◆−緑の海〜やさしい風に吹かれて〜−理奈(5/27-11:05)No.10195
 ┗〜第一章〜−理奈(5/27-11:06)No.10196
  ┗〜第二章〜−理奈(5/27-11:07)No.10197
   ┗〜第三章〜−理奈(5/28-12:51)No.10218
    ┗〜第四章〜−理奈(5/28-12:53)No.10219
     ┗〜エピローグ〜−理奈(5/28-12:54)No.10220
      ┗をうっ!続編ですね!?−高砂 時緒(5/31-23:56)NEWNo.10278


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10195緑の海〜やさしい風に吹かれて〜理奈 5/27-11:05


まず、始めに。これは、前に投稿しました「緑の海」の続編でございます。でも前のを読んでいない方にも楽しんでいただけるよう、書きました。ただ、前回を読んでくださった方。前回のにミリーナの名前が出てます。最初にチェックしなかった私が悪いんだけど・・・あれを違うキャラの名と置き換えて読んでください。
あと、ルークファン、ミリーナファンの皆さんは、遠慮しといた方がいいと・・・。だってまるで別人のようで、あとすごいことになりますから。
それでは、理奈のへたっぴ推理小説(なんて代物じゃないけど)始まり、始まり。


緑の海〜やさしい風に吹かれて〜

〜プロローグ〜

さぁー・・・っと耳に心地よい音がする。暖かく、気持ちのいい風で波打つ草に頬をなでられくすぐったい。暖かい日差しが顔にあたって、頬を赤く染める。自然と微笑む。
気持ちいい。
暦の上では、暑い夏は、もう終わりを告げようとしている。しかしまだ空は、青く高く、太陽は、元気にその光を放っている。
私は、瞳を閉じ、この大好きな場所で寝転がっていた。
幼いころから親しんでいるこの場所。
メタリオム屋敷の裏庭。まるで草原のような、深い緑の草しかない庭。奥の方へ行けば小さな森があるけれど。
思い出のつまったこの庭。
私は、目を開け、起き上がる。周りを見る。
離れた所にメタリオムの屋敷がある。ここは、メタリオム財閥の敷地内。大きな丘の上に彼らの屋敷と庭がある。私の家は、この敷地内の中、丘のふもと。違う、違う。私は、別にメタリオムの娘とか、親戚とか、そーゆんじゃない。私の名前は、リナ・インバース。簡単に言えば使用人の娘かな。
私は、また寝転がり、目を閉じる。
使用人ってなんか悪いイメージない?いじめられてるとかそーゆーのとか。でもそんなんじゃない。インバース家は、代代メタリオム家の使用人をしてるけど、なんていうのかな。家族みたいな感じで接してくれてる。ゼラスおば様だって私とルナ姉ちゃんのことを娘のように思ってくれてるし、ゼロスともまるで兄妹のように育てられたし。ゼロスってだれ・・・って?えっと・・・ゼロスは、ゼラスおば様の一人息子で、メタリオム家の後とりで・・・。
さ・・・さ・・さ・・
うわさをすればなんとやら。草むらをかき分け、こちらに近づいてきてる音がする。目を閉じても誰が近づいてきてるのか分かる。その誰かが私の隣にひざまつく気配がする。
「リナさん・・・リナさん・・・」
やさしく、暖かい声がする。が、私は、反応しない。
彼は、私の額にかかっていた自慢の栗色の髪を払い・・・
「!」
私は、慌てて起き上がる。顔が熱い。
にっこりと微笑む顔が私の目の前にある。
彼は、私の額に口付けをしたのだ。
そう。私とゼロスは・・・その。そういう関係である。・・・うぅ〜・・・恥ずかしいな、こんなこと言うの・・・。
「ぜ、ゼロス」
「こちらにいらしたんですか。もうそろそろ日が暮れてきましたので風邪をひきますよ」
「〜〜〜っ・・・」
私は、真っ赤な顔をして彼をにらむ。が、彼は、さほど気にしないで私を見つめ返す。
「暖かいもの。風邪なんてひかないよ」
「もう夏も終わりますので涼しくなってきますよ。それに先ほどルナさんがお探しになっていましたよ。お帰りにならないといけないのでは?」
彼は、そう言って私の手を取り、私を引っ張り起こした。
「えぇ〜〜?いやだなぁ〜。なおさら帰りたくなくなったわ」
私は、パッパッ、と草を払う。
「では、今日は、家に泊まりますか?」
ニッと微笑む彼の笑顔は、どことなく妖しい。
私は、あきれた目で彼を見上げる。
「遠慮しとくわ」
「そうですか。ざんねんですね」
私たちは、屋敷のほうへと歩き始める。
こいつ、あの事件から変わったな。いや、もしかしたらこれがほんとうのゼロスなのかも・・・。
あの事件。数ヶ月前に起こったあの事件。
「・・・・・・」
私は、ゼロスの手を取り、振り返る。
草原が広がる・・・。
「どうなさったんですか、リナさん」
「・・・ううん・・・あれからもう数ヶ月たつんだなぁ・・・なんて思っただけ・・・」
私は、彼を見上げる。
「・・・ええ・・・そうですね・・・」
暖かく・・・愛しい笑顔・・・。あの事件がなければ見ることがなかったかもしれない笑顔。
あれは、暖かい春の風が吹き、この庭が深い、深い緑に輝いていた季節だった。たぶん一生忘れることのない事件。
そしてあの事件ほどではないにしろ、またやっかい事に巻き込まれるなんて、この時の私たちには全然知るよしも無かった。

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10196〜第一章〜理奈 5/27-11:06
記事番号10195へのコメント

〜第一章〜

「おっはよぉ〜!」
私は、元気な声で前を歩いていたアメリアの背中をポン、とたたく。
「おはようございます、リナさん」
「ふわぁ〜・・・ねむいわねぇ」
私は、アメリアの横を歩き、大きなあくびをしてしまう。
遅くまで起きてたからかな?うぅ〜、だって、宿題がおわんなかったんだもん。
「ねぇ、アメリアちゃぁ〜ん」
アメリアは、私を見て、何も言わず鞄からノートを取り出す。
あら、わかってるじゃない。さすが私の友達。
「リナさん、もう来年は、受験生なんですからそろそろ自分で宿題ぐらいしてくださいよぉ」
「あら、私は、宿題しなくてもテストでは、いい成績取れるんだから」
自慢じゃないけど私は、これでも優等生なんだから。宿題は、しないけど。
お、あそこにも一人宿題しない男が。
「ガウリィ!」
私達の前に大柄な男が歩いていた。
ガウリィは、私の声に気づいてふりむく。
「おぉ!リナ!宿題見せてくれ!」
ガウリィは、私達に近づいてくるなり大声で言う。
この人も本当に変な人なんだよねぇ。宿題は、しないし、頭は、クラゲだし。どうやったらテストでそこそこいい点とれるんだろう?
「私もやってないわよ。今アメリアからノート借りたとこ」
「よし!じゃあ、早く教室行って写そうぜ!」
「そうね」
私は、ガウリィの言葉にうなずく。
「アメリア。宿題見せては、あいつらのためには、なんないぞ」
アメリアの後ろから声がしたので振り返る。
「ゼルガディスさん」
「なによ、ゼル。じゃあ、ゼルは、宿題やって来たって言うの?」
「もちろんだ」
彼は、私の言葉にふん、と鼻を飛ばす。
「ゼロスは、どうした?」
彼は、周りを見て少し嬉しい顔を浮かべる。ゼロスが苦手、と言うか嫌いなゼルは、ゼロスがいないのに気づく。
「なんか生徒会の仕事を片付けなくちゃいけないんだって」
ゼロスは、今朝そう言って先に学校へ来てるはず。
「ともかく早く教室いこうぜ!」
ガウリィは、私の腕をひっぱる。
そうそう!早く行って宿題写さないと授業にまにあわないわ!
 
 間一髪。ベルが鳴り、先生が入ってくる少し前に私たちは、宿題を写し終わり、胸をホッとなでおろす。
 「えぇ〜、今日は、転校生が二人いる」
 先生がそう言うとクラス中がざわめく。
 「こんな時期に転校生ってめずらしいな」
 となりに座っているガウリィが小声で言ってきた。
 「入りなさい」
 先生に呼ばれ、男性と女性が入ってくる。とたん、クラスの女子と男子から歓声が起こった。
 男性の方は、長身で、黒い髪。ちょっと冷たい瞳が印象的だった。女性の方は、外国人だろうか?長い銀色に似た髪をポニーテールにしている。結構かわいい。
 「ルーク君と、ミリーナ君だ。そうだな席は、ちょうど二つ、インバースとガブリエフの後ろが開いている。インバース」
 「はい」
 私は、呼ばれ、立ち上がる。二人は、先生に言われこちらに来て席に座る。
 「私、リナ・インバース。よろしく」
 私は、手を差し出す。
 「リナ・・・インバース?」
 二人は、私の名を聞いて驚いた顔をする。
 何?私の名前になんか?
 「・・・よろしく」
 が、やがてミリーナは、にっこりと笑いもせず私の手を取る。ルークの方は、ただ私を睨むだけだった。
 なんなのよぉ!

 お昼を告げるベルが学校中に鳴り響く。
 「おっひるぅ!!」
 私は、そう叫んで体を伸ばす。あんな、かたっくるしくて、つまんない授業聞いていたら肩がこるわ。
 私は、鞄から自分のお弁当箱を取り出す。
 「リナ、俺とゼルは、パンを買ってくるから先に屋上で待っててくれ」
 ガウリィは、鞄からお財布を取り出して言う。そしてゼルと二人で教室を出て行った。
 「さぁ、リナさん、私たちは、先に屋上へ行きましょう」
 「うん」
 私とアメリアは、教室を出て屋上へ向かう。私たちは、いつもそこでお昼を食べているのだ。
 「今日のおかずは、なんですか?」
 「えっとねぇ、トンカツに、卵焼きと、ウィンナーと、その他色々」
 私は、鼻歌なんぞ歌いながら言う。お昼って学校で一番たのしい時間なんだよねぇ。
 私たちは、屋上に上がり、アメリアがいつも持ってきているクロスを広げ、その上に座る。
 これがいいんだよねぇ。ピクニック気分で食べれるから。
 「ゼロスさん、おそいですね。いつもならもう来ているのに」
 「そうねぇ。ガウリィたちは、まだパン買ってるんでしょうけど」
 いつもなら真っ先に飛び出して私の所へ来るゼロスがまだ来てない。
 「私、見てくるね」
 「はい」
 私は、立ち上がり、駆け出す。
 えっと、ゼロスのクラスは・・・。
 私が廊下を歩いていると向こうの方からゼロスが歩いてきてるのを見つける。
 「あっ、リナさん。どうなさったんですか?」
 「ううん。ただ遅かったから様子を見にきただけなの」
 「すみません。職員室へプリントを持っていっていたものですから―」
 ゼロスは、そう言って固まる。その視線は、私の後ろ。私は、振り返る。するとそこに今日転校してきたミリーナとルークが立っていた。
 「おひさしぶりです」
 ミリーナは、小さな声で言う。私にじゃない。
 「おひさしぶりです。お元気そうで」
 ゼロスは、ミリーナに笑顔で答える。が、ミリーナは、笑みも浮かべず、彼を見るだけだった。
 「ルークさんもお元気そうで」
 ゼロスに声をかけられ、ルークは、不機嫌そうな顔でそっぽをむく。
 「転校生と言うのは、あなた方でしたか」
 「私のクラスに来たの。ゼロス、二人の知り合い?」
 私は、ゼロスを見上げる。
 「ええ、まぁ。少し前に知り合ったんですよ」
 「そう」
 「失礼しますわ」
 ミリーナは、いきなりそう言って歩き出す。ルークは、慌てて彼女のあとを追う。
 「なんで何もいわないんだよ?」
 ルークは、彼女に問い掛けるがミリーナは、答えない。
 なんなんだろう?
 「ねぇ、ゼロス。なんの知り合いなの?なんか二人ともあなたに合いたくなかったような態度だったけど。それに、今朝、私二人に睨まれたのよ」
 ゼロスは、困った顔で私を見る。
 「怒りません?」
 「何よ、それ」
 「実は、リナさんが戻って来た数週間前に僕、彼女とお見合いをしたんですよ」
「へぇ〜、お見合い・・・」
・  ・・・ん?・・・・
「お見合い!!!」
私は、思わず、叫んでしまった。と、周りを歩いていた人がびっくりして振り返る。
「ちょ、ちょっとリナさん」
「あっ、ごめん」
「ともかく、先にアメリアさんたちの所へ、行きましょう?」
「う、うん」
ゼロスは、私の手を取って言う。

「お見合い!?」
うぅ〜ん、私と同じ反応。
アメリアは、お箸で持っていた卵焼きをポロッと落として叫ぶ。
「ゼロスさん!リナさんって人がいながらお見合いをするなんて!」
アメリアは、自分の事のように叫んでたちあがる。
あんたがそんなに燃えなくていい、あんたが。
私は、アメリアの腕を取って座らせる。ゼロスは、そんなアメリアの反応に顔を引きつらせる。
ゼルとガウリィは、別に興味なさそうにパンを食べてるだけだった。
「お見合いと言っても断ったんですから」
「どうして?」
私は、興味深く聞く。
「リナさん・・・おこってらっしゃいます?」
「別に」
そりゃぁ、ゼロスがお見合いしたのは、ちょっとショックだけど、断ったんだし。私が帰ってくる前の事だったんだし。でも、ねぇ。好きな人が他の女性とお見合いとかするのってちょっと許せないところがあるよねぇ。
「ミリーナさんのお父さんと母が知り合いなんですね。何回かいっしょに仕事をしたこともあって。それでそのお父さんが僕の事を気に入ってくれたらしく。母は、最初断ったらしかったんですけどどうしてもって言われたのでしかたなく。会うだけ会ってあとで断ればいいと思って」
「そうだったんだ。でもなんで私が睨まれなくちゃいけないのよ。しかも関係ない、あのルークってやつに」
そうよね。相手は、私の事知らないはずだし。知ってたとしても睨まれるとしたらミリーナにだし。
「それが、実は、母が・・・」
私が帰ってくる数日前、姉ちゃんがゼラスおば様に私の事を話したらしい。だからゼラスおば様が相手にお断りの電話をかけたらしい。
「息子のフィアンセが帰ってくるからこの話は、すすめられないぃ!?おば様そんなこと言ったの?」
「はい。リナさんが帰ってくるのを聞いてうれしかったらしく・・・、しかも相手にリナさんの名前まで告げたらしく。まぁ、かあさんも僕とリナさんが、その一緒になってほしいみたいでしたから」
 私は、笑ってしまった。おば様らしいわ。
 「でもだからってなんであのルークさんがリナさんの事を睨まないといけないですか?」
 私が聞きたかったことをアメリアが変わりに言う。
 「あぁ、それはですね、ルークさん、ミリーナさんのボディーガードと、言うか付き添いというか。ともかく、彼女のことが好きなんですよ。自分が好きな人がお見合いの相手に振られたのですから。で、相手が振った理由がリナさんですから」
 そうよねぇ。好きな人がゼロスみたいな財閥の娘で、自分は、ただの付き添いだったら絶対結ばれないと思うよね。それでその好きな人がお見合いをしたらその人の幸せを祈るしかないのよね。それが断られたんだから複雑な気持ちでしょうね。うれしいけど、ゼロスの事が許せない・・・。それで、私は、そのゼロスが断った理由。っておい。
 「じゃあ、何。私は、とばっちりをうけただけ?」
 「そう言うことになりますね」
 なんか、そのルークって人かわいそう。彼と自分をくらべたら私って本当に幸せなんだな。使用人だけど、おば様たちに愛されて、ゼロスといっしょにいられて。
 私は、ゼロスを見る。
 「なんですか?」
 「ううん。なんでもない」
 私は、微笑んでお弁当を食べつづけるのであった。

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10197〜第二章〜理奈 5/27-11:07
記事番号10196へのコメント

〜第二章〜

 うぅ〜ん、いい天気!!
と、裏腹に、私の中は、曇り空だわ。私は、ガクッと肩を落とす。
 「だから自分で宿題をしてくださいって言ったんです」
 アメリアは、あきれた口調で言う。
 「だから私は、宿題しなくてもテストは、いい成績取れるはず!・・・だったんだけどなぁ・・・」
 私とアメリアは、次の授業があるクラスへ向かって歩いている所だった。
 あっ、紹介しなかったけど家の学校は、二階建ての校舎が三つある。だから必ず外歩かなくちゃいけない。それは、それでいいだけど一つ一つの校舎は、とても離れていて、結構あるかなくちゃいけないんだよね。
 ともかく。私とアメリアは、その次のクラスのある校舎へ向かって先ほどの授業のテストの成績を話しながら歩いていた。
 そうなのよ!今回のテスト最悪だったのよ!結構自信あったのにぃ・・・・。
 はぁ・・・
 その時だった。ヒュン・・・と何かが私の目の前を上から下へと横切り、ガシャンと音をたてる。
 一瞬私とアメリアは、何が起こったのかわからず固まった。
 すると周りから悲鳴が起きた。
 私は、足元を見る。
 悲鳴をあげたいのは、こっちじゃ。
 そこには、こなごなにくだけた植木蜂が落ちていた。
 「ねぇ、アメリア」
 「はい、なんでしょう」
 「私、今、ものすごくデジャ・ヴを感じたんだけど」
 「私もです」
 「冗談じゃないわ!」
 そこで私は、やっと事態を把握する。私は、上を見上げる。真上には、たしか、あそこは、音楽室!
 「アメリア、先行ってて!」
 「え?あっ、リナさん!」
 私は、そうアメリアに言って走り出す。目指すのは、二階の音楽室。
 「どうしたリナ?」
 すると、目の前にゼルを見つける。
 「どうもこうもないわ!話は、あと!」
 ともかく、先に犯人を見つけないと!
 私は、音楽室に飛び込む。が、そこには、もう誰もいなかった。
 チッ!
 私は、舌打ちする。そして開けっ放しにしてある窓に近づく。下を見ると心配そうなアメリアは、見上げていた。その横には、くだけた植木蜂。
 ここから落としたのか。あるいは、事故だったか。でももし、事故だったら逃げずにあやまればいいのに。まぁ、このリナ・インバースが歩いてる所に植木蜂を落としてしまったんだ。あやまってもただじゃぁ、すまないわ!

 「そのせーで授業に遅れて先生に怒られるし、もう!テストは、悪い成績だったし、植木蜂は、落ちてくるし!今日は、厄日だわ!」
 私は、文句をいいながらお昼を食べていた。
 「そうか、だからあの時音楽室へ行ったのか」
 ゼルは、ミルクを飲んで言う。
 お昼時間。いつもどおり屋上でみんな集まってお昼を食べている間、私は、さっき起こった事件を話していた。
 「しかし、ゆるせません。事故だとしても僕のリナさんに怪我を負わせる所だったんですから。つかまえて謝ってもらいないといけませんね」
 私は、ゼロスの言葉に顔を赤くする。
 いや、ゼロスの場合、つかまえてひどい目にあわせるにちがいない。私のことになると何をしでかすかわからないやつだから。ってなんかのろけてるみたいに聞こえる?
 ともかく。
 「そう言えば音楽室から誰か飛び出して走り去ったやつがいたな」
 「え!?」
 ゼルの言葉にみんないっせいに声をあげる。
 「銀髪の女性だったな。顔は、見えなかったけど」
 銀髪の女性・・・・・・
 「ミリーナさん・・・?」
 アメリアがポツリとつぶやく。
 ミリーナ。もう転校して来てから一週間たつけど、まだ一回も会話したことない。どうもさけられてるみたい。あたりまえか。
 「見合いを断られた腹癒せにか?」
 ゼルが言う。
 「いえ、ミリーナさんは、そんなことする人だと思いませんけど」
 そう言ったゼロスをみんな見る。
 「実は、ミリーナさん、お見合いにあまり乗り気では、なかったらしいんですよ。ですから僕が断ったのは、彼女に取って好都合のはずです。もしその植木蜂を落としたのが本当にミリーナさんなら、きっとそれは、事故だと思いますよ」
 なんかちょっとムカ。だって、なんかミリーナの事をかばってるように聞こえるんだもん。
 でももし本当にゼロスの言う事が本当なら別に腹癒せに私に怪我をさせる必要ないし、もしするとしたらゼロス本人にすればいいことなのに。
 はぁ〜・・・
私は、ため息を吐く。
なんかまた厄介ごとに巻き込まれた予感・・・・・・・。

ふ・・・わぁ〜・・・
私は、歩きながら大きなあくびをする。
「どうしたんですか、リナさん?あまり眠れなかったんですか?」
となりを歩いているゼロスが苦笑して言う。
「そうなのよ」
昨夜は、昨日のことを考えていてあまり眠れなかったのよね。おかげで、また宿題がおわんなかったんだけど。まぁ、いいや、またアメリアに見せてもーらおう。
「リナさん!リナさぁん!」
おっ、グッドタイミング。
後ろの方からアメリアが走ってくる。
「おはよう、アメリア」
「おっ・・・はぁ、はよう、ございます、ふぅ・・・」
急いで走って来たのだろう。激しく息を吐きながら言う。
「さっそくだけど、宿題―」
「凄い事がわかりました!」
アメリアは、私の言葉をさえぎって叫ぶ。
「すごいことって?」
「実は、あったんですよ!ミリーナさんがお見合いを断られた腹癒せをする動機が!」
「そんなことより、宿題・・・えぇ!?」
私は、思わず叫んでしまった。
なんかこのごろ叫ぶばかりだな。
私は、ゼロスを見る。ゼロスも驚いた顔を浮かべてる。
「それ、どういうこと?」
「はい、実は、昨夜父に事故の事を話したんですね。そしたらミリーナさんの事知っていたらしいんです。父も何度かミリーナさんのお父さんと仕事をしたらしくって」
そういえばアメリアもセイルーン・コーポレーションのお嬢様だったな。これがまたお金持ちなんだよねぇ。そんなことより。
「実は、ミリーナさんのお父さんお金に困っていたらしく、倒産寸前だったらしいんですよ。それで、最後の手段として、メタリオム財閥の跡取息子、つまりゼロスさんと結婚させてなんとか会社を立て直そうとしたんですけど、断られたため、お金の工面ができず、そのまま倒産してしまったらしいんですよ」
うへぇ〜、なんとまぁ・・・。
「そういえば母さんがそのような事を言っていたような・・・」
おい。そんな大事なこと忘れるな。
ゼロスの言葉におもわずつっこみを入れてしまう。
「じゃあ、ミリーナがあやまって植木蜂を落としたんじゃなくて・・・」
「わざと、腹癒せにリナさんに怪我をさせようと」
私の言葉にアメリアが続けて言う。
はぁ・・・・・
ため息を吐いてしまう。
「ったく・・・なんで私がこんな目に会わなくちゃいけないのよ」
がっくっと肩をおとしてしまう。
「すみません、リナさん」
「あっ、ゼロスがあやまる必要ないよ」
まぁ、こいつのせーでもあるが。そうよ。なんで、私なのよ。復讐でも腹癒せでも、ぜぇえーんぶ、こいつにやればいいのに。なんかだんだんむかついてきた。
でも私のためにお見合い、断ってくれたんだから。よしとするか。
「ともかく。今日は、無事に何事もなく過ぎればいいけど・・・」
だけど、その思いもむなしくまた私と、今度は、ゼロスにも起こってしまったのだ。

「もうお昼すぎましたけど、だいじょうぶでしょうかね」
「え?何の事?」
 アメリアが何の事を言っているのかわからず、たずねる。
 今は、次の授業があるクラスへ移動していた。
 「何の・・・ってリナさん」
 アメリアは、あきれた顔で言う。
・・・・・・あぁ〜。
「なんだ。その事ね。別に忘れてるわけじゃないわよ。いつどこからやってくるかわからない敵にびくびくおびえてなんかいられないわ」
まぁ、別におびえてなんかいないけど。来るなら来いってもんよね。
「でもこーゆー状況だからこそ、気をつけないといけないんじゃないですか?」
こーゆー状況。って周りに女子が固まって歩いてるだけだけど。まさか相手もこの中で何かするようなほど馬鹿じゃないはず。しかも頭のいいミリーナは。って。
「あれ?」
私は、あたりをきょろきょろ見る。
「ねぇ、アメリア、ミリーナは?」
アメリアもつられて周りを見る。
「いませんね。今日は、来ているはずですけどね」
その時、周りの女子から黄色い声があがる。
えっ!?何々!
私は、思わず身構えってしまった。
「リナさん」
集まってきた女子の中をなんとかかきわって来たのは、ゼロスだった。あれ?この時間だったらゼロス、反対側の校舎にいるはずなのに。
「なんだ、ゼロスか」
「なんだとは、失礼ですね」
「どうしたの?」
「いえ、生徒会の仕事が入ってしまいましたから放課後、いっしょに帰れません」
わざわざそれをいいに来てくれたのか。思わず頬がゆるむ。
「じゃあ、邪魔にならなければ私も生徒会室へ行って待ってる」
それを聞いてゼロスは、微笑む。
「わかりました。では」
ゼロスは、そう言って去る。
そのあと、周りの女子から刺々しい視線を感じる。もうなれた事だけど。

コンコン・・・
「どうぞ」
中から女性の声がする。
私は、ドアをあけて、中に入る。
「あら、リナさん、いらっしゃい」
「こんにちは、シルフィール」
大きな机にシルフィールがすわっていた。その斜め横、こちらに向いている机にゼロス。
「すみません、リナさん。すぐ終わりますから座っていてください」
ゼロスは、手元にある書類を読みながら言う。
私は、誰も座っていない机に鞄を置く。
「ううん、だいじょうぶ」
「それでは、私は、これで」
シルフィールは、自分の荷物をかたづけながら言う。
「あれ、シルフィール、もう終わり?」
「はい。私は、ただ書類の整理をしていただけですから。では、リナさん、ゼロスさん、先に失礼します」
「ご苦労様です」
シルフィールは、ゼロスの言葉に一礼する。
「あっ、り、リナさん」
「うん?」
「あ、あの、ガウリィ様によろしくおねがいしますね」
シルフィールは、顔を赤くしながら言う。
「うん、わかった」
「じゃ、失礼します」
シルフィールは、うれしそうな顔をうかべ、部屋を出た。
シルフィールってガウリィの事すきなんだよね。どこがいいんだろう、あんなクラゲ。
「今日は、だいじょうぶでしたか?」
ゼロスは、まだ書類に目を通しながら聞いてくる。
「うん。何事もなかったわ。お昼過ぎ、ミリーナ見かけなかったし。周りには、アメリアたちもいたし」
って言ってもこの前、アメリアもとなりにいたのに植木蜂落としてきたからな。あれで、アメリアにあたっていたらただじゃおかなかったけど。
「それは、よかった」
そこで、ゼロスは、顔をあげ、微笑む。
「う、うん」
思わず赤くなってしまう。
そ、そー言えばゼロスと二人っきりになるのってひさしぶりだよね。うぅ〜、意識すると、顔に出ちゃうんだよね、私。顔赤くなってないかな。
私は、ゼロスに顔を見られないように部屋の中をあるきまわる。
「どうしたんですか、リナさん?座っていてください」
呼ばれてドキッとする。
「う、ううん、だいじょうぶ。座ってるだけじゃつまんなかいら、あははは」
私は、本棚の方へ行ってかまわず、一冊の本を取り出してページをめくってみる。
ゼロスの視線を感じる。
うぅ〜、早く仕事終わらせてよ!
あぁ、きっと、私の顔真っ赤だろうなぁ。
「ひゃぁ!」
いきなりのことで、おもわず本を落としてしまった。
「ぜ、ゼロス」
ゼロスが後ろから抱きしめてきたのである。
い、いつのまに!足音なんて聞こえなかったよ!忍者か、こいつは!
「何をそんなに緊張してるんですか?」
こ、こいつ・・・。わかってるくせにこんな質問してくるんだから。
「べ、別に緊張なんかしてないわよ・・・ひゃん」
耳にキスされて体がふるえる。
「ちょ、ちょっとゼロス、はなして」
ゼロスの腕から逃れようと必死に身体を動かすけど、離してくれない。
「離しません」
耳にささやかれる彼の声がくすぐったい。
「だ、だれか来たらどうするのよぉ」
「もう放課後ですし、他の生徒会の方達は帰りました。警備の人もまだ見まわりの時間では、ないですし」
そう言って彼は、首筋にキスをしてくる。
「やん・・・ちょ、ゼロス」
カチャ・・・・
その時だった。そんな音がしたのは。
私とゼロスは、一瞬固まる。
・・ちょっと待て。今の音って。
ゼロスの腕の力が緩んだ時、私は、ドアの方へ駆け寄る。
「ちょ、ちょっとやだ!カギかかってるじゃない!」
「そうですね」
ゼロスもやってきてドアに手をかける。
「あっ、でもゼロスカギ持ってるからだいじょうぶよね」
そうよ!生徒会長は、たしかこの部屋のカギを持ってるもんよね。
「持ってる事は、持ってるんですけど・・・。この部屋、外からでしかカギは、つかえないんですよ」
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
をい・・・って事は。
「とじこめられましたね」
ゼロスは、別に大事では、ないように言う。
「どこのどいつだぁ!」
私は、ドアに向かってさけぶ!
「そこにいるんだろ!あけろぉ!」
「り、リナさん!落ち着いて!」
ドアを壊しかねない勢いでいた私をゼロスが後ろから押さえる。
「ったくぅ。誰よぉ・・・ミリーナ?」
最初に浮かび上がったのが彼女の名前だった。
「でも待てよ・・・たしか生徒会の合いかぎは、職員室に、しかも誰でも取れるようなところにおいてあるんだよね・・・」
「リナさん?」
私は、ゼロスを無視する。
一般の生徒?でも私とゼロスを生徒会室に閉じ込める動機は?やっぱりミリーナ?でも私が放課後生徒会室に行くって知ってるのはアメリアだけ・・・。でもあの時回りに女子がたくさんいたから・・・犯人は、この女子の誰かって事も考えられるよね。ゼロスファンの女子が私達に嫌がらせ・・・考えられるわ。
でも・・・。
「わっ!」
考え事していた最中、この男は、またしても私を抱きしめる。今度は、前から。
「ちょっと、ゼロス!こんな時に!」
「僕には、このシチュエーションすごくおいしいんですけど」
ゼロスは、うれしそうな顔で言う。
「おいしくなぁい!」
「どうせ出られないんですし、警備の人が来るまでまだ一時間ありますよ。それに久しぶりに二人っきりになれたんですし・・・」
ささやくように言う。
・ ・・・・・・
ゼロスの顔を見上げる。
「ね?」と言うような顔。
・ ・・ったく・・・・
私は、彼をにらみつけるが・・・おとなしく彼の唇に自分の唇を重ねる・・・・

「こないわね」
「そうですね」
私は、頬杖ついて言う。
時刻は、七時半。警備の人が来るはずだった七時からもう三十分。
私とゼロスは、机に寄りかかって床に座っていた。
あっ!変な想像しないでね!何もしてないから!
それよりも。
「なんで警備の人こないのよ」
もう叫ぶ気力なんてない。
「どうしたんでしょうね」
あぁぁぁあ!!!やばい!ひじょーにやばい!!このまま助けがなく朝までここにいたら・・・そしてこの事が学校中に広まったら!!
親呼び出しが頭をよぎる。
・ ・・姉ちゃんに殺される・・・
私は、頭を抱える。
どうしよう、どうしよう、どうしようぅう!!
「リナさん?」
ゼロスは、私の顔を覗きこむ。
「リンチ・・・?いや、それよりひどいかも・・・あぁ・・・」
私は、ぶつぶつと恐ろしい事を口走っていた。
トゥルルルルルル・・・
いきなりの音にびっくりして、思わずゼロスにだきついてしまう。
「・・・え?」
トゥルルルル・・・・
「あっ、私の馬鹿!」
私は、立ちあがり自分の鞄の中に手を入れる。そして携帯を取り出す。
「いやだぁ、こんなものがあったんだわぁ」
なんかすっごい恥ずかしい。
「はい、もしもし」
『リナさん?』
「アメリア!よかったぁ!」
『どうしたんですか?ちょっと宿題のことで聞きたいことがあったので・・・』
「そんなことはどうでもいい!たすけて!」
『ど、どうしたんですか!?』

私は、アメリアに事情を話し、学校まで来てもらったのだ。いつもの警備の人は、お休みだったらしく、代わりにいた警備は、面倒くさくて最上階の奥にある生徒会室までは、見まわりにこなかったらしい。彼女は、警備の人にたのんで、職員室にあるカギを借りて私達は、無事中から出られた。
その時は、もう八時を回っていて帰った私は、姉ちゃんにお仕置きされたのだった・・・。

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10218〜第三章〜理奈 5/28-12:51
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〜第三章〜

「でもあの時は、よかったな、リナ。おまえ携帯持っていてもいつも切ってるだろ」
「そうそう。あの時つけっぱなしにしといてよかったわ。あの時から放課後は、絶対つけてるようにしてるの」
ガウリィの言葉に私は、うなづく。
植木蜂事件から一週間、生徒会室事件から二日。今日、みんな中庭に集まってお昼を食べていた。
「あれから何もおきませんよね」
「うん。そうね」
アメリアの言葉にうなづく。
「ミリーナさんもあきらめたんでしょうか」
「その事だが」
ゼルがアメリアのコメントに口をはさむ。
「その二つの事件、本当にミリーナが、というか同一人物がやったと思うか?」
「そうなのよねぇ。私も同じ事考えてたの」
ゼルの言うとおり、私は、この二つ、まったく違う人物がやったと思っている。
「どうしてですか、リナさん」
「アメリアもその場にいたけど、植木蜂を私の上に落とすのと生徒会室に閉じ込めるのと。やり口が違うわ。もし同一人物だとするでしょう。その人は、植木蜂を私の上に落とそうとした人よ。一歩間違えれば人殺しよ。それが打って代わって今度は、私たちを生徒会室にとじこめた。最悪の場合は、先生に男女が夜まで学校に二人っきりいたって知られ、処分」
「そうか、そうですよね」
アメリアは、私が何を言いたいのかわかったらしい。彼女は、ポンと手を打つ。
「植木蜂は、ミリーナと思うし、ゼルが見てるし。それに私が生徒会室に行くことなんてあの場にいなかったミリーナが知るはずも無いわ。まぁ、聞いてたのがゼロスファンの女子だったから広まったって事もあるけど」
「とにかく、リナさんは、こうして無事にいるのですからまだ用心した方がいいですね」
ゼロスがそう言うとみんなうなずく。
「あぁ、いつまで続くんだろう」
私は、ため息を吐く。
私たちは、立ちあがり、歩く。
あぁ、まるでフィリアの時みたい。なんで私ばっかりこんな目に会わなくちゃいけないんだろうねぇ。
私は、またぶつぶつ文句を言いながら歩く。
「り、リナさぁん!!」
アメリアの叫び声がする。
「へ?」
と、同じに私は、ゼロスに抱きかかえられ、そのまま倒れる。
大きな音がするのと同じに回りから悲鳴があがる。
つっ・・・・!
頬にするどい痛みが走る。
「り、リナさん!だいじょうぶですか!!?」
ゼロスは、そう叫び私を抱き起こす。
「う、うん、ど、どうしたの?」
私は、頬を押さえながら聞く。彼の肩越しからアメリアたちが駆け寄ってくるのが見える。
その時始めてゾッとする。私が立っていた所にガラスの破片が散らばっていた。
「リナさん、リナさん!」
アメリアが泣きそうな顔をして私にだきつく。
「おい、リナ、顔!」
ガウリィに言われて私は、頬に当てた手を離す。その手に血がついていた。飛んできた破片に切られていたんだろう。でもそんなことは、今関係ない。
私は、ガラスの破片を手に取る。
ガラスじゃない。クリスタル?しかも破片がこの量・・・。
「ゼロス、アメリア、おまえたちは、リナを保健室へ連れて行け。俺とガウリィは、このことを先生に言ってくる、あと犯人を見てないかみんなに聞いてくる」
「わかりました」

「ゆるしません!あれは、絶対リナさんを殺そうとしたにちがいありません!」
いや、誰にだってわかるって。あんなクリスタル落とされたんだから。
「ゼロスさんが間一髪でリナさんの事をたすけましたけど、顔に傷を・・・女の顔に傷をつけたんですよ!このアメリア、断じてゆるしません!」
「あぁ、はいはい、アメリア、落ち着いて。そんなに深くないから傷は、残らないわ」
私は、燃えているアメリアを落ち着かせる。
私、ゼロス、それにアメリアは、保健室にいた。保健室の先生は、私に薬をぬってくれたあと、職員室へ行ったので今は、いない。
「でもリナさん・・・」
「私もゆるせないわ。でも顔を傷つけられたので怒ってるんじゃない。あそこには、アメリア、ゼル、ガウリィ、ゼロスもいたのよ。下手すれば私じゃなくみんなが怪我してたかも知れない。私だけをねらうんだったら私が一人の時に狙えばいい。それをみんながいる所で」
「リナさん・・・」
ゼロスは、私の手に自分の手をかさねる。
私は、大丈夫よ・・・て顔を浮かべる。
「リナさん、私ミリーナさんに話してきます!」
アメリアは、そう言って立ちあがる。
「アメリア、ミリーナじゃないわ!」
「え?」
私は、叫ぶ。
そう、ミリーナじゃない。植木蜂落としたのと同じやり方だけど、クリスタル落としたのはミリーナじゃない。
あの量のクリスタルの破片。もとは、大きなクリスタルだったに違いない。そして、あのクリスタルが落とされたと思われる教室は、たしか科学室。あそこには、馬鹿でかいクリスタルがあったはずだわ。それも大きすぎて女の力では、抱えられないほどの大きさの。
「リナ、だいじょうぶか?」
ドアを開け、ゼルとガウリィが入ってくる。もう移動時間か。
「うん。だいじょうぶよ。それより、どうだった?」
ゼルは、私の問いに首を横に振る。
「いや、昼休みにもかかわらず、目撃者は、ゼロだ。と、言うかあの時間、あそこらへんは、人が多すぎて反対に目撃されにくい」
「そっか」
「とにかく。リナは、一人で行動しない方がいい。いや、一人でいても俺達がいても関係ないと思うが」
そうよね。さっきも言ったとおりみんながいた時にもあんなことしたんだ。私が一人で行動しようが団体で行動しようが関係ない。
「すみません、リナさん、今日も生徒会の仕事が残っていて。アメリアさん、リナさんと一緒に帰っていただけますか?」
ゼロスは、そうアメリアに頼む。
「もちろんですとも!リナさんは、この私が絶対守ります!」
アメリアは、勇ましく胸をドンとたたく。
「いや、アメリアは、少し頼りない。相手が男だとわかったから、ガウリィ、おまえがリナといっしょに帰れ」
ゼルは、アメリアを押しのけて言う。
「ああ、まかしとけ」
ガウリィの方がたよりないと思う人もいるが彼は、これで剣道部の部長なんぞしていて剣を持たせると誰よりも強い。
「みんなも気をつけてね。もしかしたら的をかえるかもしれないから」
それが心配。相手は、もう私だけと決めず、ゼロスの周りにいる人だれでもいいから襲うつもりでいるかもしれない。
早く何とかしなければ。

「まさか学校の外では、何も起きないと思うけど」
「いや、わからんぞ」
私とガウリィは、みんなと別れ、私の家へと向かっていた。
「あぁ、それにしてもこのごろ私ってほんと、ついてないなぁ」
「日ごろの行いがわるいから・・・」
ガウリィは、途中で口をつぐむ。私がにらんでるのを見たからか。
「だが、それも今日までかもしれんぞ」
「そうね」
私たちは、道の真中でとまる。時刻は、四時半。周りは、もう薄暗い。私たちは、ふりむく。そこには、何もない。
「さっさと出てきなさいよ。隠れてるのは、わかってるんだから」
「出てこないとこいつが何するかわからんぞ」
私たちにこたえるかのように何者かは、姿をあらわす。普通のティーシャツにジーンズ。帽子にマスク、サングラス。そして左手に木刀。
「実力行使、真正面から来てくれたのね。たすかるわぁ。早くこんな馬鹿馬鹿しいこと片付けて平和ぁな学園生活おくりたいのよね」
私は、腕組みし、余裕を見せながら彼に言う。
男は、木刀をふりあげ、こちらへ向かって走ってくる。ガウリィは、鞄を私に放り投げ、こーゆーときのために背中に隠してあった木刀を手に取る。
ガウリィに剣で勝とうなんて百年早い。案の定、男がガウリィに向かって剣を振り下ろした時、ガウリィは、簡単にそれをよけ、ただ木刀を持っている男の手に剣をふりおろしただけだった。男は、木刀を落とし、また拾い上げないようにガウリィは、それを離れたところへ蹴る。男は、そのすきに逃げ出す。
「追わなくていいのか?」
「いいわよ。もしかしたら罠かもしれないし。それに相手は、左利きだったよね。うちの学校に左利きのやつってあんましいないから、生徒会の情報網でもつかって・・・」
「いや、あいつは、左利きじゃないな」
「へ?」
「剣を振り下ろした時、スピードもなかったし、力もなかった。剣の使い方しらないやつでもそれなりに、スピードも力もあるが、あいつには、なかったな」
ガウリィが言うんだ。本当だろう。
「あら。だったら追った方がよかったかな」
私は、ガウリィに鞄を返して言う。
ちっ。出来たらもうこの場で何もかも終わりにしたかったが。

涼しく、やさしい風がふく。その風に打たれた草たちが私の頬をくすぐる。目の前には、深く暗い夜空。そこに光り輝く満天の星。
ふふふ
最近このやっかいごとのせーでここに来てなかったからな。
やっぱりここは、落ち着く。
私は、今メタリオム家の庭で寝転がっていた。
するとこちらへ向かって誰かがやってくる。
んもう。たまには、一人っきりで浸りたい時だってあるのに。まぁ、いっか。
「おかえり、ゼロス」
「ただいま、リナさん」
今帰ってきたばかりだろうか、手には、まだ鞄を持っていた。
「だいじょうぶでしたか?」
ゼロスは、鞄と脱いだブレザーを草の上におき、私の隣にすわる。
「男に木刀で襲われたけど、ガウリィがあっさり返り討ちにしたわ」
「そうでしたか。実は、シルフィールさんと話しをていたんですよ。子の前、帰る途中、生徒会室の方へ女子生徒とすれ違ったらしいですよ」
私は、眉をひそめる。
「ミリーナ?」
「いえ、銀髪では、なかったらしいです」
「あんたのファンね」
ったく、こんな時にややっこしい事してくれちゃって。
「ちゃんとファンの管理くらいしときなさいよね」
「そ、そんな・・・」
「冗談よ」
私は、クスクスと笑う。
「リナさん・・・すみません・・・」
私は、彼を見上げる。
この夜空と同じ・・・深い闇の瞳。つらそうに私を見ている瞳。抱きしめたくなる・・・。
私は、ふ・・・と微笑んで、起きあがる。
「言ったでしょう・・・ゼロスがあやまる必要ないって・・・」
「ですがリナさんが僕といる・・・」
私は、ゼロスの両頬に自分の手を重ねる。
「あんたぜぇんぶ、自分のせーだって思ってるの?あんたがお見合い断ったからこんなことになったって思ってるの?私は、そんなこと一度も思ったことないわ」
いや、何回かあるけど。
「私は、ゼロスが私がいたからお見合い断ったって知った時うれしかったんだよ。すっごくうれしかったんだよ」
私は、まっすぐ彼の瞳を見つめる。
私の好きな彼の瞳。私が愛した彼の瞳。
やさしい風が私たちをつつむ。もう夏の終わりなのにすごく暖かく感じた。
彼は、そっと私の手に自分の手を重ねる。
「私は、それだけで充分だから」
「リナさん・・・・」
「あとは、犯人を捕まえて私達にしたこと思い知らせなくちゃいけないんだから!」
私は、笑みを浮かべる。それを見てゼロスも微笑む。
「そうですよね。僕のリナさんの顔に傷をつけていただいたのですからちゃんとお礼をしないといけませんね」
彼は、そう言って私の頬に指を滑らす。まだ少し痛みがある頬の傷・・・。だけど、彼がそこに口付けた時、その痛みが引いたような気がした。
「あなたがそう言うと怖いものがあるわね」
「そうですか」
彼は、子供みたいに無邪気に微笑む。それがかえってなんか怖い。
「相手を捕まえてもあまりひどい事しないでね」
「しませんよ・・・」
・・そうかしら・・・
そして私たちは、口付けを交わす。
「そういえば忘れてたけどゼロス受験生だよね。勉強しなくてもいいの?」
あっ、今のは、成績優秀な彼に対して馬鹿な質問だったかな?
「リナさんのことが心配で勉強なんてしてられないですよ」
いつもながらどうやったら顔を赤くしないでこんなセリフが吐けるんだろう。
「それで大学落ちたって知らないからね」
「ご心配なく。僕とリナさんの未来ですからちゃんとした大学へは、行くつもりですよ」
「・・・ばぁか」
私は、耳まで赤くして言う。
今のって・・・プロポーズのつもりかしら。
彼は、それを聞いて満足な顔を浮かべる。そしてまた口付けを交わす・・・


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10219〜第四章〜理奈 5/28-12:53
記事番号10218へのコメント

〜第四章〜

ふ・・・わぁ〜・・・
私は、たまらず大口開けてあくびをしてしまった。
「どうしたリナ、あくびなんかして」
ガウリィがたずねてくる。
「昨夜、あまり眠れなかったから」
このごろ寝不足みたい、私。
「どんなことが起きても眠ってるおまえが?」
「失礼ね」
ああぁ、もう。早くこの事件解決して思いっきり眠りたいわ。
朝。ホームルーム前。
「おい」
ガウリィが肘で私をつつく。
「何よ」
といいかけて私は、気づく。ミリーナとルークが入ってきたのだ。二人は、挨拶もしないで席につく。ちらっと肩越しから後ろを覗く。
「あら、ルーク、どうしたの?左手で鉛筆持って」
「い、いや、なんでもない」
私とガウリィは、その会話を逃さなかった。私たちは、うなずく。
「ミリーナ、ちょっと宿題で聞きたいところがあるんだけど」
いきなり私がはなしかけたので、ミリーナとルークは、驚く。そう言えば私から話しかけたのって転校してきて以来始めてだよね。
「いいですけど」
「そう?じゃぁ、これ」
私は、適当に問題を指す。
「あれ、ルークって左利きだっけ?左利きってめずらしいよね」
私の質問にルークの肩が震える。
「あっ・・・い、いや、ちょっと利き手を痛めて・・・」
「どれどれ」
私は、ルークの手を取る。いきなりの事で、彼は、手を引くのを忘れる。
ルークの右手の平に何かで切った傷があった。
「あら、痛そう。私もね、この前頬を切ったのよねぇ。上からクリスタルが落ちてきたから。知ってるでしょう?もう学校中広まってるから」
私は、意地悪そうに微笑んで言う。
「あ、あぁ」
彼は、目をそらして言う。その時ベルがなる。
「あ、授業がはじまるね、いいよ、ミリーナ、ありがとう」
私は、ミリーナからノートを取る。
横でガウリィが必死に笑いをこらえてる。
それにつられて私も笑いそうになったので急いで口を押さえる。

「リナさん、聞きましたよ」
お昼を告げるベルと同時にアメリアが駆け寄ってくる。
「何を?」
鞄から私のおべんとさんを取り出す。
「放課後体育館倉庫へ呼び出されたんですって?男の子に」
「そうなのよぉ〜、靴箱に手紙が入っていたのよ。こまったわ、愛の告白なんて」
「ゼロスさんって人がいながら会いにいくんですか?」
「そりゃぁ、無視できないです。会いに行って、ちゃぁんと断るつもりよ」
「そうですかぁ?」
「心配ない、心配ない」
そして私達は、彼らに見られないようにお互いにウィンクする。
さ〜て。また刑事気取りといきますか。

ガラっと扉をあけ、誰かが入ってくる。体育倉庫の中は、真っ暗だった。相手は、中を見まわし、近くにあった跳び箱の影に隠れる。
そして数分後、また誰かが扉を開け、中へ入ってくる。その人は、何歩か中の方へ歩き、跳び箱の前を通過する。その時、その跳び箱の影に隠れていた人が飛び出し、後ろから今入ってきた人の首の回りに腕を回す。
「ちょ、誰です!?」
その人が叫ぶ。女の声。その声を聞き、腕をまわしていた人が腕を放す。
「その声は、ミリーナ!?なんでおまえがここに!?」
「ルーク!?やっぱりあなただったんですね!」
だんだん目が暗闇になれたらしい。二人は、お互いをたしかめる。
「あなたがリナさんにここへ来るように呼び出したのね。私は、とめに来たのです!」
「ち、違う!手紙は、俺じゃない!ただそれを利用しただけだ!」
「ルーク、もうやめてください、こんなこと」
「何を言ってるんだ!おまえだってあいつらに復讐したいって言ってたじゃないか!」
「言いました!言いましたけど、本当に復讐なんてするつもりは、全然ありませんでした!」
「じゃあ、なぜ植木蜂をあいつの上に落としたんだ!?」
「何度も言ってるじゃないですか、あれは、事故だと」
「とにかく!俺達には、時間が無いんだ!今日が最後のチャンスなんだ!」
「おねがいです、ルーク。私のためにやっているのだったら今すぐこんなことは、やめてください」
「だけど・・・」
「彼女がやめてって言ってるんだからやめれば?」
いきなりした声に二人は、あたりをみる。
パッと倉庫の中が明るくなる。
私は、丸まっていたマットの上をまたいでその上に座る。その後ろには、ゼロス。跳び箱の反対側には、アメリアと、ゼル。そして扉の前、電気をつけたガウリィ。彼は、誰も入ってこないように扉をしめる。
あの手紙は、うそ。この二人をおびき寄せるために言ったのだ。
「今のここにいる全員が二人の会話聞いてるから言い逃れは、できないよ」
私は、腕組して言う。
「さぁて。あんたをどう、締め上げようかな」
「・・・・・・・・・・・・・」
二人は、ただだまっているだけだった。
「月並みなドラマ見たいに今まで起きたこと全部まとめようか?」
「そんなことしなくていいわ。全部私がしたことだから」
ミリーナが前に出てきて言う。
それを聞いて私は、笑ってしまった。
「ルークをかばうなんてかわいいわね」
今のなんか悪役っぽい言い方だったな。まぁ、いいや。
「前にも同じセリフ、誰かに言った事あるけど。これは、ミステリー小説でも、ドラマでもないの。私は、別にあんたたちを警察に突き出そうとか、そんな事は考えてないの」
「リナには、どつき倒されるけど」
ガウリィが口をはさむ。
「そう。ただルークが私達にしてくれたその御礼をしなくちゃいけないからね」
私は、立ちあがって言う。
「まぁ、植木蜂をあやまって私の上に落としそうになったミリーナも同罪なんだけど、あれは、事故ってことで私の平手打ち一発でゆるしてあげましょう。ルークには、私達の上にクリスタルを落としたのと、放課後、私を木刀で襲おうとしたから、まぁ、手加減して腕の一本でも折ってさしあげましょうか」
「リナさん、こわぁい」
アメリアの言葉に私は、苦笑する。自分でもわからなかったけど、私、そーとー怒ってるな。
「な、何の事だ」
あっ、こいつ。
私は、ルークの言葉にさらにムカッとくる。
「たしかにね、私達には、あんたがやったって物的証拠もない。でもさっきも言ったとおり私は、あんたを警察に引き渡すとか、そんな事は考えてないの。私があんたにしてほしいことは、ただ私に、そしてみんなに謝ってほしい。ただそれだけよ。あんたに聞いたって無駄だわね。ミリーナ、全部こいつがやったことよね?」
私は、ミリーナに尋ねる。
彼女は、顔をそむける。
「ち、違うわ・・・全部私がしたことなのよ」
ブチッ・・・
「あんたね・・・!」
「きゃっ!」
私がミリーナの方へ歩みかけた時、隣にいたゼロスがすばやくミリーナの後ろに回り、どこから取り出したナイフを彼女の顔にあてる。
「きさま!」
「おっと、動かないでください。あなたの大好きなミリーナさんの顔に傷がつきますよ・・・あなたが僕のリナさんの顔に傷をつけたように・・・」
ゼロスは、動こうとしたルークに向かって冷ややかに言い放つ。
「あんたたち馬鹿ね。倉庫に入ってきた二人の会話、全部私たちが聞いていたのよ。早く認めないとゼロス、本当にミリーナの顔に傷つけちゃうよ。私は、止めないから」
「くっ・・・」
ルークは、私をにらみつける。
「早くしてくださいね。そうでないと間違えてこのナイフ、彼女の頬を切ってしまいますよ」
こ、こえぇ〜。こいつを敵にまわしたルークが馬鹿だったわね。
「・・・・・」
ルークは、ガクッと膝をつく。
「全部・・・俺がやったことだ・・・」
ゼロスは、それを聞いて、ミリーナを離す。彼女は、ルークのところへと駆け寄る。
「お見合い断られたからお父さんの会社が倒産したから私に復讐したい気持ちは、わかるけど。でもそれだけで人を殺そうとする?」
「それだけじゃねぇ!こいつの親父は、自殺したんだ!」
え!?
私達は、ルークの言葉に目を見開く。
「俺は、自殺に追い込んだおまえらに、ミリーナに代わって復讐しようとしたんだ!」
パン!!
きっとそこにいたみんなが私のしたことに驚いたろう。打たれたルーク自身も。
「馬鹿じゃないの。なんで私たちがミリーナのお父さんを自殺に追い込まなきゃいけないのよ。そもそも借金して、会社を倒産の危機にさらしたのは、ミリーナのお父さん自身じゃない。それをゼロスと結婚させれば救われると言う虫のいい話しに飛びついて。全部そのお父さんが悪いんじゃないの!!」
「なんだと!」
「やめてください!」
私に飛びかかろうとしたルークをミリーナが止める。
「リナさんの言うとおりです。父さんが自殺したのは、全部父さんの責任です。リナさんとゼロスさんには、関係ありません」
「み、ミリーナ・・・」
ルークは、ミリーナを見る。
「父は、どうしようもない人でした。ギャンブル好きで・・・・。それで会社を何倍にも大きくしようなんて馬鹿な考えを持って」
彼女は、立ちあがって言う。
「でもそれに失敗し、倒産寸前まで行った時、どこからともなくゼロスさんとのお見合いの話しを持って来ました。父の考えてる事は、見え見えでした。彼と結婚し、メタリオム家の財産を奪おうと・・・。私は、そんな父が哀れでした。でもあれでも彼は、私の父です。なんとか助けてあげたい。そう思ってお見合いに望んだのです」
そう言ってゼロスの方をチラッと見る。
「でも断られ、その翌日、父の会社は、倒産してしまいました。お金のない人生なんて考えられなかったんでしょう。父は、そのまま自殺してしまいました。そして私たちは、親戚を頼ってこの町へ来たのです。そこでリナさんと会って、ゼロスさんと再会して
「最初は、たしかにお二人を憎んでいました。でも、あの日、教室の下を歩いていたリナさんを見て・・・どうかしていたんです。自分でも事故だったのか、わざとしたのか・・・わかりませんが・・・リナさんの上に植木蜂を落としてしまって・・・。その時には、もう恐ろしくなって・・・復讐なんて馬鹿なことは、やめようと思ったんですが・・・・」
ミリーナは、ルークを見る。
「ルークがそれを聞いて私の代わりに二人に復讐すると言ったんです。私は、止めましたが・・・まさか本気で二人を殺そうとしたとは・・・」
「俺は、ゆるせなかった。ミリーナを振ったやつを。ミリーナの親父さんを自殺に追い込んだやつを。俺は、ミリーナの事が好きだ!だからミリーナのために・・・!」
「ミリーナのために私たちに復讐しようと?それでミリーナが喜ぶとでも思ったの?」
私は、言う。
「それこそ馬鹿じゃないの。彼女のことが好きなら彼女の事を考えなさいよ。私たちに復讐したい気持ちは、彼女のじゃないわ。あんた自身の気持ちよ。二人に復讐したらミリーナが喜ぶ。そうしたらもしかしたら彼女は、俺のことを認めてくれる。そうとでも思った?うぬぼれないでよ」
「おまえに何がわかる!俺は、ただの付き人だ!いくらミリーナのこと思っていたってどうにもならないんだ!」
「私もメタリオム家の使用人よ」
「え・・・?」
二人は、私の言葉に驚く。
「何?私がどこかのお嬢様とでも思ったわけ?全然違うわよ。ただ私の場合は、メタリオム家の人達が私達のこと、家族のように扱ってくれてることよ。まぁ、ミリーナの家族があんたたちの事どう扱ったのは、わからないけど、好きだと言う気持ちがあれば使用人とか、お嬢様とかそう言うのって関係ないんじゃない?」
私は、チラッとゼロスの方を見る。彼は、それを見て微笑む。
「あんたもミリーナの事思っているんだったら復讐なんて考えないで、彼女の力になるのがあたりまえなんじゃない?」
「・・・・・・・・・」
「ルーク・・・警察に行きましょう・・・・私待っているから・・・・」
ルークは、ミリーナの言葉にうなずく。
「あら、警察?なんの事?」
私は、とぼけたように言う。二人は、私を見上げる。
「だってあれは、事故じゃない。ねぇ、みんな」
「そうですよ。あとでクリスタルは、窓の近くにあったから男子がふざけあっていた時に落としたって聞きましたし」
アメリアが言う。
「あぁ、それにあの木刀で襲ったやつ、ありゃ、変質者だ」
ガウリィもアメリアに続けて言う。
ゼルは、ただ苦笑するだけだった。
「そーゆーこと。ね、ゼロス?」
「ですね」
「リナさん・・・ゼロスさん・・・」
「あっ、そうそう」
私は、そう言って二人に近づく。
パン!パン!
二人は、驚いて頬を押さえる。
私は、ニッと笑う。
「あぁ、すっきりした。さぁ、みんな帰ろう。おなかすいちゃった」
「そうですね。帰りにアイスクリームでも食べに寄りましょうか?」
アメリアが言う。
「おっ、いいな。おれ、ジャンボパフェ!」
「もう夏は、終わったのに、おまえらそんなの食べて風邪ひくぞ」
ゼルがあきれて言う。
そして私たちは、倉庫をでる。
ゼロスは、呆然としてるルークとミリーナにふりむく。
「覚えていてくださいよ。今回は、リナさんがお二人を見逃したのですから僕は、何もいいませんが。僕は、まだリナさんの顔に傷をつけたのを許したわけではありませんから・・・」
彼は、そう言って私達のあとを追う。
「ゼロス、二人になんて言ったの?」
私は、彼にたずねる。
「いいえ、なんでもありません」
「あっ、そう。じゃぁ、とりあえず、一件落着って事で!」
今夜からゆっくりねむるぞぉ!!!

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10220〜エピローグ〜理奈 5/28-12:54
記事番号10219へのコメント

〜エピローグ〜

「リナさん・・・・リナさん・・・・」
うにゅ・・?
呼ばれ、私は、目をこする。
「すみません、お昼ねの邪魔をしてしまって」
顔をあげると、そこにゼロスがいる。
「あっ・・・ううん・・・」
私は、起きあがり、伸びをする。
「すっごくいい天気だったから」
いつもの緑の庭に私は、いた。
あの事件から一週間。またもとの平和な学園生活にもどっていた。
「でも、もう涼しくなってきましたし」
「だいじょうぶよ」
私は、そう言ったが。
くしゅん・・・
「ほら」
ゼロスは、持ってきてくれた上着を私に着せ、私を後ろから抱きしめるように座る。
「ふふ、あったかぁい」
「リナさんもあったかいですよ」
彼は、そう言って私をやさしくだきしめる。
「・・・・もう一週間たつのね」
「そうですね」
彼は、私の頬に指をすべらす。
「もうよくなってるみたいですね」
「うん。傷もきえたし」
私は、首を横にする。そしてゼロスは、その頬に口付けする。
「考えてみればもしかしたら私本当に殺されてたかもしれないんだよね。ゾットするわ」
「そんなことは、させませんよ。リナさんのことは、ぼくの命にかえても守りますから」
そして唇を滑らせ、私の首筋にキスをする。
「ありがとう・・・」
さぁ〜・・・と、草が波打つ。
「私がここへ帰ってきてもう数ヶ月たつのね。その間にいろんなことあったね」
「そうですね」
「ねぇ、ゼロス。もうフィリアや、ミリーナみたいな厄介な人、周りにいないよね」
ゼロスは、それを聞いて苦笑する。
「と、思いますよ」
「もうやだからね。これじゃ、命が幾つあったってたらないわ」
「言ったでしょう。その時は、ぼくがお守りします」
それを聞いて私は、微笑む。
「ずっと・・・ずっと私を守ってね・・・・」
「・・・はい・・・」
そして私たちは、そっと唇を重ねる。
二人で交わしたやくそく。
それを祝福するかのようにやさしい風は、吹く。

緩やかに時は、過ぎて行く。だが変わらない私たちの気持ち。ずっと
この草原の上で生きつづける想い。いつまでもいつまでも
青く、波打つ、この緑の海の上で・・・・・・・・・・・・・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ノーコメント・・・と言いたいところだけど・・・・・。
最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。でも書き終えて反省点がいいっぱい。私って本当、日本語下手だわ。表現力もないし。話しは、まとまってないし。こんなので楽しんでいただいた方いたのかしら。
最初で言ったとおり、ミリーナ本当に別人だわ。あぁ、ミリーナファンの皆様、そしてルークファンの皆様。ほんとうにすみません。あっ、石投げないで・・・。
でもあまぁいゼロスとリナちゃん、書けて満足です。
感想、よろしければ聞かせてください。駄目だしも歓迎します。本当に読んでくださってありがとうございます。

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10278をうっ!続編ですね!?高砂 時緒 E-mail URL5/31-23:56
記事番号10220へのコメント

こんにちは、高砂時緒です。
『緑の海〜やさしい風に吹かれて〜』を読ませていただきました。
それでは感想です☆

>「そんなことは、させませんよ。リナさんのことは、ぼくの命にかえても守りますから」
 ええっ!ぜひとも守ってあげてくださいっ!
 でもゼロスさんの場合、その相手に対する報復がコワすぎる気が……(^^;
 リナちゃんのほっぺたに傷が付いたのでもあんなに怒っていましたし。

>緩やかに時は、過ぎて行く。だが変わらない私たちの気持ち。ずっと
>この草原の上で生きつづける想い。いつまでもいつまでも
>青く、波打つ、この緑の海の上で・・・・・・・・・・・・・・・
 わたしが初めてネットで拝見したゼロリナ小説は、理奈さんの『緑の海』だったので、この続編を書かれると聞いたときは本当に嬉しかったです。
 ゼロスさんとリナちゃんは前作より仲が良い……というか甘々カップルでしたし(*^^*)
 最後の犯人を追い詰めるシーンとその後のところも好きです♪
 
 あと、某閲覧室に投稿された『それはまるで、夢の中・・・』の別バージョン(?)も読ませていただきました。
 詳しい感想は省かせていただきますが(^^;、あちらの話も良かったです。
 あそこでああなって最終話に繋がっていくんですね。

 えと、かなり本っ気で中身のない感想になってしまいましたが(汗)この辺で失礼いたします。
 すばらしいお話を読ませていただいたこの感謝の気持ちだけでも伝わると嬉しいのですが……。
 それでは、これからもお体に気をつけて頑張ってください。