◆−セレナーデ story9 〜第九楽章〜−春祭あられ (2001/12/17 18:32:05) No.18947


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18947セレナーデ story9 〜第九楽章〜春祭あられ 2001/12/17 18:32:05


ツリーがまた落ちてしまいました。
今回落ちるのなんか早かったなぁ・・・・・・


            ◇◆◇◆◇◆◇


「なにが・・・・・・あいつが、消滅するなんて」
 ゼラスは、まるで自分の部屋であるかのようにベッドに腰掛ける。
そして、リナに座るように促した。
「まず、おまえは我々魔族のことに関して根本的なことを忘れている」
「根本的・・・・・・?」
「我々とて不死身ではない。食事をしなければ生きてはいけない。そこで、糧となるのはなんだ?」
「人間で言う食料は、魔族で言う不の感情」
「そう。実際今私はいい思いをしている。おまえの不の感情は極上に美味。めったに食べられるものではないな。普段からおまえは不の感情にとらわれる事がない・・・・・・また、嬉の感情を抱くこともない。だから不の感情は最高のものとなり、嬉の感情は最高の攻撃となる」
「だからそれがどうしてっ・・・・・・」
「まだ分からないか?おまえの嬉の感情・・・・・・昨日のものは特に凄かった。たまたま近くにきていた私ですらかなりのダメージを食らったからな。たぶんここ半径一キロの範囲の低級魔族が滅びている。まじかにいたあいつは・・・・・・ひとたまりもなかっただろうな。そうでなくても、おまえに会うたびにだいぶ弱っていた」
「あたしの・・・せい?」
「他にあいつの消滅する理由がないよ。獣神官ゼロス・・・・・・私の作り出した部下だ。通常獣将軍と共に生み出すはずのものを、わざわざ一人だけに力を注ぎ作り上げた。あのクラスの中では最強のもの」
「でもあいつは、何にもそんなこと言ってなかった。一緒にいて苦しいとか、辛いとかっ」
「言うわけがない。ゼロスはおまえといることにダメージを食らいながらも喜んでいたのだから。私はあいつの自覚症状が出る前に忠告はしていたよ。何度も何度もやめろ、とね。私よりおまえを取ったのはあいつ自身だ。まったく、生みの親に逆らおうなんてたいしたやつだよ」
「そんな、そんな身勝手なっ!私はゼロスの滅びを願ってたわけじゃない!」
「ゼロスは、最初はわからなかったみたいだが、最後には気づいていた。このまま進めば自分は滅びる、と。それでも、ここに来た。ここで、おまえの傍での最後を選んだ。ほら、その証拠に預かり物だ」
 ゼラスは自分の懐からこぶし大の宝玉を取り出すと、それをリナの前にかざした。
それには見覚えがある。いつもゼロスが持っていた杖についていた宝玉だ。
いつか聞いたことがあった。その宝玉は、この世界のものを使っているため、もし自分が滅びたとしても一緒に滅びることはない、と。
そういえば、昨日は杖を持っていなかった・・・・・・
「これを持っていて欲しいんだとよ。ずっと忘れないでいてくれれば、それでいい・・・そう言っていた」
リナはそれを受け取って、大切そうに抱きしめる。
頬に涙が流れ、床にしみを作った。
「馬鹿よ。大馬鹿よっ!」
嗚咽は次第にひどくなり、ついにはしゃべれなくなっていく。
そんなリナの姿を見ながら、ゼラスは姿を消した。


死んだものほど思い出は美しくなると聞いたが、それは本当かもしれない・・・・・・そんなことをリナは歩きながら考えていた。
ミルガズィアとメンフィスと別れ、リナの故郷ゼフィーリアに向かう途中。
今日も順風満帆の旅をしている。
悲しみと苦しみを乗り越えて、笑えるような明日を生きる―――そんな決意をしてから1ヶ月はたった。
あと、二つの町を抜けたら、ゼフィーリアに着く。
ガウリィはいまだに昔のような元気のないリナに気を使っているのか、二人だけの場を盛り上げようと頑張っている。
はたから見れば、それはとても朗らかな光景。
それでも、胸にまだ思いを秘めているリナは、ガウリィになびくことはなかった。
それがわかっているガウリィは、少し複雑な思いに駆られていたらしい。
元に戻ることはできないかもしれない。それだけリナが大人になったと考えれば。
そう思って、時々リナをやさしく抱きしめてやるしかなかった。

交わることのない二人の旅は、ゼフィーリアを目指して続いていく。


            ◇◆◇◆◇◆◇


やっとここまで行きました。
長かったなぁ。(自分の中では)
普段短編しか書かないものだから、少々きついものがありました。
でも今は、長編を書く練習中。
新シリーズ、GAMEのほうも、どうぞよろしくお願いします。
それでは、また次、読んで下さっている皆様に会えることを祈って。
 春祭あられ