◆−狭間の存在 前−MIGU (2001/9/11 12:13:11) No.17049
 ┗狭間の存在 中−MIGU (2001/9/11 12:31:44) No.17050
  ┗はじめまして−一坪 (2001/9/13 19:56:01) No.17118
   ┗Re:はじめまして−MIGU (2001/9/25 14:12:43) NEW No.17250


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17049狭間の存在 前MIGU E-mail URL2001/9/11 12:13:11


こんにちは。不定期にこのHPにお邪魔させて頂いてるMIGUという浮遊物体です。いつもは大抵読んでばかり(欧)なんですが(−−; 
えーと、この話はガウリナ(?)です。
一度私のHPにアップしたものなんですが(蹴)、なんとなく気に入ったので…(爆)加筆修正して投稿させていただきました。
季節を間違っていますけが、気にしないで下さい(−−;;




狭間の存在 前編



「さむっ・・・。」

辺りは静まり返り、空気は冷たく凍っていた。
さくりさくりと足もとの雪が気持ちの良い音を立てる。
あたしは一人、クリスマスとかいう祭りの前夜祭で沸きかえる町を離れ、森の中を歩いていた。
といっても、別に盗賊いじめに行くのではない。
1000年に一度、新しい「世紀」とかいうものが始るときにしか見ることのできないあるものを見るためだった。
「世紀」それは、この地方独特の年月の区切り。
文献にもあまり載っていなかったが、あたしを惹きつけたのは、とある有名な魔道士が書いた文献の一行。


「―言葉には言い表すことの出来ないもの―」

その魔道士は、詩やサーガにもすぐれ、吟遊詩人としても活躍していた人物だった。
その人物が「言葉では言い表せない」と書いていた。
「美しい」「神々しい」「神秘的」そんな人間の言葉では表せないものだと。
そしてそれは女性以外は見ることができないのだと言う。
文献によると、男性が居るとそれは見れないのだそうだ。
もし運良く見れたとしても、それが怒り、見たものは命を失う、と別の古い文献にあった。

それが見ることが出来るのは、鏡の泉と呼ばれる小さな泉。
昨日、ガウリイとこの街に来るときに見たのだが、直径がほんの3,4メートルしかない。
だが、清らかな水がこんこんと湧き出し、辺りには静謐な空気が流れていた。
今夜ここに一人で来ることは、もちろんガウリイは反対していた。
だが、以前から見てみたかった、その為にこの街に来たのだ等と言ってなんとか説得し、
渋るガウリイを宥めすかして、あたしは今ここにいた。
遠くに街の明かりが微かに見えた。
  


  ざくり…

泉に辿りつき足を止める。後ろには点々と一人分の足跡。
「そういえば、こうして一人で行動するのって久しぶりよね…。」
そう一人呟き、自らリナの保護者を公言する男の過保護振りを思い出し苦笑する。
今年でリナは19になった。
今まで色々なことがあり、自分の中で色々なものが変わり、そして変わらないものも沢山あった。
身長もそれなりに伸び、以前のように年下に間違えられることも少なくなった。

けれど、彼は変わらない。

今の関係は心地よく壊したくはなかった。けれど、このままというのも嫌だった
告白しようと何度も思った。けれど、迷いがあった。
彼が子供扱いをするということも原因の一つだが、もっとも大きな原因が一つ。
最近の身体の変調。
あのルークとの…戦いから、少しずつ何かがおかしくなっていた。
一定の長さから伸びない髪、魔力の増加。
そして近頃では視界に別の視界がダブるようになった。
そう、もう一つの視界が見ているのはおそらく…
アストラルサイド…。
今日ここに一人で来たのは、一人でじっくりと考え、踏ん切りをつける為でもあった。
―だから、こうしてガウリイを置いて……。
思考がふと中断される。
冷たい風がリナの髪の毛を攫っていった。
辺りに静かな緊張が満ちていく。
それと反対にざわざわと胸の奥が蠢く。
言い様のない高揚と緊張、僅かな不安……
現れたそれは親指の先ほどの小さな光りだった。
その白銀の小さな光りが次々と泉の上に現れ、飛びまわり数を増していく。
「!」
波が広がっていくように一瞬にして小さかった泉が広がっていく。
そしてリナはその泉、いや湖の上に立っていた。
立っていたというのは正しくないだろう。
ほんの数センチ湖面の上に浮いていたのだ。
つま先を伸ばすと湖面に触れた。そこから静かに波紋が広がっていく。
リナが驚いている間に白銀の光りは数をどんどん増していっていた。
リナの周りまでもが白銀の光に包まれ、それが一瞬にして掻き消えた。
あれほどあった白銀の光りはなくなり、湖面の上には不思議なものが現れていた。

それは水晶でできた檻。
その中には一人の女性。
その身長よりも長い銀の髪。
薄く透けた白布を幾十にも重ねたような白地に銀の刺繍が施されたドレス。
俯いている為顔は見えなかったが、その頭上には繊細な銀細工に虹色に光る宝石が飾られたティアラ。
リナの気配を感じたのか、女性が顔を上げた。
リナは思わず息を呑んだ。
雪の様に白い肌。銀色の睫毛に縁取られた瞳は、アイスブルー。
その顔は、どう見ても色違いのリナだった。
相手もリナを見て、驚愕に固まっていた。
その桜色の唇が僅かに震え音を紡ぐ。



「貴方は…誰…?」








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17050狭間の存在 中MIGU E-mail URL2001/9/11 12:31:44
記事番号17049へのコメント


短いです。ひっじょーに、短いです(爆死)





狭間の存在



2人は無言のまましばらくのまま見つめあっていた。


「貴方は誰なの?」

女性がもう一度リナに尋ねた。
…魔族、には見えない。かと言って普通の人間であるはずがない…
けれど……
「リナ。リナ=インバース…。」
直感。この女性は少なくとも敵ではない。
数々の戦いを潜り抜け、身についた直感。
敵か味方かを嗅ぎ分ける戦いの中で生死を分けるものにもなる判断。
どこか儚げな陽炎のような彼女。
敵意やそう言ったものではなく、彼女から感じられるのは不安と当惑。

…当惑?
彼女は当惑しているようだった。
…まあ、色違いとはいえ、自分と同じ顔が現れたのだから、当惑もすると思うけど…
微かに何か引っかかるものがあった。

「リナ…。」

その名を、何かを確かめるように繰り返し呟く。
彼女の瞳には先ほどまでのどこか儚げな様子は全く消え去っていた。
深い知性を秘めた強い眼差し。
「貴方は?」
リナが問い返す。
しかし彼女はそのまま考え込んでしまい、リナの質問に答えなかった。
小さく呟いた彼女の言葉がリナの耳に届いた。
ぴくりと思わず体が反応する。

 ―まさか…?


「まさか…全ての母…異世界の?…」


すっと彼女が顔を上げる。冷たい表情。それがふっと緩む。
小さな溜息。

「どうやら貴方は異世界の私のようね。」

普通なら驚くような答えなはずだが、リナは自分でも驚くほど落ち着いていた。
…どこかで感じていたのかもしれない。
わずかな懐かしさを?混沌の香りを?
だが、まだ何かが心に引っかかっていた。
「貴方は誰なの?」
それに全ての答えがあるような気がした。

「それに…なぜ封印されているのよ?」

そう彼女は封印されていた。
彼女を閉じ込めている檻からは人外の強い魔力が感じられた。
彼女は哀しそうに、けれども楽しそうに苦笑した。
その顔が変わる。
不思議な雰囲気を宿した表情。どこか、あの存在の匂いがした。
彼女が口を開く。


「私は、カレナ=ルーシェイス。氷の魔女と呼ばれ、封印されし者。
 永久に時の流れと混沌を見つめ続けるもの。」





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17118はじめまして一坪 E-mail 2001/9/13 19:56:01
記事番号17050へのコメント

投稿ありがとうございました!

えーー完結してからレスしようと思ってたんですが、もうしちゃいます。
幻想的なお話ですねー。
描写が素晴らしくて情景がすごくイメージしやすかったです。

続き、楽しみにしています。

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17250Re:はじめましてMIGU E-mail URL2001/9/25 14:12:43
記事番号17118へのコメント

一坪さんへ 感想ありがとうございました。レス遅くなってすみません(−−;えーと・・・実ははじめましてではないんですが・・・(笑)長い間どこかを漂っていたので、似たようなものかもしれませんね(笑)これから、ちょくちょくお邪魔すると思いますんで、よろしくお願いします。