◆−魔槍伝承談5−CANARU(2/1-11:28)No.13373
 ┗決戦の日は近い?−P.I(2/2-23:23)No.13412
  ┗ははは〜♪−CANARU(2/3-10:02)No.13421


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13373魔槍伝承談5CANARU 2/1-11:28


「ねえ・・・リナちゃん・・・・・・・・・・」
チュンチュン・・チュンチュンチュン・・・・・・・・・・・・・・。
スズメの鳴き声と共に目覚めたリナの目の前に・・・。
突如ドアップで映し出されたのは・・・。
言うまでも無い・・従姉のやっかいなね〜ちゃん、ヴァノッツァことヴァノーね〜さん
である。
「・・・・なんなの・・・ヴァノッツァね〜さま・・・・・・」
一気に寝ぼけも吹っ飛んで、突如目を潤ませてリナの顔面をマトモに覗き込んでいる美しい面立ちにあわてて声をかける。
ぽたり・・・・・・・・・・・・・・。
ヴァノッツァの頬から一滴の涙が零れ落ち・・・・・・・・・・。
じょじょじょじょじょじょじょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・。
その後は・・堰を切ったように涙と鼻水がその甘い美貌を汚していく・・・。
「・・・あの〜〜ヴァノッツァね〜さま・・・鼻水・・拭いてほし〜んだけど・・」
「・・・・・『どうしたの?』って聞いてくれないのね・・・。も〜一寸でヴァノーがこの世からザ☆グッバ〜〜イ・・タ〜イム・トゥ・セイ・グ〜〜バ〜〜〜イしそうなのに・・・・・・。いいの・・ヴァノーはど〜せ・・・誰にも見取られないで・・一人寂しく・・・・・逝っちゃえばいいのよ・・・・酷いわ・・不幸なヴァノー・・・ジ・エ〜〜〜〜ンド・・・・・・・・」
「・・・・さっさと用件言って下さいよ・・・・・」
はあ・・・とため息をつきながらやっとの事質問してきたリナに対して・・・・。
「・・・・聞いて・・リナちゃん・・あの人が・・・ヴァノーのこと・・・いぢめるの・・・」
またまたボロボロ涙を零しながらビシっとテントの外に佇むゼロスを指差すヴァノッツァ。
「・・・・・一寸・・ゼロス・・・・・・・」
カムカム、と言わんばかりにガウリイの食事の準備を甲斐甲斐しくしているゼロスを
手招きして呼びよせるリナ・・・・・。
「・・・なんです?ガウリイさまの座るスペースを折角ボクが造っている最中に!」
不満そうにリナの方にガウリイ共々やってくるゼロス。
「な〜〜リナ・・・・。飯はまだか〜〜〜?」
状況を分かっているか、いないのか・・・・。
眠たそうに欠伸をしながらガウリイもそんなゼロスの後ろについてやってくる。
「・・・・・ガウリイお坊ちゃまは黙ってて・・・。時にゼロス・・・・。あんたさ〜・・・。ヴァノッツァお姉さまいじめるの・・やめなさいよね・・。」
たく・・と言う様にリナは頭を掻き、ゼロスに文句をつける。
「おや〜〜〜・・リナさん・・・。貴方までもこの女性(ヒト)の味方するんですか?
甚だ・・・見当違いでもあるんですけどねえ・・・・」
そりゃ〜〜〜まあ・・・・。
ヴァノッツァの被害妄想癖ときたら、ゼロスでなくとも文句をつけたくなるだろう。
「別に味方云々という問題じゃ無いんだけど・・・。アンタ、ヴァノッツァね〜さまを
『敵』に回す恐ろしさ、理解してないから忠告しただけよ・・ったく・・」
なおもブツブツ文句を言いながらリナは『飯、飯』とゴネるガウリイに近くにあった
果物を投げつける。
が・・・・・見事にボ〜〜っとしていたガウリイはキャッチをミスり・・・・・。
べチャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
不愉快な音を立てて果物はテントに入ってきた一人の黒髪の男・・・。
リナの父親の顔面に直撃し・・・・・・・・・・。
「・・・おい・・・この・・・馬鹿娘・・・・何のつもり・・・だ・・・・?」
「・・・食い物を粗末にしたことは謝るわ、馬鹿親父」
お互い半ば額に冷や汗を浮かばせあいながらクククと不敵な笑みを浮かべあう。
「・・・ま、今日はこのくらいにしといてやる。ヴァノーがロクデナシなことしてんだよ。止められんのはお前しか居ないからなあ・・・」
コシコシと顔にへばりついた果物を落としながらリナ父は外に出るようリナ
を促す。
「げげげ・・・今日は割りと短気ねえ・・・暫く・・いつもなら最低50分は愚図ってから『ロクデナシ』な行動にうつるのに・・・・」
「・・・オマエが起きるまでの40分間、ず〜〜〜っと愚図ってやがったんだよ。さっさと止めにいけや・・・・」
「・・・しゃ〜ね〜わねえ・・・・・・」
ボリボリと頭を掻きながらリナは仕方なさそうに立ち上がり・・・・・。
「なあ・・・リナ・・『ロクデナシ』なことってナンだ〜〜?」
「・・・・・・・・・アレよ・・・・・・・・・・・・・・・」
興味本位か、それとも飯欲しさにか。
リナについて林の中に一緒にやってきたガウリイにリナはと、ある方向を指で指して示す。「・・・・・何・・やってるんだ・・・?あれ・・・?」
「・・・・東洋の国の・・呪いよ・・正式には夜中の二時くらいにやるのが一番効果あるらし〜〜んだけど・・・お〜〜い!!ヴァノッツァね〜さまぁぁぁぁ!!」
カ〜〜〜〜ン・・・カ〜〜〜〜〜ン・・・・カ〜〜〜〜ン・・・・・・・・。
何やら藁で作ったヒトの形をした人形を先程から必至で釘で木に打ち付けている
ヴァノッツァ・・・・。
「あら・・・リナちゃん・・・うふふ・・バレちゃった・・・・」
「・・・バレるわよ・・普通・・あ〜あ・・ご丁寧に・・呪う相手の髪の毛までストロー・ドールにくっつけちゃって・・・・」
何やら先程からヴァノッツァが必至で打ち付けている妖しい人形を眺めながらリナ
はざっと感想を述べる・・・・。
「でもよ・・リナ・・この髪の毛・・ゼロスのじゃないぞ・・?アイツのは黒髪だけど・・・この髪の毛・・長さこそ同じくらいだけど・・一寸褐色かかってるぞ?」
リナ同様まじまじとストロー・ドールを見ながらガウリイが指摘する。
「・・・あ・・・ホントだ・・ね〜さま・・・これって・・・・・」
「うふ(はぁと)あのゼロスってヒトの髪の毛・・ヴァノーね・・・入手できなかったから・・・手近にあったので・・・代用しちゃった・・・うふふ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・代用って・・・・・・」
そして、リナとガウリイがテント近辺に無理やりヴァノッツァを引きずって戻ったその時。「リナさ〜〜〜ん!!ガウリイさ〜〜〜ん!!大変大変、変態じゃなくって大変なんですうううう!!」
半泣きしながらアメリアがリナに飛びついてくる!!
「そんな基本的ギャグ道はど〜でも良いから!!何が変態じゃなくって大変なの!!
アメリア!!」
「・・・リナ・・オマエも基本的ギャグ道を歩んでるぞ!!」
横から突っ込みを入れるガウリイを何処からか取り出した『魔槍』ゲイボルグの尻の部分の金具でぶん殴って沈黙させ・・・・。
「・・・ハンニバルさんが・・大変なんです!!」
「・・・・アメリア!!!!!」
そう言って訴えかけてくるアメリアをリナは僅かに・・顔を覗き込む為に胸から
引き離し・・・・・・・・・。
「・・・・ナンです・・・・リナさん・・・・・????」
「・・・・貴方は肝心な事を忘れてる!!いい・・・落ち着いて聞くのよ!!
誰がなんと言おうと・・ハン兄ィは『変態』!!!!!!そうなのよ!!!!!」
真剣にそんなとんでもね〜理屈を引っ掛けてくるリナ・・・・。
そして、暫しの沈黙・・・・・・・・・だが・・・・・・・・・・・・。
「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!そうでしたああああああああああああああ!!!!私とした事が!!!!ハンニバルさんは『大変』以前に『変態』だった!!こんな基本的なことを忘却したとは!!!あああ〜〜!!ガウリイさん以下ですううう!!リナさん!!思い出させてくれて有難うございます!!」
「ええ・・駄目じゃないの・・アメリア・・・」
「・・・おい・・お前ら・・その・・・俺以下って・・おい・・聞いてるのか?」
ガウリイの抗議の声は完全に無視!!!!
「ま〜〜〜・・・ハンちゃん・・・ヴァノーの弟だし・・・・変態で・・・当然なのよ・・・ね・・・ククク・・・・・・・・」
ど〜やら・・一応の自覚はあったらし〜ヴァノッツァの一言・・・・。
「・・・気にするな・・ガウリイ・・ど〜やら・・ヴァノッツァのかけた呪いが・・・。
髪の毛の持ち主のハンニバルに降りかかった・・・。それだけの事だ・・・」
すっかり落ち込んでるんだか怒ってるんだか分からないガウリイを慰めるように
事情を説明するゼル・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・そっか・・・・ヴァノーのかけた呪い・・・ハンちゃんに・・いっちゃたのね・・・いや〜〜ん・・・ヴァノー悪くないもん・・・」
「・・・・オマエは暫く黙ってれや・・・・・・」
何時の間にか現れ、ヴァノッツァに注意するリナ父に・・・。
「・・・おぢさまがヴァノーのこと・・いぢめた・・い〜もん・・ヴァノー・・・今度
おぢまさに・・・呪いかけるもん・・もう決めた!!」
言うが早いかサラサラとした黒髪の一束をバシュっと奪い去るヴァノッツァ・・・。
かくして・・・・・・・。


「今からよ・・・リナ・・オマエの生まれ故郷・・つ〜のかど〜かはわかんねぇが・・。
ともあれ、ブリタニアに出発すんぞ・・・」
まだ腹が妙に痛むのだろう。名目上は病み上がりのリナ父とハンニバルがリナ
とガウリイに説明する。
「・・・海峡渡るの?」
目を輝かせながらリナがハンニバルと父親に尋ねる。
「・・・たりめ〜だ・・・つ〜か、海渡らないといけね〜だろ・・・?」
あいたたたた・・と言わんばかりに再度腹を押さえつつリナ父。
「ね〜さん・・いい加減そのストロードール・・・。捨ててくれませんか?」
このままじゃ遊牧に支障をきたすと判断したのだろう。
ハンニバルが元凶を後生大事に抱えている金髪の美人の姉に対し一応ソフトに説得する。「・・まあ・・いっか・・。ヴァノーも一寸・・飽きてきたし・・ぢゃあ・・一寸待って。正式な儀式に則って・・・土に返さないと・・ヴァノーも呪われちゃうから・・・」
・・・さっさと呪われて逝ってください・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ハンニバルの声にはならない魂の叫びが聞こえたのは・・・・。
多分リナだけではないだろう・・・・・・・・。
「で、海峡渡ってブリタニアに行って・・何するんだ?」
気の無さそうな声でガウリイは一応ハンニバルに聞いてみる。
「ああ・・『湖の貴婦人』にお会いしようと思うんだ・・・。其処で・・『聖なる杯』
について尋ねたいと思って・・・・。」
ガウリイの質問に適当な返答をするハンニバル。
「・・・なあ・・リナ・・『聖なる杯』って・・なんだ・・?」
ボリボリと頭を掻きながら・・もともとそれはリナが困惑したときの癖だったのだが、ど〜やら最近ではガウリイにも伝染してしまったらしい。
「ええ・・数百年前・・ユリウス・カエサルがブリタニアに攻め込んだときアモーロから持ち込まれて・・・で・・それ以来それはブリタニアに伝わっているという話なんだけど・・・」
何でまた・・このガウリイの持つ『エクスキャリバー』・・・・聖剣・・・。
リナの持つ『ゲイボルグ』・・・・魔槍があるというのに聖なる杯なんぞを・・・・。
恐らくハンニバルと父・・・そしてあの『スキピオ』とか言うやつのみ知ってる秘密
に関連するに違いない。
そうくればリナが問いただしたところでその『意図』は教えてくれやしないだろう。
「・・・・なあ・・・リナ・・・・」
自分の考えに没頭したためだろうか。隣でガウリイが未だに髪を掻き揚げていることに
リナは今よ〜やっと気がついた。
「何よ・・・・・・・・・・・」
警戒を含んだ声で一応生返事は・・・してみる・・・・。
「『ユリウス・カエサル』って・・・・誰だ〜〜〜〜????」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!やっぱりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!」
大方想像はしていた!!この男の無知!!!!!
しかし・・『カエサル(皇帝)』の名を冠する・・『自国』のこの名前をよりによって
『皇族』のガウリイが『知らない』で済ませていいのかあああああああああ!!!?
「いい!!もともとお宅の住んでたアモーロ帝国はロムルスとゆ〜伝説上の王さまが築いた王国だったの!!けど・・紆余曲折(ガウリイに話すのは面倒なんで中略!)があってアンタの国は『共和制』になったんだけど・・・・・・・」
「・・・・・・・・・きょ〜わせい・・・・・????????」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・元老院が権力を握った民衆のみの議会政治!!!
独裁者は一切持たないの!!分かる!!??」
「・・・でもでも・・独裁者は持たないっていっても・・実際俺の祖国には皇帝はいるぞ!!?実際は・・まあ・・・いいたかね〜けど・・ネロが・・・・・」
「・・・・話の本筋はこれから!!共和制はまあ・・時代がたつにくれてガタが来てね・・。カエサルと後二人の権力者が政治権力を握る『三頭政治』が台等してきたの・・・。
けど・・カエサル以外の残り二人は勢力争いに敗れてね・・。結局カエサル一人が『独裁者』として政治を担当する事になったんだけど・・・・・」
「で、カエサルは皇帝になったのか・・・・?」
ん〜〜〜???と考えたようにガウリイがリナに聞く。
「いいえ。カエサルは『皇帝』にはならずに暗殺されたわ。もともと共和制を好んで独裁者が出るのを嫌った一派があってね・・・。ブルートゥスと言う連中によって・・暗殺されたわ・・・。カエサルの養子のオクタヴィアヌスが初代の皇帝『アウグスト』(尊厳者)となった訳よ・・・・まあ・・カエサルは暗殺される以前、蛮族領の討伐に熱中してあモーロの領土拡大政策を計ったヒトだし・・・」
はあ・・・な〜〜んで・・・カエサルの国の人間のガウリイにアタシがここまで説明しなくちゃならないのかしらん・・・・?
そんな愚痴を思いながらリナは更に深いため息をつくのであった。


「うげ・・・ごべろっほ・・・・ぶゆ・・・・・ぐえおひょ・・・・・」
先程からや〜〜〜っと陸地について安心したガウリイだが・・・。
呂律が回らない事に関しては船上と大差は無いらしい。
「まったく・・ドーヴァー海峡はただでさえ荒波砕ける海峡なのよ?」
はあ・・・とため息をつきながらリナは屈みこんだガウリイの背中をさすってやる。
「・・・その割には・・オマエ・・元気だなあ・・・・」
振り向きざまにリナに差し出された水を一気飲みしながらガウリイが言う。
「ま〜〜ね・・・。覚えてないけど・・この辺りで生まれたらし〜し・・船には結構慣れてるわ・・」
「・・・・俺は・・・三回目だ・・・・・・」
ふ〜〜〜ん・・・それでも船に乗ったことはあったらしい。
「じゃ、この三回目の前の二回目は?」
「・・・・ティベリウス河を・・・船で下った・・・・・・・」
黄金のテヴェレ(ティベリウス)と言われるあのアモーロに流れる大河・・か・・・。
「あんなの、単なる舟遊びだよ・・・ったく・・・・・」
遠くはイスパニアに暗黒大陸・・・さらには喜望峰に・・・・・・・・・。
子供の頃から馬鹿馬鹿しいくらい荒海を行ったり来たりした覚えはある。
「そうかもな・・・・・・」
珍しくガウリイにしては自嘲的なものの言い方である。
「・・・別に責めてるわけじゃ・・・・・・・・」
リナがそう口にしかけたその時だった・・・・・。
「おい!!リナ!!今すぐ直ちにガウリイ連れてこっちにこいや!!!!」
急にハンニバルが大声をだしてリナを呼び出しに掛かる!!!
「・・・・・立てる・・・?」
「・・・二日酔いより・・20倍マシかも・・しれん・・・」
何とかガウリイも健在と見て取ってリナはハンニバル達の待つ場所へと急ぐのだった。


「・・・・今・・入った情報だ・・。『湖の貴婦人』が・・つい数週間前に何者かによって暗殺され・・・『聖なる杯』も奪い去られたらしい・・・・」
既に街はその情報だけで持ち切りになっていた。
国王は下手人を必ず捕らえ、貴婦人の『聖なる杯』を墓前に供えろ・・と国中の騎士に命令を下したと言う。
「・・・・真坂・・あのスキピオって奴の仕業じゃあ・・・・・・?」
「・・・可能性的にはありえるが・・・下手人は『奴』ではないな・・・・」
何気なく呟いたリナの一言にハンニバルはそう返答する。
「・・・・黒幕・・と言う事ですか・・・?そのスキピオって人は・・・・」
意味を理解したアメリアが恐ろしそうにそう言う。
「ともあれ・・おめ〜ら・・何らかの情報あつめてこいや・・・」
リナ父が釣竿を手入れしながら発したその言葉に・・・・。
「・・・そうね・・・ねえ・・おぢさま・・・50音書いた紙と・・・・・・10イエン銅貨・・・貸してくださらない・・・そしたら・・・ヴァノーが・・・・」
「あ〜〜〜・・オマエは何もせんでいい!!!」
かくして・・それぞれの捜索が始ったのだが・・・・・・・。


「あ〜〜〜!!もう!!手がかりナッシング!!しかも・・・・・」
捜索をしているうちに・・ガウリイと逸れるし。
さしあたりリナはコンパスを持っているが・・・って・・ガウリイもコンパスを持たせておいたが・・・絶対大丈夫なわけは無いし・・・・・。
そんな事に考えを巡らせるうちに何時しか疲れたリナは湖のほとりの石に何気なく
腰をおろす。
「あ〜あ・・・こんな事なら・・アイツは船に残しておくんだったわ・・・・」
これでは二重の手間という物である。
ふう・・・とため息をつきながらリナはポチャンっと湖に石を投げ込みながら思いにふける。
「もし・・・・・・・・」
そんなリナが何気なしに振り向いたその先・・・・・・・・。
長い・・黒髪の・・・燃えるような赤い瞳の・・・一人の女性・・・・・・?
「ナンでしょう・・・・・???」
石を手に持ったままリナは彼女の方に問い掛けてみる。
「気をつけなさい・・ここはね・・10年くらい・・前だったかしら・・・貴方に良く似てた・・可愛らしいストロベリー・ブロンドの女だったかしら・・・・?処刑されたのよ・・・無実の罪で・・・・・」
「え・・・・・??????」
そんなリナの反応を見て取った為か。
嫣然と彼女は赤い唇を綻ばせ・・・怪しく微笑む。
「・・・気をつけなさい・・・それだけ・・・・・・・・・」
クスクスクスクス・・・・・。
黄金のバッジに・・・紺碧のマント・・・?そして・・それらの衣装の色に鮮やかな
黒と赤が・・リナの目にも焼きついて離れない。
「お〜〜〜い!!リナ!!探したぞ!!!?」
ガウリイが一人の男・・・いいや・・騎士と連れ立ってリナの目の前に現れた時、
既にその黒い髪の女は消え去っていた。


「・・・・その女は・・・私の妹ですよ・・・・・」
先程の女の話した出来事をリナがガウリイに語っているのを聞いたその男がやおら口を
開き、二人にそう告げる。
「・・・貴方の・・・妹さん・・・・・???」
そういえば、処刑された女はストロベリー・ブロンドとあの黒髪の女は言っていた。
彼は・・ストロベリー・ブロンドとは言えなくとも・・・・。
淡い、鳶色の赤色がかかった髪を持っていた。
「ああ・・・此方・・・俺を助けてくれたベイラン・・。この国の王様の騎士だそうだぜ」
リナの戸惑いを知ってか知らずか・・・ガウリイが連れ立ってきた騎士の紹介をする。
「・・・そして・・・俺の兄ベイリンが・・・『湖の貴婦人』・・・ヴィヴィアン様を・・・妹を無実の罪で殺した犯人と勘違いし・・・・・殺しました・・・・・」
何かを思い詰めた様子のベイラン。
「それで・・彼は何故・・『聖なる杯』を奪ったわけ?」
一番引っかかるところをリナは思い切って尋ねてみる。
「・・・・さあ・・・・分かりません・・・・さっぱり・・・・・・・・」
『湖の貴婦人』を殺害する理由はこのベイリン・・強いて言えばこのベイランにも
十二分に考えられる。
このベイランが偽りごとをいっていないとすれば・・・。
恐らく今回の『聖なる杯』が無くなった事件の裏にはスキピオが潜んでいる事は
まずもって間違いの無い事である。
そんな事にリナが思いを巡らせているその時だった・・・・・・。
「ぎやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
森一面に響き渡る悲鳴・・・・・。
そして・・一人の女が現れ、リナ達の目の前で木の根に躓き、崩れ・・倒れる。
「大丈夫・・・・・・?」
彼女をリナが助け起こそうとしたその刹那である・・・・・。
ザハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
馬のいななく声とともに一人の騎士が現れ・・・・リナがまさに今手を差し伸べ助けようとしたその女に剣を突きたて・・・。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
あたり一面に広がる女の悲鳴と・・血潮・・・・・。
しかし、仮面を深く被ったその騎士は・・血液の未だに滴る剣を持ちながらも、まるで
何事も無かった・・と言わんばかりの態度でその場所を立ち去ろうと馬に鞭をかけようとする・・・が・・・・・・・・。
「待て・・・・・・・・・・・・・・」
さしものガウリイもこんな暴挙を見過ごすつもりはさらさら無かったのだろう。
今、まさに立ち去りかけている騎士の首筋に『聖剣』エクスキャリバーを突きつける。
「・・・こんな事して・・逃げるつもりなの・・?」
もっとも『逃げる』というよりも・・それはさも『当たり前』なことをして・・。
用の無くなったそのモノには感心すら示さない態度・・としかいい様が無いのだが。
リナとて目の前のこのような惨劇を見過ごすつもりはさらさらなかった・・。
しかし・・・その騎士はまるでリナとガウリイの存在すら無いかのような無関心そのものの冷たい態度を崩さない・・・。
無論、敵意や殺気と言った類の感覚すら皆無・・・である。
永年に続くのではないか・・と思ったその沈黙を破ったのは・・意外な人物の発した
その一言だった・・・・・。
「・・・・兄上・・・ですね・・・・・・・・・」
ベイランのその言葉に、黒い仮面、黒い鎧を纏ったその騎士は僅かに感覚を蘇らせる。
「・・・ベ・・・イ・・・ラ・・ン・・・・か・・・・・?」
「・・・ベイリン兄上・・・貴方は・・・『何』をしているのですか・・・?
何故『湖の貴婦人』を・・・『今』また『殺した』のですか!!?」
・・・・・・・・何を・・・・?
第一、『湖の貴婦人』・・ヴィヴィアンが殺害されたのは一ヶ月以上昔の事である。
「・・・オマエが今見ている事は・・毎週この曜日・・この時間に繰り返される・・・
あの日の幻にしか・・過ぎん・・・・。このヴィヴィアンはあの時と同じよう・・俺のこの剣から逃れようと足掻き・・しかし・・俺は・・・この手で・・・・」
微かにしか感じ取れないベイリンの残された感情の波動・・・・・。
目の前で血を滴らせたまま倒れたこの女・・・とても『幻』とは思えない。
「誰が・・オマエにそんな事を・・・・・・・」
ふっとベイリンの視線がここに至り、ようやくガウリイに感心が払われる・・・。
そして・・ガウリイの身に纏った品の一点に厚い鉄仮面で覆われたその視線が
動き・・・・・・。やがて釘付けとなる・・・・。
「・・・何も知らぬようだな・・・。魔女、モルガン・・・。髪の色、瞳の色こそは違うが・・・間違いないな・・オマエの『母』だよ・・そこの男よ・・・・」
さっきの黒髪の女のことであろうか・・・・???
ガウリイの驚愕・・あるいは状況を理解できていないかもしれない感覚がリナにも
手にとるように伝わってくる。
「・・・・何・・・を・・・俺は・・・母親なんか・・一度も会った事は・・」
「・・・だから・・『何も知らない』と言ったんだ・・。いずれ、分かるさ・・・ベイラン・・頼みがある・・終わらせてくれ・・・・・・・・」
ベイリンのその言葉の意図を察したのだろう。ベイランは鞘から剣を抜き放ち・・。
そして・・いまや幻と化した兄に近づいていく・・・・。
「・・・行きましょう・・・ガウリイ・・・・・」
これ以上、残酷な光景をガウリイに見せたくはない・・・・・・・。
「・・・・どういうことだ・・リナ・・・・・・・・・・・・・・?」
ベイランの取ろうとした行動の意図を彼が察していない事は明らかである。
「・・・知らないほうが良いわ。絶対に・・・・・・・・・」
数日後の事である・・。『狂騎士』となったベイリンを・・弟のベイランが『相打ち』
で倒した・・そう噂が王国中に広がったのは。


「聖杯は・・俺の『母親』と言う人物が持っている・・。そうだな・・・?」
やはりベイランの事を怒っていたのだろう。
噂が広がって以来、リナと顔を合わせてもろくに話をしようともしなかったガウリイ
がやっとの事でリナに声をかけてきた。
あの場合・・・仕方なかったと言い訳を言うつもりは無いが・・・・・・・。
やはりリナとしても後味は悪い思いをずっとし続けていた。
そのことにガウリイも気付いてはいるが・・・彼自身の決着がつくまで今日までかかった
と言った所だろう。
「ええ・・・あの・・アタシが会った黒髪の女・・・。彼女がモルガンだとしたら・・恐らくね・・・・」
あの女・・今にして思えば・・酷く危ない目をしていた。
まるで・・・この世の全てを憎んでいるような・・そんな凍りつくような視線であった。
「彼女を止めないと・・・な・・・・」
本格的に機嫌がなおったのだろうか・・・?
日頃モノを考えないガウリイにしてはプラス思考な提案の上にリナの頭をポンポン
と撫ぜていく。
「ちょっと・・アタシは・・・・」
「あ〜そうだった。顔撫ぜられるほうが頭撫ぜられるより127倍嬉しいんだったな〜♪」
「いってにわよ!!ンな事!!」
顔を撫ぜられ、さらに文句を言うリナ!!!
「・・・・・・・・お取り込みの所・・・すまないのだがぁ・・・・・・」
そんなリナとガウリイのやり取りを申し訳無さそうにやって来たハンニバルが
眺めつつも声をかける・・・・。
「ちょっと〜〜〜!!ナンに用事よ!!ハン兄ィ!!」
「おお!!丁度良いぞ!!ハンニバル!!目撃者が出来てよかったなあ〜!!リナ!」
まったくもって正反対の反応のガウリイとリナ・・・・・。
「・・・・まあ・・良いけど・・・今・・スキピオから矢文が来た・・・・・」
ハンニバルのその言葉にリナの抗議もガウリイの悪ふざけもすぐに止まり・・・・。
「・・・で・・ナンて言ってるんだ・・・?」
嫌な予感がガウリイの脳裏に過ぎる・・・・・・。
「・・今すぐアモーロに来い・・・だそうだ・・・・・・・・・・」
「・・・・アモーロへ・・・・・・・・?」
行くしかない・・・だろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


リナとガウリイがポッパイヤの死・・・・・・・・・。
そしてアモーロに降りかかった大惨事を知ったのは・・・その場所へと向かう
船上でも出来事だった。
「無謀かも・・しれんな・・・・」
「ええ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今回の事件、『ゲイボルグ』『エクスキャリバー』の力を持ってしても・・・。
かなりの大きなヤマとなる事だけは確実である。
そんな予感だけが今は先立つのだった。


(続きます)

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13412決戦の日は近い?P.I E-mail 2/2-23:23
記事番号13373へのコメント

CANARUさん、ど〜もです♪
いよいよガウりんの過去の秘密が明らかに!・・・と思ったら、ガウりん、
お母さんにも会わず早々に帰っちゃったのね(^^;)
モーガン・ママ、また出番はあるのでしょーか?ちゃんと親子の対面して、
成仏してほしいなぁ(笑)
ますます妖しさに磨きがかかるヴァノーねーちゃん!ストロー・ドールに
コッ○リさん(笑)・・・んじゃ次はト●レの花子さんかぁ〜!?(爆笑)
なんかヴァノーねーちゃん一人で対アモーロ帝国最終兵器になりそーな・・・・
でもほんとにそんなことになったら、主人公のガウリナも、一人真面目に苦労を
しょってきたハン兄ちゃんも、立場がないですね!(^^;)

ところで、すっごく面白い本見つけたんですよ〜!
「スピリット・リング」(ロイス・マクマスター・ビジョルド著・創元推理文庫)
ルネッサンス期イタリアの架空の公国を舞台にした恋と冒険の歴史ファンタジィ
ですっ!!
主人公のフィアメッタちゃんは魔術師にもなりたい恋もしたい15歳の女の子で
まさにリナ!だし。相手役のトゥールくんは・・・彼は出てきたときから最後まで
Pの中じゃ〜ずーーっとガウリイでした!だってソノモノなんだもん!!(笑)
まだ出たばっかの新刊です。ぜひぜひ探してみてください!

それではまた〜♪

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13421ははは〜♪CANARU 2/3-10:02
記事番号13412へのコメント

>CANARUさん、ど〜もです♪
>いよいよガウりんの過去の秘密が明らかに!・・・と思ったら、ガウりん、
>お母さんにも会わず早々に帰っちゃったのね(^^;)
はい〜〜!!
さしものガウリイ君も今回は機嫌を損ねてしまったらし〜ですねえ(汗)
>モーガン・ママ、また出番はあるのでしょーか?ちゃんと親子の対面して、
>成仏してほしいなぁ(笑)
ふふふ・・・。
彼女の登場によって一応自分としてはラストは見えました!!
ただ・・その間の話のネタは・・・コセコセ探さねばなあ〜〜〜(汗)
と本を今から漁っていますわ〜♪
>ますます妖しさに磨きがかかるヴァノーねーちゃん!ストロー・ドールに
>コッ○リさん(笑)・・・んじゃ次はト●レの花子さんかぁ〜!?(爆笑)
ああ〜〜!!
ありえます!!ちなみにモデルは柴田先生の別作品・・・。
自由人HEROと言う漫画に出てくるおに〜ちゃんなんですよ〜!!(性格のみ
ですけどね!!)
よろしかったら探してみてくださいね〜〜♪
>なんかヴァノーねーちゃん一人で対アモーロ帝国最終兵器になりそーな・・・・
ははは・・・。
呪い殺しちゃいそ〜ですよねえ・・・(汗)
>でもほんとにそんなことになったら、主人公のガウリナも、一人真面目に苦労を
>しょってきたハン兄ちゃんも、立場がないですね!(^^;)
いえてます〜〜!!
ガウ&ハン兄ィの苦労はまだまだ続きそうですねえ・・・・。
>ところで、すっごく面白い本見つけたんですよ〜!
>「スピリット・リング」(ロイス・マクマスター・ビジョルド著・創元推理文庫)
>ルネッサンス期イタリアの架空の公国を舞台にした恋と冒険の歴史ファンタジィ
>ですっ!!
おお!!絶対に探しますね〜〜!!
最近ネタ本ばかりで・・あんまり小説読んでないので〜〜(苦笑)
>主人公のフィアメッタちゃんは魔術師にもなりたい恋もしたい15歳の女の子で
>まさにリナ!だし。相手役のトゥールくんは・・・彼は出てきたときから最後まで
>Pの中じゃ〜ずーーっとガウリイでした!だってソノモノなんだもん!!(笑)
>まだ出たばっかの新刊です。ぜひぜひ探してみてください!
はい!!
しかもフィアメッタ・・小さな炎ですね〜〜〜!!
ユーゴ全集の「ルクレツィア・ボルジア」が発行されるのも一寸
楽しみです〜〜♪
>それではまた〜♪
では〜〜〜!