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    タイトル : ドラスレ! 23
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2012年5月19日21時24分25秒

 




第二十三話





「奢るな! お前が時間の裏側に封印されていた間、人間も進歩している!
 旧時代の魔王など、このゾルフが片付けてくれる!」


事態をさっぱり理解していないらしいゾルフが、果敢にも――
いや、この場合は無謀にも俺たちより一歩前に出て叫んだ。
思わず溜息をつこうとした俺。
だが、その後に続いた言葉に息を呑んだ。


「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの――」


――ドラグ・スレイブだと!?

黒魔術の中では最強とされる攻撃魔術。
対ドラゴン用として造られた魔法で、小さな城くらいならば
軽く消し去ることが出来る。
まさかこのゾルフがドラグ・スレイブを使えるとは……。
言っちゃ悪いが、何でゾルフ程度の男がゼルガディスの直属を
やっているのか不思議だったが、ようやく謎が解けたとゆーもんだ。

しかし――ドラグ・スレイブでは奴を倒すことは出来ない。


「やめろ! ムダだ!」



ドゴゴリュッ!



俺の渾身の蹴りがゾルフの背中に決まり、地面にめり込む。
危ない危ない……。
あと少し遅かったら、結界が強まって介入出来なくなった所だ。


「ほう……」

「あ……」


魔王は関心したように頷く。
唖然としていたゼルガディスは目を見開いた。

気づいたのだ、俺が何故止めたのか。


ドラグ・スレイブは黒魔術であり、しかも力の源となっているのは
今目の前にいる“赤眼の魔王”なのだ。
お前を殺すのを手伝ってくれ、なんて、ナンセンスすぎる。


「ロディマス、ゾルフを連れて逃げなさい!」

「わ、分かりました」


自分では手が出せないことを悟ったのだろう。
ゾルフはゼルガディスの言葉に素直に従い、気絶したゾルフを
しっかりと背負って前線を離脱する。

それが戦闘の始まりだと、魔王も受け取った。

手にした杖でトンと軽く地面を突く。
すると、無数の蛇となった木々の根が這い出てきた。


「……意外とつまんない芸だな。ほい、ゼルガディス」

「ダグ・ハウト!!」


ゼルガディスは瞬時に俺の意図を汲み取り、地面を揺らす。
ダグ・ハウトで、木の根が這い回る地面にズレを生じさせて
断ち切ったのだ。

俺は片手に光の球を生み出し、魔王に向かって放る。
周りを不規則に飛び回っている光球を気にする様子もなく、
魔王は落ち着いた声で言う。


「アレンジされているのか。だがファイアー・ボールなど、
 直撃されたとて痛くもかゆくもないぞ」

「ブレイク!」

「なにっ!」


魔王が杖を振りかざすと同時に、俺は指を鳴らす。
光球が分裂し、螺旋を描いて魔王の周りに降り注ぐ。
さしもの魔王も予想していなかったらしく、俺の攻撃をまともに受けた。
炎と砂塵とが一瞬その姿を覆い隠す。


「ガウリイ、お前の番だぞ!」

「ええっ!」


ガウリイお嬢ちゃんが光の剣を携え、走る。


「滅びなさい!魔王!」


“赤眼の魔王”は小さく笑った。


「光の剣――か。まさかこんな所にあるとは思ってもいなかったが、
 衰えたりとはいえ、この魔王に通用すると思わないでいただきたい。
 さすがに少し熱いがな……」


魔王はあろうことか、光の剣を素手でにぎりしめていた。
ある程度の魔族なら一撃で滅ぼせるはずの伝説の剣を、
素手で止めた上に、しかも少し熱いだけで終わらせるのか。

多少魔王の言い方に対して俺は引っかかりを感じたが、
そんなことは気にしていられない。


「剣の腕は達者のようだが……こんなものか」

「くっ――きゃああっ!」


魔王が横なぎに手を振るう。
お嬢ちゃんが吹っ飛んで、地面に叩きつけられた。


「ガウリイッ!!」

「――だ……大丈夫よ……」


どう見ても無事には見えない格好で地面に這いつくばったまま、
お嬢ちゃんは弱々しく答える。
すると俺の後ろからゼルガディスがアメリアが駆け抜け、
二人同時に叫んだ。


「「ラ・ティルト!!」」



ゴウっ!



まばゆく青い火柱が魔王を包みこむ。

ラ・ティルトは精霊魔術で最強の攻撃呪文だ。
アルトラル・サイドから相手を滅ぼす技で、生き物に対しての
攻撃力はドラグ・スレイブにも匹敵する。

それをダブルでなんて、一体いつのまにタイミングを合わせたのやら。





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