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    タイトル : ドラスレ! 18
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2011年5月30日17時09分20秒

 




第十八話





俺は目を覚ました。

眠ってからそれほど時間は経ってないようだ。
陽の傾き具合と体の回復の度合いとで、それくらいは分かる。
それに、見張りの交代に起こされたわけでもない――
俺が目を覚ましたのは、小屋を取り巻いている殺気のせいだ。
それも一人二人じゃない。
俺も十人くらいまでなら、魔道を使わなくても相手の気配だけで
人数を言い当てることが出来るが、今は出来ない。
すなわち、敵の数がそれ以上だということ。


「囲まれたよ」


あっさりとゼルガディスが言う。
別段、声を殺そうなどとはしない。
まあ、居場所が知られているのに、そんなことをしても全く無駄だからな。


「相手は誰でしょうか?」

「トロルが二、三十匹ってとこね。レゾは来ていないようだし、
 何とかなると思う」


アメリアの問いに、気楽に答えるゼルガディス。
しかし、本当に大丈夫なんだろーか。

先ほどよりはだいぶ回復したらしいゼルガディスは立ち上がり、
マントを羽織って真っ先に小屋の外へ向かう。
俺たちもすぐに後を追って外に出た。


「さあて。――決着をつけようぜ、ゼルの姐御」


聞き覚えのある声がした。
ゼルガディスの言う通り、木々の間にちらほらとトロルたちの姿が
見え隠れしている。
俺は意識して大きな声を出す。


「よう、ディルギアさん。大変だな、わざわざこんな所まで遠征とは」


俺の言葉に、一人の獣人が意外と近くの木の陰から現れた。


「名前を覚えておいてくれたとは……こいつぁ光栄だな」

「忘れるかっ! ゼルガディスから聞いたぞ、今までさんっざん
 ザコけしかけてきたのはお前だとっ! この恨み、必ずこの俺に代わって
 ゼルガディスが晴らしてくれるに違いない! さあ行け、ゼルガディス!
 世界が君を待っている! いよっ、美人っ! がんばれっ!」

「……あんた……その性格、何とかならないの……」

「なんない」


ゼルガディスがジト目でこっちを見るが、俺はきっぱりと言う。
別に好きこのんでやってるわけじゃない。
これは、あくまでも敵の気を殺ぐための言動だ。

……本当だっつーの。


「――ディルギア、貴様、この私に忠誠を誓ったのではなかったのか?」


冷たくゼルガディスが言う。
言葉の奥底に、ごりっとしたコワイものが潜む。
しかし、その言葉を獣人は鼻先で笑い飛ばした。


「俺が忠誠を誓ったのは“ゼルガディス”じゃねえ、“赤法師が創った
 狂戦士”に対してだ。貴様がレゾ様を裏切った以上、もはや
 俺にとって貴様は敵以外の何者でもないわ!」

「……ほう……」


獣人の笑い声に、すうっとゼルガディスの目が細まった。
こーゆー表情をするとこの女、いかにも“魔戦士”といった風である。


「獣人風情がこの私に勝てるとでも、思っているのではないだろうな……」

「ではその獣人風情の力、とくと見せてやる。――かかれ!」


吠えるディルギア。
武装したトロルの群れが、一気に間合いを詰めてくる。

――馬鹿が。
ゼルガディスは小さな笑みを浮かべながら、右手を高々と差し上げた。
目には見えぬ何かを右の掌に持ったまま、それを勢いよく大地へと
叩きつけるような動き。


「ダグ・ハウト!」


げげっ!

すぐに察したアメリア、そして俺は剣を構えていたガウリイお嬢ちゃんの
手を引っ掴んで、慌ててゼルガディスの傍に駆け寄る。
水面のごとく大地が脈動し、流れ、激しく波打つ。


「ハッハァ!」


ゼルガディスはパニックに陥るトロルたちを見て狂気の笑みを浮かべながら、
右手を再び大きく振り上げた。


「大地よ! 我が意に従え!」


岩が、土が、ゼルガディスの呼びかけに応える。
大地はまたたく間に無数の錐と化し、トロルの群れを真下から突き上げ、
貫き―― 一瞬の勝負だった。

多くのトロルが錐に貫かれる凄惨な光景だが、俺もあまり他人のことを
言えた義理もない。
『リカバリィ』の応用でトロルをしばき倒したのはつい先日のことだ。
アメリアも何か言おうとしたのだろう。
口を開くが、結局、言葉を飲み込むしかなかった。





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