてしばらく見つめ、
「やはり・・・無理ですかねえ。」
そして去って行った。
 「全く私も甘いですねえ。」
 言葉は虚空に消えた。

◇◆◇◆

 あれからどれだけ経っただろうか。これは推測だがもう夜は過ぎているだろう。
 「ったく何でこんなところに・・・。」
 帰ってくる言葉は少し離れたところだった。
 「あんたがうまく死体隠さないからでしょ。」
 向かいの鉄格子の向こうから聞こえる声
 そう彼らは殺人の容疑に問われているのだ。
 「ったくあのクソじじいめ容赦なく通報しやがって!」
 先ほどの言葉は無視した。
 (ガチャン!)
 その時だった。
 扉が開いた。
 「出てもいいそうだ。」
 声がした。
 「はあ?」
 「上がそう言ったんだ。」
 エッジはそう話しかけて来る中年の自警官――こんな田舎には国立の警備官などはいない――をしばらく見つめ、遠慮しながら牢の外へ出た。
 「よく分からんがまあいいか。」

 ちょうど馬車が来る頃だった。
 さっきまでの暗い牢内と違って明るく、心地がいい。
 「まだかしら。」
 ベンチでエッジの隣に座っているエリアナが声をかけてくる。それの声が優しい風とともに彼の耳に届く。
 「もうすぐだな。」
 視線を街道の方に向ける。それは長く一本に続いている。
 「あっ来たわよ。」
 声とともに見えてくる乗合馬車。
 「よし行くか。」
 ゆっくり立ち上がり。背伸びをして村の出口の方へ行く。
 馬車が到着した。
 早速乗り込む・・・と
 「見つけたぞ、踏み逃げ野郎!いままここでぶち殺してやるから逃げるなよ。」
 彼を追うように素早く走り込んで来る3つの影。
 「公都に着いたら払ってやるよ。」
 だがその声は相手の耳に入らなかった。
 「親父早く出発してくれ!」
 御者を急かすが、おろおろするだけで効果はない。
 「あっわたしをおいてく気?」
 彼女も焦って走り込んでいる。
 「ああもう早くしやがれ。」
 ついに脅しにまで発展している。
 「待ちやがれ〜」
 1人圧倒的な速さで追いかけてくるのは最も小さな影――ニキータだ。
 「待たんとハンマーで出る杭は打たれるの刑だぞ!」
 「うるさーーい。」
 (ガツッ!)
 愛用の剣の鞘で殴りつける。
 「エリアナ!おいてかれたくなけりゃ早く乗れ!」
 「うん。」
 ・・・そして馬車は出発した。
 「くそー覚えてやがれ。」
 二キータの声は虚空の風にかき消えた。
 
 水の日・・・雨は降りそうもない。
 
◇◆◇◆

 「敵は複数・・・。」
 「僕には手に負えないなあ。」
 虚空に声が響く。
 「ジェイクリオン・・・期待しているよ。」
 声はそこで止まった。
 

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23079黒き刃の大暴走記2:後書きドラマ・スライム 2002/11/2 10:23:00
記事番号23078へのコメント

 いやあ、ついに終えました。
 ――黒き刃の大暴走――
 略して黒刃(くろは)または例の駄文。
 黒き刃はもちろんエッジのことです。(黒い服着てるし)
    ――2―― 
 まだ2なんだよね。
 ――虚ろなる追跡者――
 あんまりサブタイトルと内容が合ってないかも

 ちなみに後書きにはネタバレもあるかも・・・。
 
 今回は前回よりはマシなものに仕上がったと思います。少々ラストが自分でも記に食わないですが・・・。
 今回の話の中で全く今回と関係のないキャラクターのシーンもあります。いくらなんでもこれを出すのは早すぎるんじゃないかと思いますが・・・。でもそのシーン結構気に入ってたりするかも・・・。

 後、魔法について・・・。
 呪文は基本的に何でもいいです。でも口に出すことによってその魔法の内容を想像をより強いものにし、異次元――と呼んでおこう――から引き出すのを助ける効果がありますので、その魔法と全然イメージの違う呪文や叫び声などではよほどの訓練を受けてない限り発動しません。
 放出発生は基本的には特定の言葉でしか魔法は発動しません。これが最終的に発動する魔法を決めます。ちなみに魔法の種類は微妙な違いなども数えるとほぼ無限です。
 もしかしたら本文で同じようなこと書くかも知れませんが、そんなときは私の持病の脳味噌クラゲが発動したとでも思ってください。
 
 ・ということで詠唱呪文大募集。
 なるべく短めの呪文詠唱を募集しています。
 ほぼ大体のものならば載せられます。
 では多数のご応募願っております。

 ちなみにグラッド・シティがエルヴェントに変わったのはエルヴェント〜(詳しくは決めてない)という企業の影響です。

 それでは〜
 3話でお会いしましょう
 気が狂って人気投票とかするとかも・・・

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23234遅くなりました〜陽月 2002/11/10 19:04:17
記事番号23079へのコメント

マジでおっそいレスです……。すみませんです。

えと、気になったことが。
シリオンってまさか………………………………?
氷の洞窟で黒のワルツ1号が召喚して、ワルツ1号&シリオン対ジタンの2対1のバトルになるときの………………あのシリオンから命名ですか?


それと……
>「ところであんた名前は・・・あっ俺はエッジ・・・。」
> そういえば聞いてなかったと思いながら金貨を握り締めつつ答えを待つ。
> 「謎の神官(プリ―スト)です。」
うあ思いっきりゼロスだぁって思いました。
名前がゼロスだったりして…………(待て)。



面白かったです。
続きを期待です(追い詰めてどうする)。
では〜。



追伸:1の方にレスをつけるのは改名後初めてのようです…………。名前が以前のままでちょっと焦りました…………。

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23235Re:遅くなりました〜D・S・ハイドラント 2002/11/10 19:39:59
記事番号23234へのコメント


>マジでおっそいレスです……。すみませんです。
いえいえ。
>
>えと、気になったことが。
>シリオンってまさか………………………………?
>氷の洞窟で黒のワルツ1号が召喚して、ワルツ1号&シリオン対ジタンの2対1のバトルになるときの………………あのシリオンから命名ですか?
そうです。
出すと言ったじゃないですか。
>
>
>それと……
>>「ところであんた名前は・・・あっ俺はエッジ・・・。」
>> そういえば聞いてなかったと思いながら金貨を握り締めつつ答えを待つ。
>> 「謎の神官(プリ―スト)です。」
>うあ思いっきりゼロスだぁって思いました。
>名前がゼロスだったりして…………(待て)。
実はゼロスだったり・・・。
>
>
>
>面白かったです。
>続きを期待です(追い詰めてどうする)。
>では〜。
最近全然こっちを書いてないです。
来年までには完成させますので(よし宣言したぞ)・・・無理かな。
>
>
>
>追伸:1の方にレスをつけるのは改名後初めてのようです…………。名前が以前のままでちょっと焦りました…………。
そでしたか
それではまた〜

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23092Re:黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグエモーション E-mail 2002/11/2 21:42:29
記事番号23078へのコメント

こんばんは。第2部、一気読みしました。

どこかで聞いたことがあるような(笑)名前と、どっかの神出鬼没神官に
思わずニヤリ……。
リンクするんでしょうーか?
また、何気に大金ゲットしたエッジくんの喜びっぷりが良かったです。

ラッシー……忍耐力があるのか、単に関心あること以外は、どーでもいい質なのか、
これからのご活躍を楽しみにしています。

では、短めですがこの辺で。
第3部も楽しみにしてます。

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23096Re:黒き刃の大暴走記2:虚ろなる追跡者:エピローグドラマ・スライム 2002/11/3 08:46:16
記事番号23092へのコメント

>こんばんは。第2部、一気読みしました。
ありがとうございます〜

>どこかで聞いたことがあるような(笑)名前と、どっかの神出鬼没神官に
>思わずニヤリ……。
出して成功でしたかねえ

>リンクするんでしょうーか?
ネタが浮かべばするかも知れません

>また、何気に大金ゲットしたエッジくんの喜びっぷりが良かったです。
でもお金は返さないんですよねえ

>ラッシー……忍耐力があるのか、単に関心あること以外は、どーでもいい質なのか、
でもニキータをことあるごとに殴ってますから・・・
>これからのご活躍を楽しみにしています。
はいありがとうございます。

>では、短めですがこの辺で。
いえいえ
>第3部も楽しみにしてます。
ありがとうございます。

ではこれからもよろしくお願いします。
本当にありがとうございます(何回目だ。)
ではさようなら〜




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23050黒き刃の大暴走記2追記ドラマ・スライム 2002/10/31 16:32:43
記事番号23045へのコメント

火陽(ひ)=日
火陽玉(かようぎょく、または、ひだま)=太陽
火月(つき、または、き)=月
精霊獣=すべての獣をこう呼びます。

後これはオリジナルです。

では読み逃げ大歓迎です〜

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23157改名します。D・S・ハイドラント 2002/11/6 21:56:53
記事番号23050へのコメント

一応ブラウザに記憶させるためにこれを書きました。
ドラマ・スライムでした。
それでは改名記念に小説リクエストにお応えします。
ほとんどのものなら多分大丈夫なので・・・。
それでは本当にドラマ・スライムでした。<たまに間違ってドラマ・スライムって使うかも>

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23290一時休止D・S・ハイドラント 2002/11/13 16:32:51
記事番号23157へのコメント

黒き刃の大暴走記は私の都合により一時休止させていただきます。
再開はいつになるか分かりません。
冥王の騎士はそのまま続けます。
では〜