◆−魔槍伝承談7−CANARU(2/21-22:31)No.13828
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13828魔槍伝承談7CANARU 2/21-22:31


「何考えてるのよ・・ったく・・・・」
船から下りた途端リナが発した一言。
「・・・ひっでえな・・・・・・・・」
誇りが漂う闘技場。普通皇帝がこんな事していていいのだろうか・・・?
アモーロに到着したその瞬間真っ先に見たものがこれである。
皇帝ネロが公務もほったらかし、馬上競技の大会で優勝したというのだ。
無論、そんなものはおべっかである。
「やれやれ・・・ポッパイヤさんが亡くなってから・・ますますネロ様の
行動はエスカレートしているようですねぇ・・・」
ぼそりとゼロスがリナとガウリイの側によってきてそう呟く。
「・・・・で、どうして・・ポッパイヤは死んだの・・?」
殺しても死にそうに無いあのネロの愛人。
しかし、つい先日・・多少の寄り道はあれども・・この女の死を聞かされたのだった。
「ええ。簡単な理屈ですよ。何処をどう間違えたのか知りませんけど・・。ポッパイヤさん、ネロ様の激怒に触れることやらかしたそうですよ。ま〜・・蹴り殺すな〜んて乱暴な行為に走るネロ様もネロ様だと思いますけどね」
自分の国のことなのにまるっり『他人事』とでも言った口調でゼロス。
「まあ・・い〜けどよぉ・・。これからど〜すんだ・・・?」
「・・・馬上競技の参加受付に署名しながら聞く台詞?馬鹿親父・・・」
ジト目で父親を睨みながら冷たくリナは突っ込みを入れる。
「ま〜い〜ぢゃね〜か・・減るもんじゃあるめ〜しよ・・・」
「・・・インクが減る!!」
「・・・・しまった!!ココに受け付けようのペンあったか!!ちいい!!うっかり
マイ・ペンをつかっちまったぜ!!」
明らかに論点の違う親子の会話・・・・。
「まあ・・別ど〜でも良いけど・・ね〜さんはどうした・・?」
そんなやり取りを呆れながら眺めていたハンニバルがやおら口を開く。
「あ・・そういえば・・あの人・・今日は大人しいですね・・って・・あんなところに
蹲ってますけど・・・」
ヴァノッツァとあまり仲のよくないゼロスがこれこそネロ以上に無関心・・と言うように
其方の方向を指差す。
「・・・ヴァノッツァね〜さま・・どうしたの・・?」
しゃがみ込んだまま何やら地面に落書きしているヴァノッツァにリナが尋ねる。
「・・・ヴァノーね・・昨日・・・お菓子・・食べたの・・・」
「・ええ・・いいな・・俺も食いたかった!!」
下らないことを羨ましがるのは言わずと知れたガウリイ!!
「・・・けどね・・そのお菓子・・腐ってて・・・ヴァノー・・お腹・・壊しちゃった・・」
尚も地面に落書きしながらくら〜〜〜〜〜い声でそう言うヴァノッツァ・・。
「そっか・・じゃあ・・俺・・お菓子食わないでよかったんだな・・」
「まったくですよ!!ガウリイさま!!こ〜ゆ〜間抜けな体調不良は!!食い意地の張ってるお頭の足りない女性だけで十分です!!」
ここぞとばかりにヴァノッツァを非難するのはやっぱりゼロスである。
が・・しかし・・そんなことを言われつつもヴァノッツァは・・・。
慌てず、騒がず・・ゆっくりと・・・・・・・・。
「でね・・ヴァノー・・苦しみの中で啓示を受けたの・・嫌いな人に・・自分の痛みを移す・・確実な呪いを・・・地面にその人の・・絵を書いてね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・これ・・・人間の絵だったの・・?
なんだか足が四本生えた奇妙な河童の生き物がのた打ち回ってるよ〜に見えた
だけ・・だったのだが・・・・・・・。
「そしてね・・呪文を唱えて・・痛いの痛いの・・と〜くのおやまに・・・飛んでけ・・えい!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなんで・・いいの?
半ばリナが呆れていると・・・・・。
「あいたたたたた・・ぼ・・ボク・・一寸お腹が痛くなったみたいです、すみません、リナさん・・今日のところは・・ガウリイさまのこと・・お願いします・・ぼ・・ボクは・・今日一日休業を頂きます・・・」
やおら腹を抱え、顔を真っ青にして何処へとも無くヘロヘロと去っていくゼロス・・・。
「なあ・・・リナ・・・・・・・・」
「・・・どうやら・・のろいは成功した・・みたい・・・・・ね・・・」
心なしかガウリイの質問にヴァノッツァ口調で答えてしまうリナ・・・。
て・・言うか!!
いいのか!!え〜〜〜んかああ!!あ〜〜んなんでええええええ!!!!!
その後、順調に回復したヴァノッツァに対し・・・。
ゼロスの運命を知っている物は・・誰も居ない・・・・。


「まったく。ヴァノッツァね〜さまには困ったもんだな・・・」
頭を抱えながらアモーロ市内にハンニバルの苦悩の声が木霊する。
「・・・リナさん・・アタシも彼女の事は良く知りませんが・・昔からあんな?」
アメリアの質問にリナは・・・。
「まあ・・あ〜んな呪いに何処でど〜やってハマったかはしらないけど・・。かなり
執念深かった事は確かだと思うわ・・・・」
「・・・一撃爆発のお前とはまた違った爆発物だな・・・・」
「・・・ゼル・・ナンか言った!!?」
「・・・・・いや・・・深い意味は無い・・・・・・・」
さしものゼルもリナの顔に殺気を感じたのだろう、大急ぎで口を噤む。
まあ、ヴァノッツァの慢性的なのろいに比べたら此方のほうが一瞬なだけ
多少・・本当に『多少』はマシ・・という説はあるのだが・・・。
魔槍でぶん殴られるのは痛いので勘弁いただきたい。それだけである。
「でもよ・・話は元に戻るが・・。ポッパイヤを殺したのも・・強いて言えばアグリッピナを殺したのもネロなんだろ・・・?」
不意に故郷の事と言う事もあり、ガウリイが真面目な話題を持ち出す。
「まあ、ね。どちらもネロを傀儡として政権を握ろうとしたとんでもない女だった・・。その事実は確かだと思うけど・・その二人が消えてネロが暴走したって事か・・・」
はたまた・・・。
もともとネロは脆弱な人間だったのかもしれない。
しかし・・・そのネロを隠れ蓑にアグリッピナ、そしてポッパイヤが蔓延り・・・。
「つまり。最後の鎖のポッパイヤを誰かがネロをそそのかし『殺させる』に至ったか・・・・」
考えたようにハンニバルが口を開く。
「ま〜ね・・。けど、ネロに好き勝手やらせてるところを見ると・・・・。本当に『ネロ』自体の人格をど〜にかさせちゃったんだと思うわ。自分が彼を操るとかしてないようだし」「・・・ネロの人格に『元々』問題があったとか思わないんですか?リナさん」
アメリアの質問にリナは・・・。
「ま〜・・口やかましい女て〜のは・・大抵政治的や社会的に『些細な事』には口出ししたがるけど『重要な事』は大抵避けるもんなのよ。でもって、その辺りを踏まえて彼女たちに好き勝手はやらせて・・重要事項は自分で操る。けど、社会もその辺りには気付かないもんだし必然馬鹿女のほ〜が目立ってくる物よ?それなのに・・ネロ自身が今度はその『馬鹿』をやってるわ」
ハッキリといってやる。
「けどよ・・その『ネロ』を変えた奴が『誰』かわからない限り・・」
なおも文句があるようにガウリイ。
「・・・わかった・・そこまで言うなら・・アタシも考えがあるわ・・・」
かくして・・ガウリイが大反対するのも聞かず・・。
リナはとんでもない『作戦』に出るのだった!!


「ヴァノー!!頼む!!この縄を解いてくれえええ〜〜〜〜〜!!」
アモーロの安宿、柱に縛り付けられた情け無い姿のガウリイがヴァノッツァの
泣きながら訴える!!
「駄目・・・ヴァノー・・・ガウちゃんの監視役・・リナちゃんに・・言われたから・」泣いているガウリイの足の裏を猫ジャラシで擽りながらヴァノッツァ。
「ぐわあああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
さしものガウリイもこの攻撃には堪り兼ねたらしい。
爆笑しながら涙を流す!!
「・・あら・・・今泣いた・・烏が・・・もう・・笑った・・えいえい・・」
「ぐわああ〜〜〜!!って!!俺はリナが心配なんだあああ!!!!」
「・・・リナちゃんなら・・大丈夫・・・多分・・絶対・・・根拠ないけど・・・
けどね・・ガウちゃん・・『面が割れてる』から・・外出禁止・・なんだって・・」
言いながら更に猫じゃらしでガウリイの足の裏を擽る。
「・・・これ・・面白い・・今度・・リナちゃんにも・・教えてあげよう・・」
かくして・・またまたガウリイはリナに苛められる運命がけっていしたようである。


「おら!!奴隷!!さっさと皿洗いしろおお〜〜〜!!」
「はいはいはいはいいい〜〜〜〜〜!!」
「奴隷!!ごみ始末しといて!!」
「はいはいはいはいいい〜〜〜〜!!って・・リナ・・・何時まで俺たちこ〜してれば
良いんだよ〜?」
料理人に扮したリナに奴隷に扮したハンニバル、ゼル、アメリアが泣きながら尋ねる。
「・・ネロの側近で・・彼に『洗脳』をもようしてる奴を発見するまでよ!!」
幸いリナの料理の腕はプロ級。
更に言えばこのアモーロでは饗宴の為に料理人を態々雇入れる、という風習があった。
リミットは今夜の宮殿での饗宴・・夜中の12時まで・・か・・・。
心配こそしていたがガウリイはネロに顔が割れていると言う事もあって、宿屋の
柱に縛り付けてきたのだが・・・。
「ったく!!ど〜してこんなに忙しいんですか〜〜〜〜!!」
アメリアの絶叫が台所に響き渡る。
「・・・一寸・・お宅の奴隷・・煩いわよ!!」
偉そうなオバサン料理人がリナをジト目でみながら言う。
「ああ・・すみません〜〜!!今から黙らせますわ〜〜!!さあさあ!!働け働け〜!」
「・・・リナ・・覚えてろよ・・・・・」
更に冷たい目で見るゼルに・・・。
「ガウリイのクラゲ菌が感染しちゃった。昔の事は忘れたワ!!」
かなり都合のいい発言である。


「ふう・・すっかり出来たわね・・」
潜入してから数時間・・宮殿の中を歩き回る事すら出来ず・・やっとの事で
完成した料理を饗宴の行われる大広間に運ぶ事が許されたのだが・・・。
いかんせん酷く疲れた上にこれだけ広い場所である。
ネロを洗脳した人物を探す・・などというのは土台無理な話のように今更ながら
思えてきてならない。
が・・・・・・・・・・・・・・・。
「良いですか?ネロ様・・・帝王と言う物は・・・・」
不意に聞こえてきた壮年の男の声。
「・・・わかっている・・セネカ。しかし・・・・・・・・」
尚も言い募るこの若い男・・・ネロなのだろうか?????
「良いですか・・貴方様は『皇帝』であらせられるのいです・・もはや・・この世に
『傀儡』など・・貴方様を呼ぶものはいないはず・・・・・・・・」
「・・・・そなたの言う事を信じて良いのだな?セネカ・・・?」
・・・・・・セネカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
この名前・・ひとまず『覚えておく』価値がありそうである。


「セネカはネロの家庭教師だよ・・」
縄を解いてくれたリナにゼル、アメリア、ハンニバル同様に不満そうな視線を送りながらガウリイが言う。
「・・・家庭教師・・・?」
「ああ・・アグリッピナが健在の頃から側に居て・・とかく・・な〜〜んっか噂があった
みたいなんだが・・・・・」
「・・・噂・・・???」
「・・・・・・・・・(ブス)・・・忘れた!!」
う・・・・・・・!!
この男・・確実的にリナに縛り上げられた事根に持っている!!
「何よ・・折角教えてくれたらも〜ちょっとはアンタの事大事に扱ってやろうと思ってたのに!!(嘘)」
「ええ・・リナ!!本当か!!でもよ・・噂って事は知ってるんだけど・・。ゼロスのアホンダラが・・『ガウリイ様のよ〜な純真なお方は知っちゃいけません!!』って言って教えてくれなかったんだよ!!本当!!」
・・・・・・・・となると・・・。いえることは一つ・・・。
「・・・役立たず!!!」ズバリ!!!!
「あああああああああ!!リナのうそつき!!大事に扱ってくれないじゃね〜〜かあああ!!」
尚も子供のように泣きじゃくって文句を言うガウリイに・・・。
「煩いよ!!(ガツン!!)!!」
毎度おなじみ、魔槍『ゲイボルグ』の尻の銀製の複雑な幾何学模様の飾りでガウリイの
金髪を殴りつけるリナ!!
「・・・ガウリイ・・逆らわないのが生き延びるほうほうだぜ・・・?」
よしよし、とガウリイを宥めながらハンニバル・・・。
「そだな・・ヴァノッツァの呪いに比べたら・・マシだよあ・・・」
「シクシクシクシク・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ガウリイ、ハンニバル・・泣きたいのは俺も同じだ・・・」
ゼルまでもが加わって辛気臭いことを言い始める。
「リナさ〜〜ん・・この人たち・・くらいです〜〜〜!!」
「ったく・・しょうがないわね・・放置して出掛けるわよ?アメリア!!」
何はともあれ。今はネロの狂気の原因を突き止める必要がある。


「おお!!リナ、アメリア。男連中はど〜した?」
どうやら馬上競技の大会で見事優勝したらしい。
リナの父が商品を肩に担ぎ上げながら意気揚揚と此方にやってくる。
「・・・ん・・・腐って畳に『の』の字書いてるわ・・・」
「・・・腐ってる・・あいつらが?なお更食えたもんじゃね〜なあ・・・」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら言う父。
「そ〜ゆ〜問題じゃありませんって。で、おじ様・・・面白い事ってナンですか?」
「おお。今から円形劇場で皇帝自身が詩の朗読、そして歌を歌うそ〜だぜ?」
・・・・・・・詩人気取りの部分がある・・とは聞かされていたが・・。
まさか公衆の面前で政治家にしてカエサルである皇帝が・・ンな事するだろうか?
「今皇帝はあそこの建物で控えているらしい。俺もちょっくら忍び込んで面拝んで
来たぜ?ま、壮年のオッサンに見つかりそうになったんで早々に引きあげたんだがな」
・・・オッサンって・・アンタもオッサンだろ〜がな・・・。
口元まで出かかった突っ込みを親父の肩に担いだ新品の釣竿で頭を直撃されては
敵わない・・・。
そう思って辛うじて喉の奥に飲み込みながらリナはそちらの建物のほうに視線を移し。
「そのオッサンって・・ちょ〜っと渋めで知的の・・そうそう・・ロマンス・グレーの青灰色の目の・・背の高い・・身分の高そうな服装した奴!!?」
だとしたら・・それはセネカだ・・・・。
「ああ・・ありゃ〜〜・・元老議員か・・そうでなくてもなかなかの家柄の貴族だろうな・・って・・おいおい・・お前も野次馬だな・・オッサンに見つからないよ〜に見ろよ?払う保釈金は持ち合わせてね〜からな!」
親父の忠告・・特に『保釈金はなし』には怯えながらもリナはネロの控えている場所向かって一直線に走り出す!!
「あ〜〜!!リナさん!!待ってくださいいいいい!!」
そんなリナの後ろを大急ぎでくっついてくるアメリア!!


「皇帝たる貴方が!!何をお考えか!!」
やおら怒り狂った予想通りの人物・・セネカの声がここまで聞こえる。
「・・・煩い・・そなたに指図される覚えは・・・無い・・・・・」
答えるのもやはり思ったとおりネロの声である。
「・・・貴方は・・皇帝陛下であり・・・・・」
尚も何かを言い募ろうとしたセネカにネロがずいっと詰め寄り・・・・。
「黙れ!!そなた・・・余を愚弄するか!!?そうであろう!!余が何も知らぬと
・・未だに幼子とでも思っておるであろう!!答えよ!!そなたの余に対する裏切り・・・すべては余の復讐だ!!!」
言うが早いかネロはセネカを残し、その部屋から退室する・・・。
残されたセネカの顔色は・・ここからの位置では垣間見る事は出来ない。
「リナさん・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・ネロの・・・復讐って・・・・・・・・・・・」
どうやら、この家庭教師がこの皇帝を操っていた・・・。
その考えはお門違いであったのだろうか・・・・?


「リナ!!」
その日。ネロが衆人の前で役者よろしく披露した歌と詩の朗読を聞いた帰り。
宿への帰り道でリナ、アメリア、そしてリナ父の前に大慌てでガウリイ、ゼル、ハンニバルが現れる。
「・・どうしたのよ・・ガウリイ・・・・・」
「・・・はあ・・ヴァノーのとんでもない好みのおかげだぜ・・・ったく・・・」
息を切らせながらガウリイはリナの側に駆け寄り・・・。
「ね〜さまの趣味?」
眉間に皺を寄せながらリナはガウリイに聞き返す。
「ああ・・・さっき市内で処刑があったらしくてさ・・ヴァノーがど〜しても。見に行きたいって言ったんだよ・・・・・」
「・・・その趣味を言わないで・・同じ血が流れてると・・思いたくないの・・」
やおら遠い目をしながら呟くリナに・・・。
「・・・それは俺も同じ事だ・・リナ・・・」
此方は半泣きしながらハンニバルが言う。
「・・ともあれ・・セネカが・・・ネロの命令によって処刑されたんだ・・・」
「・・・・なんですって・・・・??」
急に本題をつきつけられ、リナは目の前のガウリイを凝視する・・・。
「・・・理由は・・・・・・・????」
確かにあの口論を聞けば・・しかし・・・。
あの程度の事なら・・何処の君主と家臣との間でもたまには起こされている程度の
事ではないだろうか?
「・・・それは・・セネカはネロの母上・・アグリッピナさまと・・愛人関係に
あられたから・・ですよ・・・・:」
混乱しかけたリナの横からした声は言わずと知れたゼロスのものだった。
「・・・・本当ですか・・・?」
さしものアメリアも眉に皺を寄せながらゼロスに聞き返す。
「・・本当でなかったら・・。ボクだってガウリイさまの前でこ〜んな下品話。
したいとは思いませんがね・・?」
・・・・・納得・・・・・・・・・・・・・・・。
コイツの過保護のせいでガウリイが知らなかった情報がその事実だとしたら・・。
恐らくネロは精神的に何か・・・。
強いて言えば『ダブル・バインド』的なものが生じてしまっていたに違いない・・。
そもそもダブルバインドとは矛盾した二つの抱え込んだ課題の事である。
母親・・そして師・・・・・。
その二人の関係に彼が『裏切られた』と感じたら・・・???
「マズイわね・・・・・・・・・・・」
この屈折した状況が続くとしたら・・・・・・・・・・・。
彼の更なる『自己破壊』が生じる事も充分に考えられる・・・。
ましてや誰に彼が洗脳されているのか・・なお更不明になった現在では・・・・。



「リナちゃん・・・・・・・・」
考え込んでいたリナの肩に不意に誰かの手が置かれる。
「・・ヴァノッツァね〜さま・・・?」
「街が・・・燃えてるわ・・・今ね・・ヴァノーも・・びっくりして・・ココまで逃げて・・きたんだけど・・・・・・」
言いながらヴァノッツァは自分が現れた方向の街角を人差し指で指し示し・・・。
「リナ!!!」
やおらガウリイがリナを抱き上げ、その場所から退避させる!!
「ガウリイ!!!!??」
リナが文句を言うよりも早く、先程まで朗々と聳え立っていた建物の屋根が
崩れ落ちてくる!!
「・・・・どうやら・・こっちは火事のせいじゃ・・無いようだな・・」
崩れた屋根からフォルムの向こう側・・・・・・・・。
炎に包まれた町並みが見渡せる!!??
「一体・・・何が・・・???」
リナが口にするよりも早くだった。
「・・・・ネロだ・・・・奴の憎しみが・・全てを・・燃え尽くさせているのだ・・・」
答えたのは・・よく見知った人物・・・。
「スキピオ・・・・・・・・・・・・・・」
リナを庇うような位置に立ち、聖剣『エクスキャリバー』を構えるガウリイ!!
だが、あからさまにスキピオの視線は此方には向けられてはいない・・・。
その目の行方は・・・・???
気になったリナがその視線を探ろうとするが・・・・・・・・。
ザ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
一条の鏃がその視線の先を掠り・・スキピオの頬に赤い血が流れ出す・・・。
そして・・リナの詮索も虚しく・・その視線はその攻撃を放った人物。
ハンニバルへと向けられるのだった・・・。
「ハンニバル・・いいや・・マゴーネ・・貴様か・・・」
嘲る様な、勝ち誇ったような声。
「黙れ!!!!!!!!!」
うって掛かるハンニバルにスキピオも猛攻撃を仕掛ける!!!
憎しみ・・・・・?????
何も・・訳が・・分からないけれども・・・・・・・・・・・・。
「リナ・・何してるんだよ!!」
咄嗟にリナを抱えながらガウリイは放心した彼女を正気に戻らせる。
「・・・ガウリイ!!とにかく!!今は火を何とかしなくちゃ!!」
咄嗟にガウリイを掴みながらリナは炎の方に駆け出して行く!!
「ったく・・分かりましたよ・・」
元気になった途端、す〜ぐコレだ・・・・・・・・・・・・・・・。
「ゼル、アメリア!!ヴァノッツァね〜さまをお願い!!」
恐怖のためだろうか・・はたまた炎の為だろうか?
放心し、視線の定まらないヴァノッツァを指差しリナはゼルとアメリアに指令する。
「わかりました!!命に代えてもヴァノッツァさんは!!」
「・・・命は大切にせんか・・・・」
この緊急事態に格好つけるアメリアに冷たい突っ込みを入れるゼル!
未だに放心しているヴァノッツァを二人が引きずっていったのを確信し・・・・。
「・・・よっしゃ・・喧嘩と火事は・・・・・」
「ええ・・アモーロの華・・ですねえ〜〜〜♪」
高みの見物を決め込むゼロスとリナ父・・・であった・・・。


「リナ・・・・・・・・・」
燃え盛る炎の中・・・・・・・・・・。
「・・・無駄よ・・・ガウリイ・・・・・・・」
市街地の火は大方食い止めた・・・。犠牲者も即急な措置が功を奏したのだろう。
皆無・・といっても過言ではなかった・・・。
唯一人を・・・除いては・・・・・・・・。
「ネロ・・・まさかな・・・」
しかし、炎の包まれた瓦礫の中に転がる・・ネロの被っていた月桂冠がただ転がる。
「・・・奴が何を望んだか・・分からないわ・・ただ・・・・」
「ああ・・・・・・・」
そんな情景を眺めているうちに不意に一つの気配が生まれる・・・。
咄嗟に気配に威圧されながらもリナは魔槍『ゲイボルグ』を構える!!
「・・全ては・・憎しみ故・・・よ・・大烏に・・せいぜい飲み込まれぬよう・・」
クスクスクスクス・・・・・・・・・・・・・・・・。
ガウリイには聞こえなかったのだろうか?間違いなく・・彼の母にして魔女・・。
聖なる杯を奪い去った『モーガン』の声だ・・・。だが・・。
やがてその声と気配も闇の中に四散する・・・。
今は一人、スキピオと戦うハンニバルが気に掛かる。
それに・・あの辺りはスキピオの放った炎が未だに残っている地域だ・・・・・。
「急ごう・・ガウリイ・・・・・・・・・・・」
「ああ・・・・・・・・」

焼け付くような・・炎の中・・・・・・。
顔を庇うように佇むハンニバル・・そして・・・・。
『闇の炎』に飲み込まれ・・見る見るうちに姿を消す・・スキピオ!!?
「一体・・何があったんだ?」
スキピオを飲み込むうちに・・その炎はだんだん小さくなり・・そして・・消える。
残されたのはスキピオの持っていた剣のみ・・・・・。
だが・・・・。
「・・声が聞こえたわ・・。ガウリイ・・。『忘れるな・・俺以上に・・闇に取り込まれた奴が存在するという・・事実を』と・・・・・・・・・・」
「・・・多分・・・彼は消滅したんだと思う・・耐え切れなかったのよ・・・」
不意にリナの腰の辺りから幼い少女の声が聞こえる・・・。
「・・・・・エレイン・・・・????」
現れたのは・・数百年以上も前にこの世を去った・・一人の少女・・・。
「・・・貴方には彼を助けて欲しかったわ。もっとも・・湾曲して『兄』を助けてって言ったあたしも悪かったけど・・。だって・・わたしより大人の男の人が・アタシの『子孫』なんていっても・・リナおね〜様・・信じてくれないもんね・・」
自嘲気味の苦笑を浮かべつつ告げるエレイン・・・・。
「エレイン・・お前・・一体何者だ・・・?」
さしものガウリイも不信に思ったらしい。
「・・・馬鹿ね、おじちゃん。アタシは聖杯の番人って言ったじゃない。けどね・・・アタシの手を離れて・・闇に落ちたの・・気をつけて・・・お願い・・」
メッセージだけ残し・・既にエレインは消えていた・・・。
かくして・・これから今まで以上に厄介な事になることは・・請け合いのようである・・。

(続きます)
イエ〜〜イ!!スキピオ編終了〜〜〜!!
次回からは銘打って『ガウイス編』です!!ではでは・・ネタ集めます!

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13847第一部終了、お疲れ様でした♪P.I E-mail 2/22-23:50
記事番号13828へのコメント

CANARUさん、こんばんは!
「気まま」に続き、こんなに早く次のお話が読めるなんて〜♪(^^)

スキピオくん、ハンちゃんとの決着もつかぬまま昇天してしまわれましたね〜。
彼が捕らわれていた闇と聖杯、そしてモーガン母さんとの間にはどんな因縁が
隠されているのか・・・?
続きの「ガウイス編」期待してますよ!!
今回もマイペースだったヴァノッツアねーさま♪忘れっぽいくせに執念深いのね!
ゼロスが彼女を苦手がるのはかつて彼女に下水道につき落とされたから!?
(でもショックでその時のことはすっかり忘れている・爆)
おまけにその際、ゼラス様からのおつかいの品を水に流してしまい、お怒りを
買ってクビになったとか実は(笑)←勝手な想像!
事件の黒幕とヴァノーたん、呪い合戦したらいい勝負なんじゃないかしら?

さて、ローズマリ・サトクリフって大好きな作家なんですが、彼女の新刊が
また出たんです〜♪「アーサー王と円卓の騎士 サトクリフ・オリジナル」
(原書房)!!来月には続刊も出ます!!
歴史ファンタジーはかくありたい!って思わせてくれる作家さんなのです。
他にもいろいろ出ていますので、良かったら探してみてくださいませ♪
それではまた〜!

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13848有難うございました〜♪CANARU 2/23-10:32
記事番号13847へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!
>「気まま」に続き、こんなに早く次のお話が読めるなんて〜♪(^^)
はうう〜〜!!
ナンだか急に思いついたのでさっさと書いてしまいました〜♪
う〜ん・・次回も早く書かねばでっす!!
>スキピオくん、ハンちゃんとの決着もつかぬまま昇天してしまわれましたね〜。
ふふふ・・・。
こうなる運命は考えてはいたんですが・・。
これからだんだん謎を解明させていきますね!!
>彼が捕らわれていた闇と聖杯、そしてモーガン母さんとの間にはどんな因縁が
>隠されているのか・・・?
う〜ん・・。
この辺りでは一寸ガウ君・・活躍させたいなあ・・と思っております〜!!
ちっとは出番増やさねばです(汗)
>続きの「ガウイス編」期待してますよ!!
はい!!
さて・・「ガウイス」とは・・名前が示すとおり・・(笑)
>今回もマイペースだったヴァノッツアねーさま♪忘れっぽいくせに執念深いのね!
ですねえ〜〜!!
彼女、絶対に好きな動物は「ヘビ」と答えると思いますわ!!
>ゼロスが彼女を苦手がるのはかつて彼女に下水道につき落とされたから!?
>(でもショックでその時のことはすっかり忘れている・爆)
ありえますわあ〜〜!!
潜在意識の無意識の領域って訳ですわね!!
>おまけにその際、ゼラス様からのおつかいの品を水に流してしまい、お怒りを
>買ってクビになったとか実は(笑)←勝手な想像!
きゃはは・・!!
泣きながらガウリイに拾われたゼロス君・・・。
「ああ!!貴方はクラゲの神様ですうう!!」と以後
一方的にガウ君を慕っているのでしょう!!
>事件の黒幕とヴァノーたん、呪い合戦したらいい勝負なんじゃないかしら?
ありえますわ・・・。
う〜ん・・ヴァノーさん・・書けば書くほどヘンな人になっていくう!
>さて、ローズマリ・サトクリフって大好きな作家なんですが、彼女の新刊が
>また出たんです〜♪「アーサー王と円卓の騎士 サトクリフ・オリジナル」
>(原書房)!!来月には続刊も出ます!!
おお!!アーサー王ですか!!
一寸お金が無くて買えなかったんですけど・・「アーサー王妃伝説」
という盾を持ったグゥイネヴィア王妃が表紙の本を発見しました!!
う〜〜ん・・読んでみたいでっす!
>歴史ファンタジーはかくありたい!って思わせてくれる作家さんなのです。
>他にもいろいろ出ていますので、良かったら探してみてくださいませ♪
はい〜〜!!
ちなみに先日「カエサルを撃て」というでっかい本買いました!!
「魔槍」の参考になるかな〜っと・・(笑)
>それではまた〜!
ではでは〜〜〜!