◆−鍵姫の福音 ACT.0 〜母なる海の香る丘で〜−叶月夜(2/9-23:44)No.13543
 ┣初めまして!−あごん(2/10-00:41)No.13550
 ┃┗アコガレのあごんさんっ!!(感動っ)−叶月夜(2/10-22:00)No.13567
 ┣Re:はじめまして−みてい(2/10-04:51)No.13554
 ┃┗大丈夫、彼は殺しても死にません(笑)−叶月夜(2/10-22:00)No.13568
 ┣はじめまして〜♪−砂緒(2/10-18:35)No.13562
 ┃┗英語・・・ええっと・・・(笑)−叶月夜(2/10-22:00)No.13569
 ┗鍵姫の福音 ACT.1 〜二人の王女と二人の剣士〜−叶月夜(2/10-23:14)No.13574
  ┣暗雲垂れ込める宮中(笑)!!−あごん(2/11-00:56)No.13581
  ┃┗そして交差する謎と謎!!(コ○ン風味で・・・)−叶月夜(2/13-17:27)No.13626
  ┗鍵姫の福音 ACT.2 〜宮廷に踊る緑の道化師たち〜−叶月夜(2/13-19:00)No.13629
   ┗リナ・ザ・コールド・ブラッドってのも有りですか?−あごん(2/14-04:43)No.13645
    ┗あんな妹(多重人格)が居たら、リナは耐えられないでしょう(笑)−叶月夜(2/14-18:19)No.13659


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13543鍵姫の福音 ACT.0 〜母なる海の香る丘で〜叶月夜 2/9-23:44

 こんばんは。カノーツクヨです。たまに自分のこと『かのうつき よる』とか呼んでるとか呼んでないとか・・・。
 第一話の一歩手前、第0話です。いわばプロローグ。長いです。もしかしたら、普通の第なんとか話とかよりも長いかも・・・(不安)
 呼んでいただけたら、そして感想くだされたら、嬉しいです。

__________________________________

  鍵姫の福音  〜汝自身を知れ〜

  ACT.0  母なる海が香る丘で


 ────Know then thyself, presume not God to scan;

 風が。
 空を駆ける。

 ────The proper study of mankind is Man.

 彼のマントをはためかせる、一陣の風。
 風に乗って来たものは、海の匂いと、死の気配。

 ────Placed on this isthmus of a middle state,

「────やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 無駄な声。せっかくの奇襲を、台無しにしている。
 声の主はおそらく、自分が命のやりとりをしているという実感を・・・持っていない。

 ────A being darkly wise and redely great:

 『戦闘の最中の一瞬の気のゆるみは、死を招く』
 彼はそれを信条としていた。死ぬわけには、行かないから。
 ここで何者かの奇襲を無理に避けようとしたら、それの方が逆に危険だった。動きが、威力への相乗効果になるから。
 彼は逆に動かずに、その場にじっと立ち止まった。

 ────With too much knowledge for the Sceptic side,

 もしかしたら、奇襲した者は、彼の意外な行動に、驚いたのかもしれない。
 彼に与えられた一撃は、それほど大したものではなかった。一般人でも、骨まで断たれてはいないだろう。しかし、彼の場合は、皮膚に傷一つついていない。

 ────With too much weakness for the Stoic's pride,

 相手は、彼の姿を見て、驚愕に瞳を開かせた。
 まるで、岩のような肌。それに強(したた)か打ち付けられた剣の刃の方が、ひどい刃こぼれを起こした。
 彼は────ゼルガディスは、目の前に立つ相手に対して、小馬鹿にしたような声を掛けた。
「・・・それで、何の用だ?」

 ────He hangs between; in doubt to act or rest,

「すっ・・・げぇなっ、お前! 肌が鎧みたいだな、ははははははっ! だからそんな、普段着にマントつけたみたいな格好してるわけだ!」
 相手は・・・ゼルガディスよりは幾分年上そうな(外見のみ)金髪の青年は、刃こぼれした剣を腰の鞘に収めて笑った。
 ゼルガディスに取ってみれば、それはある意味意外な台詞だった。今まで彼に斬りかかってきて、彼の姿を見て笑った人間は、目の前の金髪の青年が二人目だから。今まで何十人も、もしかしたら何百人も、ゼルガディスの肌を見て恐れ戦(おのの)いたというのに。

 ────In doubt to deem himself a God or Beast,

 金髪の青年は、刃こぼれした剣を鞘に収めたと言っても、闘争心を失ったようには見えなかった。今度は、背中に背負った鞘に収められている大剣へと手を伸ばした。
 美しい装飾が施され、何やら輝く宝石が柄の中心に収められているその剣は、明らかに並ならぬ威力を持つ『名剣』だった。

 ────In doubt his mind or body to prefer;

「だが・・・どんなにすごいやつが相手だろうと、オレはひるまない! お前みたいなあからさまに怪しいやつを、この国に入れるわけにはいかないんだ!!」
 青年は叫び、腕を広げた。この丘から一望できる、海の王国アシルリアルを指しているということには、すぐ気づいた。

 ────Both but to die, and reasoning but to err;

「何故この国に俺を入れようとしない?」
「この国を・・・守りたいからだ!!」
 青年は、まだどこか『子供』が抜けきらないような印象を与えながらも────力強く、ゼルガディスに言い放った。

 ────Alike in ignorance, his reason such

 『強くなれ』
 ゼルガディスが、あの男に言われた数多くの言葉の中で、数少ない覚えている言葉の一つに、そんな台詞があった。
 『大事なものが守れるくらいに、強くなれ』
 男は言った。強くなりたければ、旅に出るのがちょうど良いと。

 ────Whether he thinks too little or too much:

 『哀しみを知らない幼い子供のままでは、守れないものがいくつも現れる。だから、時には非情になることも必要だ』
 ゼルガディスの旅先に、男はいくつも手紙を送った。そのうちの一つに、そう書いてあった。
 今、ゼルガディスの前に立つ青年は、果たして哀しみを知っているだろうか。

 ────Chaos of thought and passion, all confused;

「何故、お前は戦う?」
 ゼルガディスは訊ねた。訊ねずにいられなかった。口が勝手に聞いていた。
「守りたいものを守るためだ!」
 青年は言った。

 ────Still by himself abused, or disabused;

 『ゼルガディス。お前の守りたいものとは、一体なんなのだ?』
 男から送られてきた最後の手紙には、そう書かれていた。
 『もし、それが本当に大切な、大事なものならば、命に代えても守り抜け』
 男のその言葉は、力強さと、たくましさと、哀愁が感じられた。

 ────Created falf to rise and half to fall;

 その翌日、ゼルガディスは風の便りで、その男が命を落としたことを知った。戦死と聞いた。
 ゼルガディスは、男も大切なものを守ろうとしたのだな、と思った。だから、彼の死は哀しくなかった。
 その後、男の死因は、彼の地位を狙うものによる毒殺だと聞いたとき、ゼルガディスは再びこの国へと戻ってきた。

 ────Great lord of all things, yet a prey to all;

 故アシルリアル国王第十七世。
 結局、男の本当の名前は、最後まで覚えられなかった。長すぎて、どうにも面倒くさくて、そして必要ないように思えたから。彼とは古いつきあいであるゼルガディスは、彼が王位を継いだ後も、彼のことを王子と呼んでいた。
 そして、その王子は──いや、王は死んだ。殺された。
 三日前のことだった。

 ────Sole judge or truth, in endless error hurled:

 青年の剣技には、光るものがあった。
 けれど、何分経験が少ない。
 彼は背中の大剣を抜く前に、ゼルガディスの魔法で眠りについてしまった。

 ────The glory, jest, and riddle of the world!

 人間とは、本当に愚かで、不器用で、道化で、不思議な存在────しかし、だからこそ人間でいられるのだ!
 ゼルガディスは、故郷に帰ってきた。
 その故郷とは、三日前に王を無くしたばかりの、戦乱まっただ中の、海の王国だった。

  続く。
__________________________________

 とりあえず、オリキャラらしき名も無き重要人物は大臣だけ・・・のつもりが、もう一人追加。国王様です。と言っても、今後どれだけ出番のあることやら・・・(おいおい)
 本文中の英文詩ですが、『汝自身を知れ』というものなのですけど、自分では何も考えず丸写しなので、どこか単語を間違えているかもしれません。とりあえず、笑って許してやって下さい。一応、最終話にフルバージョン(?)と訳詞を載せるつもりです。
 では、もし会えるものならば、第一話でお会いしましょう・・・。

  にせんいちねん にがつ ここのか かのうつくよ

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13550初めまして!あごん E-mail 2/10-00:41
記事番号13543へのコメント

初めまして、こんばんは!
あごんと云う者です!
「鍵姫の福音 ACT0〜母なる海の香る丘で〜」を読まさせて頂きました!
ゼルが主役なんですねぇ。
ゼル好きな割には、私はゼルが書けないもで、こーゆー格好良い文章で格好良いゼルが書ける叶様が羨ましいです。
ガウリイも準主役扱いっぽくて嬉しいですし(愛)!
私はガウリナをこよなく愛する女ですので、叶様の王道カップリング好きを期待しております!
あ、でもゼルリナちっくなんでしたっけ?
できればガウリナ空気も〜〜(笑)←わがまま言うなっ!

あと、この投稿小説ではお勧め小説だらけで私にはコレとゆーものは推奨できません(笑)。
マジで素敵な小説ばかりです。
かくいう私もちらほらと駄文を投稿させて頂いてますが、私以外の作品は全てお勧めです!

ではでは!
続きを楽しみにお待ちしております!
あごんでした!

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13567アコガレのあごんさんっ!!(感動っ)叶月夜 2/10-22:00
記事番号13550へのコメント

あごんさんは No.13550「初めまして!」で書きました。

>初めまして、こんばんは!
>あごんと云う者です!
 初めまして、叶です。
 ああっ、あのアコガレのあごんさんにレスもらえるなんて! カンドーですぅっ! あごんさんの小説、大好きなんです〜!! 今度レス書かせて貰いますっ!!

>「鍵姫の福音 ACT0〜母なる海の香る丘で〜」を読まさせて頂きました!
 それだけで嬉しいです(笑)

>ゼルが主役なんですねぇ。
>ゼル好きな割には、私はゼルが書けないもで、こーゆー格好良い文章で格好良いゼルが書ける叶様が羨ましいです。
 そんなぁ、あごんさんにほめてもらえるなんて・・・
 こんな不肖な私です、「様」で呼ばなくていいですよ。

>ガウリイも準主役扱いっぽくて嬉しいですし(愛)!
>私はガウリナをこよなく愛する女ですので、叶様の王道カップリング好きを期待しております!
>あ、でもゼルリナちっくなんでしたっけ?
>できればガウリナ空気も〜〜(笑)←わがまま言うなっ!
 大丈夫、ゼルリナちっくというか、ゼルとリナが一緒にいる機会が多いだけです。
 ストーリー的にはガウリナ(というかガウリイ→リナ)です♪ 大好きなんです、このカップリング〜v

>あと、この投稿小説ではお勧め小説だらけで私にはコレとゆーものは推奨できません(笑)。
>マジで素敵な小説ばかりです。
>かくいう私もちらほらと駄文を投稿させて頂いてますが、私以外の作品は全てお勧めです!
 やっぱり、『書き殴り』小説巡りを実行した方が良いのでしょうか・・・(無謀な・・・)

>ではでは!
>続きを楽しみにお待ちしております!
>あごんでした!
 レスありがとうございます!!
 続き、今日中にアップできたらなぁと思っています。
 では!

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13554Re:はじめましてみてい 2/10-04:51
記事番号13543へのコメント

おはようございます(時間に注目)はじめまして。
みていと申します。

………………かっこええ〜v
って、あれ?ガウリイ亡くなってる???
しかし、ゼル、かっこええです。続きとても気になります。
楽しみにしておりますvv

以上みていでした。

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13568大丈夫、彼は殺しても死にません(笑)叶月夜 2/10-22:00
記事番号13554へのコメント

みていさんは No.13554「Re:はじめまして」で書きました。

>おはようございます(時間に注目)はじめまして。
>みていと申します。
 こんばんは中のこんばんはです。初めまして、叶です。

>………………かっこええ〜v
 ありがとうございますっ!! かっこよくてギャグ(謎)を目指しているので、嬉しい限りです〜。

>って、あれ?ガウリイ亡くなってる???
 大丈夫、彼は殺しても死にませんから(笑)ご健在です。

>しかし、ゼル、かっこええです。続きとても気になります。
>楽しみにしておりますvv
 ありがとうございますです! 今日中に続きを送ろうと思っています。

>以上みていでした。
 では、また会えるといいですね(^^)

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13562はじめまして〜♪砂緒 2/10-18:35
記事番号13543へのコメント

はじめまして。砂緒と申します。
お話読みました!すごいかっこいいですね♪しかも英語がある!?
わたし最近英語の成績落ちてきてて・・・・(←関係ない)


> こんばんは。カノーツクヨです。たまに自分のこと『かのうつき よる』とか呼んでるとか呼んでないとか・・・。
わたしのHNは(すなお)と(さお)と、どちらにもとれます。
わたし自身は気分によって変えています。(いい加減だな)


お勧め小説・・・・う〜ん。全部お勧めです。答えになってないですね(汗)
でも、すごいなぁ、と思ったのは『ここは正義館』というお話です。
著者別で発見したのですが、すごくおもしろかったですよ!
未完だったので、ご本人のHPに続きがあるかなぁ、とか思って探してしまったほどです(笑)


それでは。続き楽しみに待ってます♪

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13569英語・・・ええっと・・・(笑)叶月夜 2/10-22:00
記事番号13562へのコメント

砂緒さんは No.13562「はじめまして〜♪」で書きました。

>はじめまして。砂緒と申します。
 はじめまして! 叶です。なんか某姉妹のような名前ですが(笑)

>お話読みました!すごいかっこいいですね♪しかも英語がある!?
 ありがとうございますっ! そう言って下さると、次話への活力になります♪

>わたし最近英語の成績落ちてきてて・・・・(←関係ない)
 英語・・・ええっと・・・そういえば私は、先日のテストで初の10点代を取って生命の危険性を感じたような・・・(笑)

>> こんばんは。カノーツクヨです。たまに自分のこと『かのうつき よる』とか呼んでるとか呼んでないとか・・・。
>わたしのHNは(すなお)と(さお)と、どちらにもとれます。
>わたし自身は気分によって変えています。(いい加減だな)
 あ、私は「さお」さんと読んでました。

>お勧め小説・・・・う〜ん。全部お勧めです。答えになってないですね(汗)
>でも、すごいなぁ、と思ったのは『ここは正義館』というお話です。
>著者別で発見したのですが、すごくおもしろかったですよ!
>未完だったので、ご本人のHPに続きがあるかなぁ、とか思って探してしまったほどです(笑)
 あ、たしか読んだことがあります。学校ものでしたよね(だっけ?)
 この作品は、いろんな人に勧められました。今度、もう一度読み直してみます。情報ありがとうございました!

>それでは。続き楽しみに待ってます♪
 ありがとうございますばっかりです! 今日中に、がんばって第一話送ろうと思っています。
 では。

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13574鍵姫の福音 ACT.1 〜二人の王女と二人の剣士〜叶月夜 2/10-23:14
記事番号13543へのコメント


 こんばんは、叶です。
 第一話、無事10日中に投稿できて、嬉しい限りだったりします。
 とりあえず、メインキャラがアメリア以外全員登場します(ヴァル&フィリアは重要だけれどサブキャラ)。ルナおねえさんがぽけぽけキャラです(笑)ま、こういうのもアリかと。アメリアは今回名前が出たので、おそらく次回登場です。今回は、多分ゼルアメの絡みは皆無に近いでしょう・・・(爆)
 では、楽しんでいただけたら幸いです。

__________________________________

  鍵姫の福音

  ACT.1  二人の王女と二人の剣士

「お前、その鎧はアシルリアルの王宮兵のものだな。お前騎士なのか?」
「うんにゃ」
 青年は、丘の上の岩に腰を下ろして、ゼルガディスにあっさりと言った。
 さらなる戦乱を巻き起こしたくないから────と、あからさまに怪しいゼルガディスを襲った彼だったが、実はゼルガディスもこの王国の出身者と聞いて、それはもう驚くほどあっさりと心を開いた。
「これは、王宮の騎士上がりである親父の形見。親父、昔はそれなりに勲章とか貰った騎士だったらしいから、退職するときに、記念にこの鎧貰ったんだって。で、ちょうど良いから俺が今着ている」
 青年は、自分の姿を見下ろした。
 青を主調としている、胸の部分に王国の刻印の付いた鎧。すこしどっしりしているが、それがちょうど良い。昔はこの鎧を着る立場だったゼルガディスは、なんとなく懐かしげな視線でそれを見た。
「ところでさ、あんたどっち派?」
「・・・は?」
 突然言われ、ゼルガディスはとぼけた声を出してしまう。
「どっち派って・・・何がだ?」
「だから、大臣派か王女派か、ってことさ」
「大臣と王女?」
 ゼルガディスの言葉に、青年は一つのことに気づいた。
「あんたさ、今何が元でこの国が戦乱起こしてるか、知ってるのか?」
「・・・・・・実は全然」
 表には出さないようにしつつ、ゼルガディスは照れながら答えた。
「・・・三日前、王様が死んだことは知ってるよな」
「ああ。だから帰ってきた」
「それで、今国中の人間が大臣派と王女派に別れて、どっちを次の王にするかで争ってるんだ」
「普通は、第一王位継承者が継ぐべきじゃないのか?」
「それがさ」
 ゼルガディスの正論に、青年は情けない様子で答えた。
「決まってないんだ」
「・・・は?」
「誰が第一王位継承者か、ってことが。そんな掟に縛られたくない、って王様が言ってさ。それで、前王の血を継ぐ王女が王位を継承するか、それとも前王の弟でもある大臣が王になるか・・・って争ってるんだ」
 ガウリイは、座り心地が悪かったのか、岩から立ち上がり、地面に腰を下ろした。
 風が一陣、ゼルガディスたちに海の香りを伝えに来る。
 丘の上にはいくつもの花が咲いており、ここにいると、この丘の下の国が戦乱になっているということを忘れそうになる。
「オレ、王女たちの幼なじみでさ。彼女に王位を継がせたいんだ。それに、大臣にはヤな噂もあるし」
「嫌な噂?」
 青年の言葉に、ゼルガディスは口を開いた。
「大臣が、前王を毒殺したって噂が流れてるんだ」
 青年の言葉は、あまりにもこの丘には不似合いだった。

「脱出するわよ!」
「でもどうやって?」
「う゛っ・・・」
 力強く言った少女は、けれど姉に言われて黙ってしまう。
「そーなのよね〜・・・それが問題なのよね」
 少女は、無駄にふかふかなベッドに身を突っ伏した。
「ほらほらリナ、そんな格好はするものじゃないわよ」
「でもね、ルナおねえサマ」
 少女──アシルリアルの第二王女リナは、姉でありこの国の第一王女であるルナに向けて、指を立てた。
「あたくしたちは、この王国の王女でございますのよ。こんなところで、監禁同然にとらわれ続けるなんて、どこか間違っているんじゃありませんこと?」
 わざと一字一句に力を入れ、リナは言った。
「どう? これならお上品?」
「・・・似合わないわ」
「でしょ?」
 ルナの言葉に、リナは身を起こし、ベッドに腰掛けた。
「ということで、脱出よ! あたしの魔法と、おねえサマの剣があれば、向かうところ敵なしよ!」
 リナは力強く腕をたてた。リナとルナはドレスを着ているお上品なお姫様に見えても、中身は全然そうじゃない。リナとルナはこの国一の、魔法と剣の使い手なのだ。
「さってと、そうと決まれば、動きやすい服に着替えなきゃ♪」
「ちょ、ちょっとリナ! ダメよ、おじさまにこの部屋から出ちゃダメって言われているでしょう!?」
「そんなこと聞いてられないわよ!」
 ルナの言葉に、けれどリナは逆らった。リナも、大臣が国王を毒殺したといううわさを聞いたことがあるのだ。ルナには、教えられないけれど。
「この間違った戦乱をどうにかするのは、あたしたち王女の役目よ! あたしたちの姿を国民に見せれば、きっとみんなも安心するわ!」
「そうかしら・・・」
「絶対そうよ!」
 いまいち煮えたぎらないルナを駆り立て、リナはドレスのチャックに手を伸ばした。
『・・・たくましいお姫様たち。なんなら、このわたくしめがお手伝いしましょうか?』
 そこに、突然声が響いた。
 それは、アシルリアル王宮内の王室での出来事だった。

「遅いな、あいつ」
 ゼルガディスが呟いた。青年はそれを聞き逃さず、訊ねた。
「誰を待ってるんだ?」
「ああ、俺の連れが、この街に降りたんだ。情報収集のためにな。だが、その帰りが遅くて・・・」
 と、ゼルガディスが答えていると、誰かが丘の下から駆け上がってきた。
「ガウリイさま〜!」
 黒い、長い髪を風になびかせて、女性は肩で息をしながら青年の元へと駆けてきた。
「シルフィール!? どうしたんだ!?」
「ガウリイさま! 大変なことになりました!」
 シルフィールと呼ばれた巫女風の女性は、青年・・・ガウリイに、ともかく大変だとばかりに、身振り手振りで答えた。
「王宮のっ・・・王室から、ルナさんとリナさんの姿が消えたんです!!」
「なんだって!?」
「おそらく・・・リナさんが、窮屈さに負けて脱出をはかったんだと・・・」
「そりゃリナらしい考えだなぁ・・・」
 先ほど彼の言った『自分は王女の幼なじみ』というのは真実らしく、ガウリイは呆れて呟いた。
「けど、今城から脱出するなんて・・・大臣派の連中に、狙ってくれって言っているようなものじゃないか!」
「はい・・・だから、一大事だと思って、まずここで一番に知らせるならばガウリイさまが良いと思って、ここに来たんです」
「それで、シルフィールの親父さんは、このことを知っているのか?」
「はい。だって、お父様がこのことを発見したんですもの」
「そりゃまた一段と大変だ!」
 ガウリイはそう言うと、立ち上がり、ゼルガディスを見た。
「ゼル、悪いけど、オレは城へ行く。じゃあな!」
「待て!」
 立ち去ろうとしたガウリイを、ゼルガディスは鋭い声で呼び止めた。
「俺も連れていって貰おうか」
「けどあんた・・・連れはどうするんだ?」
「あいつは・・・待たせとくさ」
「けれど、無関係の方を巻き込むわけには・・・」
 シルフィールが遠慮がちに言ったが、ゼルは「大丈夫」とばかりに首を振った。
「俺は二人の王女の父親・・・前王の親友なのさ」
 ここでもう何度目かの、ガウリイの驚いた顔を見ることになった。

「けど、ヤケに急ぐな」
 街の大通りを城へと向けて一直線に駆けるガウリイたちに、ゼルガディスは訊ねた。さすがに、急ぎすぎと言えなくもない早さで、三人は走っている。
「だけどな、シルフィールの親父さんに見つかったってのは、そーとーヤバいってことなんだよ」
「・・・シルフィールの父親とは、何者だ?」
 ゼルガディスの言葉に、「しまった」という表情をガウリイは浮かべた。まだ、説明していなかったのだ。
「・・・シルフィールは、ルナとリナのいとこなんだ」
「・・・!」
「つまり、わたくしのお父様は、この国の大臣なんです」
 シルフィールは立ち止まり、ゼルガディスを見た。
「・・・・・・わたくしが言うのも何ですが、おそらくおじさま・・・前王を毒殺したのは、多分お父様でしょう。もしくは、お父様の側近。だから、あの人たちにルナさんたちが消えた事実を知られたら、追っ手が放たれ、彼女たちも殺されるかも・・・!」
 シルフィールは苦々しく、しかし決意を秘め、声を上げた。
「わたくしは、これ以上お父様たちに罪を重ねてほしくないんです! だから・・・」
「・・・わかった。引き留めて悪かったな。城へ急ごう」
 ゼルガディスがそう言い、二人は頷いた。

「けどけどぉ、なんであんた、あたしたちに協力してくれるの?」
 動きやすい服装に着替え、こっそり王室から逃げ出したリナとルナは、王族しか知らない街へと通じる隠し通路を歩いていた。
 リナは途中で、この脱出の手助けをしてくれた、突然現れた人物に尋ねた。その人物は黒づくめの服装をしていて、怪しいことこの上なかったが、細かいことを気にしないリナと、単純にぽけぽけしているルナは、そのことについて考えなかった。
「なんで、と言われたら、僕が言うことはただ一つです」
 黒づくめのその男は、リナの後ろをついて歩きながら、にこりと笑って答えた。
「面白そうだからです」
『・・・・・・』
 いくら男の格好を気にしない二人と言えど、この発言は何となく気になった。けれど、結局は『何となく』の域であるため、二人はすぐそのことを忘れてしまった。
「あ、そーいえば、自己紹介まだだったわね!」
 いままでどたばたしていたが、リナはやっとそのことを思い出し、歩き出した足を再び止めた。男を振り返り、優雅に礼をしてみせる。
「知ってるだろうけど、第二王女リナよ!」
「わたしは、ルナ」
 二人の言葉に、相変わらず微笑んで、男も礼を返した。
「僕はゼロス。しがない魔道士ですよ」
 二人は、その言葉に何の疑問も抱かなかった。

「・・・着いたな、城」
 ガウリイが、さすがに少し疲れた様子で息を吐いた。
 目の前に、立派な城門が立ちふさがっている。だが、シルフィールを見ただけで、門番たちは急いで扉を開け放つ。
「さて、二人はどこに居るかな・・・シルフィール、何か心当たりは?」
「いえ、特には・・・・・・あ!」
 城内に入って、大理石の敷き詰められたろうかを歩きながら、ガウリイはシルフィールに訊ねた。彼女は少し考えてから、声を上げた。
「リナさんと特に仲のいい、巫女のアメリアさんのところはどうでしょうか? もし居なくとも、なにかしろ情報は手にはいるかも知れません」
「よしっ、じゃ、そのアメリアって人のとこにレッツゴーだ!」
 ガウリイは元気に言うと、再び前を向いて歩き出した。
 その中を、ゼルガディスは一人考えこみながら歩いていた。
 何かがひっかかる。何かが気になる。
 おそらく、この三人の中で、一番城内の構図に詳しいのは、他ならぬゼルガディスだろう。シルフィールは巫女だし大臣の娘と言うことで、騎士の訓練所や危険なところには行ったことはないだろう。ガウリイに至っては、王家とは実際は赤の他人だ。
 しかし、ゼルガディスは昔はこの城の騎士であり、そして王が王子であった頃からの親友だ。昔はこの城全部を使ったかくれんぼなどをしたくらい、ゼルガディスはこの城の隅々まで知っている・・・・・・と思う。ゼルガディスが旅に出ていた数年間の間に、城内の模様替えや改築が行われていなければの話だが。
 けれど、何の情報もない今、難しく考え込むのは労力の無駄だ。そう考えたゼルガディスは、ちょこまかと素早く動くガウリイから離れないように、そちらに意識を集中した。
 そんなさなか、誰かのほくそ笑いを聞いたような気がした。笑い声の主は、大臣なのか・・・それとも、ゼルガディスの連れのものかは分からなかったけれど。

 二人の王女と、二人の剣士の追いかけっこが始まった。

  続く。

__________________________________

 今回は、暗にゼルの連れがゼロスだと表しているのですが・・・まぁ、このことについてはまだまだ奥が深いので、今は詳しくは語りません。けど、後で真実を知ると、この話のゼロスくんが嘘つきまくりだってことが分かります(笑)実はシルフィさんも結構嘘ついてますが、まぁそれは後ほど。
 けど、ゼルって何歳なんだろう・・・。今作でもキメラという設定は生きているので、多分外見は歳をとらないのではないでしょうか。
 次回は・・・どこまで話が進むかは分かりませんが(いきあたりばったり小説なので)また近い内に投稿しようと思っています。
 では、またその時にでもお会いしましょう。

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13581暗雲垂れ込める宮中(笑)!!あごん E-mail 2/11-00:56
記事番号13574へのコメント

こんばんは!性懲りもなくレスする女あごんです!
あああっ!素敵ですねぇっ!!
実は私、権謀術とかお家騒動とか陰謀渦巻く宮中とか大好きなんです(腐っとる)!
 
後書きで伏線ばらす叶様に脱帽です(笑)。
つまり伏線はあくまで伏線とゆー姿勢ですよね!
私は伏線=本線となりがちなので(苦笑)、尊敬しちゃいますよぅ!

因みに私もゼルの年齢が気になったり・・・(笑)。
王と同年代とゆーことですか?
ってことは四十路とゆー可能性もっ(笑)?

続きがとにかく気になります!
ああ。生きる楽しみが増えて嬉しいあごんでした!
ではでは、続き頑張って下さいね!

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13626そして交差する謎と謎!!(コ○ン風味で・・・)叶月夜 2/13-17:27
記事番号13581へのコメント

あごんさんは No.13581「暗雲垂れ込める宮中(笑)!!」で書きました。

>こんばんは!性懲りもなくレスする女あごんです!
 こんにちは! それに感激中の叶です!

>あああっ!素敵ですねぇっ!!
>実は私、権謀術とかお家騒動とか陰謀渦巻く宮中とか大好きなんです(腐っとる)!
 私もそういうのが好きなんです〜(笑)それとか戦争物。シュミレーションRPGが向いているので(笑)今はFF人生送ってますが(話が脱線・・・)
 
>後書きで伏線ばらす叶様に脱帽です(笑)。
>つまり伏線はあくまで伏線とゆー姿勢ですよね!
>私は伏線=本線となりがちなので(苦笑)、尊敬しちゃいますよぅ!
 というか、本音は「覚えてる今の内にバラしとかないと、肝心のときに言い忘れる」とゆー・・・(笑)
 私の場合、伏線は伏線なのですが、本線が伏線並に影が薄くなるという(笑)

>因みに私もゼルの年齢が気になったり・・・(笑)。
>王と同年代とゆーことですか?
>ってことは四十路とゆー可能性もっ(笑)?
 少なくとも三十路は超えているでしょう(笑)
 ほんまにいくつやねん・・・?(何故大阪弁?)

>続きがとにかく気になります!
>ああ。生きる楽しみが増えて嬉しいあごんでした!
 そんな嬉しい言葉・・・キョーシュクですぅvvv

>ではでは、続き頑張って下さいね!
 今日送らせていただきま〜す♪ ではv

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13629鍵姫の福音 ACT.2 〜宮廷に踊る緑の道化師たち〜叶月夜 2/13-19:00
記事番号13574へのコメント


 こんにちは。いや、こんばんは? 叶です。
 とりあえず宣言通り、第二話です。第0話なんつーものがあったせいで、たまに第三話と間違えます(汗)第二話ですよね? ね?(誰に聞いてるねん)
 今回はやっとアメリア登場です。相変わらずリナさんたち出番は少ないです(笑)あと、ゼロスの名言と光の剣が出てきました〜。ちょっぴりオリジ入って、宝石がついています(第0話参照)意味はないです(爆)
 では、読んで下さったらうれしいなぁ・・・です。

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  鍵姫の福音

  ACT.2  宮廷に踊る緑の道化師たち

 ゼルガディスたちがシルフィールの後を追ってしばらく歩いていると、道の突き当たりに当たった。
 そこには、白と銀で見事に装飾された、人間二人分はあろうか、巨大な扉が待ちかまえていた。
「この奥は大聖堂になっています。多分アメリアさんは、この中にいると思います」
 シルフィールがにこやかに言って、扉に手を掛けた・・・その時。
「待て!」
 ゼルガディスの、鋭い声。
「どうしたんだ? ゼル・・・」
「何か・・・聞こえないか?」
 ガウリイの問いかけに、ゼルガディスは耳を澄ます。人間のものとは思えないその肌と同じく、普通ではない形の耳・・・まるでエルフのようにとがった耳に手を添え、ゼルガディスは目を閉じた。
「・・・この扉の奥で、何か騒いでいる」
「まさか、リナたちがこの中に・・・・・・?」
 ガウリイは呟くと、急いで扉を開け放つ。
「!! ガウリイ! もうちょっと考えて行動しろっ・・・」
 ゼルガディスが止めるまもなく、三人の前に、大聖堂が広がる。
 まず目に入ったのは血だった。白い床に、ある意味で合うように見えてしまう、真紅の血。
 それから見えるのは、大聖堂の中心で蠢く、謎の生き物。まるで植物のような緑で、触手のような腕と思われるものを、鞭のように振り回している。巫女や神官と思われる人物は何人も床に倒れ、床を紅に染めている。
 そして、その生き物を向いて、拳を固めている少女。
「アメリアさん!!」
 シルフィールの声に、少女が振り返った。
 黒い髪は肩までの長さで、白を主調とした巫女服を纏っている彼女は、肩で息をしているほど疲れている様子だった。
「シルフィールさん!!」
「その生き物はっ・・・一体!?」
「わかりませんっ! 多分、街の外の魔物が紛れ込んだんじゃないかと・・・」
「そんなでかい生物が、こんな城の中にまで来れるはず無いだろう」
 混乱しつつあるシルフィールとアメリアの会話に、ゼルガディスの凛とした声が割り込んできた。
 既に彼の手には、腰に差してあった剣が握られている。それに気づいたガウリイも腰の剣を抜くが、それは相変わらず刃がぼろぼろの状態だった。
「じゃあ・・・この魔物は!?」
「誰かがこっそり連れ込んだか、もしくは・・・」
 アメリアの問いかけに、ゼルガディスは答えた。走り出しながら。
「誰かが、呪法で召喚したか」
 ゼルガディスの鋭い突き。緑の魔物の触手の一本に、見事に突き刺さる。それをそのまま動きに乗って裂く。
「ともかく、こいつにはもう何人か殺られている。倒すのが吉だな」
 ゼルガディスが一歩後ろに飛ぶ。その直後、一瞬前までゼルガディスのいたところを、巨大な触手が叩きつけられる。斬る攻撃に強いゼルガディスでも、地面がえぐれるほどの一撃を受けてはひとたまりもない。
「フレア・アロー!!」
 シルフィールの声。炎の矢が現れ、それが緑の魔物を焼き尽くす・・・・・・ハズだった。
 その現れた炎の矢が、まるでニンジンのようなへろへろアローでなければ、そうなっていたかもしれない。
「あいかわらず、攻撃魔法は苦手ですね〜シルフィールさん・・・」
 アメリアが、呆れて呟く。
「そういうお前も巫女だろう? 戦力になるのか?」
「わたしを甘く見ないで下さい!」
 ゼルガディスに対して、アメリアは腕で印を切りながら答えた。
「ファイアー・ボール!」
 アメリアは、火炎の玉を投げつけた。やはり植物なのか、緑の魔物の根本に引火し、次第に魔物は燃えていく。熱さのせいか、狂ったように触手を振り回し始めた魔物の一撃が、ガウリイの元へと飛んだ。
「ガウリイ!!」
 ゼルガディスは叫んだ。ガウリイは使いものにならない剣を腰の鞘に再び収めたまま、無防備の状態をさらしていた。
 だが、ゼルガディスの声に返されたガウリイの反応は、不敵な笑みだった。
「言っただろ? オレはどんなやつにもひるまないって」
 ガウリイは言って、背中の大剣を一気に引き抜き、それで触手を一刀両断した。
 凄まじい切れ味だった。触手の中でも特に太いものだったそれは、一撃で二つに分けられ、しかも剣風で床に傷が付いた。ガウリイの剣の腕と、並ならぬ剣の切れ味、この二つがそろったからこそできた芸風だ。
「この剣、オレん家に伝わる家宝なんだけどさ・・・光の剣とかいう、まぁともかく良く切れる剣なんだよね」
 あっさりと、ガウリイは言った。確実に、彼は今の事態を重く考えていない。かなりの名剣であるそれを、『良く切れる剣』の一言ですますくらいだから。
 とりあえず、ガウリイと、彼の隣にいるシルフィールは安全だろうと思い、ゼルガディスは再び緑の魔物へと視線を戻した。
 直後、葉っぱか何かの刃物以上に鋭い一撃が、ゼルガディスの細身の身体を襲った。
「ゼルガディスさん!!」
 おそらく、シルフィールの声。悲鳴に近いその声を、ゼルガディスは実際は余裕で聞いていた。
 葉っぱがゼルガディスの元を去った時、ゼルガディスは実際は服を少し切っただけで、傷一つ負わずに立っていた。彼の鋼よりも固いその皮膚には、あの程度の一撃では傷一つつかないのだ。
 その様子が理解できたのか、燃えつつある緑の魔物はたじろぎ、動きを止める。
「・・・俺に斬りかかってきて余裕だったやつは、結局この世に二人しか居ないワケか」
 ゼルガディスは、呟いた。
「・・・誰が余裕だったんですか?」
 アメリアが、後ろから問いかけてきた。
「ガウリイと、この国の前の王さ」
 ゼルガディスは再び剣を構え、緑の魔物の中心にそれを突き立てた。

「この道をまっすぐ行くとT字路に別れていて、右に行くと城内の中庭に、左に行くと街の中の教会に続いているの」
 暗くじめじめした石の道に飽きてきたらしいリナが、ゼロスにそう説明した。
「それで、リナさんたちはどちらに行こうと思っているのですか?」
「あたしは・・・右に曲がろうと思ってる」
 ゼロスに訊ねられて、リナは右を向いた。けれど、今はそこには石の壁しかない。
「おじさまに会って、聞きたいの。本当のことを。それと、これからの王位のことを」
「わたしも気になるわ。なんで、王室から三日も出ちゃいけなかったのかしら? 喪に服すにも、まだお父様のお葬式もやってないのに・・・」
 リナの決意の言葉と、ルナのとぼけた声。顔立ち以外は全然似てない姉妹だな、とゼロスは思い、小さく笑った。
「では、僕はあなた達について行くだけです」
「なんで?」
 そう言われて・・・思わずゼロスは拍子抜けしてしまう。
「なんで・・・って・・・だから、面白そうだから・・・」
「それだけ?」
「・・・え?」
「ほんっとーにそれだけ?」
「・・・・・・えーと・・・」
「ほんとのほんっとーにそれだけなの?」
「・・・・・・・・・・・・」
 リナにどんどん迫られ、頬に冷や汗を一筋流してから・・・ゼロスは笑って言った。
「それは秘密ですv」
 そういう男なのだ、ゼロスは。

「けど、誰がこんな魔物を・・・・・・」
 アメリアの、途方に暮れた声。
 あれからゼルガディスが何度も斬りつけたり、幾度も魔法をかけ、やっと魔物が倒れたのだ。しかし、これほどの魔物を一体どうやってこんなところに置き去りにしたのか、一体誰がこんなことをしたのか、それが分からずじまいだった。
 結局、数名の死者が出た。遺体を大聖堂から出し、大聖堂の床に清めの儀をしながら、四人は会話をしていた。
「おそらく、大臣あたりだろうな」
「・・・!?」
「アメリアとやら、あんたは姫たちが逃げ出したことを知っているのか?」
 ゼルガディスに訊ねられ、言って良いものか困った様子を見せたアメリアだが、シルフィールが一緒にいることを思い出し、口を開いた。
「・・・はい。リナさ・・・姫さまたちは、これから大臣に会いに行くために王族しか知らない隠し通路を通って、一度城から脱出するって・・・」
 相当リナたちとは仲が良かったのだろう、ついいつもの調子で言いかけたアメリアは慌てて言い直し、ゼルガディスたちに説明した。
「おそらく、その事実をアメリアが他人に言いふらす前に口封じをしようとしたのだろう」
 ゼルガディスが静かに語り、シルフィールは哀しげな表情を見せる。
「王族しか知らない隠し通路って?」
「さすがに、その場所までは教えてくれませんでした」
 ガウリイに訊ねられたアメリアだったが、こればかりは答えられなかった。
「昔、王子・・・前王に教えて貰ったことがある。王室から、城内の中庭か街の教会に出られる隠し通路があると」
「じゃあ、リナさんたちは街へ・・・?」
「いや」
 ゼルガディスに訊ねたシルフィールだが、ゼルガディスは首を左右に振った。
「おそらく、城の中庭に向かっただろう。大臣に会うのに、わざわざ遠回りをする必要はない」
「じゃあ、中庭へ先回りして、リナさんたちと合流しましょう! お父様と会う事に対しては反対はしませんが、二人だけで会うなんて危険過ぎです!」
 シルフィールは言って、大聖堂から出ようとするが、ゼルガディスが腕を伸ばして止めた。なぜ制止するのか、とシルフィールは不満そうな顔を向ける。
「アメリア、二人があんたのところに来たのはいつ頃だ?」
「あの魔物が現れる半刻ほど前ですから、結構前ですね」
「だったら、今頃もう中庭には到着しているだろう。脱出用の地下道だ、より早く目的地に着けるようになっているだろう。もう今頃は大臣の元に向かっているか、大臣に会っているか、あるいは・・・・・・」
 これ以上言うのは悪い気がして、ゼルガディスは言葉を止めた。
 あるいは、もう二人は大臣の手下によって・・・・・・
「ならばなおのこと、急いで彼女たちを追いましょう! お父様はおそらく、謁見の間に居ると思います!」
 シルフィールが再び駆け出した。今度は誰も止めなかった。

 そのころ、リナたちは・・・・・・
「ここ・・・どこ・・・?」
 ほぼ一本道に等しい地下道で、追っ手をひっかけるための迷路式罠に引っかかって、すっかり道に迷っていた。
 原因は、うっかりルナが罠を作動させてしまったためだった。笑って許すことの出来ないうっかりだった。

 続く。

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 ルナおねえサマのうっかりさんv えへv(by目が笑ってないリナ)
 ・・・ということです(謎)戦闘シーンで行稼ぎました。すいません(爆)いや・・・好きなんです戦闘シーン・・・スニーカー文庫『ラグナロク』の影響で(違)
 次回は・・・多分新キャラはありません。でも、せっぱ詰まった状態に陥ります。お楽しみに〜です。
 では、その時お会いしましょう(^^)

 PS.宣伝ですが、投稿小説2にゼルアメを載せました〜。

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13645リナ・ザ・コールド・ブラッドってのも有りですか?あごん E-mail 2/14-04:43
記事番号13629へのコメント
こんばんは!もーええちゅうーねんっと言われるまでレスする女あごんです!
いやぁ、どっきどきですねぇ!この展開!

それにしてもゼルがかっちょええ(惚)。
耳に手を添える辺りが最高です(そこかいっ!)!
いえいえ、本当に素敵ですよぅ。
私も戦闘場面が大好きなんです!
私の場合は菊池秀行先生の影響ですが。
安井健太郎先生も後書きで言ってらっしゃいますが、菊池先生の作品を読まれた事がないのでしたら、是非ご一読を。
私も「ラグナロク」大好きですよ〜!
まだ二巻までしか読んでませんが(駄目じゃん)。

アメリアも出てまいりましたね!
ルークやミリーナなんかは出ないのでしょうか?
結構この二人が好きだったりします。

ガウリイがなんだか思春期の少年のようなイメージがります。
この話ではいくつの設定でしょうか?
15〜16かなぁと思っておりますが。

ではでは!続きを心待ちにしております!
あごんでした!

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13659あんな妹(多重人格)が居たら、リナは耐えられないでしょう(笑)叶月夜 2/14-18:19
記事番号13645へのコメント

あごんさんは No.13645「リナ・ザ・コールド・ブラッドってのも有りですか?」で書きました。

>こんばんは!もーええちゅうーねんっと言われるまでレスする女あごんです!
 永遠に言いませんっ!!

>いやぁ、どっきどきですねぇ!この展開!
 どきどきはらはら、でも結局は大したこと無かったりv(ダメぢゃん)

>それにしてもゼルがかっちょええ(惚)。
>耳に手を添える辺りが最高です(そこかいっ!)!
 かわいいですよねぇ・・・(かっちょええんじゃ無かったんかい)

>いえいえ、本当に素敵ですよぅ。
>私も戦闘場面が大好きなんです!
>私の場合は菊池秀行先生の影響ですが。
>安井健太郎先生も後書きで言ってらっしゃいますが、菊池先生の作品を読まれた事がないのでしたら、是非ご一読を。
 ほう、気づきませんでした・・・捜してみますね☆

>私も「ラグナロク」大好きですよ〜!
>まだ二巻までしか読んでませんが(駄目じゃん)。
 全巻そろえております(笑)ラグナロクさんが一番LOVEだったり・・・。

>アメリアも出てまいりましたね!
>ルークやミリーナなんかは出ないのでしょうか?
>結構この二人が好きだったりします。
 ルクミリコンビは残念ですが、今回は出ません(^^;)
 けれども、私もルクミリ大好きなので、今度はそんな小説でも書いて見ようカシラ? です。

>ガウリイがなんだか思春期の少年のようなイメージがります。
>この話ではいくつの設定でしょうか?
>15〜16かなぁと思っておりますが。
 第0話のゼル視点からの思考を見る限り、だいたいTVと同じくらいの年齢ではと予想しております(予想かい)

>ではでは!続きを心待ちにしております!
>あごんでした!
 いつもありがとうございますです!
 であであ!