◆-ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:えれな(1/17-05:54)No.836
 ┣━あとがき(いいわけ)-投稿者:えれな(1/17-07:34)No.844
 ┣┳Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:ろぼろふすー(1/17-13:36)No.849
 ┃┗━Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:えれな(1/18-00:31)No.880
 ┣┳Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:松原ぼたん(1/17-15:40)No.851
 ┃┗━Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:えれな(1/18-00:35)No.882
 ┣┳ぜ〜んぶ読みました!-投稿者:むつみ(1/18-00:43)No.884
 ┃┗━Re:ぜ〜んぶ読みました!-投稿者:えれな(1/18-01:04)No.886
 ┣┳Re:ここは正義館1〜3の感想です♪-投稿者:九尾(1/18-07:07)No.891
 ┃┗━Re:ここは正義館1〜3の感想です♪-投稿者:えれな(1/19-01:08)No.938
 ┣┳Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:御茶らちゃ(1/20-14:38)No.971
 ┃┗━Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)-投稿者:えれな(1/20-15:37)No.973
 ┣┳お願いです!-投稿者:KK(1/30-04:10)No.1151
 ┃┗━ごめんなさい。過去記事というものがありました(汗)-投稿者:おばかKK(1/30-04:43)No.1152
 ┗━全部読みました!(^^;-投稿者:KK(1/30-06:01)No.1153


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836ここは正義館(3.こころの迷宮)えれな E-mail 1/17-05:54


ちょっと時間が空きましたので、新しいツリーでいきますね。
では、ストーカー編、完結です。


ここは正義館(3.こころの迷宮)


「なっ・・・どうゆうことだ?」
リナの視線の先には、ゼロスの姿があった。
「ゼロスがイッソンってこと?」
みんな、リナとゼロスに注目する。
しばらく、見つめあった後に、リナが口を開く。
「いい加減、茶番はおわりにしてくれない?ゼロス。いえ、イッソン。」
言われてゼロスは、おもしろそうにリナを見て、
「何を言ってるんです。リナさん。さっきイッソンは電話のむこうにいたんです
よ。その時僕はここにいた。つじつまがあわないと思いますけど?」
しかし、リナは余裕の表情で、
「つじつまは合うわ。この家全体があんたの幻覚(イリュージョン)だとすれば、
ね。イッソンはプールでガウリイの幻覚(イリュージョン)をあたしにかけたけ
ど、声だけでなく、光の剣まで本物そっくりだった。そこまでの腕をイッソンが
持ってるなら、さっきの電話の工作くらいは簡単にやってのけるでしょう。あんた
のその姿も幻覚(イリュージョン)なんでしょ?」
すると、ゼロスの姿はみるみるうちに歪んで、ひらべったい顔の大男に変わった。
「イッソン!!」
ミリーナが驚愕の声をあげる。
正体がばれたというのに、余裕の笑みを浮かべてイッソンは言う。
「いつ、気づいたんだい?」
「最初におかしいなって思ったのは、ゼロスがノート・パソコン取り出した時。
前にゼロスはメカ音痴だって言ってたのに、変だなって思ったけど、あの時は必死
だったから、たいして気にも留めなかったわ。」
「それで、いつ確信したの?」
イッソンは興味深そうに聞く。他のみんなもリナの話に耳をかたむける。
「確信したのはさっきの電話。他の人には、みんな指示があったのにゼロスのこと
には全く触れなかった。そして、戦闘機は一台しかないっていうセリフ。どう考え
たって、イッソンは戦闘機のことなんて知りようがないし、だとすれば、犯人はこ
の中の誰かってことになるわ。それで、極めつけは、なんでゼロスは直前になっ
て、冷蔵庫なんて思い付いたか、よ。はっきり言って、普通あんなパニックの状態
で思い付くわけないわ。そうすれば答えはひとつ。もとから、知ってたのよ。
あんたはあたし達に電話をどうしても取ってもらわなければならなかった。もし、
取らなければ、爆弾なんて嘘だってばれてしまうから。ちがう?」
「ちょっと待てよ。なんで爆弾が嘘だってわかるんだよ。それだけじゃわからない
だろ。そこまでは。」
ルークが面白くなさそうに言うと、リナは平然と、
「もし、ここで爆発したら、自分も巻き添えになるじゃない。」
「あ・・・そうか。そうだよな。考えてみれば、そもそもイッソンはリナに惚れて
るんだから、リナを殺すようなことするわけはないしな。だいたい、あんな稚拙な
文しか書けない馬鹿に時限爆弾なんて造れるわけないよな・・・なんでこんな簡単
なことに今まで気づかなかったのか・・・・」
ゼルガディスは、沈痛な顔で呟いた。
「他にもおかしな点はあったわ。まず、日曜日なんてめったにいないゼロスがい
たっても変だし、やたらと無口だったしね。それに電話渡した時、『リナ』って呼
んだわよね。ゼロスはあたしのこと『リナさん』って呼ぶのよ。悪いけど。」
イッソンは言われて、ふてぶてしく笑いながら、
「そうだね。あの時は失敗した、と思ったよ。でも、まさかこんなにうまく引っか
かってくれるとは思わなかったよ。こんな穴だらけの計画に、特待生の君たちが
ね。僕が無口だったのは、あんまり喋ってボロだしちゃまずいってのもあったけ
ど、笑いをこらえるのに必死だったんだよ。」
完全に開き直っているのか、おかしそうに笑い出す。
その姿に一同は殺意を湧かせる。
「貴様、笑ってられるのも今のうちだけだ。俺達は容赦しない。勝てると思うな。
行くぞ。みんな。」
ゼルガディスの一言にみんな頷いて、呪文を唱え、剣を抜く。
「そうこなくっちゃつまらないよ、ね。勝てると思うなはこっちのセリフだよ。君
たちは解ってないね。ここは、僕の幻覚(イリュージョン)の中なんだよ。」
イッソンは、うれしそうに言うと、指をぱちんと鳴らす。
その瞬間。
あたりは真っ白い空間につつまれる。
「な、なんだ・・・・っ!?」
「いってらっしゃい。お好きなところへ。」
その言葉を聞きながら、空間のうねりの中に、一同はそれぞれ引込まれていっ
た。





ガウリイは真っ白な教会の中にいた。
教会の中には、一人の少女がいる。
少女は、祭壇にひざまづいて、涙を流して祈っている。
ガウリイは映画を見ているようにその光景を眺めていた。
少女はふらりと立ち上がってガウリイの方を振り返る。
涙で濡れたその顔には、哀しみとも怒りともつかぬ表情が浮かんでいる。
少女は静かに短剣を手に取る。
ガウリイはその場から動けない。体が動かない。
少女は手にした短剣を静かに首筋に運ぶ。
「さよなら・・・・」
少女は微笑み、そして、あたりには美しいほど鮮やかな血しぶきが上がる。
くたりと横たわる少女の身体。
真っ白な教会に、赤い花が咲き乱れているようである。
ガウリイは、ただ黙ってその光景を見つめていた。
その瞳には、なんの感情もない。
あるのは、ただ静寂のみ。
それは、見慣れた光景だった。
なんどもなんども夢に見た光景。わすれられない記憶。
ガウリイは、その光景に背を向けて歩き出す。
しかし、その先には、また白い教会と少女の姿。
さっきから、何度も同じ事を繰り返している。どこに行っても白い教会と少女。
気が狂う。
こんなもの、もう見たくない。
おびただしく流れる血が、白い床を染める。
ガウリイはそっと少女の身体を抱き起こす。少女の身体はもう冷たかった。
ふいにこみあげてくる狂おしい感情がガウリイを支配する。
これは、罠だ。幻だ。
感情を乱されてはいけない。わかっているのに。
ガウリイは冷たくなった少女の身体を静かに床におろし、ふらふらと歩き出す。
その顔は、ぞっとするくらい青ざめていた。





「氷の矢(フリーズ・アロー)!!」
「にゃわわわわわわわわわわわっ!!・・・って、なんでこんなところにいるんで
すか、あなたがああああああっ!!」
「お―――――――ほっほっほっほっほっほっほっ!!あまいわよ。アメリア。こ
の白蛇のナーガのすることに、いちいち理由があるとでも?」
「そうじゃなくってえ!!・・・はっ!これもイッソンの陰謀ね!!いいでしょ
う、姉さん!例え、相手が身内でも、悪の手先になったあなたの行いを見逃すわけ
にはいきません!!」
「ふっ。おもしろいじゃない。きなさい。あんたの腕前みせてもらうわ!!」
稲妻をバックに激しくにらみあうアメリアとナーガ。
ふたりは同時に呪文を完成させる。
「正義の鉄槌!!火炎球(ファイヤー・ボール)!!」
「あまいわね!!氷結弾(フリーズ・ブリッド)!!」
ぱきいいいいん。
相互干渉して消滅する二つの魔法。
「な・・・なんで?」
「そんなことも知らないの?まだまだね。修行が足りないわよ、アメリア。いい?
火炎球(ファイヤー・ボール)と氷結弾(フリーズ・ブリッド)は相互干渉してああ
なるのよ。覚えときなさい。」
「はーい。」
言って条件反射でメモを取り出すアメリア。
「ええっと・・火炎球(ファイヤー・ボール)と氷結弾(フリーズ・ブリッド)
は・・・・はっ!!こんなことしてる場合じゃ・・」
「氷の矢(フリーズ・アロー)!!」
ナーガの不意打ちを、気合でなんとかかわすアメリア。
しかし、かわしそこねた一つの氷の矢がアメリアの腕をかすめる。
「人の習慣につけこむなんて、なんて卑怯な!!いくら家族でも許せません!!」
「ふっ。自分の愚かさを棚にあげて、卑怯者よばわりとは聞いてあきれるわね。
情けないわよ。アメリア!そんなことで、この私、白蛇のナー・・・」
「氷の矢(フリーズ・アロー)!!」
「きゃああああああっ。危ないじゃない。何するのよ!ひとの習慣につけこむなん
て最低よ!!」
「なにを言ってるんです!やられたらやりかえす。これも正義です!!さあ、そろ
そろ本気でいきますよ。」
「ふっ。妹の分際でこの白蛇のナーガに勝てると思ってんの!?」
「勝てます!!わたしの血潮に熱い正義の力が流れているかぎり、わたしのこころ
はくじけないわ!!行くわよ!姉さん!」

かくて。
不毛な兄弟喧嘩はえんえんと続く。





「いやああああああああっ!!」
ミリーナの叫び声があたりを支配する。
「いやっ!!いやっ!!いやああああっ!!」
「落ち着け!!ミリーナ!!ミリーナ!!あれは幻覚(イリュージョン)だ!!ミ
リーナ!!」
ルークはミリーナの肩をがくがく揺さぶる。
イッソンに見せられた幻覚(イリュージョン)によって、ミリーナのこころは完全
に絶望と恐怖に覆われていた。
ある暗い小さな部屋。部屋の中には、無数のクリスタル筒。数人の魔道士の男達。
そして、その部屋の扉の前には、まだ幼さがのこるミリーナの姿。
その肩が小さく震えている。
その幼いミリーナの末路は誰よりもよくミリーナ自身が知っている。
その部屋に入っちゃだめ。その部屋に入らないで。
叫ぶミリーナをよそに、幼いミリーナはドアを開けた。
そして、ミリーナは過去の映像を前にして、狂ったように叫びだしたのだった。
「ミリーナ!!俺を見ろ!!しっかりしろ!!」
パン!
ルークの平手打ちに我にかえるミリーナ。
「・・あ・・・?ル、・・ルーク・・・?」
「今のは幻だ。現実じゃない。ここは、日本だ。大阪で、俺達はイッソンの罠には
まってるんだよ。だから、大丈夫だ。大丈夫だから、な。」
ルークはぎゅっとミリーナを抱きしめる。
ミリーナはがくがく震えながら首を振る。
「違う・・あれは・・現実・・まぼろし・・?あ・・ああっ!!いや、いやっ!!
はなして!!」
ミリーナはルークを突き飛ばして走り出す。
「だめだ!!ミリーナ!!はぐれちまう!!行くな!!」
あんな状態のミリーナを一人にさせたらどうなるか。
想像しただけで、背中に寒いものが走る。
ルークは夢中でミリーナを追いかけていた。





しゃらん。
「おい・・・・」
しゃらん。
「あんた、また出てくる気かよ・・・・」
ゼルガディスはため息を吐く。遠くから聞こえてくる錫状の音は徐々に近づいてき
ている。
しゃらん。
さっきから、数えるのも馬鹿らしいくらいの戦いを繰り返している。
霧の向うから、赤いシルエットがふわりと浮かぶ。
「もう、いいかげん飽きないか?」
「いいえ。今回の私はさきほどとは違います。覚えていますか?ゼルガディス。あ
の遠い日の戦いを。サイラーグの街の名を。」
声は思ったよりもずっと近くでした。
だが、まだ姿が見えない。
「サイラーグ??なにを言っている?俺はそんな街は知らんぞ。だいたい、遠い日
の戦いって、俺はさっきあんたと戦ったばかりじゃないか、レゾ。」
しばらくの沈黙のあと、声は言う。
「そうですか・・あなたはまだ何も思い出してはいないようだ。いいでしょう。す
こし、お手伝いしましょう。」
急にあたりがぐらっと歪む。
そして、目の前に飛び込んでくる映像。

『もうやめろ!――あんたがあんなにも見たがっていたこの世界じゃねえか!それ
をなんで壊しちまうって言うんだよ!レゾさんよ!』
地面に這いつくばって叫んでいる自分、同じく倒れているガウリイ、光の剣で黒い
闇を吸収しているリナ。そして、魔王シャブラニグドウ。

「・・これ・・は・・・」
明らかに見た事のある映像である。
「思い出した・・・・そうだ・・・・俺は・・・俺達は・・・・」
ゼルガディスは、その映像を前に、長い間立ち尽くしていた・・・





リナは走っていた。
何がどうなっているのかは、わからない。
もう、考えたくもない。
だが、問答無用で敵は攻めてくる。考える余地も与えずに。
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
横手からの攻撃にリナは身を軽くひねってかわす。
本日三度目のアメリア。
「魔風(デイム・ウィン)!」
リナはアメリアの動きを一瞬止まらせて、そのすきに走り出す。
さっきから、なんどもこの手で敵から逃れている。
ゼルガディスは3回。ルークは2回。ミリーナは3回。ゼロスは2回、いや3回
だったか。
そんなことはどうでもいいが、みんなそろって攻撃してくるのだ。
もちろん、イッソンの罠であることは間違いないのだが、万が一、本人ということ
もあるかもしれない。操られている、という可能性もないことはないのだ。
というのも、こんな入り組んだ幻覚(イリュージョン)を使えるなんて、どうも人
間とは思えないところがあるのだ。普通、腕のいい幻覚使い(イリュージョン・マス
ター)でも、せいぜいが、3人同時に幻覚をかけるのが限度。それを、こんな大人
数に、それもここまでリアルに、しかも音つきで使えるなんて、魔族かとも思いた
くもなるものである。
その時、ふいに背中にいやな悪寒が走る。
あわててその場から飛びのくリナ。
しかし。
あつい衝撃が右足に走る。
振り返らなくても誰かはわかる。
この攻撃は・・・
「逃げられんぞ。リナ。」
ゆっくりと振り返ると、ガウリイが冷たい視線でリナを見下ろしていた。
その手に光の剣を構えながら。
ガウリイの構えには、全くスキがない。彼が普段そうであるように。
これでは、にげたくても逃げられるはずはない。
倒すしかないのだ。
これは、イッソンの罠だ。イッソンの幻覚(イリュージョン)だ。
それはわかっている。ここのいるのは、ガウリイではなくイッソンなのだ。
「あたしを殺すの?」
リナはガウリイの目をまっすぐに見つめた。
「殺しはしない。捕まえるだけだ。」
ガウリイは冷酷な顔で言った。
「捕まえてどうするのよ。」
「こうするのさ。」
ガウリイはやおらリナの両手首をつかんで、そのままリナを押し倒す。
「・・・!!」
冗談ではない。こんなガウリイ、もといガウリイの姿したイッソンなんかにどーに
かされるくらいなら、それこそ死んだ方がマシである。
リナはじたばた暴れるが、ガウリイの身体は一向に動かない。
「いたっ!!」
リナはむりやり髪の毛をひっぱられて、悲鳴をあげる。
「ふふふふ。もっと痛いって言えよ。さあ、痛いって叫んでみろよ。」
ガウリイ狂喜の笑みを浮かべながら、リナの髪をぐいぐいひっぱり頭をむりやり
床に押し付ける。
こいつはぜったいにガウリイじゃない。ガウリイは絶対にこんなことはしない。
ガウリイの姿でこんなことをするのは許せない。
「さあ、悲鳴をあげろ!!叫べよ!!泣き叫べ!!それは我らの力になる!!」
リナの髪を、顔を、身体を、わしづかみにして、ガウリイ、いや、イッソンは叫
ぶ。
痛みでうめき声をあげそうになるが、リナは歯をくいしばる。
今叫んだら全てが終わってしまう。
こんなやつなんかに、死んでも叫び声などあげない。涙など見せてたまるか。
このあたしにこんな狼藉を働いたこと、後悔させてやる!
「神滅斬(ラグナ・ブレード)!!」
リナの一撃にガウリイ、いやイッソンは信じられないものを見たかのような顔をし
て、その場に倒れこんだ。
そして、程なく跡形もなく消え去る。
それが、狂気のストーカーの最期の姿だった。





さああああああああっ。
砂が零れ落ちるような音を立てて、その家は崩れていった。
あたりには、ただ一面の野原が広がっている。
どうやら、このあたりは野原だったらしい。遠くに大阪城が見えた。
やがて、現れる見慣れた面々。
「みんな・・・!!無事だった!?」
リナは、みんなに駆け寄る。
「な、なにがどうなったの・・?」
アメリアが呟く。その姿は怪我だらけである。
「イッソンを倒したから、やつの幻覚(イリュージョン)も解けたのよ。それよ
り、アメリア。どうしたのその怪我。」
「リナさんこそ、どうしたんです?その格好。」
言われて、リナは初めて自分の姿に気がつく。
全身はだけていて、髪はぐちゃぐちゃ。あちこちに青あざができている。
そして、右足には血が滴り落ちている。
あわてて、身を取り繕うリナ。
しかし、誰もリナのことを見てはいなかった。
ルークは青ざめたまま、気を失っているミリーナを抱きかかえ呆然としている。
ゼルガディスは、一同を眺めてはいるが、その目は遠いところを見ている。
ガウリイは、顔面蒼白の悲愴な顔で、ぼんやりと空を見ている。
その異常な光景にリナは言葉を失う。
「何があったんでしょうか・・?みなさん、放心しちゃってる・・・」
比較的元気な声でアメリアはリナにぽつりと話しかける。
「さあ・・・・でも、イッソンのことだから、かなりいやな目にあったんじゃな
い?あたしも実際いやな目にあったし、あんたもそうでしょ?」
「ええ、まあ・・・でも、こんなに放心するほどのことじゃなかったですよ。」
「あんたやあたしは、物理攻撃にあってたみたいだけど、あの4人は精神攻撃に
あってたんじゃないかな・・実際、イッソンは魔族だったみたいだし。負の感情を
食べようとしてたんじゃない?そんなようなこと言ってたわよ、あいつ。」
「へー。そうだったんですか・・・」
「ま、それはおいといて、よ。ちょっと、あんたたち!!もう終わったわよ!!
しっかりしなさいよ!いつまでぼーっっとしてんのよ!」
リナはルークやゼルガディスをゆさゆさ揺さぶる。
「あ・・・・?わ、悪い。ちょっと、衝撃的なことがあってな・・・現実に順応す
るのに時間がかかってたんだ・・・」
ゼルガディスが疲れた声で呟く。
「なーに、情けない事言ってんのよ。あたしなんて、死ぬほどいやな目にあったっ
てのに、もうピンピンしてるわよ。男はもっと、何事があってもドカーンと大きく
構えてなきゃだめよ。」
「あんたは気丈にできてるかもしれんが、俺のミリーナは繊細のできてるんだよ。
おーい、ミリーナ。起きろ。もう大丈夫だぞ。起きないとキスするぞ(はあと)」
ルークはぱちぱちミリーナの頬をたたく。
「それだけはやめて・・・ちなみにあなたのでもないわ・・・」
ミリーナは気分悪そうに、それでもツッコミ忘れずに起き上がる。
「ちっ。起きたか。まあ、そんだけツッコミいれられたら大丈夫だな。よかった
よかった。」
二人の会話を後ろに聞きながら、リナはガウリイのところに歩み寄る。
「ガウリイ。」
ガウリイはぼーっとリナの顔を見つめる。
そして、急にリナを抱きしめる!
「なっ・・なにすんのよ、あんた・・・!!ちょっと!!」
「うわーっ!!ゼルガディスさん!ミリーナさん!ルークさん!退散しますよ!
いきなりラブラブモード突入です!!」
「おーい。番組まちがえるなよな。ここは、スレイヤーズ。そうゆうのは、月曜9時
にやってくれ。」
そんなことを言いながら、本気で去っていく4人。
ガウリイの腕は離れない。それどころか、強く抱きしめる一方である。
「ガ、ガウリイってば。ちょっと・・くるしいよ・・・」
「リナ・・・オレ・・・」
ガウリイはいきなり全体重をリナにかけてくる。思わずその場に倒れこむ二人。
この時、茂みの陰に隠れていた例の4人のこころは、
――――いけー!やっちまえー!――――
――――昼間から、いいのか?こんな展開で・・・――――
――――子供が見てたらどうするんです?――――
――――きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!――――
と、なっていたが、そんなことには全くきづかずに、ガウリイは言った。
「腹減った・・・・朝からなんにも食ってなくて・・・もうだめ・・」
リナの無言のアッパーに、ガウリイの身体は大阪の空に舞った。






「おかえりなさい。皆さん。大変でしたねえ。あ、こんなものが来てますよ。」
ゼロス(本物)は、にこやかに微笑んで、紙をちらつかせた。
は―――――っ。
長い長いため息をついて、がっくり肩を落とす6人。
あのあと。
一同は、なんと警察に囲まれて、やむなく手錠をはめられ、一晩お世話になってし
まったのだ。無駄な抵抗はやめろー!!とか言われて、まるっきし極悪大罪人扱い
である。
実際、国際軍の基地に乱入して、軍人を問答無用でなぎ倒し、戦闘機を強奪し、追
手の戦闘機を迎撃して、撃沈したのだから、立派な犯罪人なのだが。
それでも、一晩で済んだのは、リナを始めとする一同のあばれっぷり、もとい、一
同の必死の事情説明と、まだ未成年であること(のぞく2名)、そしてガウリイの
知り合いの軍のお偉いさんの口利きのおかげであった。
もっとも、ガウリイはかなり叩かれたが、いままでの軍での成績と人望の厚さ、
そしてなにより、誰も死亡者を出さなかった、ということでたいした罰はなかった
のだ。
そう。信じられない話であるが、ジェイクは生きていたのだ。
ガウリイ曰く、爆発する寸前ジェイクが脱出したのが見えたらしいが、どうやら
本当だったらしい。
ジェイクは危なくなると、いつも自分だけ先に脱出して、敵の機体に自分の機体を
突っ込ませて敵を落とす、という非情極まりない作戦をとるということなのだ。
「今度、ラーメンセットおごるから。」
の、ひとことでジェイクの機嫌はなおり、めでたしめでたし、である。
それは、ともかく。
「て、停学・・・・・・」
リナは、ゼロスから紙を奪って呟く。
「毎日反省文10枚ずつ、だそうですよ。ま、がんばってくださいね。」
ゼロスは、やたらと明るい口調で言いながら、ひよこ饅頭をほおばる。
「ああ、そうそう。このひよこ饅頭どこから出たか、知ってます?」
「知るわけないでしょ。んなもん。」
なかば、なげやりに言うリナ。
「あ・そ・こ」
ゼロスがウィンクして、指した手の先には。
イッソンからの例の爆弾木箱があった。
「いやあ、警察の方たちが捜査してると、爆弾がころっと割れましてね。その中に
ひよこ饅頭がぎっしり、だったんですよ。皆さんも、おひとつどうです?」
『いらんわー!!!!!!』
リナ達の叫びはみごとにハモったのだった。


なにはともあれ。
正義館のドタバタは、まだまだ続きそうである・・・


(一応)おわり。



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844あとがき(いいわけ)えれな E-mail 1/17-07:34
記事番号836へのコメント


ツリー一つじゃさみしい・・ってことで。あとがきもどき。
いいわけその1.

なんで、一話のガウリイとリナがあんなにらぶらぶだったか?
と、いーますと。
あれは、発熱のためなんだああああああ!!!
と、ゆーわけです。
リナが妙に、泣き虫だったのも、ガウリイが妙にやさしかったのも、
まあ、病気だから・・・です。
本来のリナは、あんなくらいじゃ泣かないよね。



いいわけその2.

ゼロスファンの人ごめんなさーい。このストーカー編では、ぜんぜん活躍させてやれません
でしたー。
ていうか、本来はこの話、ちゃんとニューヨークとかヨーロッパまで、回る予定だったんで
すが、途中で行き詰まっちゃったので、あーゆーことになったんですね。(自爆)
というわけで、かなり苦しいこじつけですが、まーああなりましたー。
ちなみに、イッソンが出した、ニューヨークのある建物とは、ツインビルにする予定でし
た。織田信長が死んだ年は1582年です。いちごぱんつ、と覚えましょう。(核爆)

いいわけその3.

あんな思わせぶりな終わり方あるかああああっとお怒りの方々・・・
すいません・・・
でも、つづき考えてあるんで、気長にお付き合いくださったら、謎はすべてとけます。
たぶん、次回はちゃんと正義館を舞台にした話になるはずです。
この作品、とちゅうでタイトル「どこが正義館」にしてやろーかと思ったんですけど、
やめました・・・

でも、最期のほうはやっぱり「どこが正義館」になるかもしれません・・(まじで)

ガウリイの少女とはなんぞや?
ミリーナの過去にはなにがあった?
ゼルガディスだけしか記憶がないのか?

まあ、このへんのことを書くと、どこが正義館になるでしょう。(笑)

ではでは。長い作品なのに読んでくださった方。ほんとーにありがとうございます。
よければ、これからもお付き合いくださいませ。

えれなでした。


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849Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)ろぼろふすー 1/17-13:36
記事番号836へのコメント
ミリーなのかこ・・・・・・・・・半分魔ぞくかしてキメラとか?(笑)
ではでは、期待していいですか?さよならつ!!
しぇいしぇい!!!

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880Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)えれな E-mail 1/18-00:31
記事番号849へのコメント
ろぼろふすーさん感想ありがとうございました。
>ミリーなのかこ・・・・・・・・・半分魔ぞくかしてキメラとか?(笑)

のーこめんと、です。(笑)


>ではでは、期待していいですか?さよならつ!!


きながに読んでやってくださーい。ありがとう。

ではでは。
えれなでした。

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851Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)松原ぼたん E-mail 1/17-15:40
記事番号836へのコメント
 おもしろかったです。

 ・・・・・うーん、言われて見ればそうだったのか(爆)。
 しかし新たな疑問がぼっこぼこ。続き楽しみにしてますからね。
 ナーガとアメリアのやりとりはちょっと笑ったけど。

 続きを楽しみにしてます。頑張ってください。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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882Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)えれな E-mail 1/18-00:35
記事番号851へのコメント
松原ぼたんさんいつも感想ありがとうございますう。
> ・・・・・うーん、言われて見ればそうだったのか(爆)。
> しかし新たな疑問がぼっこぼこ。続き楽しみにしてますからね。
> ナーガとアメリアのやりとりはちょっと笑ったけど。

今回は、他のみんなは、シリアスだったので。
息抜きにナーガを出しちゃいました。
息抜きに出されるナーガって一体・・

>
> 続きを楽しみにしてます。頑張ってください。
> ではまた、ご縁がありましたなら。

がんばりまーす。ではでは。
えれなでした。

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884ぜ〜んぶ読みました!むつみ E-mail 1/18-00:43
記事番号836へのコメント
 えれなさん。読ませていただきました。(しずんだんじゃないかと、焦りました)
一時間近くかかりました。凄く面白かったです。
 こんなにスリルとサスペンスとギャグにあふれた作品は初めてです。
怪しいストーカーが変にリアルだと思ったら、・・・実在するんですか・・・
事実は小説より奇なり!怖い世の中だこと。
 


 各人の過去(?)の話が興味深いです。もしかして、この「正義館」自体・・・
楽しみだなあ。
 ルークとミリーナがいいなあ。私もこの二人、好きです。ルーク君、顔のアイロンの
痕は消えたかい?

 それではまた。

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886Re:ぜ〜んぶ読みました!えれな E-mail 1/18-01:04
記事番号884へのコメント
むつみさん、こんな長いの読んでくださってありがとうがざいます。
>一時間近くかかりました。凄く面白かったです。
いちじかん・・・ごめんなさい、ごめんなさい。
もともと、この話は投稿に向いてないのに無理に載せちゃったから。
ちなみに、打ち込むのも時間がかかります・・・
九尾さんとこに、投稿したかったんだけど、こんな長いの九尾さんに悪い・・
てなことで、ここに載せたのですが、ここにも悪いです・・・はい。


> こんなにスリルとサスペンスとギャグにあふれた作品は初めてです。
>怪しいストーカーが変にリアルだと思ったら、・・・実在するんですか・・・
>事実は小説より奇なり!怖い世の中だこと。
> 
夜道は気をつけましょう。変な人多いです。まじで。
変な知り合いが多いえれなもどーかと思うが。
>
> ルークとミリーナがいいなあ。私もこの二人、好きです。ルーク君、顔のアイロンの
>痕は消えたかい?
>
あのあと、ミリーナがちゃんと治癒(リカバリィ)かけました。
やだ、あっつあつ。

ではでは。次回はもーちょっとライトな話になるでしょう。
ま、ギャグ月間ののりでいくかも。
そしてそのあと、怒涛の・・・・・・
ま、このへんはまだ、ひみつってことで。

ではでは。読んでくれてありがとうです。
えれなでした。

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891Re:ここは正義館1〜3の感想です♪九尾 E-mail URL1/18-07:07
記事番号836へのコメント
えれなさんへ

 1〜3一気に拝見させて頂きました。
オリジナルの設定で、ここまでスケールの大きな話しを書ききれる文章力、
素晴らしいです。

 メチャかっこいいガウリィと勝ち気なリナちゃんのラヴラヴぶりもさることながら、
ルーク・ミリーナ!!好きなカップリングですので登場させて頂けて嬉しかったです。
ミリーナ、可憐・・・(はぁと)
ガウリナの私ですが、このお話ではミリーナの過去が気になって仕方がありません。
続編では、ぜひ解明させて下さいね♪

では。

P.S.この作品のタイトル、やはり「ここはグリーンウッド」のパロディでしょうか?
    なつかしい(^^)

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938Re:ここは正義館1〜3の感想です♪えれな E-mail 1/19-01:08
記事番号891へのコメント
九尾さんよんでくださってありがとうございますー!
>オリジナルの設定で、ここまでスケールの大きな話しを書ききれる文章力、
>素晴らしいです。
>
そんなに言ってもらえて恐縮ですう。
でもまだまだ未熟者ですよ。他の方々に比べれば。

>ガウリナの私ですが、このお話ではミリーナの過去が気になって仕方がありません。
>続編では、ぜひ解明させて下さいね♪
>
気長に読んでくだされば、なぞはとけますう。

>
>P.S.この作品のタイトル、やはり「ここはグリーンウッド」のパロディでしょうか?
>    なつかしい(^^)

おおおおおっ!!さすが九尾さん!!そのとーりなのだ!!
つっこみ来ないからあえて言いませんでしたけど、えれなは寮ものが好きなのだ。
忍先輩・・好きだったなあ・・

ではでは。えれなでした。

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971Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)御茶らちゃ E-mail 1/20-14:38
記事番号836へのコメント
こんにちわっ。
感想遅れてスミマセン。
私の学校のスキ−生活をうらんでください。(爆)

>「他にもおかしな点はあったわ。まず、日曜日なんてめったにいないゼロスがい
>たっても変だし、やたらと無口だったしね。それに電話渡した時、『リナ』って呼
>んだわよね。ゼロスはあたしのこと『リナさん』って呼ぶのよ。悪いけど。」
確かに、読んでるとき気づきました。
「あれっ?」って。
そういうこととは・・・・間違える奴も間違える奴だけどね・・・

>「ふっ。妹の分際でこの白蛇のナーガに勝てると思ってんの!?」
>「勝てます!!わたしの血潮に熱い正義の力が流れているかぎり、わたしのこころ
>はくじけないわ!!行くわよ!姉さん!」
それは・・・けして知ってはならないこと・・・(爆)ですか?
やっぱりこの二人って姉妹なんでしょうかねえ・・・

>「おーい。番組まちがえるなよな。ここは、スレイヤーズ。そうゆうのは、月曜9時
>にやってくれ。」
あ、ラブジェネみてました?
よかったですよね−。
欲を言うともうちょっと長かった方がよかった気が・・・・って、ちゃうちゃう。(笑)

これで終わり、ということは次回作・・・期待してますんで。
それでは。

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973Re:ここは正義館(3.こころの迷宮)えれな E-mail 1/20-15:37
記事番号971へのコメント
御茶らちゃさん感想ありがとうございます。

>確かに、読んでるとき気づきました。
>「あれっ?」って。

ゼロスファンの方なら気づくだろーと思ってました。見落としがちなんですけど
やりますね・・・

>それは・・・けして知ってはならないこと・・・(爆)ですか?
>やっぱりこの二人って姉妹なんでしょうかねえ・・・

確定です。(きっぱり)
ナーガはお母さん(フィルさんの奥さん)がお家騒動に巻き込まれて
亡くなったので、あーなったらしいです。
でも、これは絶対でてこない裏設定らしいですけど、作者が断言してました。

>
>>「おーい。番組まちがえるなよな。ここは、スレイヤーズ。そうゆうのは、月曜9時
>>にやってくれ。」
>あ、ラブジェネみてました?

見てました。でも、ロンバケのがえれなはよかったです。

次回は、テストが終わってからになるので、時間が空くでしょうけど、
また読んでくださったら、光栄です。
ではでは。えれなでした。

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1151お願いです!KK E-mail 1/30-04:10
記事番号836へのコメント
初めまして。読ませていただきました。

とっても文章お上手ですね!驚きました。
しかもこんなにオリジナルな設定なのに、ちゃんとみんなスレキャラしてますし。

それで、お願いなんですが、お話1〜3、もう一度全部アップしていただけませんで
しょうか?
私がここに初めてきたときには、もうツリーが消えてしまっていて、3しか読めなかっ
たんです(;;)
ガウリナ推奨(正確にいえばリナがもててる話ならなんでもオッケー(鬼))な私に
は、このお話非常に魅力的なんです!それなのに3しか読めないなんて・・・

もしよろしければ、ぜひお願いします。

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1152ごめんなさい。過去記事というものがありました(汗)おばかKK E-mail 1/30-04:43
記事番号1151へのコメント
すいません!私の早とちりでした・・・
過去記事という、便利なものがあったのですね。
ごめんなさい。
では、これから読んできまーす(^^;

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1153全部読みました!(^^;KK E-mail 1/30-06:01
記事番号836へのコメント
全部読みました〜。とっても面白かったです。
文章お上手ですね・・・その文才をちょっとわけていただきたいです・・・(;;)

ルークとミリーナがでてくる投稿小説って、珍しいですよね。
二人ともすっごくそれらしくって、上手に特徴をとらえてるなぁとビックリしました。

ガウリィの過去がすっさまじく気になります。
続編楽しみにしてます!