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    タイトル : 白魔術都市狂想曲 117
    投稿者  : フィーナ
    投稿時間 : 2010年8月23日22時16分14秒


ヴラは不愉快そうにはき捨てた。

「てめぇら人間の都合なんぞしったこっちゃねぇ。
なんで自分勝手で傲慢なことに、俺が付き合わなければならねぇんだ」

「しかし、あなたは我らに借りがある。
人の魂と混ざり合った魔族の因子を、誰が取り除いてやったとおもっておられる。我々人間だとわすれたとはいわないでしょうな」

「誰が? 取り除いてやった?」

ヴラは鼻で笑った。

「はっ! それを驕りっていうんだ。
俺が留まったのは、安定しているこの場所に、魔族によって汚された人間の魂を浄化させるのに適しているからだ。
でなきゃ動乱の元になりかねない地に、俺が留まるわけねぇだろうが」

貴族や文官。

国のお偉いさんと思しき連中がざわめく。

「他にも俺自身が、因子ごと魂を焼き尽くすって方法があったが。
害そうとするものを消滅させるのに、俺が躊躇する理由はねぇからな」

「詭弁を!」

貴族の一人が憤ったようにさけぶ。

「詭弁だろうがなんだろうが、俺はもうここにはこねぇよ」

「ヴラさん!?」

アメリアの訴えるかのような呼びかけ。

「観光はまあまあ楽しめた。世話になったな」

アメリアに向けて片手をあげるヴラ。

「逃がすな! 神を捕らえろ!」

一人の号令に、どこに隠れていたのか雇われた連中が包囲を狭める。

「俺が、人間ごときに捕らえられるか」

刹那――

あたしが瞬きする間もなく、何がどうなったのか分からないが。

傭兵たちは一瞬のうちに吹き飛ばされていた。

気がついたら、彼らは地に伏せられていた。

比喩でもなんでもなく、まさに目にも止まらぬ速さで。

状況からしてそうなのだろうが。

・・・・・・あたしはともかく・・・・・・

野生並の反射神経を持つはずのガウリイにも、その姿は見えなかったらしく呆然としていた。

「気絶させただけだ。
だがまだ道を遮ろうってんなら、気絶だけじゃすませねぇぞ。
どうしてもってんなら、それなりの覚悟で来るんだな」

ヴラを捕らえようと号令した人間は、あの一瞬で傭兵たちと共に昏倒させられていた。

「さーてと。次はどこへ向かおうかねぇ」

遠巻きに見ている彼らを歯牙にもかけず、ヴラはのんきにつぶやいた。


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