-異界黙示録伝「炎の書」その5-魔沙羅 萌(4/11-22:18)No.2240
 ┗Re:異界黙示録伝「炎の書」その5-松原ぼたん(4/12-17:51)No.2247


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2240異界黙示録伝「炎の書」その5魔沙羅 萌 4/11-22:18

3年ほど前、『リラ』では大きな戦いがあった。
それは今となっては『時を統べる者』と呼ばれる少女と魔王の戦い……。
魔王はその少女に敗れ、また、闇に封印されたと言う。
それは、人々にとってはあまり認めたいものではなかったが………。


我が祖国


「どういうことですか?!アグニさん?『時を統べるもの』って、『魔王を封印した』って何があったんですか?」
アメリアさんが私に聞いてくる。でも、それに答えたのは私ではなかった。
「……3年前のことさ。僕たちがある一人の少女と共に魔王を封印したのは。その少女は時空を自由に行き渡る力を持っていた。しかし魔王はその力を人間が持っているのが気にくわなかったらしい。また、その少女も魔王が人々を苦しめているのが許せなかった……。」
フェニックスの言葉はそこで切れた。
「それで、何故貴様がかかわったんだ?」
ゼルガディスさんの問いに答えたのは今度は私。
「それは、魔王が涙の国に手をだしたから。私もフェニックスもそれが許せなかった。だからその少女に協力した……。その仲間が今となっては魔王の手下。どうして魔王が復活したかは知らないけど、そこまでおちるなんてね、フェニックス」
「そうですよ!そんなの正義じゃありません!!」
アメリアさんの言葉にフェニックスは怒った声を出した。
「君たちに何が分かるって言うんだ!僕だってこんな事したくない!でも……でも、しなくちゃ無くなっちゃうんだ!この国が……この世界が!それなのに……それなのに君たちは『君たちの正義』の押し売りをするのか?!君までそうなのか?アグニ!!」
フェニックスは辛そうにそう叫んだ。まわりにいた、炎の精霊たちはおびえたように私とフェニックスの方を見ている。
「私は……正義の押し売りはしないわ。だって、同じ種族同士だって違う『正義』を持っているもの。例えてみるなら、人種差別ね。同じ種族……人間なのに、肌の色が違うだけで、言葉が違うだけで分かり合えなくなってしまう。ちがう王に仕えているだけで『正義』は変わってしまう。あなたと私達は違う種族。それなのにあなたに私の『正義』を押し売りするわけにはいかないわ。私は『私の正義』をこよなく愛しているけど、貴方に押し売りすることなんてできないわ。それより、この世界が無くなってしまうってなに?魔王に何を言われたの?」
私の言葉に苦笑しながらフェニックスは答えてくれた。
「魔王はこういったさ。『我に従わなくは、貴様の国を魔界に沈めてやろう。そこを中心にし、すべてを闇に葬ってやろう。貴様には分かっているのだろ?我にそれくらいの力があることぐらい』だと。僕にだってその言葉が真実だと分かっていた。だから従ったでも、その必要は無くなったみたいだね。君とリラ神が動いた上に、『時を統べるもの』が帰ってきたみたいだ。君の周りにいる人たち以上の大きな力を引き連れて。魔王にも負けないよね」
彼は笑顔でその言葉を紡ぎ出していた。もっとも炎の鳥の笑顔なんてアメリアさんやゼルガディスさんには分からないだろうが。
「フェニックスさん、それってリナさん達のことですか?それとも」
アメリアさんの言葉はそこで途切れた。アメリアさんも感じ取ったのだ。闇の気配を。
《フェニックスよ、貴様は裏切るというのか?》
虚空からの声……私にもフェニックスにも聞き覚えがあった声だ。
「魔王よ!僕はやはり貴方には従えない!でもこの国は貴方に渡すわけにはいかない!!」
フェニックスがそういったと思った瞬間だった!
彼が光の塊となり弾けてしまったのは。
『フェニックス!!』
《自分の命と引き換えに魔界へ続く道をきったとはな。我が計画を邪魔しおってまあ良い、火の神よ!また会おうぞ》
魔王の声はそこで途切れ、闇の気配と共に虚空へと消えてしまった。
その場に残っていたのは……そう、私達3人と哀しみの精霊たちとどうにもできないようなやるせなさだけだった………。

〔続く〕
注:第二部『火の鳥』はここまでです。次は第三部です。

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2247Re:異界黙示録伝「炎の書」その5松原ぼたん E-mail 4/12-17:51
記事番号2240へのコメント
 面白かったです。

>「それは、魔王が涙の国に手をだしたから。私もフェニックスもそれが許せなかった。だからその少女に協力した……。その仲間が今となっては魔王の手下。どうして魔王が復活したかは知らないけど、そこまでおちるなんてね、フェニックス」
 ・・・・何が合ったのだろう。
>「私は……正義の押し売りはしないわ。だって、同じ種族同士だって違う『正義』を持っているもの。例えてみるなら、人種差別ね。同じ種族……人間なのに、肌の色が違うだけで、言葉が違うだけで分かり合えなくなってしまう。ちがう王に仕えているだけで『正義』は変わってしまう。あなたと私達は違う種族。それなのにあなたに私の『正義』を押し売りするわけにはいかないわ。私は『私の正義』をこよなく愛しているけど、貴方に押し売りすることなんてできないわ。それより、この世界が無くなってしまうってなに?魔王に何を言われたの?」
 立派ですね、押し売りしないってとこ。
> その場に残っていたのは……そう、私達3人と哀しみの精霊たちとどうにもできないようなやるせなさだけだった………。
 悲しいですよね。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。