◆−X−TIME−むみ(1/29-20:44)No.13349 ┗X−TIME<2>ふたりの出会い−むみ(1/30-18:28)No.13359 ┣はじめまして−一坪(1/31-07:49)No.13364 ┃┗Re:はじめまして−むみ(1/31-17:45)No.13369 ┗X−TIME<3>K・KAORU−むみ(1/31-19:54)No.13371 ┗X−TIME<4>兄と妹−むみ(2/3-21:13)NEWNo.13431 ┗X−TIME<5>兄と妹−2−むみ(2/4-18:42)NEWNo.13454
13349 | X−TIME | むみ E-mail | 1/29-20:44 |
(作品の前にお断り) この小説に出てくる、カオル、ジュン、ドールという三人のキャラクター名、 及びタイトルの「X−TIME」は、イラバト女王、紫紅環サマ(知ってる人は知ってると思うけど)のイラストから無断で頂きました(汗)。 本人、又はファンの人で「パクるなよぉ」と言う指摘があれば、即刻やめます。 では本編をどうぞ。 <Introduse> 私の名前は小林純。 「柴犬チェーン」という、ちょっと怪しげな運送業者に勤めている。 この会社は私の伯父が経営していて、ここらでは結構名の通った会社だ。 私も一応の給料を貰って、何不自由なく生活しているが、 それで満足してるわけじゃない。 もっと自分の”力”を試したいと思っている。 だからといってはなんだが、私はもうひとつ、裏の仕事を持っている。 通称、”届け屋”。 それが私の裏稼業だ。 要するに普通のやり方では届けられないようなもの、 届けるとまずいものを、私の”能力”を使って届けてやるのだ。 私はこの能力を”索敵”(レーダー)と呼んでいる。 ”透視”っていうほど凄まじい能力ではなく、 「なんとなくわかる」といったものだからだ。 でも、最近私は少し退屈している。 私の能力を駆使するような、「宛先不明」の荷物がないからだ。 どこにいるかも分からない人を、私の精神力のレーダーを 最大限に使って見つけ、そして荷物を渡すことこそが、私の最大の楽しみだ。 なのに、そんな仕事はなかなか入ってこないのだ。 逆によく入ってくるのは、男の寂しさを紛らわすものばかり。 そう、あれもそんな届け物のひとつだった・・・。 |
13359 | X−TIME<2>ふたりの出会い | むみ E-mail | 1/30-18:28 |
記事番号13349へのコメント <J> 「っと、602号室はココね。」 私はその日も裏の届け物を預かり、配達していた。 私はチャイムを押した。中に気配がする。居るはずだ。 しばらくするとドアが開き、わずかな隙間から男の腕がにゅっと出てきた。 「はい、コレはんこね。」 男は私に判子を握らせると、すぐに中に引っ込んでしまった。 私は慌てて、 「ちょ、ちょっとぉ。」 「あぁ、はんこなら玄関のポストに入れといて。」 なんと無責任な。私が女だから照れてんのかな、と思ったが、 私に判子は必要ない。代わりに受取人の写真を撮ることにしている。 これは”届け屋”の名前と同じく、某ドラマから貰ったアイディアだ。 めんどくさい書類の代わりに写真を一枚撮るだけでいいとは、 なんと気楽なやり方だ、と私は思った。 そしてすぐにそれを仕事に反映させたのだ。 「ちょっと、受け取りの証拠に写真撮らせて下さいよぉ。」 と言って出てくるよう催促する。今までにも何度かこんなトラブルはあった。 大体あんなビデオを注文して暗い部屋でこそこそ見てるようなやつは、 割と人前に出たがらない。 急かす為に何度かチャイムを押す。 するとやっと男が出てきた。 私はその瞬間、不覚にも驚いてしまった。 裸でパンツ一丁の男が出てきても驚かない私が、だ。 なんとその男の顔は、格好良かったのだ。 今時、アイドルでもビデオくらい見てるよ、と言う人もいるかも知れないが、 なんといっても内容が内容だ。どう考えても世間体なんか気にしない、 ゲロゲロで薄汚いやつくらいしかこんなものは見ないだろう。 だいたい、これぐらい格好良かったら、女には不自由しないだろう。 「草薙香さんですね?」 「そぉだけどぉ、早くしてよ。見たいんだから。」 「じゃ、撮りますよ。荷物抱えて下さい。」 私は、世の中にはまだまだ分からない事はあるもんだと思いながら、 シャッターを押した。 <K> パシャリ。 写真のフラッシュの光が俺の目を眩ませる。 まったく、これだから女は困る。すぐドラマに影響されるんだから。 なんて思いながら撮影を終えた女の顔を覗いた。 暗くて良く分からないが、結構可愛い顔だ。 長い髪をうしろで一本の太い三つ編みにしている。 全体的にほっそりしたシルエットだが、背もそこそこ高く、 モデルだってやろうと思えばできるだろう、って感じだ。 結構いい感じじゃん、と思い、俺の心の中をよからぬ欲望がかすめる。 しばし俺は考え込む。 『女なんて連れ込んだらあいつ、怒るだろうなぁ。 でも、今日はあいつ部活で遅くなるって言ってたし、 お茶ぐらいなら・・・やめよっか、どうしよっか・・・ ええい、連れこんじまえ!』 結論は出た。そうと決まったら即実行だ。 「あのさあ、寒かったろ?ウチでお茶でも飲んでけよ。」 「うん。じゃ頂いちゃおっかな。」 『は?』 俺は唖然とした。未だかつてここまで上手くいったナンパはない。 むしろ俺は女を引っかけて家に連れ込むまでの駆け引きを楽しむのだが。 この女、見かけそこそこガード堅そうだけど、案外尻軽だったりして・・・ なんて、ますますよからぬ欲望を膨らませながら、俺は女を部屋に連れ込んだ。 |
13364 | はじめまして | 一坪 E-mail | 1/31-07:49 |
記事番号13359へのコメント 投稿ありがとうございました! えっと、これはオリジナルなのかな? 名前とタイトルを頂いたってだけで。 では感想を。(あいかわらず感想とは呼べない内容ですが) ”索敵”(レーダー)って能力がおもしろそうです。 今後どんなふうに活用されるか楽しみです。 では頑張って完結させてくださいね。 |
13369 | Re:はじめまして | むみ E-mail | 1/31-17:45 |
記事番号13364へのコメント えっと、一応オリジですが、かなり他の小説の影響受けてます。(苦笑) 設定の段階では、結構長くなりそうだったんで、手早く書いてかないと・・・ あと、レスありがとうございました。(感想っていうのか?) |
13371 | X−TIME<3>K・KAORU | むみ E-mail | 1/31-19:54 |
記事番号13359へのコメント <J> 草薙香の部屋は、予想以上に綺麗だった。 もう夕食時になるというのに親が帰ってない上、 こんな時間帯にやすやすと女を部屋に連れ込んでるとこを見ると、 どうやら香は一人暮らしらしい。 『しかしそれにしては・・・』と、私は首を傾げた。 香の部屋は、小綺麗を通り越してもはや少女趣味とも言える。 玄関に花瓶までは驚かなかったが、さすがに、リビングに入ると同時に目に付く 大量のぬいぐるみ、テーブルに掛けられた花柄のテーブルクロス、 動物のマスコットの磁石で料理のレシピを張り付けている冷蔵庫、などなどには、 香の容姿以上に驚かされた。 もしかしてこいつ、こんな趣味があったの?こんな格好いいのに? 変人ってもんじゃない。これははっきり言って変態だ。 道理であんなビデオに頼らなくちゃならない訳だ。 と、考えながら心の中でお茶飲んだらすぐに帰ろうと決めた。 大体、なんで見ず知らずの男の部屋なんかに入ったかっていうと、 それはビデオの中身が気になったからだ。 今まで何度と無くこの手の届け物は配達してきたが、 一度もその中身を見たことはなかった。 それで、この割と女好きっぽい男ならビデオの中身も見せてくれるかな、と 思ったわけだ。 「じゃ、俺お茶淹れてくるわ。レモンとか入れる?」 少女趣味の変態少年が私に問いかけてきた。 「う・・・うん。じゃレモンティーでお願い。」 曖昧な返事をしておく。しかしこれはまずい。 変態少年のことだ。下手するとクスリを入れられかねない。 香はもう紅茶を淹れ始めた。 <K> さっきから明らかに連れ込んだ女の様子が変だ。部屋の中を見回したり、 それから俺の顔と見比べたりして、落ち着かない。なんだってんだろ? やっぱ部屋のコーディネイトがまずいのか? そもそもあいつがこんな風にするからいけないんだ。 壁紙だって、照明だって、カーテンだって、 とにかくこの部屋のものは全部取り替えて、もっと高級な物に変えたら、 お洒落な高級ホテル風のレイアウトにだってできるはずだ。 そんでもって、ムードたっぷりの夜景を眺めながら、 美女とワインで乾杯したりして・・・ なのになんであいつの、俺の妹の趣味でこんな可愛らしくてちまちましてて、 俺のイメージと全然そぐわない部屋になっているのだ。 これはもはや悲劇としかいいようがないだろう。 本来なら女の子そこらにはべらせてウハウハの天国状態のはずの俺が、 何故に17にもなるのにキスのひとつも済ませてないのか。 全てはあの、小憎らしくて生意気で、でもちょっと可愛い俺の妹、霞のせいだ。 俺の理不尽な怒りは全て妹に向けられた。 しばらくぶつぶつ言ってたが、 これ以上変な人に見られたくないから、すぐにやめた。 濃いめに出した紅茶のティーパックをマグカップから取り上げ、 レモンの輪切りを浮かべてテーブルへ持っていく。 「はい。砂糖は自分で入れて。」 紅茶の入ったマグカップを女の前に置く。その時ふと気がついた。 俺はまだ女の名前を聞いていない。 「あのさあ、名前、なんて呼べばいいかな?」 「ジュ、ジュンでいいよ。私の名前は小林純だし。」 「そっか。じゃ俺のことはカオルって呼んで。」 「う、うん。わかった。」 なんかぎこちない会話だ。ジュンは妙にオドオドしている。 やっぱり、この部屋の空気に圧倒されているんだろう。 確かにこの部屋はとてもとても、一人暮らしの男の部屋には見えない。 今までどうしようかと迷っていたが、やはり切り出すしかないだろう。 「この部屋、変だと思ってるでしょ?実は俺、妹と二人で暮らしてんだ。」 「妹と!?」 やはり驚いている。これでこの子との仲もおじゃんだ。 例え迫ってみたところで結局、 『妹さんが帰ってくるでしょ』とかいって断られるんだ。 ったく、何度俺のじゃまをすれば気が済むんだ?霞のやつ。 それからしばらく俺とジュンはとりとめのない世間話で時間をつぶした。 ジュンは俺が妹と暮らしていると言ってから、 妙なよそよそしさがなくなったようだ。まだ望みはある。 話してるうちに、ジュンは俺より年上で20歳なこと、 運送業者で働いてること、今はアパートに一人暮らしな事、などが分かった。 俺は小腹が空いたと思い、席を立ってキッチンへ行った。 「お腹空いたでしょ?なんか作るよ。リクエストある?」 「うん。じゃスパゲティなんか作れるかな?」 当たり前だ。俺の料理の腕前はプロ級なのだから。 「つくれるさ。ナポリタンでいい?スープも作るから20分ほど待ってて。」 と言って料理の準備に取りかかった。 |
13431 | X−TIME<4>兄と妹 | むみ E-mail | 2/3-21:13 |
記事番号13371へのコメント X−TIMEでは、5人の主人公達がそれぞれの主観を持ち、 それが場面ごとに切り替わりながら物語が進行します。 よって、読者の方の混乱を避けるため、主観が切り替わる際に、 <J>のように記号をつけています。以下は分類。 ジュン:<J> カオル:<K> カスミ:<K−2> カイ:<K−3> ドール:<D> まだ二人しか出てませんね・・・(汗) カスミは今回から出ます。 では本編をどうぞ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <K−2> ふう。今日も疲れた。 私は高校でバレー部に入っている。 ただでさえ冬場の練習は指が寒くて痛くて大変だってのに、 近々大会があるせいでやたらと顧問の先生が張り切っちゃって、 連日7時過ぎまで練習してる。 私も負けるのは嫌だから真面目にやってるけど、 こう毎日毎日しごかれちゃたまんない。 疲れた体を引きずるようにして私は家に帰ってきた。 ドアを開けて、靴を脱ぎ、今日の夕食はなにかな、と鼻をひくひくさせる。 ケチャップのにおい。どうやら今日は、スパゲティ・ナポリタンらしい。 お兄ちゃんが最も得意とするメニューのひとつだ。 なんだ。お兄ちゃんちゃんと作ってたんだ。 私はちょっと安心した。 お兄ちゃんは割とズボラで、食が細いから夕食なんて食べてないと思ったのだ。 私は部活の疲れも吹っ飛ぶような気持ちだった。 しかし、そんな私の気持ちはリビングに入った瞬間に改めて吹き飛ばされた。 お兄ちゃんがソファの座って若い女の人とお喋りしている。 細身で、髪が長くて、美人。ちょっとお兄ちゃんの好みとは違うけど、 わざわざ家に連れ込むくらいだから、彼女に違いない。 そう思ったとたん、私の心の中から怒りがこみ上げてきた。 「お兄ちゃん、なにやってんのよ!女の人なんか連れ込んで!」 私が怒鳴るとお兄ちゃんはビクッとしたようすで、 「お、おう、霞。帰ったのか?」 と、なんかもごもご言ってる。私は構わず、 「そりゃあ8時にもなれば帰ってくるわよ。 それよりお腹空いちゃった。スパゲティある?」 そう言いながらも私は胸の内でもうないだろう、 どうせ女の人と全部食べたんだ、と思ってた。 「悪りぃ。全部食っちゃった。」 ほら。やっぱり。いっつもそうだ。 お兄ちゃんは私の事なんて全然気にしてくれない。 ふたりでいるときは色々世話焼いてくれるけど、 誰かが私たちのなかに入ってくると、すぐこれだ。 私のことなんか気に留めてもくれない。 だから、せめて家には友達は連れてこないでって、そう言ってたのだ。 それなのに、彼女だなんて。 私は部活の疲れのせいもあって、少し感傷的になっていた。 頬を涙が伝うのが解る。 やだ。見ず知らずの人に涙なんて見られたくない。 私はぐずりながらも自分の部屋に入っていった。 「もう、どうでもいいよお兄ちゃんなんて!!」 私は部屋にこもり、ベッドに飛び込むと、布団にうずくまって、 声を殺して泣いた。 泣きながら、ふと自分の感情が怒りよりも嫉妬に似てると思った。 <J> さっきの喧噪は、どうやら私が原因らしい。 なんだか居たたまれなくなってきた。 「あのさぁ、ごめんね。長いことおじゃましちゃって。 じゃ、私もう帰るわ。ごちそうさま。」 そう言って帰ろうとすると、香くんに呼び止められた。 「待ってよ。送ってく。」 「いいよ。バイクで来たし。 それに、わたしのせいで妹さんの気分わるくしちゃったみたいだし。」 「純のせいじゃないよ。俺が悪いんだから。」 香くんは意外と妹思いだ。 妹の霞ちゃんも、香くんが話のネタで使ってたほど悪い子じゃなさそうだ。 どっちかっていうと、ちまちましてるけど、人の気分を害さず、 誰にでも好かれるタイプだ。 小柄で可愛らしく、顔もまだあどけなさが残っているが、整った顔だ。 香くんに比べると優しそうな印象を受けた。 あんないい子を泣かせるなんて、香くんも悪いヤツだ。 「香くん、妹さんに謝りなよ。それまで待ってるから。」 すると香くんは渋々承知した様子で、妹さんの部屋の前に立った。 「霞、ごめん。俺が悪かった。料理はまた作るし、 もう誰も連れてこないから。」 「うるさい!もう、いいよ・・・そんなこと言って。 どうせ私より彼女の方が大切なんでしょ?」 彼女?そんな認識は私の中にはなかった。 私は途中から香くんのことを異性として認識してなかったらしい。 「違うよ。彼女なんかじゃない。たまたまそこで会ったんだ。」 「そこってどこよ?」 「純がウチに届け物に来て、そこで会ったんだよ。」 「じゃあ、初対面の女の人を家に連れ込んだってわけ?信じらんない!」 兄と妹の攻防は、まだしばらく続きそうだった。 |
13454 | X−TIME<5>兄と妹−2 | むみ E-mail | 2/4-18:42 |
記事番号13431へのコメント <K> やれやれ。やっと霞も落ち着いたようだ。 俺は今スパゲティ・ナポリタンを作っている。 霞はケチャップの味を薄めにして、それにチーズをたっぷりかけるのが好きだ。 紅茶も濃いめの出して、鍋ではコンソメスープを温めている。 霞は今、純と話をしている。 最初はやたらと敵視しているように思ったが、 どうやら霞の怒りは純粋に俺に向かった物だったらしい。 「おにいちゃん、まだぁ?」 霞の催促の声がかかる。 「もうちょっとでできるよ。紅茶、砂糖は二杯でいいか?」 「うん。あと純さんの分もね。」 「分かったよ。純は、レモンティー?」 「ええ。お願い。」 あいつら、俺をなんだと思ってるんだ? 仲良く話し込んじゃったりしてさぁ。 『純さんって、なんか”お姉さん”って感じですよね。 お兄ちゃんよりずっと優しいし』だとお? この心優しき兄を差し置いてなにを言う。 まったく、これだから妹ってヤツは困る・・・。 俺がスパゲティをフライパンで炒め終わって、 皿に盛っていると、霞が”例の小包”を持ってきた。 「ねえ、お兄ちゃん、これなに?」 まずい。これはまずいことになった。 早く霞の手から小包を奪取しなくては。 「そ、それはなんでもないよ。だからほら、俺に貸して。」 「ふ〜ん。」 霞は疑いの目で俺と小包を交互に見て、 「これ、ひょっとして、えっちなビデオ?」 という。的を射抜かれた俺は少し身じろぎする。 「ち、ちがうよ。それはそんなんじゃない。だからほら。貸して。」 しかし霞はそんな俺の顔を見て、そういうものだと断定したらしい。 素早い動作でビデオデッキにセットし、再生する。 『これで、なにもかも終わりだ・・・』 俺は絶望した。 |