◆−ザ・デストロイヤー:前ふり−キューピー/DIANA(2/26-20:10)No.13938
 ┗ザ・デストロイヤー:1.ゾンビ−キューピー/DIANA(2/26-20:11)No.13939
  ┗ザ・デストロイヤー:2.吸血鬼−キューピー/DIANA(2/26-20:12)No.13940
   ┣ゼルがかっこいい……Vv−ねんねこ(2/27-10:08)No.13947
   ┃┗ありがとうございます!−キューピー/DIANA(2/27-21:25)No.13962
   ┗ザ・デストロイヤー:3.女邪神−キューピー/DIANA(2/27-21:26)No.13963
    ┣物知りさんv−ろれる(2/28-01:04)No.13973
    ┃┗ありがとさんっV−キューピー/DIANA(2/28-21:39)No.13979
    ┣エジプトのゼロス??−toto(2/28-11:54)No.13974
    ┃┗感想をありがとう!−キューピー/DIANA(2/28-21:40)No.13980
    ┗ザ・デストロイヤー:4.死神−キューピー/DIANA(2/28-21:41)No.13981
     ┣でもって相変わらず−ろれる(3/1-00:46)No.13987
     ┃┗Re:でもって相変わらず−キューピー/DIANA(3/1-20:28)No.13992
     ┗ザ・デストロイヤー:5.骸骨−キューピー/DIANA(3/1-20:29)No.13993
      ┗ザ・デストロイヤー:6.死の淑女−キューピー/DIANA(3/2-21:40)No.14007
       ┗ザ・デストロイヤー:7.異端者−キューピー/DIANA(3/3-21:00)No.14031
        ┣アンデット・ハイソサエティ・クラブ創設のお知らせ−ろれる(3/4-00:54)No.14052
        ┃┗(^^;)−キューピー/DIANA(3/4-20:42)No.14056
        ┗ザ・デストロイヤー:8.混沌−キューピー/DIANA(3/4-20:43)No.14057
         ┗ザ・デストロイヤー:9.スレイヤーズ−キューピー/DIANA(3/4-20:44)No.14058
          ┗ザ・デストロイヤー:後書き−キューピー/DIANA(3/4-20:45)No.14059
           ┗うおおおおお!!−駒谷まや(3/5-23:11)NEWNo.14079
            ┗どうも〜−キューピー/DIANA(3/6-20:41)NEWNo.14093


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13938ザ・デストロイヤー:前ふりキューピー/DIANA E-mail URL2/26-20:10


 皆さん、こんにちは。ここへ投稿するのは本当に久しぶりです。
 これから披露するお話は、2年半以上も前に完成していたスレイヤーズのパ
ロディ作品ですが、挿絵を描いてからインターネットに公開しよう、と思って
いるうちにずるずるとここまで来てしまったものです。まだ当分、挿絵も描け
そうにないですし、一部の方から「読んでみたい」とのプレッシャーもありま
したので、こちらに投稿させていただくことにしました。

 内容はアニメTRY後をベースにしたオールキャラ。原作第2部の設定は
ほとんど無視しています(ガウリイの剣は斬妖剣ですが)。そして、スレイヤ
ーズの面々が関わる相手は、アメリカン・ホラー・コミックのキャラクターた
ち。一部、非常に血なまぐさいシーンがあることを、前もってお断りします。
全9話。

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13939ザ・デストロイヤー:1.ゾンビキューピー/DIANA E-mail URL2/26-20:11
記事番号13938へのコメント

       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 一.ゾンビ

 あたしと連れの男は、大勢のゾンビに取り囲まれている。
 あたしとは、天才美少女魔道士にして戦士、リナ=インバース。華奢な身体
につぶらな瞳。自慢の栗色の髪を背中に垂らし、黒いマントを翻せば、どんな
悪党でもびびってお宝を差し出す。
 連れの男とは、顔と剣の腕は抜群によく、頭脳と味覚はからきしの傭兵、ガ
ウリイ=ガブリエフ。胸甲冑にロング・ソードという軽装ながら、その鮮やか
な腕前と、見かけによらない非常識さは、黄金竜(ゴールド・ドラゴン)もび
っくり!の強力な味方。「リナの保護者」を自称しているが、あたしが面倒を
みている、と断言していいだろう、うん。
 あたしたちは、ちょっとした因縁で魔族とコトを構えている最中なのだが、
以前、一緒に高位魔族冥王(ヘルマスター)フィブリゾとやりあったセイルー
ンのお姫様、アメリアの依頼で、今、ゾンビ退治と情報収集をかねてここへ来
た。
 二日前、この町でゾンビが発生して人々を襲い始め、アメリアがその対策協
議会の委員を勤めているからだ。
 あたしたちに迫っているのは、土気色の無表情な顔に、妖しい緑色に瞳を輝
かせた死人たち。皆、胸や頭・腹などに恐らくそれで命を落としたであろう傷
を見せ、血を滴らせている。不思議と、墓場から蘇ったという雰囲気の、腐り
かけゾンビは見当たらない。
 どこからこいつら、湧いて出た?ハンパな数ではない。もしかしたら、町の
人口の半分はゾンビになっているのではないか?
 「火炎球(ファイアー・ボール)!」
 あたしの放った炎に三体のゾンビが巻かれるが、燃える身体をものともせず
進んで来る。このタフさが、彼らの売り物なのだ。
 「かぁっ!」
 一声叫んで、ガウリイが二体のゾンビの胴を両断する。上下に分かたれたア
ンデッドが、上半身ははみ出した内臓を引きずりながら、下半身は立ったまま、
迫って来る。うう、気持ち悪いっ。
 「浄化炎(メギド・フレア)!」
 あたしは四つになった二体分のゾンビに、『破邪』の炎を放つ。これは炎で
ゾンビの身体を焼くだけではなく、その存在を無に還す呪文だ。これに巻かれ
れば、ゾンビと言えどももう動くことはなく燃え尽きるだけ……なのだが。
 相手にトドメを刺した、と思って、次の相手に立ち向かうため、後ろを見せ
たあたしの足首を、焼けこげた手が掴む。
 そんな!浄化の呪文が効かない?
 「リナっ!」
 あたしの危機に気づいたガウリイが、走り寄っていては間に合わない、と判
断したのだろう。懐から短剣を取り出し、あたしを捕まえようとしていたゾン
ビの額に投げつける!
 魔力がこめられているわけでもない普通の短剣では、ゾンビには役に立たな
い……はずなのに。
 「ぐあっ!」
 あたしの足に手を掛けていたゾンビは、まるで生きた人間が頭に短剣を受け
たような悲鳴を上げ、動かなくなる。
 おかしい?
 考えてみれば、ガウリイの斬妖剣(ブラスト・ソード)は魔力があり、アン
デッドに斬りつけるだけで消滅させられるのに、このゾンビどもはまるで普通
の剣に斬られたのと同じ反応しか示さない。こいつらには魔力が効かないんじゃ?
 「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 あたしは、精神にのみダメージを与える光の槍を、手近に居た一体に繰り出
す。こいつは呪文を食らっても平気で近づいて来る。
 「ガウリイ!そいつの首をはねて!」
 「おうっ!」
 答えるより早く、彼は一薙ぎでゾンビの首を薙ぐ。血の気の無い頭部は瞳の
輝きも失せ、ボールのように宙を飛んで地面に転がる。
 残された胴体から力が抜け、ゆっくりと倒れる。
 これではっきりした。
 こいつらは死霊術士が召喚するゾンビとは、ちょっと違う。
 頭を武器で攻撃すれば普通の人間のように倒せるが、逆に有効なはずの精神
系の呪文は役立たずだ。物質的ダメージを与える呪文の方がいい。
 誰がこんなゾンビを作ったんだ?
 見た目も、棺桶の中から召喚された雰囲気ではなく、つい数時間前に殺され
たのが、そのまま動き回っているような感じ。普通、死んでから丸一日経たな
ければ、いくら死霊術(ネクロマンシー)を施してもゾンビはできない。魂が
身体との繋がりを保っているからだ。
 魔族どもめ。何やら新手の呪術でも使って来たか。
 それでも一応の対応策は見つかった。ここらが潮時だろう。
「ガウリイっ!いったん、退くわよっ!」
 あたしの言葉に、ガウリイは反射的にあたしの傍に駆けより、肩に手を回す。
彼も分かっているのだろう。これだけのゾンビ相手に、攻撃呪文や剣で退路を
切り開くことはできない。逃げ道は上。
「翔封界(レイ・ウィング)!」
 あたしはガウリイを支え、風の結界をまとって上空へ飛び立つ。
 上から見下ろして。思わず息を呑んだ。ガウリイもご同様。
 あたしたちのいた一画は、ゾンビたちで埋め尽くされている。よく見れば、
町のあちこちで、ゾンビどもが人間を襲っているではないか。
「こ……これは……」
「リナ。これも魔族の仕業か?」
「……だと思う……」
 あたしたちは凄惨な光景を見下ろしながら、とりあえず態勢を立て直そうと、
地獄と化した町から脱出した。

「リナさんっ!そっちはどうでした?」
 セイルーンの巫女、アメリアが着地したあたしたちに駆け寄って来る。
 彼女は今度のゾンビ騒動対策協議会の委員に名を連ねている。艶やかな黒髪
を肩のあたりで切り揃え、白い巫女の服を着、襟元と両手首に青い宝石の護符
(アミュレット)を光らせている。
 彼女の身分は前にも言った通りに王族。聖王国セイルーンの首都、セイルー
ン・シティに居を構える国王の孫。そして彼女の父は、第一王位継承者なのだ。
 あたしは目撃した町の様子を報告した。
「あのゾンビどもには、浄化の呪文や精神系の呪文がきかないの。それよりは
頭や心臓を武器で狙う方が簡単だったわ。
 それにしてもあれほど大量のゾンビを生み出すとは。今までの魔族のやり方
とは違う」
「魔族が新しい呪法でも使っているんでしょうか?」
「いいえ。そんなことはありません」
 アメリアの疑問を否定する声は、あたしたちの傍らから掛けられた。
「「ゼロス!」」
 あたしとアメリアの声が重なる。
 ゼロスは獣神官という肩書き(?)を持つ高位魔族。赤眼の魔王(ルビー・ア
イ)シャブラニグドゥの五匹の腹心の一匹、獣王(グレーター・ビースト)ゼ
ラス=メタリオムに仕えるプリーストである。
 こいつは上司の命令で、人間界で何やらお仕事をやっているのだが、いつも
あたしを利用しようとするから始末が悪い。
 初めは冥王(ヘルマスター)フィブリゾの世界滅亡計画のお仕事、次は異界
の魔王、《闇を撒く者(ダーク・スター)》との決戦。
 どうもこいつと関わると、命懸けの戦いに巻き込まれるのだ。疫病神め。
 黒を基調にした僧侶の服を着、黒髪を肩で切り揃え、右手には錫杖を持つ姿
は当時と変わらない。顔に貼りついた無意味な笑みもそのまま。
「何?このゾンビ騒動は、魔族の仕業じゃないって言うの?」
 あたしは半信半疑で質問する。こいつの性格では、嘘は言わないが、けして
正直な情報を漏らすことがない。
 ゼロスはうなずいた。そして顔を上げた時、その顔から笑みが消えている。
これはかなり深刻な雰囲気だ。
「獣王様に誓って、このゾンビを生み出したのは魔族ではありませんし、魔道
士を使って作らせたのでもありません。
 僕が今、ここにいるのは、この騒動を画策したものについて情報を集め、善
処せよ、という命令を受けているからです」
「それで、何か分かったの?」
 あたしの問いかけに、ゼロスは首を横に振る。
「残念ながら何も。僕が見届けた状況は、リナさんたちが見たのと同じような
ものだと思いますが、とにかく、誰かが最初にゾンビを作り、そのゾンビに周
りの人間を殺させていることは間違いありません。そうやって仲間を増やして
いるのです」
「あなたが行った町ってのは、どこ?」
 ゼロスが言った名前は、あたしとガウリイがゾンビにでくわした町の隣の隣
の町だ。その二つに挟まれた町でもゾンビが発生していることは分かっている。
「……ふうむ。なるほど、魔族の仕業ではなさそうね」
「えっ?なんでですか?」
 アメリアがきょとんとする。正義オタクの彼女には、魔族の意見に賛同する
など、考えられないのだろう。
「これまでゾンビ騒ぎが起きている町は、必ず地続きになっているわ。ってこ
とはゾンビを作っている奴は、地上を移動しているってことよ。
 魔族なら精神世界面(アストラル・サイド)でショートカットして、離れた
土地に同時多発的に騒動を起こすはずよ。いつ、どこでゾンビが発生するか分
からない、となれば、人間は簡単にパニックになるもの」
「そう言えば、一種の伝染病じゃないか、それでゾンビ化しているんじゃない
か、って意見が出るくらい、地域が固まっていますよね」
 アメリアも納得している。その時。
 少し離れた森の向こうから上空へ、白い光球が打ち上げられた。《明かり
(ライティング)》である。
 こんな合図を申し合わせた仲間はいないが、誰かが助けを求めているか、あ
るいは何かを発見した、と呼びかけているのだろう。
「ガウリイとアメリアはここに居て!」
 あたしは《翔封界(レイ・ウィング)》で森を飛び越え、合図が送られたら
しい場所へ着地する。ついでにゼロスもくっついてきた。情報収集が任務であ
る以上、どんな些細な出来事にも首を突っ込む気だろう。
「リナ!」
 少し離れた道端から声が掛けられる。
「ゼルガディス!」
 あたしも彼の名を呼んだ。半年ぶりくらいの再会だ。
 ゼロスと絡んだ命懸けの戦いを一緒にくぐりぬけてきた、精霊魔法の達人、
魔剣士ゼルガディス。
 彼は、元々は人間だったのが邪妖精(ブロウ・デーモン)、岩人形(ロック
・ゴーレム)と合成された合成獣(キメラ)である。目鼻立ちは人間だが、耳
はエルフのようにとがり、全身の肌は青黒い岩と化している。髪は銀色の金属
の糸。その身体を元に戻す方法を探し、諸国を放浪しているはずだが。
「どうしてここに?」
「あんたやアメリアが、ゾンビ騒動の対策協議会に駆り出されている、って聞
いてな。少し気になることがあるんで、とにかく会いに来た」
「気になることって?何かご存知なんですか?」
 ゼロスが割って入る。ゼルガディスは少し眉をひそめる。
 彼は、人間の身体に戻る方法の鍵として探していた異界黙示録(クレア・バ
イブル)の写本を目の前で焼き捨てられたり、いろいろあって、頭からゼロス
を嫌っている。
「何だ?お前がなんだってこんなところに居る?」
「ゼロスはね、上からの命令で、今度のゾンビ騒動について調べているんだっ
て。彼の話じゃ、この騒ぎには魔族は絡んでいないらしいわ」
「ほう……やっぱりね……」
「「やっぱり?」」
 あたしとゼロスの声がハモる。
 ゼルは「気になることがある」とも言った。彼は何か知っているのか?
 問い掛けるあたしたちのまなざしに、ゼルは小さくうなずいたが、具体的な
ことは何も言わない。
「立ち話もなんだ。アメリアと合流してから詳しいことは話すよ」
 あたしたちは宙を飛んで対策本部のある町へ戻った。

「今度のゾンビ騒動についてだが……」
 アメリア、ゼロス、ガウリイ、あたしを前にして、ゼルガディスは語り始め
た。ここは対策協議会の置かれた神殿の、会合用の小部屋。
 ゼルを連れてあたしが対策協議会に戻った時、アメリアはとても喜んだ。彼
女もゼルと一緒に戦って来たが、彼女は何かというと彼にくっついていた。今
回も彼と一緒に行動できる、と喜んでいるらしい。
 本来ならゼル自身が対策協議会で知っている情報を披露するべきなのだが、
何せ彼は異形の姿を人前にさらすのを嫌がる。だから、あたしたちが彼から情
報をもらい、本部へ報告することになったのだ。
「ちょっとゾンビの話から逸れるのを勘弁してくれ。でないと説明し難い」
 ゼルガディスの釈明に、全員がうなずいて了承する。彼は説明を続けた。
「まず、最初にゾンビ騒動が起きた町に、サウンドハウスというライヴハウス
がある。……おい、ゼロス。どうした?」
 見れば、ゼロスは真っ白に脱色して固まっている。
 あたしも内心焦った。
 サウンドハウスと言えば、ヴィック・ラトルヘッドというアンデッドの企み
で、あたしとガウリイが散々な目にあった店の名だ。実はこのヴィックに肩入
れしていたのが、ゼロスの上司たる獣王。ゼロスはそのことで痛く心を傷つけ
られ(魔族に傷つくよーな心があるのか疑問だが)、いまだにそれが尾を引い
ているらしい。
「ゼルガディスさん。魔族なんて放っておいて、話を進めてください」
 アメリアが冷たく言い放つ。ゼルは話を続けた。
「このサウンドハウスはアンデッドの巣窟なんだそうだが、そこのVIPにイ
ーヴィル・アーニーという奴がいる」
 そう。そいつとあたしは戦ったことがある。確か、すんごく凶悪な顔で、身
体はスケルトンに蛍光グリーンのスライムみたいなものをまとわりつかせた、
カーリーヘアのヘヴィメタあんちゃんふうの奴だった。
「このイーヴィル・アーニーってのは、ファンタジーの世界のキャラなんだが、
そいつが今度のゾンビ騒ぎの元凶なんじゃないか、と思うんだ」
「なんで?」
 これはあたし。
「アーニーは、カオス・ワールドですべての生き物を死に至らしめることを目
標にしている。そして奴は死人(しびと)を操ることができるんだ。
 俺の聞いた話じゃ、今回、最初にゾンビが現われたのがサウンドハウスがあ
る一画だ。それで、もしや、と思ったのさ。
 もし、奴がカオス・ワールドでやっているのと同じように、こちらにも《メ
ガデス》をもたらそうとしているなら、今度の騒動は説明がつきやすい」
「何、その《メガデス》って?」
「俺もよく知らないんだが、大量殺戮という意味らしい」
「じゃ、じゃあ、そのイーヴィル・アーニーが、生きている人間全員をゾンビ
にするつもりだというのですか?」
 ようやく気を取り直したゼロスが言う。
「ゾンビにすることが目的じゃない。命あるもの全てを死なせることが目的だ。
 まあ、アーニーが原因だという証拠があるわけじゃないがな」
「どうやって証拠を掴みます?」
 素っ気無く言うゼルに、おずおずとアメリアが尋ねる。
「証拠を掴む?」
「だって確証もなく、ファンタジーの登場人物が元凶だ、なんて言っても、対
策協議会では相手にされませんよ」
 あたしたち全員は顔を見合わせた。アメリアの言う通りだ。
 ここはなんとか、そのイーヴィル・アーニーとやらが関わっていることを確
かめなくてはならない。
 もし、本当に奴が元凶なら、一度は倒している相手。簡単にケリをつけられ
るだろう。ゼルが詳しいなら弱点も知っているかもしれない。
 あたしはゼルに言った。
「何かアイディアある?」
 ゼルは視線をあたしから目の前のテーブルに落とし、しばらく考えていた。
「……サウンドハウスが鍵だと思う。本来この世界ではアーニーの力が十分に
発揮できるとは思えない。どこかで、この世界とカオス・ワールドが繋がって
いる可能性が高い」
「でも、最初にゾンビが発生した町、と言えば、ソンビたちの真っ只中ですよ。
簡単にたどりつけません」
「そうだ。だから俺も直接そこへ行くのを諦めて、リナたちと合流するのを先
にしたんだ。だが……」
 ゼルはチラリとゼロスに目をやる。
「ここは魔族の力を借りるか」
 ゼロスの顔がクエスチョンマークになる。ゼルは意地の悪い笑みを浮かべた。

 あたしたち――ゼル、アメリア、ガウリイ、あたし――はサウンドハウスの
上空に来ている。魔法が使えないガウリイは、ゼルの背中にしがみついている。
 ゼロスは既に地上に降りて、作戦実行の準備を整えている頃。
 上から見ていると家並みはごく普通に見えるが、外壁が壊されている家は、
中の人間を襲ったゾンビたちの仕業だろう。ところどころに見える人影は、よ
く見れば足取りがおかしい。この町で動いている者は、みんな動く死体なのだ。
 ゼルの提案は、ゼロスが囮になって地上のゾンビどもを引き付け、魔族の力
で一掃する。その間に、あたしたちはサウンドハウスに突入し、中を探る、と
いうものだった。
 少し離れた街の広場で、閃光が走る。ゴミが飛び散るように見えるのは、爆
風に引き裂かれたゾンビの身体だろう。
 それを合図に、あたしたちはサウンドハウスの前に降り立った。

 前に来た時と同じように、地上から地下に降りる階段を進むと、一番下に鉄
の扉があった。受付に人影はなく、まっすぐ扉に向かう。
 扉を開け、中に入ると真っ暗だった。あたしは呪文で光を生み出し、室内を
照らし出す。
 壁際のバーカウンター、奥のステージ、その前のフロア、隅に並んだソファ
とテーブル、螺旋階段の上のVIP席……何もかも、前に来た時と変わらない。
いや、前に来た時は明かりが点いていて、バーにはアンデッドのバーテンダー
がいたっけ。
 ゼルが光を手にフロアに進み出て、あたりを見回している。アメリアがそれ
に並びかけ、薄気味悪そうにステージを眺める。
 あたしとガウリイがこのライブハウスでアンデッドと戦った時、召喚された
敵はステージから現われた。あたしはステージに歩み寄り、ガウリイが続く。
 四人がフロアに固まった時、突然、あたりの空間が揺れ、あたしたちの光さ
え届かぬ暗闇があたりを覆う。
 不思議な闇だった。あたしたちは互いの顔をはっきり見分けられるのに、そ
の背後の光景が何も見えないのだ。
 誰もが無言で警戒の表情を浮かべ、立ち尽くした。

     * * * * * つづく * * * * *

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13940ザ・デストロイヤー:2.吸血鬼キューピー/DIANA E-mail URL2/26-20:12
記事番号13939へのコメント

       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 ニ.吸血鬼(ヴァンパイア)

 突然暗闇が晴れると、あたしたちは見たこともない景色の中にいた。
「……こ、ここは?」
 ガウリイがうめく。
 あたしたちは大きな通りにいた。
 まるで巨人用の街道かと思うほどの道幅である。
 その両側にそびえる建物も、巨人の住まいと言ってもいいくらいの規模だ。
しかし、窓や出入り口のサイズは、どうやらあたしたちと同じ大きさの居住者
用に作られている。
 見渡す限り――と言っても、建物が巨大すぎて、通りの先しか見ることは出
来ないのだが――土とか木々の緑は見えない。地面は何か固い岩のようなもの
で覆われて、まるで地面に固いカバーをかけたようだ。
 この町並みを作っている建物は、とにかく巨大。通りに面する幅も、まるで
領主の館並みの幅で、それがずっと見上げるほど高くそびえている。一体、ど
うやってこんなものが作れるのだろう?
 材質も未知の物だ。固い感触がするが、細かい結晶が見えるところから、砂
を固めて形を整えているのだろう。砂をこんなに固くする技術がここにはある。
 あたしはゼルをみやった。
 ゼルはイーヴィル・アーニーのことを知っている。もし、ここがアーニーの
カオス・ワールドなら、ゼルは何か知っているのではないのか?
「ゼル?ここがどこだか、分かる?」
「いや、今、それを探っているところだ」
「探るって……何か手がかりでも?」
 アメリアの問いに答えないまま、ゼルは道端に落ちている紙屑を次々と拾い
上げる。十枚ほども拾って、彼はそれを両手で持ち、細かい文字や絵のような
ものがびっしりと書かれたそれを調べ出した。特に、紙の端、欄外の文字を念
入りに調べている。
 やがて顔を上げ、ゼルは言った。
「分かった。ここはロサンジェルスという都市だ」
 あたし、アメリア、ガウリイの目が点になる。
 ゼルガディスの言葉に立ち尽くし、何も言わないあたしたちに視線を走らせ、
ゼルはあっちを向いてくすくす笑い出す。あたしたちの表情がよっぽど間が抜
けていたんだろうが。
「そ、それが分かったところで、どうなるって言うのよ!」
 あたしが思わず声を荒げたのは、はっきりと事情を知りたいのに、どこから
取っ掛かればいいのかさえ分からない現状に、苛立っていたのだろう。
 ゼルは肩をすくめて言った。
「……俺の読みが当たっていれば、この都市にイーヴィル・アーニーがいる」
「え……?」
「アーニーがメイン・キャラを張る物語では、彼はロサンジェルスにも立ち寄
っていた。多分、カオス・ワールドでの彼の居場所と、俺たちの世界のサウン
ドハウスが繋がっているから、俺たちはここにたどり着いたんだろう」
「だけど……どうやってアーニーを探します?こちらの世界の人間に助けを借
りますか?」
 アメリアが心細そうに問う。
「……いや、止めた方がいい。この世界に充満している緊張が分からないか?
 今、この世界はアーニーがもたらした災難が原因で、世界的な戦争がいつ始
まってもおかしくないんだ。下手にこの世界の人間と関わると、俺たちが敵と
みなされる危険は大きい」
 言葉を切ったゼルは、上を見上げる。つられて上を見たあたしの目には、巨
大な建物の頂で直線的に区切られた、どんよりと曇った空が映る。
「とりあえず夜を待とう。それまで、どこかに身を隠しているのがいい」
 あたしたち三人の目が、上を見たままのゼルに集まった。

 あたしたちは、人気の無い建物の一室に入り、風の結界を張って話し声が漏
れないようにした上で、ゼルから詳しい説明を受けることになった。
「まず、イーヴィル・アーニーってどんな奴なの?彼はこの世界で何をやって
いるの?」
 あたしが尋ねると、ゼルは「長くなるが」と前置きして話し始めた。
「アーニーの本名はアーネスト・フェアチャイルド。彼は普通の子供だったら
しいが、両親が異常なまでに彼を虐待したんだな。行儀が悪いとか、成績が悪
いとか、理由をつけては彼を殴り付けるなどした。
 そんな環境で成長したアーニーは暗い人格になり、友達も出来なくて孤独だ
った。その彼の夢に、一人の女性が現われる。
 地獄の支配者を自認する、レディ・デスだ」
 レディ・デス――そいつともあたしはサウンドハウスで戦った。恐ろしさと
優しさをあわせ持つ美女。そんなに強力な相手だとは感じなかったが、カオス
・ワールドではかなりの力を持っているらしい。
「レディ・デスはアーニーに『自分はお前を永遠に愛する。だからお前の私に
対する愛情を示しておくれ』と言った。彼女の望みは、地上からすべての生き
物を消滅させること。
 アーニーは彼女への愛を表現するために、自分の両親と近所の人間数十人を
一夜のうちに殺したが、捕らえられ、精神病院に送られた。
 そこで医者は、彼に殺戮本能を分離する治療を施したが、機械仕掛けのその
治療の最中、事故が起こり、人間アーネスト・フェアチャイルドは死亡した。
と、同時に、地上とは別の世界に居るレディ・デスの力が働いて、彼は《メガ
デスをもたらす者》イーヴィル・アーニーとして蘇ったんだ」
 なんだか、イーヴィル・アーニーって悲惨な過去を背負ってるんだな……
「彼はレディ・デスの神秘の力を与えられていて、自分が殺した人間を操るこ
とができるし、ほとんど不死身さ。そうそう、殺した人間の首を取り、その頭
に残っている意識に働きかけて知識を得る、ということもやってのけるな。
 一方、奴に操られている死人は、普通の人間を殺すのと同じやり方で倒せる」
「一つ、質問」
 あたしは手を上げた。ゼルは黙ったまま、あたしに視線を向ける。
「アーニーがモンスターとなるのに手を貸した、レディ・デスって何者なの?
彼女はなぜ地上の生き物を殺そうとするわけ?」
 アーニーがレディ・デスの望みをかなえるためだけに殺戮を繰り返している
なら、彼女の望みを断ち切れば、アーニーを止めることが出来るかもしれない。
そのためにも、レディ・デスの意図を知りたかった。
「レディ・デスも元々は人間だった。アーニーから溯ること四百年前、ピース
(平和)という国の領主の娘、ホープ(希望)として生まれたそうだ。
 彼女の父は、天国を追われた堕天使が人間との間に作った子供の末裔で、地
獄の魔王ルシファーの信奉者だった。一方、彼女の母親は天国の神の恩恵を受
けた血筋の出身で、ホープは堕天使、つまり悪魔の血と、天の恵みを受ける神
聖な血の両方を受け継ぐ、特別な存在だった。
 彼女の父は妻を殺したが、自身も悪魔を崇めていることがばれて殺された。
そして彼の娘であるホープも、魔女として焼き殺されたのさ。彼女の魂は地獄
に引き込まれたが、それは彼女の父親が、娘を魔王に献上する、と約束してい
たためだった。
 魔王ルシファーは、俺たちの世界でシャブラニグドゥとスィーフィードが戦
ったように、天に対して戦争を仕掛ける計画を持っていた。天の恵みを受けた
血を引くホープは、神との戦いで最大の戦力になる。地獄の者は、天の炎に触
れただけで滅びてしまうほど、天は地獄にとって驚異なのだそうだ。
 彼女は、自分の運命が魔王ルシファーに弄ばれていることが我慢できず、ル
シファーを倒すこと、命を取り戻し故郷に帰ることを願った。
 長い間、彼女はルシファーの奴隷だったが、ついにルシファーと対決し、そ
の力を奪って魔王を倒し、彼女はレディ・デスになった。今は地獄の中の《果
てしない墓場(エンドレス・グレイヴヤード)》というところの城に君臨して
いる。
 だがルシファーは最期の瞬間、彼女に『生きとし生ける者がいる限り、お前
は地上には戻れない』という呪いを掛けたのだ。
 彼女がアーニーに、地上の生き物をすべて殺せ、と言ったのは、彼女が故郷
へ帰ることを熱望しているからなのさ」
 ゼルが語るレディ・デスの話に耳を傾けていたアメリアの表情が、次第に曇
っていく。愛と真実と正義をモットーにする彼女にとって、たとえ半分でも善
や愛の象徴である天の血を引くホープが、なぜ地上に死をもたらすのか、理解
しがたいだろう。
 だが、どんな人間にも妄執ともいうべき願望がある。特に強い力を持ち、そ
の力に自信を持っている者は、けしてその願いを諦めない。ゼルを合成獣(キ
メラ)にした赤法師レゾがそのいい例だ。
 現代の五大賢者に挙げられるほどの魔力と技を持ち、ひたすら自分の目を開
きたい、と願い続けていた。どんなに魔法を身につけ、呪文を研究しても、自
分の目を開くことができない、と悟った時、赤法師は賢者の石を使って魔力を
増幅することを思いついた。伝説的な賢者の石を探すために、普通のことをや
っても見つけ出せるはずもない。だからレゾは、ゼルを合成獣にして手足のよ
うに使い、賢者の石を探させたのだ。
 レディ・デスも同じ。ゼルの話では、彼女は今、地獄とやらにいるのだろう
が、そこから地上の出来事に手を出すことができないから、アーニーに地上で
殺人をやらせている。
 あたしはなんとなく、ゼルがイーヴィル・アーニーについて詳しく知ってい
るわけが分かるような気がした。
 まあ、少しアーニーの背景が分かったところで、どうやって彼を止めるか。
少なくとも、あたしたちの世界での殺戮だけでも止めなければならない。
 ゼルの話に区切りがついたのを見計らって、あたしは尋ねた。
「ねえ。イーヴィル・アーニーのことは大体分かったわ。
 で、前にアメリアが言った質問だけど。どうやってアーニーを捜すつもり?」
 ゼルは小首をかしげて答える。
「アーニーには連れの女がいる。そいつをおびき出して、アーニーの行方とか、
なぜ俺たちの世界で殺しをしているのか、聞き出そうと思うんだ」
「そんなモンスターと一緒に行動している女性がいるんですか?」
 アメリアがびっくりして叫ぶ。ゼルは少し苦笑した。
「普通の女じゃない。吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)さ」
「「吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)?」」
 ゼル以外の全員の声が重なった。ゼルがうなずく。
「彼女は吸血鬼に雇われ、主に吸血鬼をターゲットにする暗殺者(アサッシン)
だ。彼女も吸血鬼なんで昼間は動けない。だから夜まで待つのさ」
「でも、どうやっておびき出すんです?」
「まあ、細工は流々、仕上げを御覧(ごろう)じろ、ってところさ」
 ゼルはニヤリと笑って見せた。

 そして夜。
 さすがに外が暗くなったので、夜が来たことが分かった。
 あたしたちは最初にたどり着いた大きな通りに立ち、ゼルの行動を見守る。
 彼は自分の短剣を取り出し、それに魔力を乗せて自分の左腕に傷をつける。
流れる血を彼は右手で受けた。掌からあふれた赤い滴が地面に斑点を描く。
「ゼルガディスさん!」
 アメリアが叫んで傷に《治癒(リカバリィ)》をかけようとしたが、ゼルは
断った。
「よせ。この血が吸血鬼を呼び寄せるエサなんだ」
 彼は召喚呪文を唱え始める。
「吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)よ。この血にかけて汝を呼ぶ。
疾(と)く、姿を見せよ」
 やがて、彼の声に答えるように、今まで聞いたことも無い音が通りの向こう
から響いてきた。
 ガウリイが剣の柄に手を掛ける。彼は恐ろしく目がいいから、かなり遠くか
らやってくる姿が見えたのだろう。
 初めは黒い影にしか見えなかったのが、近づいて来ると、金属の塊のような
乗り物に乗った、赤毛の若い女の姿が見分けられる。
 彼女の乗り物は、前後一つずつの車輪を持っている。車輪の間に座席があり、
そこにまたがった女は、前の車輪に伸びる、牛に繋いで畑を耕す鋤の持ち手の
ような金属の棒を掴んで、乗り物を操っている。
「あれが、その暗殺者なの?」
 あたしの問いにゼルはうなずき、自分で左腕に《治癒(リカバリィ)》をか
ける。
 やがて、赤毛の女はあたしたちの前で乗り物を停め、通りに立った。
 身長がかなりあるのは踵の高い靴を履いているせいもあるだろう。くせのな
い赤毛を短くし、身体にぴったりする下着のような服を着ている。あらわにな
った左の鎖骨のあたりに、コウモリの刺青がある。足にはももまであるブーツ。
プロポーションもいうことなしだが、腰のくびれのあたりに巻いた幅の広いベ
ルトには、ズラリと小ぶりのナイフが並び、両脇から二挺の細身の短剣の柄が
覗いているところは、さすが暗殺者。
 顔立ちは美人で、赤い唇には不敵な笑みが浮かんでいる。ただ、目が普通じ
ゃない。緑色の瞳がガラスのように生気がない。そのくせ貪欲な表情を見せて
いる。鋭い犬歯を覗かせる唇から、言葉が漏れた。
『あたしが吸血鬼暗殺者よ。あんたたちは?』
「俺たちはサウンドハウスの世界からやって来た」
 答えたゼルに、赤毛の女が目をやる。彼の左腕に流れる血を見て、ぺろりと
舌なめずりをした。ゼルは右手に溜めた自分の血を彼女に差し出す。
「これが欲しいか?」
 女吸血鬼はゼルの顔と差し出された右手を交互に見ていたが、急ぎ足で歩み
寄ると、喉の乾いた子供が親の手から水を飲むように、喉を鳴らして彼の血を
飲んだ。
『ううん、素敵!人間の薄い血とはわけが違うわ』
「もっと欲しいか、チャスティティ?」
 ゼルはあたしたちの言葉を、彼女は彼女たちの言葉をしゃべっているのだが、
その意味するところは通じ合っているらしい。実際、あたしたちにも彼女の言
うことは伝わっている。
 ゼルに名を呼ばれ、女は警戒するように顔を上げた。
『どこであたしの名前を?』
「俺はお前のことをいろいろ知っている」
 チャスティティと呼ばれる赤毛の女は、少しの間、ゼルの顔を見上げていた
が、突然、彼の首に腕を回し抱きついた。
 アメリアが顔を赤らめる。
 がきっ!
『あっつっ』
 チャスティティが口を抑えて、一歩ゼルからあとずさる。
 ははあ、さっきのは血を吸おうとして抱きついたのか。しかし、吸血鬼の牙
もゼルの岩の肌には通用しないんだ。
『あんた誰?何者なのよ!』
「俺の名はゼルガディス。見ての通り人間じゃない……いや、血の味の違いで
それは分かっているか」
 ゼルは自分の血にまみれていた右手に目を落とす。そこに受けていた血はチ
ャスティティがきれいになめ取っていた。
「分かっただろう?お前が俺の血を欲しいなら、俺が自分で血を流す以外にな
い。お前が俺の欲しい情報を提供してくれたら、この血をくれてやろう。
 アーニーはどこに居る?」
 女吸血鬼は片方の眉をぴくりと動かした。何か言おうと口を開けた時。
 ゼルガディスが突然動く。すばやく、チャスティティの横を走り抜け、彼女
の後ろに回り、通りの向こうを警戒しながら剣の柄に手を添える。
 チャスティティも後ろを振り返り、一歩、あたしたちの方へあとずさる。脅
える様子は、まるで彼女の方が吸血鬼に狙われた乙女のようだ。ゼルが彼女に
向かって怒鳴る。
「チャスティティ!このあたりに無人の建物はないか!」
『通りの左のビルは無人よ』
 彼女の声は明らかに脅えている。ゼルは、彼女にもあたしたちにも背を向け、
呪文を唱え始める。
「あれは何だ!」
 ガウリイが叫ぶが、彼の言う「あれ」があたしには分からない。視力のいい
彼だからこそ、見通せるのか。ゼルも人並外れた五感を持っているから、何か
がやって来るのに気づいたのだろう。そして、チャスティティも――
 何かが確実に、あたしたちに接近していた。

       * * * * * つづく * * * * *

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13947ゼルがかっこいい……Vvねんねこ E-mail URL2/27-10:08
記事番号13940へのコメント

はじめまして、ねんねこというものです(かなり緊張気味)
キューピー/DIANA様のお話はいつもHPの方で拝見させてもらっています。
私はもっぱらゼルアメしか読まないのですが、原作のゼルを忠実に再現しているようなキューピー/DIANA様の作品は密かにゼル好きな私の脳天を見えないハンマーか何かで殴られた感じを受けました。
……い、意味不明……(汗)
いや、完結に言えば、脳天直撃でゼルに悩殺されました。ということなんですが。
いつか図々しくもHPをリンクを張ってもいいですかというメールを出そうと目論んでいたのですが……リンクの方、張ってもよろしいでしょうか……?


さて、『ザ・デストロイヤー』、設定が深くてすごいですね。
お名前を拝見して『新作だわっ!』と小躍りしながらROMって、
一回目は状況を把握するのに流し読み、二回目はさらに深い設定を理解するのにじっくり読んで、三回目はゼルのかっこよさを堪能するためにさらにじっくり。
もう一粒で三回おいしいというやつですね!
もうゼルの行動しか見てないようなおばかさんですが全9回ということで、続きを楽しみにしております。
それでは〜!(ぺこり)

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13962ありがとうございます!キューピー/DIANA E-mail URL2/27-21:25
記事番号13947へのコメント

わぁ!ねんねこさんからコメントがぁ!(バリ緊張)
いつもHPで作品を読ませていただいています。例のクラヴィス君の
出てくるシリーズ(*^o^*) Gate Keepers も読んでいますよ!

>いや、完結に言えば、脳天直撃でゼルに悩殺されました。ということなんですが。

HPへのお越し、ありがとうございます。これからもごひいきに〜。

>いつか図々しくもHPをリンクを張ってもいいですかというメールを出そうと目論んでいたのですが……リンクの方、張ってもよろしいでしょうか……?

こちらこそ、是非!足繁く通っている割には筆不精でメールも出さなくて
ごめんなさい!

>さて、『ザ・デストロイヤー』、設定が深くてすごいですね。

この話を初めて書いたのは2年以上前で、おかげで若干の手直しが入っています。
ちょうどゼルというキャラが、ああいう説明役にはまったので良かったかな〜、と(笑)

>お名前を拝見して『新作だわっ!』と小躍りしながらROMって、
>一回目は状況を把握するのに流し読み、二回目はさらに深い設定を理解するのにじっくり読んで、三回目はゼルのかっこよさを堪能するためにさらにじっくり。
もう一粒で三回おいしいというやつですね!

3回も読んでくださってありがとうございます!ちょっと設定が
ややこしくてごめんなさい。せめて借り物キャラのイメージを
分かりやすくするために挿絵を、と思っていたのですが、今年に
入って右手の人差し指をケガしてしまい、今、爪がほとんど無い
状態です(泣)。キーボードを叩くのに支障は無いのですが、何となく
絵を描いたりとかは、指がもたない気がして当分無理です。

>もうゼルの行動しか見てないようなおばかさんですが全9回ということで、続きを楽しみにしております。

う・・・私はゼル好きな反面、むちゃくちゃな状況に彼を追い込むのも
好きで・・・済みません、これからとんでもない事態が彼に襲いかかります(汗)

ここのツリーはどんどん落ちて行くようなので、頑張って一日1アップを
目指します。どうぞよろしく〜。

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13963ザ・デストロイヤー:3.女邪神キューピー/DIANA E-mail URL2/27-21:26
記事番号13940へのコメント

       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 三.女邪神(ザ・ゴッデス)

「礫波動破(ヴィーガスガイア)!」
 ゼルが右手を足元の地面に押し付ける。通りを亀裂が走り、向こうにそびえ
る建物の一つに達すると、その建物が激しく揺れ、砕け、瓦礫の雨が通りに降
り注ぐ。
 その黒い雨の中で、何か大きなコウモリか鳥のようなものが、バランスを崩
して落下していくのが見えた。
 ガウリイが言っていた「あれ」か?
 ゼルは立ち上がって振り返ると、チャスティティの腕を掴む。
「おい、あいつの狙いが何か分かるか?お前か?それとも俺か?」
『あたし……あたしには分からない。彼女を読むことはできないわ!あたしは
……あたし、恐い』
 その声はほとんど泣いている。ゼルは舌打ちをした。
「――なら、このあたりで開けたところはないか?見通しがきくような。また
あいつがやって来た時、見通せるような場所はないか?」
 え?ってことは、ゼルは今の呪文で崩れた建物の下敷きになったヤツが、死
んではいない、って考えているわけ?
 しかも、この真剣さ。ゼルはアレがどんなヤツか知っているんだろう。彼の
様子から見て、どうやらハンパな相手ではないらしい。
『ビーチが……むこうにビーチがあるわ』
 チャスティティは顎で方向を示し、ゼルはあたしたちに目を移す。
「場所を変える。ついて来てくれ」
 あたしたちがうなずくと、ゼルはチャスティティを小脇に抱え、《翔封界
(レイ・ウィング)》で飛び立つ。あたしは増幅版《翔封界)》でガウリイを
抱きかかえ、アメリアは一人で、その後を追う。
「ガウリイ、あなた、アレがどんなヤツか、見えたの?」
 あたしは抱えたガウリイに、ゼルが警戒していたヤツのことを尋ねた。
「ああ。なんて言ったらいいか……人間の女にでっかいコウモリの羽根が生え
たようなヤツだったよ」
「コウモリの羽根が生えた女?……またモンスターってわけかぁ」
「気をつけろよ、リナ。ゼルも警戒していたが、俺の見た感じ、アイツはそう
とう強敵だ」
「……分かったわ」
 巨大な建物の間を縫うように飛んでいたあたしたちの目の前が唐突に開け、
海が見えて来た。砂浜が伸びる海岸線が、寂れた町並みと裏腹に美しい。
 少し先で、ゼルが着地する。
「ゼル!一体、何がどうしたっていうの?」
 あたしたちも砂地に降り、ゼルのもとに走り寄って問い詰める。アメリアは
心配そうに彼を見上げているが、その目には寂しげな表情も宿っている。
「さっき現われたのは、《吸血鬼の女神(ヴァンパイア・ゴッデス)》パーガ
トリだ。普通の吸血鬼じゃない。魔王ルシファーに血を与え、魔王の血を飲ん
で吸血鬼になった、この世界のすべての吸血鬼の母と言ってもいい」
「何ですって?」
 自然に、みんなの目が砂の上にへたり込んでいるチャスティティに集まる。
それで彼女は、あんなに脅えているのか。
 あたしはゼルに視線を戻した。
「吸血鬼ってことはアンデッドなわけね?」
「だから、ただものじゃない、って言っただろう。奴には魔王の血が流れてい
る。下手をすればゼロス以上かも知れん」
 あたし、ガウリイ、アメリアは彼の言葉に息を呑む。
「そいつは……あなたの血の匂いに惹かれてやって来るの?」
 自分の言葉が乾いた喉に響いて痛い。吸血鬼にとって、人間の血とそうでな
いものの血の味が違い、ゼルの血が特別美味なら、吸血鬼の女神(ヴァンパイ
ア・ゴッデス)が食欲を刺激されてもおかしくない。
「分からない。パーガトリはアーニーと対立しているから、アーニーの連れで
あるチャスティティを狙っているのかもしれない。
 リナ、増幅版の《竜破斬(ドラグ・スレイブ)》を頼む。アメリア、俺と一
緒に、リナに合わせて《崩霊裂(ラ・ティルト)》を。
 ガウリイ、チャスティティが逃げないよう、見張っていてくれ」
 おいおい、それって冥王(ヘルマスター)に使った手よ?それだけのことし
なくちゃ倒せないほどの相手だっていうの?
 先ほどの町並みは遠くの闇に溶けて、影さえ見えない。そちらに目を凝らし
ているゼルガディスの耳が、ぴくっと動いた。
「……来たぞ」
 彼がこれほど緊張した声を出したのは、《闇を撒く者(ダーク・スター)》
との戦いの時だけ。
 あたしが魔力増幅呪文を唱え、四つの呪符(タリスマン)《魔血玉(デモン
・ブラッド)》が赤く輝く。続いて《竜破斬(ドラグ・スレイブ)》の呪文を
唱える。ゼルとアメリアも詠唱を始めている。
 闇を切り裂いて、赤いコウモリが飛んで来るのが見える。
 まずいっ!速すぎる!
 なんというスピードだ。力強いはばたきで猛然と接近する。《竜破斬(ドラ
グ・スレイブ)》の射程距離に捕らえることが出来ても、直撃させられるかど
うか。もし、直撃できず、ゼロス以上、というゼルの言葉が本当なら、コイツ
を倒すことはできないだろう。
 こうなったら、運を天に任せるっきゃない!
「竜破斬(ドラグ・スレイブ)!」
「「崩霊裂(ラ・ティルト)!」」
 三人の声が重なり、あたしの手元から赤い光が闇を疾駆する。それが到達し
た先に、一瞬、青い光の柱が屹立し、《竜破斬(ドラグ・スレイブ)》の爆発
と同時に、光の柱の色がまばゆいばかりの白に変わる。
 轟音とともに夜空の一隅が太陽のように輝き、海岸を縁取る木々を黒い影絵
にして浮かび上がらせる。
 その音も光も消えた時、あたりには韻を踏む波の音だけが響いていた。

「……やったか?」
 ゼルが息とともに言葉を吐き出した。
『ダメッ!』
 叫んだのはチャスティティ!
 それと同時に、風を切る音が聞こえ、何かが砂浜に降り立つ。
「ぐあっ!」
『岩野郎!炎をお見舞いしてくれるとは、よくもやってくれたね!今度はお前
がパーガトリを味わう番だよ!』
 血の色の肌が覆う筋肉の豊かな身体を露出した女が、長く鋭い爪を生やした
手で、ゼルガディスの首を後ろから締め上げていた。額には二本の角があり、
ストレートの黒髪が狂ったように肩になびいている。背中で大きなコウモリの
翼が、勝ち誇るように広がる。
 黒い唇を開くと真っ赤な口!それを縁取る鋭い牙が、ゼルの首筋に迫る!
「とうっ!」
 ゼルが身体をひねり、背中に取り付いたモンスターを肩越しに投げ飛ばす。
地面に叩き付けられたそいつが起き上がるより早く。
 ずむっ!
 ガウリイの斬妖剣(ブラスト・ソード)が、そいつの胴体を砂地に縫い付け
る!あたしもアメリアも硬直して動けなかったというのに、さすが、戦闘での
冷静さでは彼の右に出るものはいない。
「ガウリイ!逃げろ!」
 ゼルが大声を上げ、ガウリイが慌てて飛び下がる。
 なんと。パーガトリは腹から剣を生やしたまま、平気な顔をして立ち上がる
ではないか!
 よくみれば、胸や腰には黒い布きれをまとっている。両方の肩には、獣の頭
蓋骨で作ったショルダー・ガード。なんとなくナーガっぽいが、肌が血の色な
ので印象はもっと毒々しい。ももまである長いブーツに、肘より上までくる黒
い手袋。
 吸血鬼の女神(ヴァンパイア・ゴッデス)は、ゆっくりとゼルガディスを振
り返る。彼は右手を右耳の下の首筋に当てているが、その指の間からは赤い血
が流れ出ている。チャスティティの牙では傷つけることができなかったゼルの
肌を、このパーガトリはいともたやすく噛み裂いたんだ!
 赤い裸身に星影を受け、目を獣のようにギラつかせたそいつは、ゼルに向け
て長い爪の右手を差し出す。
 呪文で対抗しようと、印を結びかけたゼルの動きが止まる。呪縛?
「……う……ぐ」
 パーガトリが一歩、身動きできずにうめくゼルに歩み寄る。
「青魔烈弾波(ブラム・ブレイザー)!」
 アメリアが呪文を叩き付ける!
 だが、パーガトリは腹からガウリイの魔力剣を引き抜くと、それでアメリア
の手から伸びる青い光をなぎ払う。
 面白くもなさそうに剣を砂浜に投げ捨て、最強の女吸血鬼が再び獲物を振り
返る。が。
 そこには誰もいない。
 驚いて立ちすくむ彼女に、あたしが呪文をお見舞いする!
「炎霊滅鬼衝(ルーン・フレイア)!」
 今度はパーガトリは、自身の魔力で結界を張り高熱を防ぐ。
「リナさん、皆さん、少し下がって」
 突然、宙から声がする。あたしたちが全速力でパーガトリから逃げ出すと、
虚空から現れた黒い錐がパーガトリの首を刺し貫いた!
『ぎゃあああぁぁぁー!』
 彼女は地面に転がり、自分の首を貫く錐を両手で掴む。その刹那。
 黒い錐を赤いプラズマが覆い尽くし、激しいエネルギーの爆発が起こる!
 ざばあぁぁっ!
 大量の砂と海水が跳ね上がる!
「うわっ!ぺっ、ぺっ!」
 爆風で吹き飛ばされ、砂にモロに顔を突っ込んだあたしは、口に入った砂を
吐き出した。
「ぺっ、ぺっ……ゼルガディスさんは?あの吸血鬼は?」
 アメリアも砂を吐き出しながら、あたりを見まわす。
 多分、パーガトリが倒れた地点が爆発の中心だろう。そこには大きなクレー
ターができ、海の水が流れ込んでいる。
「俺は大丈夫だ……ゼロス?お前は大丈夫か?」
「え……ええ、まあ――」
 チャスティティを自分のマントでかばっていたゼルガディスが立ち上がる。
それを見たアメリアは本当に悲しそうな表情をしたが、ゼルは彼女を見ようと
しない。
 魔族のゼロスは、先ほどの爆発にかなりのダメージを受けたらしく、人間の
形を保っているが、いつもの迫力が無い。ゼルが言った「パーガトリはゼロス
以上の強敵」も、大袈裟ではなかったようだ。
「俺の剣……俺の剣……」
 ガウリイがオロオロとクレーターの周りを右往左往している。
「あ、ガウリイさんの剣なら、ほら、あそこですよ」
 ゼロスが指差した先は、波打ち際から少し先の海の中。確かに、斬妖剣の柄
が見える。
「ああ〜っ!塩水につかると剣は台無しなんだぞ〜!」
 ガウリイは大慌てで海に入って行く。
「せっかくの剣。お釈迦にしたら、リナにまたどやされるからなぁ」
 おひ。そりはどーゆー意味じゃっ!
 海に入ったガウリイは、剣にたどり着く手前で立ち止まった。慌ててこちら
を振り向き。
「お、おい、リナ!アイツがそこに……」
「アイツって?」
「吸血鬼だよ!」
 ガウリイが指差す先の海面――斬妖剣よりさらに沖――に、赤い肌とコウモ
リの翼が漂っている。死んでいるのか、気を失っているだけなのか?
「どうする?」
 あたしはパーガトリについて知っているはずのゼルを振り返る。彼は首につ
けられた傷に《治癒(リカバリィ)》をかけていたが、呪文を終えて言った。
「たぶん、くたばっちゃいないだろう。復活されても始末が悪い。
 おい、ゼロス。お前、目指すものをどこかへ飛ばす術を知らないか?」
「いえ、あいにくと」
「じゃあ――そうだ。空間を渡ってエジプトにあいつを置き去りにしろ」
「置き去りにしろ、って。僕がアレを抱えて行く、ってことですかぁ?」
「呪文で飛ばせないなら、それしかないだろう?」
「あれを抱えろって……勘弁してくださいよぉ。さっき呪縛で動けなくなって
たあなたを、突き飛ばして助けたのは僕ですよ」
「ああ、そいつはありがたかったよ。だが、これは別の問題だ。お前がやらな
いで放っておいたら、確実にまた襲って来る」
「そのエジプトに連れて行けば、襲ってこないんですかぁ?」
「知らん」
「んな、無責任なっ!」
 冷たく言い放つゼルに、ゼロスは悲鳴を上げる。
「まあ、襲って来るにも奴は弱っているだろうから、ずっと時間がかかる。そ
の間に俺たちがこの世界を脱出すれば済むことだ」
「……なんだって、僕が……」
「何言ってんの。もともとあんはたパシリ用に作られてるんでしょ。さっさと
言われた通りにしなさいよ」
「リ、リナさんまで……(しくしく)」
 ゼロスは文句を垂れながら、ぐったりとする吸血鬼の身体を抱える。
「あの〜、エジプトってどこでしょう?」
 素朴な疑問を口にする。そう言われてみればそうだ。
 あたしはゼルを見やった。
 ゼルもちょっと考え込み、やがて地面に大きな三角形を描く。
「こういう四角錐の形をした、巨大な建造物がある国だ。古代の王の墓らしい。
その周囲は砂漠で、近くに動物の形をしたやはり石造りのモニュメントがある。
方角はこの都市から見ると東南東くらいになるはずだ」
「はあ……」
 あいまいに返事をして、ゼロスは吸血鬼とともに虚空に姿を消した。

     * * * * * つづく * * * * *


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13973物知りさんvろれる E-mail URL2/28-01:04
記事番号13963へのコメント

 どもども、ご無沙汰しています。指、まだ治ってなかったんですね……
 相変わらずかっこいいっっす、QP版ゼルやん。
> 吸血鬼にとって、人間の血とそうでな
>いものの血の味が違い、ゼルの血が特別美味なら、吸血鬼の女神(ヴァンパイ
>ア・ゴッデス)が食欲を刺激されてもおかしくない。
 でもって相変わらず、その筋の方々(爆)に好かれてますねぇ。

> おいおい、それって冥王(ヘルマスター)に使った手よ?
 どんだけ利いてたかは謎ですけどね……。
る鋭い牙が、ゼルの首筋に迫る!
>「とうっ!」
> ゼルが身体をひねり、背中に取り付いたモンスターを肩越しに投げ飛ばす。
 ……アメリアに習ったのですか?
> よくみれば、胸や腰には黒い布きれをまとっている。両方の肩には、獣の頭
>蓋骨で作ったショルダー・ガード。なんとなくナーガっぽいが、
 ついでにサウザンドも思い出してしまいました。
>ゼルの肌を、このパーガトリはいともたやすく噛み裂いたんだ!
 ……顎の力、何トンぐらいあるのでしょう……?
 そーいう問題じゃないっすか?
> チャスティティを自分のマントでかばっていたゼルガディスが立ち上がる。
>それを見たアメリアは本当に悲しそうな表情をしたが、ゼルは彼女を見ようと
>しない。
 前途多難だなぁ、姫は。

>「ああ〜っ!塩水につかると剣は台無しなんだぞ〜!」
 爆笑。
>「せっかくの剣。お釈迦にしたら、リナにまたどやされるからなぁ」
 さらに爆笑っ。
>「何言ってんの。もともとあんはたパシリ用に作られてるんでしょ。さっさと
>言われた通りにしなさいよ」
 さすがはパシリ魔族ですっ。
>「あの〜、エジプトってどこでしょう?」
> 素朴な疑問を口にする。そう言われてみればそうだ。
> あたしはゼルを見やった。
> ゼルもちょっと考え込み、やがて地面に大きな三角形を描く。
>「こういう四角錐の形をした、巨大な建造物がある国だ。古代の王の墓らしい。
>その周囲は砂漠で、近くに動物の形をしたやはり石造りのモニュメントがある。
>方角はこの都市から見ると東南東くらいになるはずだ」
 ……何故彼はそんなことを知ってるのでせう……?

 女邪神様、口数は少ないですが(あの衣装だから、高笑いとかすると思ったのに)カッコええですね。エジプトの直射日光で、このまま灰になる運命なのか……
 そーいや、某アン・ライスのシリーズに出てきた元祖吸血鬼はエジプト出身でしたけど、ひょっとしてそこから取りました?
 でわでわ、続きを楽しみにしています〜。

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13979ありがとさんっVキューピー/DIANA E-mail URL2/28-21:39
記事番号13973へのコメント

 ろれるさん、こんにちは〜。
 読んでくださってありがとうございます〜。

> 相変わらずかっこいいっっす、QP版ゼルやん。

 まあ、作者の趣味出まくりですから(笑)。
 でも、ごめんなさい!今夜アップする章で、ゼルは悲惨な目に会います(爆)。

> でもって相変わらず、その筋の方々(爆)に好かれてますねぇ。

 ゲテモノ・・・でしょうか?まあ、チャスティティは一見普通の人間と
変わりませんし、見た目美人ですよ。パーガトリもその気になれば角を
隠して普通の美女のフリもできます(笑)。

>> ゼルが身体をひねり、背中に取り付いたモンスターを肩越しに投げ飛ばす。
> ……アメリアに習ったのですか?

 レゾにこき使われていた時代から身につけたんだと思います。元々、私は
中世の騎士社会のイメージでスレイヤーズを捕らえていますが、当時の剣は
日本刀の様に斬れ味がよかったわけではなく、結局は取っ組み合いで相手を
押さえ込み、探検で止めを刺すのが実情だったそうですから。

 パーガトリにナーガのイメージを重ねたのは、やはり長い黒髪、グラマー
な体つき、という共通点でしょう。また、パーガトリはサウザンドとは違い、
頭に獣の頭蓋骨を被ったりはしていません(笑)。

> そーいや、某アン・ライスのシリーズに出てきた元祖吸血鬼はエジプト出身でしたけど、ひょっとしてそこから取りました?

 いやいや、パーガトリの物語そのものがエジプトから始まっているんですよ。
詳しいことはこの次にアップする章で明らかになりますが、やたらと強い吸血鬼
で、朝日ぐらいではくたばりません(笑)。もちろん、夜の方が強いですけど。
執念深いヤツですよ〜(笑)

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13974エジプトのゼロス??toto 2/28-11:54
記事番号13963へのコメント

こんにちわ、こちらでは初めまして、totoです。キューピーさんのホームページの方にはお邪魔させていただいてます。では感想などへ移らせていただきます〜ゼルとガウリィの活躍がこきみ良さに填ってしまいました。しかも、アメリカンテイストとスレイヤーズの世界の融合?ってとってもいい雰囲気ですねえ。ところで、原作におけるスレイヤーズの細かい敵キャラって、私の中であんまりイメージできなかったんです。(アホですが…)抽象的っていうか?でも、今回のゾンビたち等はばっちり思い描くことができ、リナ達の活躍が臨場感アリアリでした。個人的にはエジプトのゼロスが気になります。面白かったです。ではでは、失礼いたします。。

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13980感想をありがとう!キューピー/DIANA E-mail URL2/28-21:40
記事番号13974へのコメント

 totoさん、こんにちは!いつもHPで感想を聞かせてくれてありがとう!
こちらでもよろしくお願いします。

>ゼルとガウリィの活躍がこきみ良さに填ってしまいました。しかも、アメリカンテイストとスレイヤーズの世界の融合?ってとってもいい雰囲気ですねえ。

 な〜んでこんな話を思いついたんだか(笑)。私としては珍しく、スレイヤーズ
のキャラを別の舞台に引っ張り込んでしまいました。でも、書いていてとても
楽しかったですよ(笑)。雰囲気を楽しんでいただけて嬉しいです。

>ところで、原作におけるスレイヤーズの細かい敵キャラって、私の中であんまりイメージできなかったんです。(アホですが…)抽象的っていうか?でも、今回のゾンビたち等はばっちり思い描くことができ、リナ達の活躍が臨場感アリアリでした。

 ゾンビたちの様子は、何せ元ネタがコミックですから視覚的に「か・な・り」
な土台があるわけです。それを文章に表わしただけですが、臨場感を味わって
もらえたなら、狙いが当たったということで書き手冥利に尽きます(笑)。

>個人的にはエジプトのゼロスが気になります。

 ご、ごめんなさい!しばらくゼロスは出て来ないんですが・・・
 出て来た途端に、ムゴイ目にあいます〜。今から謝ってしまいます!

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13981ザ・デストロイヤー:4.死神キューピー/DIANA E-mail URL2/28-21:41
記事番号13963へのコメント

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   警告:この作品にはゼルファンにとってはかなりショッキングなシーン
      があります。ご承知のうえ、お読みください。

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           スプラッタ警報


             流血注意


       では、覚悟を決めたところでどうぞ↓



       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 四.死神(ザ・デス)

 邪魔物が消え、ガウリイはやっと海から斬妖剣(ブラスト・ソード)を拾っ
て来た。
 アメリアが《浄水結(アクア・クリエイト)》で水を生み出し、塩水に浸か
っていた剣を洗う。
 自然にガウリイの剣の周りに集まったあたしたちに、音も立てずに黒い影が
歩み寄ったのに、誰も気づかない。
 「あっ?」
 ゼルの声で顔を上げたあたしたちの目の前で、チャスティティがゼルに後ろ
から抱きついていた。彼の右肩に顔を埋めるようにしている。
 アメリアの顔が怒りで真っ赤になる。
 「こいつっ!」
 ゼルが叫んで赤毛の女を突き飛ばす。彼はチャスティティが顔を押し当てて
いた右肩のあたりに右手をやり、その手を見下ろす。血!
 「さっき《治癒(リカバリィ)》をかけたのに?」
 パーガトリにつけられた傷が治っていなかったのだ。チャスティティはその
傷からゼルの血を飲もうとしたに違いない。
 「アメリア。ゼルに《復活(リザレクション)》を」
 あたしは《浄水結(アクア・クリエイト)》を交替し、彼女にゼルの治療を
任せた。
 ゼルの血は吸血鬼にとってよほど美味しいのだろうか?チャスティティは地
面に尻餅をついたまま、もの欲しそうにゼルを見上げていて逃げようとしない。
 それにしても、ゼルの岩の肌を噛み裂いただけでも驚くのに、その傷に治療
魔法がきかないとは。あのパーガトリ、厄介なモンスターだ。
 それでもアメリアの《復活(リザレクション)》は効果があった。いつもよ
り時間はかかったが、ゼルの傷は完全にふさがった。
 ガウリイの剣もすっかり奇麗になり、あたしたちは砂浜に腰をおろして話し
始める。
「さて、チャスティティ。さっきの話の続きだ」
 ゼルガディスは吸血鬼の女に語り掛ける。その横顔をじっと見つめているア
メリアには一瞥もくれない。彼女はそっと目を伏せた。
 ガラスのような目にチラリと、読み取れない感情を走らせ、チャスティティ
はゼルの顔を真っ直ぐに見る。
「アーニーはどこに居る?」
『分からない。でも近くに彼を感じるわ』
 思わずあたしたちは、あたりを見回す。
 見渡す限りの砂浜。動くものは見えない。
 再び、ゼルがチャスティティに問い掛ける。
「アーニーが、この世界に《メガデス》をもたらそうとしているのは、分かっ
ている。俺たちはそれを止めようとしているわけじゃない。
 だが、なぜ俺たちの世界でまで《メガデス》をやろうとしている?」
 チャスティティはうつむいてしばらく考え込み、意を決したようにゼルを見
据えて言った。
『彼は何も言ってなかったわ。あたしは彼が彼自身を……レディ・デスのおも
ちゃでしかない自分自身を憎んでいるんだと思うの』
「自分を憎むことが、なぜ、別の世界を破壊することに繋がるんです?」
 この質問はゼルではなく、突然その場に現われたゼロスが発したものだった。
ずいぶんと早いお帰りだ。
「早かったわね」
「はい、あの目印のおかげで」
 ゼロスはあたしの隣に座る、ガウリイの横に腰を降ろす。
 彼が座を確保するのを見届けてから、チャスティティは答えた。
『アーニーは《メガデス》を愛のために……レディ・デスへの愛のために実行
して来たわ。でも、彼女は彼の前から去ったの。彼は、彼女が彼の両親がそう
だったように、彼を利用し虐待しているじゃないか、と思って苛立っていたわ。
 彼は今、《メガデス》を実行する理由を自分自身の楽しみのため、と思い込
もうとしている。でも、この世界で実行すればレディ・デスが地上に復活する。
彼は……それだけはしたくないのよ。だから、あなたたちの世界で《メガデス》
を実行しようとしている』
 おひ、それってとことんめーわくな話だぞっ!
 だが、ゼルは別の意味で呆れていた。
「レディ・デスが去った、と言うが、あれだろ?お前も目撃した、アーニーの
精神を介して虚空に居るレディ・デスにコンタクトし、彼女を地上へ出現させ
る、っていう実験。レディ・デスを地上に召喚することは成功したが、彼女に
かけられたルシファーの呪いのおかげで地上が破壊されそうになり、彼女はア
ーニーと別れて虚空へ戻った、っていうだけだろう?
 彼女は彼を捨てたんじゃない。ただ、地上にとどまる条件が整っていないか
ら、去らなければならなかっただけだ」
 チャスティティが大きな目をさらに見開く。
『どうしてそんなことまで知っているの?……ルシファーの呪い?』
「生きとし生けるものが地上に居る限り、彼女は地上に戻れない。それが魔王
ルシファーがレディ・デスにかけた呪いだ」
『あんた、どうしてアーニーやレディ・デスのことをそこまで知っているの?』
 吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)は低く伺う声を出す。
「彼らのことだけじゃない。お前のこともよく知っている、と言っただろう」
『どの程度?』
 ゼルは肩をすくめる。
「一九五八年生まれ。オハイオ州トレドでヘア・サロンを開いている横暴な父
親と、虐げられている母親と一緒に暮らしていた。
 十八歳の時、女優になる夢を父に反対され、髪結いになることを強制されて
家出し、ロンドンへ渡った。女優として仕事を見つけようとしたがうまくゆか
ず、セミプロのロック歌手と意気投合してスタッフとして働きながら同棲して
いた時、彼と仲たがいしてさまよっていた夜の町で吸血鬼に血を吸われ、自ら
吸血鬼になった」
 チャスティティの顔が強張る。
「お前は吸血鬼としての生活を、やはり吸血鬼である伯爵夫人のもとで学びな
がら、一方でロック歌手との暮らしも続けていた。
 やがて伯爵夫人はお前に暗殺者になることを求め……」
『もう、いい!』
 恐ろしいはずの赤毛の吸血鬼は、両手で抱え込んだ頭を膝にこすりつけてい
る。まるで青春の悩みに苦しむ乙女のように弱々しい感じ。
 ゼルが彼女に声を掛ける。
「……アーニーに好意を寄せているあんたにゃ辛い話だろうが、レディ・デス
はアーニーに……そう、共感を持っている。《孤独》という共感を、な。
 彼女の孤独を理解できるのはアーニーだけ。だから離れていても彼女はいつ
も彼を見ている」
 ぴくりと身体を動かしたチャスティティは、ゆっくり顔を上げて言う。
『もし、アーニーがそれを知ったら、彼は今のばか騒ぎを止めて、こっちでま
じめに《メガデス》をやろうとするでしょうね……』
 なるほど。アーニーを説得する材料がこれで見つかったわけだ。
 あたしはゼルの顔を見て、うなずく。ゼルもうなずき返し、それを見て、ア
メリアとゼロスも首を縦に振る。ガウリイは……
 彼は状況が飲み込めていないのだろう。困って頭を掻いている。
「いいのよ、あなたは分からなくても。とにかくアーニーを見つけるまで、そ
こいらのモンスターをやっつけるのに専念してちょうだい」
「そっちは任しとけ!」
 ガウリイはやけに元気に胸を叩く。ま、適材適所ってことで。
 あたしたちには明るいムードが流れたが、チャスティティはちょっと落ち込
んだまま、ゼルに尋ねる。
『ゼルガディス?あんた、いろんなこと知ってるみたいだけど。
 あの吸血鬼の女神(ヴァンパイア・ゴデス)がレディ・デスと対立している
理由を知ってたら教えてくれない?』
「知ってはいるが……そんなことを聞いてどうする?」
『アーニーがおかしくなったのは、パーガトリが彼に『レディ・デスはお前の
ことなど何も思っちゃいない。お前は彼女のおもちゃなのさ』って告げてから
よ。それでアーニーがレディ・デスのために働くのをやめることが、彼女の狙
いなんじゃないかな、って思ってね。じゃあ、パーガトリがレディ・デスの邪
魔をしたがる理由は何だろう、と疑問に思っているのよ』
 ゼルはチャスティティの目を見つめて言う。
「いいだろう。お前はいい情報を知らせてくれたから、教えてやろう。
 パーガトリは、レディ・デスが奪ったルシファーの《力》が欲しいのさ。」
『ルシファーの力?』
 ゼルガディスはうなずく。
「パーガトリは古代エジプトの女奴隷だった。王国の女王の愛人となってハー
レムに迎えられ、苦役からは解放されたが、やがて女王の政略結婚の邪魔にな
る、と死刑を宣告された。その裏切りに怒り、女王に復讐を誓った彼女をルシ
ファーが見初め、彼女は魔王の血を飲んで吸血鬼になり、その力で復讐を果た
したんだ。それが今から五千年前の話だ。
 ルシファーは力を与えた代償としてパーガトリを奴隷にする腹だったのだが、
彼女は魔王の血をもっと飲んで自分自身が魔王を圧倒する力を得たかったんだ
な。慰み者に甘んじるのを拒んだ。
 ルシファーは彼女の力への貪欲さに辟易し、彼女を地獄から追放したが、殺
しはしなかった。彼女が堕天使の末裔だったからさ。
 パーガトリが追放されている間に、人間ホープとして死んだレディ・デスが
地獄に引き込まれ、ルシファーの新しい慰み者になった。彼女も別の意味でル
シファーに逆らい、彼女だけが魔王を倒すことに成功した。
 パーガトリは自分が成し遂げたかったことを、レディ・デスに先を越された、
と考えているのさ。そして彼女が奪った力は、本当は自分が手に入れるはずだ
った、とね。だから、パーガトリはレディ・デスを地獄に留め、いつか倒して
自分が地獄の支配者になりたいのさ」
『なるほど。いいことを教えてもらったぜ』
 !
 突然聞こえて来たのは、男の声!
 びきぃっ! ぶつっ!
 何かが引き千切れるような音が響き、続いて、つぼめた口から勢いよく息を
吹き出すような、しゅーっ、っという音が聞こえる。
 生暖かいモノがあたしの顔や手まで飛び散って来る。
『アーニー!』
 チャスティティが叫んで立ち上がる。
 あたしたちは彼女を追うことができなかった。目の前の光景が信じられず、
身体が動かない。
 声を飲み、まばたきも忘れたあたしたちの前で、肩から上を赤い噴水と化し
たゼルガディスの身体が、ゆっくりと崩れ落ちた。

 首を失ったゼルガディスの身体のすぐ後ろに、そいつがいる。
 この世界の破壊者(デストロイヤー)、死神(ザ・デス)、イーヴィル・ア
ーニー。
 前に戦った時と同じ姿。
 黒いカーリーヘア。骸骨に直接皮を貼り付けたような顔。細い目は吊り上り、
耳まで裂けた口に凶悪な牙が覗く。骨格にまとわりつく蛍光グリーンのスライ
ムのようなモノ。そんな身体が着込んだのは、黒い皮ジャンパーと青いデニム
のタイトなズボン。膝に開いた穴から、骨だけの関節が見える。袖から出てい
る手は、顔と同様、骨の周りに皮が貼りつき、指には鋭い爪!
 今、アーニーは、右手でゼルの金属の髪を掴み、その顔を自分の顔に見合わ
せるようにして生首を持ち上げている。
 彼の額に、蛍光グリーンの輝く輪が現われ、ゼルの額にも同じ光が浮かぶ。
アーニーは二つの光をくっつけるように、ゼルの額を自分の額に押し当てる。
『おい、石頭。教えろ。お前の世界の《ニュークス》はどこにある?』
 信じられないことに、胴体から離れたゼルの首が口をきいた。
「《ニュークス》……世界を滅ぼすもの………赤眼の魔王(ルビー・アイ)…
…北の魔王が……カタート山脈に……」
『よし!来いよ、チャス。パーティーだ!』
『パーティー!やったぜ、パーティーだぁ!』
 奇妙に甲高い声が響くが、その正体は分からない。アーニーの居るあたりか
ら聞こえたんだが……

 あたしたちがショックから抜け出し、動けるようになった時、アーニーもチ
ャスティティも姿を消していた。
 そのあたしたちに追い討ちをかけるように。
 突然、ゼルの血が染みた砂地に、一人の白い女の姿が浮かび上がる。
 レディ・デス!
 素晴らしいプロポーションに、レザーのビキニ・メタルの籠手(コテ)・肘あ
て・膝あて・脛覆いをまとい、ショルダー・ガードから長く黒いマントをたな
びかせて、腰には見事な装飾の長剣(ロング・ソード)。豊かな髪も純白に輝
き、白い肌とあいまって底知れぬ冷たさを漂わせているのに、どことなく包み
込まれる優しさがある。
 だが以前、サウンドハウスであたしとガウリイが戦った時とは雰囲気が違う。
迫力がないのだ。本来、こっちの世界の女モンスターなのだから、もっと強力
なはずなのに?
 よく見れば、彼女の足が途中から薄くなって消えている。どうやら映像だけ、
のようだ。
 その映像が言葉を発する。
『イーヴィルは?私の坊やはどこへ行ったの?』
「アーニーなら、あたしたちの世界に行ったわ」
 答えたのはあたし。彼女はあたしを覚えていた。
『お前は?ヴィック・ラトルヘッドの居るサウンドハウスで会ったわね』
「そうよ……お願い!アーニーをとめて!」
『アーニーを……とめる?』
「アーニーは、この世界じゃなくてあたしたちの世界で《メガデス》をやろう
としているのよ」
『なんですって?なんてこと!』
「お願い!あたしたちも彼を説得するつもりだけれど、あなたの力も借りたい
のよ。具体的にどうしたらいいか、分からないけれど……」
 レディ・デスはしばらく黙っていたが、やがて手を差し出すと、アメリアが
胸につけている護符(アミュレット)のその手をかざす。
 青いはずの護符(アミュレット)が、純白の輝きに包まれる。
『これが私の《神秘の力》。これを持ってあなたたちの世界へお戻り。今の私
にできるのはこれだけしかない』
「これを……どうやって使えばいいの?」
『それはあなたたちが考えること』
 言いながら、レディ・デスの姿がどんどん薄くなっていく。
『私が力を与えたアーニーが殺した人間の血の中に、私の精神体は現われるこ
とが出来る。けれどもその時間はごく短い。もう止まれない』
 そういうことか。すっかり忘れていたけれど、レディ・デスは生きているも
のがいる地上に現われることができないんだ。呪いのおかげで。しかし、精神
だけならOKってか。魔族みたいだな。
 あたしたちが使う《隔幻話(ヴィジョン)》の理屈にも似ている。きっと彼
女は地獄の城から信号を送り、アーニーに殺された人間の血を端末にして精神
を投影しているに違いない。《神秘の力》とかも伝えられるのは凄いけど。
 あたしが感心している間に、レディ・デスの姿は完全に消えた。
 アメリアは首を失ったゼルの身体の脇に跪いている。大きな目から大粒の涙
が溢れる。
「ゼルを……連れて帰ろう、アメリア」
 あたしは彼女の肩に手を掛けた。彼女は振り返らず、小さくうなずく。
 ガウリイがゼルの身体を彼のマントで丁寧にくるむ。ブロード・ソードも落
ちないように、ベルトで縛り付けた。
「ゼルは重いからあたしが運ぶわ。アメリアはガウリイをお願い……
 ゼロス?」
 魔族の神官の姿がどこにも無い。まあ、あいつは元々精神世界面(アストラ
ル・サイド)の住人だから、いつ引っ込んでも不思議はないが……
 なんだか嫌な予感がする。早く元の世界に帰ろう。
 あたしはゼルの身体を抱きかかえ、増幅版《翔封界(レイ・ウィング)》で
空へ飛び発つ。アメリアもガウリイを抱えてあたしに並ぶ。
 あたしたちは先ほど後にしたばかりの大通りを目指して、風を切って飛んで
いく。どこにあたしたちの世界へ戻る出口があるのか分からないが、とにかく
最初この世界にたどり着いたところへ行くことにする。
 これまで、道についても起きている出来事についても、万事に水先案内人で
あったゼルガディスを失ったあたしたちは、行く先の分からない旅路に放り出
されてしまっていた。

       * * * * * つづく* * * * *


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13987でもって相変わらずろれる E-mail URL3/1-00:46
記事番号13981へのコメント

 前回の「アメリアに習った」云々は、どっちカってーと掛け声メインだったんですが……
 だって「とうっ」ですもん。

>『あんた、どうしてアーニーやレディ・デスのことをそこまで知っているの?』
> 吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)は低く伺う声を出す。
>「彼らのことだけじゃない。お前のこともよく知っている、と言っただろう」
 うわぁ、ますます物知りさん(笑)。

> びきぃっ! ぶつっ!
> 何かが引き千切れるような音が響き、続いて、つぼめた口から勢いよく息を
>吹き出すような、しゅーっ、っという音が聞こえる。
> 生暖かいモノがあたしの顔や手まで飛び散って来る。
>『アーニー!』
> チャスティティが叫んで立ち上がる。
> あたしたちは彼女を追うことができなかった。目の前の光景が信じられず、
>身体が動かない。
> 声を飲み、まばたきも忘れたあたしたちの前で、肩から上を赤い噴水と化し
>たゼルガディスの身体が、ゆっくりと崩れ落ちた。
>
> 首を失ったゼルガディスの身体のすぐ後ろに、そいつがいる。
 そいでもって相変わらず、ひどい目にあうんですね……
 でも「苦しまずに一発で死ねてよかったね」と言いたくなるのは何故でセう?
 とゆーか、ホントにこのまま死にっぱなしかっ!? いいのかそれでっ!?
 良くなくてもやりそうだけど。QPさんだったら。<先入観
 すいません〜、まだ「アナーキー・〜」が尾を引いてるよぉです。
 でわでわ、続きを楽しみにしています〜。

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13992Re:でもって相変わらずキューピー/DIANA E-mail URL3/1-20:28
記事番号13987へのコメント

ろれるさん、どーも、懲りずに読んでくださってありがとうございます。

>> 首を失ったゼルガディスの身体のすぐ後ろに、そいつがいる。
> そいでもって相変わらず、ひどい目にあうんですね……

どうも済みません、毎度毎度(^_^;)

> でも「苦しまずに一発で死ねてよかったね」と言いたくなるのは何故でセう?

あう・・・たしかに、それは言えるかも・・・

> とゆーか、ホントにこのまま死にっぱなしかっ!? いいのかそれでっ!?
> 良くなくてもやりそうだけど。QPさんだったら。<先入観

 否定できない、この辛さ(爆)
 な〜んちゃって。大丈夫。このまま死にっぱなしになるなら、
 ちゃんと「これは悲劇です」って書きますから・・・
 って死にネタに「悲劇」の警告入れなかったこともあるけど(笑)

> すいません〜、まだ「アナーキー・〜」が尾を引いてるよぉです。

 はっはっは、その「アナーキー・〜」のサイドストーリー、
 その名も「トラジェディ(=悲劇)」の第2章、やっとこさ
 アップしました(笑)。ついでに入り口の場所も変えましたし、
 第1章から第2章へのリンクはありません。「アナーキー・〜」の
 ファイルの中から探してください。ダミーがいっぱいあります(オイ!)

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13993ザ・デストロイヤー:5.骸骨キューピー/DIANA URL3/1-20:29
記事番号13981へのコメント

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   警告:この作品にはゼロスファンにとってはかなりショッキングなシーン
      があります。ご承知のうえ、お読みください。

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              惨劇警報


             要注意衝撃場面


        では、覚悟を決めたところでどうぞ↓



       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 五.骸骨(スケルトン)

 ゼルが壊した建物のガレキが目印になって、あたしたちは前居たところへ戻
ることが出来た。地上に降り立ち、元の世界へ戻る場所を探そうとした時。
 周りの建物から、ゾンビどもが湧いて出てくる!
「ちっ!」
 ガウリイが剣を抜き放ち、あたしもアメリアも構えを取る。しかし、こいつ
らに関わっていると、アーニーを追うことができなくなる。足止めか?
 じりじりとゾンビどもが包囲をせばめてくる。
「笛?」
 つぶやいたのはガウリイだ。
 あたしにも悲しげな笛の音(ネ)が聞こえる。不気味にうごめいていたゾンビ
たちが、その調べに呪縛されたように動きを止める。
 ぴ〜ぴぴぴ〜、ぴ〜ぴぴ、ぴ〜ぴ〜……
「リナさんっ!上へっ!」
 アメリアが叫んでゼルの身体ごと、《浮遊(レビテーション)》で浮かび上
がる。あたしもガウリイを抱えて上昇する。
 その間も笛の音はやまない。やがてあたしたちがかなり上昇した時。
『昇天階段(ステアウェイ・トゥ・ヘヴン)!』
 男の声で鋭い気合が馳せられる。ゾンビたちが次々に爆発し、消滅する。
 静まり返る地上に降り立った私たちの前に、一体のスケルトンが姿を現す。
ただのスケルトンではない。まず、スーツを着ている。ネクタイまで絞めてい
るのが笑えるが、あたしの目を点にしたのは頭だ。
 普通、スケルトンと言えば頭蓋骨むき出しで頭髪はない。しかし、こいつに
はオレンジ色の髪が、まるで額から後頭部まで扇子を広げたように突っ立って
いる。……モヒカンってやつ?
「久しぶり。この間は世話になったね」
 骸骨野郎が馴れ馴れしくあたしに声をかける。
「あんたには二度と関わりたくなかったんだけどね」
 あたしは皮肉っぽく答えてやる。
 そう、あたしはこいつと面識があるのだ。あたしたちの世界で、カオス・ワ
ールドとの接点のなっているディスコ、サウンドハウスのオーナー、ヴィック
・ラトルヘッド。
 目には金属のバイザー、両耳にも金属のイヤー・カフ、上下の顎をボルトで
固定した「見ざる、聞かざる、言わざる」の頭蓋骨を持つモンスター。そう言
えば、前に渡り合った時、こいつだけが魔法を使ったっけ。
「しばらく見ない間に髪型を変えたの?見違えたわ」
「気に入ってもらえたかい?」
「あたしの趣味じゃないわ。ところであなたはこっちにくら替えしてたの?」
 こいつは元々はカオス・ワールドの住人のはず。そう思って質問したのだが、
ヴィックは骨だけの手をぱたぱたと振る。
「いいや、俺はチャスティティにあんたたちを連れ戻してくれ、と頼まれて来
たのさ」
「チャスティティが?」
「彼女はアーニーを止めたいんだ。だが彼女にはできない。あんたたちなら出
来るんじゃないか、って言っている」
 あたしは眉をひそめた。どうも胡散臭い。
「あなたの力では止められないの?」
 ヴィックが首を横に振ると、イヤー・カフから下がった鎖がガチャガチャと
音を立てる。
「無理だね。奴の方が強い。だが、俺も奴にこのままあの世界を滅ぼされるの
は嫌だ」
「あら、どうして?」
 ヴィックは右手を腰に当て、左手の人差し指を顔の前で立ててみせる。まる
でゼロスみたいなポースだが、骨だけの顔と指じゃぁ……こわひぞ。
「俺はロックが好きさ。世の中がアンデッドばかりになっちまったら、ロック
は活力をなくしちまう。残念ながらこれは本当なのさ。だから俺は人間たちに
生き延びてもらいたいんだ」
 ふむ。ゼロスよりはまともなことを言う。
「分かったわ。ちょうど、どうやって元の世界に戻ろうか迷っていたところだ
から、あなたが連れて行ってくれる、というならありがたいわ」
「ああ、立ち話をしている暇もないしな……連れは二人かい?」
 ヴィックは、あたしたちを見つめているガウリイとアメリアに視線を送って
確かめる。いや、眼球が無いから顔全体をそっちに向けているだけなんだが。
「二人って……あ……」
 あたしはゼルの身体に目を落とす。彼も連れて帰らなければ。しかし、どう
やって説明したらいいのだろう?
 だが、ヴィックはさらりと言った。
「おや?そこに寝ているのは……もしかしたら、アーニーが連れて来た頭の片
割れじゃないかい?だとしたら、そちらさんも入れて三人だね」
 茶化したような言い方だが、ごちゃごちゃと説明するとこっちの気も滅入る
し、時間ももったいない。何より、既に息の無い彼を「一人」として扱う態度
に、彼を想うあたしたちへの思いやりが感じられる。こいつ案外人間味がある。
「ありがとう」
 ヴィックのお礼を言ったのはあたしではなく、アメリア。彼女もヴィックに、
見かけよりはずっと温かいものを感じたのだろう。

 ヴィック・ラトルヘッドに連れられて、ひとつの建物の地下に入ったあたし
たちは、カオス・ワールドに来た時と同じような暗闇を潜り抜け、サウンドハ
ウスのフロアに戻っていた。
 地上へ向かう階段への扉に手をかけるヴィックに、あたしが声をかける。
「待って。外はアーニーのゾンビがいるんじゃないの?」
 ヴィックはあたしを振り返る。
「ああ、わんさか居るよ。だが、ほとんどをチャスが片づけている筈だ」
「チャスティティが?」
「驚くことはないだろ?彼女も一流の暗殺者(アサッシン)だ」
「いえ、あたしが驚いてるのは彼女がアーニーのゾンビを倒す、ってことよ」
 骸骨野郎が肩をすくめ、関節のきしむ音が響く。
「彼女はアーニーを止めたいんだ。本来の彼に戻って欲しい。だから、彼を止
められるあんたたちに協力するんだ。さあ、彼女も待ちくたびれてるだろう」
 ヴィックを先頭に、あたし、ゼルの身体を《浮遊》で運ぶアメリア、ガウリ
イの順で、あたしたちは階段を上り、地上に出た。こちらも夜だ。
 あたりにはゾンビだった者どもが、累々たる死体の山となっている。
 その向こうに、金属の大きな箱に乗ってチャスティティが立っていた。
 ヴィックが彼女に向かって骨だけの手を上げる。
 瞬間。吸血鬼暗殺者(ヴァンパイア・アサッシン)の右手が目にも止まらぬ
早さで動く。
 あたしたちが身動きできない中、ガウリイだけが反応した。彼女が投げたナ
イフが飛んだ方に踏み出し、ロング・ソードを抜いて身構える。
 が、彼は構えただけでそれ以上何もしなくてよかった。チャスティティのナ
イフは確実にゾンビのこめかみを捕らえていたから。あの距離から命中させる
とは。なんとも凄い腕だ。
「ひゅ〜、さすがだぜ、チャス」
『ヴィック、彼らを連れ戻してくれてサンキュー。さあ、アーニーを追うわよ』
 彼女は言うと、それまで立っていた金属の箱のようなものの中に置かれた長
椅子に腰を下ろす。よく見ると、まるで馬車の御者台のような形で、彼女の目
の前には、船の蛇輪のようなものが突き出している。箱の下に黒い車輪が四つ
ついて、前面にランプが組み込まれているようで、まばゆい光が前の地面を照
らしている。彼女が何か操作すると、重い音が響き始めた。
「さあ、あんたたちも乗った、乗った」
「え?乗るって?」
 急き立てるヴィックにあたしが尋ねると。
「こいつは自動車って言ってね。えらくスピードが出る。普通はさっきのロス
みたいに舗装された道でないと走れないが、こいつはオフロードってヤツで、
こっちみたいな馬車道でも走れるんだ」
 チャスティティの後ろには、長椅子を向かい合わせた座席がある。間の床に
ゼルの身体を横たえ、あたしとガウリイが並び、アメリアは向かいに座る。ヴ
ィックはチャスティティの横に席を占める。
『GO!』
 女吸血鬼の号令とともに、その乗り物は轟音を立てて走り出した。

「そうだ!ゼロスを見なかった?ヴィック!」
「え?」
「ゼロスよ!」
「誰だい、そいつ?」
 あたしたちが乗った乗り物は、凄まじい音を振りまいて走るので、話し声を
大きくしないと聞こえない。今、あたしは自動車の前に座る二人のアンデッド
に話し掛けているのだが。答えたのはチャスティティ。
『ゼロスって、あのパーガトリを運んで行った黒い服のヤツ?』
「そう!あなたとアーニーがいなくなった後、あいつだけ姿が無かったのよ。
こっちに先に来たんじゃないか、って思ったんだけど?」
『あたしはずっとサウンドハウスの出入り口に居たけど、出て来たのはあんた
たちだけだったわ!揺れるわよっ!』
「えっ?揺れるって……あわっ……あわっ……わっわっ!」
 この乗り物は、馬車よりもスピードがある分、振動も激しい。下手にしゃべ
ってると舌を噛んでしまう。
 こんなものを、チャスティティは自由に操っている。どんな風に操縦するの
か観察してみると。
 船の蛇輪の形をしたものが、やはり舵の役をしている。船と同じように両手
でこの舵を扱っているが、しょっちゅう右手が床から突き出している棒を操作
している。スピードを調節しているのかと思うと、少し違うらしい。
「ねえ、この乗り物、どうやってスピードを出しているの?」
「どういう意味の質問だい?」
 大声で問い掛けるあたしに答えたのはヴィック。
「意味って?」
「この車が動く仕組みをきいているのか?それとも、運転手がスピードをコン
トロールしている方法をききたいのか?」
「う〜ん、どっちもききたいんだけど……」
「んじゃ、まず動力はエンジン。ガソリンっていう燃料――一種の油さ――そ
れを細かい霧にしてシリンダーに送り込み、ピストンで圧縮して高圧状態にす
る。その状態で爆発させ、生じる力をギアを通して車輪を回す力に変換する。
 馬車の場合は、馬が走り車輪は人間が乗る車を安定させるだけだが、自動車
ではエンジンの力を送り込まれて回転する車輪が、全体を走らせている。
 んで、自動車を運転する者は道路の状況に応じてギアを切り替え、アクセル
とブレーキを駆使して、常に望みうる最高の速度で走れるように運転するのさ。
右足で操っているのがアクセルとブレーキ、左足で踏んでいるのがギア・チェ
ンジの時に使うクラッチだ。右手で扱っているのがギアのシフト・レバー。両
手で回しているハンドルが舵だ。チャスは最高のドライバーさ」
 自動車は凄いスピードで進む。夜なのであたりの風景は見えないが、木々が
飛ぶように後ろに消えていくのが分かる。というのも、少なくとも真正面の地
面だけは、前面の明かりで照らされているからだ。《明かり(ライティング)》
と違って明るさが変わらないから、高性能のランプのようなものらしい。
 その明かりの中、あたしたちは上り坂を進んでいた。
「しかし、アーニーがこっちに来たって、どうして分かるんだぁ?」
 珍しく質問をしたのはガウリイ。チャスティティが答える。
『あたしはね、アーニーと一緒に居るスマイリーと同調しているのよ。スマイ
リーはスマイリーでアーニーと同調してる。だから彼らの行方が分かる』
 答えながら彼女は、このとんでもないスピードが出る乗り物を操っている。
「それに、この道はカタート山脈に通じているわ。アーニーはそこへ向かった
はずだもの。間違いない」
「アーニーがカタート山脈に向かった、ってどうして分かるんですか?」
 あたしの言葉に、アメリアが尋ねる。
「ゼルがアーニーに言ってたじゃない。『北の魔王がカタート山脈にいる』っ
て。アーニーは《メガデス》をやろうとしているから、ゼルから聞き出そうと
したのも《メガデス》に関わることに違いないわ。アイツが北の魔王というも
のをどこまで理解しているか分からないけれど、もしも、北の魔王が身動きで
きないのを見つけたら、解放しようとするでしょうね」
「そんな……!」
「だから、なんとかアーニーに追いつかないと」
 チャスティティにあたしたちの話が聞こえただろうか?彼女は、時には岩に
片方の車輪を取られそうになりながら、それでも相変わらずのペースでふっ飛
ばす。彼女のこの腕なら、アーニーに追いつくのもたやすいかも。

 しかし、間もなくあたしたちはこの乗り物から降りなければならなくなった。
 カタート山脈が近くなり、自動車が進めるような道が無くなったのだ。
『ここからは歩くしかないね』
「しゃーないな」
 チャスティティとヴィックに続き、あたしたちも自動車を降りる。
 ここは、あたしがゼロスに案内されて来た竜たちの峰(ドラゴンズ・ピーク)
の少し手前。まだ竜たちの領域ではないらしく、彼らの姿は見えない。
 ここで問題が起こった。ゼルをどうするか。
 アメリアは彼を連れて行きたい、と言う。チャスティティとヴィックはここ
で埋葬するのがいい、と言う。
「アメリア……気持ちは分かるけれど……今は身体だけだけれど、休ませてや
ろう。ここまで連れてこられたので精一杯よ」
「……でも!」
「もちろん、彼の頭を取り戻したら一緒にして、きちんと埋葬し直そうよ。そ
れまで仮の墓ってことよ」
 アメリアはうなだれて、小さくうなずいた。

 地精に働きかけて穴を掘り、そこにゼルの身体を横たえて、ブロード・ソー
ドを墓標代わりに立てて埋葬した。きっと迎えに来るからね。
 あたしたちが再び前進しようとした時。
 「伏せろっ!」
 ガウリイの叫びに、あたしたちはとっさに街道沿いの木陰に飛び込む。
 ずどどどどぉぉぉぉん!
 どどっどざざざぁぁぁっ!
 ずずずぅぅぅぅむ……
 重いものを幾つも幾つも叩き付ける音。
 連続した音が途切れ、あたしたちが頭を上げると、そこには何頭もの黄金竜
(ゴールデン・ドラゴン)や黒竜(ブラック・ドラゴン)が転がっている。
「こ……これは……?」
 動転するあたしの耳に、聞きなれた声が響く。
「リナさん……」
「ゼロスっ!どこにいるのっ?」
「ゼロスですって?彼の仕業なのっ?」
 獣神官ゼロスは、降魔戦争の時、この竜たちの峰で数百頭の竜をたった一匹
で壊滅させた。今、ここに降って来た竜ももしかしたら……
「いや、これは魔法でやられたんじゃぁないな」
 硬直するあたしたちを尻目に、竜の死骸をチェックしたヴィックが言う。
「魔法でなくて、どうやって竜を?」
 あたしが尋ねると、ヴィックは肩をすくめる。
「こいつらをやったのは自動小銃っていうシロモノさ。あんたたちには分から
ないだろうがね。簡単に言うと、金属の弾丸を火薬の爆発力で大きなエネルギ
ーを与えて発射する武器だ。弾丸が当たると、その周囲に弾丸に加わったエネ
ルギーが伝えられ、爆発が起こる。人間なら一発で致命傷だ
 まあ、この竜たちはそんな衝撃だけで致命傷を負うとは思えないから、きっ
と弾丸に魔力が込められていたんだろうが」
 魔族は道具を使わない。そんな武器を使うヤツといったら……アーニー!
「人間の……娘よ」
 聞き覚えのある声がする。確かめようと一頭の黄金竜の顔を覗き込むと。
「ミルガズィアさん!」
 間違いない。一年前、あたしを異界黙示録(クレア・バイブル)へ案内して
くれた黄金竜の長老だ!彼も瀕死の重傷を負っている。
「人間の娘よ……ゼロスが我々のところへ来た……」
「ゼロスが?彼は異界のモンスターを追っていたはず……」
「そうだ……ゼロスが言うに……そのモンスターは北の魔王を……解放しよう
としていると……。だが、ゼロスは……異界の者に好き勝手されるのを好まな
い、と言い……我々と協力して、モンスターを倒そうともちかけた」
 やはりゼロスもあたしと同じように考え、先回りしたってわけか。
 あたしは、もしかしたら獣神官は、アーニーを利用して北の魔王を解放させ
るんじゃないか、と心配したんだが。
 よそ者にちょっかい出されるのは嫌なのか。律儀なやつ。
「それで?あなたたちはアーニーと戦ったんですね?」
「……最前線で戦ったのはゼロスだ……だが、彼が倒されそうになり、我々が
助太刀して……返り討ちにあった。あれは……見たこともない武器を使う……
ゼロスは何とか逃げたようだが……」
「リナさん……」
 そのゼロスの声が再びあたしの耳に届く。声のする方を見やって、あたした
ちは目を疑った。
 あたしの目前の闇にゼロスが浮かんでいる。しかし、身体が半分も無い。胸
から上だけで腕も右しかなく、錫杖もない。
「ゼロス……その姿は?」
「はは……アーニーより先回りしたんですが……やられちゃいました……竜族
の方々の援軍でどうにか生き延びましたが……」
 本来精神生命体である魔族が人間の形を維持するには、それなりの力がいる。
ゼロスが今、完全な人間の形を取れないのは、いかに彼の力が殺がれているか
ということでもある。彼にこれほどダメージを与えるとは……
 それでも彼には痛みの表情はない。そういう感覚がないから当たり前だが。
「リナさん……気をつけて。あれを止めるのはとても難しい。……僕の魔力で
も無理でした。……恐らくこの世界の魔力では止めることはできないでしょう
……僕はもうこれ以上、あなた方のお手伝いをすることは出来ません……でも、
お願いです。どうか……あいつを北の魔王様のところへは行かせないで……」
「リナっ!」
 ガウリイが叫ぶと同時に、あたしを突き飛ばす!
 地面に転がったあたしの目には、一瞬、黒いケダモノが、ゼロスの後ろから
飛び掛かったように見えた。
 ばしゅぅぅぅっ!
 長い爪の生えた手から、凶凶しい黄緑色の光が発生し、ゼロスの身体が溶け
ていく。
「ゼロス!」
「北の……魔王様を……」
 それが獣神官ゼロスの最期。
 あのめちゃくちゃに強かった、人を食った笑顔で、人をあれこれ利用しまく
った魔族が、こんなにあっけなく滅びるなんて……

       * * * * * つづく * * * * *


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14007ザ・デストロイヤー:6.死の淑女キューピー/DIANA URL3/2-21:40
記事番号13993へのコメント

       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 六.死の淑女(レディ・デス)

 あたしたちの頭上高く、無数の竜たちが警戒するように飛びまわる。彼らの
翼が巻き起こす風が、複雑な空気の流れを作り地上のあたしたちに吹き付ける。
 さらさらさら……
 溶けたゼロスの塵が吹き飛ばされていく。
 手の中に残った塵を面倒くさそうに払い、アーニーがあたしたちに凄む。
『お前らも俺の邪魔をしようってのか?』
 彼は今、右手にゼルの頭をぶら下げ、左肩に見たことも無い金属の棒に持ち
手をつけたものをかついでいる。いや、棒かと思ったものをよく見れば、中が
空洞になっている。その筒の取っ手の近くに、細長い金属を横に連ねた帯のよ
うなものが取りつけられている。これが自動小銃?
「あなたは何故このカタート山脈に来たのよ?」
 答えの分かりきった質問をしたのはあたし。
 上空では竜たちが出方をうかがっているし、こちらが先に仕掛けるにしても、
ここは時間の稼ぎ所だ。
『こいつが俺に、ここに《ニュークス》があるって教えたからさ』
 アーニーがゼルの首を掲げてみせる。
「ゼルガディスさん!」
 アメリアが叫ぶ。
「ここには《ニュークス》なんか無いわよ。《北の魔王》って呼ばれるヤツは
いるけれど。それにそいつがいるカタート山脈はまだ先よ」
『名前なんざどうでもいい。この世界に《メガデス》をもたらすものであれば
構わん。おい、石頭。カタート山脈の《北の魔王》のところへ行くにはどの道
を行けばいい?』
 アーニーはまた額に蛍光グリーンの光を浮かべ、ゼルの額に浮かんだ同じ光
と接触する。そうか!ゼルがアーニーの能力について「殺した人間の首を取り、
その頭に残っている意識に働きかけて知識を得る」と言っていたけれど、あれ
がそうなんだ!
 しかし、誰も具体的に《北の魔王》がどこにどんな状態でいるか、なんて知
りはしない。ゼルだって答えられない筈だ。
 案の定。アーニーは何の回答も得られなかった。
『何だ?貴様、これ以上のことは分からないのか?』
 アーニーは仕様が無い、という風に、ゼルの頭を放り出す。ゴロゴロと斜面
を転がり、ゼルはアメリアの前の地面まで届いた。
「ゼルガディスさん!」
 彼女は跪いてゼルの頭を拾い上げ、抱きしめる。大粒の涙が膝に落ちる。
「貴様……」
 ガウリイが心底怒っている。あたしだって同じだ。
 だが、間に割って入った者がいる。
『待って!アーニー!もうこれ以上、こっちの世界で《メガデス》をやるのは
止めて!』
 チャスティティは呼びかけながら、アーニーに向かって進んで行く。アーニ
ーは彼女から逃げるように後ずさる。
『チャス。俺はな、俺のやりたいようにやる。お前はそんな俺についてくる筈
じゃなかったのか?』
『あなたがあなたらしければ、地獄までついて行く!でも、あなたはおかしい!
今のあなたはあたしが愛してるあなたじゃない!』
 立ち止まったアーニーの瞳に凶悪な輝きが宿り、チャスティティもその場に
立ち尽くす。
『そうだ!誰もアーニーを愛さない!ママも!パパも!先生も!友達も!
 だからアーニーはそいつらを殺したんだ!』
 ああ、これが彼の怒りの根源!生まれて死ぬまで、自分が誰かから愛された、
と実感できない絶望が、彼をモンスターと化したんだ!
 チャスティティが叫ぶ!
『レディ・デスはあなたを愛している!』
『……レディ・デス?……レディ・デス?いいや、レディ・デスだってアーニ
ーを愛しちゃいない!彼女はアーニーを愛していない!』
『どうして、愛していない、って言えるの!?』
『レディ・デスは……レディ・デスは……今の俺を愛しちゃいない……彼女が
俺を愛するのは……俺が《メガデス》をやり遂げた時だ!』
『じゃあ、彼女の世界で《メガデス》をやればいいでしょ!』
 チャスティティを見つめるアーニーの目には、悲しみと怒りが燃えている。
『嫌だ!俺は今、俺を愛してくれる人が欲しいんだ!……チャス、お前に出会
えて俺は幸せだった……だが、お前も俺を理解しないんだな……お前も俺を愛
さないんだな?』
『あなたを愛してる!愛しているから目を覚まして欲しいのよ!』
『ボス!チャスの言う通りだ!帰ろうよ!ここは好きじゃない!』
『黙れ、スマイリー!』
 スマイリー?そう言えば、チャスティティが、アーニーと一緒に居る、と言
ってたヤツがどこかにいるはずだ。
 あたりを見回すと、アメリアがあたしのすぐ横に立っている。
 もう泣いてはいない。ゼルの頭は彼の身体を埋葬したところの地面に、墓標
代わりの剣の鞘を背にして置いてある。
 彼のためにも、何かをしなければならない、と考えているのだろう。
「アメリア……」
 あたしは手短に作戦を伝えた。

「翔封界(レイ・ウィング)!」
 風の結界をまとって、あたしを抱きかかえたアメリアが地上すれすれに飛翔
する。振り返るチャスティティの横をすり抜け、アーニーに迫る!
 その時、あたしの増幅呪文は完成し、攻撃呪文の詠唱もほぼ終わっている。
 あたしの動きに、アーニーが左手に持っていた自動小銃を構える。まるで石
弓の射手のように右肩に筒のお尻をあてがい、筒先をあたしに向けている。
 真っ暗な筒の内部が蛍光グリーンに輝く。
 だが、アメリアはあたしをアーニーに投げつけて上空に退避し、あたしは呪
文を発動させる!
「神滅斬(ラグナ・ブレード)!」
 ががががっ!
 凄まじい音ともに筒の先から火花と白煙があがり、あたし目がけて何かが飛
んで来る!しかしそれらはあたしが構える虚無の刃に吸い込まれ、あたしには
届かない。
「滅びろっ!デストロイヤー!」
 あたしは闇の剣で、アーニーの身体を横薙ぎに両断した!
『ぐわああああぁぁぁぁぁっ!』
 地面に転がったアーニーの上半身が、もがきながら自動小銃に手を伸ばす。
闇の剣を解消したあたしが、攻撃呪文を唱えるよりも早く、ガウリイの剣がア
ーニーの首を斬り飛ばし、アーニーの手は武器をつかんだまま動かなくなる。
「ガウリイ!」
「ゼルガディスの仇だ!思い知れ!」
 ふだん、敵に対して感情を見せないガウリイが、珍しく自分が落としたアー
ニーの首を睨みつけて吐き捨てる。首だけになったモンスターの顔は、恐ろし
い笑いを張りつけたまま何の動きも見せなかった。胴体も、それまでたゆたっ
ていたジェリー状の身体がなくなり、骨だけになっている。
『アーニー!』
 悲痛な叫びはチャスティティだ。
 アーニーを愛しながらあたしたちに協力してくれた彼女にはかわいそうだが、
これしかなかった。
「やったな?」
 ガウリイが剣を鞘に収めてあたしに確認する。
「これで終わったって?本気で思っているのかい?」
 冷やかすような口調はヴィック・ラトルヘッド。
 あたし、ガウリイ、アメリア、チャスティティの視線が彼に集まる。
「……終わらないって……どういうこと?」
 ヴィックはまっすぐに進んで、アーニーの胴体の横に立ち、脇を蹴って仰向
けにする。
「この程度でくたばっていたら、アーニーはこれまでに三回は死んでいるさ。
しかし、奴はいつも蘇る。レディ・デスの《神秘の力》を得てさ」
「でも、レディ・デスはここにはいないわよ!」
「そう、レディ・デスはカオス・ワールドに居る。そしてこの世界は今、カオ
ス・ワールドと繋がっているんだぜ!見ろ!」
 ヴィックの骨だけの指が、地面に打ち捨てられたアーニーの胴体を指す。そ
の上着についている黄色のバッジから、アーニーの身体と同じ蛍光グリーンの
光が溢れ出した、と思うと、それが胴体を覆い、離れた下半身と頭部にも及ん
で生き物のようにうごめき、たゆたう!胴体と下半身、頭を繋ぐ光の帯の中に、
触手のようなものが見えた、と思ったのはあたしの錯覚だろうか?
 次の瞬間、からくり人形のバラバラの身体が戻るように、切り離されていた
下半身と頭部がすばやく胴体に引き寄せられ、完全にくっつく!
 胴体にジェリー状の輝く物質がまとわりつく。目に緑色の炎が宿る。額に蛍
光グリーンの輝きが輪となって浮かぶ。むき出しの歯が恐ろしい笑いを作る。
「……そ、そんな……」
 乾いた声を絞ったのはガウリイ。
 あたしたちの目の前で、イーヴィル・アーニーが立ち上がっていた!

「アメリアっ!護符(アミュレット)、借りるわよっ!」
 あたしは、レディ・デスが《神秘の力》を込めた護符(アミュレット)をも
ぎ取ると、それを掌に入れたまま、増幅呪文の構えを取り、呪文を唱える。
 先ほどの《神滅斬》で魔力を消耗しているが、金色の魔王(ロード・オブ・
ナイトメア)の力を借りた魔法でも倒せないとなると、《重破斬(ギガ・スレ
イブ)》でさえ通用するかどうか。残るは、彼が本来所属しているカオス・ワ
ールドの力で……
 四つの呪符(タリスマン)《魔血玉(デモン・ブラッド)》が輝き、あたし
は続いて呪文を紡ぐ。

  天に祝福されしもの
  魔王に愛でられしものよ
  果て無き墓場に君臨せる
  純白なりし死の淑女

 アメリアの護符(アミュレット)に緑色の光が輝く。途端に、あたしの全身
から残りの魔力と生命力が吸い取られていく。
 くっ!レディ・デスの力を呼び込もうと考えたのだが――この力っ!どうや
ら《重破斬》並みの危険な術になりそうだ!
 しかし、ここで止めるわけにはいかない!

  汝の願いし滅びの道を
  はずれし魂をただすため
  我に汝の力を授けよ
  偉大なる混沌の名において!

 《神秘の力》を含んだ護符が緑から純白に色を変える。それとともに、あた
しの身体も純白の輝きに包まれ、髪まで白くなる。
 護符から噴き出すエネルギーを必死で抑えながら、あたしはそれをアーニー
に向けて構える。
 後少し……後少しだけ!
 この力を……アーニーに送り込み、そして彼を……

 どくん!
 あたしの中で何かがはじける。
 いけない……呪文に飲み込まれる……レディ・デスの力がまともに……あた
したちの世界に……撒き散らされる……

 静かだ……
 私が目を開くと、イーヴィル・アーニーがいぶかしそうな顔つきで私を見つ
めている。
 ゆっくりと首を巡らせると、ヴィック・ラトルヘッドじゃないか。こいつの
表情なんて分からないが、どうもしまらない感じがする。
 その向こうには……金髪の男。なかなか美形。そうだガウリイという名だ。
私の保護者?悪くない。
 そして、反対側に目をやれば……赤毛で背の高いプロポーションのいい女と、
小柄だが胸の大きな黒髪の女の子。赤毛がチャスティティで、黒髪がアメリア。
 ここは……地上か?
 けれどもここは……

『……んで?いったい、何がどうしたってんだ?そっちが来ないならこっちか
ら行こうか?』
 アーニー?何を言う?
「リナっ!来るぞ!」
 金髪の男が、私の前に飛び出してくる。盾になろうというのか?
 この時、私は事態がようやく分かりかけてきた。

 私は無言で右手を上げ、目を閉じ呼びかける。私たちの後ろ、竜の死体が転
がる中、一つの頭をもたせかけられている墓標代わりの剣。
 呼びかけに応じ、鞘を抜け出した剣が飛んできて、私の右手に収まる。
『今度は剣かよ?何をやっても無駄……』
『違う!アーニー!』
 ヴィックが叫ぶ。どうやら彼は気づいたようだ。
 私はおもむろにその剣を片手で構え、命じる。
『剣よ、語れ。汝が見し事柄を。汝の主の身に起きし事柄を!』
「リナさん、どうしたんですかっ?」
 アメリアが叫ぶ。
 ゾンビの発生――サウンドハウスの調査――カオス・ワールドへの移動――
チャスティティの召喚――パーガトリとの戦い――イーヴィル・アーニーの出
現――ゼルガディスの死……
 ……ヴィック・ラトルヘッドの登場――こちらの世界への帰還――アーニー
の追跡――ゼロスの登場と死――アーニーへの攻撃と失敗――そして……
 剣が語る言葉を聞きながら、私は一歩一歩アーニーに歩み寄る。
 アーニーも何かを感じるのだろう、一歩一歩後ずさる。
『私は天に祝福されしもの。
 されど私は天に戦いを挑む』
 ガウリイが私の横に立つ。そうか、彼はこんなに背が高いのか。
『私は魔王に愛でられしもの。
 されど私は彼を倒し力を奪った』
 チャスティティが悲鳴を上げる。彼女も気づいたのだろう。
『私の城は果て無き墓場にある。
 地獄の深淵に!』
 ヴィックがアーニーに走り寄り、何事か耳打ちする。
『私こそ純白の戦士!
 地獄の支配者、レディ・デス!』
 アーニーが叫び、地面に這いつくばる!

 そう、私はカオス・ワールドではレディ・デスと呼ばれている。だが今、私
は普段の姿ではなく、この世界の少女の身体を借りて存在している。彼女は私
の力を得ようとしたのだろうが、結果的に私の存在そのものを、この世界に召
喚してしまったのだ。
 華奢で細い身体だが、いつものように《神秘の力》の白い輝きが私を包む。
私は手にした剣にもその力を乗せ、アーニーに突きつける。
『イーヴィル。顔をお上げ』
『レディ・デス?……本当に?レディ・デス?』
『信じられないと言うのなら、見せてあげよう』
 私は後ろを振り向き、剣の鞘が刺さっている地面と、そこに置かれた頭を指
差す。精神を集中し、天の力を注ぎ込む!鞘も頭もまばゆい白い輝きに包まれ、
さらに地面の下に横たえられた身体も同じ輝きで包まれているはず……やがて、
地面が下から突き上げられ、鞘が倒れ、手が出て来る!
「ゼルガディスさん!」
 アメリアがその場に駆けて行く。地面から這い出してきたのは、完全な身体
の男。アーニーにはねられた首も元通り。
 アーニーはほうけた表情でそれを見ている。
 私は彼を置いて、空高く上昇する。高く――高く――
 竜たちが群れているところも通り過ぎ、地上の建物が見えなくなるまで昇る。
そして――
 私は地上に天の力を降り注ぐ。全身全霊を込めて。
 私が与えた力でアーニーがこの世界に及ぼした破壊の爪痕を、すべて拭い去
るために!

 私が精神集中を解き目を開くと、私の周りを数多くの黒い竜や金色の竜が飛
び回っている。アーニーに倒された仲間が群れに戻り、それを実現した私に敬
意を表しに来ているのだ。
 ひときわ大きな金色の竜が、猛々しい声を上げる。勝利の雄たけび!
 私は剣を掲げ、それに答える。
 勝利は常に私とともにある。私はレディ・デスなのだから!

       * * * * * つづく * * * * *


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14031ザ・デストロイヤー:7.異端者キューピー/DIANA URL3/3-21:00
記事番号14007へのコメント

       スレイヤーズSS『ザ・デストロイヤー』

 七.異端者(ペイガン)

 アーニーがこちらの世界に撒き散らした《メガデス》は、私の天の力で無に
返した。ゾンビになった人間は、元通りの日常生活を取り戻しているだろう。
 私は地上に戻り、へたり込んでいるアーニーを見下ろす。
『この世界で《メガデス》をやっても意味はない……アーニー』
『レ……レディ・デス……どうして?』
『どうして?』
『どうしてあなたはここにいられるんだ!あんたが地上に来たら、魔王の呪い
が働くんじゃなかったのか!』
 アーニーは私の足にすがってくる。
『私が封じられたのは、私の故郷がある地上だけ。ここにはピースがない……』
『じゃあ、ここに止まってくれ!俺の傍にいてくれ!レディ・デス!』
『この姿で?』
 私が言うと、アーニーは困ったようなびっくりしたような顔をする。
「うーん、その女の子も悪くないけど……やっぱレディ・デスはグラマラスで
セクシーな方がいいだろうなぁ」
 軽く言うのはヴィック・ラトルヘッド。
 むか。
 おや?なぜ、私は腹が立つのだろう?どうやら、この寄り代になっている少
女の意識が、私にも伝わっているようだ。だから、こちらの世界の者について
も、私はある程度のことが分かる。
 私は憮然と、アーニーから周囲の風景に視線を移す。
『ここにはピースがない。私はピースに帰りたいのに』
 アーニーは私の足を放すと、いざって遠ざかり、膝小僧を抱いてうずくまる。
まるですねている子供のようだ。彼がつぶやいている。
『どうして誰も……俺が俺であるままに愛してくれないんだ……誰も彼も……
俺を思い通りにしようとする……俺がそうしたいのかどうか……構いもせず』
『では、私がこの姿のまま、この少女の精神と同化して、お前の傍に止まった
として、お前は満足か?』
 アーニーは顔を上げ、しばらく少女の私を見つめ、ゆっくりと首を振る。
『お前も私に、あるべき姿を求めている。私もお前を好きだから、お前にある
べき姿を求めて、何が悪い?』
「……アーニーは、あんたの心が本当に自分に注がれているのか、信じきれな
い……いや、信じたくないんだ」
 横から声がかかる。振り向いてみれば、先ほど私が復活させた男。
 この男は正確に言うと人間ではない。岩の肌に金属の糸の髪を生やし、人間
よりは妖精のような端正な風貌をしている。名前は……ゼルガディスだ。
 私は彼が何を言おうとしているのか、窺うまなざしを向ける。彼が言った。
「アーニーは、地上で自分を愛してくれる者を初めて見出した。チャスティテ
ィだ。だが、彼は最初に《永遠の愛》を与えると約束してくれたあんたのこと
も忘れられない。二人のどちらも選べず、苦しんでいるんだ。
 あんたが彼を愛していない、と自分自身に思い知らせたくて、わざとあんた
の意向に反する振る舞いを重ねている。だが……」
『だが……?』
「結果として、アーニーはチャスティティも失うことになった。彼女はアーニ
ーが無理をしていると直感し、そんな彼を拒否したんだ」
『お前は……なぜ、そんなことを知っている?』
「俺がいろいろ知っている理由より、あんたが今の彼の気持ちを分かる方が大
事だと思う」
 ふ……ゼルガディスの言葉を聞いて、私は口の端に笑いを浮かべる。
 地獄の亡者どもなら、この微笑だけで私の前にひれ伏すだろうが、さて、こ
のリナの姿ではどんな表情になるのやら。
 私はゆっくりとうずくまるアーニーの傍らに跪く。彼の顔を両手で挟み、自
分の顔に向き合わせる。
『アーニー。忘れないで。私は私の《神秘の力》をあなただけに与えた。地獄
でも地上でも、私の《神秘の力》を持っているのはあなた一人。私にはあなた
しかいない』
『レディ・デス?……行ってしまうのかい?』
『この少女の身体に長く止まれば、影響を受ける。私が私でなくなる。私はも
う行かなければ』
 私は立ち上がり、チャスティティに歩み寄る。
『彼を支えてあげて。私にはできないことが、あなたにはできる』
『あなたに言われなくても、ね』
 彼女はまっすぐに私を見つめて言い返すと、彼に歩み寄っていく。
 そう、彼女は自発的にアーニーを支えるだろう。それでいい。
 彼女を見送っていた時。奇妙な感覚が湧き上がる。
 まるで足下の地面がなくなったような、頼りない感じ。私の《神秘の力》が、
確実にそがれている!
 アーニーもチャスティティも、ヴィックもあたりを見まわしている。
 ヴィックが口を開いた。
「どうやら、サウンドハウスに結界が張られたようだ。カオス・ワールドの干
渉力が極端に弱い」
『結界?何者の仕業?』
「パーガトリか……レヴィアータか……それともレディ・デーモン?」
 私が口走った言葉に、ゼルガディスがつぶやく。まったく……いったい彼は、
なんだってこれほど私の敵のことまで知っているのか。
『誰であろうと、私の邪魔はさせない。サウンドハウスに結界が張られたのな
ら、それを破るまで!』
 言い放って私は宙に浮かぶ。空を飛んで現場に向かうのが一番早い。
『飛翔術(ライド・ザ・スカイ)!』
 ヴィックが呪文を唱えてやはり宙に浮かぶ。
 続いてアメリアとゼルガディスが手を繋ぎ、空いた手で片方ずつガウリイの
手を取り、ぶら下げて上昇する。
 アーニーとチャスティティが忙しく自動車に乗り込むのを見下ろし、私はサ
ウンドハウス目指して一散に飛んだ。飛行の術を使える連中もついてくる。

 サウンドハウスのある一角は、遠くから見ても分かる結界に覆われている。
赤い透明な椀をかぶせたような結界だ。そのすぐ外に、私たちは着地した。