◆−瞑目(気まま2-24)−CANARU(2/18-22:08)No.13771
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 ┃┗はじめまして〜♪−CANARU(2/19-10:02)No.13784
 ┗巨頭会談!?(笑)−P.I(2/20-23:13)No.13815
  ┗大人は汚いなあ〜(汗)−CANARU(2/21-10:07)No.13823


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13771瞑目(気まま2-24)CANARU 2/18-22:08


サンタルチアの港に迫り出す様に聳え立つカステル・デローヴォ(卵城)。
かなり混雑した港を其処から眺める。
はっきりいって朝から目覚めが悪い。
近代化が進むナポリの副都心をワザト通り抜けてきた。
混雑した町並みはあまり好きではない、そ〜んな事を言って馬鹿兄・・・。
名目上はナポリ、ヒチリアを取り仕切るまだしも合法的なマフィア組織
「カタート」の若き総帥・・・・・・・。
しかし、実態はルクセンブルク公国「ワルキューレの騎士団」の副旅団長・・・。
ついでにいえばリナ自身もそのルクセンブルク公国の姫君だったりする・・のだが・・。「そ〜いえば・・・・・・」
物心ついたときからリナはナポリに居る。
本当はドイツ地方の小国、ルクセンブルクの出なのに・・・か・・・・。
「な〜んっか・・・・ね・・・・・」
何故か今朝の目覚めの悪さが再度蘇ってくる。
小さい頃、ジョヴァンニに〜さまと二人『ルクセンブルク』の名目で連れ出されて・・。
・・・・・・・・・やめとこ・・・・・・・。
ますます気分が悪くてたまらなくなる・・・・。
そう思いながら カステル・デローヴォ の古ぼけた城壁からサンタルチアの港を
見下ろす。
何万トンものある巨大タンカーが所狭しと停泊し、お世辞にも綺麗とはいえない。
もともとナポリは天然の良好である。
しかし、中世の頃・・ヴェネツィアやピサ、ジェノヴァが海運国となったことに反し、
このナポリはあまり海の面では発展しなかった。
理由は単純。
もともと土地が肥沃・・だったからである。
海に囲まれ本土には通商用のルートしか領有(・・正式にはそうは言わないかもしれない。街道を有する小国家が自治権はそのままでヴェネツィアの属僚になることを承諾しただけのはなしだし・・。ロミオとジュリエットで有名なヴェローナなどがその好例かも知れない)しなかったし。
ましてやピサは隣国フレンツェに狙われた小国。
ジェノヴァとてお世辞にも肥沃な陸地を持っていたとはいえない。
ナポリはその点幸運だったのかも知れない。
もっぱら・・今では田舎町となってしまった港、アマルフィーが南イタリアでは最大の海運国でったのだ。
サンタルチアといい・・ソレントといい・・・。
「ナポリを見て死ね」というくらい景色は美しい。
しかも気候は温暖ときた上、フランス(アンジュ−、ヴァロア)、スペイン(アラゴン)の王家が虎視眈々とその継承権を狙っていたくらいだ。
ともあれ・・・・。
馬鹿兄はこんな海の側が気に入らないらしい。
かといって・・・山の側も、問題の副都心も嫌っているらしかった。
以前、その問題の馬鹿兄とこんな会話をした事がある。
「何で海の側に『カタート』本部を置かないの?」
「そりゃ〜〜あなた・・。津波があったら危ないじゃないですか・・」
「・・・じゃあ・・・ナンで山の近くに置かないのよ?」
「・・・・ヴェスビオ火山って知ってます?あの爆発で古代ローマ時代の
都市、ポンペイが壊滅したんですよ?」
「・・・・・じゃあ・・・副都心に置かないの?」
「・・・・・・・イヤですね。人が沢山住んでますので・・・」
「・・・・アンタ・・・息すんな・・・・・・・・・・・・・・・」
と、まあこんな具合だ。
そんなこんなでナポリの中でもかなりの三等地に『カタート』の本部は存在する。
しかしまあ・・・海にも山にも・・・副都心にも・・・。
それなりに均等な距離にあり困る事は無いが・・・あえて海まで副都心を経由し・・。
遠回りしてここまで来たのである・・・・・。
理由は単純。
「人を撒く」のに丁度良いからだ。
あの歴史区域、そして近代文明が同居する路地の狭い界隈。
ハッキリ言ってごった返している事この上ない。
更に言えばナポリといえばお世辞にも治安がいいとはいえない場所である。
財布を気付かないうちにすられたりしないよ〜に『慣れない』人間は細心の注意を払わないと後で泣きを見る事になるのは請け合い・・である。
もっとも・・リナのように慣れきった・・・・。
いや、強いて言えば『一度握った金は死んでも離さない』というタイプの人間
にしてみればどっことはないのだ・・・・。
まあ・・・『彼』の場合・・・・。
初めてこのナポリに来たのは一昨年の年末だったから・・・・。
『スリ』に注意するくらいの根性はついただろうが・・・。
ま、ここまで来るのにそうそう早いとは思えなかった。
「しかし・・・・・・・・・まあ・・・」
な〜んでこんなに目覚めが悪いんだか・・・・・。
あの時・・・・・・。
目の前で(助かったとはいえ)ジョヴァンニに〜さまは・・・・・。
拳銃で・・・・その胸を撃ちぬかれた・・・・・・・・・・・。
その後・・『何か』あった・・それだけは確かだとは思うけど・・・・。
それが何だったか?気付いたのは・・姉ルナの胸に抱かれて・・助かったと
悟った時のことだけ。
でもって・・・馬鹿兄に手を引かれてナポリに帰って・・・・・・。
何があったか?だって・・?
そんなの・・・・・・・。
『Non lo so』(知った事じゃない)に決まってるじゃないの。
「Davvero?Non ci credo.(本当か?そ〜はおもわんが・・)」
・・・・・・・チ!!!!
もうバレたか・・・・・・・・・・・・。
折角まいたと思った相手の声が不意に後ろから聞こえてくる。
「・・・・ガウリイ・・・・よっくココまでたどり着いたわねえ〜〜・・」
ジト目で後ろを振り返りながらリナははあ・・・っと吐き出すような声を出す。
「ああ・・俺も結構混雑した街道は慣れてるから・・」
そっか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そ〜いえば・・コイツも混雑といえば決して引け劣らないマカオでマフィアを
してた事があった・・・。
ナポリの街角で迷子になったことが良く考えてみれば無かったのもそのせ〜か・・。
はあ・・・・っと再度ため息をつきながらリナはガウリイを見遣り・・・・。
「いっそ・・今度香港にいったらアンタを九龍城跡に捨ててこようかしら?」
「・・・・・おい・・・・・・・・・・・・・・・・」
「冗談よ・・・・・・・・・・」
自嘲ともからかいともつかない一言をガウリイに言う。
「で、な〜んていきなり家から抜け出したりしたんだ〜?」
ボ〜っとした様にガウリイがリナに再度言いかける。
「Non posso dire。話す事は出来ないわ・・・何度も言うけどNon lo so。自分でも良く分からないのよ」
頭をそっと撫ぜながらリナはため息混じりにそっと言う。
「嫌な思い出って訳か・・ま、無理に聞こうとは思わないけどさ・・・。ともあれ・・
シチリアから招待状が来てる。行くか?」
何やら紙切れをちらつかせながらガウリイがリナに言う。
「・・・招待状って・・お宅の馬鹿親父から〜?」
少々からかうような声でリナはガウリイに言う。
「・・・それを言うなって・・・。ま、シャーベットくらいおごるぜ?」
「・・・・それもいいか・・・けどさ〜〜・・よっく考えれば・・・・・」
なんだか今日のリナは未だに悪夢から醒めていないといった様子だ・・・・。
「良く考えれば・・・???」
「アタシって・・一滴もナポリの血は入っていないのよね・・・・。第一・・」
知りもしたくなかった『ルクセンブルクのお姫様』という肩書き・・・。
「そうだな・・オマエの親父さん・・俺の上司はルクセンブルクの出身だし・・・。
アンヌ様・・・オマエの母上もスペインはグラナダ出身だしな・・・・ぁ」
何やら思い出したように今度はガウリイが言う。
「・・・・焼け付くような午後五時・・・全てのガラスが閉められる・・午後五時・・すべては午後五時に始った・・・グラナダ・・ね・・」
何処かで聞いたことのある・・けれども今ひとつ思い出せないフレーズの詩をリナは何となく朗読してみる。
確か・・ガルシア・ロルカ関連だっけ・・・???
午後五時は夕方、スペインでは闘牛の開始される時間帯である。
「・・・そう拘るなよ・・悪夢がそ〜させてるだけなら・・」
「そね・・・・・」
ヒチリアに行けば・・ちっとは気が晴れるかもしれない・・か・・・・。
馬鹿兄ゼロスに言う必要は・・多分無いだろう。
このところジョークで保険金殺人の真似事企てようとしている事を根にもって
最近マトモに口すら聞いてくれそうも無く一人ココアを啜ってるだけだし。


「おい・・・親父・・・・・・・・」
ジト目でガウリイがフィリップ・・自分の父親を見遣る。
鉄格子越しの面会とはいえ・・ハッキリとその様子は見て取れる・・・。
その頬に鮮やかに残る・・・・・・・・・。
「・・・聞いちゃ駄目よ・・ガウリイ・・。ど〜せまたオーリさんに殴られたに決まってるでしょ・・・?」
「あ、そ〜か・・・:」
リナの一言にポンと手を打ちながら納得をするガウリイ。
「・・・・シクシクシク・・・だってなあ・・おか〜ちゃんに・・・『もう差し入れいらないから・・・頼むからもう面会に来ないで』って・・泣いて頼んだら・・・・思いっきり打たれたんだ・・・痛かった・・・看守さんの拷問のほ〜が100倍マシだった・・シクシクシクシク・・・・・・・・・・・・・・・」
そりゃ〜〜まあ・・・。
オーリママのあの殺人的な料理を週一ペースで差し入れされてりゃ・・・。
ドアノブで首括って死にたくなるわな・・・普通・・・・・・・・。
下らないことにリナまでも感心しながら思わずフィリップを見遣る。
「実はな・・今日はオーリにこんなものを渡されたから・・ガウリイ、オマエに
任せようと思ってな・・・・」
少し遠い目をしながらフィリップがガウリイに一枚の紙切れを渡す。
「これは・・・・????」
・・・・・・・・・・ぺらっとガウリイは折り曲げられた紙を開きながら呟く。
「・・・・ホーエンシュタフェン王家の紋章・・・・・」
後ろから覗き込みながらリナ。
「ホーホケ・・・・・・・・・」
「 ・・・・ホーエンシュタフェン!!!!ドイツの大空位時代一寸前・・・。
1190年代の神聖ローマ帝国の皇帝だよ!!」
半ば怒りを含んだ声でボケをカマすガウリイにリナはきっぱりと言ってやる。
「・・・で・・その・・皇帝と今回俺たちを呼び出した理由。ナンなんだ!!」
一件マトモそうに見えるガウリイの話のもっていき方だが・・・・。
このヤロ・・・確実的に誤魔化しとる!!
まあ・・・話の本題はそっちだし別にい〜けどさ・・・・・。
「実は・・・かなり迷惑なことが起きたんだ・・・・・」


「一寸待ってください・・なんでそんな迷惑なことが起こったんです!!」
「・・・め〜わくって・・別にお宅の経費から落ちてる訳ぢゃね〜だろ?」
・・・・・やっぱり兄妹・・・・・・・・。
リナと同じような理屈を口にし、ついにで言えばココアの付け合せのクッキーも
ちゃっかり拝借してるこの男・・・。
ジョヴァンニにゼロスはマトモに焦燥に駆られた視線を送る。
「・・・貴方のそのクッキーは・・ボクのお小遣いから経費が落ちてますけど?」
「・・・い〜ぢゃね〜か・・・それに、ココアにココアクッキーなんて食い合わせだと・・・えっと・・そうそう!!にニキビできっぜ?」
「・・・・二十歳過ぎたらニキビも単なる吹き出物です!!」
「・・・・・・・それ・・・どっかのお暇なスキンケアを鈍ってる短大生に言う台詞ですね・・・・・・」
アメリアのキツイ一言・・・・・・・・・。
「兎に角・・何が迷惑なのかさっさと言わないと話にならんだろ〜が・・」
話がこのままでは繋がらないと察したゼルが先を促す。
「・・いや〜・・今船の上のリナから電話があって・・。『暇だからヒチリアに行く』とか言ったんで・・。『馬鹿兄には言ったのか?』と聞いたら『あ〜んな馬鹿に言う必要ないもん』って返答が来たんで・・暇だったんで俺が告げにきたんだよ・・」
なおもゼロスからの分捕り品のココアクッキーを食いながらジョヴァンニ。
「・・・暇だったからとか・・・馬鹿って単語が死ぬほど気に掛かるんですが・・」
「・・・じゃ、死んでみてくれ・・」
「・・・イヤです!!とにかく・・ラウラさんから連絡があったんですよ!!旧フレイの騎士団の連中の悪さが発覚して・・ナポリ、ヒチリア方面でナンか企んでるらし〜んですよ!!」
「ラウラから!!?」
不意にジョヴァンニの声が明るくなり、机の上に身を乗り出してゼロスのほうに詰め寄って行く!!
「・・・な・・なんですか・・・貴方は!!!!!」
「な、な、俺の事なんか言ってなかったか!!?な、な、な〜〜〜〜!!」
「ちょ・・近づかないでくださいよおおお〜〜〜!!言ってません!!アンタの事なんか単なる『大馬鹿ストーカー、すかぽんたんのアホンダラジョヴァンニ』としか言ってません!!言ってません!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・ゼルガディスさ〜〜ん・・この人・・いぢけてます・・・」
「そりゃ〜まあ・・これだけぼろくそ言えば・・死にたくもなるだろうな・・・」
「ともあれ・・これでま〜〜た厄介な事が起こるのは事実ですね・・特に・・」
折角忘れさせた『あの事』を思い出す事になったら・・・。
「・・・素直に説明すりゃ〜い〜んじゃね〜か・・・?」
隅のほ〜でいじけていたジョヴァンニがやっとの事で口を開く。
「・・・ま、それも・・そ〜ですね・・・・・・・」
今まで『タブー』視してきたが・・まあ、思い出したら思い出したでそのことを告げれば
良いだけ・・の話だ。


「お宝かあ・・・」
ナポリに戻る船の上・・・・・・・・。何時もなら飛びつくはずのリナが今日は
やけに大人しい・・・・・。
それでも餌をチラつかせるように地図を目の前に見せるガウリイ。
「う〜〜ん・・ナンでナポリに戻るのか・・って事が気になるのよね」
「地図にはナポリが書かれてるから・・それだけだぞ?」
「そりゃ〜まあ確かにそ〜だけどね、ガウリイ。ナンでお宝が『ナポリ』に隠されたのか・・って事よ。もともとフェデリーコ二世・・・・・・ホーエンシュタフェン家の皇帝はナポリを領有こそしれども両ヒチリア王国に住んでいたのよ・・・」
「・・・あれ・・?確か・・『神聖ローマ帝国』ってのの皇帝は・・。えっと・・。
そっだ!!分裂状態にあったドイツのいっぱいある王国で一番偉い人だったんだろ?
ナンでイタリアに住んでたんだ?」
ガウリイにしては頭のいい発言。
あんまりにもしつこく『神聖ローマ帝国』だののカテゴリーを扱ったからだろう。
「もともとママが両ヒチリア王国の王女様だったの。でもってパパはその神聖ローマ帝国・・・・・・ホーエンシュタフェン家の皇帝様でね。ママの家系に男はいなかったから彼はパパからの領地にプラスしてママの王国もそっくり相続したって訳なのよ。その点は・・スペイン女王様をママに、ハプスブルク家(オーストリア、フランドル)の王子様をパパに持つ16世紀ヨーロッパ最大の権力をもつスペイン王、神聖ローマ帝国皇帝カルロスに似てるわね・・・」
思い出したようにリナが言う。
「ふ〜〜ん・・つまり・・ものすっごい金持ちになったってわけかぁ・・」
「手っ取り早く言えばね。ついでに言えば権力も多大なるものだったわ。特に彼のシチリア国王即位にはローマや北イタリアの商業自治都市が反発したわ。当然と言っちゃ当然だけど・・彼の領地はドイツに南イタリア。北と南から自分の国が敵に挟み撃ちにされるっていう恐ろしい事態に陥るんですものねぇ・・・」
「で、戦争になった・・って訳か?」
「ええ。フェデリーコはドイツに帰る事を嫌ってね、一生の大半はイタリアで過ごしたわ。帰ったとしても諸侯の反乱を鎮めるため。必要によっては金で平和を裏で工作したり・・まあ・・割と権謀術を駆使した姑息な事はした・・・とは思うわ・・」
「・・・で、そのフェデリーコ皇帝ってのはど〜ゆ〜奴だったんだよ?」
「・・分裂状態にあったイタリアをはじめて統一しようとしたの。ドイツは自分の長男、コンラートに任せ切りにして自分は他の2子、エンツォとマンフレディと戦場を駆け巡ったの・・。最も・・ロンバルディア同盟や北イタリアの諸国の凄まじい反発、更にはローマの策謀に翻弄されて・・野望はもともと海の水を干上がらせようとするほど無謀なことだったのよ・・・・」
「死ぬほど無謀だったて訳か〜?」
「ま〜ね。彼に敗因があるとすれば・・イタリアに対する盲愛だったんじゃないかしらね?これが他の・・強いて言えば彼の嫌ったドイツ諸王国ならまだしもともかく。イタリアをマトモな統一国家に仕立て上げようって方が無理な話だったんじゃないかしらね?世俗王国を戦わせて勢力の均衡を図って・・己の利益のみを図る堕落した法王庁の策謀を考えれば・・当然といえば当然の結果なんじゃないかしらね・・・?」
実際に彼に反乱を起こそうとするものはロンバルディア同盟だけではなかった。
何よりも衝撃的だったのは長子、ドイツを任せていたコンラートの反乱といえよう。
フェデリーコは反逆者に対する処罰・・・・。
両方の目を抉り、牢獄に閉じ込めるという処分をこの息子にもかしていたのだ・・。
もっとも・・そのコンラートは崖から飛び降り自殺をする・・という悲劇的な結末すらあったのだし・・・・。
「・・・それに・・彼の次男のエンツォは戦争中敵に捕らえられて一生ボローニャの塔からの幽閉が解かれる事は無かったわ・・・そして・・・末子の・・・」
マンフレディ・・・・・・・・・・・。
イタリアの歴史の中でもこの名を冠する少年は・・悲運の中に生まれる定めを
もっているのではないだろうか?
サラセン傭兵を自在に操り・・そしてフランスアンジュ−王家と華々しく戦って
戦死した中世騎士道最後の花たる少年・・・・か・・・・。
「・・・オマエさんいしては・・酷く概説的な説明だな・・・・」
リナの感情移入にガウリイは今ひとつ気がつかなかったらしい。
まあ・・珍しいこととはいえその方が都合はいいかもしんない・・・・・。
「ン・・?アタシとフェデリーコ・・。多少なりとも共通点が認められるし・・ね・・。
あんまり自分の敗因を体現したような人のことを言いたくはないしね・・」
実際リナはドイツよりのルクセンブルクの生まれ・・。
けれども・・育った環境ゆえに・・今では頭からのナポリ人である。
まあ、ナポリ人といえば「行儀の悪い人間」の代名詞と世間様ではされてる
らし〜〜けど・・・。
ま、どうだっていいか。


「語るも悲しい、恋物語ですわね・・」
グラスを傾けながらオーリがやっとの事で口を開く。
「ま・・俺自身は完璧ルクセンブルクの人間だし・・・。そんな事定かじゃね〜けどな・・・おい、アンヌお前、何笑ってるんだよ!!」
黒髪の男は隣の女性・・奥方のモンナ・アンヌが笑いを堪えているのに気付いて
不意に大慌てしたようにその場を取り繕う。
「いいえ・・貴方。私のグラナダにも面白い話はありますけど・・・。貴方の
ご両親の話も面白く聞かせていただきまいたわ・・」
クスクスクスと笑いながらアンヌは尚も顔を赤くする。
「・・おいおいおい・・・・名目上は『世にも悲しい恋物語』だぜ・・・?
ったく・・ンな大笑いすんなよなあ・・」
決まり悪そうに黒髪の男は髪を掻き揚げる。
「ホント・・その動作・・お嬢様そっくりですわ・・シニョール・デューカ」
「オーリの言うとおり。まあ・・一応は恋物語の続編は『駆け落ち物語』として編集してよろしくはなくて?ついでにいえば・・タバコは火をつけないでくださいね。貴方」
「・・・・ったくううううううう!!おい、オーリ、さっさとあの馬鹿ガウ、ココに引きずってこいよ!!ついでに言えば・・ウチの『息子』兼『娘』もだ!!」
「はい〜♪ガストンの宿題が終わったら必ず連れてきますわ。今回は・・・あのゼロスの目を盗むのがかなり大変だったので・・『駆け落ち物語』と・・お嬢様に自覚を促すのがやっと・・かもしれまんが・・。ラウラさんと主人にもデマを流すように言っておきました。では・・お暇頂きますわ。ガストンを柱に縛り付けたままなので・・」
カチャリ・・と飲み干したワイングラスとフォークを置き、しかしナイフはしっかり持ち。
美しい笑顔を残しながら恐ろしい言葉を残し・・さっさと去っていくオーリ。
「・・・おい・・アンヌ・・・ガストンの奴・・・・・・」
「ええ。これから地獄の猛烈スパルタ教育ですわね・・貴方・・・・」
「・・・オーリの奴・・ガウリイの教育には失敗したしなあ・・・・」
「・・・・知能の点では・・同感ですわ・・」
かくして・・リナ父、リナ母の間には乾いた笑いがかわされ・・・・。
かわいそうなガストンの運命は・・誰も知らない・・・・。


気色の悪い感覚がまた頭に蘇る・・・。
もっともこれは船酔い・・何ぞという単純なモンではない。
ヒチリアから帰った途端、またまたこの嫌な感覚が蘇ってきたのである。
「リナ〜・・。ナポリの何処に行くってんだ?」
サンタルチアの港に到着した途端ガウリイが歩き出したリナに尋ねる。
「・・・・ん・・・処刑所の跡地よ・・・・・」
ずざああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
あ・・・・やっぱり駄目・・・・・・???
「リナぁぁぁぁぁぁ!!俺はお化けと墓場とお化け屋敷と・・処刑所と呪いのご神木と・・えっと・・そうだ!!学校の七不思議と幽霊船と・・・他には・・そだそだ!!
ベルサイユ宮殿の貴婦人の幽霊が出る部屋は大嫌いだああああああああ!!!!」
「・・・・どうでもいいけど・・ガウリイ・・それ・・どっから出したの?」
何処からとも無く取り出された数珠、十字架、お神酒、聖水、勾玉、何故かストロー・ドールにウィジャー盤・・・。呪術様のソードに聖杯、しめ縄・・更に言えば三嶋大社のお守りを持っている・・・・・。
「え・・・俺の・・魔よけ専用グッズだ!!」
「・・・・そのお守り袋は・・ナンなのよ・・・・・」
「・・・先日・・廻に送ってもらった!!!」
ああ・・和製クラゲのガウリイと仲良しの日本の高校生ね・・・・・。
「ど〜でもいいけど・・ガウリイ・・物凄く言いにくいんだけど・・ソレ・・安産のお守りだよ・・・???」
し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・。
死ぬほど気まずい沈黙・・・そして・・・・・・・・・・・・・・。
「リナ、あげる!!」「・・・いらないよ!!」
兎に角、泣き喚いて抵抗するガウリイの髪の毛を掴んで中世の処刑場まで一直線!


「リナぁぁぁぁ〜〜〜!!やめろおおおお!!バチがあたるううう!!俺、まだ呪いで死にたくない〜〜〜〜!!お願いだからやめてくれええ!!」
大声で泣き喚くガウリイをポカリと殴って黙らせる。
うるうる訴えかけるような視線で此方を見てくるが・・・。
とりあえず無視!!である・・・。
ガサガサと朽ち果てかけた処刑所・・・そしてその石畳をリナはガンガンと蹴ってみる。探せば案の定・・・。ホーエンシュタフェン家の家紋が刻み込まれた壁にぶち当たる。
「・・・リナ・・これって・・・」
「フェデリーコの娘むこに一人、異常な奴が居たの。血を見るのを好み、自分自身が北イタリア戦線で捕虜となって処刑されるとき・・嬉々としてソレに応じた奴が、ね。勿論そ〜ゆ〜イカレた奴に相応しく・・その男は牢獄と城砦を異常なほど愛したったいうんだけど・・。案の定この処刑場も・・そいつが建築したみたいね」
そう言うが早いかリナがガツンっとその紋章を乱暴にはずす・・・・。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・・・・・・・・・・・・。「・・・リナ・・ど〜して・・・?」
「数年前・・アタシとジョヴァンニに〜さまは・・ココで処刑されかけたのよ・・」
開かれた地下道に黙って進んでいくリナにガウリイもついていく。
記憶の底に封印していた・・・・・。
思い出そうとしても・・『Dov’e?』(ソレは何処にある?)という疑問のみで
止まってしまっていた記憶だった。
「ルクセンブルクの公女・・だったから・・・か・・?」
その辺りの事情はガウリイにも良く分からない。
「いいえ。ただ・・・ま、ルクセンブルクが絡んでいたのは事実かもしんないけど・・。
アンタも言ったじゃない?『王子』と欺かれたあたしは『行方不明』になってたって。まあ、実際アタシも知らなかったし・・一番最初に気付いたのって基本的にあんたじゃない?」
「・・・そりゃ〜〜・・そうだ・・でもナンでココが分かった?記憶、無くなってたんだろ?」
今までのリナの様子からガウリイはそう判断する。
「・・・フェデリーコに反乱した長男コンラートには一人息子が居たの。フランスのアンジュ−王家がヒチリアに攻めてきたとき。この一人息子の15歳の少年はドイツから祖父の領地を取り戻すために遠征に来て・・フランス王弟に処刑されたのよ・・・この一人の少年の死から・・・・・」
ここまで言ってリナは言葉を濁す。
末っ子のマンフレディの華々しい討ち死に・・この少年の処刑・・・・。
「・・・守れなくて・・ご免ね・・・・・」
思い出した・・・。ココで・・・ジョヴァンニ、そしてリナと一緒に一人の少年も『連中』によって処刑された。
「その理由くらい・・教えて欲しいわね・・・・」
不意に感じた気配に向かってリナはやっとの事で口を開く。
「・・・いやぁ〜〜・・貴方が事跡の念に駆られないように忘れていただいてましたが。思い出しちゃいましたか・・・」
言わずと知れた・・いつもの事件の仕掛け人、馬鹿兄ゼロスである。
「・・・もう餓鬼じゃないわよ・・多分・・話してくれてもいいんじゃないの?」
「そ〜ですね・・リナさん。貴方は『大空位時代』って知ってますか?」
・・・・・・・なめとんのか・・・・?????????
「 ホーエンシュタフェン家がフランスのアンジュ−王家によって根絶やしにされて・・。以来『神聖ローマ帝国皇帝』になり手が無かった時代でしょ?これで・・『皇帝派』の人間はその時代、大打撃を受けたのよね?」
・・・・ゼロスの話に寄れば・・・・・・。
昔、フレイ、フレア、そしてワルキューレの三つのルクセンブルクの騎士団を束ねる人間が居た・・・。彼は・・定められた婚約者との結婚を嫌い・・愛した・・よりによってナポリのマフィアの娘と駆け落ちし・・『位』を剥奪された・・とか・・・。
そう・・この三つの『騎士団』・・強いて言えばルクセンブルクの支配する権利を。
「一部のルクセンブルクの方々はソレを酷く恨んでるよでしてね・・。『ナポリ女の一族を根絶やしにしてやる!!』と豪語されたとか・・。ま、ソレを実行したのは奇しくも『フレイ』のような過激は分子でしたけどね。ちなみにガウリイさんの父上は・・。確かに偶然手に入ったジョヴァンニさんを良い様に下僕にしたようですが・・この事とは無関係ですよ。ハッキリ言いまして」
笑いながら言う話か・・?コイツは・・・・・・・・・。
そして・・あの時一緒に居た少年は・・『ナポリ女』の血を引くリナの血縁だったのか。「つ〜事は・・そのことに関しても・・無くなったエルミタージュの秘宝に関してもまだ黒幕が居る・・って事だな?」
リナ・・そして自分に関係のあることと察し、ガウリイの口調も真剣になる。
「・・それは・・まだ調査段階ですが・・。リナさん、貴方のお父様は半分ナポリの方なんですよ・・・・」
「・・・・それって・・・・・」
初めて聞かされる自分の一族の話・・なのだろうか・・・?
「三つの騎士団を束ねる人間はいまだ空位のままです、では、ボクはさっさと帰って昼ねします。ではでは・・ご機嫌よ〜〜!!」
言うが早いかさっさとゼロスの姿はどこかに消える・・・。
「リナ・・もう一寸・・どっか歩いてから帰るか・・?」
放心したリナに気遣うようにガウリイ。
「・・・そうね・・サンタルチアにはもう来たし・・ヴェスヴィオでも見て帰りましょうか・・?」
「そ〜だな・・・・・・」
珍しく・・。少し蟠りがあったけど・・ソレが解けたような気分・・だった。

(続きます)

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13783ほふゃあ…みてい 2/19-09:31
記事番号13771へのコメント

CANARUさん、もしかしたら始めましてかもしれませんがこんにちは。
みていと申します。

「気まま」シリーズはたぶん頭から読んであると思うのですが、その度に世界が広がっていくのですっごいなぁと口を閉じるのも忘れております。

やたらと短い文章ではありますが、まずはこれにて。
続きお待ちしています。
以上、みていでした。

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13784はじめまして〜♪CANARU 2/19-10:02
記事番号13783へのコメント

>CANARUさん、もしかしたら始めましてかもしれませんがこんにちは。
>みていと申します。
此方こそはじめましてです〜♪
以後ヨロシクお願いしますね〜!!まずはご挨拶〜♪

>「気まま」シリーズはたぶん頭から読んであると思うのですが、その度に世界が広がっていくのですっごいなぁと口を閉じるのも忘れております。
ありがとうございます〜〜!!
ううう・・頑張ってネタをかき集めた甲斐がアタシもあったというものです〜!
これからも気長にお待ち下さいね!!

>やたらと短い文章ではありますが、まずはこれにて。
>続きお待ちしています。
レスありがとうございました〜!
また続きも書きますね!!
>以上、みていでした。
ではでは〜〜!!

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13815巨頭会談!?(笑)P.I E-mail 2/20-23:13
記事番号13771へのコメント

CANARUさん、こんばんは!
今回は2番手のP.Iです(^^)

悪夢に悩まされやたらシリアス・モード入っちゃってるガウリナをよそに、
オーリ・ママとリナぱぱ&リナままの巨頭会談(笑)
またしても大人達の悪巧みのニオイが〜!『駆け落ち』って誰と誰がっ!?
飛んで火に入るなんとやら、になりそーな予感のリナとガウリイ。
続きが楽しみですぅっ!!

最近面白そーな新書をよく見かけます♪
「地名の世界地図」「人名の世界地図」「民族の世界地図」(文春新書)
「物語カタルーニャの歴史」(中公新書)
あ、そうそう!「スキャンダルムーンは夜の夢」「嘆きのトリスタン」ってゆー
漫画文庫も買いました!(森川久美・作 竹書房文庫)どちらもルネッサンス期
ヴェネチアの若き元首・ヴァレンチーノ(←男装の麗人!)が主人公です。
ギャグありシリアスありでなかなか充実した内容ですよ〜!

それではまた♪

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13823大人は汚いなあ〜(汗)CANARU 2/21-10:07
記事番号13815へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!
>今回は2番手のP.Iです(^^)
どうも〜!!
毎度おなじみCANARUです〜〜!!
う〜ん・・タイトルは某漫画の主人公の台詞よりでっす!!
って・・ガウリイも一応年齢としては大人なのね(汗)
>悪夢に悩まされやたらシリアス・モード入っちゃってるガウリナをよそに、
>オーリ・ママとリナぱぱ&リナままの巨頭会談(笑)
はい〜!!
夕刻のパーティー・ルームでガスちゃん逃げられないよ〜に縛り付けて
優雅にディナーです〜♪
>またしても大人達の悪巧みのニオイが〜!『駆け落ち』って誰と誰がっ!?
ふふふ・・・。
その辺りもまた明らかにしていきますね〜〜!!
>飛んで火に入るなんとやら、になりそーな予感のリナとガウリイ。
>続きが楽しみですぅっ!!
はいい!!
またまた苦労するガウリイ、書きますね!!で、ワガママ
趣味はバカ兄いぢめのリナちゃん!!?
>最近面白そーな新書をよく見かけます♪
>「地名の世界地図」「人名の世界地図」「民族の世界地図」(文春新書)
>「物語カタルーニャの歴史」(中公新書)
あ、「世界人名辞典」は見たこと
あります!!
う〜ん・・「ルーシー」あれども「ルクレツィア」なしかあ・・。
とか思った記憶があります〜♪
あったら真っ先に見そうです、あたし!!
>あ、そうそう!「スキャンダルムーンは夜の夢」「嘆きのトリスタン」ってゆー
>漫画文庫も買いました!(森川久美・作 竹書房文庫)どちらもルネッサンス期
>ヴェネチアの若き元首・ヴァレンチーノ(←男装の麗人!)が主人公です。
>ギャグありシリアスありでなかなか充実した内容ですよ〜!
おお!!
スゴイです!!アタシもコミックス文庫漁ってみますね〜〜!!
今目をつけてるのが(買ってないですけど・・)「サラディナーサ」
というスペインのお話です!!
船の「姫提督」といわれる主人公がフェリーペ2世の異母兄弟
ドン・ファン・カルロスの婚約者らし〜です!!
>それではまた♪
ではでは!!
また早く何か書きますね!!