◆−赤インク(ゼロス・ヴァル・フィリア(?))−Bゆうき (2001/10/9 08:30:32) No.17451
 ┗青インク♪(激しく待テ)−紫嵐 (2001/10/9 19:01:26) No.17453
  ┗Re:青インク♪(激しく待テ)−Bゆうき (2001/10/10 09:45:09) No.17472


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17451赤インク(ゼロス・ヴァル・フィリア(?))Bゆうき E-mail URL2001/10/9 08:30:32


こにちわ。Bゆうきです。
またまたゼロス×フィリア+ヴァルガーヴです。
でもフィリア全然出番ないです、これっぽっちも。ヴァルとゼロスばっかり出張ってます。これでゼロフィリというのはおこがましいかも…いや、絶対おこがましい(苦)
でもでも、読んでいただけたら幸いかも…(弱気)
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■赤インク■


 「お、ヴァルガーヴ。今帰りか?」
 「はい」
 学校の友達と別れたところで郵便屋のおっちゃんに呼び止められた。
 「ちょうど良かった、今局に寄ったらお前さん宛の手紙来てたぞ」
 そう言うと黒の肩掛け鞄から、一通の封書を出した。
 「サンキュ」
 受け取り宛名を確認。
 「女からだな。ラブレターとかか?ぴかぴかの一年生が遠距離恋愛かぁ。生意気に」
 がはは、と笑いながら気のいい郵便配達人は軽口を叩く。
 「それよか、お前んちの屋根に又人が上がってたぞ。危なねえから止めとけって言ったんだがなぁ」
 「いつものことだから気にしないでよ」
 受け取った手紙を鞄にしまうと、別れの挨拶に片手を上げる。
 おっちゃんも「おう」と短く別れの挨拶をした。
 
 屋根の上に人が居る。
 これが我が家の日常茶飯事に成っている。そしてある意味町の風物詩にも。
 そんな時は家の中では台風が荒れ狂っているに違いない、オレは家に入るのをやめ、隣に生えている木を伝って器用に登ると煉瓦色の屋根に黄昏る漆黒の人影に軽くケリを入れてやった。
 「おっす、ゼロス」
 「痛いじゃないですか、ヴァル君」
 「挨拶だよ、挨拶」
 「まったく、フィリアさんはどんな教育してるんですか」
 蹴られたところをさすりながら、ブチブチと文句を言ってるが、オレは聞かないことにする。
 大体ゼロスがオレのけりごときでどうにか成るわけがないのだ。
 それにこれはちょっとした“仕返し”でもある。
 オレが家に入れない仕返し。
 鞄を座布団代わりにゼロスの隣に腰掛けるのと、ほとんど同時に家の中から派手な破壊音が聞こえてきた。
 「あちゃ、またテーブル壊れたな。あれ」
 「物に八つ当たりとは、人間出来てないですねぇ」
 「なに呑気こいてんだよ、大体ゼロスの所為なんだろ?ちゃんとテーブル直せよ」
 「ええ?なんで僕の所為なんですか?大体フィリアさんが怒りっぽいんですよ。カルシュウムでも足りてないんじゃないですか?」
 テーブルの破壊原因が自分だと言われたのが心外だと言わんばかりに反論するゼロス。
 っていうか、オレにはそう思う方が意外なんだけどな。
 いや、ひょっとするとゼロスは気がついていないのかも知れない。
 「まさかとは思うけど、ゼロスって母さんが“おこりんぼ”だと思ってる?」
 「というより完全なヒステリーですよ、あれは。僕は遊びに来る度にいわれのない怒りを買ってモーニングスターで追い立てられてるんですから」
 あんな母親じゃヴァル君も苦労するでしょう。
 とかなんとか的はずれな事をいって、オレに同情までする。
 やっぱ、判ってないのか。ゼロスは。
 これは誤解を解かねばなるまい。ゼロスが来る度に締め出しを喰らうなんてごめんだ。
 「あのな、ゼロス。良く聞けよ。母さんは“ヒステリー”でも“おこりんぼ”でも無い。普段は穏やかで、優しくて、近所でも評判の美人母さんだ」
 鞄で稼いだ高さのおかげで、オレとゼロスの視線はバッチリ衝突する。
 「ウソでしょう」
 「ホント」 
 お互い瞳の中を探るように睨む。
 ゼロスはウソを見抜こうと。
 オレは真実を伝えようと。
 「ウソ…じゃ無いようですね」
 「母さんに誓って。オレ、ウソ、言わない」
 左手を胸に、右手を天に。大仰に誓いを立てる。
 「でも、じゃぁ何故。僕ばかりが怒られるんですか?怒られるのは僕の所為なんですか?」
 両膝を抱え込み、しょげかえるゼロス。
 大の大人がしょげるなっての、可愛くないんだし。
 「だからさ、オレもそこんとこ良く分かんなかったんだよ。大して変なこと言ってるわけでもないのに、ゼロスと母さんは決まってケンカになるだろ」
 「そうなんですよ、どうしたら只の世間話が家屋半壊なんて事態になるって想像できますか!?世間話が僕の落ち度と言われるのは心外ですよ」
 「だから、オレも考えたんだよ。多分原因は話の内容じゃないって」
 「はぁ」
 判ったのか、判らないのか。気の抜けた返事を返すゼロス。
 構わずオレは続ける。
 「よくよく思い出してみたら、昔はそんなに『会いに来る度どつかれる』ってわけでも無かっただろ?」
 「そう言えば、そうですね。昔は穏便でした」
 理由の一つにオレがまだ赤ん坊だったから、力の限り暴れるのに躊躇が有った。と言うのも有るのだろうが、それだけでは今の状態は納得できない。
 「なんかさ、時間を掛けてじわじわと、今の状態が出来上がったんじゃないかと思うんだよ、オレ」
 「なるほど、確かに。昔はそんなことはなかったのに、最近は100%の確率でフィリアさんは切れています。今日なんか、顔を合わせて10秒で暴れ出しましたよ、記録更新です」
 ………10秒……
 「事態は益々悪くなってるみたいだな」
 「最悪です」
 むむぅ。と屋根の上で男二人がうなり声を上げる。
 そして下ではもの凄い振動と何か堅い物が砕ける音も…
 震度3並のその震動に、あわてて屋根にかじりつく。
 「あああ、今のは花瓶が割れたな。壊れた物はゼロスに直させるとして……商品に被害が出る前に何とかしないと、骨董屋から破壊音がするってだけでも商売に支障が出る!」
 「小学生らしかぬ心配の仕方ですが、もっともですね。原因を探って、今の状態を打開しないと、僕だって壊れ物修理専門魔族になるのはまっぴらです」
 ゼロスは胸の前で腕を組むと「原因、原因」と呟いた。
 「…………やっぱりカルシュウム不足かと…」
 「んなわけあるか!」
 ごすっ!
 一応グーで突っ込みを入れておく。
 「痛いじゃないですか!」
 「うるさい!大体ホントにちゃんと考えたのか!!」
 「じゃぁ、ヴァル君は他に思い当たる事があるんですか?!」
 「ない!!!!」
 きっぱり。
 「威張らないでください」
 「1000年以上生きてるくせに、子供を頼る方が悪い」
 「それはそうですけど……いいだしっぺはヴァル君ですよ。それに本当に判らないんですって」
 1000年以上生きてきた魔族は、地球創世以来の難問にブチ当たって頭を抱えている。
 「オレやゼロスが分かんないのって、多分理由があるんだよ。母さんとオレ等の決定的な違いとかさ」
 「………女って事ですか?」
 なるほど、それでは判りませんね。と小さく頷く。
 正直オレは驚いていた。実はこの答えにたどり着くまで結構時間が掛かったのだ。
 ひょっとしてオレが子供だからか?
 ま、そこは置いといて。
 「女の事は女に聞かないと分かんないだろ?そこでこれだ」
 座布団にしていた鞄から一通の手紙を出す。
 「……………アメリアさんからですか」
 なんか、嫌な予感がしますね。
 精神攻撃とかされた過去から、ゼロスは小さく身震いする。
 「アドバイスが欲しくてさ。リナとかにも手紙出したんだけど、あそこは放浪癖が有るからな、届かなかったみたいだ」
 「目上の方には『さん』を付けなさい、ヴァル君」
 教育的指導が出る。
 オレはそれにテキトーな返事をしながら封を開けた。
 「んじゃ、読むぞ。ええっと…………あっ」
 読み上げようとした瞬間、手紙はオレの手から忽然と消え、ゼロスの手に収まっていた。
 「何すんだよ!」
 「ヴァル君では難しい字もあるでしょう。僕が読んで差し上げます」
 奪われた手紙を取り返そうとゼロスにくってかかる。が、ゼロスはそんなオレの頭を左手で押し返すと、右手の手紙を読み始めた。
 「拝啓ヴァルガーヴ様、お手紙有り難うございました。ヴァル君もお手紙が書けるように成ったんですね、あんなに小さかった子が、と思うと感慨もひとしおです………………挨拶は飛ばしますよ」
 「え〜何でだよ。ちゃんと読めよ!」
 左手の下でまたジタバタする。
 「後でフィリアさんにでも読んで貰ってください」
 「けち!」
 ゼロスめ!生まれて初めて来た手紙を奪われ、自分よりも先に眼を通され、更に飛ばし読みされるんだからな。後できっちり仕返ししてやる。
 そう心に誓いを立てている頃。ゼロスの顔色が変わり。朗読の声が尻窄みになり、やがて消えた。
 「ヴァル君、君は手紙に何て書いたんですか?」
 「何って、そのまんま。ゼロスと母さんのこと」
 「具体的には?」
 「母さんがゼロス見ると怒り出すこと、ゼロスが来ない間は怒らないけど、それが長引くとちょっと元気ないこと……まぁ、それは怒る相手が居ないからストレス発散出来ないんじゃないかと思うんだけど…と。ゼロスは相変わらずスットコ神官だって事」
 「………なるほど、字を覚えたての小学生の手紙ですからね…真意が伝わらなかったのかも知れませんね………………」
 「なにおう!学校の先生だって『上手に書けてるわ』って褒めてくれたんだぞ!!!!」
 何を隠そうこの手紙は「手紙を書こう」という授業で書かれた物で、担任教師の添削まであったのだ。文法も、スペルも間違いはない。
 そして先生は「問題が解決すると良いわね」とまで言ったのだ。先生に伝わっていて、アメリアに伝わらないはずはない。
 ただ、そのとき先生は笑いをこらえるように、肩を微妙に振るわせていたのが気になったが。
 「それでは、アメリアさんの思い過ごしか何かでしょう…僕は関係有りませんよ!こんな事出来るはず無いじゃないですか」
 手紙をくしゃくしゃに握りつぶし、震えるゼロス。
 「何だよ、何て書いてあるんだよ」
 左手の拘束が緩んだすきに握りつぶされた手紙をのぞき込むが、確かに難しい字が多すぎて容易には読めない。
 「しょうがない、母さんに読んで貰う」
 ゼロスの手から手紙を奪うと、先ほどよりも静かになった家へ戻ろうとする。
 「ダメです!寄越しなさい!!!」
 が、もの凄い勢いでゼロスに引き戻される。
 「さっき母さんに読んで貰えって言ったろ!!」
 「とにかく、それはフィリアさんに見せないで下さい」
 「じゃ、ゼロスが読んでくれるのか」
 「読めません!そんな事したら僕が滅んじゃいます!」
 「なんだそりゃ?」
 ふざけてんのか?とも思ったが、どうやらそんなことはないらしい。
 それどころか真剣そのもの。顔も心なしか青ざめている。
 手紙を読んだゼロスは「関係ない」と言っていたが、その顔色を見れば手紙の内容が正しかったことは間違いないだろう。
 問題解決にきっと役立つはずだ。
 「とにかく。今のこの状況を何とかしてくれるのはこの手紙だけなんだからさ、ゼロスもわかってんだろ?」
 「しかしですね、その手紙が全て真実だとも思えませんし………」
 「とか言ってる割に、顔色良くないし。心当たりとかあんじゃねぇの?」
 オレを捕まえる手が「びくり」と跳ねる。
 らしくない狼狽だ。
 これは100%大当たりって感じか?
 「しかし、しかし…そんな事言ったら、僕の存在自体危うく成っちゃうんですよ〜〜〜〜」
 「知らん!今のオレは魔族の存在よりも、今後の生活だ!!」
 「冷たいですよヴァル君!!!!」
 泣き声。
 「トータルに見て!この状況を作り上げたのもゼロスなら、解決できるのもゼロスだ。獣神官ならドンと行って派手に玉砕してきやがれ!!」
 ドカッ!!!!!!!
 屋根の上の不安定な足場から、オレはテクニカルな回し蹴りを一発ゼロスに見舞ってやった。
 ゼロスはあっさりバランスを崩し、そのまま屋根から転げ落ちる。
 が、猫のようなしなやかさで、不安定な体勢から落ちたとは考えられない見事な着地を決める。
 それと屋根の上の物音に気付いた母さんが飛び出してくるのがほぼ同時だった。
 ゼロスは何とも言えない表情をこちらに向けたが、それも一瞬で。すぐに何かを決意した男の顔になって母さんに向き直り、何事か叫ぶ母さんの肩を掴むと、有無を言わさずどこかへ母さんもろとも消え失せた。
 多分、これから己の存在を賭けて手紙の内容を実行するのだろう。
 屋根の端から見送るオレは心の中で「上手くやれよ」と呟くのだった。
 



 数時間後。
 母さんとゼロスは帰ってきた。無事に。あっさりと。
 そのころには母さんの怒りもウソのように消え失せて。
 ゼロスは「存在云々」と言ってた割には相変わらすそこに存在し続けていた。
 以前の二人と何ら変わったところが無いようにも見えたが、とにかく顔を合わせて10秒でケンカという事態にはもう、成らないだろうという事だけは判った。
 たまにはケンカもするのだけれど。何だかすぐに仲直りするし。器物破損も無くなった。
 ただ、時々そのケンカの内容が…というか、仲直りの仕方が…というか、とにかく二人の態度が息子のオレとしてはなぁんか面白くない感じの時は有るのだが………
 一体あの手紙には何と書いてあったのか。
 ゼロスはどんな魔法を使ったのか。
 母さんに聞いてみたが「秘密です」と笑って交わされてしまった。
 まぁ、あれ以来。母さんもゼロスも満ち足りた生活を送ってるように見えるので、オレは深く詮索しないことにした。
 オレも、今の生活に不満はないわけだし。

 学校の勉強もいくらか進んだころ、初めてアメリアからの返事を全て読めると気づき、ゼロスの使った魔法の正体を知るべくもう一度封から手紙を抜いてみた、が。
 そこには他愛のない世間話。
 それと。赤インクで。
 『ゼロスに正直な気持をフィリアさんに伝える様に言いなさい、私達もそうやって上手く行きました』
 としか、書かれていなかった。
 何のことかさっぱりだ。

完。


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うちのゼロスって弱いですね…頭が(死)
格好いいゼロスは夢のまた夢でしょうか、力量的に。
私はゼロスがたまに見せる「かわいげ」が好きなんですが…こんなに弱いゼロスは可愛くないですね(凹)

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17453青インク♪(激しく待テ)紫嵐 E-mail 2001/10/9 19:01:26
記事番号17451へのコメント

>こにちわ。Bゆうきです。
こんばんわ。紫嵐っス!

>またまたゼロス×フィリア+ヴァルガーヴです。
をぉ!
>でもフィリア全然出番ないです、これっぽっちも。ヴァルとゼロスばっかり出張ってます。これでゼロフィリというのはおこがましいかも…いや、絶対おこがましい(苦)
そうなんでしょーか?

>でもでも、読んでいただけたら幸いかも…(弱気)
んな弱気になんないでくださいよ!
読んで楽しませてもらいます!


> ゼロスは何とも言えない表情をこちらに向けたが、それも一瞬で。すぐに何かを決意した男の顔になって母さんに向き直り、何事か叫ぶ母さんの肩を掴むと、有無を言わさずどこかへ母さんもろとも消え失せた。
> 多分、これから己の存在を賭けて手紙の内容を実行するのだろう。
> 屋根の端から見送るオレは心の中で「上手くやれよ」と呟くのだった。
> 
> 数時間後。
> 母さんとゼロスは帰ってきた。無事に。あっさりと。
何処につれていってたんだぁああああああ!!ぜろすぅぅう!!


>うちのゼロスって弱いですね…頭が(死)
あ、確かに(フォロー無しかい、自分)

>格好いいゼロスは夢のまた夢でしょうか、力量的に。
あははははは(^_^;)
でもゆうきさんの力量なら書けますよ!絶対に!

>私はゼロスがたまに見せる「かわいげ」が好きなんですが…こんなに弱いゼロスは可愛くないですね(凹)
そうですか?可愛い云々はよく解らないけど、面白いな、とか思います。
ゼロスが女でも彼女にはしたくないけど(キッパリ)。
次回もゆうきさんの小説を楽しみにしています!では、紫嵐でした。
感想になってなくてごめんよ!!

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17472Re:青インク♪(激しく待テ)Bゆうき E-mail URL2001/10/10 09:45:09
記事番号17453へのコメント

紫嵐さんいつも感想有り難うございます(ぺこり)
青インク♪(爆笑)ぢゃ、次のタイトルは青インクで・・・冗談です(笑)

>> ゼロスは何とも言えない表情をこちらに向けたが、それも一瞬で。すぐに何かを決意した男の顔になって母さんに向き直り、何事か叫ぶ母さんの肩を掴むと、有無を言わさずどこかへ母さんもろとも消え失せた。
>> 多分、これから己の存在を賭けて手紙の内容を実行するのだろう。
>> 屋根の端から見送るオレは心の中で「上手くやれよ」と呟くのだった。
>> 
>> 数時間後。
>> 母さんとゼロスは帰ってきた。無事に。あっさりと。
>何処につれていってたんだぁああああああ!!ぜろすぅぅう!!
めくるめく、夢の世界へです(笑)しかも何処の誰にも邪魔されないような!!!(力説)

次こそは格好いい獣神官ゼロスを書くぞと誓いを胸に秘め!
でも内容は今度こそゼロフィリから遠のきそうだと覚悟を決めながら(死)
それでもプロット自体まだまだ立ててなかったり…ダメじゃん…

格好いい獣神官様は他の方が書いてるからうちは頭の悪いままでもいいかとか思ってみたり…


それではこの辺で、乱文失礼します Bゆうき拝