-趣味のガウリナ小説ツリー-山塚ユリ(3/22-00:20)No.1857
 ┣『魂(こころ)の復活(リザレクション)』-山塚ユリ(3/22-00:26)No.1858
 ┃┣Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』-松原ぼたん(3/22-15:31)No.1862
 ┃┣Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』-さぼてん(3/23-06:47)No.1879
 ┃┣山塚さん、読ませていただきました。-むつみ。(3/28-23:36)No.1946
 ┃┗Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』-御茶らちゃ(4/1-19:37)No.1999
 ┣『聞こえない呼び声』-山塚ユリ(3/22-00:31)No.1859
 ┃┣Re:『聞こえない呼び声』-松原ぼたん(3/22-15:42)No.1863
 ┃┣Re:『聞こえない呼び声』-さぼてん(3/28-12:08)No.1938
 ┃┗『聞こえない呼び声』感想です!-むつみ。(3/28-23:45)No.1948
 ┣Re:趣味のガウリナ小説ツリー-わたり 涼(3/22-15:54)No.1864
 ┣Re:趣味のガウリナ小説ツリー-るるぶ(3/26-15:25)No.1917
 ┗Re:趣味のガウリナ小説ツリー-えれな(3/27-14:28)No.1928


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1857趣味のガウリナ小説ツリー山塚ユリ 3/22-00:20

なんかゼロリナの方が多いんで、対抗してガウリナを書くことにしました。(大人げない奴…)
暇な方、お付き合いください。

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1858『魂(こころ)の復活(リザレクション)』山塚ユリ 3/22-00:26
記事番号1857へのコメント
洞窟に巣食う悪徳魔導士と賞金首たちを退治する、という簡単な仕事、のはずだった。
あたしはもちろん賞金のため、アメリアは正義のため、それぞれの保護者を引き連れて、洞窟に乗り込んだのだ。
ところが見ると聞くとは大違い。悪徳魔導士と賞金首たちはすでに魔導士が召喚した魔族に食われた後だった。
すなわち、洞窟の中は魔族の巣くつになっていたのである。
狭い洞窟の中、さすがに大技を使うわけにはいかず、あたしたち(主にあたし)は各個撃破をしいられたのである。
とはいえ無敵の4人組(アメリア談)、次々魔族を片づけ、残るは数匹!
全身コケまみれの気色悪い魔族を相手にしているあたし。ガウリイはあっちで魔族のくせにいっちょ前に剣を持った奴と戦っている。腕を斬り飛ばし、返す刀で奴の体を両断するガウリイ。
「よーし終りー。そっちは?」
「あとはとどめさすだけよ。ゼルたちはどう?」
まさか地面に落ちた腕が動こうとは。
視界を横切る銀光。振り向いたあたしの目に映ったのは、宙に浮かんだ腕と、それが手にした剣に腹を裂かれ、くずれ落ちるガウリイの姿だった…


「ガウリイ!」
思わず駆け寄ろうとするあたしの前にコケ男。
「じゃまよ!」
エルメキア・ランスをもろにくらって倒れるそいつをほっぽってあたしは走る。
倒れたガウリイに剣をふりおろそうとしている腕があたしに気づいて向かってくる。
なんでもいい。ガウリイへの攻撃さえ防げたら。
空飛ぶ剣があたしの腕を薙ぐ。その剣に向けて至近距離からアッシャー・デイスト!
塵と化して消えて行く腕と剣。もしかしたらこっちが魔族の本体だったかもしれないが、今のあたしにはどうでもいいことだった。
ガウリイに駆け寄ったあたしは体中の血が音をたててひいて行くのを感じた。
あたしの足元、血だまりの中に倒れているガウリイ。
目を閉じた蒼白な顔。体はぴくりとも動かない。
傷は内臓まで達しているらしいが、吹き出す血でなんにも見えない。
あたしは傍らにひざまずいてリカバリイの呪文を唱える。
でも…この出血…リカバリイではよけい体力を消耗させてしまう…
「リナさん、あたしがやります」
あたしの横でアメリアの声。自分の相手を片づけてここにきたらしい。
リザレクションの呪文を唱え始めるアメリア。
「…お願い…」
力なくそう言うと、あたしはこみ上げる吐き気を押さえ、少し離れたところに座り込む。
ガウリイ…ごめん…あたし、なにもできない…なにも…
誰かがあたしの肩に触れる。
「ゼル…」
「アメリアを信じろ。
それしか俺たちにできることはない」
わかっている。だけどなにもできないのって…辛い…
「今、自分にできることをすればそれでいい。おまえはちゃんとやるべきことをやっている。
それより、自分の怪我を治したほうがいい。ガウリイが目覚めた時、心配するからな」
あたしの腕からも血が流れていたが、あたしは呪文を唱える気にならなかった。
ゼルはため息をつくと、リカバリイの呪文を唱え始めた。
そして長い時間が過ぎた。
アメリアの呪文詠唱が途切れた。
「もう大丈夫です」
アメリアの声にはっと顔を上げるあたし。
ガウリイの顔色がもとに戻っている。表情もおだやかで呼吸も確かだ。
助かったんだ…あたしは安堵のため息をつく。
もし、アメリアがいなかったら…考えたくもない。
ガウリイが目を開けた。
「ガウリイさん、気がつきましたか?」
アメリアがガウリイの顔を覗き込んで微笑む。
「オレ…あ、そうか…
リナは!?」
「ここですよー」
陽気に言ってあたしをガウリイのそばに押しやるアメリア。
「ガウリイ…」
「わりぃ。心配かけたな」
「誰もあんたの心配なんかしてないわよっ」
涙声で言ったって説得力ないって。


リザレクションを習おうか。あたしは本気で考えていた。
あれから数日。ガウリイもすっかり回復して、また4人で旅を続けている。
「やーアメリアはオレの命の恩人だよなー」
「そんなこと、当然のことをしたまでですよ」
そんな他愛のない会話があたしの胸を刺す。
ガウリイを助けたのはアメリア。
ガウリイが目覚めて最初に見たのはアメリアの笑顔。
そんなことを思うたびになんとなく苦しくなる。
もちろんアメリアには感謝してる。
でも、あの時、あたしがリザレクションを使えていれば。
あたしがアメリアの代わりにガウリイを助けられたのに。
それが…リザレクションを習いたいと思った理由。
どこか大きな町の寺院にそれなりの寄進すれば教えてくれるだろう。
でも寺院に行ったりすればきっとアメリアが、
「みずくさいですよ〜なんでわたしに聞かないんですかぁ」
って言うだろう。
そう、リザレクションを習いたかったら、アメリアに聞くのが一番手っ取り早い。
が、あたしはそれをしたくなかった。
なんとなく気が進まないのだ。
あたしは決心がつかないまま、なにやらもやもやした気持ちをひきずって旅を続けていた。
えーい。あたしらしくない。
むしゃくしゃ時にはこれに限る。
すなわち。盗賊いじめ。


「うふふ、おたから、おたから」
夜道を宿に向かって歩くあたし。マントの中には掘り出し物がざっくざく。
うん、宿をこっそり抜け出した甲斐があったというものよ。
宿の裏手まで来て、森の中の人の気配と明かりに気がついた。
木の影から覗き込む。
ガウリイだった。
木切れを木の枝からぶら下げ、揺れているそれを剣のかわりの棒でたたく。
古典的な剣の稽古である。
ただひとつ違うところはガウリイの周囲10本くらいの木から木切れがぶら下がってるという点だけだが。
あたりを駆け回り、揺れる木切れをすべて弾き返す。しばらくそれを続けていたが、さすがに疲れたらしい。一息つくと今度は地面から石を拾い始めた。
なんだいったい。
両手に山になった小石を、自分の頭上に放り投げる!
おいおいっ
降ってくる石をよけ、棒でたたき落とすガウリイ。動きが速すぎて見えない!
うーん。あれだけの腕を持ちながら、まだ努力してるんだガウリイは。
「今、自分にできることをすればそれでいい」
ゼルの言葉があたしの頭をよぎる。
あたしも負けちゃいられないな。あたしにできることをしなくちゃ。うん。
ふたたび石を拾い始めたガウリイを残し、あたしは宿に戻った。


「リナさんにリザレクションを?」
アメリアの部屋に押しかけたあたしは、アメリアにリザレクションを教えてくれるよう頼んだ。
「どっちかっつーと回復や防御の魔法は苦手なんだけどね。
ほら、アメリアもセイルーンのお姫様だし、いつまでもあたしたちにつきあっていられないでしょう。それにアメリア自身が怪我した時困るし。
あたしも使えたほうがいいかなって思って」
まくしたてるあたし。
「そう…ですね。うん。わかりました。教えます。
リナさんならすぐマスターできますよ。
傷ついた人を助けたい、って思いが一番大切なんですから!」
盛り上がるアメリア。そうなのか…?
「じゃあですね。この枕をガウリイさんだと思って」
「なんでガウリイなのよ」
「いえ、誰でもいいんですけどね」
笑いながらぱたぱたと手をふるアメリア。…読まれているなぁ。
どーせ読まれているなら開き直っちゃえ。
あたしはガウリイのためにリザレクションを習いたいんだって。
「じゃあリナさん、あたしの言う通りにしてくださいね」
さっそく、アメリアのレクチャーが始まった。

終り

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1862Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』松原ぼたん E-mail 3/22-15:31
記事番号1858へのコメント
 面白かったです。

>あたしはもちろん賞金のため、アメリアは正義のため、それぞれの保護者を引き連れて、洞窟に乗り込んだのだ。
 それぞれの保護者って・・・・(笑)。
>ところが見ると聞くとは大違い。悪徳魔導士と賞金首たちはすでに魔導士が召喚した魔族に食われた後だった。
 魔導士・・・・莫迦?
>そんな他愛のない会話があたしの胸を刺す。
 難しいですよね。
>むしゃくしゃ時にはこれに限る。
>すなわち。盗賊いじめ。
 これがなきゃリナじゃないですね。
>降ってくる石をよけ、棒でたたき落とすガウリイ。動きが速すぎて見えない!
 すごいっ。
>「じゃあですね。この枕をガウリイさんだと思って」
>「なんでガウリイなのよ」
>「いえ、誰でもいいんですけどね」
>笑いながらぱたぱたと手をふるアメリア。…読まれているなぁ。
 くすくす。なんかいい、このやりとり。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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1879Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』さぼてん 3/23-06:47
記事番号1858へのコメント
山塚ユリさん、たぶんはじめましてだと思うので、
初めまして。さぼてんというものです。ここを拠点として、(笑)某所と某所に時々出没します。
ツリーを見れば一目瞭然なのですが、
小説はほとんど書かず、レスばっか書いてるたわけもんです。
よろしければこれからもよろしくしてやって下さい。

>まさか地面に落ちた腕が動こうとは。
>視界を横切る銀光。振り向いたあたしの目に映ったのは、宙に浮かんだ腕と、それが手にした剣に腹を裂かれ、くずれ落ちるガウリイの姿だった…

うわぁ痛そうっ・・・・・

>ガウリイ…ごめん…あたし、なにもできない…なにも…

何かこういうリナ見てるとかわいそうになってきますよね。(いつもが元気だから。)

>「今、自分にできることをすればそれでいい。おまえはちゃんとやるべきことをやっている。
>それより、自分の怪我を治したほうがいい。ガウリイが目覚めた時、心配するからな」
>あたしの腕からも血が流れていたが、あたしは呪文を唱える気にならなかった。
>ゼルはため息をつくと、リカバリイの呪文を唱え始めた。

ゼル優しいですね。

>えーい。あたしらしくない。
>むしゃくしゃ時にはこれに限る。
>すなわち。盗賊いじめ。

あ、やっぱり、リナだ。(笑)

>両手に山になった小石を、自分の頭上に放り投げる!
>おいおいっ
>降ってくる石をよけ、棒でたたき落とすガウリイ。動きが速すぎて見えない!
>うーん。あれだけの腕を持ちながら、まだ努力してるんだガウリイは。
>「今、自分にできることをすればそれでいい」
>ゼルの言葉があたしの頭をよぎる。
>あたしも負けちゃいられないな。あたしにできることをしなくちゃ。うん。

そうこなくちゃ!

>盛り上がるアメリア。
>「じゃあですね。この枕をガウリイさんだと思って」
>「なんでガウリイなのよ」
>「いえ、誰でもいいんですけどね」
>笑いながらぱたぱたと手をふるアメリア。…読まれているなぁ。

流石アメリアっ(なぜっ)

私はどちらかというとゼロリナ派なんですが、
ガウリナもいいですね。人の書いた小説読んでると、
つくずくそう思います。
又書かれますよね。
小説アップされたら跳んで来ますんで、頑張って下さい。

それではまた

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1946山塚さん、読ませていただきました。むつみ。 3/28-23:36
記事番号1858へのコメント
山塚ユリさん。読ませていただきました。面白かったです。
・・・しばらくここに来なかったから、気がつくのが遅れました。なんか、損した気分。

>あたしはもちろん賞金のため、アメリアは正義のため、それぞれの保護者を引き連れて、洞窟に乗り込んだのだ。
 ・・・それぞれ?

>ところが見ると聞くとは大違い。悪徳魔導士と賞金首たちはすでに魔導士が召喚した魔族に食われた後だった。
 ははは。よくあるよくある。


>視界を横切る銀光。振り向いたあたしの目に映ったのは、宙に浮かんだ腕と、それが手にした剣に腹を裂かれ、くずれ落ちるガウリイの姿だった…
 にゃぁぁぁ!痛いっ!

 リナは!?」
>「ここですよー」
>陽気に言ってあたしをガウリイのそばに押しやるアメリア。
>「ガウリイ…」
>「わりぃ。心配かけたな」
>「誰もあんたの心配なんかしてないわよっ」
>涙声で言ったって説得力ないって。
 このあたりのやりとりが、可愛いというかなんというか・・・。
>
>
>リザレクションを習おうか。あたしは本気で考えていた。
 そうしなさい。どうして覚えないんだ!って、私も思ってましたから。

 誰も知らないところで黙々と剣の稽古をしているガウリィが、個人的にとても好きです。
 あと、リナにリカバリィをかけるゼル。いいなあ。

さて。あとは。「魂のリザレクション」ってことで、ガウリィにキスしてもらいなさい。
それがいちばん(^ー^)。

・・・しつれいしました〜。

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1999Re:『魂(こころ)の復活(リザレクション)』御茶らちゃ 4/1-19:37
記事番号1858へのコメント
こんにちはっ(はじめまして・・・・でしょうか?)

>ガウリイが目を開けた。
>「ガウリイさん、気がつきましたか?」
>アメリアがガウリイの顔を覗き込んで微笑む。
>「オレ…あ、そうか…
>リナは!?」
う〜ん、いいですねえ。
自分のことより相棒を心配するあたりが・・・・(きゃっ)

>「ガウリイ…」
>「わりぃ。心配かけたな」
>「誰もあんたの心配なんかしてないわよっ」
>涙声で言ったって説得力ないって。
自分でツッコミ・・・
女の子って感じがすごくしんせんですぅ。

>そう、リザレクションを習いたかったら、アメリアに聞くのが一番手っ取り早い。
>が、あたしはそれをしたくなかった。
>なんとなく気が進まないのだ。
わかります、そういう気持ち。
リナはたぶん、シルフィ−ルに対してもアメリアの時と同じような感情を抱くんでしょうねえ・・・

感想遅くなってスミマセン。
書こう書こうと思ってはいたのですが・・・
私よくゼロリナやってますけどガウリナも好きなんですよ。
今後も小説がんばってくださいね。
それでは、また。

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1859『聞こえない呼び声』山塚ユリ 3/22-00:31
記事番号1857へのコメント
気ヅイテ、気ヅイテ
ワタシハココニイルノヨ

「ガウリイはどうした」
ガウリイの部屋に入ってきたゼルがアメリアに尋ねた。
「リナさんを探すって街に…あてもないのに…」
「…そうか」
リナが消えてから2度目の夕方を迎えようとしていた。
昨日の朝、階下の食堂に降りてこないリナを心配してアメリアが部屋をのぞくと、部屋からリナの姿が消えていたのである。
ベットには寝た形跡がなく、部屋はきちんと片付いていて、リナの荷物も残っていなかった。
盗賊いじめに行ったまま、なにかの事件に巻き込まれた可能性もあるが、それにしては荷物まで消えているのはおかしい。
誰かにさらわれた、とも考えたが、あのリナを、隣の部屋にいたガウリイに気づかれずにさらうことができるとも思えない。
昨日から3人で宿の周囲を探したり、宿の人々に怪しい奴を見なかったか、聞いて回ったりしたのだが、全く手がかりはなかった。
打つ手もなく、ただガウリイの部屋に座ってガウリイの帰りを待つ二人だった。
やがて日も暮れ、ふらっとガウリイが帰ってきた。収穫がなかったのはその顔を見ればわかる。
「リナは…」
「いいえ」
「そうか…
盗賊のアジトがあるって聞いて…つぶしてきたけど…リナはいなくて…」
この場合、その盗賊たちに同情すべきかもしれない。
「少し休んだ方がいい。ゆうべ、寝てないんじゃないのか」
「寝てなんかいられるか!
…あ…すまん…」
「…いや…」
「…リナが、オレをおいて、どこかに行くはずないんだ。
リナの身になにかあったに違いないんだ。
なのに、オレは…
オレ、ここにいたのに、なんにも気づかなかった……」
「ガウリイさん…」
「すまない。しばらく一人にしてくれ」
床に座り込んでうつむいているガウリイにかける言葉もなく、二人は廊下に出た。
「見ていられませんよ…あんなガウリイさん…いっそ怒鳴り散らしてくれたほうがいいです」「……」
人のこと言えたものではないと思ったが、ゼルは黙っていた。
アメリアがガウリイの心配をすることで自分を支えているのはわかっていた。
「ガウリイさん、顔色、悪かったですね…リカバリイかけた方がよかったんでしょうか」
「無駄だ。リナが見つからないうちはな」

気ヅイテ、がうりい
ココニ、ココニ来テ

どこかでリナが呼んでいるような気がする。
でもそれがどこなのかわからない。
ガウリイは聞こえない声に耳をすませようとしたが、心が乱れて集中できない。
「…リナ…」
胃が激しく痛む。何もできない自分を責めているようで、その痛みがガウリイにはむしろ心地よく感じられた。

がうりい、ココダヨ
アタシハココニイルヨ

宿の食堂。定食をなんとなくつついているゼルとアメリア。
ガウリイは思いつめた表情で、黙って飲みもしないスープをかきまわしている。
(なにか食べたほうがいいですよ)
アメリアはその言葉をパンといっしょに飲み込んだ。
言っても無駄だとわかっていたから。
「あのー」
女性の声が暗い沈黙を破る。
振りかえると、宿の従業員が立っていた。
「お連れさん、まだ戻らないんですか」
ガウリイのスプーンが止る。
彼女はちらっと奥を見ると話を続ける。
「あのう、おかみさんが支払の方は大丈夫かって…
いなくなった方がお金持ってらしたんじゃないですか?」
「ここの支払をするくらいの金はある」
ゼルがぶっきらぼうに言う。
「そうですかぁ。前にもお連れさんに全財産持ってとんずらされた方がいたんで、おかみさんが心配して…」
「前にも誰か消えたのか!」
ガウリイが叫んだ。
「消えたわけじゃなくて、朝になったら…」
「そいつはどの部屋に泊まってたんだ!」
ガウリイの言葉にはっとするゼル。
「さ…さあ…二階の真ん中あたりだったか…」
「あの部屋だ!」
ガウリイは食堂を飛び出すとリナが消えた部屋へ走った。
ゼルとアメリアも後に続いて階段を駆け上がっていった。

ガウリイ、ハヤク来テ
アタシヲ…助ケテ

リナの泊まっていた部屋は、いつリナが帰ってきてもいいように、きのうの朝のままにしてあった。
「この部屋からリナは消えたんだ。この部屋から調べてみなきゃいけなかったんだ」
「調べるって…抜け穴でもあるっていうんですか?」
なんの変哲もない部屋。単に一晩寝るためだけの飾り気のない部屋。
壁に掛かっている小さな額縁が唯一の装飾だった。
ガウリイの目がその額に注がれた。
白い服を着た少女の後ろ姿の絵だった。
「これは…リナだ」
「なんですって?」
アメリアが駆け寄る。
「確かに髪の毛は栗色ですけど、後ろ姿じゃ…」
「間違いない、リナだ。リナ!おい、リナ!」
壁を叩き、絵に向かって叫ぶガウリイ。
「絵の中に閉じ込められたっていうのか!?」
「そんなことができるのは…魔族…!?
あのリナさんを閉じ込めるなんて、よっぽど強い結界か…」
「さもなければ魔法を封じられているかだ」
「リナを、ここから出せないのか!」
「ブロウ・フレイクかけてみましょうか」
「どんな術がかけられているかわからん。へたに魔法を使わないほうがいい」
「じゃあどうするんですか!」
「リナをここに閉じ込めた魔族がいるはずだ。
リナの、俺達の…いや、ガウリイのいらだちや焦りを食って、ほくそえんでいる奴がな」
「そいつを倒せばいいんですね」

ココニイルヨ
ココニイルヨ

「でもいったいどこに…」
「たぶんすぐ近くにいるはずだ。宿の客か、従業員に化けている可能性が高いな」
「…いや」
ガウリイが剣を抜く。すでに光の剣モードである。
「魔族は…ここだ!」
言うが早いか、ガウリイは床に剣を突き立てた。
床が震えた。
壁が悲鳴を上げる。
「この部屋自体が魔族なんだ!」
ガウリイの剣が窓に叩きつけられる。窓ガラスは割れず、かわりに紫色の粘液を吹き出した。
「そういうことか!
それなら…ブラム・フレイザー!」
天井が金切り声をあげて崩壊する。
「ラ・ティルト!」
青い火柱がベッドを焼きつくす。
「リナを返せえぇぇっ」
光の剣がテーブルを叩き切る。
はたから見ると間の抜けた光景ではあったが、もちろん三人は大まじめであった。
部屋が歪んだ。
のたうつ壁をガウリイの剣が走る。
そして

部屋は悲惨な状況を呈していた。
壁は裂け、窓は砕け、散らばった窓ガラスが外の夜空を映している。
切り裂かれた家具、くすぶる絨毯。
黒こげのベッドの上に、どこから現れたのか、リナの荷物。
そして、ただ一面無傷な壁の前、落ちて割れた額の上に、白い寝間着姿のリナが座り込んでいた。
「リナ…」
駆け寄ったガウリイがリナを抱きしめる。
「…ガウリイ…あたし、ずっとガウリイを呼んでたんだよ…」
「…すまん、遅くなって…」
腕の中にいる、確かな感触。
ガウリイは、その存在を確認するかのように、強くリナを抱きしめた。
「なんか夢の中にいたみたいで…声も出せないし、体も動かないし…
でも呼んでいたの…きっとガウリイが来てくれるって思ってた…」
「…リナ」
リナが顔をあげてガウリイの顔を見つめる。
「ガウリイ…あたし…」
「ん…」
「お腹すいた〜」
こっそり部屋を出ようとしたゼルとアメリアが戸口でこけたのは言うまでもない。





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1863Re:『聞こえない呼び声』松原ぼたん E-mail 3/22-15:42
記事番号1859へのコメント
 面白かったです。

>リナが消えてから2度目の夕方を迎えようとしていた。
>昨日の朝、階下の食堂に降りてこないリナを心配してアメリアが部屋をのぞくと、部屋からリナの姿が消えていたのである。
>ベットには寝た形跡がなく、部屋はきちんと片付いていて、リナの荷物も残っていなかった。
 なにがあったんだぁぁっっ。
>胃が激しく痛む。何もできない自分を責めているようで、その痛みがガウリイにはむしろ心地よく感じられた。
 相当追いつめられてますね。
>「間違いない、リナだ。リナ!おい、リナ!」
 ガウリイだけが見分けられる・・・・愛情ですねぇ。
>「魔族は…ここだ!」
 相変わらずカンはいいようですね。
>はたから見ると間の抜けた光景ではあったが、もちろん三人は大まじめであった。
 うっ、確かに・・・・。
>こっそり部屋を出ようとしたゼルとアメリアが戸口でこけたのは言うまでもない。
 ・・・・確かにこけたくなりますね。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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1938Re:『聞こえない呼び声』さぼてん 3/28-12:08
記事番号1859へのコメント



>盗賊のアジトがあるって聞いて…つぶしてきたけど…リナはいなくて…」
>この場合、その盗賊たちに同情すべきかもしれない。
確かに・・・

>宿の食堂。定食をなんとなくつついているゼルとアメリア。
>ガウリイは思いつめた表情で、黙って飲みもしないスープをかきまわしている。
>(なにか食べたほうがいいですよ)

ガウリイが食べないなんて、相当ショックだったんでしょうね。

>はたから見ると間の抜けた光景ではあったが、もちろん三人は大まじめであった。
想像すると・・・・確かに間抜けですね。

>「ガウリイ…あたし…」
>「ん…」
>「お腹すいた〜」
>こっそり部屋を出ようとしたゼルとアメリアが戸口でこけたのは言うまでもない。

最後の最後に・・・・まぁそれもいいですね。
これからも書かれるんですよね。
頑張って下さい。



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1948『聞こえない呼び声』感想です!むつみ。 3/28-23:45
記事番号1859へのコメント
山塚ユリさん。読ませていただきました。
あなたの作品、好きですよ。


>盗賊のアジトがあるって聞いて…つぶしてきたけど…リナはいなくて…」
 見たかったな。彼が、鬼神のごとき強さで、盗賊団を壊滅させるところ。

>この場合、その盗賊たちに同情すべきかもしれない。
 ははは。でも、ガウリィじゃなきゃ、リナが潰してただろうし。


>「見ていられませんよ…あんなガウリイさん…いっそ怒鳴り散らしてくれたほうがいいです」「……」
>人のこと言えたものではないと思ったが、ゼルは黙っていた。
>アメリアがガウリイの心配をすることで自分を支えているのはわかっていた。
>「ガウリイさん、顔色、悪かったですね…リカバリイかけた方がよかったんでしょうか」
>「無駄だ。リナが見つからないうちはな」
 いいな、この二人の会話。
>
>リナの泊まっていた部屋は、いつリナが帰ってきてもいいように、きのうの朝のままにしてあった。
>「この部屋からリナは消えたんだ。この部屋から調べてみなきゃいけなかったんだ」
 ををっ!ガウリんが考えてる!
>
>ココニイルヨ
>ココニイルヨ
 この、心の(!?)声が、悲しい・・・。

>はたから見ると間の抜けた光景ではあったが、もちろん三人は大まじめであった。
 この卜書きが、好きです。


>「ん…」
>「お腹すいた〜」
>こっそり部屋を出ようとしたゼルとアメリアが戸口でこけたのは言うまでもない。
 ・・・で、ちゃんとオチてるし。面白かったです!ありがとうございました!

 次の作品を、楽しみに待ってます。それでは。

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1864Re:趣味のガウリナ小説ツリーわたり 涼 3/22-15:54
記事番号1857へのコメント

>なんかゼロリナの方が多いんで、対抗してガウリナを書くことにしました。(大人げない奴…)
いいえ!!私もガウリナ大好きなんで、頑張って対抗してください!!(笑)
大人げないなんて、とんでもない!!
ガウリナは、もはや日常の義務ですよ!(爆笑)
>暇な方、お付き合いください。
暇でなくともお付き合い致しますぅ。

こんなツリーが出来ているなんて・・・ああ!!
また、ここを覗く楽しみが増えました!!
特に、山塚さんのガウリナはセンス抜群で、読んでいても、
「ああ!!いいわぁ、この雰囲気!」って、いつも思わせてくれます。
次の作品も楽しみにしていますんで、是非ガウリナを推し進めましょう!!

感想文の わたりでした。



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1917Re:趣味のガウリナ小説ツリーるるぶ 3/26-15:25
記事番号1857へのコメント
山塚さま、はじめまして。
私、ここに感想書くのは初めてです。

>なんかゼロリナの方が多いんで、対抗してガウリナを書くことにしました。(大人げない奴…)
ぜひぜひもっともっともっと書いてください。
でないと、泣きます。(勝手に泣いてなさい)
楽しみにしてますからー!!









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1928Re:趣味のガウリナ小説ツリーえれな E-mail 3/27-14:28
記事番号1857へのコメント
山塚ユリさん。こんにちわ。自称ユリさんファンのえれなです(笑)

>なんかゼロリナの方が多いんで、対抗してガウリナを書くことにしました。(大人げない奴…)
>暇な方、お付き合いください。

てなわけで応援してます♪ユリさんのガウリナ大好きだし。うれしーです♪